JP3735739B2 - 木質床材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床下地に接着剤によって直貼りされる木質床材に関し、特に緩衝性および遮音性を有する木質床材に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「遮音性」とは、床衝撃音遮断性能をいう。
【0003】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来のこの種の木質床材としては、図4に示すように、木質板(2) の下面に、例えば不織布、繊維マット、連続気泡性合成樹脂発泡体等よりなる通気性緩衝部材(3) が接合されている木質床材(11)が知られている。この木質床材(11)によれば、床材(11)表面に衝撃等の外力が加えられた際、緩衝部材(3) の空隙内に存在する空気が水平方向に移動することによって同部材(3) の圧縮変形がスムーズに行なわれるので、緩衝部材(3) の厚さが比較的薄い場合であっても優れた緩衝性および遮音性が得られる。
【0004】
しかしながら、上記木質床材(11)は、これをコンクリートスラブやパーティクルボード等の床下地(B) に施工用接着剤(A) によって直貼りする際に、緩衝部材(3) の空隙に施工用接着剤(A) が浸入固化して同部材(3) の圧縮変形部分が減少することにより、緩衝性および遮音性の低下を招くという問題があった(図4参照)。
【0005】
また、上記木質床材(11)は、これらの対向端縁部に形成された雄実(2a)と雌実(2b)とが互いに嵌め合わせられるように床下地(B) に順次並べていく必要があるため、2列目以降については、まず木質床材(11)を施工用接着剤(A) が塗布された床下地(B) における既に適正位置に配置された木質床材(11)の隣りにやや間隔をあけて仮置きしたのち(図5(a) 参照)、これを横にずらして両床材(11)の雄実(2a)と雌実(2b)とを嵌め合わせるようにしている(図5(b) 参照)。ところが、上記木質床材(11)の場合、これを横にずらすために木質板(2) を押しても、施工用接着剤(A) が緩衝部材(3) の空隙に浸透して床下地(B) との密着性が高まっており、しかも緩衝部材(3) が横方向に容易に弾性変形するため、なかなか適正位置までずらすことができず、場合によっては、両床材(11)の緩衝部材(3) 同士の間に隙間があいたままこれらの雄実(2a)と雌実(2b)とが嵌め合わせられることもある(図5(b) 参照)。そうすると、横方向に弾性変形していた緩衝部材(3) が復元することにより、嵌め合わせられていた雄実(2a)と雌実(2b)とが離間してしまうこともあった(図5(c) 参照)。
【0006】
そこで、上記問題点を解決するため、図6に示すように、緩衝部材(3) の下面に独立発泡性合成樹脂発泡体シート(5) が接合されている木質床材(12)が提案された。この木質床材(12)によれば、独立発泡性合成樹脂発泡体シート(5) の存在によって、施工用接着剤(A) が緩衝部材(3) に浸透するのを防止することができ、したがって接着施工に伴う緩衝性および遮音性の低下は回避できるが、同シート(5) の分だけ厚みが増すので、歩行時の沈み込み量が大きくなって歩行感が悪くなるという問題があった。
【0007】
また、図7に示すように、緩衝部材(3) の下面にポリエチレン等の柔軟なプラスチックフィルム(6) が接合されてなる木質床材(13)も提案されている(実開平4−90628号、特開平6−336814号参照)。この木質床材(13)によれば、プラスチックフィルム(6) の存在によって、施工用接着剤(A) が緩衝部材(3) に浸透するのを防止することができるとともに、図6に示す木質床材(12)のように歩行時の沈み込み量も大きくならず、歩行感の点でも問題がない。しかしながら、プラスチックフィルム(6) は表面が非常に滑らかであるので、施工用接着剤(A) が固化する前に木質床材(13)が床下地(B) の上を横滑りし易く、隣り合う木質床材(13)同士の間に隙間が生じることがあるだけでなく、投錨効果がほとんど期待できないことから、接着性に劣り、施工用接着剤(A) の固化後に木質床材(13)が剥れることもあった。