JP3735764B2 - 固形粉末化粧料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は固形粉末化粧料及びその製造方法に関する。詳しくは、パフ等の塗布具への取れが良好で、ケーキングが生じにくく、しかも肌へのソフトで軽い感触を有し、伸び、膜の均一性に優れ、且つ保形性の良好な固形粉末化粧料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりメイクアップのための着色や、皮膚のべたつきを押さえるなどの目的で、粉体を含んだ化粧料が広く使用されている。粉体を含んだ化粧料は、油性固形状、乳液状、粉末状、粉末固形状等種々の形態で提供されている。なかでも粉末を圧縮成形して製造した固形粉末化粧料は、使用性が簡便であること、携帯に便利であることなどの理由により多くの人に使用されてきた。固形粉末化粧料は、通常、化粧料用粉体を圧縮成形して製造する。この圧縮成形は、成形された固形粉末化粧料がその後の製造過程や流通過程或は使用中に割れたり、崩壊したり、或は粉飛びしないように、すなわち保形性が良くなるように、高圧下で行われている。したがって、固形粉末化粧料は、通常は、例えば指で押すなどの軽い応力を加えても、凹むなどの変形が生じない程度の硬さを有している。
【0003】
しかして、固形粉末化粧料は、粉末状化粧料に比較して、スポンジ、パフ等の塗布具への取れが悪かったり、肌への塗布時の伸び、滑らかさが劣るなど、圧縮成形が粉末状化粧料の長所に悪影響を及ぼすことがあり、更に硬く固まる所謂ケーキングを生じやすく、一層塗布具への取れが悪くなる難点があった。また、塗布具への取れなど良好な使用性を付与するために、化粧料処方や塗布具に制約が生じることがあった。また、圧縮成形時の加圧を比較的低圧で行い、塗布具への取れを良くすることも知られているが、この低圧で成形されたものは粉飛びや崩壊が著しくて使用性が悪いものになり易い。
【0004】
これらの問題点を解決するために従来より種々の改良が提案されている。例えば、凝集力の弱い球状粉体や板状粉体などを多く配合する方法、中空や多孔性の粉体を配合する方法などを採用することによって崩壊性を確保したり、ソフトな感触を得る技術が提案されている。しかし、このような方法によると保形性が悪くなったり、化粧料の肌への密着感、仕上がり膜の均一性において満足するものが得られなくなるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明者は、先に、塗布具への取れが良く、滑らかでのびの軽いソフトな感触を有し、化粧料の密着感、仕上がり膜の均一性に優れ、しかも保形性が良好な固形粉末化粧料として、内部に多数の微細な空隙を有し且つ塑性変形する性質を有する固形粉末化粧料、すなわち中空粉体や多孔性粉体などの中空の素材を使用することなく、内部に多数の微細な空隙を形成させた固形粉末化粧料を提案した(特願平10−67695号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き内部に多数の微細な空隙を有し、且つ塑性変形する性質を有する固形粉末化粧料を、環境に対し安全に且つ低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、粉体と微細な氷との混合物を圧縮成形し、その後該圧縮成形物から氷を除去し、圧縮成形物の内部に空隙を形成させることを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法である。上記の方法において、氷として、糖類水溶液の凍結物、水溶性高分子物質の水溶液の凍結物、或は水を吸収させた吸水性高分子物質の凍結物を用いることができる。また、上記の粉体として疎水性粉体を含有する粉体を使用するのが好ましい。また、上記の氷の除去は凍結乾燥で行うのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、粉体と微細な氷との混合物を圧縮成形し、その後該圧縮成形物から氷を除去し、該圧縮成形物の内部に空隙を形成させる方法である。この粉末としては化粧料用粉体が用いられる。また微細な氷は、水を凍結して得た氷を粉砕して作成する。この氷の粉砕物すなわち微細な氷の形状は任意である。粉体と微細な氷との混合は、所定量の粉体と所定量の微細な氷とを氷点下で、通常の混合操作によって混合する。次いで、この混合物を圧縮成形する。混合物の圧縮成形には、金型中に金皿をセットし、これに適量の混合物を入れ、次いでプレスして金皿に混合物を圧縮充填、固形化し、その後金皿を金型から取り出す方法、或は金型に直接適量の混合物を入れ、次いでプレスして混合物を圧縮固形化し、この固形物を金型から取り出す方法などが採用できる。この圧縮成形は高圧で行い、成形した固形粉末化粧料を指などで押圧しても塑性変形しないような固さにするのがよい。この圧縮成形時点では、その充填密度は通常1.1g/cm3以上にするのが好ましい。
