JP3737416B2 - 溶融メッキ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融亜鉛浴と溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とを用いて溶融メッキする二浴溶融メッキ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
腐食性鉄鋼製品に耐食性を付与するため、溶融亜鉛メッキが汎用されている。しかし、溶融亜鉛メッキでは、耐食性を向上させるため浸漬時間を長くすると、Fe−Zn合金層が発達し、さほど耐食性が向上しないだけでなく、所謂「ヤケ」が発生し、表面外観を損なう。一方、耐食性を改善するため、アルミニウムを含む亜鉛合金で溶融メッキすることが提案されている。しかし、鉄鋼製品を亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキすると、不メッキ部が生成しやすい。
【0003】
そこで、溶融亜鉛メッキした後、溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキすることが提案されている。例えば、特開昭52−30233号公報には、鋼材表面に溶融亜鉛メッキを施した後、アルミニウム−亜鉛合金の溶融メッキを行う溶融メッキ方法が開示されている。この文献には、460℃の亜鉛メッキ浴に10秒間浸漬した後、500℃のAl−Zn合金浴に20秒間浸漬する例が記載されている。特開昭57−35672号公報には、鉄鋼材料に溶融亜鉛メッキを施す第1の段階と、その後、0.1%以上のアルミニウムを含有する亜鉛合金メッキを施す第2の段階とを含む溶融亜鉛メッキ方法が開示されている。この文献には、第1段階のメッキを2〜3分程度行い、第2の段階のメッキを3〜7分程度行うことが記載されている。さらに、鋼材を460℃の溶融亜鉛浴に2分間浸漬し、静かに亜鉛浴から鋼材を引き上げ、アルミニウム5%を含む合金浴(430℃)に5分間浸漬してメッキした例が記載されている。
【0004】
特公昭63−63626号公報には、被メッキ物を高温(500〜600℃、好ましくは530〜560℃)の溶融亜鉛浴に浸漬し、これから取り出した後に直ちに450℃以下(好ましくは400〜450℃)の溶融アルミ亜鉛合金浴(アルミニウム含有量3〜7%)に浸漬する溶融亜鉛メッキ方法が開示されている。この文献には、溶融亜鉛浴から取り出した被メッキ物は直ちに、すなわち被メッキ物の温度が大きく低下しないでかつ表面のFe−Zn合金層の外側の純亜鉛層が酸化しない間に溶融アルミ亜鉛合金浴に浸漬することも記載されている。
【0005】
特公平4−19299号公報には、温度430〜460℃、浸漬時間0.5分〜2分未満、引き上げ速度1〜2m/分で溶融亜鉛メッキを施す第1の工程と、温度430〜460℃、浸漬時間0.5分〜1分未満、引き上げ速度0.5〜3.5m/分で溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキを施す第2の工程とで鉄鋼材料をどぶ漬けメッキする二段メッキ方法が開示されている。この文献には、440℃で1分間浸漬して速度1m/分で引き上げて溶融亜鉛メッキを施し、430℃で0.5〜1分浸漬して速度1〜3m/分で引き上げて溶融亜鉛−アルミニウムメッキを施した例が記載されている。
【0006】
このような二浴メッキ法又は二段メッキ法では、通常、被メッキ物をハンガに吊した状態で、各メッキ浴に対する移送、浸漬及び引き上げが行われている。このような工程で、同じハンガを繰り返し使用すると、溶融亜鉛浴や溶融亜鉛合金浴が汚染される。特に、ハンガに付着したアルミニウム成分により第1浴の溶融亜鉛浴が汚染されると、不メッキ部が生じる。すなわち、被メッキ物をハンガに吊して第1浴の溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛メッキし、前記ハンガに吊した被メッキ物をさらに第2浴の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に浸漬すると、第1浴でハンガに付着した成分が第2浴に混入し、第2浴を汚染する。特に、第2浴での溶融亜鉛合金メッキを行った後、溶融亜鉛合金メッキに供したハンガに新たな被メッキ物を吊して第1浴で溶融亜鉛メッキすると、ハンガに付着したアルミニウム成分により第1浴が汚染され、不メッキ部が生成するとともに、一旦汚染された第1浴は使用できなくなる。
【0007】
そこで、現実的には、アルミニウムによる汚染を防止するため、第1の専用ハンガを利用して第1浴で溶融亜鉛メッキした後、水冷により冷却して被メッキ物を第1の専用ハンガから外し、被メッキ物を第2の専用ハンガに移して吊り下げ、第2浴の溶融亜鉛合金浴で溶融メッキし、水冷により冷却した後、メッキ物を第2の専用ハンガから取り外している。すなわち、第1の専用ハンガは第1浴での溶融メッキにだけ使用し、第2の専用ハンガは第2浴での溶融メッキにだけ使用している。
【0008】
しかし、第1浴で溶融メッキした後、冷却しても、第1浴の溶融温度が高いため、冷却に時間を要し、メッキ物の生産性を大きく低下させる。また、一旦冷却した被メッキ物を第2浴でメッキするためには、第2浴で冷却した被メッキ物の温度を上昇させる必要があり、熱効率も大きく低下する。さらに、厚みが不均一な被メッキ物を溶融メッキすると、第2浴での溶融メッキにおいて、被メッキ物の薄肉部が他の部位に比べて高温に長時間晒されるため、メッキ層が成長して脱落する可能性が高くなる。