JP3738965B2 - 漆精製装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、漆精製装置にかかり、特に少量の原料生漆を精製処理する漆精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、漆の木から採取される樹液である漆液は、掻き取った後にろ過して夾雑物を除去したままの「精製生漆」として使用されたり、あるいは、加熱脱水加工された「脱水精製漆」として使用される。この場合、前者の「精製生漆」は、主に摺漆用、下地塗料、あるいは、接着剤として使用され、後者の「脱水精製漆」は、中塗り、上塗りなど塗料として使用される。そして、漆の大部分は、後者の「脱水精製漆」として使用されるが、塗装におけるレベリング性の向上、塗膜の光沢付与のため、伝統的な精製法である「なやし」、「くろめ」という精製処理が施される。以下、漆液の精製工程のうち、主となる「なやし」及び「くろめ」の内容を説明する。
【0003】
「なやし」とは、生漆を木製の浅い容器に入れて、摺り込むように攪拌する作業である。この「なやし」により、漆液の成分が均一に分散されると共に、乳化している粒子が細かくされる。従って、当該漆液が萎えて柔らかくなり、すなわち、流展性が良くなり、塗膜の艶がでてくるようになる。但し、上記攪拌時に摺り込みが強すぎると、水を含んだゴム質が膨潤して増粘し、かえって質の悪い漆になってしまう。
【0004】
上記「なやし」に続いて、「くろめ」作業が行われる。「くろめ」は、同一容器の上に炭火、電熱器、赤外線ランプ等をつるして、表面積を広げるよう攪拌して、当該漆液を加熱脱水する作業である。この「くろめ」により、漆液の水分がゆっくりと蒸発して次第に透明になる。そして、水分を約3%残して作業を終了する。
【0005】
このようにすることにより、主要成分のウルシオールとゴム質(多糖)、含窒素物(糖蛋白)及び少量のラッカーゼ酵素と水分によって構成される油中水滴型エマルションである上記漆液は、ウルシオールがラッカーゼ酵素によって酸化されて重合する。そして、粘度、乾燥性、光沢、レベリング性の優れた塗装用の漆が精製される。これら精製漆は、木製のお椀などに塗装され、漆器が製造される。
【0006】
そして、従来より上記漆の精製は、図6に示す装置により行われている。この漆精製装置は、漆液を入れる円形の木製容器101と、この容器101を支持する支持台102と、容器101の中心を軸に回転する攪拌羽根103と、この攪拌羽根103に回転力を伝達する軸部材104と、この軸部材104を容器101の下方から回転駆動する駆動手段105と、容器101上部に漆液を加熱脱水する熱源106とを備えている。
【0007】
この木製の容器101は、例えば直径が1メートルあり、当該容器101には、約20キログラムの生漆が仕込まれるようになっている。そして、駆動手段105により回転される攪拌羽根103により、生漆のこん練、脱水が行われ、当該漆の精製が行われる。
【0008】
このような装置を使用することにより、攪拌羽根の軸が短く、当該羽根のぶれが生じにくいため、漆液をほぼ均一に精製することができ、さらに、大量の漆液を多大な労力を必要とせず一度に精製することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来においては、以下のような不都合があった。第1に、少量の漆液を精製する場合においては、上述したような装置では精製が困難であり、手作業により精製(手くろめ)を行わなければならないという不都合が生じる。
【0010】
上記のように少量の精製を必要とする場合とは、例えば、個人的に美術工芸品の制作や補修作業を行う場合であったり、良質の精製漆を得るための精製条件を把握するべく繰り返し試験を行う場合である。かかる場合には、その都度、大きな装置を稼動して精製することは面倒であり、さらに、個人では当該装置を所有していない場合も多い。一方、手くろめにて精製する場合には、精製作業に時間がかかってしまい、また、毎回同一条件にて精製できるとも限らない。
【0011】
第2に、上記装置を小型化したとしても、攪拌羽根を下部から駆動することから漆液を入れる容器と駆動装置とが一体的になってしまい、精製漆の取り出し、及び、容器等の手入れが困難であるという不都合が生じる。例えば、繰り返しの精製試験を行う場合には、その都度容器から精製された漆を取り出すので、その都度駆動装置から羽根等を取り外し、容器内の漆を取り出すのは手間がかかってしまい、繰り返しの精製が困難である。
【0012】
【発明の目的】
本発明では、かかる従来例の有する不都合を改善し、特に少量の漆液を容易に精製することができると共に、精製条件の変更が容易であって任意の品質の漆を精製することができ、漆液の取り扱いが容易である漆精製装置を提供することをその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、漆液を入れる容器と、この容器を支持する支持台と、容器内の漆液を攪拌する攪拌羽根と、この攪拌羽根に回転力を伝達する軸部材と、この軸部材を容器の開口部側から回転駆動する駆動手段と、この駆動手段を保持する駆動手段保持機構とを備え、軸部材が、攪拌羽根を貫通して所定の長さの突出部を形成すると共に、この突出部に対応した凹部を容器の内底面に形成し、容器の支持台に、当該容器を上下方向に可動する可動機構を備えた、という構成を取っている(請求項1)。
【0014】
このような構成にすることにより、軸部材の上端部は、駆動手段から回転力が付勢され、軸部材の下端部は、攪拌羽根から突出して軸部材の突出部を形成し、当該突出部が容器の凹部に嵌合する。従って、軸部材は上端と下端にて軸支されているため、当該軸部材の回転時における「ぶれ」が抑制される。その結果、当該軸部材に係合された攪拌羽根は、安定して回転駆動し、容器と攪拌羽根との間隙を一定に保つことができると共に、これらの接触をも抑制することができ、効率よく漆液を攪拌することができる。
また、軸部材の突出部が攪拌羽根の下部から所定の長さだけ突出していて、容器の内底面に形成されている所定の長さの凹部に嵌合し、さらに、容器を支持台に備えられて可動機構にて上下動することにより、攪拌羽根と容器の内底面との間隙を所定の距離に調節することができる。このとき、軸部材の突出部が所定の長さを有しているため、この長さの範囲内であれば、当該突出部は容器の凹部に嵌合したままの状態にある。従って、回転駆動の安定性を保ちつつ、攪拌羽根と容器の内底面との間隙を調節することができる。その結果、攪拌条件、主に攪拌羽根と容器とによる摺り込みの条件を容易に変更でき、最適な精製条件を把握するための繰り返しの試験を容易に行うことができる。
さらに、可動機構を操作して容器を下げ、当該容器を攪拌羽根から離間させることにより、漆の入った容器から攪拌羽根等で構成される攪拌手段を容易に取りはずすことができる。従って、容器が独立した状態となるので、当該容器内の漆を容易に取り出すことができる。その結果、漆の出し入れが容易になり、繰り返し攪拌を行ったり、後に装置を掃除する等、取り扱いの利便性向上を図ることができる。
【0015】
また、容器の内底面を円形状にすると共に、この内底面の中心を攪拌羽根の回転中心とし、攪拌羽根を、当該攪拌羽根の端部が容器の内壁面に所定の間隙を有する長さに形成すると共に、当該攪拌羽根の端部を、容器の内壁面の形状に対応して形成すると望ましい(請求項2)。このとき、さらに容器の内壁面を、当該容器の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成するとなお望ましい(請求項3)。
【0016】
これにより、攪拌羽根の端部が、円形容器の内壁面に常に所定の間隙を有して回転するため、この間隙にて漆液が摺り込まれるように攪拌される。従って、当該摺り込み面積が大きくなり、当該漆液の攪拌効率の向上を図ることができる。また、攪拌羽根の回転時に、当該攪拌羽根と容器の内底面との間隙から押し出された漆液が当該容器の内壁面の間隙に入り込み、さらに容器の内壁面の上方に押し出され、当該漆液は攪拌羽根の通過後に容器の内底面に落下する。従って、容器の外周付近の漆液が、当該外周付近にとどまることなく攪拌されることとなる。その結果、漆液の成分を均一に分散させることができ、攪拌精度の向上を図ることができる。
さらに、容器の内壁面をテーパー状にすると、当該容器の内壁面での摺り込み面積が大きくなり、より攪拌効率の向上を図ることができる。また、容器の形状に合わせて攪拌羽根の端部の形状を成形しているので、容器の内底面の間隙を調節したときに、例えば攪拌羽根を上方に移動させて底面の間隙を大きくしたときに、内壁面の間隙も大きくなるので、当該内底面の間隙を常に底面の間隙に対応させることができ、容器の位置によらずほぼ同一条件にて攪拌することができる。また、容器の開口部が広くなるので、容器上部から加熱したり、漆液の状態を観察、あるいは、測定する等の操作を容易に行うことができる。
【0017】
また、攪拌羽根を、軸部材に沿って上下動可能な係止手段を介して当該軸部材に係止してもよい(請求項4)。これにより、軸部材の係止手段を操作して羽根部材を軸部材に沿って移動することにより、あらかじめ設けられた軸部材の攪拌羽根からの突出部の長さを任意に調節することができる。従って、より多くの攪拌条件を設定することができ、任意の性質の精製漆を得ることができる。
【0018】
また、容器を金属部材にて形成すると共に、攪拌羽根を非金属部材にて形成することが望ましい(請求項5)。さらに、攪拌羽根を、軸部材に係合手段を介して着脱自在に係合することが望ましい(請求項6)。
【0019】
これにより、比較的小さい容器を金属部材(例えば、アルミニウム)にて形成するため、当該容器は木製のたらいよりも加工が容易であり、装置のコストダウンをも図ることができる。そして、金属製の容器内を非金属(例えば、木製)の攪拌羽根が回転する。従って、容器及び攪拌羽根が金属製であった場合に発生する摩耗金属粉の発生を、攪拌羽根を木製にすることにより抑制することができる。その結果、装置のコストダウンを図りつつ、漆液に金属粉が混入することを抑制し、精製漆の質の低下を抑制することができる。さらに、軸部材に攪拌羽根を係合する係合手段を操作することにより、攪拌羽根を交換することができる。従って、攪拌羽根が摩耗した場合であっても容易に交換することができる。
