JP3737256B2 - 吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸収性物品、特に使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の薄型の吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド等の吸収性物品は、主として中心部に配された、身体から排泄される尿、経血等の体液を吸収、保持する吸収体と、身体に接する側に配された柔軟な液透過性の表面シートと、身体と接する反対側に配された液不透過性の裏面シートとを有している。
【0003】
吸収体は通常パルプ繊維と吸水性ポリマーから構成されている。吸収性物品は、液透過性の表面シートを通して入ってきた尿等の体液をパルプ繊維で一時的に保持した後、吸水性ポリマーで保持する。この際に吸水性ポリマーは膨潤し、吸収体の体積が増加する。一般に吸収体の吸水性を向上させるために吸水性ポリマー量を増加させた場合、吸収体中のパルプ量は相対的に減少し、パルプ繊維の絡みが少なくなるため、吸水性ポリマーが膨潤した際に、装着者の動きの中で吸収体に圧縮や剪断力がかかると、吸収体が割れたり、偏ったりして吸収阻害の原因となる。
【0004】
このような吸収阻害を防止する方法としては、熱溶融繊維をパルプ繊維中に混ぜ込むことで熱溶融繊維同士、およびパルプ繊維と熱溶融繊維との間に接着力を発現させ、吸収体の保形性を向上させる方法が採られている。このように熱溶融繊維を混合し吸収体の形状安定化を向上させる提案としては、特開昭63−92701号公報、特開昭63−318941号公報、特開昭63−260555号公報および特開平2−74254号公報等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、吸収体の保形性向上のために用いられる熱溶融繊維の混入は、熱溶融繊維自体が疎水性であるため、この疎水性に基づく吸収性阻害の恐れがある。
また、熱溶融繊維を用いると、吸収性物品の生産ライン上に熱溶融システムが必要とされ、この溶融時間との兼ね合いで、生産速度が拘束されてしまうという問題が生じる。更に、熱溶融繊維の配合種、量、溶融温度によっては、吸収体が硬く成り過ぎて、吸水性ポリマーの膨潤を阻害したり、風合いの面で問題を生じたりする恐れがある。
【0006】
従って、本発明の目的は、熱処理工程等を必要とせずに、体液吸収時の吸収体形状を安定に維持し、吸収阻害が無く、更に風合いにも優れた薄型の吸収性物品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、吸収体を構成するパルプ繊維内に、30℃の水中での膨潤度が特定の範囲にある繊維を分散させることにより、上記目的が達成することを知見した。
【0008】
即ち、本発明は、上記知見に基づきなされたもので、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これら両シート間に介在する液保持性の吸収体とを有し、該吸収体がパルプ繊維と吸水性ポリマーを主体とする吸収性物品において、30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を示す親水性の完全ケン化型ポリビニルアルコール繊維が、上記吸収体内に分散しており、該繊維が、体液中の水分により可塑化、膨潤し、該ポリビニルアルコール繊維同士及び上記パルプ繊維との間に粘着性や絡み合い等の相互作用を発現することを特徴とする吸収性物品を提供するものである。
【0009】
【作用】
本発明では、吸収体が体液を吸収すると、30℃の水中での膨潤度が30〜1000%である繊維が体液中の水分により適度に可塑化、膨潤し、この繊維同士およびパルプ繊維との間に粘着性や絡み合い等の相互作用を発現することにより、体液吸収時の吸収体形状が安定に維持されると推定される。
また、熱溶融繊維を混合する方法と異なり、この繊維自体が親水性であることと、吸収体が体液を吸収して吸水性ポリマーが膨潤するのとほぼ同時に該繊維が粘着性や絡み合い等の相互作用発現することのために、吸水性ポリマーの膨潤を妨げる等の吸収阻害を生じることもなく、パルプ使用量を低減した薄型の吸収性物品も十分な吸収体形状安定化の効果が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では、吸収体のパルプ繊維内に分散させる繊維は、30℃の水中での膨潤度が30〜1000%、好ましくは40〜500%である。
この繊維の膨潤度が30%未満であると繊維同士あるいはパルプ繊維との粘着性や絡み合い等の相互作用が十分発現されず、十分な強度が得られない。また、膨潤度が1000%を超えるものは、膨潤により繊維自体の強度が低下してしまうため、十分な強度が得られない。
【0011】
この繊維の膨潤度の測定は、次の方法により行われる。
即ち、予め重量を精秤した繊維10gを、ナイロンメッシュで作成した袋の中に詰め、30度の水中に30min浸漬する。これを800rpmの遠心分離器にかけ脱水し、膨潤後の重量を測定、以下の式に従い膨潤度を計算する。
【0012】
膨潤度(g)=[(湿潤後の重量(g)−初期重量(g))/初期重量(g)]×100
【0013】
この30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を有する繊維の繊維長は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは15〜55mm、更に好ましくは15〜30mである。繊維長が10mmよりも短いと十分な湿潤強度が得られない。一方、繊維長が100mmを超えると繊維自身の絡まりが生じ、吸収体に均等に混合されず、同様に強度が得られない。