さらには、第1浴でのメッキ後に冷却すると、メッキ層に酸化膜が生成し易いため、第2浴に滓(酸化残渣)が生成しやすくなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、溶融亜鉛浴と溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とを用いて溶融メッキしても、メッキ物を高い生産性で製造できる二浴溶融メッキ方法及び溶融メッキシステムを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、溶融亜鉛浴でメッキされた被メッキ物を水冷などにより冷却することなく、効率よく溶融メッキでき、熱効率を大きく改善できる二浴溶融メッキ方法及び溶融メッキシステムを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、溶融メッキ浴の汚染およびメッキ層の脱落を有効に抑制できる二浴溶融メッキ方法及び溶融メッキシステムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハンガに吊した状態で被メッキ物を第1浴で溶融メッキし、冷却することなく第2浴で溶融メッキし、冷却した後、溶融メッキに供したハンガを新たなハンガに交換して第1浴での溶融メッキに循環すると、ハンガ交換作業が一回ですむだけでなく、生産性及び熱効率を大幅に改善できること、循環路や循環プロセスを利用して、連続プロセスを実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の溶融メッキ方法は、被メッキ物をハンガに吊して、溶融亜鉛メッキした後、亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする方法であって、第1のハンガに吊した被メッキ物を溶融亜鉛メッキする第1のメッキ工程と、この第1のメッキ工程の後、水冷することなく亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする第2のメッキ工程と、この第2のメッキ工程の後、メッキ物を冷却する工程と、この冷却工程の後、前記第1のハンガを新たな第2のハンガに交換して前記第1のメッキ工程に供する交換工程とで構成されている。この方法において、第1のメッキ工程で溶融メッキした被メッキ物を、温度300℃以上に保ちながら、亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキしてもよい。また、第2のメッキ工程に供した後、第1のハンガから付着物を除去し、第1のハンガを第2のハンガとして再利用してもよい。また、前記溶融メッキ方法において、第1のメッキ工程では、被メッキ物を温度T1440〜480℃の溶融亜鉛浴で100秒以上浸漬して溶融メッキし、第2のメッキ工程では、被メッキ物を、第1のメッキ工程の温度T1よりも15〜30℃低い温度T2の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に30〜100秒間浸漬して溶融メッキしてもよい。なお、亜鉛−アルミニウム合金は、通常、アルミニウムを1〜10重量%含有している。また、亜鉛−アルミニウム合金は、さらにマグネシウムを含有していてもよい。さらに、第2のメッキ工程で溶融メッキした後、メッキ物を、界面活性剤を含有する水溶液に浸漬して冷却し、メッキ層の発泡を防止してもよい。
【0014】
本発明は、連続プロセス、すなわち、循環路に沿って、被メッキ物を溶融亜鉛メッキし、水冷することなく亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキした後、メッキ物を冷却し、第1のハンガを新たな第2のハンガに交換し、前記溶融亜鉛メッキに供する作業を連続的に行なう連続溶融メッキ方法であってもよい。
【0015】
本発明は前記溶融メッキシステム、すなわち、ハンガに吊した状態で、被メッキ物に溶融亜鉛メッキと溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキとを順次施すための循環路を備えた溶融メッキシステムであって、第1のハンガに吊した状態で、被メッキ物を、前記循環路に沿って、所定の温度に制御された溶融亜鉛浴と所定温度に制御された溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とに順次移送して循環させるための移送手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とにそれぞれ移送された被メッキ物を下降させ、所定時間経過後に溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とからそれぞれ引き上げるための昇降手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とに対する被メッキ物の浸漬時間をカウントするためのタイマー手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴との間に設けられ、溶融メッキ物の冷却を抑制するための非冷却ゾーン(又は冷却抑制ゾーン)と、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に設けられ、かつ溶融メッキ物を冷却するための冷却手段とを備えており、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に、溶融メッキ処理に供されたハンガを新たな第2のハンガに交換するための交換域が設けられている溶融メッキシステムも開示する。
【0016】
【発明の実施の形態】
[被メッキ物]
本発明に適用できる被メッキ物は、溶融亜鉛メッキが可能であれば特に制限されず、非腐食性金属基材であっても、腐食性金属基材であってもよい。金属基材としては、鉄分を含む鉄系基材(ステンレススチール、鉄鋼など)などが例示できる。これらの鉄系基材のうち、特に、腐蝕性を有する鉄鋼材料に適用するのが好ましい。鉄鋼材料の成分、組成割合は特に制限されない。
【0017】