【0009】
圧縮成形後に圧縮成形物中の微細な氷を除去する。この微細な氷の除去によって、圧縮成形物内部の氷が存在していた場所が空間(空隙)となり、圧縮成形物の内部に微細な空隙が生じる。換言すれば、圧縮成形物の内部に空隙を生じさせるために氷を除去する。したがって、氷の除去は圧縮成形物の内部に空隙が生じる方法であれば、その方法は特に限定されない。最も好ましい除去方法は凍結乾燥である。この凍結乾燥により除去する方法は、上記の粉体と微細な氷との混合物の圧縮成形物を、その圧縮成形物の水蒸気圧以下に減圧することによって、該圧縮成形物の内部に存在する氷を昇華させて除き、圧縮成形物内部の氷が存在していた場所に空隙を生じさせる方法である。この凍結乾燥には従来用いられてきた凍結乾燥方法が採用できる。
【0010】
上記の如く、氷を除去して内部に空隙を生じさせた後の圧縮成形物(固形粉末化粧料)は、充填密度が低下し、指などでの押圧によって、塑性変形を生じるようになるが、粉飛びや崩壊は生じにくく、また落下させても割れや剥がれが生じにくい。これは、一旦高圧で圧縮成形してあるためと推察される。従来、化粧料用粉体を比較的低圧で圧縮成形した充填密度の小さい固形粉末化粧料が知られているが、このものは粉飛びや崩壊が生じやすい。上記のようにして製造した本発明の固形粉末化粧料は、充填密度が1.3g/cm3以下と小さいものであっても、粉飛びや崩壊は生じにくく、また落下させても割れや剥がれが生じにくく、いわゆる保形性が優れている。また微細な氷の形状及び混入量を変えることによって、空隙の大きさ、形状及び数を任意に変えることができる。
【0011】
固形粉末化粧料の内部の空隙は、ほぼ均一な大きさの空隙でもよいし、大小の空隙が混在していてもよい。また、この空隙はスポンジ状の形態で存在するのが好ましい。この空隙の形状は球形、楕円形など任意である。また、空隙の大きさは30〜3000μmが好ましい。すなわち、空隙の径の最小は30μm以上であり、これが30μm未満では上記の作用効果が得られがたく、また空隙の径の最大は3000μm以下であり、これが3000μmを超えると製品の外観が悪くなり好ましくない。また、本発明の固形粉末化粧料は、充填密度1.3g/cm3以下のものが上記の作用効果をより発揮するので好ましい。
【0012】
本発明で得られる固形粉末化粧料は、その内部に多数の微細な空隙が存在し、且つ塑性変形する性質を有する。ここで言う塑性変形とは、固形粉末化粧料を外部から押圧したとき、押圧部分の内部の空隙が押し潰されて生じる体積減少を伴う変形を言う。例えば、本発明の固形粉末化粧料の表面を指で押して押圧を加えると、その押圧部分の内部の空隙が押し潰されて体積減少を生じ、その押圧部分に指の押し型の凹みが生じる。本発明の固形粉末化粧料は、このように押圧により、押し潰され、塑性変形を起こす状態で空隙が存在するため、塗布具への取れが良く、滑らかでのびの軽いソフトな感触を有し、化粧料の密着感、仕上がり膜の均一性に優れるなどの特性を有している。
【0013】
上記の化粧料用粉体粉体は、通常化粧料に用いられる粉体であって特に限定されない。その形状は球状、板状、針状等であり、その粒子径は煙霧状、微粒子状、顔料級等であり、またその粒子構造は多孔質でも無孔質でもよい。無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン;有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類である。
【0014】
更に、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、カルバミン酸エチルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、デンプン粉、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機粉体類;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料、天然色素等の色素粉体類;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体;などが挙げられる。これら粉体はその1種または2種以上を複合化したものを用いてもよい。
【0015】
