JP3737892B2 - 電磁弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファンヒータに用いられる電磁弁に関するものであり、特に詳細には、交流を半波整流または全波整流した電源を印加しても、騒音を発生しにくい電磁弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファンヒータへのガス供給量を制御するものとして、次に示すような電磁弁が用いられている。図6は、従来の電磁弁の断面図である。
従来の電磁弁は、図6に示すように、中空孔102aを備え、外周に導線103が巻かれているコイルボビン102と、中空孔102a内に配設されている非磁性体からなるガイド104と、中空孔102aの上端部に嵌合する固定鉄心105と、中空孔102aの下端部に摺動可能に挿通されている可動鉄心106と、固定鉄心105と可動鉄心106との衝突を防止するゴム等の弾性部材112とを有する。ガイド104の上方にはパッキン115が配設され、ガイド104の下方には、Oリング116が配設されている。固定鉄心105の下方には、下端部が小径とされる外周テーパが形成されて、凸部105aが設けられている。また、可動鉄心106の上端部には、孔106bが形成されている。孔106bの中程から上端部にかけて上端部が小径とされる内周テーパが形成されて、凹部106aが設けられている。一方、可動鉄心106の下端部には、弾性体からなる弁体110が配設されている。弁体110は、復帰バネ111により、図中下向きに付勢されている。
【0003】
C形フレーム107は、固定鉄心105が貫通される固定孔108が形成されている第1側面107aと、第1側面107aに対向する側面であって、ガイド104及び可動鉄心106が挿通される孔109が形成されている第2側面107bと、第1側面107aと第2側面107bとを連結する3側面107cとを有する。第1側面107aと第2側面107bとは、平行に形成されている。第1側面107aと第2側面107bは、コイル101を挟持している。
【0004】
図6に示すように、中空孔102a、ガイド104、固定孔108、固定鉄心105及び可動鉄心106は、同一中心線上に各々配設されている。この中心線は、第1側面の外面及び内面に対して垂直である。
【0005】
従来の電磁弁は、コイル101に通電又は非通電することにより、弁体110の開閉作動を行っている。すなわち、交流の商用電源を不図示のダイオードで半波整流または全波整流した電源をコイル101に通電すると、固定鉄心105が励磁されて、復帰バネ111の付勢力に反して可動鉄心106を吸引する。このとき、凸部105aと凹部106aとは係合する。そして、弁体110が不図示の弁座と離間して、ファンヒータにガスを供給する。一方、コイル101に通電しなくなると、固定鉄心105と可動鉄心106とが復帰バネ111の付勢力により離間し、不図示の弁座と弁体110が当接して、ガスを遮断する。
ここで、従来の電磁弁の固定鉄心105は、僅かな隙間を有して可動鉄心106を吸引する。これにより、従来の電磁弁は、可動鉄心106が固定鉄心105と離間するときに残留磁気の影響を受けることを防止して、応答性を安定させることができた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電磁弁は、半波整流又は全波整流の電源を印加した状態を継続すると、電力の脈動によりうなり音を発生するという問題点があった。すなわち、電圧が弱くなり固定鉄心105の吸引力が弱くなると、可動鉄心106がガイド104内で下方向に摺動した。通常、ファンヒータに印加される商用電源は50〜60ヘルツであり、約0.02秒毎に電圧が変化する。従って、半波整流または全波整流の電源を印加した場合には、可動鉄心106は、約0.02秒毎にガイド104内を上下方向に移動し、固定鉄心105に吸引される度にうなり音の原因となる衝突音を発生させていた。また、可動鉄心106が微小振動すると、応答性に微妙な影響を与えていた。