そして、このような問題を解決する手段として、プラスチックフィルム(6) にコロナ放電処理を施すというものもあるが(実開平4−90628号)、コロナ放電処理による接着性向上効果はせいぜ1〜3カ月程度しか持続せず、木質床材(13)の製造から施工までの期間が著しく制限されるため、必ずしも有効な手段ではないと考えられる。また、複数の透孔を有するプラスチックフィルム(6) を用いたり、プラスチックフィルム(6) を緩衝部材(3) の下面に部分的に接合する手段も提案されているが(実開平4−90628号等)、その場合には、プラスチックフィルム(6) の透孔またはプラスチックフィルム(6) が接合されていない部分を通じて施工用接着剤(A) が緩衝部材(3) に浸透し固化するため、それに伴う木質床材(13)の緩衝性および遮音性の低下は避けられない。
【0008】
本発明は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであって、接着施工に伴う緩衝性および遮音性の低下を生じることがなく、施工を容易かつ確実に行なうことができ、しかも歩行感に優れた木質床材を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明は、床下地に接着剤によって直貼りされる木質床材であって、木質板と、これの下面に接合された通気性緩衝部材と、同部材の下面に接合された施工用接着剤浸透防止部材とを備えてなり、施工用接着剤浸透防止部材は、剛性を有するとともに、その下面に施工用接着剤の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙を有しているものである。
【0010】
ここで、施工用接着剤浸透防止部材の剛性は、床下地に未硬化状態の施工用接着剤層を介して載置された際にその縁部を押せば横にずらすことができる程度のものであればよい。
【0011】
施工用接着剤浸透防止部材としては、例えば、硬質合成樹脂シートの下面に接着剤浸透性を有する材料が接合されてなるもの、木質板、バルカナイズドファイバー板または合成樹脂含浸紙を挙げることができる。
【0012】
また、上記接着剤浸透性を有する材料は、施工用接着剤の浸透による投錨効果が得られるものであればよく、例えば、不織布や連続気泡性発泡体シート等を挙げることができる。
【0013】
本発明の木質床材によれば、施工用接着剤浸透防止部材の存在によって施工用接着剤の緩衝部材への浸透を確実に防止することができるので、施工に伴う緩衝性および遮音性の低下を生じることがない。
【0014】
また、施工用接着剤浸透防止同部材が、剛性を有するとともに、その下面に施工用接着剤の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙を有するので、施工に際しては、施工用接着剤が塗布された床下地に仮置きした後、木質板の縁部および必要に応じて施工用接着剤浸透防止同部材の縁部を押せば、横へずれて木質床材の嵌合部同士を嵌め合わせる作業を容易に行なうことができるうえ、接着剤固化前に木質床材が横滑りすることもない。しかも、歩行時の沈み込み量が大きくならないため、歩行感も損なわれない。
【0015】
さらには、施工用接着剤浸透防止部材が剛性を有するものであることから、手に持った際にも硬くてしっかりとした感触が得られるため、需要者や施工業者等に不安感を抱かせるような懸念もない。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
【0017】
本発明は、床下地(B) に接着剤(A) によって直貼りされる木質床材(1) であって、同床材(1) は、図1に示すように、木質板(2) と、これの下面に接合された通気性緩衝部材(3) と、同部材(3) の下面に接合された施工用接着剤浸透防止部材(4) とを備えてなるものである。これらの各構成材料について以下に詳しく説明する。
【0018】
a.木質板
木質板(2) としては、例えば、合板、パーティクルボード、木質繊維板等の単体または同種若しくは異種の複合体が用いられ、その厚さは通常約3〜10mmとなされる。なお、木質板(2) が合板であって、後述する化粧層(23)として木質単板が用いられる場合には、合板と木質単板との間に紙や不織布等を介在させるようにしてもよい。
