JP3740360B2 - 偏心形バタフライ弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
この発明は、弁体を軸支する弁棒の中心に対して弁体の中心を偏心させた構造を有する偏心形バタフライ弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、略円筒状の流体通路を貫設した弁本体と、該弁本体内に弁棒で回転自在に軸支され前記流体通路を開閉し得る円板状の弁体と、弁本体の内周面に固着され弁体の外周面が密着する密封用のシートリングとを含み、弁体の中心を弁棒の中心から離した一次偏心と、弁体の中心を弁本体の中心からも離す二次偏心と、更に弁本体と弁体のシール面を構成する円錐形状の中心を弁本体の中心に対して傾斜させた三次偏心の三重の偏心構造を有する偏心形バタフライ弁は公知であり、例えば特開平11−148563号公報に開示されている。三重偏心弁は、二重偏心に加えて、更に円錐の中心を弁本体の中心から傾かせて位置させた三次偏心を有する構造であり、弁本体側と弁体側のシール面は楕円断面となっている。かかる三重偏心構造では、弁の開閉時にシール面を弁体が擦って押しつぶすことがなくシール性能を実現できるため、高圧、高温下のシールが可能で弁の長寿命化が図れると共に、弁を開放するときのジャンピング現象をなくすことが出来、更に、シートが自動調芯機能を有し、全閉位置のセットをトルクシールによりシートリング自身で達成することが出来る等の利点を有している。
【0003】
このように三重偏心弁は、シートリングの自動調芯機能により弁体を締め切るトルクを受けた時、弁体外周部にシートリング内周面が均一に接触し、更なるトルクにより弁体外周部がクサビ形状をもつシートリング内周面に強力に圧着するため、高圧のシールが可能であり、又シートリングは薄い金属板とグラファイトを積層したラミネートシートの適度な弾性効果により、高温時の弁体の熱膨張に対応でき、安定したシールを得ることが出来る等の利点を有しているが、弁本体と弁体のシール面が楕円形状となっているため、シートリングを押さえるシート押えの内周を楕円形状に形成しなければならず、強度をもたせる必要上肉厚に形成されたシート押えの内周の加工には、時間とコストがかかっている。コストを低く抑えるべくシート押えの内周を円形に形成した場合、弁体シール面との干渉を回避するためにシート押えの内径を大きくしなければならず、シートリングを充分に押さえることが出来なくなってしまう問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、楕円形の内周形状を有するシートリングを確実に押さえて固定することが出来、且つ製作が容易でコストの低減が可能な構造を提案することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためにこの発明が採った手段は、略円筒状の流体通路を貫設した弁本体と、該弁本体内に弁棒で回転自在に軸支された円板状の弁体と、弁本体の内周面に固着され弁体の外周面に密着するシートリングを含み、弁体の中心を弁棒の中心から離して一次偏心させ、次に弁本体の中心からも離して二次偏心させ、更に弁本体と弁体のシール面を構成する円錐形状の中心を弁本体の中心から傾かせて三次偏心させた三重偏心バタフライ弁において、シートリングと弁本体に固着するシート押えとの間に薄い剛性のシートからなるスペーサを介挿し、該スペーサはその内周をシートリングの内周の楕円形状より若干大きな径の相似楕円形に形成し、外周をシートリングの外周径と一致する円形状に形成し、前記シート押えは内外共に円形のドーナツ形状でスペーサに比して肉厚の構造とし、外周径をシートリング及びスペーサの外周径と一致させ、内周径を前記スペーサの内周の楕円長径と一致若しくは若干大きな径とし、該シート押え、スペーサ及びシートリングを、複数のシート取付ボルトにより弁本体に固着するようにしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明は、シートリングとシート押えとの間に、シートリングの楕円形の内周形状と相似形の内周形状を有するスペーサを介挿し、該スペーサを介して内周を円形に形成したシート押えによりシートリングを固着するようにしたことを特徴とする。スペーサは、加工が比較的容易な薄い金属板等の剛性のシート材料からなり、内周はシートリングの楕円内径より若干大きい相似形の楕円形状に形成される。シート押えは、従来と同様に円形の内周を有し、所要の肉厚を備えている。シート押えの内周径は、スペーサの内周の楕円長径と一致若しくは若干大きな直径とするのが好ましい。これより小さな直径では、弁体シール面と干渉してしまう。又、大きすぎるとシートリングを充分に押えることが出来なくなる。
【0008】
【実施例】
図1〜4を参照して、略円筒状の流体通路(2)を貫設した弁本体(1)と、該弁本体(1)内に弁棒(4)で回転自在に軸支されて配設された円板状の弁体(3)と、弁本体(1)の内周面に固着され弁体(3)の外周面に圧接する密封用のシートリング(5)とを備える。図示のバタフライ弁は、図5に示す三重偏心弁の構造を有し、弁体(3)の外周面とシートリング(5)の内周面は楕円形状を呈している。円板状の弁体(3)と弁棒(4)とは、弁棒ピン(6)で固着され、一体に回転する。
