JP3737905B2 - 車両用ペダル取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はブレーキペダルなどの車両用ペダル取付構造に関し、特に車体の前方から負荷が入力した場合にペダルを前方に変位させることを図った車両用ペダル取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のブレーキペダル取付構造は、ブレーキペダルを揺動可能に支持するペダルブラケットをダッシュパネルに固定した構造とされていた。しかし、車体前方から所定以上の負荷が入力したときにダッシュパネルが後方に変位すると、それに伴ってブレーキペダルも後方に変位するという問題があった。
【0003】
そこで、例えば特開平10−181637号公報に開示されているように、ダッシュパネルが後方に変位すると、それに伴ってブレーキペダルが前方に変位するように構成したものが提案されている。その構成を図6を参照して説明すると、ブレーキブースタ36に連結されたブレーキペダル31を前後方向に揺動可能に支持するペダルブラケット32を、相互にヒンジ結合された前部ブラケット33と後部ブラケット34に分割し、前部ブラケット33はダッシュパネル35のブレーキブースタ36の配置部に固定し、後部ブラケット34はその後部を、上記負荷入力時にも後方に殆ど変位しない部材であるピラーツーピラー37に設けたガイドブラケット38における斜め後方下方に向けて延びるガイド面39に、上記負荷入力時には後方に変位可能に固定し、この後部ブラケット34にブレーキペダル31の上端部を枢支軸40にて枢支している。
【0004】
この構成によると、図6に白抜き矢印の如く車体前方から所定以上の負荷が入力して、ダッシュパネル35及びブレーキブースタ36が斜め上方後方に向けて変位すると、仮想線で示すように、後部ブラケット34の後部がガイドブラケット38のガイド面39に沿って斜め後方下方に変位し、それによってこの後部ブラケット34に上端部が枢支されたブレーキペダル31の下部のペダル41を矢印で示すように前方に変位させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図6に開示された構成では、剛性の高いピラーツーピラー37やガイドブラケット38を設け、またペダルブラケット32も前部ブラケット33と後部ブラケット34にて構成する必要があるので、大型の部品を必要とするとともに部品点数が多く、かつ複雑な構成の部品が必要となり、コスト及び重量が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、軽量で簡単な構成で、車体前方からの負荷入力時にも確実にペダルを前方に変位させることができる車両用ペダル取付構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用ペダル取付構造は、車体前方から所定以上の負荷が入力した時に車体後方に変位する第1の車体側部材と第1の車体側部材より後方に配置された第2の車体側部材との間にわたって配設され、第1の車体側部材に前部が固定され、第2の車体側部材とは上部が所定以上の荷重の作用で前後方向に変位可能に固定され、かつペダルの上部を揺動可能に支持したペダルブラケットと、第1の車体側部材へのペダルブラケット固定位置より下方で第2の車体側部材へのペダルブラケット固定位置より前方に位置しかつ車体前方から所定以上の負荷が入力した時にも変位し難い車体側部材に一端が固定され、他端がペダルブラケットに連結されたワイヤとを備えたものであり、車体前方から所定以上の負荷が入力した時に第1の車体側部材が後方に変位すると、ペダルブラケットも後方に変位するが、そのときペダルブラケットは、前方下方に位置するワイヤの一端を中心にしてワイヤを介して斜め後方下方に向かって回動することになり、その結果ペダルブラケット及びそれに支持されたペダルの上部は後方への変位に伴って下方に回動し、ペダルの下部を前方に変位させることができる。
【0008】
また、ペダルブラケットの第2の車体側部材との固定部が、所定以上の負荷が入力したときに破断する脆弱部を介してペダルブラケットの他の部分に連結されていると、所定以上の荷重が負荷されたときに脆弱部が破断してペダルブラケットを確実に後方へ変位させて下方回動させることができ、かつペダルブラケットと第2の車体側部材との固定面がペダルブラケットの変位方向に沿っていなくても、また固定ボルトの締め付けトルクとも関係なく、安定的した作用を確保できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用ペダル取付構造をブレーキペダルに適用した一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0010】