【0019】
木質板(2) の上面には、化粧層(23)が形成されている。この化粧層(23)は、例えば、木質板(2) の上面に木質単板、化粧紙、合成樹脂シート、合成樹脂含浸紙等を接着したり、木質板(2) の上面に直接印刷や塗装を施すことにより形成され、前者の場合、木質板(2) に接着された木質単板等の表面に更に着色や塗装を施すようにしてもよい。
【0020】
また、木質板(2) は、図1に示すように、これの厚さの中間に遮音性、制振性または緩衝性を有するシートよりなる1または複数の介在層(24,25,26)が形成されたものであってもよく、それによって木質床材(1) の遮音性の向上を図ることができる。この場合、木質板(2) における介在層(24,25,26)の上下両側の板(21,22) は同種のものでも異種のものでもよい。上記シートのうち遮音性シートの材料としては、例えば、アスファルトまたはアスファルトと合成樹脂若しくは合成ゴムとの混合物に、鉄粉、鉛粉、鉄鋼スラグ等を混入したものが挙げられる。制振性シートの材料としては、合成ゴム、天然ゴム等のゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂、合成樹脂と合成ゴムとの混合物、またはこれらに鉄粉、鉛粉等の金属粉や硫酸バリウム等の粉粒体といった高比重物質を混入したものが挙げられる。また、緩衝性シートの材料としては、発泡体や繊維物質等が挙げられるが、天然ゴムの発泡体を用いる場合には、これの少なくとも片面に不織布等を接合して保形性を付与するようにしてもよい。上記シートよりなる介在層(24,25,26)は、全体の厚さが0.3〜3.0mm、好適には0.4〜2.0mmとなされる。なお、介在層(24,25,26)がある場合、通常、上板(21)の厚さが約2〜4mm、下板(22)の厚さが約4〜7mmとなされる。
【0021】
木質板(2) には、裏面に開口した複数の溝(27)を形成してもよく、それによって木質床材(1) の遮音性の向上を図ることができる。なお、上記のように、木質板(2) に介在層(24,25,26)を設ける場合、上板(21)にも裏面に開口した溝を形成してもよく、また、下板(22)に裏面に開口した下溝と表面に開口した上溝とを形成してもよく、さらに、上溝と下溝とを連通させるようにしてもよい(図1参照)。その他、下板(22)を分割する溝を裏面から設けてもよく、その溝が介在層(24,25,26)に達していてもよい。
【0022】
なお、木質板(2) が介在層(24,25,26)を有しかつ裏面に開口した溝(27)を有するものである場合は、これの上面に形成される化粧層(23)とのバランスをとって木質板(2) の谷反りを防止するために、木質板(2) の下面にシート材(図示略)を接合するようにしてもよい。上記シート材としては、例えば、紙、不織布、合成樹脂含浸紙や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体といった熱可塑性樹脂等からなる合成樹脂層の両面に同種または異種の紙、不織布等を配してなる3層シート、木質単板等が挙げられる。
【0023】
木質板(2) の周縁部には、雄実(2a)、雌実(2b)等の嵌合部が形成される。
【0024】
b.通気性緩衝部材
通気性緩衝部材(3) の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム等からなる軟質または半硬質の連続気泡性発泡体でこれらのうち1種または2種以上(同質、異質、同種、異種にかかわらず)から成るものや、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成繊維および天然繊維のうち1種または2種以上からなる不織布等が挙げられ、これらの複数種を組合わせて使用してもよい。不織布は、ニードルパンチ方式や熱融着方式等により製造されたもののうちから適宜に選択することができ、繊維の太さが異なるものを組合わせて使用してもよい。通気性緩衝部材(3) の厚さは、歩行感や遮音性を考慮して適宜に設定され、通常は2.0〜5.0mmとなされる。
【0025】
この緩衝部材(3) は、通常、工場において少量の接着剤を使用して木質板(2) の下面に接着される。したがって、緩衝部材(3) の上面側から接着剤が浸透することによる緩衝性および遮音性の低下の問題はほとんどない。