また本発明で用いる微細な氷は、固形粉末化粧料の内部に形成させる空隙の大きさを考慮して決める。通常は粒径30〜3000μmである。すなわち、使用する微細な氷は、その最小の径が30μm以上であって、最大の径が3000μm以下である。これは氷を粉砕することによって調製できる。圧縮成形後に微細な氷を除去することによって、固形粉末化粧料の内部に微細な氷の形状及び大きさとほぼ同じ形状及び大きさの空隙が生じる。また、微細な氷と粉末の圧縮成形時における配合割合は、固形粉末化粧料の塗布具への取れの良さや皮膚上での滑らかなのびといった効果、使用時の崩壊、粉飛び、ケーキング防止等の点を考慮して、化粧料成分(化粧料用粉体、後述する油性成分、及び後述する通常の化粧料に使用される成分の合計量)1に対して重量比で微細な氷0.03〜2の範囲が好ましい。本発明では氷を用いたので、除去処理時に空中にて逸散しても人体を害したり、環境を汚染することがない。また氷であるのでコストが安い。
【0016】
また、氷として、糖類の水溶液の凍結物を用いることができる。真水を凍結させた氷は、細かく粉砕したとき、その粉砕片は薄片状になりやすいが、糖類水溶液を凍結させた氷は、細かく粉砕したとき、その粉砕片は薄片状とならずに粒状となる。したがって、この氷を用いた場合には、固形粉末化粧料の内部に形状が粒状をした空隙を形成させることができる。そして、内部の空隙が粒状の形状をした固形粉末化粧料は、塗布具への取れが良く、滑らかで伸びの軽いソフトな感触がより向上する。糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、蔗糖、果糖、乳糖、麦芽糖、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、トレハロース、キシリトール等が挙げられる。糖類水溶液の糖類の濃度は0.1〜10重量%が好ましい。
【0017】
また、氷として、水溶性高分子物質の水溶液の凍結物を用いることができる。また、水溶性高分子物質の水溶液の凍結物を用いた場合は、水分を除去した後に固形粉末化粧料の内部に水溶性高分子物質が残存する。そして、これが粉体同士の結合剤の作用をするためか、固形粉末化粧料の保形性が向上する。水溶性高分子物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、寒天、ゼラチン、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸塩等の天然水溶性高分子物質、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の半合成水溶性高分子物質、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成水溶性高分子物質が挙げられる。特にゼラチン、寒天が好ましい。水溶性高分子物質の濃度は0.01〜5重量%が好ましい。
【0018】
また、氷として、水を吸収させた吸水性高分子物質の凍結物を用いてもよい。この吸水性高分子物質は、実質的に水に溶解せずに高度に水を吸収し、体積の増加を伴って、膨張する性質を有する高分子物質である。吸水性高分子物質の氷中の含有量は0.01〜10重量%が好ましい。この吸水性高分子物質としては、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−アクリルアミド共重合体、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース塩、ポリビニルアルコール−ポリ無水マレイン酸塩グラフト共重合体等の架橋体物が挙げられる。中でもポリアクリル酸塩やデンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体の架橋体物が好ましく用いられる。これら吸水性高分子物質は、例えばサンフレッシュシリーズ(三洋化成工業株式会社製)、ダイヤウエット(三菱化学株式会社製)、PQ−ポリマー(大阪有機化学株式会社製)等の商標名で市販されている。
【0019】
本発明においては、これらの吸水性高分子物質は、粉末状の粒子にして使用する。粉末状の粒子としては、ポリマーの粉砕によって得られる不定形粒子、有機溶媒中で逆相懸濁重合して合成する方法によって得られる球状粒子等が挙げられるが、球状の粒子が好ましい。また、吸水性高分子物質の粉末に水を吸水させると、凝集して塊となりやすい。この凝集を防止するため、吸水性高分子物質の粒子の表面を無機粉末、界面活性剤、弗素含有材料、シリコーン油等で表面被覆処理してもよい。
【0020】
本発明では、吸水性高分子物質に水を吸収させ膨張させ、この状態で凍結させる。水を吸収させた吸水性高分子物質と粉体との混合、圧縮成形及び凍結工程は、使用する吸水性高分子物質の性質に応じ、適宜の方法を選択する。この方法としては、例えば、▲1▼水を吸収した吸水性高分子物質を凍結した後、粉体と氷点下で混合し、圧縮成形を行う方法、▲2▼水を吸収した吸水性高分子物質と粉体とを室温下で混合後、室温下で圧縮成形し、次いで該圧縮成形物を氷点下で保管し、該圧縮成形物中の水を凍結する方法、▲3▼水を吸収した吸水性高分子物質を室温下で粉体と混合した後、氷点下で保管して水を凍結し、次いで圧縮成形する方法が挙げられる。吸水性高分子物質を用いた場合にも、凍結した氷の除去は、凍結乾燥によるのが好ましい。吸水性高分子物質は、その形状、粒径を変え易いため、任意の形状の空隙を形成し易い。また、吸水性高分子物質の抱水力により圧縮成形時の粉体成分の水への濡れを低減できるなどの利点がある。