【0020】
また、駆動手段保持機構の所定箇所に、容器内の漆液を上部から加熱する加熱手段を備えてもよい(請求項7)。これにより、容器内部の漆液を精製したい漆の性質に応じて加熱することができ、希望する精製条件を容易に設定することができる。
【0021】
さらに、容器と支持台との間に、容器を包含する上部が開口したジャケットを備えると望ましい(請求項8)。これにより、ジャケットに加熱した水などの熱媒体を入れると、容器の外周を熱媒体が加熱し、その熱が容器内部の漆液に伝達する。従って、効率よく漆液を加熱することができ、希望する漆の精製条件を容易に設定することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
【0023】
〈漆精製方法〉
本発明である漆精製装置は、漆の木から掻き取った漆液を精製処理し、当該漆液を塗料化するものである。まず、漆の精製方法を説明する。
【0024】
漆の精製は、主に「なやし」及び「くろめ」という工程から成る。「なやし」とは、生漆(漆の木から掻き取ったままの漆)を容器に入れて摺り込むように攪拌する操作のことである。これにより、漆液の成分を均一分散されて乳化している粒子が細かくされる。また、「くろめ」とは、漆液の入った容器の上に、電熱器、赤外線ランプなどを吊して、当該漆液の表面積を広げるよう攪拌する作業をいう。これにより、漆液中の水分がゆっくりと蒸発していき、その後、透明になる。そして、水分を約3%残して作業を終了する。すなわち、加熱脱水を行うわけである。
【0025】
このようにすることにより、ウルシオールとゴム質(多糖)と含窒素物(糖蛋白)と少量のラッカーゼ酵素と水分によって構成されている油中水滴型エマルション(エマルション:液体の中に他の液体がコロイド的な細かい大きさで分散しているもの、乳濁液)である漆液は、ウルシオールがラッカーゼ酵素によって酸化されて重合していくのであるが、当該生漆液中の水滴が微粒化される。そして、この微粒化により、漆液の耐久性が向上し、流展性が良くなり、塗膜の艶も出るようになる。
【0026】
〈装置の全体構成〉
上記のような漆精製処理を行う漆精製装置を図1に示す。図1は、当該装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【0027】
この図1に示す漆精製装置は、漆液(図示せず)を入れる容器1と、この容器を支持する支持台2と、容器2内の漆液を攪拌する攪拌羽根3と、この攪拌羽根3に回転力を伝達する軸部材4と、この軸部材4を容器1の開口部側から回転駆動する駆動手段5と、この駆動手段5を保持する駆動手段保持機構6とを備えている。そして、軸部材4が、攪拌羽根3を貫通して所定の長さの突出部41を形成すると共に、この突出部41に対応した凹部11を容器の内底面に形成し、容器1の支持台2に、当該容器1を上下方向に可動する可動機構21を備えている。
【0028】
以下、これを詳述する。ここで、図2は、容器1を示す図であり、図2(a)は容器1の上面図、図2(b)は容器1の断面側面図である。図3は、攪拌羽根3及び軸部材4の構成を示す図であり、図3(a)はその正面図、図3(b)は側面図である。
【0029】
〈容器〉
容器1は、上部が開口して、側壁が所定の高さを有する断面コ字状の容器であり、内部に液体を溜めることができる。この容器1は、内底面が平坦であり、円形状である(図2(a)、(b)参照)。そして、容器1の内壁面は、当該容器1の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成されている。すなわち、当該容器1の側壁が、開口部に向かうにつれて徐々に容器1の外側に広がるよう形成されていて、曲面形状になっている。但し、当該容器1の形状は、円形及びテーパー状に限定されるものではない。
【0030】
そして、容器1の大きさは、精製する漆液の量により異なるが、例えば、▲1▼生漆5g以下の精製処理には、内底面の直径が60〜80mm、開口部の直径が80〜100mm、深さ40〜60mm、厚さが4〜115mmの容器1、▲2▼生漆5g〜20gの精製処理には、内底面の直径が80〜110mm、開口部の直径が100〜140mm、深さ40〜60mm、厚さが4〜15mmの容器1、▲3▼生漆10g〜50gの精製処理には、内底面の直径が1100〜1500mm、開口部の直径が1400〜2000mm、深さ40〜80mm、厚さが4〜20mmの容器1、を使用すると、比較的少量の漆精製装置として利用しやすい。但し、容器1の大きさは、上記のような大きさに限定されるものではない。
【0031】
また、この容器1の内底面の中心には、所定の深さを有する凹部11が形成されている。この凹部11は、容器1の内底面に対して垂直方向に、すなわち、図1の下方向に向かって掘られて形成されている(図2(a)、(b)参照)。この凹部11の深さは、例えば7mmである(具体的には、円柱状の部分が5mm、円錐状の部分が2mmである)。そして、この凹部11には、後述するように、軸部材4の端部が嵌合するようになっている。但し、凹部11の深さは上記の長さに限定されるものではない。また、容器1には漆液が入れられるため、当該凹部11は、容器1を貫通するものではない。
【0032】
また、この容器1は、アルミニウム製である。容器1をアルミニウムにて製造することにより、漆液とアルミニウムとは反応することがないため漆液が黒色に着色することを抑制でき、さらに、加工の容易化、耐久性向上、低価格化などを図ることができる。
【0033】
但し、容器1の材料はアルミニウムに限定されるものではないが、他の材料では以下のような不都合が生じる。例えば、鉄は、漆液と反応して当該漆液が黒色に着色してしまうという問題が生じる。この場合には、後述する攪拌羽根3を鉄などにすると、金属製の容器1と攪拌羽根3とが接触して、この接触により摩耗金属粉が発生することにより、より漆液の変色が助長されてしまう。また、従来からの大型の漆精製装置における容器1は木製であるが、当該実施形態における小型な漆精製装置の容器1を木製とすると、上記のような摩耗金属粉の発生は防止できるが、製造が容易ではなくコストがかかってしまう。また、繰り返し精製試験を行うような場合を考えると、耐久性の問題が生じる。
【0034】
さらに、容器1の外側の底面、すなわち、後述する支持台2との当接面には、4つのねじ孔が形成されている(図1、図2参照)。このねじ孔には下部からねじが挿通するようになっていて、後述するよう容器1と支持台2とが固着するようになっている。
【0035】
〈支持台〉
支持台2は、上記容器1を下部から支持するものであり、その上部は平坦な板状になっている。そして、この支持台2は、上述したように容器1と一体的になっている(図1参照)。すなわち、支持台2の平坦な上面には上記容器1のねじ孔に対応した貫通孔が形成されていて、この貫通孔と上記容器1のねじ孔にねじが挿通し、当該容器1が支持台2に固定されている。但し、支持台2と容器1とは、ねじにより一体的に結合していることに限定されない。支持台2の上面に容器1を固定するねじ以外の固定機構が備えられていて、当該容器1を支持台2の上面に固定してもよい。すなわち、支持台2から容器1が切り離せるようになっていてもよい。また、支持台2に容器1が溶接にて固着されていてもよい。
【0036】
さらに、この支持台2には可動機構21が備えられていて、当該支持台2の高さが変動、すなわち、上面にある容器1の位置が上下方向に移動するようになっている(図1参照)。
【0037】
この可動機構21は、ねじジャッキにより形成されている。このねじジャッキは、一般的なねじジャッキと同一の作用効果を有するものである。従って、この可動機構21は、図1の左側にあるハンドル21aを矢印方向に回転させることにより、当該ハンドル21aと共にねじ軸が回転して、図1に示すアーム部21cを連結する軸21dの距離が変動し、当該アーム部21cの間隔が狭まったり開いたりする。これにより、支持台2の高さを調節することができる。
【0038】
そして、上記のように調節することにより、容器1の内面と後述する攪拌羽根3との間隙を調節し、任意の攪拌条件を設定することができる。これについては後述する。また、攪拌羽根3の位置が固定されている場合であっても、可動機構21を操作し、容器1の開口部よりも攪拌羽根3が上方に位置するよう当該容器1の位置を下げることにより、容易に容器1を取り出すことができる。すなわち、攪拌羽根3と容器1とを隔離することができる。従って、容器1内の漆液の取り出し、あるいは、容器1の手入れ等が容易になる。
【0039】
ここで、上記可動機構21は、ねじジャッキに限定されるものではない。可動機構21上面の容器1の位置を上下動することができるものであればよい。従って、機械的に作動することに限らず、電気的に作動するものであってもよい。但し、当該装置が少量の漆液の精製を対象とするため、上部に支持する容器1が比較的小さいので、可動機構21自体の構造が比較的簡単であり、小型に形成できるものが望ましい。
【0040】
〈攪拌羽根〉
攪拌羽根3は、所定の厚みを有する板状の部材である(図3(a)、(b)参照)。この攪拌羽根3は、その両端部を上述した容器1の内壁面に向け、長さ方向の一方の厚み部分を容器1の内底面に他方を開口部に向けて配設されている。従って、攪拌羽根3は、円形である容器1内底面の中心を通って位置している(図2(a)参照)。
【0041】
そして、容器1の内底面と対向する攪拌羽根3の一方の厚み部分は、その長さが円形である容器1内底面の直径よりも少し短く形成されている。そして、容器1の開口部側に位置する他方の厚み部分は、その長さが一方の厚み部分よりも長く形成されている。具体的には、当該攪拌羽根3が容器1の内底面に位置する場合において、その位置の容器1の直径よりも少し短く形成されている。従って、図3(a)に示すように、板状部材である攪拌羽根3は、容器1の形状に対応して台形である。
【0042】
