JP3740341B2 - 法面、壁面、岸面等の保護緑化構造 - Google Patents
法面、壁面、岸面等の保護緑化構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面、壁面、岸面等の緑化構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
岩盤法面、コンクリート・モルタル吹付法面、擁壁やダム等のコンクリート構造物の壁面等は、景観保全上の問題が多いため、植生による緑化の導入が考えられている。特開平4−213625号公報には、鉄筋格子製の傾斜した前壁部と水平な底壁部とからなる格子枠柵を法面の前方に設置し、格子枠柵の前壁部の後面と底壁部の上面とに緑化用シートを敷き、格子枠柵と法面との間に盛土材を充填し、これらの工程を下から上へ繰り返して多段に構築し、緑化用シートに内蔵等した種子を発芽させて緑化を図るという法面の緑化構造が開示されている。この緑化構造は、急勾配でも施工でき、施工効率が良い等の優れた点を持っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の緑化構造における緑化用シートだけでは、迅速な緑化が難しかった。そこで、本発明者は、格子枠柵を通して現れる緑化用シートに人工土壌等の吹付剤を吹付けてなる吹付層を形成し、迅速な緑化を図ることを試みた。しかし、吹付剤は緑化用シートに単に付着するだけなので、緑化用シートとの結合が弱い。このため、あまり吹付剤の量を多くすると、吹付層の厚さが厚くなって、緑化用シートから剥がれやすくなるという問題がある。
【0004】
また、法面のすぐ前方に側溝がある場合、該側溝に緑化面の枯れ草や、緑化面上方の樹木からの枯れ葉が落下して詰まるという問題がある。
【0005】
本発明の第一の目的は、上記課題を解決し、より多くの吹付剤からなる吹付層を形成することができる法面、壁面、岸面等の保護緑化構造を提供することにある。
【0006】
本発明の第二の目的は、上記課題を解決し、法面のすぐ前方に設けられた側溝を詰まりにくくすることができる法面、壁面、岸面等の保護緑化構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造は、鉄筋格子製の傾斜した前壁部と水平な横壁部とからなる格子枠柵を法面、壁面等の保護緑化対象面の前方に設置し、前記格子枠柵と前記保護緑化対象面との間に盛土材、岩石等の充填材を充填するとともに、前記格子枠柵の前面から人工土壌、種子等を混合した吹付剤を吹付けて吹付層を形成してなる法面、壁面、岸面等の保護緑化構造において、前記格子枠柵の前壁部の前側又は後側に、前記吹付剤を溜めるための前記保護緑化対象面の幅方向へ延びる、前記前壁部が前後方向へ湾曲又は折曲されることにより形成された凹所又は段所を設けたことを特徴としている。
【0008】
ここで、保護緑化対象面は、特に限定されず、次のものを例示できる。
(A1) 法面;岩盤法面、コンクリート・モルタル吹付法面、切土法面、盛土法面等を例示できる。
(A2) 壁面;擁壁やダム等のコンクリート構造物の壁面を例示できる。
(A3) 岸面;河川、人工運河等の水路、池、湖等の岸面を例示でき、岸面の状態は、現地の地山でも、既に構築されたコンクリート護岸でもよい。
これらの保護緑化対象面の水平に対する傾斜角は、特に限定されず、例えば10度位の緩斜面から80度位の急斜面まで対応できる。特に岸面の場合は、15〜60度位が好ましい。
【0009】
充填材としては、特に限定されないが、次のものを例示できる。
(C1) 栗石; 栗石の寸法は、特に限定されず、大型の破砕岩石から2〜75mm程度の礫まで含む。
(C2) 盛土材; 盛土材は土のみでもよいが、岩石が混合された土や、さらにクリンカアッシュ、フライアッシュ、アスファルト廃材等が混合されたものでもよい。盛土材は、施工現場の土が好ましいが、他所から運んだ土でもよい。
(C3) 格子枠柵寄りに充填された栗石と、保護緑化対象面寄りに充填された盛土材とからなる充填材。
【0010】