【0007】
そこで、このようなうなり音の防止対策として、半波整流又は全波整流を、電源基板を変更することにより直流にして、可動鉄心106の微小振動の原因である電力の脈動をなくし、固定鉄心105と可動鉄心106との衝突を防止する方法が考えられる。
しかしながら、全波整流を直流に変更する電源基板は高価であり、材料費がかかるという問題点がある。また、電源基板を変更するには、既に電磁弁に設けられている電源基板を無駄にし、しかも、変更に手間がかかるので得策ではない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、商用電源を半波整流又は全波整流した電源をファンヒータに印加した場合に、可動鉄心の微小振動によるうなり音の発生を抑止することができ、しかも、安定した応答性を確保することができる電磁弁を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の電磁弁は次のような構成を有している。
(1)中空孔を備え、外周に導線が巻かれてなるコイルボビンと、前記コイルボビンを保持し、一方に開口するC形フレームと、前記中空孔内の一端に嵌合される固定鉄心と、前記中空孔内の他端に摺動可能に保持される可動鉄心とを有し、交流を全波整流又は半波整流した電源を用いる電磁弁であって、前記C形フレームに前記固定鉄心用固定孔が形成され、前記固定孔を貫通して前記固定鉄心が前記C形フレームにかしめ固定され、前記固定鉄心の中心線が、前記固定孔の中心線に対して斜交する。
【0010】
(2)(1)に記載する電磁弁であって、前記固定鉄心の中心線に直交する切欠段差部が、前記固定孔を有する第1側面の内面の前記固定孔付近に形成され、前記切欠段差部に前記固定鉄心を当接することにより、前記固定鉄心と前記固定孔とが、位置決めされる。なお、前記切欠段差部に変えて、前記固定鉄心の中心線に直交する勾配を、前記固定孔から前記開口部に向かって前記第1側面の内面に形成してもよい。
【0011】
(3)(2)に記載する電磁弁において、前記第1側面が、対向する第2側面に対して、前記開口部側が狭くなるように傾斜し、前記第1側面の内面であって、前記切欠段差部又は前記勾配が形成されていない部分に、前記可動鉄心を案内するガイドを固定することにより、前記ガイドの中心線が前記第1側面の外面に対して直交し、前記ガイドが、前記中空孔内に斜設される。
【0012】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する電磁弁において、前記コイルに通電したときに、前記可動鉄心が、一端を固定鉄心に接し、他端を前記ガイドに接して、前記ガイド内で傾斜して保持される。
【0013】
次に、上記構成を有する本発明の電磁弁の作用を説明する。
C形フレームは、固定鉄心を貫通させる固定孔が形成されている第1側面と、それに対向する第2側面と、第1側面と第2側面とを連結する第3側面とを有する。固定孔周辺の第1側面の内面には、切欠段差部が形成されている。すなわち、切欠段差部は、第3側面側の固定孔の端に接する接線から第3側面の反対側の第1側面の内面であって、かつ、ガイド4の内周に囲まれている部分に、所定の段差を有して形成されている。
【0014】
固定鉄心は、固定孔に貫通させて、第1側面の内面と切欠段差部とに当接させると、第1側面の外面に対して所定の角度傾く。固定鉄心を第1側面に対して所定の角度傾斜させて位置決めした後、固定鉄心の第1側面の外面に突出した部分を外部から加圧して、固定鉄心を第1側面にかしめ固定する。ここで、固定鉄心は、位置決めされた状態でかしめ固定されるので、かしめられない部分は、第1側面の外面に対して所定の角度傾斜する。よって、かしめられた部分の反対側の端面は、第1側面の外面に対して所定の角度傾斜する。
従って、固定鉄心のかしめ部の反対側の端面に対して直交する固定鉄心の中心線は、第1側面の外面に対して垂直に形成されている固定孔の中心線に対して所定の角度を有して傾斜する。ここで、所定の角度とは、固定鉄心がガイドに接する程度の角度をいい、1〜2度であることが望ましい。
