JP3742971B2 - 無線機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の無線機の送信出力部の回路を図7に示す。この回路について説明すると、ファイナルアンプ11は、送信時に高周波信号を電力増幅する。このファイナルアンプ11で電力増幅された高周波信号はローパスフィルタ(以下LPFと記す)12を介してアンテナ13に供給され電波として輻射される。このとき、LPF12に接続された自動出力制御ブロック(以下APCブロックと記す)14の第1、第2出力検出器141,142によりアンテナの負荷状態がLPF12内の2箇所(LPF12の第2コイル121の両端)で検出され、負荷状態に応じたDC電圧が第1、第2出力検出器141,142より出力される。この第1、第2出力検出器141,142の合成電圧がバッファ回路15を介してCPU16のA/Dポートに供給され、CPU16に入力される。CPU16はA/Dポートから入力されたDC電圧をA/D変換してデジタル信号とした上で、このDC電圧を内部に記憶されている基準値と比較する。基準値はある範囲をもっているが、前記DC電圧がこの範囲以外の時は、CPU16はアンテナ負荷異常と判断してD/Aポートに信号を出力する。すると、D/Aポートの信号によりAPCブロック14内の比較増幅回路143、送信出力制御回路144が順次に制御され、さらに送信出力制御回路144の出力によりファイナルアンプ11が制御されて送信状態が停止され、受信状態となる。アンテナ負荷異常時、このようにして送信状態が停止されることにより、ファイナルアンプ11が保護される。
【0003】
なお、APCブロック14は、通常時は、第1、第2出力検出器141,142からの合成電圧と、CPU16からの基準電圧とを比較増幅回路143で比較して、その差に応じてファイナルアンプ11を制御することにより、送信出力を一定に維持している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来の無線機では、ファイナルアンプ11の出力がショートしたときの、極めて異常で、急激にファイナルアンプ(無線機)の温度が上昇するときだけしかアンテナ負荷の異常を検出することができなかった。
【0005】
その詳しい理由について述べると、従来の無線機では、LPF12の2箇所で第1、第2出力検出器141,142によりアンテナの負荷状態を検出しているが、それぞれの検出電圧を合成したものをCPU16のA/Dポートに供給して基準電圧と比較しているため、2箇所の検出電圧の変化が相殺されてしまう。例えば、車の走行中にアンテナが途中で折れてしまい無線機アンテナ端のVSWRが高くなったときは、当然アンテナ負荷の異常状態なのだが、アンテナの折れる位置によって一方の検出電圧は高く、もう一方の検出電圧は低くなったときは、検出電圧を合成している従来の無線機では、検出電圧の変化が相殺されてしまって合成電圧(CPU16のA/Dポート入力電圧)は正常な範囲にあることになる。したがって、従来の無線機でアンテナ負荷の異常状態を判別できるのは、ファイナルアンプ11の出力がショートして、2つの検出電圧が共に高いとき、あるいは2つの検出電圧が共に低いときの、極めて異常で、急激にファイナルアンプ(無線機)の温度が上昇するときだけに限られていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、アンテナ負荷の異常状態を精度良く検出して、ファイナルアンプを確実に保護することができ、かつ温度上昇を防止できる無線機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の無線機は、ファイナルアンプとアンテナ間に挿入されたフィルタ内の2箇所から第1、第2出力検出器によりアンテナの負荷状態を検出し、この出力検出器から出力された検出電圧が基準値の範囲外となったときにアンテナ負荷異常状態と判断して前記ファイナルアンプを制御する無線機において、前記第1、第2出力検出器から出力された2つの検出電圧をそれぞれ別々に基準値と比較する手段と、この手段で2つの検出電圧の少なくとも一方が基準値の範囲外と判断されたとき、アンテナ負荷異常状態と判断する手段と、この手段でアンテナ負荷異常状態と判断されたとき、前記ファイナルアンプを制御する手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
この無線機において、好ましい形態としては、前記第1、第2出力検出器から出力されたそれぞれの検出電圧を一定時間間隔で基準値と比較し、少なくとも一方の検出電圧が所定の複数回連続して基準値の範囲外であったとき、アンテナ負荷異常状態と判断する。あるいは、前記第1、第2出力検出器から出力されたそれぞれの検出電圧を一定時間間隔で基準値と比較し、少なくとも一方の検出電圧が前記比較で一度基準値の範囲外と判断された後、連続して一定時間基準値の範囲外であったときにアンテナ負荷異常状態と判断する。さらに、アンテナ負荷異常状態と判断されたときは、前記ファイナルアンプを制御して送信状態が停止される、または送信パワーが絞られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して本発明による無線機の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明による無線機の実施の形態を示す回路図である。この回路について説明すると、ファイナルアンプ21は、送信時に高周波信号を電力増幅する。このファイナルアンプ21で電力増幅された高周波信号はLPF22を介してアンテナ23に供給され電波として輻射される。このとき、LPF22に接続されたAPCブロック24の第1、第2出力検出器241,242によりアンテナの負荷状態がLPF22内の2箇所(LPF22の第2コイル221の両端)で検出され、負荷状態に応じたDC電圧(負荷状態検出電圧)が第1、第2出力検出器241,242より出力される。
