JP3735148B2 - 記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、例えば、静電吸引方法、圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方法、インクを加熱することにより気泡を発生させ、このときに発生する圧力を利用する方法等、種々のインク吐出方法により、インク滴を形成し、これらの一部又は全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。
【0003】
このようなインクジェット記録方法に使用するインク組成物としては、各色を呈する顔料又は水溶性染料を、水、又は、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散又は溶解してなる顔料インク組成物又は染料インク組成物が知られている。
【0004】
インクジェット記録用インク組成物には、記録装置のヘッド先端部やインク流路内で目詰まりを起こさないこと、保存中に物性変化又は固形分の析出を生じないこと、鮮明な色調で充分に高い濃度の記録画像を与えること、被記録材の種類を制限せずに記録が行えること、被記録材への定着速度が速いこと、耐水性、耐光性、耐溶剤性、耐摩耗性に優れていること、解像度の優れた画像を与えること、粘度、表面張力等の物性値が適正範囲内にあること等の性能が要求される。なかでも、記録装置のヘッド先端部やインク流路内で目詰まりを起こしたりせず、沈殿物が発生したりしない液安定性が重要である。
【0005】
顔料インク組成物は、耐候性に優れるが、顔料は溶媒中に分散しているので、液安定性が悪く、長期間保存すると、顔料の分散が不安定となり凝集が起こる。このため、インクジェット記録装置のヘッド先端部等で目詰まりを起こしやすい。そこで、特開平1−204979号公報等に開示されているように、顔料インク組成物の構成内容を規定したり、特開昭64−6074号公報、特開平5−125306号公報等に開示されているように、水性顔料インクのpHを制御することにより改良が図られているが、インクジェット記録用インクとしての使用に充分に耐えうるものではない。
【0006】
染料インク組成物は、顔料インク組成物に比べて耐候性は劣るものの、記録装置のヘッド先端部やインク流路内での目詰まりを起こしにくいので、インクジェット記録用インクとして広く使用されている。
このような染料インク組成物としては、さまざまな化学構造を有する水溶性染料を水、又は、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に溶解させた水性インク組成物が多い。
【0007】
一方、水性染料インクを用いてフルカラーの記録画像を再現する場合には、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクの3原色のインクに黒色インクを加えた4原色のインクを使用し、これらの滅色混合によって記録画像の色調が決定される。これらのインクには、上述したインクの性能の1つである鮮明な色調の記録画像を与えるために、色相がそれぞれ他の色味を帯びていない理想的なイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの原色を呈することも必要とされる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のインク組成物では、カラーインクの色相については考慮されていない。例えば、マゼンタインクの場合、公知の染料を単独で使用すると良好なマゼンタ色を得ることは困難であり、赤が強い色合いになったり、青が強い色合いになったりしていた。このため、他の色のインクと併用してカラー画像を記録する際に、全体の色合いのバランスが悪くなる問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、マゼンタ色としての色調が良好で、色再現性、階調性に優れており、全体の色合いのバランスが取れたカラー記録物を得ることができる記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、第一染料及び第二染料からなる混合染料を、水又は水と有機溶剤との混合溶媒に溶解してなる記録用マゼンタインクにおいて、純水又はイオン交換水で200倍希釈した水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、340〜360°である記録用マゼンタインクにより達成することができる。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本明細書中、色相角H°は、a*、b*を平面上に表したL*a*b*表色系色度図での角度を表し、以下のように定義される。
a*≧0、b*≧0(第一象限)では、H°=tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≧0(第二象限)では、H°=180°+tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≦0(第三象限)では、H°=180°+tan-1(b*/a*)
a*≧0、b*≦0(第四象限)では、H°=360°+tan-1(b*/a*)
【0012】
本発明の記録用マゼンタインクは、純水又はイオン交換水で200倍希釈した水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、340〜360°であるものである。上記色相角H°が、340°未満であると、インクの色が青みを帯び、360°を超えると、赤みを帯びるので、上記範囲に限定される。
【0013】
本発明で使用される染料は、第一染料及び第二染料である。
上記第一染料は、0.015重量%染料水溶液のD65光源2°視野、透過光路長10mmでの透過色を測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、320〜340°であるものが好ましい。
【0014】
上記第一染料としては、上記の条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料等を挙げることができる。
【0015】
上記第二染料は、0.015重量%染料水溶液のD65光源2°視野、透過光路長10mmでの透過色を測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、70〜120°であるものが好ましい。
【0016】
上記第二染料としては、上記の条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料等を挙げることができる。
【0017】
上記第一染料及び上記第二染料の配合割合は、本発明の記録用マゼンタインクを純水又はイオン交換水で200倍希釈した水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が340〜360°となるようにすることができれば、特に限定されるものではない。
【0018】
上記混合染料の含有量は、得られるマゼンタインク全量に対して、0.1〜10重量%が好ましい。0.1重量%未満であっても、10重量%を超えても、被記録材に記録された画像が充分な濃さや色調の鮮やかさ及び保存安定性を得ることができない。
【0019】
本発明で使用される溶媒は、水又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒である。水単独で使用される場合、及び、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒として使用される場合、上記水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。
【0020】
上記水と水溶性有機溶剤との混合溶媒において、上記水溶性有機溶剤は、インクの乾燥を防止するために用いられる。