【0015】
また、ガイドは、切欠段差部の外周に沿って、第1側面の内面に垂設される。切欠段差部が形成されていない部分の第1側面の外面と内面とは平行であるから、ガイドは第1側面の外面に対して垂直である。このとき、ガイドの中心線は、固定孔の中心線と同一になるように配設されるので、固定孔の中心線と斜交する固定鉄心の中心線は、ガイドの中心線と斜交する。また、ガイドは可動鉄心を案内するので、ガイドと可動鉄心の中心線は同一直線上にあり、固定鉄心の中心線は、可動鉄心の中心線に対しても斜交する。
従って、コイルに通電すると、固定鉄心の可動鉄心側の端面における第3側面の反対側の端と、可動鉄心の固定鉄心側の端面とが最接近する。この最接近している箇所を第1接点とする。固定鉄心と可動鉄心とが第1接点において最接近すると、可動鉄心は、その第1接点を中心として第3側面側に回動し、ガイドに当接する。この当接する箇所を第2接点とする。よって、可動鉄心は、ガイド4内に斜設されて、第1接点および第2接点に保持される。ここで、第1、第2接点は、可動鉄心の中心線に平行であって、可動鉄心の中心線を挟んでなる別個の直線上に、各々存在している。
【0016】
ここで、C形フレームの第1側面が、第3側面の反対側が第3側面側よりも狭くなるように第2側面に対して傾斜しているので、第1側面の内面に垂設されているガイドは、第2側面の内面に垂設されているコイルボビンの中空孔内に、当接するように斜設される。このとき、ガイドが中空孔に当接する部分は、第1、第2接点とほぼ同じ位置に存在する。コイルに通電すると、コイルが励磁されて、磁気力を発生する。ガイドがコイルと当接している部分は、ガイドの他の部分と比べると、磁気力の影響を受け易い。従って、第2接点に作用する磁気力は、第2接点が可動鉄心を保持する力に助勢する。
【0017】
従って、可動鉄心は、可動鉄心の中心線に平行であって、可動鉄心の中心線を挟んでなる別個の直線上に各々存在している第1接点と第2接点とに保持され、かつ、第2接点にはコイルに発生した磁気力が作用するので、電圧が低下した場合に、瞬間的に下方向に動かない。
すなわち、電圧が弱くなると固定鉄心の吸引力が低下するので、可動鉄心は復帰バネの付勢力により、固定鉄心と離間して下方向へ移動しようとする。しかし、可動鉄心が静的状態から動的状態に移行する瞬間に、第2接点が可動鉄心に押圧されるので、第2接点には摩擦が生じる。このとき、コイルに発生した磁気力が、第2接点に助勢している。よって、可動鉄心は、瞬間的に下方向に移動せずに、第1接点に接した状態で保持される。従って、電圧が脈動しても可動鉄心は微小振動せず、うなり音を防止することができる。
コイルへ通電されなくなると、可動鉄心は、復帰バネの付勢力により固定鉄心と離間する方向に摺動する。このとき、可動鉄心の中心線は、ガイドの中心線と斜交した状態から同一状態に修正される。
【0018】
また、切欠段差部の換わりに、次のような勾配を形成してもよい。すなわち、固定孔8の第3側面側の端に接する接線から第3側面の反対側の第1側面の内面に、所定の角度傾斜するマイナス勾配を形成してもよい。
固定鉄心が上記勾配に当接されてかしめ固定されるので、固定鉄心と固定孔との位置決めが安定した状態で、正確且つ容易にすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電磁弁について、具体化した実施の形態を挙げ、図面に基づいて詳細に説明する。図1、図2及び図3に第1実施の形態に係る電磁弁を示す。図1は、非通電時の第1実施の形態に係る電磁弁の断面図を示す。図2は、通電時の第1実施の形態の断面図を示す。図3は、第1実施の形態に係る電磁弁の平面図である。電磁弁は、図1に示すように、コイル1とC形フレーム7とを有する。
【0020】