【0010】
第1出力検出器241から出力された第1DC電圧は第1バッファ回路251を介してCPU26の第1A/Dポートに供給され、CPU26に入力される。また、第2出力検出器242から出力された第2DC電圧は第2バッファ回路252を介してCPU26の第2A/Dポートに供給され、CPU26に入力される。CPU26は第1、第2A/Dポートから入力された第1、第2DC電圧を別々にA/D変換して2つのデジタル信号とした上で、この第1、第2DC電圧を内部に記憶されている基準値とそれぞれ別々に比較する。基準値はある範囲をもっているが、前記第1、第2DC電圧の少なくとも一方がこの範囲以外の時は、CPU26はアンテナ負荷異常と判断してD/Aポートに信号を出力する。すると、D/Aポートの信号によりAPCブロック24内の比較増幅回路243、送信出力制御回路244が順次に制御され、さらに送信出力制御回路244の出力によりファイナルアンプ21が制御されて送信状態が停止され、受信状態となる。アンテナ負荷異常時、このようにして送信状態が停止されることにより、ファイナルアンプ21が保護される。
【0011】
以上の説明から明らかなように、上記の無線機では、第1、第2出力検出器241,242から出力されたそれぞれのDC電圧をCPU26内部に記憶された基準値と別々に比較し、少なくとも一方のDC電圧が基準値の範囲外になると、アンテナ負荷異常状態と判断する。より具体的には、第1、第2出力検出器241,242から出力された第1、第2DC電圧をそれぞれ一定時間間隔で基準電圧と比較し、少なくとも一方のDC電圧が所定の複数回(ここでは3回)連続して基準値の範囲外であったときにアンテナ負荷異常状態と判断する(第1の方法)。または、第1、第2出力検出器241,242から出力された第1、第2DC電圧をそれぞれ一定時間間隔で基準値と比較し、少なくとも一方の検出電圧が前記比較で一度基準値の範囲外と判断された後、連続して一定時間基準値の範囲外であったときにアンテナ負荷異常状態と判断する(第2の方法)。
【0012】
図2および図3は、上記第1の方法をより詳細に示す波形図およびフローチャートである。この場合は、第1、第2出力検出器241,242から出力された第1、第2DC電圧V1,V2をそれぞれ250mS間隔で10mSずつ監視する(ステップS11,S21)。そして、各監視時に、第1、第2DC電圧V1,V2別に、第1、第2DC電圧V1,V2が10mS連続して基準値50〜100の範囲内にあるか判断し(ステップS12,S22)、もし基準値範囲内(OK)であれば、電圧別のエラーカウンタを初期値“0”に設定する(ステップS13,S23)。一方、各監視時に、第1または第2DC電圧V1,V2、あるいは第1および第2DC電圧V1,V2が10mS連続して基準値50〜100の範囲外(NG)であれば、その都度、基準値範囲外の電圧に対応するエラーカウンタを+1する(ステップS14,S24)。そして、第1、第2DC電圧V1,V2の少なくとも一方が3回連続して基準値範囲外(NG)となって、対応するエラーカウンタの数値が「3」になれば(ステップS15,S25)、アンテナ負荷異常状態と判断する(ステップS31)。その結果、送信状態が停止され、受信モードとなる(ステップS32)。図2では、第1DC電圧V1が3回基準値範囲外(NG)となって、アンテナ負荷異常状態が検出されている。
【0013】
図4および図5は、上記第2の方法をより詳細に示す波形図およびフローチャートである。この場合は、第1、第2出力検出器241,242から出力された第1、第2DC電圧V1,V2をそれぞれ250mS間隔で10mSずつ監視する(ステップS41,S51)。そして、各監視時に、第1、第2DC電圧V1,V2別に、第1、第2DC電圧V1,V2が10mS連続して基準値50〜100の範囲内にあるか判断し(ステップS42,S52)、もし、第1または第2DC電圧V1,V2、あるいは第1および第2DC電圧V1,V2が基準値50〜100の範囲外(NG)であれば、以後その電圧について連続して500mS、基準値範囲外にあるか監視する(ステップS43,S53)。そして、もし、500mS、基準値範囲外にあれば、アンテナ負荷異常状態と判断する(ステップS61)。その結果、送信状態が停止され、受信モードとなる(ステップS62)。図4では、第2DC電圧V2が250mS間隔の比較で1回、その後500mS連続して基準値範囲外となって、アンテナ負荷異常状態が検出されている。
【0014】
以上のように、上記の無線機によれば、第1、第2出力検出器241,242から出力されたそれぞれのDC電圧をCPU26内部に記憶された基準値と別々に比較し、少なくとも一方のDC電圧が基準値の範囲外になると、アンテナ負荷異常状態と判断する。したがって、ファイナルアンプ21の出力がショートしたとき以外でも、無線機アンテナ端のVSWRが高いとき、すなわち、アンテナが装着されていないとき、アンテナが折れているとき、あるいはアンテナがその無線機にマッチングしていないときにアンテナ負荷の異常状態を検出することができ、検出精度が向上する。
【0015】