また、攪拌羽根3の一方の厚み部分、すなわち、容器1内底面に対向する面は、当該内底面と同様に平坦である。そして、攪拌羽根3の両端部、すなわち、容器1内壁面に対向する面は、当該内壁面に対応した曲面となっている。従って、容器1の内壁面は凹状であるのに対し、攪拌羽根3の両端部は、凸状の曲面となっている。
【0043】
さらに、この攪拌羽根3の中央部には、軸部材4を挿通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、上述した容器1の中心に形成れた凹部に対応するものである。従って、貫通孔は、板状である攪拌羽根3の長さ方向の中心を、当該長さ方向に垂直に貫通している。
【0044】
また、この攪拌羽根3は、木製である。攪拌羽根3を木製にすることにより、上述した容器1を金属製にした場合であっても、当該容器1との接触により、攪拌羽根3が容器1を削ることがないため、摩耗金属粉の発生を防止することができる。従って、金属粉による精製漆の質の低下の抑制を図ることができる。但し、攪拌羽根3は、上記形状に限定されるものではなく、さらに、木製に限定されない。例えば、片羽根であってもよく、木以外の他の材料にて形成されていてもよい。
【0045】
〈軸部材〉
軸部材4は、ステンレス製の軸である。但し、当該軸部材4は、ステンレス製に限定されるものではない。この軸部材4は、一端部は駆動手段5に連結し、当該駆動手段5から回転力が付勢される。そして、他端部には、上記攪拌羽根3が係止手段を介して係止されていて、駆動手段5からの回転力を伝達している。このとき、他端部は、上記攪拌羽根3の中央に形成された貫通孔に挿通し、当該他端部の先端を攪拌羽根3から所定の長さ突出している(突出部41、図3(a)参照)。この突出部41は、前述したように、容器1中央に形成された凹部11に嵌合するようになっている。従って、突出部11は、当該凹部11の深さに対応して攪拌羽根3から突出している。
【0046】
これにより、軸部材4の上端部は駆動手段5にて、他端部は容器1の凹部11にて支持されているため、当該軸部材4は回転時にぶれることなく回転し、従って、軸部材4に係止されている攪拌羽根3の回転も安定する。また、突出部41が所定の長さを有すると共に、支持台2に可動機構21を備えたことにより、攪拌羽根3と容器1との間隙の調節を容易に行うことができる。この詳細は後述する。
【0047】
ここで、軸部材4には、攪拌羽根3が当該軸部材4に沿って上下動自在に係止手段7を介して係止されている。すなわち、攪拌羽根3の位置を調節することにより、上述した軸部材4の突出部41の長さを変更することできる。さらに、攪拌羽根3は、軸部材4に着脱自在に係合手段8を介して係合されている。すなわち、攪拌羽根3は、軸部材4と共に回転するようになっていて、軸部材4から取り外し可能であり、交換できるようになっている。そして、本実施形態においては、上記係止手段7と係合手段8とが一体的に形成されている。この一体的に形成された係止手段7及び係合手段8は、図3(a)、(b)に示すように、その上部に係止手段7を、下部に係合手段8を有する。
【0048】
係止手段7は、直方体であり、その中央部には、軸部材4を挿通する貫通孔が形成されている。また、この係合手段7の所定の面には、上記貫通孔に対して垂直に貫通する係止ねじ孔71が形成されている(図3(b)参照)。この係止ねじ孔71には、当該係止ねじ孔71が形成されている面からねじ72が挿入される。そして、このねじ72の先端部が係止ねじ孔71を貫通して軸部材4に当接し、さらに、押圧することにより係止手段7を軸部材4の所定箇所に係止することができる。
【0049】
また、係合手段7は、上記貫通孔が形成されている一方の面、すなわち、図3(a)における下側の面が、攪拌羽根3に当接している。そして、この係合手段7の底面の厚さ、すなわち、攪拌羽根3と当節している厚み方向の長さは、当該攪拌羽根3の厚みよりも長く形成されている(図3(b)参照)。この長く形成されている底面部分、すなわち、底面が攪拌羽根3に当接しているときに当該攪拌羽根3からはみ出している両方の部分には、係合部材8が一体的に固着している。
【0050】
係合部材8は、攪拌羽根3を挟む2枚の板状部材から成っている(図3(a)、(b)参照)。この係合部材8には、軸部材4を対象に2カ所に一対の係合ボルト孔81が形成されている。また、この係合ボルト孔81に対応して、攪拌羽根3にも羽根側ボルト孔31が形成されている。そして、これらボルト孔81には、ステンレス製のボルト82が挿通され、当該ボルト82がステンレス製のナット83により固定される。従って、攪拌羽根3は、係合部材8に挟まれ、ボルト82ナット83により固定される。
【0051】
従って、上述したように、一体的に形成された係止手段7及び係合手段8は、図3(a)、(b)に示すように、正面から見ると逆T字状に形成されていて、側面から見ると、下側に開口部を有するコ字状に形成されている。この開口部には、攪拌羽根3が嵌合され、ボルト82ナット83により係合されるようになっている。そして、当該一体的な係止部材7及び係合部材8と攪拌羽根3とに軸部材4を挿通し、任意の位置にて上部の係止部材7に形成された係止ねじ孔71にステンレス製のねじ72を挿入することにより、当該軸部材4の任意の位置に攪拌羽根3を係止することができる。
【0052】
このようにすることにより、攪拌羽根3を軸部材4に沿って上下方向に移動できるようにしたので、軸部材4の先端部であり攪拌羽根3から突出する突出部41の突出長さを調節することができる。従って、前述した容器1に形成した凹部11の深さ制限されることなく、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節することができる。また、軸部材4から攪拌羽根3を容易に取り外すことができ、当該軸部材4の手入れ、あるいは、交換等を容易に行うことができる。さらに、係合部材8を板状部材にて形成したことにより、攪拌羽根3の剛性を高め、当該攪拌羽根3の破壊を抑制することができる。
【0053】
ここで、係止手段7と係合手段8とは、上記の形状に限定されない。また、上記実施形態においては、係止手段7と係合手段8とが一体的に形成されている場合を例示したが、これに限定されない。係止手段7と係合手段8とが溶接、あるいは、機械的に結合していてもよい。さらに、係止手段7、係合手段8は、いずれか一方のみが備えられていてもよい。
【0054】
〈駆動手段〉
駆動手段5は、所定のトルクを有するモータにより形成されていて、軸部材4に回転力を付勢する。すなわち、この駆動手段5により、軸部材4の端部に備えられている攪拌羽根3が回転するようになっている。この駆動手段5は、具体的には、高粘度用、すなわち、高いトルクを出力できるもの、加えて、トルクの値を所定の値に調節しやすいものが望ましい。さらに、駆動手段5は、正逆回転機能を有するとなお望ましい。
【0055】
〈駆動手段保持機構〉
駆動手段保持機構6は、上記駆動手段5を容器1の上部に保持する機構である。駆動手段5を保持することができるスタンドであれば、形状は問わない。そして、この駆動手段保持機構6に温度計(図示せず)を吊すと共に、加熱手段としての赤外線ランプ(図示せず)を吊してもよい。このとき、赤外線ランプは、容器1上部から漆液を加熱するような位置に吊し、温度計を、その温度計測部が容器1内の漆液に浸るような高さに調節して吊す。
【0056】
これにより、漆液を上部から必要に応じて加熱し、その温度を温度計により計測することができる。従って、容器1内部の漆液を容易に加熱することができると共に、当該漆液の温度調節を容易に行うことができ、希望する漆の精製条件を設定することができる。
【0057】
また、上述のように、加熱手段を設けたことに伴い、上記容器1内部の温度を測定する温度計を当該容器1に内蔵し(図示せず)、その測定温度を表示する表示部(図示せず)を当該容器1の外面に設けてもよい。さらに、この表示部は、液晶によるディジタル表示であってもよい。これにより、当該装置の利用者は、温度を読みとりやすくなる。
【0058】
次に、本実施形態の動作について、図1を参照して説明する。
【0059】
まず、支持台2の可動機構21のハンドル21aを所定の方向に回転して、当該支持台2の高さを低くする。そして、支持台2と一体的に成っている容器1の開口部に攪拌羽根3をセットする。このとき、攪拌羽根3の下部に突出している軸部材4の突出部41を、容器1内底面の凹部11の真上に位置するようにする。
【0060】
続いて、可動機構21のハンドル21aを回し、支持台2の高さを高くして容器1に位置を上方に移動する。このとき、上記突出部41と凹部11とが確実に嵌合するようにする。そして、さらに可動機構21のハンドル21aを回転することにより、希望する攪拌条件に対応するよう攪拌羽根3の底面と容器1の内底面との間隙を微調整する。
【0061】
続いて、容器1内部に漆液を入れ、駆動手段5を所定の回転数にて回転させる。また、必要に応じて、当該回転数を変更させる。
【0062】
このようにすると、攪拌羽根3が回転して容器1内にて漆液がこん練される。そして、このとき、漆液が攪拌羽根3と容器1内底面との間隙にて摺り込まれて、当該漆液の乳化粒子が細かく分散する。さらに、容器1内壁面においても、攪拌羽根3により漆液が分散されるため、効率的に精製処理を行うことができる。これにより、漆液の流展性がよくなり、塗膜の艶もよくなる。
【0063】
また、軸部材4は、上端を駆動手段5に、下端を凹部11により支持されているので、ぶれることなく回転する。従って、攪拌羽根3もぶれずに回転するため、当該攪拌羽根3が容器1に接触することを抑制することができ、攪拌羽根3、及び、容器1の摩耗、損傷を抑制し、それらの摩耗粉の発生をも抑制することができる。このため、精製漆に不純物が混入することを抑制することができる。
【0064】