【0026】
なお、緩衝部材(3) にポリエチレン樹脂等の独立気泡性発泡体を組合わせてもよく、それによって緩衝部材(3) の圧縮変形性の大きさを緩和し、木質床材(1) の歩行性を向上させることができる。緩衝部材(3) と独立気泡性発泡体との組合わせは、特に限定されず、例えば緩衝部材(3) の上下両面のうち少なくともいずれか一方に独立気泡性発泡体を配するようになされるが、好ましくは、緩衝部材(3) の上面に独立気泡性発泡体が配される。このようにすれば、木質板(2) と通気性緩衝部材(3) との接合に用いられる接着剤が緩衝部材(3) に浸透するのを完全に防止することができるからである。もっとも、この場合には、緩衝部材(3) と独立気泡性発泡体とを熱融着により一体化することが望ましい。
【0027】
c.施工用接着剤浸透防止部材
施工用接着剤浸透防止部材(4) は、その下面に施工用接着剤(A) の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙(図示略)を有するとともに、床下地(B) に未硬化状態の施工用接着剤(A) 層を介して載置された際にその縁部(4a)を押せば横にずらすことができる程度の剛性を有しているものであれば、特に限定はされないが、例えば、プラスチックフィルムやこれの下面に不織布等を接合してなるもの等とした場合、明らかに剛性が劣るため、本発明の効果を奏することはできない。施工用接着剤浸透防止部材(4) の材料としては、以下のものを例示することができる。
【0028】
第1のグループとしては、硬質合成樹脂シート(41)の下面に接着剤浸透性を有する材料(42)が接合されてなるものが挙げられる(図1参照)。硬質合成樹脂シート(41)は、緩衝部材(3) への施工用接着剤の浸透を確実に防止できる上、軽量であって、コストも安く経済的である反面、表面が滑らかで接着性に劣るという問題があるが、これの下面に接着剤浸透性を有する材料(42)を接合することによって、施工用接着剤(A) の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙が形成されるため、接着性の点でも全く問題がなくなる。これを製造するにあたっては、硬質合成樹脂シート(41)の接着性が良くないことを考慮して、緩衝部材(3) と硬質合成樹脂シート(41)と接着剤浸透性を有する材料(42)とを熱融着等により予め一体化しておく手段が好ましいと考えられる。硬質合成樹脂シート(41)の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、メチルメタアクリレート等の非発泡体または発泡体等が挙げられる。ここで、上記発泡体は、発泡倍率が3倍以下のものが好ましく、さらには2倍以下が好ましい。発泡倍率が3倍を越えると十分な剛性が得られないからである。接着剤浸透性を有する材料(42)としては、合成繊維、天然繊維またはこれらの組合わせよりなる不織布や、天然ゴム、合成ゴムや、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂等からなる連続気泡性発泡体が挙げられる。
【0029】
第2のグループとしては、単板、合板(2プライ合板も含む)、木質繊維板、パーティクルボード、コルクシートまたはコルク板等の木質板や、バルカナイズドファイバー板、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂含浸紙が挙げられる。これらの材料は、上記の要件を満たすことが可能であり、特に接着性に関しては、両面が比較的粗であって多数の空隙内に施工用接着剤(A) が浸入固化することによる投錨効果が大きい点で好ましい。
【0030】
