JP3740152B2 - 微細ゲル粒子の製造方法および製造装置 - Google Patents
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斯かる模擬血液においては、前記アルギン酸ゲル粒子が、血液の成分である赤血球等と同程度の粒径、即ち、平均粒径20μm以下、好ましくは1〜10μmとすることが必要である。
そこで、該特許文献1では、このようなアルギン酸ゲル粒子を得る方法として、図13に示すように、2つのノズル100、100から噴霧されるアルギン酸塩水溶液A’を衝突させ、そのアルギン酸塩水溶液の液滴をゲル化剤水溶液B’の液面に落下させてゲル化させるという方法が採用されている。
斯かる方法によれば、2つのノズルから噴霧される高速の液滴同士が衝突して分裂するため、アルギン酸塩溶液の微細な霧滴を得ることができる。
ゲル化剤溶液を霧状とすることにより、該ゲル化剤溶液の単位体積当たりの表面積が増加し、且つ、霧状となった高分子溶液との接触頻度も増すこととなる。よって、霧状の高分子溶液と霧状のゲル化剤溶液とが速やかに接触し、霧状の高分子溶液は、その微小な滴径のままゲル化されることとなるため、非常に微細な微細ゲル粒子を得ることができる。
高分子溶液としては、例えばアルギン酸塩溶液を好適に使用でき、アルギン酸をゲル化させることによってアルギン酸ゲル粒子を得ることができる。
こうして得られたアルギン酸ゲル粒子は粒径が1〜10μmで、均一な粒径分布を有するものとなり、模擬血液として有効に使用することができる。
斯かる方法によれば、粒径が0.1〜2μmという極めて微細な、且つ均一な粒径の微細ゲル粒子を効率的に得ることができる。
斯かる構成の製造装置によれば、滴径1〜10μmの霧滴からなる霧状となった高分子溶液と、滴径10〜100μmの霧滴からなる霧状となったゲル化剤溶液とを接触させることにより、微細ゲル粒子を効率的に得ることができる。
また、製造された微細ゲル粒子は、例えば、模擬血液を構成するための模擬血球として有効に利用することができる。
図1は、微細ゲル粒子の製造装置の第一実施形態を示した概念図である。図1に示す如く、本実施形態の微細ゲル粒子の製造装置1は、高分子溶液を霧状にするための第一霧化手段を上部に備えた高分子溶液霧化室10と、ゲル化剤溶液を霧状にするための第二霧化手段を上部に備えたゲル化剤溶液霧化室20とを備え、該高分子溶液霧化室10とゲル化剤溶液霧化室20とが筒状の案内ダクト30を介して流通自在に接続されて構成されている。
より具体的には、高分子溶液タンク12内の高分子溶液Aとしてのアルギン酸塩溶液は、高圧ボンベ13から供給される不活性ガス(例えば、窒素ガス)によって加圧されており、前記エアインジェクションノズル11へ至る経路に配された圧力計18およびバルブ16を用いて圧力調整自在に供給されるよう構成されている。また、高圧ボンベ14に貯留された不活性ガス(例えば、窒素ガス)は、前記エアインジェクションノズル11へ至る経路に配された圧力計17およびバルブ15を用いて圧力調整自在に供給されるよう構成されている。
より具体的には、ゲル化剤溶液タンク22内のゲル化剤溶液Bは、高圧ボンベ23から供給される不活性ガス(例えば、窒素ガス)によって加圧されており、前記ソリッドインジェクションノズル21へ至る経路に配された圧力計25およびバルブ24を用いてで圧力調整自在に供給されるよう構成されている。
該高分子溶液Aは、アルギン酸ナトリウム水溶液に限定されず、ゲル化剤の作用によってゲル化する高分子を含む溶液であれば、製造される微細ゲル粒子の用途に応じて種々のものを使用することができる。
斯かる高分子としては、例えば、ビニル系重合体やアルギン酸塩が挙げられる。ビニル系重合体としては、例えば、ポリアクリル酸およびその塩等が挙げられ、アルギン酸アルカリ金属塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
特に、得られた微細ゲル粒子を模擬血液として使用する場合には、その微粒子を含む水溶液の粘度特性や流動特性のみならず、該微細ゲル粒子自体の変形特性もが血液に極めて近似した性状を備えていることからアルギン酸ナトリウムが好適に使用できる。アルギン酸ゲル粒子を含む水溶液は、血液に関わる各種機器の研究開発のための模擬血液として、有効に利用できる。
例えば、前記高分子がポリアクリル酸又はその塩である場合には、これをゲル化させるゲル化剤として、2価以上の金属塩を使用することができ、具体的にはこのような金属としてマグネシウム、カルシウム、銅等が挙げられ、その塩としては塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸銅等を使用できる。
