JP3743570B2 - 広角単焦点レンズ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影用の単焦点レンズに関し、特に、デジタルスチルカメラ(以下、単にデジタルカメラという。)やビデオカメラへの搭載に適した広角単焦点レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの一般家庭等への普及に伴い、撮影した風景や人物像等の画像情報をパーソナルコンピュータに入力することができるデジタルカメラが急速に普及しつつある。
【0003】
デジタルカメラは、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を用いて光学的な画像を電気信号に変換し、それをデジタル画像データとして記録するものである。このようなデジタルカメラ用の撮影レンズで、広角タイプのものとしては、例えば以下の公報記載のものがある。この公報には、実施例として7枚構成のレンズが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平2001−83411号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
デジタルカメラに対する一般的な要求は、高画質、高解像度で構成がコンパクトであることにあるが、上述の公報記載の広角レンズは、そのような要求に対応した高性能なレンズ構成となっている。しかしながらその一方で、ユーザの多様なニーズに対応するために、ローコストで簡易な構成のレンズの開発も望まれている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、コンパクトで構成の簡易化の図られた広角単焦点レンズを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による広角単焦点レンズは、物体側より順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、物体側の面が凸面形状で正のパワーを有する第2レンズと、像面側に凸面を向けたメニスカス形状で正のパワーを有する第3レンズと、像面側に凹面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを備え、かつ、以下の条件式(1)〜(4)を満足するように構成されているものである。
【0008】
10.0<│f1/f│ ……(1)
2.0<│f4/f│<10.0 ……(2)
1.45<Nd<1.60 ……(3)
50.0<νd<60.0 ……(4)
ただし、fは、全体の焦点距離を示し、f1は、第1レンズの焦点距離を示し、f4は、第4レンズの焦点距離を示している。Ndは、d線に対する第1〜第4レンズのそれぞれの屈折率を示し、νdは、d線に対する第1〜第4レンズのそれぞれのアッベ数を示している。
【0009】
本発明による広角単焦点レンズでは、上記した構成にすることで、4枚という少ないレンズ構成ながら、デジタルカメラ等の撮影レンズとして最低限必要な光学性能が満足される。特に、式(1)〜(4)を満足することで、像面湾曲の補正がし易くなる。式(3),(4)は、色収差の補正にも寄与する。これにより、必要な光学性能を満足しつつ、コンパクトで構成の簡易化が図られる。
【0010】
本発明による広角単焦点レンズは、好ましくは、少なくとも第1レンズおよび第4レンズに非球面を含んでいると良い。非球面を含めることで、収差補正がし易くなり、より良好な光学性能を得やすくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る広角単焦点レンズの構成例を示している。この構成例は、後述の第1の数値実施例(図3,図4)のレンズ構成に対応している。また、図2は、本実施の形態に係る広角単焦点レンズの他の構成例を示している。図2の構成例は、後述の第2の数値実施例(図5,図6)のレンズ構成に対応している。なお、図1,図2において、符号Riは、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=1〜10)の面の曲率半径を示す。符号Diは、i番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、各構成例共に基本的な構成は同じなので、以下では、図1に示した広角単焦点レンズの構成を基本にして説明する。
【0013】
この広角単焦点レンズは、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いたデジタルカメラ等の撮影レンズとして使用されるものである。この広角単焦点レンズは、光軸Z1に沿って、物体側より順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第1レンズG1と、物体側の面が凸面形状で正のパワーを有する第2レンズG2と、像面側に凸面を向けたメニスカス形状で正のパワーを有する第3レンズG3と、像面側に凹面を向けたメニスカス形状の第4レンズG4とを備えている。絞りStは、例えば第2レンズG2と第3レンズG3との間に配置されている。この広角単焦点レンズの結像面(撮像面)には、図示しないCCDなどの撮像素子が配置される。CCDの撮像面付近には、撮像面を保護するためのカバーガラスCGが配置されている。第4レンズG4と結像面(撮像面)との間には、カバーガラスCGのほか、赤外線カットフィルタやローパスフィルタなどの光学部材が配置されていても良い。
【0014】