コイル1は、中心部に円筒状の中空孔2aを備え、両端に中空孔2aと同形の孔が形成されたフランジ2bを備えるコイルボビン2と、コイルボビン2の外周に巻かれた導線3とを有する。中空孔2a内には、中空略円筒状の非磁性体のガイド4が挿通されている。ガイド4の図中上端部は、内側に向かって直角に曲成され、当接部4aが形成されている。ガイド4の内部には、中空孔2aの図中上端部に嵌合され、強磁性体の金属からなる固定鉄心5と、中空孔2aの図中下端部に摺動自在に挿通され、強磁性体の金属からなる可動鉄心6とが配設されている。また、ガイド4の上方にはパッキン15が配設され、下方にはOリング16が配設されている。
【0021】
固定鉄心5の下方には、図中下端部が小径とされる外周テーパが形成さた凸部5aが設けられている。また、固定鉄心5の図中上方には、C形フレーム7に当接する段部5bと、段部5bよりも小径に形成される軸5cとが設けられている。
また、可動鉄心6の図中上端部には、孔6bが形成されている。孔6bの中程から図中上端部には、図中上端部が小径とされる内周テーパが形成された凹部6aが設けられている。孔6bの底部には、固定鉄心5と可動鉄心6との衝突音を防止するために、中空円筒状のゴム材等からなる弾性部材12が装着されている。一方、可動鉄心6の図中下方部分は、本体より小径に形成されている。そして、図中下端部には、幅広に形成された係止部6cが設けられている。
可動鉄心6の下端部には、ゴム等の弾性部材からなる略円筒状の弁体10が装着されている。弁体10は、弁体10の内部に中空状に形成された係止孔10aが係止部6cに係止されて、可動鉄心6に装着されている。弁体10は、復帰バネ11により図中下向きに付勢されている。
【0022】
一方、C形フレーム7は、固定鉄心5の軸5cが貫通される固定孔8が形成されている第1側面7aと、第1側面7aに対向する側面であって、ガイド4及び可動鉄心6が挿通される孔9が形成されている第2側面7bと、第1側面7aと第2側面7bとを連結する第3側面7cとを有する。
【0023】
ここで、固定孔8には、固定鉄心5がかしめ固定されている。固定鉄心5と固定孔8とは、固定鉄心5の中心線S2が固定孔8の中心線S1に対して所定の角度θ傾斜するように位置決めされている。この所定の角度θは、固定鉄心5がガイド4に接する程度であることが望ましい。すなわち、所定の角度θが1〜2度であることが望ましい。なぜなら、所定の角度θがこれ以上の角度を有すると、ガイド4内に固定鉄心5を嵌合させることが困難となるからであり、一方、所定の角度θがこれ以下の角度であると、従来の電磁弁と大差がないからである。本第1実施の形態では、この所定の角度θを特に1.5度とする。
【0024】
第1側面7aの内面には、図1及び図3に示すように、所定の段差を有する切欠段差部20が形成されている。切欠段差部20は、図3の斜線部に示すように、固定孔8の第3側面7c側の端に接する接線H1から第3側面7cの反対側の第1側面7aの内面であって、ガイド4の当接部4aの内周に囲まれる範囲に形成されている。ここで、所定の段差は、固定鉄心5を第1側面7aの内面の接線H1部分と切欠段差部20とに当接したときに、固定鉄心5の中心線S2と固定孔8の中心線S1とが所定の角度θを有するように設計されている。
【0025】
次に上記構成を有する電磁弁の作用を説明する。
図1に示すように、固定鉄心5の軸5cを固定孔8に貫通し、固定鉄心5の段部5bを接線H1部分の第1側面7aの内面と、切欠段差部20とに当接する。切欠段差部20が、接線H1から第3側面7cの反対側の第1側面7aの内面に形成されているので、固定鉄心5の下端面は、第1側面7aの外面に対して図中右上がりに傾斜する。このようにして、第1側面7aの外面に対して1.5度傾けられて位置決めされた固定鉄心5は、軸5cの一部を第1側面7aの外面に突出している。この軸5cの突出部分を外部から加圧し、固定鉄心5を第1側面7aにかしめ固定する。このとき、固定鉄心5は、第1側面7aの内面の接線H1部分と切欠段差部20とに段部5bを当接しているので、外圧の影響を受けない。よって、固定鉄心5は、下端面が第1側面7aの外面に対して1.5度右上がりに傾斜した状態で、かしめ固定される。しかも、固定鉄心5の下端面は、第3側面の反対側に偏心している。ここで、固定孔8は、第1側面7aの外面に対して垂直に形成されている。