また、前記高分子がアルギン酸塩である場合には、これをゲル化させるゲル化剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛等を使用することができる。
特に、得られた微粒子を模擬血液の成分として使用する場合には、生体にも無害であるという観点からカルシウムイオン、バリウムイオンの何れかを含むものを好適に使用することができる。
さらに、医療用の超音波造影剤や医療機器校正用の試験液として使用するためのアルギン酸ゲル粒子を製造する場合には、滴径1〜10μmの霧滴とすることが好ましい。
その後、濾過等の公知の方法によってゲル化剤溶液Bと分離すれば、アルギン酸ゲル粒子を単独で得ることもできる。
よって、噴霧するアルギン酸塩溶液の霧滴の滴径を調節することにより、模擬赤血球や模擬血小板などのような用途に応じた粒径のアルギン酸ゲル粒子を製造することが可能となる。
図2は、微細ゲル粒子の製造装置の第二実施形態を示した概念図である。図2に示す如く、本実施形態の微細ゲル粒子の製造装置50は、高分子溶液Aとしてのアルギン酸塩溶液を噴霧するための第一霧化手段を備えた高分子溶液霧化室60と、ゲル化剤溶液Bを霧状にするための第二霧化手段を備えたゲル化剤溶液霧化室70とを備え、ゲル化剤溶液霧化室70で作成されたゲル化剤溶液Bを、前記高分子溶液霧化室60へ誘導するように構成されている。
具体的には、本実施形態における第一霧化手段は、図2に示す如く、高分子溶液Aを供給するための細いニードル型ノズル61と、該ニードル型ノズル61の噴出方向前方に該ニードル型ノズル61と離間させて設置した容器62と、前記ニードル型ノズル61と前記容器62との間に設置したワッシャー形電極63とを備えて構成されている。また、前記ニードル型ノズル61には直流高圧電源64から高電圧が印加されように構成され、容器62およびワッシャー形電極63はアースされた状態で備えられている。
さらに、ニードル型ノズル61には、高分子溶液供給装置65から高分子溶液Aとしてのアルギン酸ナトリウム溶液が一定速度で供給されるように構成されている。
このような場合には、線状となって流下する高分子溶液A’が電場の作用によって分裂され、例えば、0.1〜2μmという非常に微細な、しかも滴径の均一な霧滴を発生させることができる。
このような不活性なガスを高分子溶液霧化室60に充満させることにより、前記ニードル型ノズル61からのコロナ放電の発生を防止し、電場を安定させることができ、高分子溶液を微細がつ均一な粒径の霧滴とすることができる。
不活性なガスとしては、炭酸ガス、窒素ガス等を好適に使用できる。
超音波ネブライザー71を用いてゲル化剤溶液Bを霧化させた場合、通常、1〜10μm程度の滴径の霧滴を発生させることができる。
具体的には、前記ニードル型ノズル61と容器62との間を、前記第二霧化室から導かれたゲル化剤溶液Aの霧滴が横方向へ通過するように構成されており、言い換えると、前記ニードル型ノズル61から容器62へと垂直方向に落下する高分子溶液Aの霧滴に対して、前記第二霧化室70から導かれたゲル化剤溶液の霧滴が横方向から衝突するように構成されている。
これにより、ニードル型ノズル61から容器62へと落下するアルギン酸ナトリウム溶液の霧滴は、塩化カルシウム溶液の霧滴と接触してゲル化され、アルギン酸ゲル粒子が生成されることとなる。ゲル化したアルギン酸ゲル粒子は、ゲル化剤溶液と共に沈降するため、容器62上で捕集することができる。
また、濾過等の公知の方法によってゲル化剤溶液Bと分離すれば、アルギン酸ゲル粒子を単独で得ることもできる。
前記第一実施形態で説明した微細ゲル粒子の製造装置を使用し、濃度が2.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を滴径1〜5μmとなるように2流体型エアインジェクションノズル(藤崎電機(株)製、商品名「2流体型ペンシルノズル」)を用いて噴霧し、一方、濃度が30重量%の塩化カルシウム水溶液を滴径10〜100μmとなるように1流体型ソリッドインジェクションノズル(株式会社いけうち製、商品名「1流体型スプレーノズル」)を用いて噴霧し、アルギン酸ゲル粒子を製造した。製造されたアルギン酸ゲル粒子の顕微鏡写真および粒径分布図を図4および図5に示す。
濃度が1.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にしてアルギン酸ゲル粒子を製造した。製造されたアルギン酸ゲル粒子の顕微鏡写真および粒径分布図を図6および図7に示す。