被メッキ物の形態は、線状(鋼線など)、二次元形状(鋼板、板帯などの板状、ネット状など)、三次元形状(筒状、棒状などの立体形状)などの種々の形状を利用できる。例えば、小型の基材(例えば、ボルト、ナット、送電金具など)や、比較的大型の基材(例えば、高欄、親柱、橋梁用防護柵、道路標識、道路用ガードフェンス、河川用フェンス、落石防止網など)が使用できる。本発明では、厚みや熱容量が不均一な被メッキ物、例えば、厚肉部と薄肉部とを有する被メッキ物であっても、メッキ層の脱落を防止しつつ、円滑に溶融メッキできる。
【0018】
なお、被メッキ物には、ハンガに対する係止又は掛止部を形成してもよく、ハンガに対する係止又は掛止部が形成された取付部材を被メッキ物に着脱可能に取り付けてもよい。また、被メッキ物は、通常、溶融メッキに先だって、慣用の前処理を行ってもよく、例えば、脱脂処理及び酸洗浄処理などの表面処理を行った後、フラックス処理又はショットブラスト処理などの表面加工処理などを行ってもよい。さらに、必要であれば、被メッキ物には、予めニッケルメッキを施してもよい。
【0019】
本発明の方法及びシステムでは、ハンガに吊した状態で、被メッキ物を、溶融亜鉛と溶融亜鉛−アルミニウム合金とで順次溶融メッキしており、通常、循環するハンガにより溶融メッキするための循環路を利用している。
【0020】
[溶融亜鉛メッキ,第1のメッキ工程]
本発明では、第1のメッキ工程で、被メッキ物をハンガに吊して、溶融亜鉛メッキする。溶融亜鉛メッキは、亜鉛(高純度亜鉛など)又は亜鉛合金を用いて行うことができる。亜鉛合金は、例えば、亜鉛と、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、ナトリウムなどから選択された少なくとも一種の金属との合金(例えば、亜鉛−スズ合金、亜鉛−マグネシウム合金、亜鉛−ニッケル合金など)であってもよい。亜鉛合金中における亜鉛以外の金属の割合は、特に制限されず、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%程度である。なお、亜鉛又は亜鉛合金は、溶融メッキ性を損なわない限り、アルミニウムを1重量%未満(例えば、0.5重量%以下)の濃度で含んでいてもよい。また、亜鉛や亜鉛合金は、鉄、カドミウムなどの不可避的不純物を含んでいてもよい。
【0021】
溶融亜鉛メッキ浴の温度T1は、430〜500℃程度の範囲から選択できるが、通常、440〜480℃、好ましくは450〜470℃、特に450〜460℃程度である。浸漬時間は、通常、60秒以上(例えば、60〜180秒)程度の範囲から選択でき、例えば、100秒以上(例えば、100〜150秒、特に100〜130秒)程度である。
【0022】
第1のメッキ工程は、第1のハンガに吊した状態で、前記循環路に沿って、被メッキ物を所定の温度に制御された溶融亜鉛浴に移送するための移送手段と、前記溶融亜鉛浴の所定位置に移送された被メッキ物を下降させ、所定時間経過後に溶融亜鉛浴から引き上げるための昇降手段と、前記溶融亜鉛浴への被メッキ物の浸漬時間をカウントするためのタイマー手段とを利用して行うことができる。すなわち、スタート信号に応答して、循環路(レールなど)に沿って移動可能に設けられた移送手段は、被メッキ物を吊したハンガを溶融亜鉛浴の所定位置に移送する。移送手段は、慣用のユニット、例えば、搬送路に形成されたギヤ列と、このギヤ列に噛合可能な回転ギヤを備えたモータなどとで構成でき、サーボモータなどで構成してもよい。所定位置への到達は接触センサ又はスイッチなどの位置センサを利用して行うことができ、位置センサからの到達信号に応答して、昇降手段はハンガとともに被メッキ物を、浸漬に必要な所定の浸漬高さまで下降させ、被メッキ物を溶融亜鉛浴に浸漬する。所定の浸漬高さへの到達に応答して、タイマー手段は計時を開始し、所定時間経過後に浸漬完了信号を前記昇降手段に与え、昇降手段はハンガとともに被メッキ物を溶融亜鉛浴から所定高さまで引き上げる。
【0023】
なお、溶融亜鉛浴からの被メッキ物の引き上げ速度は、例えば、0.5〜3m/分、好ましくは1〜2m/分程度である。
【0024】
溶融亜鉛浴から引き上げられた被メッキ物は、過剰な溶融亜鉛を除去するため、例えば、空気中又は不活性ガス雰囲気中で、亜鉛又は亜鉛合金の融点以上の温度で遠心力や振動などを作用させて除去してもよい。
【0025】
本発明の特色は、第1のメッキ工程の後、水冷及びハンガ交換することなく、第2のメッキ工程で亜鉛−アルミニウム合金を用いて溶融メッキする点にある。すなわち、第1のメッキ工程の後で水冷すると、被メッキ物の物温が低下するだけでなくハンガ交換作業を必要とし、溶融メッキ効率及び生産性を大幅に低下させる。また、冷却した被メッキ物を第2浴で溶融メッキすると、第2浴の温度が低下又は変動するとともに、冷却した被メッキ物を昇温させて溶融メッキする必要があり、第2のメッキ工程での熱効率を大きく損なう。さらに、第2浴での加熱で所定温度にまで到達しやすい薄肉部が高温に長時間晒されるため、メッキ層の脱落が生じたり、冷却に伴う酸化膜の生成により第2浴の亜鉛−アルミニウム合金浴に酸化滓を生成させる。
【0026】
一方、本発明では、第1の溶融メッキ工程の後、水冷及びハンガ交換を行わないため、溶融メッキ効率及び生産性を大幅に向上できるとともに、第2のメッキ工程での熱効率を大きく改善できる。さらに、第2浴で薄肉部が高温に晒されることがないため、第1浴での溶融亜鉛メッキ層の厚みをそのまま維持しながら第2浴で溶融亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキでき、第1浴でのメッキ層の脱落や酸化膜の生成による第2浴の汚染を大きく抑制できる。
【0027】
本発明では、第1のメッキ工程の後、水冷により被メッキ物を手作業によりハンガから取り外し可能な温度にまで冷却することなく、引き続いて第2浴で溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキすればよく、通常、被メッキ物の温度を300℃以上(好ましくは320〜430℃、さらに好ましくは350〜400℃程度)に保ちながら、第2浴の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴で溶融メッキされる。被メッキ物の温度は、第1浴の亜鉛又は亜鉛合金の融点以上又は非固化温度であってもよい。なお、第1のメッキ工程で溶融メッキ処理された被メッキ物は、放冷しつつ引き続いて第2浴で溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキしてもよい。