図1、図2において、1は車室、2はその前端部の下部前面を構成しているダッシュパネルであり、その下端は車室1の床面を構成するフロアパネルに連接されている。3は車室1の前端下部におけるダッシュパネル2より後方位置の上部に配設されたカウルパネルである。4はブレーキブースタで、ダッシュパネル2の車室2内側とは反対側に配設され、そのロッド4aが車室1内側に突出されている。
【0011】
5はブレーキペダルで、ペダルブラケット6にてその上端部が前後方向に揺動自在に支持され、下端部に足で操作するためのペダル7が固着されている。ペダルブラケット6は板金製で、上面板6aと両側面板6bを有する縦断面形状略コ字状に形成されるとともに、それらの前端縁からダッシュパネル2に接する取付板6cが連設され、ダッシュパネル2にボルト8にて締結固定され、また上面板6a後部がカウルパネル3の下面にボルト8にて締結固定されている。8aは取付板6cに形成されたボルト穴である。一方、ペダルブラケット6の上面板6aにおけるボルト8のボルト穴は、図3に示すように、ペダルブラケット6の正常な取付状態でボルト8が貫通する部分から前方に向けて長く延出され、かつその前方部分はボルト8の頭部8aが抜け出し得るような大径に形成された瓢箪型長穴9にて構成されている。
【0012】
10はペダルブラケット6の両側面板6bを貫通させて配設された枢支ボルトで、両側面板6b、6b間でこの枢支ボルト10に筒体11が回転自在に套嵌されている。ブレーキペダル5の上端部はこの筒体11に固着され、またこのブレーキペダル5の側部位置に揺動レバー12の基端が固着されている。揺動レバー12の先端にはブレーキブースタ4のロッド4aの先端に設けた連結具13が連結されている。これにより、ペダル7を前方に押してブレーキペダル5を揺動させると、筒体11、揺動レバー12、連結具13を介してブレーキブースタ4のロッド4aを押動させるように構成されている。14はブレーキペダル5を初期位置に向けて揺動付勢するコイルばねで、筒体11に外嵌させて配設され、その一端がブレーキペダル5に他端がペダルブラケット6の上面板6aに係止されている。
【0013】
ダッシュパネル2の下部は車体のフロントサイドメンバ(図示せず)の後端部が連結されて剛性が高く、車体前方からの負荷入力時に変位し難い部分となっており、このダッシュパネル2の下部の車室2側の表面に車幅方向に延びる断面形状略ハット型の補強部材15が固着されている。
【0014】
ペダルブラケット6の車室2内側の側面板6bにおける後部上端部には結合片16が固着され、この結合片16にワイヤ17の一端の連結環17aがボルト18にて固定され、ワイヤ17の他端の連結環17bはボルト19にて補強部材15に固定されている。
【0015】
以上の構成において、車体前方から所定以上の負荷が入力した時、図1に白抜き矢印で示すように、ダッシュパネル2の上部は後方に大きく変位するのに対して下部の後方変位量は比較的小さい。そして、ダッシュパネル2の上部の後方変位によってペダルブラケット6も後方に変位するが、そのときペダルブラケット6の後端部が、後方変位量の小さいダッシュパネル2の下部の補強部材15にワイヤ17を介して連結されているので、ペダルブラケット6の後端部は、矢印aの如く、前方下方に位置する張力部材17の他端の連結環17bを中心にして斜め後方下方に向かって回動することになる。その際、ペダルブラケット6の上面板6aをカウルパネル3に締結固定しているボルト8は、上面板6aが後方に変位するのに伴って瓢箪型長穴9の前方の大径部に向けて相対移動してブレークアウェイし、その結果ペダルブラケット6はその後端部がワイヤ17に拘束されて後方下方に向けて円滑に回動する。かくして、ペダルブラケット6及びそれに支持されたブレーキペダル5の上部はペダルブラケット6の後方への変位に伴って下方に回動し、ブレーキペダル5の下端部のペダル7は、矢印bの如く前方に変位することになる。
【0016】
上記実施形態では、ペダルブラケット6の上面板6aに形成した瓢箪型長穴9の前方の大径部をボルト8がブレークアウェイする例を示したが、図4(a)、(b)に示すように、ペダルブラケット6の上面板6aの後端部に、カウルパネル3に対して締結固定する方形状の固定部21を形成し、その前縁にスリット22を設けて切離し、両側縁は半剪断部23を介して上面板6aの他の部分に連結した構成としても良い。半剪断部23は、所定以上の負荷が入力したときに破断する脆弱部を構成している。8aは固定部21の略中央部に形成されたボルト穴である。
【0017】