上記(C1)又は(C3)の栗石に、植生土が混合されることが好ましい。栗石・植生土混合層を植生基盤として働かせるためである。栗石・植生土混合層を作る方法としては、スラリー状にした植生土を栗石に流し込む方法や、水きめ法等を例示できる。植生土の土は、特に限定されない。
【0011】
また、特に岸面に関しては、格子枠柵の前壁部の前側、後側又は前後両側に添設されて充填材及び岸面の流水による洗掘を防ぐ洗掘防止部材を備えるようにすることが好ましい。
【0012】
洗掘防止部材は、特に限定されないが、次のものを例示できる。
(G1) 上記植生土嚢
(G2) 上記止水部材
(G3) 上記緑化用シート
(G4) 金網製かごに岩石を詰めてなる蛇かご
【0013】
前記法面、壁面、岸面等の保護緑化構造は、前記格子枠柵及び前記充填剤が下から上へ積み上げられることにより多段に構築された態様を例示できる。
【0014】
他に設ける凹所又は段所として、特に限定されないが、次のように形成された態様を例示できる。
(1)上下に積まれた前記格子枠柵が互いに前後方向へずらされて設置されることにより、該両格子枠柵の前壁部の境目部分に形成された態様。
【0015】
(3)前記前壁部の前側又は後側に保護緑化対象面の幅方向へ延びる1又は2以上の棒体が配設されることによって形成された態様。棒体としては、特に限定されないが、中実棒や中空パイプのほか、土石、肥料、土壌改良剤、保水剤等を入れた長い袋等を例示できる。中空パイプ体の中には、土石や水等を入れてもよく、また、その内壁面と外壁面とを連通する連通穴を備えた排水性パイプ体とすることもできる。棒体の断面形状としては、特に限定されず、円形、三角形や矩形等の多角形、星形、H字形、T字形、コ字形等を例示できる。また、棒体の材質としては、特に限定されず、木、樹脂、コンクリート、金属等を例示できる。材質を木にするときは、施工現場の付近で伐採された間伐材を使用することが資源の有効利用という観点から好ましいが、他所から運んできた間伐材でもよい。特に限定されないが、棒体の表面に防腐手段を施しておくこともでき、特に棒体の材質を水分で腐りやすいもの(例えば、木や、腐蝕しやすい金属等)にするときに行うことが好ましい。防腐手段としては、特に限定されないが、樹脂テープ又はガラス繊維に樹脂を含浸させてなるガラステープを棒体に巻き付けることや、棒体の表面に樹脂でコーティングすること等を例示できる。
【0016】
(4)前記前壁部の前側又は後側に保護緑化対象面の幅方向へ複数の塊体が配設されることによって形成された態様。
【0017】
前記吹付層の前面に前記保護緑化対象面の幅方向へ延びる、枯れた植物を受け止めるための横壁が設けられた態様を例示できる。
【0019】
前記枯れた植物としては、特に限定されないが、枯れ葉、枯れ枝、枯れ草等を例示できる。
【0020】
前記横壁は、特に限定されないが、通水性又は通気性を備えた態様を例示できる。前記横壁は、前記保護緑化対象面の幅方向へ並べて植え付けられた挿し木によって形成された態様を例示できる。
【0021】
挿し木を植え付ける方法としては、特に限定されないが次の方法を例示できる。
(1)前記格子枠柵及び前記充填剤が下から上へ積み上げられることにより多段に構築された法面、壁面、岸面等の保護緑化構造において、段と段との間に挿し木を差し込んで植え付ける方法。
(2)吹付層、充填剤等に穴を開けるとともに、該穴に挿し木を差し込んで植え付ける方法。
(3)吹付層、充填剤等に穴を開けるとともに、筒壁、半割筒壁又はチャンネル壁を有し、内部に挿し木を植え付けてなる植生部材を前記穴に差し込んで装着する方法。
(4)筒壁、半割筒壁又はチャンネル壁を有し、その先端側が略尖形に形成されるとともに、内部に挿し木を植え付けてなる植生部材を前記先端側から吹付層、充填剤等に打込んだり差込んだりして装着する方法。
【0022】
以上において、植生部材の法面に対する装着角度は、水平乃至鉛直の範囲で決定するのが一般的であるが、水平より手前が下がる角度にしたり、鉛直より法面に平行に近づく角度にしたりすることも可能である。
【0023】