【0028】
被メッキ物の冷却を抑制するため、本発明のシステムでは、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴との間の循環路に、溶融メッキ物の冷却を抑制するための非冷却ゾーン(放冷又は保温ゾーンや加温ゾーン)を設けている。この非冷却ゾーンは、被メッキ物を比較的高温(特に第1浴の亜鉛又は亜鉛合金の融点以上の温度)に保持可能である限り、徐冷(放冷又は自然冷却)ゾーンであってもよい。
【0029】
溶融亜鉛浴による一次メッキ層の厚みは、耐食性を付与できる限り、特に制限されず、通常、20〜200μm、好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは50〜150μm程度であってもよい。
【0030】
[溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキ,第2のメッキ工程]
第1のメッキ工程でメッキした被メッキ物は、冷却及びハンガ交換することなく、前記ハンガに吊した状態で、第2のメッキ工程において亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする。
【0031】
亜鉛−アルミニウム合金中におけるアルミニウムの割合は、1〜10重量%(例えば、2〜10重量%)、好ましくは3〜10重量%(特に3〜7重量%)程度である。亜鉛合金にアルミニウムを含有させることにより、耐食性の高いメッキを施すことができる。
【0032】
亜鉛−アルミニウム合金は、耐食性を向上させるため、さらにマグネシウムを含んでいてもよい。合金中におけるマグネシウムの割合は、0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度である。なお、亜鉛−アルミニウム合金は、スズ、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、ナトリウムなどの金属成分を含んでいてもよい。また、亜鉛−アルミニウム合金は、特に断りがない限り、不可避的不純物、例えば、鉄、カドミウムなどを含んでいてもよい。
【0033】
溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の温度は、メッキ効率を損なわない限り420〜500℃程度の範囲から選択でき、通常、420〜480℃(例えば、420〜460℃)、好ましくは430〜450℃(例えば、430〜440℃)程度である。第2のメッキ工程では、被メッキ物を、第1のメッキ工程の温度T1よりも低い温度T2で行うのが有利である。溶融亜鉛浴の温度T1と溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の温度T2との差(△(T1−T2))は、例えば、15〜30℃、好ましくは15〜25℃程度である。浸漬時間は、例えば、30〜150秒(例えば、60〜145秒)程度の範囲から選択でき、通常、30〜100秒(例えば、45〜100秒)、好ましくは60〜100秒程度である。このような条件で二次メッキすると、被メッキ物の厚みが均一でない形状又は構造であっても、前記冷却することなく二次メッキすることと相まって、薄肉部を第2浴の高温度に過度に又は長時間に亘り晒すことがないため、メッキ層の脱落も有効に防止できる。
【0034】
第2のメッキ工程は、第1のハンガに吊した状態で、前記移送手段、前記昇降手段、及び前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴へ被メッキ物を所定時間浸漬させるためのタイマー手段とを利用して行うことができる。すなわち、第1浴の溶融亜鉛浴から所定高さに引き上げられた被メッキ物は、循環路(レールなど)に沿って移動可能に設けられた移送手段により、第1のハンガに吊された状態で、溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の所定位置に移送する。位置センサからの所定位置への到達信号に応答して、昇降手段はハンガとともに被メッキ物を、浸漬に必要な所定の浸漬高さまで下降させ、被メッキ物を溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に浸漬する。所定の浸漬高さへの到達に応答して、タイマー手段は計時を開始し、所定時間経過後に完了信号を前記昇降手段に与え、昇降手段はハンガとともに被メッキ物を溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から所定高さまで引き上げる。
【0035】
溶融亜鉛−アルミニウム合金浴からのメッキ物の引き上げ速度は適当に選択できるが、引き上げ速度が大きすぎると、メッキ層の脱落が生じやすい。第2浴からの引き上げ速度は、例えば、0.1〜2m/分程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜1m/分、好ましくは0.2〜0.8m/分程度である。
【0036】
なお、浸漬後、被メッキ物に付着した過剰な溶融亜鉛−アルミニウム合金は、前記と同様に、空気中又は不活性ガス雰囲気中で、亜鉛−アルミニウム合金の融点以上の温度で遠心力や振動を作用させて除去してもよい。
【0037】
溶融亜鉛−アルミニウム合金浴による二次メッキ層の厚みは、耐食性を付与できる限り、特に制限されず、20〜300μm、好ましくは30〜250μm、さらに好ましくは50〜200μm程度であってもよい。
【0038】
[冷却工程]