従って、固定鉄心5の下端面に直交する固定鉄心5の中心線S2は、第1側面の外面に対して直交する固定孔8の中心線S1に対して、第3側面の反対側に1.5度傾斜して斜交する。
【0026】
また、ガイド4は、図1及び図3に示すように、第1側面7aの内面の切欠段差部20の外周部分に、当接部4aを当接した状態で固定されている。切欠段差部20が形成されていない第1側面7aの内面は、第1側面7aの外面に平行なので、ガイド4は、第1側面7aの内面及び外面に対して垂直である。このとき、ガイド4は、中心線が固定孔8の中心線S1と同一直線上になるように配設される。
従って、固定鉄心5の中心線S2は、固定孔8の中心線S1に対して1.5度傾斜しているので、ガイド4の中心線に対しても1.5度傾斜する。
【0027】
また、可動鉄心6は、ガイド4に案内されて摺動するので、可動鉄心6の中心線とガイド4の中心線とは、同一直線上にある。従って、固定鉄心5の中心線S2は、ガイド4の中心線に対して1.5度傾斜しているので、可動鉄心6の中心線に対しても1.5度傾斜する。
【0028】
C形フレーム7の第1側面7aは、図1に示すように、第3側面7cの反対側L1が第3側面7c側L2よりも狭くなるように、第2側面7bに対して傾斜している。よって、第1側面7aに垂設されているガイド4は、第2側面7bに垂設されているコイルボビン2の中空孔2a内に、上端部を第3側面7cと反対側に偏心し、下端部を第3側面7c側に偏心た状態で斜設される。ここで、中空孔2a内に斜設されたガイド4は、上端部が中空孔2aに当接し、下端部が孔9に当接している。前者の当接点を第1当接点T1、後者の当接点を第2当接点T2とすると、第1当接点T1と第2当接点T2とは、図2に示すような位置関係にある。すなわち、第1、第2当接点T1、T2は、ガイド4の中心線に平行な直線であって、ガイド4の中心線を挟んでなる別個の直線上に各々存在している。
【0029】
半波整流または全波整流の電源をコイル1に印加すると、固定鉄心5が励磁されて、可動鉄心6を吸引する。このとき、図1に示すように、固定鉄心5の中心線S2と可動鉄心6の中心線S1とが斜交しているので、固定鉄心5は、図2に示すように、下端面の第3側面7cと反対側の端が凹部6aに最接近するように、可動鉄心6を吸引する。この最接近する部分を第1接点P1とする。
【0031】
可動鉄心6は、更に固定鉄心5に吸引されて、上方向に移動しようとする。しかし、第1接点P1が可動鉄心6の中心に位置せず、第3側面7cの反対側よりに位置しているので、可動鉄心6は、第1接点P1を基点としてガイド4に当接するまで第3側面7c方向に回動する。ガイド4と可動鉄心6の下端部との接点を第2接点P2とする。可動鉄心6は、図2に示すような位置関係にある第1、第2接点P1、P2に挟持される。すなわち、可動鉄心6は、可動鉄心6の中心線に平行であって、可動鉄心6の中心線を挟んでなる別個の直線上に各々存在する第1、第2接点P1、P2に挟持される。
【0032】
半波整流または全波整流の電源をコイル1に印加すると、可動鉄心6が電圧の脈動により下方向に移動しようとするが、可動鉄心6は、図2のような位置関係にある第1、第2接点に挟持されているので下方向に移動しない。
すなわち、電圧の低下にともない固定鉄心5の吸引力が弱くなり、復帰バネ11により、可動鉄心6が下方向に移動しようとする。しかし、可動鉄心6は、ガイド4内に斜設されているので、第2接点P2において瞬間的にガイド4を押圧する。このとき、第2接点P2には摩擦抵抗が生じる。よって、可動鉄心6は、静的状態から動的状態に移行する瞬間において、下方向に移動しない。
【0033】
ここで、商用電源は通常50〜60ヘルツであり、電力変動周期が約0.02秒と高速であるので、可動鉄心6は瞬間的に上下方向へ移動しようとする。