続いて、さらに、異なる精製条件にて漆を精製する場合には、まず、ハンドル21aを回転させて容器1の位置を下げ、当該容器1を攪拌羽根3の真下から取り出す。そして、容器1内部の精製漆を取り出して当該容器1を掃除した後、上記同様に再び攪拌羽根3に容器1をセットする。このとき、前回とは異なる精製条件を設定すべく、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節する。これは、可動機構21のハンドル21aを回すことにより、容易に行うことができる。そして、上記同様に、容器1に漆液を入れて攪拌する。
【0065】
このようにすると、ハンドル21aを回すという簡単な操作のみで漆液の攪拌条件を設定することができるため、繰り返して精製試験を行うことが容易となる。このため、少量の漆液を対象として、良質の精製漆を得るための最適な精製条件を把握すべく、繰り返し精製条件を変えて試験を行うことができる。これにより、美術工芸品の制作や修理保存に当たって要望される任意の品質(粘度、乾燥性、光沢性、レベリング性)を得ることができる。
【0066】
また、突出部41を所定の長さ設けると共に、この突出部41が嵌合する凹部11も所定の深さに形成したので、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を多少広げたとしても、突出部41と凹部11との嵌合状態は保たれる。従って、攪拌羽根3が安定して回転するため、上記同様の効果を得ることができる。
【0067】
さらに、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節するに伴って、攪拌羽根3の両端部と容器1内壁面との間隙も変更される。従って、容器1内壁面においても漆液の分散が行われるため、上記同様の効果を得ることができる。
【0068】
その後、さらに精製条件を変更する場合であって、攪拌羽根3と容器1との間隙を突出部41の長さ以上にしたい場合には、係止手段7であるねじ72をゆるめて攪拌羽根3を上方に移動し、所定箇所にてねじ72を締めて当該攪拌羽根3を軸部材4に係止する。
【0069】
このようにすると、容器1の位置の下げすぎにより、突出部41が凹部11から外れて攪拌羽根3の回転が不安定になることを抑制することができる。すなわち、突出部41が凹部11に嵌合したまま攪拌羽根3を上方に移動させるので、軸部材4の2点支持状態を保つことができ、当該攪拌羽根3の回転の安定性を保つことができる。
【0070】
また、繰り返し精製処理を行うことにより、攪拌羽根3が摩耗し、あるいは、破損等した場合には、係合手段8のボルト82ナット83をゆるめて当該攪拌羽根3を取り外し、新しいものと交換する。従って、攪拌羽根3の交換を容易に行うことができる。
【0071】
ここで、攪拌羽根3は、図3(a)、(b)に示すような形状に限定されない。当該攪拌羽根3の他の例を、図4を参照して説明する。
【0072】
図4に示す攪拌羽根30は、軸部材4の下端部よりも上方に係合されている。このとき、攪拌羽根30は軸部材4に係合する係合手段80により係合されている。この係合手段80は、軸部材4を挟んで当該軸部材4に溶接された2枚の長方形の板状部材にて形成されている。そして、この係合手段8には、1枚の板状部材につき4つの係合ボルト孔が形成されていて、相対する他方の板状部材にも係合ボルト孔が形成されている。従って、攪拌羽根30には、係合ボルト孔に対応した羽根側ボルト孔が形成されていて、これらの孔にボルトを挿入することにより、軸部材4に攪拌羽根30を係合している。
【0073】
そして、この係合部材80に係合する攪拌羽根30は、木製で2枚に分割されている。すなわち、図3(a)に示した攪拌羽根3を、中央にて分割した形状になっている。このようにしても、上記同様に攪拌羽根30の容器1に接触しやすい箇所は木製であるため、当該攪拌羽根30が仮に容器1に接触したとしても摩耗金属粉の発生は抑制される。また、攪拌羽根30も消耗、あるいは、損傷等が生じた場合に、片羽根ずつ交換することができ、装置維持コストを抑えることができる。
【0074】
さらに、攪拌羽根30を係合する係合手段80を、軸部材4に溶接により固着するため、軸部材4の回転により攪拌羽根30が軸部材4に対して回転してしまうことを抑制することができる。従って、攪拌羽根30が比較的大きい場合であって攪拌時に当該羽根30に大きな負荷がかかる場合であっても、攪拌羽根30の軸部材4に対する回転を抑制され、安定した回転を確保することができる。また、係合手段80である板状部材の面積を大きくすることで、攪拌羽根30の強度を増すことができる。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態を、図5を参照して説明する。図5は、漆精製装置の構成を示す部分断面図である。
【0076】
当該第2の実施形態における漆精製装置は、図1に示す第1の実施形態における漆精製装置とほぼ同一の構成要素を備えている。そして、図6における第2の実施形態では、さらに、容器1と支持台2との間に、容器1を包含する上部が開口したジャケット9を備えている。
【0077】
このジャケット9は、上記漆液を入れる容器1を内部に納めることができる大きさの容器であり、断面コ字状で開口部及び内底面が円形状である。そして、ジャケット9の底面には、上述した容器1の底面に形成されたねじ孔に対応して4つの貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔を支持台2と容器1とを結合するねじが挿通し、当該ねじが締められることにより、ジャケット9が支持台2と容器1とに挟まれて結合する。
【0078】
そして、このジャケット9には、水などの液体の熱媒体が入れられる。また、これに伴い、ジャケット9には、入れられた液体の熱媒体に浸るよう熱媒体加熱手段としてのヒーター91が備えられている。
【0079】
このようにすることにより、ヒーター91を加熱するとジャケット9内の熱媒体が加熱され、この熱媒体は常に容器1に接しているため当該容器1が加熱される。従って、容器1内部の漆液も加熱される。このとき、容器1をアルミニウムにて形成すると、熱伝導率がよいため、ジャケット9内の熱媒体からの熱が効率よく容器1内部の漆液に伝達し、漆液の加熱を効率よく行うことができ、当該漆液の温度調節を容易に行うことができる。
【0080】
ここで、上述したように、容器1内の漆液に温度計を浸してもよく、また、ジャケット9内の熱媒体に温度計を浸してもよい。そして、これら温度計の温度表示を参照して、精製する漆液の温度管理を行ってもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の漆精製装置によると、攪拌羽根を端部に備えて当該羽根に回転力を伝達する軸部材を、当該羽根から所定の長さ突出させて突出部を設けると共に、この突出部に対応した凹部を容器の内底面に形成し、容器の支持台に、当該容器を上下方向に可動する可動機構を備えたので、当該可動機構を操作することにより攪拌羽根と容器内底面との間隙を容易に調整することができると共に、軸部材の突出部が所定の長さを有しているため、上記間隙を調整した場合でも当該突出部が容器の凹部に嵌合した状態を保ち、軸部材は両端部を支持されて回転し、従って、攪拌羽根の回転が安定する、という従来にない優れた効果を有する。
【0082】
特に、精製条件を少しずつ変更して繰り返し精製試験を行うような場合には、攪拌羽根と容器との間隙を容易に変更できため、当該繰り返しの試験を短時間に実行することができ、精製における最適条件を短時間にて見つけだすことも可能である。そして、容器が攪拌羽根から容易に独立して取り外すことができるので、その都度の容器の手入れ等も容易となる。
【0083】
また、容器の内底面を円形状にすると共に、攪拌羽根の端部が容器の内壁面に所定の間隙を有する長さに形成し、当該攪拌羽根の端部を、容器の内壁面の形状に対応して形成した場合には、容器の内壁面においても攪拌羽根と間隙が形成されるので、当該内壁面においても漆液の乳化粒子を摺り込むように分散することができ、当該分散の面積を拡大することができるので、漆液の攪拌効率の向上を図ることができる。
【0084】
そして、特に、容器の内壁面を、当該容器の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成した場合には、さらに、摺り込み面積が大きくなるので、より攪拌の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図2】図1に開示した容器を示す図であって、図2(a)は上面図であり、図2(b)は側方からの断面図である。
【図3】図1に開示した攪拌羽根及び軸部材を示す図であって、図3(a)は正面図であり、図3(b)は側面図である。
【図4】図1に開示した攪拌羽根の他の例を示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図6】従来例の漆精製装置の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 容器
2 支持台
3,30 攪拌羽根
4 軸部材
5 駆動手段
6 駆動手段保持機構
7 係止手段
8,80 係合手段
9 ジャケット
11 凹部
21 可動機構
41 突出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、漆精製装置にかかり、特に少量の原料生漆を精製処理する漆精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、漆の木から採取される樹液である漆液は、掻き取った後にろ過して夾雑物を除去したままの「精製生漆」として使用されたり、あるいは、加熱脱水加工された「脱水精製漆」として使用される。この場合、前者の「精製生漆」は、主に摺漆用、下地塗料、あるいは、接着剤として使用され、後者の「脱水精製漆」は、中塗り、上塗りなど塗料として使用される。そして、漆の大部分は、後者の「脱水精製漆」として使用されるが、塗装におけるレベリング性の向上、塗膜の光沢付与のため、伝統的な精製法である「なやし」、「くろめ」という精製処理が施される。以下、漆液の精製工程のうち、主となる「なやし」及び「くろめ」の内容を説明する。
【0003】
