JP3736373B2 - エンジンの排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用エンジンから排出される排気ガスには、NOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)等の大気汚染物質が含まれているので、これらの大気汚染物質を浄化するために、排気通路には排気ガス浄化触媒を用いた排気浄化装置が設けられる。そして、かかる排気ガス浄化触媒を用いて、HC及びCOは酸化により浄化され、NOxは還元により浄化される、ここで、NOxを還元するには、NOxから酸素を奪う還元剤が不可欠であるが、自動車用エンジンでは、排気ガス中のHCがNOxの還元剤として利用される。
【0003】
このように、排気ガスにはその浄化形態が異なる複数の大気汚染物質が含まれているので、これらを有効に浄化するために、排気通路にはそれぞれ浄化特性が異なる複数の排気ガス浄化触媒が配置されることが多い(例えば、特開2000−225348号公報)。なお、特開2000−225348号公報に開示された従来の排気浄化装置では、排気通路の上流側にNOxを還元するNOx還元触媒が配置され、下流側にHC、CO等を酸化する酸化触媒が配置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ディーゼルエンジン、あるいは燃費性能を高めるために空燃比を理論空燃比よりも大幅にリーンして運転を行うガソリンエンジンでは、燃料の燃焼が空気過剰状態で行われることが多いので、燃焼室内でのNOxの発生量が多くなる一方、NOxを還元する際の還元剤となるHCが少なくなってNOx浄化触媒の浄化性能が低下するといった問題がある。なお、ポスト噴射等により排気ガス中のHCを増加させるといった対応も考えられるが、この場合はエンジンの構造が複雑化するといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、エンジンの排気ガスに含まれるNOxを還元して浄化する触媒に、その還元剤であるHCを有効に供給しつつ、HCを十分に浄化することができる簡素な構造のエンジンの排気浄化装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかるエンジンの排気浄化装置は、(i)それぞれエンジンの排気通路に配置され少なくともNOxを還元する、第1触媒と、該第1触媒の下流側に位置する第2触媒とを少なくとも備えているエンジンの排気浄化装置において、(ii)すべての触媒の中で、第1触媒が排気通路の最上流側に配置され、(iii)第1触媒及び第2触媒の各母材が、それぞれ、所定温度以下ではHCを吸着する一方、上記所定温度を超えるとHCを放出するゼオライト系HC吸着担体(多孔質)からなり、(iv)第1触媒及び第2触媒の各HC吸着担体が、それぞれ、触媒貴金属であるPtを担持し、(v)第1触媒のHC吸着担体(例えば、MFI、β型ゼオライト等)の細孔径が、第2触媒のHC吸着担体(例えば、β型ゼオライト、Y型ゼオライト等)の細孔径よりも小さく、かつ第1触媒のPt担持量が第2触媒のPt担持量よりも少ないことを特徴とするものである。
【0007】
一般に、エンジンの排気ガスには、分子中の炭素数が異なる、すなわち分子サイズが異なる種々のHC(例えば、アロマ系、オレフィン系、パラフィン系)が含まれている。なお、ディーゼルエンジンから排出されるHCは、ガソリンエンジンから排出されるHCに比べて、分子中の炭素数の分布幅、すなわち分子サイズの分布幅が大きい。
【0008】
そして、本発明にかかるこの排気浄化装置においては、排気通路の上流側に位置する第1触媒のHC吸着担体の細孔径が小さいので、このHC吸着担体では分子サイズが比較的小さいHCだけが吸着される。ここで吸着されたHCは、第1触媒でその触媒貴金属の触媒作用によりNOxを還元する際の還元剤として利用され、残りのHCは触媒貴金属の触媒作用により酸化・浄化される。そして、分子サイズが比較的大きいHCは、第1触媒のHC吸着担体には吸着されず、第1触媒を通りすぎる。
【0009】
他方、下流側に位置する第2触媒のHC吸着担体の細孔径は大きいので、第1触媒を通りすぎた分子サイズが比較的大きいHCは、第2触媒のHC吸着担体に吸着される。そして、ここで吸着されたHCは、第2触媒でその触媒貴金属の作用により、第1触媒では還元されなかったNOxを還元する際の還元剤として利用され、残りのHCは触媒貴金属の触媒作用により酸化・浄化される。
【0010】