第2のメッキ工程の後、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に設けられ、かつ溶融メッキ物を冷却するための冷却手段により、メッキ物は冷却される。この冷却工程は、慣用の方法で行うことができ、徐冷により冷却してもよいが、通常、水冷によりメッキ物を冷却する場合が多い。メッキ物の冷却において、冷媒としての水は、種々の成分、例えば、防錆剤、腐蝕抑制剤、消泡剤、防腐剤、アルコール類((ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリンなどの水溶性多価アルコールなど)、有機酸(シュウ酸など)、塩や緩衝剤(ホウ酸塩など)、塩基類(アミンなど)などを含んでいてもよいが、界面活性剤を含有する水溶液に浸漬して冷却すると、メッキ層の発泡又は膨れを有効に防止できる。
【0039】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル[例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンC6-24アルキルエーテル(特に、ポリオキシエチレンC8-18アルキルエーテル)など]、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル[例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンC6-18アルキルフェニルエーテル(特に、ポリオキシエチレンC6-12アルキルフェニルエーテル)など]、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル[例えば、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステルなどのポリオキシエチレングリセリンC8-24脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレンソルビタンC8-24脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖C8-24脂肪酸エステルなど]、ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル[(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、ショ糖などの多価アルコールと脂肪酸とのエステル、例えば、グリセリンモノステアリン酸エステルなどのグリセリンC8-24脂肪酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステルなどのショ糖C8-24脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステルなどのソルビタンC8-24脂肪酸エステルなど]、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどのポリオキシエチレンC6-24アルキルアミンなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドなどのポリオキシエチレンC8-24脂肪酸アミドなど)、脂肪酸アルカノールアミド(例えば、N,N−ジエタノールステアリン酸アミドなどのN,N−アルカノールC8-24脂肪酸アミド)などが挙げられる。ノニオン性界面活性剤において、エチレンオキシドの平均付加モル数は、1〜35モル、好ましくは2〜30モル、さらに好ましくは5〜20モル程度である。
【0040】
アニオン性界面活性剤には、カルボン酸塩[脂肪酸石けん(例えば、ラウリン酸ナトリウムなどのC8-24脂肪酸金属塩など)など]、スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのC6-24アルキルベンゼンスルホン酸塩など)、アルキルナフタレンスルホン酸塩(例えば、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのジC1-8アルキルナフタレンスルホン酸塩など)、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(例えば、9−オクタデセニルスルホン酸ナトリウムなどのC12-18アルケニルスルホン酸塩など)、アルカンスルホン酸塩(例えば、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのC6-24アルキルスルホン酸塩など)など]、硫酸エステル塩[硫酸化油、アルキル硫酸エステル塩(例えば、ヤシ油の還元アルコールと硫酸とのエステルのナトリウム塩などのC6-24アルキル硫酸エステル塩など)など]などが含まれる。アニオン性界面活性剤において、塩としては、アンモニア、アミン(例えば、アミン、エタノールアミンなどのアルカノールアミンなど)、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)などとの塩が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのモノ又はジC8-24アルキル−トリ又はジメチルアンモニウム塩など)、トリアルキルベンジルアンモニウム塩[例えば、セチルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどのC8-24アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム塩など)など]、塩化ベンゼトニウム、アルキルピリジニウム塩(例えば、セチルピリジニウムブロマイドなどのC8-24アルキルピリジニウム塩など)などが挙げられる。塩としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、過塩素酸などとの塩が挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン(例えば、ジメチルラウリルカルボキシベタインなどのC8-24アルキル基を有するベタインなど)、アルキルイミダゾリウムベタイン(例えば、ラウリルイミダゾリウムベタインなどのC8-24アルキルイミダゾリウムベタインなど)、アルキルアミンオキシド(ラウリルジメチルアミンオキシドなどのトリC8-24アルキル基を有するアミンオキシドなど)などが挙げられる。