「なやし」とは、生漆を木製の浅い容器に入れて、摺り込むように攪拌する作業である。この「なやし」により、漆液の成分が均一に分散されると共に、乳化している粒子が細かくされる。従って、当該漆液が萎えて柔らかくなり、すなわち、流展性が良くなり、塗膜の艶がでてくるようになる。但し、上記攪拌時に摺り込みが強すぎると、水を含んだゴム質が膨潤して増粘し、かえって質の悪い漆になってしまう。
【0004】
上記「なやし」に続いて、「くろめ」作業が行われる。「くろめ」は、同一容器の上に炭火、電熱器、赤外線ランプ等をつるして、表面積を広げるよう攪拌して、当該漆液を加熱脱水する作業である。この「くろめ」により、漆液の水分がゆっくりと蒸発して次第に透明になる。そして、水分を約3%残して作業を終了する。
【0005】
このようにすることにより、主要成分のウルシオールとゴム質(多糖)、含窒素物(糖蛋白)及び少量のラッカーゼ酵素と水分によって構成される油中水滴型エマルションである上記漆液は、ウルシオールがラッカーゼ酵素によって酸化されて重合する。そして、粘度、乾燥性、光沢、レベリング性の優れた塗装用の漆が精製される。これら精製漆は、木製のお椀などに塗装され、漆器が製造される。
【0006】
そして、従来より上記漆の精製は、図6に示す装置により行われている。この漆精製装置は、漆液を入れる円形の木製容器101と、この容器101を支持する支持台102と、容器101の中心を軸に回転する攪拌羽根103と、この攪拌羽根103に回転力を伝達する軸部材104と、この軸部材104を容器101の下方から回転駆動する駆動手段105と、容器101上部に漆液を加熱脱水する熱源106とを備えている。
【0007】
この木製の容器101は、例えば直径が1メートルあり、当該容器101には、約20キログラムの生漆が仕込まれるようになっている。そして、駆動手段105により回転される攪拌羽根103により、生漆のこん練、脱水が行われ、当該漆の精製が行われる。
【0008】
このような装置を使用することにより、攪拌羽根の軸が短く、当該羽根のぶれが生じにくいため、漆液をほぼ均一に精製することができ、さらに、大量の漆液を多大な労力を必要とせず一度に精製することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来においては、以下のような不都合があった。第1に、少量の漆液を精製する場合においては、上述したような装置では精製が困難であり、手作業により精製(手くろめ)を行わなければならないという不都合が生じる。
【0010】
上記のように少量の精製を必要とする場合とは、例えば、個人的に美術工芸品の制作や補修作業を行う場合であったり、良質の精製漆を得るための精製条件を把握するべく繰り返し試験を行う場合である。かかる場合には、その都度、大きな装置を稼動して精製することは面倒であり、さらに、個人では当該装置を所有していない場合も多い。一方、手くろめにて精製する場合には、精製作業に時間がかかってしまい、また、毎回同一条件にて精製できるとも限らない。
【0011】
第2に、上記装置を小型化したとしても、攪拌羽根を下部から駆動することから漆液を入れる容器と駆動装置とが一体的になってしまい、精製漆の取り出し、及び、容器等の手入れが困難であるという不都合が生じる。例えば、繰り返しの精製試験を行う場合には、その都度容器から精製された漆を取り出すので、その都度駆動装置から羽根等を取り外し、容器内の漆を取り出すのは手間がかかってしまい、繰り返しの精製が困難である。
【0012】
【発明の目的】
本発明では、かかる従来例の有する不都合を改善し、特に少量の漆液を容易に精製することができると共に、精製条件の変更が容易であって任意の品質の漆を精製することができ、漆液の取り扱いが容易である漆精製装置を提供することをその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、漆液を入れる容器と、この容器を支持する支持台と、容器内の漆液を攪拌する攪拌羽根と、この攪拌羽根に回転力を伝達する軸部材と、この軸部材を容器の開口部側から回転駆動する駆動手段と、この駆動手段を保持する駆動手段保持機構とを備え、軸部材が、攪拌羽根を貫通して所定の長さの突出部を形成すると共に、この突出部に対応した凹部を容器の内底面に形成し、容器の支持台に、当該容器を上下方向に可動する可動機構を備えた、という構成を取っている(請求項1)。
【0014】
このような構成にすることにより、軸部材の上端部は、駆動手段から回転力が付勢され、軸部材の下端部は、攪拌羽根から突出して軸部材の突出部を形成し、当該突出部が容器の凹部に嵌合する。従って、軸部材は上端と下端にて軸支されているため、当該軸部材の回転時における「ぶれ」が抑制される。その結果、当該軸部材に係合された攪拌羽根は、安定して回転駆動し、容器と攪拌羽根との間隙を一定に保つことができると共に、これらの接触をも抑制することができ、効率よく漆液を攪拌することができる。
また、軸部材の突出部が攪拌羽根の下部から所定の長さだけ突出していて、容器の内底面に形成されている所定の長さの凹部に嵌合し、さらに、容器を支持台に備えられて可動機構にて上下動することにより、攪拌羽根と容器の内底面との間隙を所定の距離に調節することができる。このとき、軸部材の突出部が所定の長さを有しているため、この長さの範囲内であれば、当該突出部は容器の凹部に嵌合したままの状態にある。従って、回転駆動の安定性を保ちつつ、攪拌羽根と容器の内底面との間隙を調節することができる。その結果、攪拌条件、主に攪拌羽根と容器とによる摺り込みの条件を容易に変更でき、最適な精製条件を把握するための繰り返しの試験を容易に行うことができる。
さらに、可動機構を操作して容器を下げ、当該容器を攪拌羽根から離間させることにより、漆の入った容器から攪拌羽根等で構成される攪拌手段を容易に取りはずすことができる。従って、容器が独立した状態となるので、当該容器内の漆を容易に取り出すことができる。その結果、漆の出し入れが容易になり、繰り返し攪拌を行ったり、後に装置を掃除する等、取り扱いの利便性向上を図ることができる。
【0015】
また、容器の内底面を円形状にすると共に、この内底面の中心を攪拌羽根の回転中心とし、攪拌羽根を、当該攪拌羽根の端部が容器の内壁面に所定の間隙を有する長さに形成すると共に、当該攪拌羽根の端部を、容器の内壁面の形状に対応して形成すると望ましい(請求項2)。このとき、さらに容器の内壁面を、当該容器の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成するとなお望ましい(請求項3)。
【0016】
これにより、攪拌羽根の端部が、円形容器の内壁面に常に所定の間隙を有して回転するため、この間隙にて漆液が摺り込まれるように攪拌される。従って、当該摺り込み面積が大きくなり、当該漆液の攪拌効率の向上を図ることができる。また、攪拌羽根の回転時に、当該攪拌羽根と容器の内底面との間隙から押し出された漆液が当該容器の内壁面の間隙に入り込み、さらに容器の内壁面の上方に押し出され、当該漆液は攪拌羽根の通過後に容器の内底面に落下する。従って、容器の外周付近の漆液が、当該外周付近にとどまることなく攪拌されることとなる。その結果、漆液の成分を均一に分散させることができ、攪拌精度の向上を図ることができる。
さらに、容器の内壁面をテーパー状にすると、当該容器の内壁面での摺り込み面積が大きくなり、より攪拌効率の向上を図ることができる。また、容器の形状に合わせて攪拌羽根の端部の形状を成形しているので、容器の内底面の間隙を調節したときに、例えば攪拌羽根を上方に移動させて底面の間隙を大きくしたときに、内壁面の間隙も大きくなるので、当該内底面の間隙を常に底面の間隙に対応させることができ、容器の位置によらずほぼ同一条件にて攪拌することができる。また、容器の開口部が広くなるので、容器上部から加熱したり、漆液の状態を観察、あるいは、測定する等の操作を容易に行うことができる。
【0017】
また、攪拌羽根を、軸部材に沿って上下動可能な係止手段を介して当該軸部材に係止してもよい(請求項4)。これにより、軸部材の係止手段を操作して羽根部材を軸部材に沿って移動することにより、あらかじめ設けられた軸部材の攪拌羽根からの突出部の長さを任意に調節することができる。従って、より多くの攪拌条件を設定することができ、任意の性質の精製漆を得ることができる。
【0018】
また、容器を金属部材にて形成すると共に、攪拌羽根を非金属部材にて形成することが望ましい(請求項5)。さらに、攪拌羽根を、軸部材に係合手段を介して着脱自在に係合することが望ましい(請求項6)。
【0019】
これにより、比較的小さい容器を金属部材(例えば、アルミニウム)にて形成するため、当該容器は木製のたらいよりも加工が容易であり、装置のコストダウンをも図ることができる。そして、金属製の容器内を非金属(例えば、木製)の攪拌羽根が回転する。従って、容器及び攪拌羽根が金属製であった場合に発生する摩耗金属粉の発生を、攪拌羽根を木製にすることにより抑制することができる。その結果、装置のコストダウンを図りつつ、漆液に金属粉が混入することを抑制し、精製漆の質の低下を抑制することができる。さらに、軸部材に攪拌羽根を係合する係合手段を操作することにより、攪拌羽根を交換することができる。従って、攪拌羽根が摩耗した場合であっても容易に交換することができる。
【0020】
また、駆動手段保持機構の所定箇所に、容器内の漆液を上部から加熱する加熱手段を備えてもよい(請求項7)。これにより、容器内部の漆液を精製したい漆の性質に応じて加熱することができ、希望する精製条件を容易に設定することができる。
【0021】
さらに、容器と支持台との間に、容器を包含する上部が開口したジャケットを備えると望ましい(請求項8)。これにより、ジャケットに加熱した水などの熱媒体を入れると、容器の外周を熱媒体が加熱し、その熱が容器内部の漆液に伝達する。従って、効率よく漆液を加熱することができ、希望する漆の精製条件を容易に設定することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
【0023】
〈漆精製方法〉
本発明である漆精製装置は、漆の木から掻き取った漆液を精製処理し、当該漆液を塗料化するものである。まず、漆の精製方法を説明する。