このように、第1触媒及び第2触媒の双方に有効にHCが供給されるので、両触媒の協働により、排気ガス中のNOxを有効に還元・浄化することができる。また、排気ガス中のHCも有効に酸化・浄化される。
なお、細孔径が大きいHC吸着担体を用いた第2触媒を上流側に配置した場合は、排気ガス中のHCのほぼ全部が上流側の第2触媒のHC吸着担体に吸着され、その下流にはHCが供給されない。このため、下流側の触媒では、第2触媒にて還元されなかったNOxの還元に必要なHCを確保することができなくなってしまう。
また、本発明にかかるエンジンの排気浄化装置では、第1触媒のPt担持量が第2触媒のPt担持量よりも少ないが、一般に、触媒のPt担持量が増加すると、該触媒の活性化温度が低下する。他方、エンジン始動時(冷間始動時)においては、下流側の触媒は、上流側の触媒に比べてその温度上昇が遅れる。そこで、このように第2触媒のPt担持量を相対的に多くすれば、その活性化温度が低下するので、エンジン始動時等における第2触媒のHC及びNOxの浄化力を高めることができる。また、HC放出温度をPtの活性化温度より高めることができるので、第2触媒下流にHCが排出されない。
【0011】
上記排気浄化装置においては、第1触媒の単位面積あたりのセル数を、第2触媒の単位面積あたりのセル数よりも少なくしてもよい。このようにすれば、第1触媒でのHC吸着量がやや少なくなり、その分第2触媒にHCを供給することができ、第2触媒のNOxの浄化性能を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる、第1触媒及び第2触媒を備えたエンジンの排気浄化装置を説明する。
図1(a)に示すように、エンジン1の排気通路2には、排気ガス流れ方向(図1(a)中の位置関係では右向き)にみて、上流側に位置する第1触媒3(触媒コンバータ)と、下流側に位置する第2触媒4(触媒コンバータ)とが設けられている。両触媒3、4は、それぞれNOxを還元しかつHCを酸化することができる、なお、第1触媒3の上流側には、何も触媒は設けられていない。
【0019】
ここで、第1触媒3の母材には、細孔形状(断面)がほぼ円形であり、細孔径が比較的小さい(例えば、約0.55nm(5.5Å))多孔性のMFI(ゼオライト)からなるHC吸着担体が用いられている。そして、このHC吸着担体は、触媒貴金属としてPt(白金)を担持している。他方、第2触媒4の母材には、細孔形状(断面)が長円形であり、細孔径(長径)が比較的大きい(例えば、約0.72nm(7.2Å))多孔性のβ型ゼオライトからなるHC吸着担体が用いられている。そして、このHC吸着担体は、触媒貴金属としてPtを担持している。また、第1触媒3のPt担持量は、第2触媒4のPt担持量よりも少なくなっている。
【0020】
なお、第2触媒4のHC吸着担体の材料として、細孔形状がほぼ円形であり、細孔径が比較的大きい(例えば、約0.74nm(7.4Å))多孔性のY型ゼオライトを用いてもよい。また、触媒貴金属として、Pt以外に、Pd、Rh等を用いてもよい。さらに、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0021】
図2に示すように、HC吸着担体として用いられているMFI、βゼオライト等のゼオライトは、いずれも、それ自体の温度ないしは排気ガス温度が所定温度t1(例えば、240℃)以下ではHCを吸着する(細孔内に物理的に取り込む)一方、所定温度t1を超えるとHCを放出するといった性質を有している。
【0022】
また、エンジン1から排出される排気ガスには、分子サイズが異なる(分子中の炭素数が異なる)アロマ系、オレフィン系、パラフィン系等の種々のHCが含まれている。なお、前記のとおり、ディーゼルエンジンから排出されるHCは、ガソリンエンジンから排出されるHCに比べて、分子サイズの分布幅が大きい。
【0023】
図3に示すように、MFIは、その細孔径が比較的小さいので、種々のHC中の分子サイズが比較的小さいHCのみを吸着することができる。換言すれば、MFIは分子サイズが比較的大きいHCは吸着することができない。他方、β型ゼオライトは、その細孔径が比較的大きいので、分子サイズにかかわらず、すべてのHCを吸着することができる。
また、触媒貴金属であるPtは、排気ガス中のHCないしはHC吸着担体に吸着されたHCを酸化(浄化)することができ、かつ排気ガス中のHCないしはHC吸着担体に吸着されたHCを利用して、NOxを還元(浄化)することができる。
【0024】