【0043】
これらの界面活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤が好ましい。さらに好ましい界面活性剤は、少なくともノニオン性界面活性剤(特に、オキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤)で構成されている。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを併用する場合、両者の割合(重量比)は、ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤=99/1〜1/99の範囲から選択でき、通常、50/50〜2/98(特に、30/70〜3/97)程度である。
【0044】
前記界面活性剤のHLB値は、1〜30、好ましくは2〜20(例えば、5〜20)、さらに好ましくは5〜15程度である。なお、HLB値は、複数の界面活性剤を用いて調整してもよい。
【0045】
水溶液中における界面活性剤の割合は、メッキ層の膨れの発生を抑制できる範囲、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度である。
【0046】
なお、界面活性剤を含む水溶液(冷却水溶液)は、例えば、防錆剤、腐蝕抑制剤、消泡剤、防腐剤、アルコール類(エタノールやイソプロピルアルコールなどのモノアルコール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリンなどの水溶性多価アルコールなど)、有機酸(シュウ酸など)、塩や緩衝剤(ホウ酸塩など)、塩基類(アミンなど)などを含んでいてもよい。
【0047】
冷媒(水又は水溶液)の温度は、例えば、0〜90℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは15〜50℃程度である。膨れの発生を抑制する点からは、水溶液の温度は低いほど好ましいが、室温(15〜20℃程度)以上の温度であっても、効果的に膨れの発生を抑制することができる。そのため、本発明では、室温以上の冷却水が使用できる。なお、雰囲気温度(室温)で前記冷媒(前記水溶液)中に被メッキ物を浸漬すると、冷媒の温度が上昇する。特に、繰り返しメッキ物を浸漬すると、冷媒の温度がかなり高くなる。このような場合であっても、冷媒(前記水溶液)の温度は、前記界面活性剤が失活しない範囲、例えば、20〜80℃(例えば、30〜80℃)程度であってもよく、通常、40〜70℃程度であっても、メッキ層の膨れの生成を有効に防止できる。浸漬時間も、特に制限されず、例えば、1秒以上、好ましくは2秒〜10分、さらに好ましくは5秒〜5分(特に5秒〜1分)程度の範囲から選択できる。
【0048】
界面活性剤を含有する水溶液に浸漬してメッキ物を冷却すると、亜鉛−アルミニウム合金メッキ層が高温状態[例えば、200℃以上、更には250℃以上(例えば、300〜450℃程度)、更には300℃以上(例えば、350〜420℃程度)、特に未硬化状態(例えば、380〜420℃)]でもメッキ層の膨れの発生を顕著に抑制できる。
【0049】
なお、アルミニウムを含む亜鉛合金で膨れが生成する理由は明確ではないが、亜鉛−アルミニウム合金の共晶温度が380℃程度であり、メッキ温度よりもかなり低いため、水の沸騰により共晶部が持ち上げられて膨れが発生すると推定される。前記の方法を利用して溶融メッキされたメッキ物を、空気中に放置して冷却する徐冷工程を必要とせず、高温状態を維持したまま、直ちに水冷できる。そのため、製造工程を簡略化できるとともに、長い放冷時間を必要とせず、生産効率及び生産性を大きく向上できる。さらに、メッキ層の膨れの発生を抑制できるので、耐食性及び外観品質を向上でき、商品価値を高めることができる。
【0050】
冷却工程において、昇降手段により溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から引き上げられたメッキ物は、第1のハンガに吊された状態で、移送手段により冷却槽の所定位置に移送される。位置センサからの所定位置への到達信号に応答して、昇降手段は、ハンガとともにメッキ物を所定高さまで下降させ、冷却槽内の水溶液に浸漬する。所定の浸漬高さへの到達に応答して、タイマー手段は計時を開始し、所定時間経過後に完了信号を前記昇降手段に与え、昇降手段はハンガとともにメッキ物を冷却槽から所定高さまで引き上げる。
【0051】
溶融メッキ層全体の厚みは、耐食性を付与できる範囲、例えば、30〜500μm、好ましくは40〜300μm、さらに好ましくは50〜250μm程度であってもよい。
【0052】
[交換工程]
本発明では、冷却工程の後、交換工程において、前記第1のハンガ(必要であればメッキ物とともに)を、新たな第2のハンガ(必要であれば新たな被メッキ物とともに)に交換して前記第1のメッキ工程に供する。そのため、本発明の溶融メッキシステムでは、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に、溶融メッキ処理に供されたハンガを、新たな第2のハンガに交換するための交換域が設けられている。
【0053】
前記交換工程では、第2浴としての溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から第1浴としての溶融亜鉛浴に至るまでの間(すなわち、前記交換域)で、ハンガとともにメッキ物を循環路から取り外して、新たな被メッキ物とともに第2のハンガに交換してもよく、先ず溶融メッキに供した第1のハンガを新たな第2のハンガに交換し、次いで第1浴としての溶融亜鉛浴に至るまでの間(交換域)に新たな被メッキ物を第2のハンガに吊り下げてもよい。