また、30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を有する繊維の繊維径は、好ましくは0.1〜10デニール、より好ましくは0.5〜5デニールである。繊維径が0.1デニールに満たないと繊維自身の強度が弱いため添加の効果が十分得られず、また、繊維径が10デニールを超えると繊維同士の絡み合いが少なく、同様に強度が得られない。また、30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を有する繊維は、繊維同士の絡み合いを増すために捲縮をかけてもよい。
【0014】
30℃の水中で30〜1000%の膨潤度である繊維としては、強度向上の効果や品質の安定性、コストの点から、親水性の完全ケン化型ポリビニルアルコール繊維を用いる。また、ポリビニルアルコール繊維はマレイン酸やイタコン酸等で変性されたものでもよい。上記ポリビニルアルコール繊維の含有量は、上記パルプ繊維に対して1〜50重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましい。
【0015】
ポリビニルアルコール繊維を30℃の水中で30〜1000%の膨潤度とするには、その分子量、ケン化度、結晶化度等を変化させることにより、制御可能であり、その様な繊維は、例えばクラレビニロン、クレモナ〔いずれも、クラレ(株)製〕、ユニチカビニロン〔ユニチカ(株)製〕、ソルブロン、ニチビロン〔いずれも、ニチビ(株)製〕等の商品名で市販されている。
【0016】
本発明において、パルプ繊維は、吸収体に従来から用いられているものであれば特に制限はないが、そのパルプ繊維の平均繊維長は、粉砕、積層、圧縮処理等を考慮すると、通常0.8〜3mmの範囲にあることが望ましい。吸水性ポリマーは、吸収体に従来から用いられているものであれば特に制限はされないが、本発明では特に高吸水性ポリマーを用いることが望ましく、高吸水性ポリマーの液吸収率は、20w/w以上であることが望ましい。具体的な吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体またはそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸セシウム等の粉末が好適である。吸水性ポリマーはパルプ繊維に対して、100〜500重量%、特に120〜300重量%であることが望ましく、この範囲で用いると、吸収体の体液吸収が充分であると共に、吸収体の保形性が充分に維持される。
【0017】
本発明の吸収性物品の表面シートは、液透過性を十分に有するものであれば特に制限はなく、例えば、織布、不織布、または多孔性シート等が挙げられ、その素材としては、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。裏面シートは、吸収性物品に従来から用いられている液不透過性のシートであれば特に制限されることはないが、熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸した液不透過性で、かつ蒸気を透過させる蒸気透過性のシート等が好ましく、さらに、この蒸気透過性シートと不織布との複合材等も用いることができる。
【0018】
本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつを始めとして生理用ナプキン、失禁者用パッド等の用途に使用される。また、本発明の吸収性物品は、それ自体公知の方法で製造することができる。そして、下記の実施例を参照すれば、当業者は本発明の吸収性物品を容易に製造することができるであろう。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。尚、下記〔実施例5〕、〔実施例6〕及び〔実施例7〕は、本発明の参考例である。
【0020】
〔実施例1〕
坪量15g/m2 のティッシュ上に、解繊されたパルプ繊維60重量部と30℃の水中での膨潤度85%であるポリビニルアルコール(PVA)繊維(重合度2400、完全ケン化物、3デニール、20mmカット品)5重量部および高吸水性ポリマー100重量部を均一混合し、坪量250g/m2 で積層し、上記ティッシュで包み込んで吸収体を得た。得られた吸収体に、表面材としてポリエチレン繊維からなる坪量25g/m2 の不織布を、また、裏面シートとしてポリエチレンシートを配し、使い捨ておむつを得た。
【0021】
〔実施例2〕
実施例1におけるPVA繊維を熱処理し、30℃の水中での膨潤度を44%に変化させたPVA繊維(3デニール、20mmカット品)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0022】
〔実施例3〕
実施例1におけるPVA繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度71%であるPVA繊維(重合度1700、完全ケン化物、1.5デニール、20mmカット品)を5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0023】
〔実施例4〕