このような構成によると、所定以上の負荷が入力するまではボルト8にて強く締結固定しておくことによりペダルブラケット6を高い剛性を持って安定して固定支持でき、しかも所定以上の荷重が負荷されたときに半剪断部23から成る脆弱部が確実に破断して固定部21がブレークアウェイし、ペダルブラケット6を確実に後方へ変位させて下方に回動させることができる。また、図1に図示の如く、ペダルブラケット6とカウルパネル3との固定面がペダルブラケット6の変位方向(a矢印方向)に沿っていなくても、またボルト8の締め付けトルクとも関係なく、半剪断部23の判断によって上記作用を安定的に確保できる。
【0018】
また、脆弱部の構造としては、図4(c)に示すように、固定部21の両側縁にVノッチ部24を形成しても良く、同様の作用が得られる。
【0019】
また、図3のような構成に代えて、図5に示すように、ペダルブラケット6の上面部6aの後端部に隆起段部25を設け、その前端の段面部25aからボルト8が通過可能な長溝26を形成するとともに段面部25aに矩形状の挿入開口26aを形成し、この挿入開口26aを通して隆起段部25を後方から差し込み可能な挿入スリット27aを形成した固定金具27をカウルパネル3側に固着し、この固定金具27に設けたボルト穴28及び長溝26にボルト8を挿通してカウルパネル3に締結固定し、固定金具27にてペダルブラケット6の上面部6aの後端部を、所定以上の負荷が入力したときに後方に変位可能に挟持固定してもよい。
【0020】
【発明の効果】
本発明の車両用ペダルの取付構造によれば、車体前方から所定以上の負荷が入力した時にペダルブラケットは前方下方に位置するワイヤの一端を中心にして斜め後方下方に向かって回動することになり、その結果ペダルブラケット及びそれに支持されたペダルの上部は後方への変位に伴って下方に回動し、ペダルの下部を前方に変位させることができる。また、ワイヤでペダルブラケットを連結するだけで良いので、低コストで軽量な構成にて大きな効果を発揮することができる。
【0021】
また、ペダルブラケットの第2の車体側部材との固定部を、所定以上の負荷が入力したときに破断する脆弱部を介してペダルブラケットの他の部分に連結すると、所定以上の荷重が負荷されたときに脆弱部の破断にてペダルブラケットを確実に後方へ変位させ、張力部材にて下方に回動させることができ、かつペダルブラケットと第2の車体側部材との固定面がペダルブラケットの変位方向に沿っていなくても、また固定ボルトの締め付けトルクとも関係なく、安定的した作用を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のブレーキペダル取付構造の側面図である。
【図2】 図1のA−A矢視図である。
【図3】 ペダルブラケットの図1のB部の詳細斜視図である。
【図4】 本発明の他の実施形態のブレーキペダル取付構造におけるペダルブラケットの構成を示し、(a)は要部の斜視図、(b)は(a)のC−C矢視断面図、(c)は変形例の(b)と同様の断面図である。
【図5】 本発明のさらに別の実施形態のブレーキペダル取付構造におけるペダルブラケットの要部の斜視図である。
【図6】 従来例のブレーキペダル取付構造の側面図である。
【符号の説明】
2 ダッシュパネル(第1の車体側部材)
3 カウルパネル(第2の車体側部材)
5 ブレーキペダル
6 ペダルブラケット
15 補強部材(負荷入力時に変位し難い車体側部材)
17 ワイヤ
21 固定部
23 半剪断部(脆弱部)
24 Vノッチ部(脆弱部)
Claims (2)
- 車体前方から所定以上の負荷が入力した時に車体後方に変位する第1の車体側部材と第1の車体側部材より後方に配置された第2の車体側部材との間にわたって配設され、第1の車体側部材に前部が固定され、第2の車体側部材とは上部が所定以上の荷重の作用で前後方向に変位可能に固定され、かつペダルの上部を揺動可能に支持したペダルブラケットと、第1の車体側部材へのペダルブラケット固定位置より下方で第2の車体側部材へのペダルブラケット固定位置より前方に位置しかつ車体前方から所定以上の負荷が入力した時にも変位し難い車体側部材に一端が固定され、他端がペダルブラケットに連結されたワイヤとを備えたことを特徴とする車両用ペダル取付構造。
- ペダルブラケットの第2の車体側部材との固定部は、所定以上の負荷が入力したときに破断する脆弱部を介してペダルブラケットの他の部分に連結されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ペダル取付構造。
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