【0024】
漆の精製は、主に「なやし」及び「くろめ」という工程から成る。「なやし」とは、生漆(漆の木から掻き取ったままの漆)を容器に入れて摺り込むように攪拌する操作のことである。これにより、漆液の成分を均一分散されて乳化している粒子が細かくされる。また、「くろめ」とは、漆液の入った容器の上に、電熱器、赤外線ランプなどを吊して、当該漆液の表面積を広げるよう攪拌する作業をいう。これにより、漆液中の水分がゆっくりと蒸発していき、その後、透明になる。そして、水分を約3%残して作業を終了する。すなわち、加熱脱水を行うわけである。
【0025】
このようにすることにより、ウルシオールとゴム質(多糖)と含窒素物(糖蛋白)と少量のラッカーゼ酵素と水分によって構成されている油中水滴型エマルション(エマルション:液体の中に他の液体がコロイド的な細かい大きさで分散しているもの、乳濁液)である漆液は、ウルシオールがラッカーゼ酵素によって酸化されて重合していくのであるが、当該生漆液中の水滴が微粒化される。そして、この微粒化により、漆液の耐久性が向上し、流展性が良くなり、塗膜の艶も出るようになる。
【0026】
〈装置の全体構成〉
上記のような漆精製処理を行う漆精製装置を図1に示す。図1は、当該装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【0027】
この図1に示す漆精製装置は、漆液(図示せず)を入れる容器1と、この容器を支持する支持台2と、容器2内の漆液を攪拌する攪拌羽根3と、この攪拌羽根3に回転力を伝達する軸部材4と、この軸部材4を容器1の開口部側から回転駆動する駆動手段5と、この駆動手段5を保持する駆動手段保持機構6とを備えている。そして、軸部材4が、攪拌羽根3を貫通して所定の長さの突出部41を形成すると共に、この突出部41に対応した凹部11を容器の内底面に形成し、容器1の支持台2に、当該容器1を上下方向に可動する可動機構21を備えている。
【0028】
以下、これを詳述する。ここで、図2は、容器1を示す図であり、図2(a)は容器1の上面図、図2(b)は容器1の断面側面図である。図3は、攪拌羽根3及び軸部材4の構成を示す図であり、図3(a)はその正面図、図3(b)は側面図である。
【0029】
〈容器〉
容器1は、上部が開口して、側壁が所定の高さを有する断面コ字状の容器であり、内部に液体を溜めることができる。この容器1は、内底面が平坦であり、円形状である(図2(a)、(b)参照)。そして、容器1の内壁面は、当該容器1の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成されている。すなわち、当該容器1の側壁が、開口部に向かうにつれて徐々に容器1の外側に広がるよう形成されていて、曲面形状になっている。但し、当該容器1の形状は、円形及びテーパー状に限定されるものではない。
【0030】
そして、容器1の大きさは、精製する漆液の量により異なるが、例えば、▲1▼生漆5g以下の精製処理には、内底面の直径が60〜80mm、開口部の直径が80〜100mm、深さ40〜60mm、厚さが4〜115mmの容器1、▲2▼生漆5g〜20gの精製処理には、内底面の直径が80〜110mm、開口部の直径が100〜140mm、深さ40〜60mm、厚さが4〜15mmの容器1、▲3▼生漆10g〜50gの精製処理には、内底面の直径が1100〜1500mm、開口部の直径が1400〜2000mm、深さ40〜80mm、厚さが4〜20mmの容器1、を使用すると、比較的少量の漆精製装置として利用しやすい。但し、容器1の大きさは、上記のような大きさに限定されるものではない。
【0031】
また、この容器1の内底面の中心には、所定の深さを有する凹部11が形成されている。この凹部11は、容器1の内底面に対して垂直方向に、すなわち、図1の下方向に向かって掘られて形成されている(図2(a)、(b)参照)。この凹部11の深さは、例えば7mmである(具体的には、円柱状の部分が5mm、円錐状の部分が2mmである)。そして、この凹部11には、後述するように、軸部材4の端部が嵌合するようになっている。但し、凹部11の深さは上記の長さに限定されるものではない。また、容器1には漆液が入れられるため、当該凹部11は、容器1を貫通するものではない。
【0032】
また、この容器1は、アルミニウム製である。容器1をアルミニウムにて製造することにより、漆液とアルミニウムとは反応することがないため漆液が黒色に着色することを抑制でき、さらに、加工の容易化、耐久性向上、低価格化などを図ることができる。
【0033】
但し、容器1の材料はアルミニウムに限定されるものではないが、他の材料では以下のような不都合が生じる。例えば、鉄は、漆液と反応して当該漆液が黒色に着色してしまうという問題が生じる。この場合には、後述する攪拌羽根3を鉄などにすると、金属製の容器1と攪拌羽根3とが接触して、この接触により摩耗金属粉が発生することにより、より漆液の変色が助長されてしまう。また、従来からの大型の漆精製装置における容器1は木製であるが、当該実施形態における小型な漆精製装置の容器1を木製とすると、上記のような摩耗金属粉の発生は防止できるが、製造が容易ではなくコストがかかってしまう。また、繰り返し精製試験を行うような場合を考えると、耐久性の問題が生じる。
【0034】
さらに、容器1の外側の底面、すなわち、後述する支持台2との当接面には、4つのねじ孔が形成されている(図1、図2参照)。このねじ孔には下部からねじが挿通するようになっていて、後述するよう容器1と支持台2とが固着するようになっている。
【0035】
〈支持台〉
支持台2は、上記容器1を下部から支持するものであり、その上部は平坦な板状になっている。そして、この支持台2は、上述したように容器1と一体的になっている(図1参照)。すなわち、支持台2の平坦な上面には上記容器1のねじ孔に対応した貫通孔が形成されていて、この貫通孔と上記容器1のねじ孔にねじが挿通し、当該容器1が支持台2に固定されている。但し、支持台2と容器1とは、ねじにより一体的に結合していることに限定されない。支持台2の上面に容器1を固定するねじ以外の固定機構が備えられていて、当該容器1を支持台2の上面に固定してもよい。すなわち、支持台2から容器1が切り離せるようになっていてもよい。また、支持台2に容器1が溶接にて固着されていてもよい。
【0036】
さらに、この支持台2には可動機構21が備えられていて、当該支持台2の高さが変動、すなわち、上面にある容器1の位置が上下方向に移動するようになっている(図1参照)。
【0037】
この可動機構21は、ねじジャッキにより形成されている。このねじジャッキは、一般的なねじジャッキと同一の作用効果を有するものである。従って、この可動機構21は、図1の左側にあるハンドル21aを矢印方向に回転させることにより、当該ハンドル21aと共にねじ軸が回転して、図1に示すアーム部21cを連結する軸21dの距離が変動し、当該アーム部21cの間隔が狭まったり開いたりする。これにより、支持台2の高さを調節することができる。
【0038】
そして、上記のように調節することにより、容器1の内面と後述する攪拌羽根3との間隙を調節し、任意の攪拌条件を設定することができる。これについては後述する。また、攪拌羽根3の位置が固定されている場合であっても、可動機構21を操作し、容器1の開口部よりも攪拌羽根3が上方に位置するよう当該容器1の位置を下げることにより、容易に容器1を取り出すことができる。すなわち、攪拌羽根3と容器1とを隔離することができる。従って、容器1内の漆液の取り出し、あるいは、容器1の手入れ等が容易になる。
【0039】
ここで、上記可動機構21は、ねじジャッキに限定されるものではない。可動機構21上面の容器1の位置を上下動することができるものであればよい。従って、機械的に作動することに限らず、電気的に作動するものであってもよい。但し、当該装置が少量の漆液の精製を対象とするため、上部に支持する容器1が比較的小さいので、可動機構21自体の構造が比較的簡単であり、小型に形成できるものが望ましい。
【0040】
〈攪拌羽根〉
攪拌羽根3は、所定の厚みを有する板状の部材である(図3(a)、(b)参照)。この攪拌羽根3は、その両端部を上述した容器1の内壁面に向け、長さ方向の一方の厚み部分を容器1の内底面に他方を開口部に向けて配設されている。従って、攪拌羽根3は、円形である容器1内底面の中心を通って位置している(図2(a)参照)。
【0041】
そして、容器1の内底面と対向する攪拌羽根3の一方の厚み部分は、その長さが円形である容器1内底面の直径よりも少し短く形成されている。そして、容器1の開口部側に位置する他方の厚み部分は、その長さが一方の厚み部分よりも長く形成されている。具体的には、当該攪拌羽根3が容器1の内底面に位置する場合において、その位置の容器1の直径よりも少し短く形成されている。従って、図3(a)に示すように、板状部材である攪拌羽根3は、容器1の形状に対応して台形である。
【0042】
また、攪拌羽根3の一方の厚み部分、すなわち、容器1内底面に対向する面は、当該内底面と同様に平坦である。そして、攪拌羽根3の両端部、すなわち、容器1内壁面に対向する面は、当該内壁面に対応した曲面となっている。従って、容器1の内壁面は凹状であるのに対し、攪拌羽根3の両端部は、凸状の曲面となっている。
【0043】
さらに、この攪拌羽根3の中央部には、軸部材4を挿通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、上述した容器1の中心に形成れた凹部に対応するものである。従って、貫通孔は、板状である攪拌羽根3の長さ方向の中心を、当該長さ方向に垂直に貫通している。
【0044】
また、この攪拌羽根3は、木製である。攪拌羽根3を木製にすることにより、上述した容器1を金属製にした場合であっても、当該容器1との接触により、攪拌羽根3が容器1を削ることがないため、摩耗金属粉の発生を防止することができる。従って、金属粉による精製漆の質の低下の抑制を図ることができる。但し、攪拌羽根3は、上記形状に限定されるものではなく、さらに、木製に限定されない。例えば、片羽根であってもよく、木以外の他の材料にて形成されていてもよい。