従来の電磁弁は、電圧が低下して固定鉄心105の吸引力が弱くなると、復帰バネ111の付勢力により、可動鉄心106が下方向に移動した。そして、電圧が上昇して固定鉄心105の吸引力が強くなると、可動鉄心106は固定鉄心105に吸引され、衝突音が発生した。よって、半波整流または全波整流を従来の電磁弁に印加すると、連続的な衝突音が生じ、うなり音が発生した。
しかし、本第1実施の形態の可動鉄心6は、電圧の低下に伴い固定鉄心5の吸引力が弱くなり、可動鉄心6が復帰バネ11の付勢力により下方向に移動しようとしても、可動鉄心6が静的状態から動的状態に移行しようとする瞬間に第2接点P2に摩擦抵抗が生じる。そして、この摩擦抵抗が生じている間に、電圧が上昇し固定鉄心5の吸引力が強くなるので、可動鉄心6は下方向に移動しない状態で保持される。従って、可動鉄心6は電圧の脈動により微小振動しないので、うなり音が発生しない。
【0034】
また、コイル1に通電すると、コイル1は励磁されて磁気力を発生する。ガイド4は、図2に示すように、第1、第2当接点T1、T2において中空孔2aに当接しているので、第1、第2当接点T1、T2は他の部分より磁気力の影響を受ける。ここで、第2接点P2と第2当接点T2とは、図2に示すようにほぼ同じ位置にある。よって、可動鉄心6の下端部は、コイル1に発生した磁気力の影響を受けて、第3側面7c側に吸引される。
従って、コイル1に発生した磁気力が、可動鉄心6の下端部の第2接点P2に作用するので、可動鉄心6は、電圧の脈動により下方向に一層移動しにくくなる。よって、可動鉄心6は、より確実に第2接点P2に保持され、電圧の脈動によって下方向に移動しない。
【0035】
コイル1へ通電されなくなると、可動鉄心6の下端部は、固定鉄心5との接点を中心として、通電時とは逆の方向、すなわち、第3側面7cの反対側方向に回動する。そして、可動鉄心6は、図1に示すように、ガイド4と中心線を同じくした状態で、復帰バネ11の付勢力により、弁体10が不図示の弁座とが当接するまで、ガイド4に沿って図中下向きに移動する。
【0036】
以上、第1実施の形態の電磁弁の構成及び作用について説明してきたが、これによれば次のような効果を有する。
(1)固定鉄心5をC形フレーム7の第1側面7aの外面に対して傾斜させ、固定鉄心5の中心線S2と可動鉄心6の中心線S1とを斜交させることにより、コイル1に通電した場合に、可動鉄心6が中空孔2a内において、可動鉄心6の中心線に平行であって、可動鉄心6の中心線を挟んでなる別個の直線上に各々存在する第1、第2接点P1、P2に保持されるので、半波整流または全波整流を印加しても、電圧の脈動に伴い可動鉄心6が下方向に移動しない。
【0037】
すなわち、本発明の電磁弁の可動鉄心6は、電圧の脈動により下方向に移動しようとする。しかし、可動鉄心6は、図2に示すような位置関係にある第1、第2接点P1、P2により挟持されているので、電圧が低下する瞬間においては、第3側面7c側の斜め下方向に移動しようとする。このとき、可動鉄心6の下端部が第2接点P2を押圧し、第2接点P2に摩擦抵抗が生じるので、可動鉄心6は、瞬間的に下方向に移動しない。
商用電源を半波整流または全波整流した電源の電圧変更周期は高速であるので、電圧は瞬間的に切り換えられる。従って、半波整流または全波整流を印加しても、可動鉄心6は固定鉄心5に当接し続けるので微小振動せず、うなり音が発生しない。
【0038】
また、半波整流又は全波整流をそのまま利用することができるので、電源基板の変更が不要であり、しかも、既に備え付けられている基板を無駄にしない。よって、材料費等がかからず、コストダウンを図ることができる。また、電源基板の変更に手間がかからないので、作業効率がよい。
【0039】