この検出精度の向上を具体的な数値で示すのが図6である。図6は、第1、第2出力検出器241,242から出力された第1、第2DC電圧V1,V2と、従来の合成電圧を数値で具体的に示し、黒く網掛けされた部分はアンテナ負荷異常と判断された部分を示す。従来の合成電圧を利用する方式は、合成電圧が、相殺により平均化されてしまって、異常状態においても、基準値の範囲内にあることが多いため、ファイナルアンプの出力がショートしたような極端な場合(合成電圧105または45の部分)しか、アンテナ負荷異常状態を検出することができなかった。これに対して、本発明の、第1、第2DC電圧V1,V2を別々に基準値と比較する方式では、ファイナルアンプの出力がショートした場合以外でも、アンテナが折れたとか、アンテナがその無線機にマッチングしていないなどの異常状態のときに、黒の網掛け部分で示すように必ず、第1、第2DC電圧V1,V2のどちらかが基準値の範囲外となるので、異常状態を精度良く検出することが可能となる。
【0016】
そして、このようにしてアンテナ負荷の異常状態を精度良く検出することができるので、アンテナ負荷異常時、必ず送信状態を停止させて、ファイナルアンプ21を確実に保護することができる。また、アンテナ負荷の異常時は、正常な場合と比べてファイナルアンプ21で消費する電流が増えて(効率が悪化して)、ファイナルアンプ21(無線機)の温度が上昇するが、この温度上昇を確実に防止できる。さらに、上記した第1の方法や第2の方法のように、検出DC電圧が複数回基準値の範囲外となったときに、あるいは一定時間連続して基準値の範囲外となったときにアンテナ負荷異常と判断するようにすれば、車の振動により一時的に検出DC電圧が基準値の範囲外となったときを排除して、正確にアンテナ負荷異常状態を検出することができる。
【0017】
なお、上記の実施の形態では、アンテナ負荷異常時、ファイナルアンプ21を制御して送信状態を停止させるようにしたが、ファイナルアンプ21を制御して送信パワーを例えば25W→5W、または50W→10Wに絞るようにしてもよい。このようにしても、送信状態を停止させる場合と同様に、ファイナルアンプ21の保護と、温度上昇の防止の両方の効果を得ることができる。
【0018】
また、図1において、APCブロック24は、従来と同様に、通常時は、第1、第2出力検出器241,242からの合成電圧と、CPU26からの基準電圧とを比較増幅回路243で比較して、その差に応じてファイナルアンプ21を制御することにより、送信出力を一定に維持する。
【0019】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明の無線機によれば、アンテナ負荷の異常状態を精度良く検出して、ファイナルアンプを確実に保護することができ、かつ温度上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による無線機の実施の形態を示す回路図。
【図2】本発明の実施の形態において、アンテナ負荷異常状態と判断する第1の方法を示す波形図。
【図3】本発明の実施の形態において、アンテナ負荷異常状態と判断する第1の方法を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態において、アンテナ負荷異常状態と判断する第2の方法を示す波形図。
【図5】本発明の実施の形態において、アンテナ負荷異常状態と判断する第2の方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態による効果を説明するための図。
【図7】従来の無線機の回路図。
【符号の説明】
21 ファイナルアンプ
22 ローパスフィルタ
23 アンテナ
24 自動出力制御ブロック
241,242 第1、第2出力検出器
243 比較増幅回路
244 送信出力制御回路
26 CPU

Claims (4)

  1. ファイナルアンプとアンテナ間に挿入されたフィルタ内の2箇所から第1、第2出力検出器によりアンテナの負荷状態を検出し、この出力検出器から出力された検出電圧が基準値の範囲外となったときにアンテナ負荷異常状態と判断して前記ファイナルアンプを制御する無線機において、
    前記第1、第2出力検出器から出力された2つの検出電圧をそれぞれ別々に基準値と比較する手段と、
    この手段で2つの検出電圧の少なくとも一方が基準値の範囲外と判断されたとき、アンテナ負荷異常状態と判断する手段と、
    この手段でアンテナ負荷異常状態と判断されたとき、前記ファイナルアンプを制御する手段と
    を具備することを特徴とする無線機。
  2. 前記第1、第2出力検出器から出力されたそれぞれの検出電圧を一定時間間隔で基準値と比較し、少なくとも一方の検出電圧が所定の複数回連続して基準値の範囲外であったとき、アンテナ負荷異常状態と判断することを特徴とする請求項1に記載の無線機。
  3. 前記第1、第2出力検出器から出力されたそれぞれの検出電圧を一定時間間隔で基準値と比較し、少なくとも一方の検出電圧が前記比較で一度基準値の範囲外と判断された後、連続して一定時間基準値の範囲外であったときにアンテナ負荷異常状態と判断することを特徴とする請求項1に記載の無線機。
  4. アンテナ負荷異常状態と判断されたとき、前記ファイナルアンプを制御して送信状態が停止される、または送信パワーが絞られることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線機。
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