JP3740059B2 - 割裂試験装置及び割裂試験方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、アスファルト混合物やコンクリート等の引張強度及びひずみを間接的に計測するための割裂試験装置及び割裂試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アスファルト混合物やコンクリート等の引張強度及びひずみを計測する際に、直接引張試験を行うことが困難な場合には、円柱供試体S’を用いた割裂試験により間接的に引張強度の計測を行っていた(JIS A 1113及びJIS A 1132)。この試験方法は、圧縮試験に使用する円柱供試体S’を、試験装置の載荷板15’の間に中心軸を水平にして置き、直径の鉛直方向に沿って割裂して破壊が生じるまで荷重を与えるものであり(図4参照)、均一な材料からなる部材や室内作成の供試体については、供試体の作成や切り出しを比較的簡易に行うことができるため、頻繁に行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際の施工現場における複数の層を有する既設舗装H1,H2等の層間(図5(a)参照)の付着強度や、施工ジョイントJ2,J3等(図5(b),(c)参照)の付着強度を計測するためには、供試体の整形及び切り出し(以下、「整形等」という)に多くの労力を必要とする。
例えば、上下層H1,H2の付着面J1や、施工ジョイント部J2,J3を直径とした供試体を採取するためには、部分的に舗装を切り出し、境界面と直径を一致させた状態で、円柱供試体S1’〜S3’を切り出さなければならなかった。
【0004】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、円柱供試体を用いた割裂試験と同様の試験結果を得ることができる、供試体の整形が容易な割裂試験方法及び割裂試験装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の割裂試験装置は、直方体供試体に荷重を載荷するための載荷手段と、前記直方体供試体を支持するための供試体支持手段と、前記供試体支持手段を載置するための台座とを有する割裂試験装置であって、前記供試体支持手段は、前記直方体供試体の対峙する側面を挟持するための一対の挟着部材と、前記一対の挟着部材と直交する方向であり、前記直方体供試体の底面において直線又は一定幅の細長面で接する支持部とを備え、また、前記載荷手段は、前記直方体供試体の上面において直線又は一定幅の細長面で接する載荷部を備えるとともに、前記支持部の直線又は細長面の軸線方向と、前記載荷部の直線又は細長面の軸線方向とが上面視で一致するように、前記支持部と前記載荷部が対置して設けられていることを特徴としている。
【0006】
従って、本発明によれば、支持部の直線又は細長面の軸線方向と、載荷部の直線又は細長面の軸線方向とが上面視で一致するように、前記支持部と前記載荷部が対置して設けられていることから、直方体供試体を使用して、割裂試験に必要となる載荷条件の下で、支持部の鉛直上方から効果的に荷重の載荷を行うことができる。
また、前記供試体支持手段は、直方体供試体の対峙する側面を挟持するための一対の挟着部材を備えることから、当該直方体供試体の側方への移動を拘束することが可能となり、荷重の載荷を効果的に補助することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の割裂試験装置において、前記挟着部材に、前記載荷部の移動を案内するためのガイド部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
従って、本発明によれば、挟着部材に、載荷部の移動を案内するためのガイド部が形成されていることから、当該ガイド部により載荷部が偏心することなく、直方体供試体に載荷することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の割裂試験装置において、前記支持部の側方に、前記直方体供試体を載置するための載置部材が設けられていることを特徴としている。
ここで、載置部材は、その上部に直方体供試体を安定的に載置するために設けるものであり、軟質材料から形成されていることが好ましい。また、載置部材は、支持部の側方の全域に設けるものであっても、或いは、側方の一部に設けるものであってもよい。
【0010】