また、植生部材の長さは、伸長方向をどの程度コントロールするかにより異なり、特に限定されないが、100〜1000mmが一般的である。植生部材の内径は、植え付ける緑化用植物の種類により異なり、特に限定されないが、20〜150mmが一般的である。
【0024】
前記筒壁、半割筒壁又はチャンネル壁に複数の透孔が形成されていることが好ましい。ここで、透孔は、植生部材の壁の略全長・全周に対し均一又は不均一に分散するように形成するのが一般的であるが、壁の一部に偏在するように形成することもできる。
【0025】
前記筒壁、半割筒壁又はチャンネル壁が土中で次第に崩壊する材料により形成されていることが好ましい。ここで、「土中で次第に崩壊する材料」としては、紙(数ヵ月〜2年位で腐るものがよい)や、結合剤で固めた土又は砂(数ヵ月〜1年位で分解するものがよい)や、腐蝕しやすい金属又は合金(植物の成長に悪影響を与えないものがよい)や、デンプン系化合物(数ヵ月で腐るものがよい)や、蛋白質系化合物(数ヵ月で腐るものがよい)や、生分解性合成樹脂(数ヵ月で分解するものがよい)等を例示することができる。もっとも、根系があまり太く成長しない緑化用植物を植え付ける場合等には、筒壁等を塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他の崩壊しない材料で形成することもできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
《第一実施形態》
図1及び図2は本発明の第一実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示し、同保護緑化構造は以下の工程で構築されている。なお、岩盤法面1は例えば約60度の急斜面である。
【0027】
[格子枠柵の設置工程] 岩盤法面1の下端前方の用地2に強化シート3を敷き、強化シート3の上に必要数の格子枠柵5を横に並べて設置する。図1に示すように、格子枠柵5は、傾斜した前壁部6と、水平な横壁部としての底壁部7とを備え、製造方法の一例としては、鉄筋を縦横格子状に溶接(具体的にはアーク溶接による溶着)してなる鉄筋格子をその中央部で折曲して形成される。前壁部6の上端と底壁部7の後端との間をフック付き連結棒等で連結してもよい。強化シート3は、特定の素材に限定されず、厚手の不織布、織布、ネット等を例示できる。強化シート3は、底壁部7の後端を越えて岩盤法面1側へ広げられる。15は格子枠柵5の底壁部7を強化シート3に止めるための杭である。格子枠柵5の前壁部6と岩盤法面1との間隔は、特に限定されず、本実施形態では例えば約2000〜5000mmである。
【0028】
本実施形態において使用した格子枠柵5の寸法等は次の通りであるが、例示にすぎず、この寸法等は施工現場に応じて適宜変更されるものである。
前壁部6が底壁部7となす傾斜角: 約60度
前壁部6の傾斜長: 約600mm
底壁部7の奥行: 約600mm
前壁部6及び底壁部7の左右長: 約2600mm
鉄筋の直径: 約10mm
鉄筋格子の格子ピッチ: 100〜300mm
【0029】
[緑化用シート敷設工程] 格子枠柵5の前壁部6の後面と底壁部7の上面とに、目のやや粗い緑化用シート8を敷く。緑化用シート8の上端を少し余らせて、前壁部6の前面に一時的に垂らしておくとよい(図示略)。緑化用シート8は、特定の素材に限定されず、織布、不織布等を例示できる。
【0030】
[盛土材充填工程] 格子枠柵5の前壁部6の後面に敷いた緑化用シート8と岩盤法面1との間に、充填材としての施工現場の土による盛土材9を格子枠柵5の前壁部6の2分の1〜4分の1程度の高さまで充填する。この盛土材9を衝撃ローラー等で転圧して締め固める。以上の作業を二〜四段繰り返して、前壁部6の上端高さ位置まで盛土材9を充填する。余らせておいた前記緑化用シート8の上端を盛土材9の上面に被せる。最上部の鉄筋の端部を後方に折り曲げ、この緑化用シート8の上端を押さえ付けてもよい。これで一段目が形成される。
【0031】
[多段繰り返し工程] 盛土材9の上面に対し、上記の格子枠柵の設置工程、緑化用シート敷設工程、土嚢配設及び盛土材充填工程を行なって、二段目を形成する。このとき、下段側の格子枠柵に対し、上段側の格子枠柵を後方向へずらして設置することにより、該両格子枠柵の前壁部の境目部分に岩盤法面の幅方向へ延びる段所20を形成する。これが、格子枠柵の前側に後述する吹付剤16aを溜めるための段所20である。