【0045】
〈軸部材〉
軸部材4は、ステンレス製の軸である。但し、当該軸部材4は、ステンレス製に限定されるものではない。この軸部材4は、一端部は駆動手段5に連結し、当該駆動手段5から回転力が付勢される。そして、他端部には、上記攪拌羽根3が係止手段を介して係止されていて、駆動手段5からの回転力を伝達している。このとき、他端部は、上記攪拌羽根3の中央に形成された貫通孔に挿通し、当該他端部の先端を攪拌羽根3から所定の長さ突出している(突出部41、図3(a)参照)。この突出部41は、前述したように、容器1中央に形成された凹部11に嵌合するようになっている。従って、突出部11は、当該凹部11の深さに対応して攪拌羽根3から突出している。
【0046】
これにより、軸部材4の上端部は駆動手段5にて、他端部は容器1の凹部11にて支持されているため、当該軸部材4は回転時にぶれることなく回転し、従って、軸部材4に係止されている攪拌羽根3の回転も安定する。また、突出部41が所定の長さを有すると共に、支持台2に可動機構21を備えたことにより、攪拌羽根3と容器1との間隙の調節を容易に行うことができる。この詳細は後述する。
【0047】
ここで、軸部材4には、攪拌羽根3が当該軸部材4に沿って上下動自在に係止手段7を介して係止されている。すなわち、攪拌羽根3の位置を調節することにより、上述した軸部材4の突出部41の長さを変更することできる。さらに、攪拌羽根3は、軸部材4に着脱自在に係合手段8を介して係合されている。すなわち、攪拌羽根3は、軸部材4と共に回転するようになっていて、軸部材4から取り外し可能であり、交換できるようになっている。そして、本実施形態においては、上記係止手段7と係合手段8とが一体的に形成されている。この一体的に形成された係止手段7及び係合手段8は、図3(a)、(b)に示すように、その上部に係止手段7を、下部に係合手段8を有する。
【0048】
係止手段7は、直方体であり、その中央部には、軸部材4を挿通する貫通孔が形成されている。また、この係合手段7の所定の面には、上記貫通孔に対して垂直に貫通する係止ねじ孔71が形成されている(図3(b)参照)。この係止ねじ孔71には、当該係止ねじ孔71が形成されている面からねじ72が挿入される。そして、このねじ72の先端部が係止ねじ孔71を貫通して軸部材4に当接し、さらに、押圧することにより係止手段7を軸部材4の所定箇所に係止することができる。
【0049】
また、係合手段7は、上記貫通孔が形成されている一方の面、すなわち、図3(a)における下側の面が、攪拌羽根3に当接している。そして、この係合手段7の底面の厚さ、すなわち、攪拌羽根3と当節している厚み方向の長さは、当該攪拌羽根3の厚みよりも長く形成されている(図3(b)参照)。この長く形成されている底面部分、すなわち、底面が攪拌羽根3に当接しているときに当該攪拌羽根3からはみ出している両方の部分には、係合部材8が一体的に固着している。
【0050】
係合部材8は、攪拌羽根3を挟む2枚の板状部材から成っている(図3(a)、(b)参照)。この係合部材8には、軸部材4を対象に2カ所に一対の係合ボルト孔81が形成されている。また、この係合ボルト孔81に対応して、攪拌羽根3にも羽根側ボルト孔31が形成されている。そして、これらボルト孔81には、ステンレス製のボルト82が挿通され、当該ボルト82がステンレス製のナット83により固定される。従って、攪拌羽根3は、係合部材8に挟まれ、ボルト82ナット83により固定される。
【0051】
従って、上述したように、一体的に形成された係止手段7及び係合手段8は、図3(a)、(b)に示すように、正面から見ると逆T字状に形成されていて、側面から見ると、下側に開口部を有するコ字状に形成されている。この開口部には、攪拌羽根3が嵌合され、ボルト82ナット83により係合されるようになっている。そして、当該一体的な係止部材7及び係合部材8と攪拌羽根3とに軸部材4を挿通し、任意の位置にて上部の係止部材7に形成された係止ねじ孔71にステンレス製のねじ72を挿入することにより、当該軸部材4の任意の位置に攪拌羽根3を係止することができる。
【0052】
このようにすることにより、攪拌羽根3を軸部材4に沿って上下方向に移動できるようにしたので、軸部材4の先端部であり攪拌羽根3から突出する突出部41の突出長さを調節することができる。従って、前述した容器1に形成した凹部11の深さ制限されることなく、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節することができる。また、軸部材4から攪拌羽根3を容易に取り外すことができ、当該軸部材4の手入れ、あるいは、交換等を容易に行うことができる。さらに、係合部材8を板状部材にて形成したことにより、攪拌羽根3の剛性を高め、当該攪拌羽根3の破壊を抑制することができる。
【0053】
ここで、係止手段7と係合手段8とは、上記の形状に限定されない。また、上記実施形態においては、係止手段7と係合手段8とが一体的に形成されている場合を例示したが、これに限定されない。係止手段7と係合手段8とが溶接、あるいは、機械的に結合していてもよい。さらに、係止手段7、係合手段8は、いずれか一方のみが備えられていてもよい。
【0054】
〈駆動手段〉
駆動手段5は、所定のトルクを有するモータにより形成されていて、軸部材4に回転力を付勢する。すなわち、この駆動手段5により、軸部材4の端部に備えられている攪拌羽根3が回転するようになっている。この駆動手段5は、具体的には、高粘度用、すなわち、高いトルクを出力できるもの、加えて、トルクの値を所定の値に調節しやすいものが望ましい。さらに、駆動手段5は、正逆回転機能を有するとなお望ましい。
【0055】
〈駆動手段保持機構〉
駆動手段保持機構6は、上記駆動手段5を容器1の上部に保持する機構である。駆動手段5を保持することができるスタンドであれば、形状は問わない。そして、この駆動手段保持機構6に温度計(図示せず)を吊すと共に、加熱手段としての赤外線ランプ(図示せず)を吊してもよい。このとき、赤外線ランプは、容器1上部から漆液を加熱するような位置に吊し、温度計を、その温度計測部が容器1内の漆液に浸るような高さに調節して吊す。
【0056】
これにより、漆液を上部から必要に応じて加熱し、その温度を温度計により計測することができる。従って、容器1内部の漆液を容易に加熱することができると共に、当該漆液の温度調節を容易に行うことができ、希望する漆の精製条件を設定することができる。
【0057】
また、上述のように、加熱手段を設けたことに伴い、上記容器1内部の温度を測定する温度計を当該容器1に内蔵し(図示せず)、その測定温度を表示する表示部(図示せず)を当該容器1の外面に設けてもよい。さらに、この表示部は、液晶によるディジタル表示であってもよい。これにより、当該装置の利用者は、温度を読みとりやすくなる。
【0058】
次に、本実施形態の動作について、図1を参照して説明する。
【0059】
まず、支持台2の可動機構21のハンドル21aを所定の方向に回転して、当該支持台2の高さを低くする。そして、支持台2と一体的に成っている容器1の開口部に攪拌羽根3をセットする。このとき、攪拌羽根3の下部に突出している軸部材4の突出部41を、容器1内底面の凹部11の真上に位置するようにする。
【0060】
続いて、可動機構21のハンドル21aを回し、支持台2の高さを高くして容器1に位置を上方に移動する。このとき、上記突出部41と凹部11とが確実に嵌合するようにする。そして、さらに可動機構21のハンドル21aを回転することにより、希望する攪拌条件に対応するよう攪拌羽根3の底面と容器1の内底面との間隙を微調整する。
【0061】
続いて、容器1内部に漆液を入れ、駆動手段5を所定の回転数にて回転させる。また、必要に応じて、当該回転数を変更させる。
【0062】
このようにすると、攪拌羽根3が回転して容器1内にて漆液がこん練される。そして、このとき、漆液が攪拌羽根3と容器1内底面との間隙にて摺り込まれて、当該漆液の乳化粒子が細かく分散する。さらに、容器1内壁面においても、攪拌羽根3により漆液が分散されるため、効率的に精製処理を行うことができる。これにより、漆液の流展性がよくなり、塗膜の艶もよくなる。
【0063】
また、軸部材4は、上端を駆動手段5に、下端を凹部11により支持されているので、ぶれることなく回転する。従って、攪拌羽根3もぶれずに回転するため、当該攪拌羽根3が容器1に接触することを抑制することができ、攪拌羽根3、及び、容器1の摩耗、損傷を抑制し、それらの摩耗粉の発生をも抑制することができる。このため、精製漆に不純物が混入することを抑制することができる。
【0064】
続いて、さらに、異なる精製条件にて漆を精製する場合には、まず、ハンドル21aを回転させて容器1の位置を下げ、当該容器1を攪拌羽根3の真下から取り出す。そして、容器1内部の精製漆を取り出して当該容器1を掃除した後、上記同様に再び攪拌羽根3に容器1をセットする。このとき、前回とは異なる精製条件を設定すべく、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節する。これは、可動機構21のハンドル21aを回すことにより、容易に行うことができる。そして、上記同様に、容器1に漆液を入れて攪拌する。
【0065】
このようにすると、ハンドル21aを回すという簡単な操作のみで漆液の攪拌条件を設定することができるため、繰り返して精製試験を行うことが容易となる。このため、少量の漆液を対象として、良質の精製漆を得るための最適な精製条件を把握すべく、繰り返し精製条件を変えて試験を行うことができる。これにより、美術工芸品の制作や修理保存に当たって要望される任意の品質(粘度、乾燥性、光沢性、レベリング性)を得ることができる。
【0066】
また、突出部41を所定の長さ設けると共に、この突出部41が嵌合する凹部11も所定の深さに形成したので、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を多少広げたとしても、突出部41と凹部11との嵌合状態は保たれる。従って、攪拌羽根3が安定して回転するため、上記同様の効果を得ることができる。