【0009】
弁本体(1)に取り付けられるシートリング(5)は、例えば薄い金属板とグラファイト(黒鉛)をラミネートしたメタルシール材で形成され、スペーサ(8)を介してシート押え(7)で本体(1)に取り付けられ、シートリング(5)と弁本体(1)との間には、ガスケット(9)が介挿されシールしている。シート押え(7)、スペーサ(8)、シートリング(5)及びガスケット(9)は、複数のシート取付ボルト(10)で弁本体(1)に固着される。シート押え(7)は、従来のシート押えのようにシートリングに当接することなく、シートリング(5)をスペーサ(8)を介して直接押さえる構造となっているので、シート取付ボルト(10)によって、最適な締付力でシートリングを押さえることが出来、シートリングの厚みにバラツキが存しても、支障なく適切な規定トルクで締め付けることが出来る。シートリング(5)は前述したように自動調芯機能を有し、弁体(3)の外周面と当接したとき、弁体外周面とシート内周面が均一に接触するようにシート自身が移動する。この移動を許容するために、シートリング(5)のボルト孔はシート取付ボルト(10)の外径より大径に形成されている。シート取付ボルト(10)はシート押え(7)の外面から外方に突出しない構造となっている。
【0010】
図3を参照して、スペーサ(8)は薄い金属板の如き剛性のシート材料からなり、外周は円形状を有し内周を楕円形状としたドーナツ状の部材である。内周の楕円形状は、シートリング(5)の内周の楕円形状より若干径を大きくした相似形状であり、外周はシートリング(5)の外周径と一致している。図4はシート押え(7)を示し、内外ともに円形のドーナツ形状を有し、スペーサに比して厚肉の構造である。外周径は、シートリング及びスペーサの外周径と一致しており、内周径はスペーサ(8)の内周の楕円長径と一致若しくは若干大きくしている。スペーサ(8)の肉厚は、シート押え(7)に比較して極端に薄く形成されているので、レーザー加工やウォータージェット加工等の加工時間の短い加工方法を採用することが可能となる利点がある。又、シート押え(7)は、内外周共に円形であるため、旋盤での加工が可能となり、加工コストを小さくすることが出来る。シート押え(7)とスペーサ(8)には、複数のボルト孔(11)(12)が穿孔されている。シートリング(5)を押さえるボルト(10)の力は、厚肉のシート押え(7)により力が均一化されて、スペーサ(8)を介してシートリング(5)を押さえることが可能となり、流体によるシートリング(5)の変形をスペーサ(8)で抑えることが出来るようになる。
【0011】
スペーサ(8)は、例えばステンレス鋼板、バネ鋼板、鋼板等で形成し、シート押え(7)は例えばステンレス鋼板、鋼板等で形成する。又、弁の口径を300mmとした場合、スペーサの厚みは2〜5mm好ましくは3mmである。
【0012】
【発明の効果】
この発明によれば、内周を楕円形状に形成した肉厚の薄いスペーサを介してシート押えでシートリングを押さえるようにしてあるので、加工が容易となり加工時間の短い加工方法を採用して低コストで製作可能となる。シート押えは、内外周ともに円形状であるため、旋盤等の方法で加工でき加工コストを小さくすることが出来る。スペーサの内周をシートリング内周の楕円形状と相似形の楕円形状としてあるので、流体の圧力によりシートリングが変形するのをスペーサによって抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るバタフライ弁の断面図
【図2】同バタフライ弁のシートリング取付部の拡大断面図
【図3】スペーサの平面図
【図4】シート押えの平面図
【図5】三重偏心弁の構造を示す概略図
【符号の説明】
(1)弁本体
(2)流体通路
(3)弁体
(4)弁棒
(5)シートリング
(6)弁棒ピン
(7)シート押え
(8)スペーサ
(9)ガスケット
(10)取付ボルト
(11)ボルト孔
(12)ボルト孔
Claims (1)
- 略円筒状の流体通路を貫設した弁本体と、該弁本体内に弁棒で回転自在に軸支された円板状の弁体と、弁本体の内周面に固着され弁体の外周面に密着するシートリングを含み、弁体の中心を弁棒の中心から離して一次偏心させ、次に弁本体の中心からも離して二次偏心させ、更に弁本体と弁体のシール面を構成する円錐形状の中心を弁本体の中心から傾かせて三次偏心させた三重偏心バタフライ弁において、シートリングと弁本体に固着するシート押えとの間に薄い剛性のシートからなるスペーサを介挿し、該スペーサはその内周をシートリングの内周の楕円形状より若干大きな径の相似楕円形に形成し、外周をシートリングの外周径と一致する円形状に形成し、前記シート押えは内外共に円形のドーナツ形状でスペーサに比して肉厚の構造とし、外周径をシートリング及びスペーサの外周径と一致させ、内周径を前記スペーサの内周の楕円長径と一致若しくは若干大きな径とし、該シート押え、スペーサ及びシートリングを、複数のシート取付ボルトにより弁本体に固着するようにしたことを特徴とする偏心形バタフライ弁。
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