施工用接着剤浸透防止部材(4) の厚さは、床下地(B) に未硬化状態の施工用接着剤(A) 層を介して載置された際にその縁部(4a)を押せば横にずらすことができる程度の剛性が得られる程度であればよい。具体的には、同部材(4) が上記第1のグループの材料よりなる場合、硬質合成樹脂シート(41)の厚さが0.3〜2.0mm、好適には0.5〜1.0mmとなされ、接着剤浸透性を有する材料(42)の厚さが0.035〜2.0mm、好適には0.05〜1.0mmとなされる。硬質合成樹脂シート(41)については、厚さが0.3mm未満であると上記効果を奏し得る程度の剛性が得られず、その厚さを厚くする程より剛性が得られ、硬い手触りも得られるが、木質床材(1) 全体の厚さおよび重量ならびに経済性等を考慮すれば、厚さを2.0mm以下とするのが適当である。また、接着剤浸透性を有する材料(42)については、厚さが0.035mm未満であると、接着剤(A) の浸透深さが浅すぎて十分な投錨効果が得られない。一方、厚さが2.0mmを越えると、接着剤(A) の浸透固化しない弾性を有する層ができて遮音性が向上する反面、施工の際に上記弾性を有する層が弾性変形することによって木質床材(1) を横へずらすのが困難となったり、同層の影響を受けて歩行時の沈み込み量が大きくなり、歩行感が悪くなるからである。なお、接着剤浸透性を有する材料(42)が不織布の場合であれば、目付量15〜110g/m2 が適当と考えられる。また、施工用接着剤浸透防止部材(4) が上記第2のグループの材料よりなる場合、その種類によって多少のバラツキはあるが、通常1〜3mmの厚さとなされる。
【0031】
次に、本発明による木質床材(1) の施工方法の一例を、図2および図3を参照して説明する。
【0032】
まず、コンクリートスラブやパーティクルボード等よりなる床下地(B) の調節および清掃、木質床材(1) の仮並べ、周辺部へのそえ木の施工等を行なっておく。次に、床下地(B) に、例えば無溶剤一液型ウレタン樹脂系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤等よりなる施工用接着剤(A) をクシ目ゴテにて塗布する(図2(a) および図3(a) 参照)。
【0033】
そして、床下地(B) の上に、未硬化状態の施工用接着剤(A) 層を介して木質床材(1) を順次施工していくが、端から2列目以降のものについては、既に床下地(B) の所定位置に配置された木質床材(1) の隣りにやや間隔をあけて仮置きし(図2(a) および図3(a) 参照)、これを横にずらして隣り合う木質床材(1) の木質板(2) の対向縁部に形成された雄実(2a)と雌実(2b)とを嵌め合わせるようにする(図2(b) および図3(a) 参照)。ここで、施工用接着剤浸透防止部材(4) が、硬質合成樹脂シート(41)の下面に不織布等の接着剤浸透性を有する材料(42)が接合されてなりかつ接着剤浸透性を有する材料(42)が比較的薄いものである場合や、合板、木質繊維板等の上記第2のグループの材料からなる場合には、木質板(2) の縁部のみを押せば、容易に木質床材(1) を横にずらすことができ(図2(a) 参照)、或いは施工用接着剤浸透防止部材(4) の縁部を押しても、木質床材(1) を横にずらすことができる。また、施工用接着剤浸透防止部材(4) が、硬質合成樹脂シート(41)の下面に不織布等の接着剤浸透性を有する材料(42)が接合されてなりかつ接着剤浸透性を有する材料(42)が比較的厚いものである場合には、木質板(2) の縁部と併せて硬質合成樹脂シート(41)の縁部(4a)を押せば、木質床材(1) を横にずらすことができる(図3(a) 参照)。
【0034】
その後、各木質床材(1) を上から押すことによって、これらを床下地(B) に圧着させてから、接着剤(A) が固化するまで一定期間養生させる。ここで、本発明による木質床材(1) の場合、施工用接着剤浸透防止部材(4) の下面に施工用接着剤(A) の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙を有するので、従来技術のように施工用接着剤(A) が固化する前に木質床材(1) が横滑りして位置がずれるようなおそれがなく、施工を正確かつ確実に行なうことができる。
【0035】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、比較例と併せて説明する。
【0036】
実施例1