(2)C形フレーム7の第1側面7aが、対向する第2側面7bに対して第3側面7cの反対側L1が第3側面7b側L2よりも狭くなるように形成されているので、第1側面7aの内面に垂設されているガイド4は、第2側面7bの内面に垂設されているコイルボビン2の中空孔2a内に、第1、第2当接点T1、T2を有して斜設される。ガイド4は非磁性体であるので、コイル1に通電すると、コイル1に発生した磁気力は、ガイド4全体に均等に作用せず、第1、第2当接点T1、T2周辺に強く作用する。ここで、第2当接点T2は、第2接点P2とほぼ同じ位置にある。よって、コイル1に発生した磁気力は、ガイド4と可動鉄心6の下端部とが接している第2接点P2に作用する。従って、電圧が低下しても、コイル1に発生した磁気力が第2接点P2に助勢しているので、可動鉄心6は、より確実に下方向に移動せず、うなり音の発生を防止することができる。
【0040】
(3)固定孔8周辺の第1側面7aの内面に切欠段差部20を設け、固定鉄心5の段部5bを第1側面7aの内面と、切欠段差部20とに当接することにより、固定鉄心5中心線S2が固定孔8の中心線S1に対して1.5度傾斜するように位置決めされるので、固定鉄心5の軸5cの端部が加圧されても、加圧されない部分の固定鉄心5は、何等影響を受けない。従って、固定鉄心5を第1側面7aと切欠段差部20とに当接させれば、固定鉄心5と固定孔8との位置決めが正確にできるので、容易に固定鉄心5を第1側面7aにかしめ固定することができる。
【0041】
次に、本発明の電磁弁にかかる第2実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。第2実施の形態は、第1側面7aの内面に切欠段差部20を構成する換わりに勾配21を構成した他は、第1実施の形態と同様の構成を有する。よって、ここでは、第1実施の形態と異なる構成について説明し、あわせてその作用、効果について説明する。図4は、第2実施の形態の電磁弁の断面図である。図5は、第2実施の形態の電磁弁の平面図である。尚、第1実施の形態と同様の構成のものについては、同一番号を付している。
【0042】
勾配21は、図5の斜線部及び図4に示すように、第1側面7aの内面であって、第3側面7c側の固定孔8の接線H2から第3側面7cの反対側に、所定の角度θを有して形成されているマイナス勾配である。
【0043】
上記構成を有する第2実施の形態の電磁弁は、次のように作用する。
固定鉄心5の軸5cを固定孔8に貫通して、段部5bを勾配21に当接する。これにより、固定鉄心5の下端面は、第1側面7aの外面に対して所定の角度θ傾斜する。また、第1側面7aに形成されている固定孔8は、第1側面7aの外面に対して垂直に形成されている。よって、固定鉄心5の下端面に直交する中心線S2は、固定孔8の中心線S1に対して、所定の角度θ度傾斜する。そして、第1側面7aの外面に突出した軸5cを外部から加圧して、固定孔8にかしめ固定する。
ここで、所定の角度θは、第1実施の形態と同様に、固定鉄心5の本体がガイド4に接する程度の角度であることが望ましい。つまり、所定の角度θは1〜2度であることが望ましい。なぜなら、これ以上に傾斜させると、ガイド4内に固定鉄心5を挿通しにくくなり、一方、これ以下の傾斜であると、従来の電磁弁と大差がないからである。第2実施の形態においては、所定の角度θを特に1.5度とする。
また、図4及び図5に示すように、第2実施の形態においては、ガイド4を第1側面7aの外面に対して垂直にするために、ガイド4は、当接部4aの接線H2の第3側面7c側に相当する部分を第1側面7aの内面に当接した状態で、固定される。
【0044】
第2実施の形態の電磁弁は、次のような効果を奏する。
第2実施の形態の電磁弁においては、図5に示すように、固定鉄心5と第1側面7aとは、接線H2から第3側面7cの反対側に相当する段部5bの上面を、勾配21に当接することにより、位置決めされる。よって、第2実施の形態の電磁弁は、第1実施の形態の電磁弁よりも一層安定した状態で、固定鉄心5を第1側面7aにかしめ固定することができる。