【0054】
交換工程は、ロボットシステムを利用して自動的に行ってもよく、マニュアル操作で行ってもよい。交換工程を経た後、移送手段は、搬送路に沿って、新たなハンガを第1浴としての溶融亜鉛浴に移送する。
【0055】
なお、第2のメッキ工程に供した後、交換工程で循環路から取り外された第1のハンガから付着物(亜鉛や亜鉛合金)を除去又は分離することにより、溶融メッキに供した第1のハンガを新たなハンガ(第2のハンガ)として再利用できる。ハンガに付着した亜鉛や亜鉛合金は、機械的に分離又は除去してもよく、付着物(亜鉛や亜鉛合金)の融点以上の温度に加熱し、スクレバーなどによる機械的方法又は遠心分離や振動などを利用した方法などで分離又は除去してもよい。さらに、ハンガから分離又は除去された付着物は、亜鉛やアルミニウムなどの有効成分を含むため、付着物から亜鉛やアルミニウムを分離精製し、溶融亜鉛浴の亜鉛成分や溶融亜鉛−アルミニウム合金浴のアルミニウム成分として再利用してもよい。また、前記付着物は、アルミニウムを含むため、ハンガから分離又は除去された付着物は、第2のメッキ工程での亜鉛−アルミニウム合金成分として再利用してもよい。
【0056】
なお、本発明において、ハンガは単一のフック部だけでなく複数のフック部を有していてもよい。また、ハンガ又はハンガのフック部には単一の被メッキ物だけでなく、複数の被メッキ物を着脱可能に吊り下げてもよい。
【0057】
本発明の方法やシステムは非連続プロセス又はマニュアル操作で非自動的に行ってもよいが、連続プロセス又は自動操作において、循環路(循環レール又は閉ループ)と、交換域での一回のハンガ交換を利用することにより、被メッキ物を連続的に二浴溶融メッキでき、メッキ効率を向上できる。従って、本発明は連続溶融メッキ方法又は連続溶融メッキシステムとして有用である。
【0058】
【発明の効果】
本発明では、被メッキ物を溶融亜鉛メッキし、水冷することなく亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキするので、冷却に要する時間及び第2浴での被メッキ物の加熱時間や熱エネルギーを大幅に低減できる。しかも、亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキし、冷却した後、ハンガを交換するので、ハンガの交換作業を1回で済ませることができる。従って、連続プロセスを構築でき、二浴を用いて溶融メッキしても、効率よく溶融メッキでき、メッキ物を高い生産性及び熱効率で製造できる。さらに、溶融メッキ浴の汚染およびメッキ層の脱落を有効に抑制できる。
【0059】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
比較例1
熱間圧延鋼板(SPHC、厚さ3mm、縦75mm×横150mm)を、脱脂処理、塩酸による酸洗浄処理した後、塩化亜鉛50g/L、塩化アンモニウム150g/Lを含む水溶液フラックスに浸漬し、取り出した後、乾燥した。
【0061】
前処理した鋼板を、450℃の溶融亜鉛浴に、120秒間浸漬した後、溶融亜鉛浴から引き上げて水冷し、アルミニウム5重量%及びマグネシウム1重量%を含む430℃の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に60秒間浸漬し、浴から引き上げた後、直ちに(10秒以内に)、水冷し、亜鉛−アルミニウム合金メッキ皮膜を形成した。なお、溶融亜鉛−アルミニウム合金浴中の亜鉛−アルミニウム合金の重量は30kgである。1サイクルで1つのメッキ物を製造するための時間は220秒であり、亜鉛−アルミニウム合金浴の温度は4.6℃変動し、430℃に保持するためには14kcalのエネルギーを必要とした。
【0062】
実施例1
比較例1と同様にして前処理した鋼板を、450℃の溶融亜鉛浴に120秒間浸漬した後、溶融亜鉛浴から引き上げ、水冷することなく、空気中で60秒間放冷しながら、比較例1の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に60秒間浸漬し、浴から引き上げた後、水冷し、亜鉛−アルミニウム合金メッキ皮膜を形成した。1サイクルで1つのメッキ物を製造するための時間は250秒であり、亜鉛−アルミニウム合金浴の温度は0.4℃変動し、430℃に保持するためには1.2kcalのエネルギーを必要とした。
【0063】
実施例2
溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から引き上げた後、直ちに、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を1重量%含み、かつ温度60℃の水溶液で浸漬冷却する以外、実施例1と同様にして、亜鉛−アルミニウム合金メッキ皮膜を形成した。1サイクルで1つのメッキ物を製造するための時間、亜鉛−アルミニウム合金浴の温度変動および第2浴の温度保持のために必要なエネルギー量は、実施例1と同様である。
【0064】
実施例3
熱間圧延鋼板(SPHC、厚さ3mm、縦75mm×横150mm)を、脱脂処理、塩酸による酸洗浄処理した後、塩化亜鉛50g/L、塩化アンモニウム150g/Lを含む水溶液フラックスに浸漬し、取り出した後、乾燥した。
【0065】
前処理した鋼板を、450℃の溶融亜鉛浴に、120秒間浸漬した後、水冷することなく、被メッキ物の温度を350℃以上に保ちながら、温度430℃の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に60秒間浸漬し、溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から引き上げた後、直ちに、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を1重量%含み、かつ温度60℃の水溶液で浸漬冷却し、亜鉛−アルミニウム合金メッキ皮膜を形成した。