【0067】
さらに、攪拌羽根3と容器1内底面との間隙を調節するに伴って、攪拌羽根3の両端部と容器1内壁面との間隙も変更される。従って、容器1内壁面においても漆液の分散が行われるため、上記同様の効果を得ることができる。
【0068】
その後、さらに精製条件を変更する場合であって、攪拌羽根3と容器1との間隙を突出部41の長さ以上にしたい場合には、係止手段7であるねじ72をゆるめて攪拌羽根3を上方に移動し、所定箇所にてねじ72を締めて当該攪拌羽根3を軸部材4に係止する。
【0069】
このようにすると、容器1の位置の下げすぎにより、突出部41が凹部11から外れて攪拌羽根3の回転が不安定になることを抑制することができる。すなわち、突出部41が凹部11に嵌合したまま攪拌羽根3を上方に移動させるので、軸部材4の2点支持状態を保つことができ、当該攪拌羽根3の回転の安定性を保つことができる。
【0070】
また、繰り返し精製処理を行うことにより、攪拌羽根3が摩耗し、あるいは、破損等した場合には、係合手段8のボルト82ナット83をゆるめて当該攪拌羽根3を取り外し、新しいものと交換する。従って、攪拌羽根3の交換を容易に行うことができる。
【0071】
ここで、攪拌羽根3は、図3(a)、(b)に示すような形状に限定されない。当該攪拌羽根3の他の例を、図4を参照して説明する。
【0072】
図4に示す攪拌羽根30は、軸部材4の下端部よりも上方に係合されている。このとき、攪拌羽根30は軸部材4に係合する係合手段80により係合されている。この係合手段80は、軸部材4を挟んで当該軸部材4に溶接された2枚の長方形の板状部材にて形成されている。そして、この係合手段8には、1枚の板状部材につき4つの係合ボルト孔が形成されていて、相対する他方の板状部材にも係合ボルト孔が形成されている。従って、攪拌羽根30には、係合ボルト孔に対応した羽根側ボルト孔が形成されていて、これらの孔にボルトを挿入することにより、軸部材4に攪拌羽根30を係合している。
【0073】
そして、この係合部材80に係合する攪拌羽根30は、木製で2枚に分割されている。すなわち、図3(a)に示した攪拌羽根3を、中央にて分割した形状になっている。このようにしても、上記同様に攪拌羽根30の容器1に接触しやすい箇所は木製であるため、当該攪拌羽根30が仮に容器1に接触したとしても摩耗金属粉の発生は抑制される。また、攪拌羽根30も消耗、あるいは、損傷等が生じた場合に、片羽根ずつ交換することができ、装置維持コストを抑えることができる。
【0074】
さらに、攪拌羽根30を係合する係合手段80を、軸部材4に溶接により固着するため、軸部材4の回転により攪拌羽根30が軸部材4に対して回転してしまうことを抑制することができる。従って、攪拌羽根30が比較的大きい場合であって攪拌時に当該羽根30に大きな負荷がかかる場合であっても、攪拌羽根30の軸部材4に対する回転を抑制され、安定した回転を確保することができる。また、係合手段80である板状部材の面積を大きくすることで、攪拌羽根30の強度を増すことができる。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態を、図5を参照して説明する。図5は、漆精製装置の構成を示す部分断面図である。
【0076】
当該第2の実施形態における漆精製装置は、図1に示す第1の実施形態における漆精製装置とほぼ同一の構成要素を備えている。そして、図6における第2の実施形態では、さらに、容器1と支持台2との間に、容器1を包含する上部が開口したジャケット9を備えている。
【0077】
このジャケット9は、上記漆液を入れる容器1を内部に納めることができる大きさの容器であり、断面コ字状で開口部及び内底面が円形状である。そして、ジャケット9の底面には、上述した容器1の底面に形成されたねじ孔に対応して4つの貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔を支持台2と容器1とを結合するねじが挿通し、当該ねじが締められることにより、ジャケット9が支持台2と容器1とに挟まれて結合する。
【0078】
そして、このジャケット9には、水などの液体の熱媒体が入れられる。また、これに伴い、ジャケット9には、入れられた液体の熱媒体に浸るよう熱媒体加熱手段としてのヒーター91が備えられている。
【0079】
このようにすることにより、ヒーター91を加熱するとジャケット9内の熱媒体が加熱され、この熱媒体は常に容器1に接しているため当該容器1が加熱される。従って、容器1内部の漆液も加熱される。このとき、容器1をアルミニウムにて形成すると、熱伝導率がよいため、ジャケット9内の熱媒体からの熱が効率よく容器1内部の漆液に伝達し、漆液の加熱を効率よく行うことができ、当該漆液の温度調節を容易に行うことができる。
【0080】
ここで、上述したように、容器1内の漆液に温度計を浸してもよく、また、ジャケット9内の熱媒体に温度計を浸してもよい。そして、これら温度計の温度表示を参照して、精製する漆液の温度管理を行ってもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の漆精製装置によると、攪拌羽根を端部に備えて当該羽根に回転力を伝達する軸部材を、当該羽根から所定の長さ突出させて突出部を設けると共に、この突出部に対応した凹部を容器の内底面に形成し、容器の支持台に、当該容器を上下方向に可動する可動機構を備えたので、当該可動機構を操作することにより攪拌羽根と容器内底面との間隙を容易に調整することができると共に、軸部材の突出部が所定の長さを有しているため、上記間隙を調整した場合でも当該突出部が容器の凹部に嵌合した状態を保ち、軸部材は両端部を支持されて回転し、従って、攪拌羽根の回転が安定する、という従来にない優れた効果を有する。
【0082】
特に、精製条件を少しずつ変更して繰り返し精製試験を行うような場合には、攪拌羽根と容器との間隙を容易に変更できため、当該繰り返しの試験を短時間に実行することができ、精製における最適条件を短時間にて見つけだすことも可能である。そして、容器が攪拌羽根から容易に独立して取り外すことができるので、その都度の容器の手入れ等も容易となる。
【0083】
また、容器の内底面を円形状にすると共に、攪拌羽根の端部が容器の内壁面に所定の間隙を有する長さに形成し、当該攪拌羽根の端部を、容器の内壁面の形状に対応して形成した場合には、容器の内壁面においても攪拌羽根と間隙が形成されるので、当該内壁面においても漆液の乳化粒子を摺り込むように分散することができ、当該分散の面積を拡大することができるので、漆液の攪拌効率の向上を図ることができる。
【0084】
そして、特に、容器の内壁面を、当該容器の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成した場合には、さらに、摺り込み面積が大きくなるので、より攪拌の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図2】図1に開示した容器を示す図であって、図2(a)は上面図であり、図2(b)は側方からの断面図である。
【図3】図1に開示した攪拌羽根及び軸部材を示す図であって、図3(a)は正面図であり、図3(b)は側面図である。
【図4】図1に開示した攪拌羽根の他の例を示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図6】従来例の漆精製装置の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 容器
2 支持台
3,30 攪拌羽根
4 軸部材
5 駆動手段
6 駆動手段保持機構
7 係止手段
8,80 係合手段
9 ジャケット
11 凹部
21 可動機構
41 突出部
Claims (8)
- 漆液を入れる容器と、この容器を支持する支持台と、前記容器内の漆液を攪拌する攪拌羽根と、この攪拌羽根に回転力を伝達する軸部材と、この軸部材を前記容器の開口部側から回転駆動する駆動手段と、この駆動手段を保持する駆動手段保持機構とを備え、
前記軸部材が、前記攪拌羽根を貫通して所定の長さの突出部を形成すると共に、この突出部に対応した凹部を前記容器の内底面に形成し、
前記容器の支持台に、当該容器を上下方向に可動する可動機構を備えたことを特徴とする漆精製装置。 - 前記容器の内底面を円形状にすると共に、この内底面の中心を前記攪拌羽根の回転中心とし、
前記攪拌羽根を、当該攪拌羽根の端部が前記容器の内壁面に所定の間隙を有する長さに形成すると共に、当該攪拌羽根の端部を、前記容器の内壁面の形状に対応して形成したことを特徴とする請求項1記載の漆精製装置。 - 前記容器の内壁面を、当該容器の開口部の空間断面積が当該容器の内底面の面積よりも大きくなるようテーパー状に形成したことを特徴とする請求項2記載の漆精製装置。
- 前記攪拌羽根を、前記軸部材に沿って上下動可能な係止手段を介して当該軸部材に係止したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の漆精製装置。
- 前記容器を金属部材にて形成すると共に、前記攪拌羽根を非金属部材にて形成したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の漆精製装置。
- 前記攪拌羽根を、前記軸部材に係合手段を介して着脱自在に係合したことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の漆精製装置。
- 前記駆動手段保持機構の所定箇所に、前記容器内の漆液を上部から加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の漆精製装置。
- 前記容器と前記支持台との間に、前記容器を包含する上部が開口したジャケットを備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の漆精製装置。
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