JP3741507B2 - 電源装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)等の磁場発生コイルに好適に用いられる電源装置に係わり、特にその大電力を要求される静磁場、傾斜磁場、高周波磁場の発生に必要な各種電源に好適な電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は、静磁場中に置かれた検査対象に高周波磁場をパルス状に印加し、検査対象から発生する核磁気共鳴信号を検出し、この検出信号をもとにスペクトルや画像を再構成するものであり、MRI装置には磁場発生コイルとして静磁場を発生する超電導或いは常電導コイル、静磁場に重畳される傾斜磁場を発生するための傾斜磁場コイル、さらに高周波磁場を発生するための高周波コイルが備えられている。これら磁場発生コイルは所定の磁場強度の磁場を発生するために印加電流の大きさとタイミングを制御するための電源装置を備えている。このようなMRI装置では、静磁場や傾斜磁場や高周波磁場の磁場強度が最終的に得られる画像上のノイズや撮像時間に大きく影響し、短時間で診断に有用な画像を得るためにはMRI装置の磁場電源として高精度の大電流電源が必要となっている。従来、磁気共鳴イメージング装置用電源装置として、スイッチング電源を用い、これを高精度にフィードバック制御するためにアナログ回路による制御方式を採用していた。
【0003】
図4にこの方式による電源装置をMRI装置の傾斜磁場コイルに用いた回路構成を示す。図4において、2は電源装置の負荷である傾斜磁場コイル、10はスイッチング電源、21は磁場コイルに流れる電流を検出する電流検出器、26は目標電流値と前記電流検出器21の出力を一致するように制御するための制御量を求めるアナログフィードバック制御回路、27は一定周期のパルスに同期して鋸波状のパルスを生成する鋸波発生回路、28は前記アナログフィードバック制御回路26の出力と鋸波発生回路27の出力を比較する比較回路である。図5に図4の回路の動作説明図を示す。
【0004】
図4、図5において、鋸波発生回路27は一定周期の鋸波状のパルス(図5の(a))を生成し、アナログフィードバック制御回路26で演算して目標電流値と実際の電流値との制御偏差を生成し(図5の(b))、これと前記鋸波発生回路27との出力を比較回路28で比較して制御偏差に比例してパルスの幅を可変するパルス幅変調信号を得る(図5の(c))。アナログフィードバック制御回路26は、通常はオペアンプなどを用いて加算,積分,微分,乗算などの処理を行ない、これで生成した制御量をパルス幅変調(PWM)制御回路に出力する。このPWM制御回路24’の鋸波発生回路27はオペアンプやコンデンサなどを用いた部品で構成されている(図示省略)。図6にスイッチング電源10の一例を示す。このスイッチング電源10は、4つのスイッチング素子51〜54と、スイッチング電源の出力を平滑するためのリアクトル55,56及びコンデンサ57,58とを備えている。スイッチング素子としては絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)が採用され、スイッチング素子51と52(左側のスイッチング素子)及びスイッチング素子53と54(右側のスイッチング素子)はそれぞれ直流電源50に対して直列に接続され、スイッチング素子51と52及びスイッチング素子53と54は並列に接続されている。リアクトル55及びコンデンサ57はスイッチング素子52に並列に、リアクトル56及びコンデンサ58はスイッチング素子54に並列に接続され、それぞれスイッチ52及び54のコレクタ側の電圧VL’、VR’を平滑する平滑回路を構成する。このスイッチング電源10の一方の出力端子はリアクトル55とコンデンサ57の接続点に、他方の出力端子はリアクトル56とコンデンサ58の接続点にそれぞれ接続される。このスイッチング電源10は、スイッチ51及び54がオンのときにはスイッチ52及びスイッチ53がオフ、スイッチ51及び54がオフのときにはスイッチ52及び53がオンとなるように交互に一定周期で駆動される。この際、一方、例えばスイッチ51及び54がオンとなる時間を長く、スイッチ52及び53のオン時間を短くしたとすると、直流電源50の中性点(図示せず)からみたスイッチ52及び54のコレクタ側の電圧VL’、VR’は、それぞれ図7に示すような波形となり、これらをリアクトル55とコンデンサ57及びリアクトル56とコンデンサ58で平滑することにより、出力端子の電圧VLA’、VRA’は直流電圧となる。このようなスイッチング電源10の出力端子は図4の磁場コイル2に接続され、前記パルス幅変調信号で駆動制御される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、磁場コイル電流を高精度に制御するためにはフィードバック制御系に各種の補償を入れる必要があり、これを従来のアナログフィードバック制御で実現しようとすると回路が非常に複雑になるばかりか必要な制御系の構成が困難になる。またアナログフィードバック制御回路は、これを構成するオペアンプやトランジスタ,抵抗,コンデンサ等の特性があり、またこの特性は温度によって変化するために、調整や保守などが困難であるという問題を持っている。これを解決する手段としてフィードバック演算処理をディジタル信号で処理する方法が考えられる。この方法は複雑な演算などを比較的簡単にでき、調整や保守がし易く、また温度特性による影響は受けにくくなるが、スイッチング電源内のスイッチング素子を駆動制御するパルス幅変調信号を生成するパルス(PWM信号)の時間分解能がデジタルフィードバック制御回路を構成するマイクロコンピュータのクロック周波数以下にはならないという問題がある。