また、実施例1と実施例2とを比較すると、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を2重量%とした実施例1の方が、該濃度を1重量%とした実施例2よりも一層粒径分布の狭いアルギン酸ゲル粒子が得られていることが判る。
さらに、粒子の形状を観察したところ、いずれの実施例においてもアルギン酸ゲル粒子の形状は、極めて真球に近いものであることが認められた。
前記第二実施形態で説明した微細ゲル粒子の製造装置を使用して微細ゲル粒子を作成した。高分子溶液Aとしては、濃度が1.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を用い、ゲル化剤溶液Bとしては濃度が5重量%の塩化カルシウム水溶液を用いた。
また、第一霧化手段としては、ニードル型ノズル61としてステンレス鋼製でノズル先端の口径が0.1mmのもの、容器62としてステンレス鋼製で直径70mmのもの、ワッシャー形電極63として内径5.6mm、外径9.8mmのものをそれぞれ使用し、ノズル61先端と容器62上縁との距離を3mmに設定した。そして、ノズル61に5.0KVの直流電圧を印加した状態で、ノズル61先端から流量0.33ml/sでアルギン酸ナトリウム溶液を流下させた。一方、第二霧化手段としては、超音波ネブライザー
(オムロン社製、NE−U07)を用い、前記塩化カルシウム水溶液を霧化させた。そして、該塩化カルシウム水溶液の霧滴をニードル型ノズル61と容器62との間に向けて送り込み、アルギン酸の微細ゲル粒子を作成した。霧化されたアルギン酸ナトリウム溶液の粒度分布を図8に、得られた粒子の顕微鏡写真および粒度分布を図9および図10にそれぞれ示す。
ゲル化剤溶液として30重量%の塩化カルシウム水溶液を用い、第二霧化手段として実施例1に示した1流体型ソリッドインジェクションノズル(株式会社いけうち製、商品名「1流体型スプレーノズル」)を用いた以外は、実施例3と同様にしてアルギン酸の微細ゲル粒子を作成した。
得られた粒子の顕微鏡写真および粒度分布を図11および図12にそれぞれ示す。
尚、図8、10、12に示した粒度分布においては、粒径約0.5μm以下の粒子が存在しないように見えるが、これは光学機器の測定限界(可視光線の波長の下限)に起因するものと思われ、実際には少数ながら粒子が存在しているものと推定される。
10、60 … 高分子溶液霧化室
11 … エアインジェクションノズル
20、70 … ゲル化剤溶液霧化室
21 … ソリッドインジェクションノズル
30、80 … 案内ダクト
61 … ニードル型ノズル
62 … 容器
63 … ワッシャー形電極
A … 高分子溶液
B … ゲル化剤溶液
Claims (8)
- 滴径1〜10μmの霧滴からなる霧状の高分子溶液と、滴径10〜100μmの霧滴からなる霧状のゲル化剤溶液とを接触させ、前記高分子をゲル化させることを特徴とする微細ゲル粒子の製造方法。
- 前記高分子溶液としてアルギン酸塩溶液を使用し、アルギン酸をゲル化させてアルギン酸ゲル粒子を製造することを特徴とする請求項1記載の微細ゲル粒子の製造方法。
- 前記アルギン酸塩溶液の濃度を、0.5〜3.0重量%とすることを特徴とする請求項2記載の微細ゲル粒子の製造方法。
- 滴径0.1〜2μmの霧滴からなる霧状の高分子溶液と、霧状のゲル化剤溶液とを接触させ、前記高分子をゲル化させることを特徴とする微細ゲル粒子の製造方法。
- 電気流体力学的噴霧法により、前記霧状の高分子溶液を作成することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の微細ゲル粒子の製造方法。
- 前記電気流体力学的噴霧法において、高分子溶液が供給されたニードル型ノズルの先端にコーンジェットが形成されるように電圧を印加し、微粒化された霧滴を発生させることを特徴とする請求項5に記載の微細ゲル粒子の製造方法。
- 高分子溶液を滴径1〜10μmの霧滴からなる霧状にする第一霧化手段と、ゲル化剤溶液を滴径10〜100μmの霧滴からなる霧状にする第二霧化手段とを備え、前記第一霧化手段によって滴径1〜10μmの霧滴からなる霧状にされた高分子溶液と、前記第二霧化手段によって滴径10〜100μmの霧滴からなる霧状にされたゲル化剤溶液とを接触させるための誘導手段とを備えたことを特徴とする微細ゲル粒子の製造装置。
- 前記第一霧化手段が、電気流体力学的噴霧法によるものであることを特徴とする請求項7記載の微細ゲル粒子の製造装置。
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