JP3736705B2 - ろ過脱塩処理装置のプリコート方法及びプリコート式ろ過脱塩処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリコート材をろ過エレメントにプリコートして水中の懸濁状やイオン状不純物を除去するプリコート式ろ過脱塩処理装置におけるプリコート方法および、その方法によってプリコートを行うプリコート式ろ過脱塩処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、原子力発電所では、原子力発電用ボイラーに使用する水に含まれる懸濁状やイオン状不純物を除去するためにプリコート式ろ過脱塩処理装置を使用している。
従来のプリコート式ろ過脱塩処理装置は、図2に示すように、プリコート材をプリコートすべきろ過エレメント2を内蔵したろ過器1とそれに付属するプリコートタンク3、プリコートポンプ5、プリコート材調整タンク11などで構成されている。プリコート材調整タンク11には図示外の純水系統から新たな純水を供給して水を張り、この中にプリコート材である粉末カチオン樹脂と粉末アニオン樹脂とを投入し、撹拌してスラリーを調整する。プリコートタンク3から、プリコートポンプ5、ろ過器1、プリコートタンク3の順に循環ルートを形成するように、プリコートポンプ5で水を循環し、吸引エダクター14に純水系統から純水を供給して駆動、プリコート材調整タンク11から吸引エダクター14でスラリーを吸引し、これを循環ルートへ供給してプリコート材をろ過器1のろ過エレメント2上にプリコートする。
【0003】
前記循環ルートへ系外から供給された新たな純水は、ろ過器を出た後、余剰水としてプリコートタンク3に溜まるが、多くなるとオーバーフロー管10から排出される。プリコート完了後においては、プリコート材調整タンク11からエダクター14までのラインにスラリーが残留する。その残留スラリーは、純水系統から新たな純水を供給して洗浄除去する。プリコート材調整タンク11には液面指示のため液面計12が設置され、その取り出しライン17にもスラリーが残る。この取り出しライン17中の残留スラリーは純水系統から新たな純水を供給して洗浄する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、プリコート式ろ過脱塩処理装置では、従来、プリコートする度に純水系統から新たな純水を大量に供給しなければならず、そのため多くの純水が無駄に使用され、また廃液が発生していた。従って、プリコート工程で使用する水量を極力低減することが求められていた。本発明は、多くの純水を無駄に使用することがなく、大量の廃液を発生させることの無いプリコート式ろ過脱塩処理装置におけるプリコート方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の手段によりその課題を解決した。
(1)粉末カチオン樹脂と粉末アニオン樹脂とを含むプリコート材をプリコートしたろ過エレメントを有するろ過器とそれに付属するプリコートタンク、プリコートポンプ、プリコート材調整タンクで構成されており、前記ろ過器で水をろ過して水中の懸濁状やイオン状不純物を除去するろ過脱塩処理装置で、プリコートタンクから、プリコートポンプ、ろ過器、プリコートタンクの順にプリコートポンプで水を循環して循環ルートを形成させ、プリコート材調整タンクでプリコート材を水に分散してスラリーとし、プリコート材調整タンクから純水系統から純水を供給して駆動する吸引エダクターでスラリーを吸引し、これを循環ルートへ供給してそのスラリーをろ過器に送ってプリコート材をろ過エレメントにプリコートする方法において、プリコート材調整タンクでスラリーの形成に使用する水をプリコートタンクから供給し、かつ前記プリコート材調整タンクからスラリーをエダクターで吸引し、ろ過器へ送り、そのろ過器のろ過エレメントをプリコート材でプリコートする際に、そのエダクター駆動するための駆動水を、プリコートタンクからろ過器へ水を送るラインのプリコートポンプ出口から供給することを特徴とするプリコート方法。
(2)前記プリコート材調整タンクからスラリーをエダクターで吸引してプリコート材をそのろ過器のろ過エレメントにプリコートする際に、前記プリコート材調整タンクからエダクターまでのラインの洗浄水をプリコートポンプ出口から供給することを特徴とする前記(1)記載のプリコート方法。
【0006】
(3)プリコート材調整タンクに設置した液面計の取り出しラインの洗浄水をプリコートタンクからろ過器へ水を送るためのラインにおけるプリコートポンプ出口から供給することを特徴とする前記(1)に記載のプリコート方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は本発明にかかるろ過脱塩処理装置のプリコート方法を行うろ過脱塩処理装置の一実施態様を示す概略図である。