【0032】
必要に応じた数だけこの作業を下から上へ繰り返して積み上げれば、所望の複数段に構築することができる。最上段の格子枠柵5では、前壁部6の縦鉄筋の上端を後側下方へ折り曲げて仕上げる(図示略)。
【0033】
[吹付層形成工程等] 前壁部6及び前壁部6を通して現れる緑化用シート8の前面に、人工土壌及び種子を含む吹付剤16aを吹き付けることにより吹付層16を形成する。このとき、段所20には、吹付剤16aが多く溜まり、該段所20における吹付層16の厚さが厚く形成される。ここに溜まった吹付剤16aは、該段所20によって支持されるので、従来とは異なり、吹付層16の厚さが厚くなっても緑化用シート8から剥がれやすくなることはない。なお、図2には、緑化用シート8に内蔵等した種子が発芽して成長したときの緑化植物10を二点鎖線で示している。同図に示すように、段所20から離れた場所に生えた緑化植物10に対し、段所20付近に生えた緑化植物10は、該段所20に溜まった吹付剤16aからより多くの養分を吸収することができるので、よりよく成長するようになる。
【0034】
以上の工法で構築された岩盤法面1の保護緑化構造によれば、格子枠柵5を使用したことにより、▲1▼急勾配でも施工できる、▲2▼施工に重機を必要とせず、人力作業が可能であり、▲3▼施工が簡単で、多くの人手を要しない、▲4▼施工性が良く、工期を短縮できる、▲5▼カーブした岩盤法面1にも容易に対応できる、▲6▼現場の土を盛土材9として利用できる等の多くの効果が得られる。
【0035】
また、種子及び人工土壌を含む吹付層16を吹付形成したことにより、単に緑化用シートに種子を内蔵した場合と比べて、種子の発芽性及び成長性が良く、洋芝等の種子の発芽による1次植生を短期間で達成することができる。その後は、木本植物が成長する。
【0036】
しかも、格子枠柵5の前側に岩盤法面1の幅方向へ延びる、吹付剤16aを溜めるための段所20を設けているので、より多くの吹付剤16aからなる吹付層16を形成することができる。
【0037】
《第二実施形態》
次に、図3は、第二実施形態に係る岩盤法面1の保護緑化構造を示しており、第一実施形態における段所20に代えて、上下に積まれた格子枠柵5の前壁部6の境目部分に岩盤法面1の幅方向へ延びる凹所21を形成した点においてのみ、第一実施形態と相違している。
【0038】
本実施形態の格子枠柵5は、その前壁部6の下端部6aが後方向へ大きい曲率で湾曲されている。第一実施形態とは異なり、本実施形態では上下に積まれた格子枠柵5の前壁部6が互いに面一になるように設置されている。そして、上段の前壁部6の下端部6aの下側(前壁部6の境目部分)には、吹付剤16aを溜めるための凹所21が形成されている。本実施形態によっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
《第三実施形態》
次に、図4は、第三実施形態に係る岩盤法面1の保護緑化構造を示しており、第一実施形態における段所20に代えて、格子枠柵5の前壁部6の前側に岩盤法面1の幅方向へ延びる複数の凹所21を設けた点においてのみ第一実施形態と相違している。
【0040】
本実施形態の格子枠柵5の前壁部6には、その前面に岩盤法面1の幅方向へ延びる複数の棒体としての間伐材30がワイヤ31で結び付けられている。各間伐材30は高さ方向に互いに間隔を置いて配設されており、各間伐材30の間に吹付剤16aを溜めるための凹所21が形成されている。本実施形態によっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
《第四実施形態》
次に、図5は、第四実施形態に係る岩盤法面1の保護緑化構造を示しており、第一実施形態における段所20に代えて、格子枠柵5の前壁部6の後側に岩盤法面1の幅方向へ延びる複数の凹所21を設けた点においてのみ第一実施形態と相違している。
【0042】