この広角単焦点レンズは、少なくとも第1レンズG1および第4レンズG4に非球面が含まれていることが望ましい。ただし、光学性能のみを考慮すると、第1〜第4レンズG1〜G4のすべての面を非球面にすることが望ましい。
【0015】
この広角単焦点レンズにおいて、第1レンズG1および第4レンズG4は、以下の条件式(1),(2)を満足するように構成され、比較的弱いパワー配分がなされている。ただし、式(1),(2)において、fは、全体の焦点距離を示し、f1は、第1レンズG1の焦点距離を示し、f4は、第4レンズG4の焦点距離を示している。
10.0<│f1/f│ ……(1)
2.0<│f4/f│<10.0 ……(2)
【0016】
この広角単焦点レンズは硝材に関して、以下の条件式(3),(4)を満足するように構成されている。この広角単焦点レンズは、製造性、低コスト化の点から、第1〜第4レンズG1〜G4のすべてのレンズが、条件式(3),(4)を満足する樹脂材料(プラスチックレンズ)で構成されていることが望ましい。この場合、第1〜第4レンズG1〜G4のすべてのレンズが同一樹脂材料であっても良い。
【0017】
1.45<Nd<1.60 ……(3)
50.0<νd<60.0 ……(4)
ただし、Ndは、d線に対する第1〜第4レンズG1〜G4のそれぞれの屈折率を示し、νdは、d線に対する第1〜第4レンズG1〜G4のそれぞれのアッベ数を示す。
【0018】
次に、以上のように構成された広角単焦点レンズの作用および効果を説明する。
【0019】
この広角単焦点レンズでは、相対的に第1レンズG1および第4レンズG4のパワーを弱くし、主に像面湾曲の補正効果を持たせている。特に、これら第1レンズG1および第4レンズG4に非球面を用いることで、収差補正がし易くなり、良好な光学性能が得られる。また、すべてのレンズに樹脂材料を用いることで、低コスト化が図られ、製造性の点でも有利となる。
【0020】
条件式(1)は、第1レンズG1の焦点距離f1に関するものである。条件式(1)の数値範囲を満足することで、収差補正、特に像面湾曲の補正がし易くなる。一方、条件式(1)の数値範囲を外れると、像面湾曲を補正するのが困難となる。
【0021】
条件式(2)は、第4レンズG4の焦点距離f4に関するものである。条件式(2)の数値範囲を満足することで、収差補正、特に像面湾曲の補正がし易くなる。一方、条件式(2)の数値範囲を下回ると、像面湾曲を補正するのが困難になる。ところで一般に、デジタルカメラにおいては、CCD等の撮像素子の特性上、光線が撮像面に垂直に近い状態で入射することが望ましい。従って、デジタルカメラに搭載される撮影レンズでは、テレセントリック性が確保されていることが望ましい。条件式(2)の数値範囲を上回ると、そのような射出光線のテレセントリック性が悪化するため好ましくない。
【0022】
条件式(3),(4)は、第1〜第4レンズG1〜G4の硝材に関するものであり、これらの数値範囲を満足する硝材を用いることで、特に像面湾曲および色収差をし易くなる。一方、条件式(3),(4)の数値範囲を外れると、像面湾曲および色収差を補正するのが困難になる。
【0023】
このように、本実施の形態に係る広角単焦点レンズによれば、4枚という少ないレンズ枚数でありながら、デジタルカメラ等の撮影レンズとして最低限必要な光学性能を満足しつつ、コンパクトで構成の簡易化を図ることができる。
【0024】
【実施例】
次に、本実施の形態に係る広角単焦点レンズの具体的な数値実施例について説明する。以下では、第1および第2の数値実施例(実施例1,2)をまとめて説明する。図3,図4は、図1に示した広角単焦点レンズの構成に対応する具体的なレンズデータ(実施例1)を示している。また、図5,図6は、図2に示した広角単焦点レンズの構成に対応する具体的なレンズデータ(実施例2)を示している。図3および図5には、その実施例のレンズデータのうち基本的なデータ部分を示し、図4および図6には、その実施例のレンズデータのうち非球面形状に関するデータ部分を示す。
【0025】
各図に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、各実施例の広角単焦点レンズについて、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=1〜10)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、図1,図2で付した符号Riに対応させて、物体側からi番目の面の曲率半径の値を示す。面間隔Diの欄についても、図1,図2で付した符号に対応させて、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示す。曲率半径Riおよび面間隔Diの値の単位はミリメートル(mm)である。Ndj,νdjの欄には、それぞれ、カバーガラスCGも含めて、物体側からj番目(j=1〜5)のレンズ要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示す。なお、カバーガラスCGの両面の曲率半径R9,R10の値が0(ゼロ)となっているが、これは、平面であることを示す。
【0026】
図3および図5にはまた、諸データとして、全系の焦点距離f(mm)、Fナンバー(FNO.)、画角2ω(ω:半画角)の値を同時に示す。なお、各実施例の広角単焦点レンズは、35mmフィルム換算で焦点距離f=28mm相当の性能を有しており、広画角化が図られている。また、各実施例の広角単焦点レンズは、第1〜第4レンズG1〜G4のすべてのレンズが同一樹脂材料で構成されている。
【0027】