かくして、この排気浄化装置においては、排気通路2の上流側に位置する第1触媒3を構成するHC吸着担体の細孔径が小さいので、このHC吸着担体では分子サイズが比較的小さいHCだけが吸着される。このように第1触媒3のHC吸着担体に吸着されたHCの一部は、Ptの還元触媒作用によりNOxを還元する際の還元剤として利用され、その他のHCはPtの酸化触媒作用により酸化・浄化される。つまり、第1触媒3によって、排気ガス中のHCの一部が酸化(浄化)され、かつNOxの一部が還元(浄化)される。なお、分子サイズが比較的大きいHCは、第1触媒3のHC吸着担体には吸着されず、第1触媒3を通りすぎる。
【0025】
他方、排気通路2の下流側に位置する第2触媒4を構成するHC吸着担体の細孔径は大きいので、第1触媒3を通りすぎた分子サイズが比較的大きいHCは、第2触媒4のHC吸着担体に吸着される。このように第2触媒4のHC吸着担体に吸着されたHCの一部は、Ptの還元触媒作用によりNOxを還元する際の還元剤として利用され、その他のHCはPtの酸化触媒作用により酸化・浄化される。つまり、第2触媒4によって、第1触媒3を通りすぎたHC及びNOxが浄化される。
このように、第1触媒3及び第2触媒4の双方に有効にHCが供給されるので、両触媒3、4の協働により、排気ガス中のNOxを有効に還元・浄化することができる。また、排気ガス中のHCも有効に酸化・浄化される。
【0026】
また、前記のとおり、この排気浄化装置においては、第2触媒4のPt担持量は、第1触媒3のPt担持量よりも多くなっている。これにより、第2触媒4の活性化温度が低下するので、エンジン1の冷間始動時等においては、温度上昇が遅れる第2触媒4の活性化が促進される。したがって、実施の形態1にかかる排気浄化装置は、非常に簡素な構成でもって、NOx及びHCを有効に浄化することができ、かつ冷間始動時等における触媒活性化を促進することができる。
【0027】
図4に、PtによるHC及びNOxの変化率(浄化率)の、触媒表面温度(ないしは排気ガス温度)に対する変化特性を示す。図4に示すように、Ptは、所定のHC活性化温度(240〜250℃)に達しないとHCの変化率は十分なものとはならない。なお、PtがHC活性化温度よりも高温となっても、HCの変化率は低下しない。また、Ptは、所定のNOx活性化温度(240〜250℃)に達しないとNOxの変化率は十分なものとはならない。なお、PtがNOx活性化温度より著しく高温になると、NOxの変化率は低下する。ただし、排気ガス温度ないしは触媒表面温度が著しく高くなるのは、エンジン1が高負荷状態にあるときであり、このようなときには燃焼室内は空気過剰状態ではないで(リッチ)、NOxの発生量が少なくなる。したがって、触媒表面温度が著しく高くなったときにおけるNOxの変化率の低下は、とくには不具合を生じさせない。なお、高負荷時には空気過剰状態ではないので、燃焼室内でのHCの発生量が増加するが、この場合、排気ガス温度が高くHC浄化率が100%であるので、HCは完全に浄化される。
【0028】
そして、図5に示すように、触媒ないしはHC吸着担体のPt担持量が多くなると、NOx活性化温度は低下する(グラフG1→G2)。また、HC活性化温度も低下する(グラフG3→G4)。このように、触媒のPt担持量が増加するとその活性化温度が低下するので、第2触媒4のHC放出温度がPtの活性化温度以上となり、第2触媒4の下流にはHCが排出されない。
【0029】
また、第1触媒3のPt担持量を少なくするのは、HC浄化率を若干低下させて、第2触媒4にHCを十分に供給するためである。
なお、エンジン1において、適宜、燃料の一部を膨張行程で噴射し(ポスト噴射)、排気ガス中にHCを供給するようにしてもよい。
【0030】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2にかかる排気浄化装置を説明する。しかしながら、実施の形態2にかかる排気浄化装置の基本構成は、実施の形態1にかかる排気浄化装置と同様であるので、以下では説明の重複を避けるため、実施の形態1にかかる排気浄化装置と異なる点についてのみ説明する。
【0031】
実施の形態2にかかる排気浄化装置では、第1触媒3の容量が第2触媒4の容量よりも小さくなっている。例えば、第1触媒3容量は2リットルとされ、第2触媒4の容量は2.6リットルとされる。その他の構成は、実施の形態1の場合と同様である。この実施の形態2にかかる排気浄化触媒では、第1触媒3の容量が小さくなるので、第1触媒3が吸着することができるHCの量が多少低下し、その分第2触媒4にHCを供給することができる。
なお、第1触媒3の単位面積あたりのセル数を、第2触媒4の単位面積あたりのセル数よりも少なくしても、同様の作用・効果が得られる。