【0008】
プリコート材をプリコートするろ過エレメント2を内蔵したろ過器1を設け、プリコートタンク3から水を送る循環ライン4を設け、その循環ライン4の途中にプリコートポンプ5を設けて、循環ライン4をろ過器1に連結する。循環ライン4には被処理水管6が合流している。ろ過器1には第2の循環ライン8を接続し、その循環ライン8はプリコートタンク3の流入口に連結している。また循環ライン8からは処理水ライン9が分岐している。
プリコートタンク3には、上部にオーバーフロー管10が設けられている。
また、液面計12を備えたプリコート材調整タンク11を設け、プリコート材調整タンク11内からはスラリー出口ライン13を延設してエダクター14に連結する。エダクター14にはライン15から駆動用の水を送り、スラリーを吸引し、そのエダクター14からスラリーをスラリー注入ライン16に送り、前記したプリコート循環ライン4のプリコートポンプ5の入口側途中に合流させている。
【0009】
循環ライン4のプリコートポンプ5の出口側途中からはエダクター駆動管15を分岐してその先端をエダクター14に連結し、そのエダクター駆動管15は途中で分岐し、分岐したライン洗浄管18を液面計10の液面計取り出しライン17に連結している。
プリコートタンク3からプリコート材調整タンク11にスラリーを形成するのに使用する水を供給するために、前記プリコートタンク3から水張りライン19が延び、プリコート材調整タンク11の給水口に至っている。
ろ過器1、プリコートタンク3、プリコート材調整タンク11、ポンプ5、循環ライン4、8などからなる本発明のプリコート式ろ過脱塩処理装置は、以上述べたような構成からなっている。
【0010】
ろ過エレメント2にプリコート材をプリコートするには例えば次のようにして行う。
プリコートタンク3内の水の一部を水張りライン19でプリコート材調整タンク11に導入し、同タンクに粉末カチオン樹脂と粉末アニオン樹脂とを含むプリコート材を添加し、同タンク内に設けてある撹拌羽根20をモータ21で回転し、前記プリコート材と水を撹拌し、プリコート用のスラリーを調整する。
【0011】
次に循環ライン4と循環ライン8とを通じ、プリコートポンプ5を駆動してろ過器1とプリコートタンク3とプリコートポンプ5とを通して水を循環させる。
プリコートポンプ5で加圧した循環水の一部を、プリコートポンプ5の出口側で分岐したエダクター駆動管15によりエダクター14に導き、スラリー出口ライン13を通じてプリコート材調整タンク11からスラリーを吸引し、スラリー注入ライン16から循環ライン4を通じてろ過器1のろ過室7側にスラリーを導入し、ろ過エレメント2上にプリコートする。
プリコート作業の終了後、スラリー注入ライン16から循環ライン4に入る流れを停止することにより、エダクター14を経てスラリー注入ライン16に入るスラリーの導入は停止され、それに伴ってプリコート材調整タンク11からエダクター14までの出口ライン13にスラリーが残留することになるが、このスラリーは、プリコートポンプ5で加圧した循環水の一部をエダクター駆動管15を通じてエダクター14に引き続いて導き、出口ライン13を通してプリコート材調整タンク11内に逆流させて除却する。
【0012】
プリコート材調整タンク11に設置した液面計12の取り出しライン17に残留したスラリーは、プリコートポンプ7で加圧した循環水の一部をエダクター駆動管15、分岐したライン洗浄管18に導き、取り出しライン17を通してプリコート材調整タンク11内に逆流させて除却する。
プリコートの操作が終了したら、循環ライン4及び8の流れを停止し、不純物を含んだ被処理水を被処理水管6からろ過器1に導入し、これをろ過して処理水管9から処理水を回収することにより発電用の高純度水を得る。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
図1に示すろ過脱塩処理装置を用いて、プリコート材をろ過エレメント上にプリコートした。
プリコート材調整タンク11は、内径1000mm×高さ2160mmの円筒型のタンクであり、有効容量は1.4m3 である。プリコートタンク5は、内径2200mm×高さ2880mmの円筒型のタンクであり、有効容量は10.5m3 である。
【0014】