【0006】
例えば、20kHzのキャリア周波数を持つPWM信号を20MHzのクロックで作った場合、図6においてVL’及びVR’の平均電圧の分解能は1/1000となり、500Vの直流電源50を使用した場合、0.5Vの分解能となる。
【0007】
VL’及びVR’は常に同時に逆方向の電圧を生じるため、傾斜磁場コイル2にかかる電圧の分解能は1Vとなる。また、傾斜磁場コイル2のインダクタンスの値を400μHとすると、50μs(20kHz)の間に電流はΔi=50×10―6/400×10―6=125mAも変化してしまうことになる。磁気共鳴イメージング装置用電源装置、特に傾斜磁場電源装置では、数百アンペア以上の大出力で、尚且つ出力電流のノイズを数mA以下のオーダーにする必要があるため、前記PWM信号の時間分解能を最低でもこの100倍以上に上げ、PWMの最小分解能当たり1mA程度の電流変化率を達成しなければならず、検出及び制御量に105以上のダイナミックレンジが要求される。
【0008】
そこで、本発明の目的は磁気共鳴イメージング装置用電源装置に105以上のダイナミックレンジを持ったディジタルフィードバック制御を導入し、複雑な演算などが比較的簡単な回路で実現でき、調整や保守がし易く、また温度特性による影響を受けにくい電源装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置用電源装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、スイッチング素子を備えたスイッチング電源と、そのスイッチング電源内のスイッチング素子を制御する制御手段を備えた電源装置において、前記スイッチング電源の負荷に流す目標電流値から前記スイッチング電源内のスイッチング素子を制御する制御量を計算するコントローラと、このコントローラから出力される制御量をパルス幅変調信号(PWM信号)に変換するパルス幅変調信号発生回路(PWM発生回路)と、このPWM発生回路の出力パルス幅を前記コントローラの出力に応じた時間だけ伸縮するパルス幅伸縮回路を備え、このパルス幅伸縮回路の出力信号で前記スイッチング電源内のスイッチング素子を駆動制御することによって達成される。
【0010】
より望ましくは、前記コントローラには温度の影響を受けにくいディジタルコントローラを採用し、負荷である磁場発生コイルに流れる電流を検出してこれをA/D変換し、このA/D変換器から出力されたディジタル値と目標電流値から前記スイッチング素子を制御する制御量を前記ディジタルコントローラで求め、このディジタルコントローラから出力されるディジタルの制御量をパルス幅変調信号発生回路(PWM信号発生回路)でパルス幅変調信号に変換(PWM信号)し、このPWM発生回路の出力パルス幅を前記ディジタルコントローラの出力に応じた時間だけ伸縮して前記スイッチング電源内のスイッチング素子を駆動制御する。
【0011】
以上のように構成される本発明装置は、伸縮回路を用いることによりPWM信号の分解能が向上し、高いダイナミックレンジを得ることができる。また,ディジタル制御方式の採用により、高精度で温度による影響を受けにくい、保守性の高い電源装置とすることができる。したがって、これを磁気共鳴イメージング装置に用いた場合はより安価で信頼性が高く、今後普及すると思われるEPI(Echo Planner Imaging)などの高速シーケンスに対応可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の電源装置を磁気共鳴イメージング装置に適用した実施例を示す。 磁気共鳴イメージング装置用電源装置1は負荷である傾斜磁場コイル2に接続し、この負荷に電流を供給するスイッチング電源10と、傾斜磁場コイル2に流れる電流を検出してこれをフィードバック制御する制御回路20とからなる。制御回路20は、傾斜磁場コイル2に流れる電流を検出する電流検出器21と、この電流検出器21によって検出した電流値をディジタル値に変換するためのアナログ/ディジタル変換器(A/D変器)22と、このA/D変換器22から得た電流のディジタル値を読み込んで、これと所望する目標電流値との誤差から演算により前記スイッチング電源10の制御量を求めるディジタルコントローラ23と、このディジタルコントローラ23から出力された制御量を前記スイッチング電源10のスイッチング素子のオン/オフ時間を制御するパルス幅変調(PWM)信号に変換するPWM発生回路24と、前記ディジタルコントローラ23から出力された制御量で前記PWM発生回路24から出力されたPWM信号の立ち上がりまたは立ち下がりを遅らせることによってPWM信号の分解能を上げるためのパルス幅伸縮回路25とによって構成される。スイッチング電源10は、図6に示した公知の回路と同じ構成の回路が適用され、このスイッチング電源内のスイッチング素子51〜54は、前記制御回路20から出力されたPWM信号を基に、このPWM信号が論理信号“1”の間、スイッチング素子51,54がオンし、52,53はオフする。また前記PWM信号が論理信号“0”の間、スイッチング素子52,53がオンし、51,54はオフする。スイッチング電源10の出力電圧は、リアクトル55,56とコンデンサ57,58のフィルタを通した平均電圧が出力され、これは前記PWM信号のデューティに比例する。この両端の電圧が傾斜磁場コイル2印加されてコイルに電流が流れ、この傾斜磁場コイルの電流は前記PWM信号のデューティによって制御することが可能である。