本実施形態の格子枠柵5の前壁部6には、その後面に岩盤法面1の幅方向へ延びる複数の棒体としての養分入り袋32が配設されている。袋32には、肥料、土壌改良剤、保水剤等が入れられている。各袋32は高さ方向に互いに間隔を置いて配設されており、各袋32の間に吹付剤16aを溜めるための凹所21が形成されている。本実施形態によっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
《第五実施形態》
次に、図6は、第五実施形態に係る岩盤法面1の保護緑化構造を示しており、第一実施形態における段所20に代えて、上段側の格子枠柵5を前方にずらすことにより、吹付剤16aを溜めるための凹所21を形成した点においてのみ第一実施形態とは相違している。本実施形態によっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
《第六実施形態》
次に、図7及び図8は、第六実施形態に係る岩盤法面1の保護緑化構造を示している。本実施形態は、岩盤法面1のすぐ前方には側溝36が設けられている点と、吹付層16の前面に岩盤法面1の幅方向へ延びる、枯れた植物を33受け止めるための横壁35が設けられている点とにおいてのみ第三実施形態と相違している。なお、図7では便宜上、格子枠柵5の前壁部6に配設された間伐材30の図示を省略している。
【0045】
本実施形態の横壁35は、岩盤法面1の幅方向へ並べて、段と段の間に差し込んで植え付けられた挿し木34によって形成されている。そして、この横壁35は、挿し木34によって形成されているので、通水性を備えており、枯れ葉、枯れ枝、枯れ草等の枯れた植物33を受け止める一方、雨水、湧き水等の水については通過させるようになっている。
【0046】
本実施形態によれば、第三実施形態の効果に加え、横壁35の上方から落下してくる枯れた植物33を横壁35によって受け止めることができる。このため、従来とは異なり、岩盤法面1のすぐ前方に設けられた側溝36が枯れた植物33によって詰まることを防止することができる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0048】
(1)各実施形態において、強化シート3及び/又は緑化用シート8を省略すること。
【0049】
(2)第五実施形態以外の各実施形態では、下段の格子枠柵5の前壁部6に対して上段の格子枠柵5の前壁部6が後側に重なるように配置されているが、第五実施形態のように、下段の格子枠柵5の前壁部6に対して上段の格子枠柵5の前壁部6が前側に重なるように配置することもできる。
【0050】
(3)図9に太線で示すように、格子枠柵5を構成する一部(例えば特に強度が必要な部分)の鉄筋に、他の鉄筋より太いものを使用すること。これにより、鉄筋の一部が充填材の圧力によって正面側に湾曲変形する現象を防止することができる。
【0051】
(4)第三、第四又は第六実施形態において、前壁部6の前側又は後側に、棒体30,32に代えて、岩盤法面1の幅方向へ複数の塊体を配設することによって凹所又は段所を形成すること。
【0052】
(5)第四実施形態において、前壁部6の後面に代えて、緑化用シート8の前面に養分入り袋32を配設すること。
【0053】
(6)第三又は第六実施形態において、間伐材30の表面に防腐手段を施すこと。防腐手段としては、樹脂テープ又はガラス繊維に樹脂を含浸させてなるガラステープを間伐材30に巻き付けることや、間伐材30の表面に樹脂でコーティングすること等を例示できる。
【0054】
(7)第六実施形態において、壁35の挿し木34を植え付ける方法を変更すること。特に限定されないが、次の方法を例示できる。
(a)吹付層16、盛土材9等に穴を開けるとともに、該穴に挿し木34を差し込んで植え付ける方法。
(b)吹付層16、盛土材9等に穴を開けるとともに、筒壁、半割筒壁又はチャンネル壁を有し、内部に挿し木を植え付けてなる植生部材を前記穴に差し込んで装着する方法。