プリコート材を調整するための水は水張りライン19を通してプリコートタンク3からプリコート材調整タンク11に供給される。その量は1.0m3 である。エダクター14の駆動水の流量は1.7m3 /hr必要で、プリコートポンプ5出口から分岐したエダクター駆動管15を経て供給される。その量は1.2m3 である。プリコートポンプ5の吸い込み側にプリコート剤調整タンク11内の8%スラリーがエダクター14の駆動水で希釈された4%スラリーが3.5m3 /hrの流量で2.3m3 供給される。これは、循環ライン4で更に希釈され、0.04%の一定な低濃度のスラリーとなってろ過器1に入り、ろ過エレメント2上にプリコートされる。
【0015】
プリコートの終了後、プリコート材調整タンク11からエダクター14までのライン13の洗浄水はエダクター駆動水と同流量で0.1m3 供給される。液面計取り出しライン17の洗浄水はエダクター駆動水と同程度の流量で0.05m3 供給される。
以上により、1回のプリコートの作業において2.4m3 の水が再利用された。年間では1プラントあたり150m3 再利用され、廃棄物量が低減される。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、プリコート材調整タンクでスラリーの調整に使用する水をプリコートタンクから供給することにより、純水の使用量を著しく少なくすることができる。また、エダクター駆動水をプリコートポンプ出口から供給することにより、調整したスラリーをろ過器に導入するために必要とする純水の使用量を著しく低減することができる。さらに、プリコート材調整タンクからエダクターまでのスラリー導入用ラインの洗浄水をプリコートポンプ出口から供給することにより、スラリー導入用ラインの洗浄をするのに必要とする純水の使用量を著しく低減することができる。プリコート材調整タンクに設置した液面計の取り出しラインの洗浄水をプリコートポンプ出口から供給する。
プリコートタンクからプリコート材調整タンクへの水供給ラインを備えているから、プリコートの度に純水を系外の純水系統から純水を供給する従来の方法あるいは装置に比べ、純水を無駄にすることがなく、大量の廃液を発生させることも無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリコート式ろ過脱塩処理装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】従来のプリコート式ろ過脱塩処理装置の例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ろ過器
2 ろ過エレメント
3 プリコートタンク
4 循環ライン
5 プリコートポンプ
6 被処理水管
7 ろ過室
8 循環ライン
9 処理水管
10 オーバーフロー管
11 プリコート材調整タンク
12 液面計
13 スラリー出口ライン
14 エダクター
15 エダクター駆動管
16 スラリー注入ライン
17 液面計取り出しライン
18 洗浄ライン
19 水張りライン
20 撹拌羽根
21 モータ
Claims (3)
- 粉末カチオン樹脂と粉末アニオン樹脂とを含むプリコート材をプリコートしたろ過エレメントを有するろ過器とそれに付属するプリコートタンク、プリコートポンプ、プリコート材調整タンクで構成されており、前記ろ過器で水をろ過して水中の懸濁状やイオン状不純物を除去するろ過脱塩処理装置で、プリコートタンクから、プリコートポンプ、ろ過器、プリコートタンクの順にプリコートポンプで水を循環して循環ルートを形成させ、プリコート材調整タンクでプリコート材を水に分散してスラリーとし、プリコート材調整タンクから純水系統から純水を供給して駆動する吸引エダクターでスラリーを吸引し、これを循環ルートへ供給してそのスラリーをろ過器に送ってプリコート材をろ過エレメントにプリコートする方法において、プリコート材調整タンクでスラリーの形成に使用する水をプリコートタンクから供給し、かつ前記プリコート材調整タンクからスラリーをエダクターで吸引し、ろ過器へ送り、そのろ過器のろ過エレメントをプリコート材でプリコートする際に、そのエダクター駆動するための駆動水を、プリコートタンクからろ過器へ水を送るラインのプリコートポンプ出口から供給することを特徴とするプリコート方法。
- 前記プリコート材調整タンクからスラリーをエダクターで吸引してプリコート材をそのろ過器のろ過エレメントにプリコートする際に、前記プリコート材調整タンクからエダクターまでのラインの洗浄水をプリコートポンプ出口から供給することを特徴とする請求項1記載のプリコート方法。
- プリコート材調整タンクに設置した液面計の取り出しラインの洗浄水をプリコートタンクからろ過器へ水を送るためのラインにおけるプリコートポンプ出口から供給することを特徴とする請求項1に記載のプリコート方法。
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