従って、本発明によれば、支持部の側方に直方体供試体の載置部材を設けたことにより、安定的に直方体供試体を支持した状態で割裂試験を実施することができる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の割裂試験装置を使用した割裂試験方法であって、前記直方体供試体の対峙する側面が前記挟着部材に挟持されるように前記直方体供試体を前記供試体支持手段に設置した後、前記載荷手段により、一定の変位速度で前記直方体供試体の上面に載荷し、最大荷重を計測することを特徴としている。
【0012】
従って、本発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の割裂試験装置を使用することにより、直方体供試体を使用した割裂試験を行うことが可能となる。
なお、本発明の割裂試験方法によれば、供試体の整形等が容易な直方体供試体を用いて、円柱供試体を使用した割裂試験方法と略同様の試験結果を得ることができるため、割裂試験を容易に行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、左右方向とは、図1に示す割裂試験装置の正面図における左右方向を意味する。また、直方体供試体Kの幅とは、図2における上方向の長さ(符号d)であり、高さとは、底辺の長辺方向の長さ(符号h)をいう(ここで、底辺の短辺方向の長さ(符号w)と前記幅dとの関係はd≦wである)。
【0014】
図1及び図2に示すように、本発明の割裂試験装置Kは、載荷装置10(載荷手段)、供試体支持部材20(供試体支持手段)、台座30及び支持箱体35を主要部として構成されている。
支持箱体35は、前面部が開口されている箱体である。この支持箱体35を形成する上板35aの中央部には載荷装置10を構成する昇降シリンダ11が固設されており、そのロッド12は当該上板35aを貫通しており、上下方向に移動可能となっている。
【0015】
載荷装置10は直方体供試体Sに荷重を載荷するための装置であり、前記昇降シリンダ11と当該昇降シリンダ11のロッド12の先端部が取り付けられている押圧体13と、当該押圧体13の押圧力を支持棒14を介して伝達するための当接板15(載荷部)と、から構成されている。
当接板15は、直方体供試体Sの上面部に当接して荷重を加えるための部材であり、正面視で押圧体13の中央部の下面に形成されている凹部13aに遊挿され、支持棒14により支持されている。また、当接板15は、直方体供試体Sの全長に渡って荷重を載荷するために、当該直方体供試体Sの高さ(長さ)に形成されている。
【0016】
さらに、直方体供試体Sに載荷する荷重を線荷重とするために、当接板15の先端部は、直方体供試体Sの上面において直線で接する構造となっており、全長にわたり正面視で曲率を有する形状(以下、「上部曲率部15a」という)に形成されている。
上部曲率部15aは、円弧面の一部を形成する形状であり、その直径は使用する直方体供試体Sの幅(d)に対して(d/3)を最大値として、最小値5mmの範囲で定めると好適である。なお、上部曲率部15aは、直方体供試体Sの上面において一定幅の細長面で接する構造でもよいため、若干の載荷幅(0mm〜10mm)を有していてもよい。また、前記上部曲率部15aに代えて、くさび形状に形成してもよい。
【0017】
供試体支持部材20は、直方体供試体Sの高さ(長さ)方向の移動を拘束するために、直方体供試体Sの対峙する側面S1,S2を挟持するための部材であり、前後の一対の挟着部材21,22と、当該挟着部材21,22と直交する方向であり、その下部に横設されている下板23と、当該下板23の上部における幅方向に突出して形成されている下部曲率部23a(支持部)とから構成されている。
下部曲率部23aは、直方体供試体Sの下面を支持し、その上面において直線で接する構造とするために、上部曲率部15aと同様に、全長にわたり正面視で曲率を有する形状に形成されている(形状の制限等は、上部曲率部15aと同様)。なお、下部曲率部23aは、直方体供試体Sの下面において一定幅の細長面で接する構造でもよい。
【0018】
また、供試体支持部材20における下部曲率部23aの両側面部の全域には、ポリ塩化ビニル系のシール材(軟質材料)で形成されている、細長矩形形状の載置部材25が設けられている。この載置部材25は、下部曲率部23aの突出高さと略同一高さで形成されているが、上部曲率部15aと下部曲率部23aとの間に作用する荷重が偏心することなく、線荷重の状態で直方体供試体Sに載荷することを妨げないように形成する必要がある。