図3および図5の各レンズデータにおいて、面番号の左側に付された記号「*」は、そのレンズ面が非球面形状であることを示す。各実施例共に、第1〜第4レンズG1〜G4のすべての面が非球面形状となっている。基本レンズデータには、これらの非球面の曲率半径として、光軸近傍(近軸近傍)の曲率半径の数値を示している。
【0028】
図4および図6の各非球面データの数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
【0029】
各非球面データには、以下の式(A)によって表される非球面形状の式における各係数Ai,Kの値を記す。Zは、より詳しくは、光軸から高さhの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)を示す。
【0030】
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h21/2}+A3・h3+A4・h4+A5・h5+A6・h6+A7・h7+A8・h8+A9・h9+A10・h10 ……(A)
ただし、
Z:非球面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)
K:離心率
C:近軸曲率=1/R
(R:近軸曲率半径)
i:第i次(i=3〜10)の非球面係数
【0031】
図7は、上述の条件式(1)〜(4)に対応する値を、各実施例についてまとめて示したものである。図7に示したように、各実施例の値が、条件式(1)〜(4)の数値範囲内となっている。
【0032】
図8(A)〜(C)は、実施例1の広角単焦点レンズにおける球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。各収差図には、d線を基準波長とした収差を示すが、球面収差図には、g線(波長435.8nm),C線(波長656.3nm)についての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。同様に、実施例2についての諸収差を図9(A)〜(C)に示す。
【0033】
以上の各レンズデータおよび各収差図から分かるように、各実施例について、良好に収差補正がなされている。また、全長のコンパクト化が図られている。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の単焦点レンズによれば、物体側より順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、物体側の面が凸面形状で正のパワーを有する第2レンズと、像面側に凸面を向けたメニスカス形状で正のパワーを有する第3レンズと、像面側に凹面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを備え、かつ、第1レンズおよび第4レンズの焦点距離に関する所定の条件式(1),(2)と、各レンズの硝材に関する所定の条件式(3),(4)とを満足するようにしたので、デジタルカメラ等の撮影レンズとして最低限必要な光学性能を満足しつつ、コンパクトで構成の簡易化の図られたレンズを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る広角単焦点レンズの構成例を示すものであり、実施例1に対応するレンズ断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る広角単焦点レンズの他の構成例を示すものであり、実施例2に対応するレンズ断面図である。
【図3】実施例1に係る広角単焦点レンズの基本レンズデータを示す図である。
【図4】実施例1に係る広角単焦点レンズの非球面に関するデータを示す図である。
【図5】実施例2に係る広角単焦点レンズの基本レンズデータを示す図である。
【図6】実施例2に係る広角単焦点レンズの非球面に関するデータを示す図である。
【図7】各実施例に係る広角単焦点レンズが満たす条件式の値を示す図である。
【図8】実施例1に係る広角単焦点レンズの球面収差、非点収差、およびディストーションを示す収差図である。
【図9】実施例2に係る広角単焦点レンズの球面収差、非点収差、およびディストーションを示す収差図である。
【符号の説明】
CG…カバーガラス、Gj…物体側から第j番目のレンズ、Ri…物体側から第i番目のレンズ面の曲率半径、Di…物体側から第i番目と第i+1番目のレンズ面との面間隔、Z1…光軸。

Claims (2)

  1. 物体側より順に、
    物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、
    物体側の面が凸面形状で正のパワーを有する第2レンズと、
    像面側に凸面を向けたメニスカス形状で正のパワーを有する第3レンズと、
    像面側に凹面を向けたメニスカス形状の第4レンズと
    を備え、
    かつ、以下の条件式(1)〜(4)を満足するように構成されている
    ことを特徴とする広角単焦点レンズ。
    10.0<│f1/f│ ……(1)
    2.0<│f4/f│<10.0 ……(2)
    1.45<Nd<1.60 ……(3)
    50.0<νd<60.0 ……(4)
    ただし、
    f:全体の焦点距離
    f1:第1レンズの焦点距離
    f4:第4レンズの焦点距離
    Nd:d線に対する第1〜第4レンズのそれぞれの屈折率
    νd:d線に対する第1〜第4レンズのそれぞれのアッベ数
  2. 少なくとも前記第1レンズおよび前記第4レンズに非球面を含んでいる
    ことを特徴とする請求項1記載の広角単焦点レンズ。
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