【0021】
本発明方法においては、粉体と微細な氷との混合物を圧縮成形して固形粉末化粧料を製造する。氷を使用するため、場合によっては水分の影響を受けて固形粉末化粧料が硬くなることがある。粉体中に疎水性粉体を含有させると、固形粉末化粧料が硬くなり過ぎず、塗布具への取れが良く、滑らかで伸びの軽いソフトな感触がより向上する。疎水性粉末は、ポリスチレン粉末などのように粉体自体が疎水性を有する粉体でもよく、また親水性の粉体を疎水化処理剤で処理して疎水性にしたものでもよい。この疎水化処理剤としては、例えばパーフルオロアルキルリン酸塩などのフッ素系化合物、メチルヒドロジェンポリシロキサンなどのシリコーン化合物、ラウリン酸亜鉛などの金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ワックスなどが挙げられる。これらの疎水化処理剤の二種以上を同時に又は多層に重ねて施してもよい。粉体中の疎水性粉体の含有量は、疎水性粉体の疎水化度、比表面積、粒子径等に影響されるが、概ね30〜100%が好ましい。
【0022】
本発明の固形粉末化粧料の製造においては、上記化粧料用粉体の他に、化粧料の肌への付着性としっとり感、また成型のための結合力を付与する為に、油性成分を配合することができる。油性成分としては、化粧品一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、必須成分以外のフッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、親油性界面活性剤類等が挙げられる。
【0023】
油性成分は、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モクロウ、モンタンワックス、フィッシュトロプスワックス等の炭化水素類;オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
油性成分は、使用感において、化粧料用粉体1に対して重量比で0.01〜1の範囲で配合するのが好ましい。
【0024】
本発明の固形粉末化粧料の製造においては、上記した化粧料用粉体、油性成分の他に通常の化粧料に使用される成分、水溶性高分子、アルコール類、水等の水性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0025】
上記の水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。また、水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0026】
界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0027】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等を挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、PABA系としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等が挙げられ、ケイ皮酸系としては、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等が挙げられ、サリチル酸系としては、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、その他、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0030】
保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられる。美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸アルキル、フェノキシエタノール等が挙げらる。
【0031】
本発明方法で製造した固形粉末化粧料は、例えばファンデーション、コンシーラー、白粉、チークカラー、アイカラー、アイライナー、アイブラウ等のメイクアップ化粧品の他、ボディパウダーなどに適用できる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
表1に実施例1〜7及び比較例1の成分組成を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(製造方法)
実施例1〜3.