【0066】
上記の操作を連続プロセスで行ったところ、1つのメッキ物を製造するための時間は200秒であり、亜鉛−アルミニウム合金浴の温度の変動幅は0.1℃であり、第2浴を温度430℃に保持するためには0.4kcalのエネルギーを必要とした。
【0067】
実施例4
前処理した鋼板を、460℃の溶融亜鉛浴に、100秒間浸漬した後、水冷することなく、被メッキ物の温度を370℃以上に保ちながら、温度440℃の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に60秒間浸漬し、溶融亜鉛−アルミニウム合金浴から引き上げた後、直ちに、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を1重量%含み、かつ温度20℃の水溶液で浸漬冷却し、溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキ皮膜を形成した。
【0068】
上記の操作を連続プロセスで行ったところ、1つのメッキ物を製造するための時間は180秒であり、亜鉛−アルミニウム合金浴の温度の変動幅は0.2℃であり、第2浴を温度440℃に保持するためには0.6kcalのエネルギーを必要とした。
【0069】
実施例及び比較例で得られたメッキ皮膜の状態を目視で観察した結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から明らかなように、実施例で得られたメッキ物のメッキ層は脱落がなく均一な厚みを有していた。
Claims (9)
- 被メッキ物をハンガに吊して、溶融亜鉛メッキした後、亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする方法であって、第1のハンガに吊した被メッキ物を溶融亜鉛メッキする第1のメッキ工程と、この第1のメッキ工程の後、水冷することなく亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする第2のメッキ工程と、この第2のメッキ工程の後、メッキ物を冷却する工程と、この冷却工程の後、前記第1のハンガを新たな第2のハンガに交換して前記第1のメッキ工程に供する交換工程とで構成されている溶融メッキ方法。
- 第1のメッキ工程で溶融メッキした被メッキ物を、温度300℃以上に保ちながら、亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキする請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 第2のメッキ工程に供した後、第1のハンガから付着物を除去し、第2のハンガとして再利用する請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 第1のメッキ工程で、被メッキ物を温度T1440〜480℃の溶融亜鉛浴で100秒以上浸漬して溶融メッキし、第2のメッキ工程で、被メッキ物を、第1のメッキ工程の温度T1よりも15〜30℃低い温度T2の溶融亜鉛−アルミニウム合金浴に30〜100秒間浸漬して溶融メッキする請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 亜鉛−アルミニウム合金がアルミニウム1〜10重量%を含有する請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 亜鉛−アルミニウム合金が、さらにマグネシウムを含有する請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 第2のメッキ工程で溶融メッキした後、メッキ物を、界面活性剤を含有する水溶液に浸漬して冷却する請求項1記載の溶融メッキ方法。
- 循環路に沿って、被メッキ物を溶融亜鉛メッキし、水冷することなく亜鉛−アルミニウム合金で溶融メッキした後、メッキ物を冷却し、第1のハンガを新たな第2のハンガに交換し、前記溶融亜鉛メッキに供する作業を連続的に行なう請求項1記載の溶融メッキ方法。
- ハンガに吊した状態で、被メッキ物に溶融亜鉛メッキと溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキとを順次施すための循環路を備えた溶融メッキシステムであって、第1のハンガに吊した状態で、被メッキ物を、前記循環路に沿って、所定の温度に制御された溶融亜鉛浴と所定温度に制御された溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とに順次移送して循環させるための移送手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とにそれぞれ移送された被メッキ物を下降させ、所定時間経過後に溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とからそれぞれ引き上げるための昇降手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴とに対する被メッキ物の浸漬時間をカウントするためのタイマー手段と、前記溶融亜鉛浴と前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴との間に設けられ、溶融メッキ物の冷却を抑制するための非冷却ゾーンと、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に設けられ、かつ溶融メッキ物を冷却するための冷却手段とを備えており、前記溶融亜鉛−アルミニウム合金浴の下流側の循環路に、溶融メッキ処理に供されたハンガを新たな第2のハンガに交換するための交換域が設けられている溶融メッキシステム。
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