さらに、挟着部材21,22は、間隔を有して立設している2本の板状部材21aと21b,22aと22bから構成されており、その間隙部は、当接板15の端部がその内部を移動可能な間隔で設けられており、当該当接板15の移動を案内するためのガイド部21c,22cの役割を果たしている。なお、下部曲率部23aは、前記間隙部の最下部に設けられている。
【0019】
ここで、上部曲率面15aにおける直方体供試体Sの当接部から形成される直線方向と下部曲率面23aにおける直方体供試体Sの当接部から形成される直線方向とが上面視で一致する(鉛直方向で同一軸上に位置している)ように、当接板15と供試体支持部材20の下板23とが対置して設けられている。なお、上部曲率面15a又は下部曲率面23が一定の載荷幅を有している場合には、当該載荷幅を形成している細長面の軸線方向とが上面視で一致するように、設けられていることが必要となる。
【0020】
このように構成されているため、昇降シリンダ11のロッド12が昇降することにより、当接板15が上下し、ガイド部21c,22cにより当該当接板15が偏心することなく、直方体供試体Sに載荷することができるようになっている。
さらに、供試体支持部材20における下板23の下部には台座30が設けられており、さらに当該台座30は支柱31により支持されている。
【0021】
なお、昇降シリンダ11は、毎分1cm以上の垂直変位(載荷速度)が得られる装置であることが好ましく、また、必要により、荷重検出装置(ロードセル等)及び、直方体供試体Sの変位検出装置(鉛直変位及び水平変位が検出可能な装置)が付設されていてもよい。また、アスファルト混合物のように試験温度により、強度特性が変化する供試体の試験を行う場合には、試験温度を一定にコントロール可能な恒温槽内に、前記割裂試験装置Kを設けるか、或いは、試験室を一定温度にすることができる温度調節装置を設置することが必要となる。この恒温槽は、温度を0℃以下に設定可能であり、供試体の温度を設定温度±0.1℃単位で調節して、試験を行うことができることが好ましい。
【0022】
このように、本発明の割裂試験装置Kによれば、上部曲率面15aにおける直方体供試体Sの当接部から形成される直線方向と下部曲率面23aにおける直方体供試体Sの当接部から形成される直線方向とが上面視で一致する(鉛直方向で同一軸上に位置している)ように、当接板15と下板23とが対置して設けられていることから、割裂試験に必要となる載荷条件の下で、直方体供試体Sの鉛直上方から効果的に荷重の載荷を行うことができる。
また、前記供試体支持手段20は、直方体供試体Sの対峙する側面を挟持するための一対の挟着部材21,22を備えることから、当該直方体供試体Sの側方への移動を拘束することが可能となり、荷重の載荷を効果的に補助することができる。なお、直方体供試体Sは挟持部材21,22により、前後方向の移動は拘束されているが、左右方向の移動は拘束されていない状態となる。
【0023】
さらに、挟着部材21,22に、当接板の移動を案内するためのガイド部21c,22cが形成されていることから、当該ガイド部21c,22cにより当接板15が偏心することなく、直方体供試体Sに載荷することができる。
また、台座30が軟質材料で形成されていることから、直方体供試体Sを供試体支持部材20に設置した場合に、当該台座30が適切に変形することにより安定的に直方体供試体Sを支持することができる。
また、下部曲率面23aの側方両側に、軟質材料で形成されている直方体供試体Sの載置部材25を設けたことにより、安定的に直方体供試体Kを支持することができる。
【0024】
[割裂試験方法]
以下に、前記割裂試験装置K及び直方体供試体Sを使用した割裂試験方法について説明する。
【0025】
(1)直方体供試体の作成
室内作成した直方体供試体S、又は、現地から採取して成形した直方体供試体Sを使用する。供試体寸法は、一辺が30mm〜150mmに成形する。
【0026】
(2)直方体供試体寸法の測定
作成した直方体供試体Sの寸法を0.1mm単位まで測定する。
【0027】
(3)直方体供試体の設置
直方体供試体Sの対峙する側面S1,S2を、挟着部材21,22に挟持させるとともに、その上面部及び下面部を長手方向に2等分する直線S3と、上部曲率部15aと下部曲率部23aが当接するように、供試体支持部材20に設置する。
【0028】
(4)載荷
載荷装置10のロッド12を伸張させ、当接板15を介して衝撃を与えないように、一定の変位速度で直方体供試体Sの上面に載荷し、直方体供試体Sが破壊するまでに載荷される最大荷重を計測する。
【0029】
なお、低温で試験を行う際には、直方体供試体Sを養生槽に入れ、試験温度で20時間以上養生するとともに、恒温槽内で割裂試験を行う。