実施例1におけるPVA繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度90%であるレーヨン繊維(1.5デニール、15mmカット品)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0024】
〔実施例5〕
実施例1におけるPVA繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度50%であるコットン繊維5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0025】
〔実施例6〕
実施例1におけるPVA繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度65%であるリヨセル繊維(1.5デニール、38mmカット品)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0026】
〔実施例7〕
実施例1におけるPVA繊維の代わりに、ポリアクリル酸繊維表面を架橋し、30℃の水中での膨潤度500%に調節したポリアクリル酸表面架橋繊維(1.7デニール、51mmカット品)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0027】
〔比較例1〕
実施例1で用いたPVA繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度18%のPVA繊維(1.5デニール、15mmカット品)を5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0028】
〔比較例2〕
実施例1で用いたPVA繊維の代わりに、ポリエチレン繊維(2デニール、10mmカット品、融点100度、30℃の水中での膨潤度≒0%)を10重量部用いて、実施例1と同様に吸収体を作成し、表面温度140℃の熱エンボスロールで熱処理した以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0029】
〔比較例3〕
実施例7で用いたポリアクリル酸表面架橋繊維の代わりに、30℃の水中での膨潤度4850%に調節したポリアクリル酸表面架橋繊維を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつ用吸収体を得た。
【0030】
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた使い捨ておむつについて、下記の方法に準拠し、破壊を起こしたおむつの割合および尿もれ率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0031】
(破壊を起こしたおむつの割合および尿漏れを起こしたおむつの割合の算出)作成した使い捨ておむつを、一般のモニター20人に各20枚ずつ配布し、使用後にすべてのおむつを回収し、おむつを分解し、吸収体の状態を観察した。壊れのないものおよび殆ど壊れていないものを○、一部破壊が起こったものを△、破壊が顕著であるものを×として評価した。破壊の程度が△および×のおむつの枚数を、全回収枚数に除して、破壊の生じたおむつの割合を算出した。
また、尿漏れの有無は使用毎にモニターに日誌を付けてもらい、尿漏れの生じたおむつの枚数を全使用枚数で除して、尿漏れを起こしたおむつの割合を算出した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜7の使い捨ておむつは、吸収体の破壊を起こすことなく、また尿漏れも少ない。これに対して、比較例1〜3の使い捨ておむつは、いずれも尿漏れが多く、また比較例1および3は吸収体の破壊割合も大きい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吸収性物品は、体液吸収時の吸収体形状を安定に維持し、吸収阻害が無く、風合いにも優れ、特に薄型の吸収性物品として好適である。
Claims (4)
- 液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これら両シート間に介在する液保持性の吸収体とを有し、該吸収体がパルプ繊維と吸水性ポリマーを主体とする吸収性物品において、
30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を示す親水性の完全ケン化型ポリビニルアルコール繊維が、上記吸収体内に分散しており、該繊維が、体液中の水分により可塑化、膨潤し、該ポリビニルアルコール繊維同士及び上記パルプ繊維との間に粘着性や絡み合い等の相互作用を発現することを特徴とする吸収性物品。 - 上記30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を示す繊維の含有量が、パルプ繊維に対して1〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
- 上記30℃の水中で30〜1000%の膨潤度を示す繊維の繊度が、0.1〜10デニールであることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収性物品。
- 上記吸収体が上記吸水性ポリマーを上記パルプ繊維に対して、100〜500重量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
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