A.成分1〜16を混合分散する。
B.成分17をAに添加し、混合粉砕する。
C.成分18〜21を混合分散後、冷凍庫で固化させる。
D.Cを粉砕する。
E.BにDを添加し、混合分散する(0℃以下が好ましい)。
F.Eを金皿に圧縮成形する。
G.Fを減圧下、−10℃で、2日間凍結乾燥する。
H.Gを室温に戻して、固形粉末化粧料を得た。
【0035】
実施例4.
A.成分1〜16を混合分散する。
B.成分17をAに添加し、混合粉砕する。
C.成分21に成分18を吸収させる。
D.BとCを混合分散する。
E.Dを室温下で、金皿に圧縮充填する。
F.Eをを減圧下、−10℃で、2日間凍結乾燥する。
G.Fを室温に戻して、固形粉末化粧料を得た。
【0036】
実施例5〜7.
A.成分1〜16を混合分散する。
B.成分17をAに添加し、混合粉砕する。
C.成分21に成分18を吸収させる。
D.BとCを混合分散する。
E.Dを氷点下で保管して、成分18を凍結する。
F.Eを氷点下で、金皿に圧縮充填する。
G.Fを減圧下、−10℃で2日間凍結乾燥する。
H.Gを室温に戻して、固形粉末化粧料を得た。
【0037】
比較例1.
A.成分1〜16を混合分散する。
B.成分17をAに添加し、混合粉砕する。
C.Bを金皿に圧縮成形して、固形粉末化粧料を得た。
【0038】
上記の如くして得た実施例1〜7及び比較例1の固形粉末化粧料の充填密度及び針入荷重は、それぞれ表1に示したとおりであった。そして、実施例1〜7で得た固形粉末化粧料の表面を押圧したところ、押圧部分が凹み体積変化があった。比較例1で得た固形粉末化粧料は、同様に押圧しても押圧部分が凹むことなく、体積変化はみられなかった。また、実施例1〜7、比較例1で得た固形粉末化粧料について、保形性、取れの良さ、のびの軽さ、のびの滑らかさ、仕上り膜の均一性について評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0039】
上記の充填密度は、体積既知の金皿に製品を成型し、余剰分を削りとった後重量を測定し、製品1ccあたりの重量を求めた値である。また針入荷重はレオメーター(不動工業株式会社製)にて、5mm円盤状アダプターを使用し、上昇速度2cm/分、1mm針入時の荷重を測定した値である。
【0040】
表1中の評価項目の評価方法、評価基準について説明する。
(評価項目)
a.保形性
b.取れの良さ
c.伸びの軽さ
d.伸びのなめらかさ
e.仕上がり膜の均一性
【0041】
(評価及び評価基準)
評価項目aの保形性については、製品を30cmの高さから落下させ、割れ、剥がれの生じなかったものを良品とした。
評価項目b〜eについては、評価パネル10名による使用テストを行い、5段階評価の平均点に基づいて下記基準で判定した。
評価基準
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
判定基準
◎:4点以上
○:3.5点以上4点未満
△:2点以上3.5点未満
×:2点未満
【0042】
【0043】
(製法)
A.成分1〜6を混合した。
B.Aに成分7を加え、混合粉砕した。
C.Bを−20℃の恒温槽にて24時間保管した。
D.成分8を−20℃の恒温槽で凍結し、これを粉砕して粉末状にした。
E.CとDを氷点下でよく混合し、圧縮成形した。
F.Eを−15℃で48時間、0.01mberの減圧下で凍結乾燥した。
G.Fを室温に戻し、固形白粉を得た。
実施例8の固形白粉は、取れ、伸びに優れ、膜の均一性に優れ、ケーキングが生じにくく、保形性の良好な、ソフトで軽い感触を有していた。
【0044】
【0045】
(製法)
A.成分1〜5を混合した。
B.Aに成分6を加え、混合粉砕した。
C.Bを−20℃の恒温槽にて18時間保管した。