この実施例の木質床材の構成は、以下のとおりである(図1参照)。まず、厚さ2.5mmの合板よりなる上板(21)と、厚さ5.5mmの合板よりなる下板(22)とを、これらの間に、目付け量30g/m2 、厚さ0.045mmの紙(24)、目付け量20g/mm2 の不織布(25)および発泡倍率2.0倍、厚さ0.6mmのゴム発泡体(26)を介在させた状態で接合することにより、幅145mm、長さ909mmの木質板(2) を形成した。木質板(2) の上面には、幅中央にV溝を有しかつ表面に着色塗装が施された厚さ0.25mmのナラ単板よりなる化粧層(23)を形成した。木質板(2) の下板(22)部分には、幅1.5mm、深さが下板(22)の厚さと等しい計66本の横溝(図示略)を長さ方向にほぼ等間隔おきに形成するとともに、幅1.5mm、深さが下板(22)の厚さと等しい計7本の縦溝(4) を幅方向に等間隔おきに形成した。また、木質板(2) の周縁部には、嵌合用の雄実(2a)および雌実(2b)を形成した。そして、発泡倍率45倍、厚さ3.0mmの連続発泡性ウレタンフォームよりなる緩衝部材(3) と、発泡倍率1.5倍、厚さ0.7mmのポリエチレン発泡体(41)と、目付け量30g/m2 のポリエステル繊維製不織布(42)とを熱融着により一体化したものを、木質板(2) の下面に接着接合した。こうして木質床材(1) を得た。
【0037】
実施例2
この実施例の木質床材は、上板(21)と下板(22)との間に介在された紙(24)、不織布(25)およびゴム発泡体(26)に代えて、ポリエチレンフィルムの両面に紙を接合してなる厚さ85μmの遮音効果を有しない3層シートが用いられている点を除いて実施例1と同じである。
【0038】
実施例3
この実施例の木質床材(1) は、施工用接着剤浸透防止部材(4) の不織布(42)を、目付け量100g/m2 、厚さ2mmのものに代えた点を除いて、実施例1と同じである(図3参照)。
【0039】
比較例1
比較例1の木質床材は、施工用接着剤浸透防止部材を、発泡倍率20倍、厚さ1.0mmの独立発泡性ポリエチレンフォームとした点を除いて実施例1と同じである(図6参照)。
【0040】
比較例2
比較例2の木質床材は、施工用接着剤浸透防止部材をなしとした点を除いて実施例1と同じである(図4参照)。
【0041】
比較例3
比較例3の木質床材は、施工用接着剤浸透防止部材を、発泡倍率20倍、厚さ1.0mmの独立発泡性ポリエチレンフォームとした点を除いて実施例2と同じである(図6参照)。
【0042】
比較例4
比較例4の木質床材は、施工用接着剤浸透防止部材を、コロナ放電処理が施された50g/m2 のポリエチレンフィルムとした点を除いて実施例2と同じである(図7参照)。
【0043】
上記各実施例および比較例について、以下に示すような各種の測定および実験を行なった。
【0044】
イ.遮音性能
JIS・A1418に準拠した試験方法によって、床衝撃音遮断性能(床衝撃音レベル)を測定した(但し、実施例3を除く)。なお、測定は、各木質床材36枚を両面粘着テープを用いて下地に固定した場合と、同じく各木質床材36枚を施工用接着剤を用いて下地に固定した場合の2通り行なった。
【0045】
測定結果は、テープによる固定の場合、実施例1および比較例2がL−41、比較例1がL−40.5であり、実施例2および比較例4がL−45、比較例3がL−44.5であった。また、施工用接着剤による固定の場合、実施例1および比較例1がL−41、比較例2がL−53であり、実施例2および比較例4がL−45、比較例3がL−44.5であった。
【0046】
ロ.耐圧縮性
剛性のある平滑な正方形の台(60cm×60cm)の上に、各木質床材(但し、実施例3を除く)を複数枚ずつ固定し(約45cm×45cm)、中央に位置する木質床材の中央部に直径50mm、厚さ10mmの鋼製円板を載せ、その上に垂直荷重80kgを加え、30秒後の厚さ変位量をダイヤルゲージによって測定した。なお、この測定も、各木質床材を両面粘着テープを用いて台に固定した場合と、施工用接着剤を用いて台に固定した場合の2通り行なった。
【0047】
測定結果は、テープによる固定の場合、実施例1が2.90mm、比較例1が3.91mm、比較例2が2.92mmであり、実施例2および比較例4が2.60mm、比較例3が3.20mmであった。また、施工用接着剤による固定の場合、実施例1が2.90mm、比較例1が3.90mm、比較例2が2.50mmであり、実施例2および比較例4が2.60mm、比較例3が3.15mmであった。
【0048】
ハ.施工性