【0013】
図2にパルス幅伸縮回路を用いた高分解能PWM発生装置の詳細回路を示す。ディジタルコントローラ23からのディジタル制御量をPWM発生回路24に入力し、この出力信号を8bitのパルス幅伸縮回路回路25で出力パルス幅を伸縮して高分解能の18bitのPWM信号に変換し,スイッチング電源10を制御する。
【0014】
この例のPWM発生回路24は、10bitのディジタルカウンタを2個とフリップフロップ(DーFF)を用い、20MHzのクロックとディジタルコントローラ23からのディジタル制御量を入力し、10bitのPWM信号を生成している。図3にタイムチャートを示す。10bitのディジタルカウンタDC1で20MHzのクロック(図3の(a))から20kHzのPWMキャリア周波数を生成し(図3の(b))、10bitのディジタルカウンタDC2でディジタルコントローラ23からの制御量をカウントしてPWMパルスのデューティーを生成する(図3の(c))。この場合、ディジタルコントローラ23からの制御量の最少分解能は,20MHzの基本クロックに制限されて、50nsとなる。次に、パルス幅伸縮回路25は、図2に示す通り、トランジスタTr1とオペアンプOp1,抵抗R1〜R4,VR1,コンデンサC1,ツェナーダイオードZD1からなる立ち下がりエッジトリガーによって直線的に電圧を上昇させる積分回路と、8bitのディジタル/アナログ変換器(D/A変換器)と、コンパレータとからなる。前記積分回路の入力論理信号が“1”の間は、トランジスタTr1は導通しているため、コンデンサC1には電圧がかからない。前記積分回路の入力論理信号が“0”になると、トランジスタTr1は非導通となり、オペアンプOp1の入力と出力には同じ電圧がかかるので、ツェナーダイオードZD1にかかる電圧と抵抗R1,VR1によって決定する電流が連続的にコンデンサC1に流れ込み、C1の電圧は直線的に上昇する。すなわちオペアンプOp1の出力電圧は直線的に上昇する(図3の(g))。そして、ディジタルコントローラ23からのディジタル制御量をD/A変換器によってアナログ電圧に変換した制御量(図3の(f))とオペアンプOp1の出力電圧とを比較して出力することによって、制御量をパルス幅に変換する(図3の(h))。
【0015】
従って、本実施例による高分解能PWM発生装置の分解能は、PWM発生回路の分解能(1/1000)×パルス幅伸縮回路の分解能(1/256)=1/256000、時間にすると0.195nsとなり、傾斜磁場コイル2のリアクトルを400μHとすると、50μs(PWM周波数が20kHzの場合)の間に電流が0.5mA変化させることができる。本実施例ではパルス幅伸縮回路によって立ち下がりパルスのみを伸縮させたが、立ち上がりのパルスを伸縮させることによってデューティ(Duty)を小さい方に微調整させてもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上で説明したように本発明によれば、PWM発生回路の出力パルス幅をパルス幅伸縮回路で伸縮することによってPWM信号の分解能が向上し、広いダイナミックレンジが得られる電源装置とすることができ、これを磁気共鳴イメージング装置に用いた場合は信頼性が高く、今後普及すると思われるEPI(Echo Planner Imaging)などの高速シーケンスに対応可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す図。
【図2】図1の実施例の詳細図。
【図3】図2の回路のタイミングチャート。
【図4】従来装置の例を示す図。
【図5】図4の動作説明図。
【図6】スイッチング電源回路の一例を示す回路図。
【図7】図6の回路の動作波形図。
【符号の説明】
1 本発明の磁気共鳴イメージング装置用電源装置
2 傾斜磁場コイル
3 直流電源
10 スイッチング電源
20 制御回路
21 電流検出器
22 A/D変換器
23 ディジタルコントローラ
24 PWM発生回路
25 パルス幅伸縮回路
Claims (2)
- スイッチング素子を備えたスイッチング電源と、前記スイッチング電源内のスイッチング素子を制御する制御手段と、前記制御手段へ出力する制御量を計算するコントローラと、前記コントローラから出力される制御量をパルス幅変調信号に変換して前記スイッチング電源に与えるパルス幅変調手段と、を備えた電源装置において、前記パルス幅変調手段と前記スイッチング電源の間に挿入され、前記パルス幅変調手段の出力パルス幅を前記コントローラの出力に応じた時間だけ伸縮するパルス幅伸縮手段を備え、前記パルス幅伸縮手段の出力で前記スイッチング素子を駆動制御することを特徴とする電源装置。
- 磁場発生コイル用の電源装置として請求項1に記載の電源装置を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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JP01763597A JP3741507B2 (ja) | 1997-01-17 | 1997-01-17 | 電源装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置 |
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