D.成分8に成分7を溶解し、−20℃の恒温槽で凍結し、これを粉砕して粉末状にした。
E.CとDを氷点下でよく混合し、圧縮成形した。
F.Eを−40℃で2時間保管した後、−10℃で0.01mberの減圧下で凍結乾燥した。
G.Fを室温に戻し、固形状ボディパウダーを得た。
実施例9の固形状ボディパウダーは、取れ、伸び、膜の均一性に優れ、ケーキングが生じにくく、保形性の良好な、ソフトで軽い感触を有していた。
【0046】
【0047】
(製法)
A.成分1〜6を混合した。
B.Aに成分7〜8を加え、混合粉砕した。
C.Bを−20℃の恒温槽にて24時間保管した。
D.成分9を成分10に入れて膨潤させ、−20℃の恒温槽で凍結し、これを粉砕して粉末状にした。
E.CとDを氷点下でよく混合し、圧縮成形した。
F.Eを−20℃で48時間、0.001mberの減圧下で凍結乾燥した。
G.Fを室温に戻し、固形アイカラーを得た。
実施例10の固形アイカラーは、取れ、伸びに優れ、膜の均一性に優れ、ケーキングが生じにくく、保形性の良好な、ソフトで軽い感触を有していた。
【0048】
【発明の効果】
ヨウ素、カンファー、メントール、ナフタレン等の昇華性物質を用いて固形粉末化粧料の内部に空隙を形成させる方法では、昇華した物質が環境を汚染する恐れがあり、またこれら昇華性物質はコストが高い。本発明は氷を用いて固形粉末化粧料の内部に空隙を形成さたので、環境を汚染することもなく、コストも安い。そして、本発明でえられた固形粉末化粧料は、十分な保形性を持ち、取れ、伸びに優れ、膜の均一性に優れ、ケーキングを生じにくく、保形性の良好な、ソフトで軽い感触を有するものである。
Claims (9)
- 粉体と微細な氷との混合物を圧縮成形し、その後該圧縮成形物から氷を除去し、圧縮成形物の内部に空隙を形成させることを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
- 氷が、糖類水溶液の凍結物であることを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料の製造方法。
- 氷が、水溶性高分子物質の水溶液の凍結物であることを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料の製造方法。
- 氷が、水を吸収させた吸水性高分子物質の凍結物であることを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料の製造方法。
- 水を吸収させた吸水性高分子物質と粉体とを室温下で混合し、その後室温下で圧縮成形し、次いで該圧縮成形物を氷点下で圧縮成形物中の水を凍結し、その後圧縮成形物から氷を除去し、圧縮成形物の内部に空隙を形成させることを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
- 水を吸収させた吸水性高分子物質を室温下で粉体と混合した後、氷点下で水を凍結し、次いで圧縮成形し、その後該圧縮成形物から氷を除去し、圧縮成形物の内部に空隙を形成させることを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
- 吸水性高分子物質が、粉末状であり且つ表面被覆処理されたものであることを特徴とする請求項4〜6記載の固形粉末化粧料の製造方法。
- 粉体が、疎水性粉体を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の固形粉末化粧料の製造方法。
- 氷の除去を凍結乾燥で行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の固形粉末化粧料の製造方法。
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