各複数枚の木質床材を、施工用接着剤を用いて実際の施工手順に従い下地に接着し、仮置きした木質床材のずらし易さおよび施工後の木質床材の横滑りによる位置ズレの有無について実験した。
【0049】
実施例1および2では、仮置きした木質床材を、これらの木質板の縁部のみを押すだけで容易にずらすことができ、施工後の横滑りによる位置ズレもみられなかった。実施例3では、仮置きした木質床材を、これらの木質板の縁部のみを押すだけでは多少ずらし難かったが、施工用接着剤浸透防止部材の縁部を併せて押すことによって適正位置までずらすことができ、施工後の横滑りによる位置ズレもみられなかった。比較例1および3では、仮置きした木質床材をずらすのがやや困難であったが、施工後の横滑りによる位置ズレはみられなかった。比較例2では、仮置きした木質床材をずらすのが非常に困難であり、仮置きの位置が適正位置から離れすぎていると木質床材を完全に適正位置までずらすことができなかった。一方、施工後の横滑りによる位置ズレはみられなかった。比較例4では、仮置きした木質床材を極めて容易にずらすことができたが、施工後の横滑りによる位置ズレがあり、再接合し直さなければならないものもあった。
【0050】
ニ.歩行感
上記ハによって施工された木質床材の上を歩行したところ、実施例1ないし3ならびに比較例2および4では、フワフワとした感じがなく良好であったが、比較例1および3では、フワフワとした感じがして歩き心地が悪かった。
【0051】
ホ.手持ち感
各木質床材を手に持ったところ、実施例1ないし3については、手触りが硬くしっかりとした感触が得られた。比較例1および3では撓みがあり、やや不安感を抱くものであった。比較例2および4では、下面の緩衝部材に指がめり込み、不安感を抱くものであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の木質床材によれば、施工用接着剤浸透防止部材の存在によって、施工に伴う緩衝性および遮音性の低下を生じることがなく、施工に際しては、施工用接着剤が塗布された床下地に仮置きした後、横へずらして木質床材の嵌合部同士を嵌め合わせる作業を容易に行なうことができるうえ、接着剤固化前に木質床材が横滑りすることもなく、しかも、歩行時の沈み込み量がそれ程大きくならないため、歩行感も損なわれない。さらに、手に持った際に需要者や施工業者に不安感を抱かせるような懸念もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を木質床材の垂直断面図である。
【図2】木質床材の施工手順を示す垂直断面図である。
【図3】木質床材の他の施工手順を示す垂直断面図である。
【図4】従来の木質床材を示す垂直断面図である。
【図5】従来の木質床材の施工手順を示す垂直断面図である。
【図6】従来の木質床材を示す垂直断面図である。
【図7】従来の木質床材を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(B) …床下地
(A) …施工用接着剤
(1) …木質床材
(2) …木質板
(3) …通気性緩衝部材
(4) …施工用接着剤浸透防止部材
(4a)…縁部
(41)…硬質合成樹脂シート
(42)…接着剤浸透性を有する材料
Claims (2)
- 床下地(B) に接着剤(A) によって直貼りされる木質床材(1) であって、木質板(2) と、これの下面に接合された通気性緩衝部材(3) と、同部材(3) の下面に接合された施工用接着剤浸透防止部材(4) とを備えてなり、施工用接着剤浸透防止部材(4) は、床下地(B) に未硬化状態の施工用接着剤(A) 層を介して載置された際にその縁部(4a)を押せば横にずらすことができる程度の剛性を有するとともに、その下面に施工用接着剤(A) の浸入固化による投錨効果が得られるような多数の空隙を有するものとなるよう、厚さ0.3〜2.0mmの硬質合成樹脂シート(41)の下面に厚さ0.035〜2.0mmの接着剤浸透性を有する材料(42)が接合されてなる複合材で構成されている、木質床材。
- 接着剤浸透性を有する材料(42)が、不織布または連続気泡性発泡体シートである、請求項1記載の木質床材。
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