【0045】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限ることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、第1側面の内面に形成された切欠段差部または勾配を形成して、固定鉄心の中心線が可動鉄心の中心線と斜交するようにしているが、第3側面側の固定孔の端に接する接線から第3側面の反対側の第1側面を第2側面と反対側に所定の角度曲成することにより、固定鉄心の中心線を可動鉄心の中心線に対して傾斜させてもよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明の電磁弁は、中空孔を備え、外周に導線が巻かれてなるコイルボビンと、前記コイルボビンを保持し、一方に開口するC形フレームと、前記中空孔内の一端に嵌合される固定鉄心と、前記中空孔内の他端に摺動可能に保持される可動鉄心とを有し、交流を全波整流又は半波整流した電源を用いる電磁弁であって、前記C形フレームに前記固定鉄心用固定孔が形成され、前記固定孔を貫通して前記固定鉄心が前記C形フレームにかしめ固定され、前記固定鉄心の中心線が、前記固定孔の中心線に対して斜交するので、固定鉄心が可動鉄心を吸引すると、可動鉄心は、可動鉄心の中心線に平行であって、可動鉄心の中心線を挟んでなる別個の直線上に各々存在する2つの接点により、中空孔内に保持される。従って、半波整流または全波整流をコイルに通電しても、2つの接点により可動鉄心が微小振動しないので、うなり音を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電磁弁の第1実施の形態の非通電時の断面図を示す。
【図2】本発明の電磁弁の第1実施の形態の通電時の断面図を示す。
【図3】本発明の電磁弁の第1実施の形態の平面図を示す。
【図4】本発明の電磁弁の第2実施の形態の断面図を示す。
【図5】本発明の電磁弁の第2実施の形態の平面図を示す。
【図6】従来の電磁弁の断面図を示す。
【符号の説明】
1 コイル
2 コイルボビン
2a 中空孔
3 導線
4 ガイド
5 固定鉄心
6 可動鉄心
7 C形フレーム
7a 第1側面
7b 第2側面
8 固定孔
Claims (5)
- 中空孔を備え、外周に導線が巻かれてなるコイルボビンと、
前記コイルボビンを保持し、一方に開口するC形フレームと、
前記中空孔内の一端に嵌合される固定鉄心と、
前記中空孔内の他端に摺動可能に保持される可動鉄心とを有し、
交流を全波整流又は半波整流した電源を用いる電磁弁において、
前記C形フレームに前記固定鉄心用固定孔が形成され、
前記固定孔を貫通して前記固定鉄心が前記C形フレームにかしめ固定され、
前記固定鉄心の中心線が、前記固定孔の中心線に対して斜交することを特徴とする電磁弁。 - 請求項1に記載する電磁弁において、
前記固定鉄心の中心線に直交する切欠段差部が、前記固定孔を有する第1側面の内面の前記固定孔付近に形成され、
前記切欠段差部に前記固定鉄心を当接することにより、前記固定鉄心と前記固定孔とが、位置決めされることを特徴とする電磁弁。 - 請求項1に記載する電磁弁において、
前記固定鉄心の中心線に直交する勾配が、前記固定孔から前記開口部に向かって前記第1側面の内面に形成され、
前記勾配に前記固定鉄心を当接することにより、前記固定鉄心と前記固定孔とが、位置決めされることを特徴とする電磁弁。 - 請求項2又は請求項3に記載する電磁弁において、
前記第1側面が、対向する第2側面に対して、前記開口部が狭くなるように傾斜し、
前記第1側面の内面であって、前記切欠段差部又は前記勾配が形成されていない部分に、前記可動鉄心を案内するガイドを固定することにより、前記ガイドの中心線が前記第1側面の外面に対して直交し、
前記ガイドが、前記中空孔内に斜設されることを特徴とする電磁弁。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する電磁弁において、
前記コイルに通電したときに、前記可動鉄心が、一端を固定鉄心に接し、他端を前記ガイドに接して、前記ガイド内で傾斜して保持されることを特徴とする電磁弁。
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