【0030】
(5)結果の整理
下式により、引張強さ(σ)を算出する。
σ=2P/(πhd)
σ:引張強さ(N/mm2)
P:最大荷重(N)
d:供試体幅
h:供試体高さ
【0031】
後記するように、本発明の割裂試験方法によれば、供試体の整形等が容易な直方体供試体Sを用いて、円柱供試体S’を使用した割裂試験方法と略同様の試験結果を得ることができるため、割裂試験を容易に行うことができる。
【0032】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。前記実施形態では、ガイド部21c,22cは供試体支持部材20の挟着部材21,22の間隙部がその役割を果たしているが、別途、ガイド部材を備えるような構成であってもよい。
また、載置部材25は所定の間隔で、下板23の上面に部分的に設ける等としてもよい。
【0033】
【実施例】
本発明の割裂試験装置K及び直方体供試体Sを用いて、割裂試験を行った結果について示す。
使用した直方体供試体Sは、幅5cm×長さ5cm×高さ10cmであり、試験温度はマイナス10(℃)、荷重の載荷速度は50(mm/分)である。
一方、直方体供試体Sと対比するために、従来使用されている円柱供試体S’(直径10cm×高さ20cm)を使用して、同一の条件で割裂試験を行った。
図3はその結果を示したものであり、縦軸は引張強度、横軸は載荷中心Oからの幅方向Xの距離(図1参照)を示している。これによると、直方体供試体Sと円柱供試体S’では、ほぼ同一の試験結果が得られることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
本発明の割裂試験方法によれば、直方体供試体を使用することにより、円柱供試体と同様な試験結果を得ることができるため、非常に簡便な割裂試験方法を提供することができる。
また、本発明の割裂試験装置によれば、容易に本発明の割裂試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の割裂試験装置を示す正面図である。
【図2】本発明の割裂試験装置を示す要部を拡大した斜視図である。
【図3】本発明の割裂試験方法と従来の割裂試験方法との試験結果の比較を示すグラフである。
【図4】従来の割裂試験方法を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)ともに、既設舗装から円形供試体を作成する場合を示す断面図である。
【符号の説明】
K 割裂試験装置
S 直方体供試体
10 載荷装置(載荷手段)
11 昇降シリンダ
13 押圧体
15 当接板(載荷部)
15a 上部曲率部
20 供試体支持部材(供試体支持手段)
21,22 挟着部材
21a,21b,22a,22b 板状部材
21c,22c ガイド部
23 下板
23a 下部曲率部(支持部)
25 載置部材
30 台座
Claims (4)
- 直方体供試体に荷重を載荷するための載荷手段と、前記直方体供試体を支持するための供試体支持手段とを有する割裂試験装置であって、
前記供試体支持手段は、前記直方体供試体の対峙する側面を挟持するための一対の挟着部材と、
前記一対の挟着部材と直交する方向であり、前記直方体供試体の底面において直線又は一定幅の細長面で接する支持部とを備え、また、
前記載荷手段は、前記直方体供試体の上面において直線又は一定幅の細長面で接する載荷部を備えるとともに、
前記支持部の直線方向又は細長面の軸線方向と、前記載荷部の直線方向又は細長面の軸線方向とが上面視で一致するように、前記支持部と前記載荷部が対置して設けられていることを特徴とする割裂試験装置。 - 前記挟着部材に、前記載荷部の移動を案内するためのガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の割裂試験装置。
- 前記支持部の側方に、前記直方体供試体を載置するための載置部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の割裂試験装置。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の割裂試験装置を使用し、
対峙する側面が前記挟着部材に挟持されるように前記直方体供試体を前記供試体支持手段に設置した後、
前記載荷手段により、一定の変位速度で前記直方体供試体の上面に載荷し、最大荷重を計測することを特徴とする割裂試験方法。
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