【0032】
(実施の形態3)
以下、図1(b)を参照しつつ、本発明の実施の形態3を説明する。しかしながら、実施の形態3にかかる排気浄化装置の基本構成は、図1(a)に示す実施の形態1にかかる排気浄化装置と類似しているので、以下では説明の重複を避けるため、実施の形態1にかかる排気浄化装置と異なる点についてのみ説明する。図1(b)に示すように、実施の形態3にかかる排気浄化装置では、MFIからなるHC吸着担体(第1吸着担体)を備えた第1触媒3の下流側に、単独HC吸着担体6(第2HC吸着担体)と、NOx還元触媒7とが設けられている。
【0033】
ここで、第1触媒3の構成は、実施の形態1の場合と同様である。単独HC吸着担体6はβ型ゼオライトからなり、この単独HC吸着担体6は触媒貴金属を担持していない。NOx還元触媒7の母材には、多孔性のβ型ゼオライトからなるHC吸着担体が用いられている。そして、このHC吸着担体は、触媒貴金属としてPtを担持している。その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。
【0034】
この実施の形態3にかかる排気浄化装置においては、上流側の第1触媒3のHC吸着担体で、分子サイズが比較的小さいHCを利用してNOxを還元しつつHCの浄化を行うことができる。また、分子サイズが比較的大きいHCは、第1触媒3を通りすぎて単独HC吸着担体6に吸着される。このHCは単独HC吸着担体6から放出され、NOx還元触媒7でNOxを還元する際に還元剤として利用される。かくして、第1触媒3と、単独HC吸着担体6と、NOx還元触媒7の協働により、排気ガス中のNOx及びHCを、有効に還元・浄化することができる。
【0035】
なお、特開平8−284646号公報には、排気通路の上流側に配置されたHCトラップ材と、下流側に配置されたNOx還元触媒とを備えた排気浄化装置が開示されている。そして、この従来の排気浄化装置では、排気ガス温度が高く、NOxが増加する領域では、HCトラップ材から放出されるHCをNOx還元触媒に供給し、NOx浄化性能を高めるようにしている。この従来の排気浄化装置は、本発明の実施の形態3にかかる排気浄化装置と類似しているようにもみえるが、この従来の排気浄化装置は、HC吸着担体としてβ型ゼオライトを用いていないので、本発明の実施の形態3にかかる排気浄化装置とは明らかに構成が異なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は実施の形態1又は2にかかるエンジンの排気装置の概略構成を示す模式図であり、(b)は実施の形態3にかかるエンジンの排気装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】 排気ガス温度に対するゼオライトのHC吸着・放出特性を示すグラフである。
【図3】 MFI及びβ型ゼオライトの細孔径を比較して示したグラフである。
【図4】 PtによるHC及びNOxの変化率(浄化率)の触媒表面温度に対する変化特性を示すグラフである。
【図5】 PtのHC及びNOxについての活性化温度のPt担持量に対する変化特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…エンジン、2…排気通路、3…第1触媒、4…第2触媒、6…単独HC吸着担体、7…NOx還元触媒。
Claims (2)
- それぞれエンジンの排気通路に配置され少なくともNOxを還元する、第1触媒と、該第1触媒の下流側に位置する第2触媒とを少なくとも備えているエンジンの排気浄化装置において、
すべての触媒の中で、第1触媒が排気通路の最上流側に配置され、
第1触媒及び第2触媒の各母材が、それぞれ、所定温度以下ではHCを吸着する一方、上記所定温度を超えるとHCを放出するゼオライト系HC吸着担体からなり、
第1触媒及び第2触媒の各HC吸着担体が、それぞれ、触媒貴金属であるPtを担持し、
第1触媒のHC吸着担体の細孔径が、第2触媒のHC吸着担体の細孔径よりも小さく、かつ第1触媒のPt担持量が第2触媒のPt担持量よりも少ないことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。 - 第1触媒の単位面積あたりのセル数が、第2触媒の単位面積あたりのセル数よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
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