上記インク組成物中の水溶性有機溶剤の含有量は、一般的にはマゼンタインクの全量に対して重量%で0〜95重量%、好ましくは、10〜80重量%、より好ましくは、10〜50重量%である。このときの水の含有量は、上記水溶性有機溶剤成分の種類、その組成、又は、所望されるマゼンタインクの特性に依存して広い範囲で決定されるが、マゼンタインクの全量に対して、一般に10〜95重量%、好ましくは、10〜70重量%、より好ましくは、20〜70重量%である。
【0021】
上記水溶性有機溶剤としては特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーチル、トリエチレングリコールモノエチルエーチル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0022】
なかでも、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類;トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類が好ましい。
【0023】
本発明において、上記マゼンタインクには、必要に応じて、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の各種界面活性剤;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のpH調整剤;ポリビニルアルコール、セルロース類、水溶性樹脂等の粘度調整剤;表面張力調整剤;防黴剤等、従来公知の添加剤を添加してもよい。また、記録液を帯電する様式のインクジェット記録方法に使用されるマゼンタインクを調合する場合には、塩化アンモニウム等の無機塩類等の比抵抗調整剤を添加してもよい。
【0024】
本発明のインクジェット記録方法は、上記記録用マゼンタインクを用い、上記マゼンタインクのインク滴を記録信号に応じて吐出口から吐出させて被記録材に記録を行うものである。
上記被記録材としては特に限定されず、例えば、普通紙、コート紙、透明フィルム等を挙げることができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
上記組成に従い、染料及びイオン交換水を混合して30分攪拌することにより染料液1を調製した。この染料液1の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmの条件で測定した結果、色相角H°は、331.7°であった。
【0027】
上記組成に従い、染料液1と同様にして染料液2を調製した。この染料液2の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmの条件で測定した結果、色相角H°は、10.5°であった。
【0028】
上記組成に従い、染料、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びイオン交換水を混合して30分攪拌した後に孔径0.7μmのメンブランフィルターにて濾過することによりマゼンタインク組成物を調製した。
【0029】
このマゼンタインク組成物の200倍イオン交換水希釈液の色相角H°を測定したところ、346.8°であった。
このマゼンタインクを使用して特開平2−150355号公報に開示されているせん断モード型のインク噴射装置により印字を行ったところ、ノズルの目詰まりが発生することなく印字でき、良好なマゼンタ色の記録物が得られた。
【0030】
上記組成に従い、実施例1と同様にしてマゼンタインク組成物を調製した。このマゼンタインク組成物の200倍イオン交換水希釈液の色相角H°を測定したところ、332.1°であった。
このマゼンタインクを使用して実施例1と同様にして印字したところ、噴射は良好であったが、得られた記録物は青みがかった色となり、マゼンタ色としての色調はよくなかった。
【0031】
上記組成に従い、実施例1と同様にしてマゼンタインク組成物を調製した。このマゼンタインク組成物の200倍イオン交換水希釈液の色相角H°を測定したところ、10.5°であった。
このマゼンタインクを使用して実施例1と同様にして印字したところ、噴射は良好であったが、得られた記録物は赤みがかった色となり、マゼンタ色としての色調はよくなかった。
【0032】
実施例1及び比較例1、2のマゼンタインクを単色で、また、以下に示したイエローインク及びシアンインクと組み合わせてフルカラー印字を行ったところ、実施例1のマゼンタインクでは、いずれも良好な印字結果を得ることができ、バランスのとれたよい色合いの印字が行え、色再現性、階調性に優れていた。一方、比較例1では、青は緑色が強く、赤はマゼンタの強い色合いとなり、比較例2では、青は赤みが強く、赤は黄色みの強い色合いとなり、ともにバランスのとれた色合いの印字は行えず、色再現性、階調性は実施例1と比較して劣っていた。
【0033】
【0034】
【0035】
また、特公昭53−12138号公報に開示されているカイザー型のインク噴射装置を使用した場合、及び、特公昭61−59914号公報に開示されているサーマルジェット型のインク噴射装置を使用した場合においても、同様の結果を得ることができた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法は上述のとおりであるので、マゼンタ色としての色調が良好で、色再現性、階調性に優れており、全体の色合いのバランスが取れたカラー記録物を得ることができる記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法が達成される。
Claims (3)
- 第一染料及び第二染料からなる混合染料を、水又は水と有機溶剤との混合溶媒に溶解してなる記録用マゼンタインクにおいて、
第一染料は、0.015重量%染料水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、320〜340°であるものであり、第二染料は、0.015重量%染料水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、0〜30°であるものであり、
前記記録用マゼンタインクを純水又はイオン交換水で200倍希釈した水溶液の透過色をD65光源2°視野、透過光路長10mmで測定したときのL*a*b*表色系色度図における色相角H°が、340〜360°であることを特徴とする記録用マゼンタインク。 - 混合染料の含有量が、記録用マゼンタインク全量に対して、0.1〜10重量%である請求項1記載の記録用マゼンタインク。
- インク滴を記録信号に応じて吐出口から吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1又は2記載の記録用マゼンタインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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JP32394495A JP3735148B2 (ja) | 1995-11-17 | 1995-11-17 | 記録用マゼンタインク及びインクジェット記録方法 |
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JPH09137102A JPH09137102A (ja) | 1997-05-27 |
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- 1995-11-17 JP JP32394495A patent/JP3735148B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH09137102A (ja) | 1997-05-27 |
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