(c)図10に示すように筒壁41(半割筒壁又はチャンネル壁とすることもできる。)を有し、その先端側41aが略尖形に形成されるとともに、内部に挿し木34を植え付けてなる植生部材40を先端側41aから吹付層16、盛土材9等に打込んだり差込んだりして装着する方法。なお、植生部材40の筒壁41には略全長・全周にわたって分散する多数の透孔42が形成されている。この透孔42は省略することもできる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜6の発明に係る法面、壁面、岸面等の保護緑化構造によれば、より多くの吹付剤からなる吹付層を形成することができる。
【0056】
さらに、請求項4〜6の発明に係る法面、壁面、岸面等の保護緑化構造によれば、法面のすぐ前方に設けられた側溝を詰まりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す斜視図である。
【図2】同保護緑化構造の縦断面図である。
【図3】本発明を具体化した第二実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明を具体化した第三実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す縦断面図である。
【図5】本発明を具体化した第四実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す縦断面図である。
【図6】本発明を具体化した第五実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す縦断面図である。
【図7】本発明を具体化した第六実施形態に係る岩盤法面の保護緑化構造を示す斜視図である。
【図8】同保護緑化構造の縦断面図である。
【図9】各実施形態における格子枠柵の変更例の斜視図である。
【図10】第六実施形態における格子枠柵の変更例の斜視図である。
【符号の説明】
1 岩盤法面
5 格子枠柵
6 前壁部
6a 下端部
7 横壁部としての底壁部
9 盛土材
10 緑化植物
16 吹付層
16a 吹付剤
20 段所
21 凹所
30 棒体としての間伐材
32 棒体としての養分入り袋
34 挿し木
35 横壁
36 側溝
Claims (6)
- 鉄筋格子製の傾斜した前壁部と水平な横壁部とからなる格子枠柵を法面、壁面等の保護緑化対象面の前方に設置し、前記格子枠柵と前記保護緑化対象面との間に盛土材、岩石等の充填材を充填するとともに、前記格子枠柵の前面から人工土壌、種子等を混合した吹付剤を吹付けて吹付層を形成してなる法面、壁面、岸面等の保護緑化構造において、
前記格子枠柵の前壁部の前側又は後側に、前記吹付剤を溜めるための前記保護緑化対象面の幅方向へ延びる、前記前壁部が前後方向へ湾曲又は折曲されることにより形成された凹所又は段所を設けたことを特徴とする法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。 - 前記格子枠柵及び前記充填材が下から上へ積み上げられることにより多段に構築された請求項1記載の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。
- 上下に積まれた前記格子枠柵が互いに前後方向へずらされて設置されることにより、該両格子枠柵の前壁部の境目部分に形成された凹所又は段所を設けた請求項2記載の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。
- 前記吹付層の前面に前記保護緑化対象面の幅方向へ延びる、枯れた植物を受け止めるための横壁が設けられた請求項1又は2記載の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。
- 前記横壁は、通水性を備えた請求項4記載の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。
- 前記横壁は、前記保護緑化対象面の幅方向へ並べて植え付けられた挿し木によって形成された請求項4又は5記載の法面、壁面、岸面等の保護緑化構造。
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