JP3734913B2 - 電離真空計制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電離真空計の技術分野に係り、特に、熱電子型の電離真空計を動作させて圧力測定を行う電離真空計制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空計には多数の種類があるが、それらのうち、電離真空計は真空槽内に残留する気体分子に電子を衝突させ、電離したイオンをコレクタで捕集し、流れるイオン電流の大きさを測定して真空槽内の圧力を求める装置であり、構造が簡単で安価であり、また、測定圧力範囲が広いことから、スパッタリング装置や蒸着装置等の真空装置に広く用いられている。
【0003】
図4、5の符号101に示すものは、従来技術の電離真空計であり、ガラスで構成された測定管球S(図5では図示せず)内に、イオンコレクタC、フィラメントF、グリッドGの3つの電極が配置されている。測定管球Sは、気体導入口120によって真空槽B内部に接続されており、測定管球S内と真空槽B内とが連通し、同じ圧力になるように構成されている。
【0004】
この電離真空計101は、電離真空計制御装置102によって制御されており、その電離真空計制御装置102は、フィラメント電流制御装置112、グリッド制御装置113、イオン電流検出装置114を備えている。
【0005】
真空状態にある真空槽B内の圧力を測定する場合、フィラメント電流制御装置112内のフィラメント電源104を起動し、フィラメントFにフィラメント電流Ifを流し、フィラメントFを加熱すると共に、グリッド制御装置113によってグリッドGに正電圧を印加する。フィラメントFが加熱され、熱電子が放出されると、その熱電子は電位差によってグリッドGに引きつけられるが、グリッドGに到達する前にその近傍で往復運動をし、測定管球S内に残留する気体分子と衝突し、正電荷のイオンを生成する。
【0006】
このとき、イオン電流検出装置114によってコレクタCに負電圧を印加しておくと、正電荷のイオンはコレクタCに捕集され、イオン電流IiとなってグリッドGとコレクタC間を流れる。他方、熱電子は、グリッドGで捕集され、エミッション電流IeとなってフィラメントFとグリットGの間を流れる。
【0007】
この場合、グリッドGに印加するグリッド電圧VGを定電圧にし、エミッション電流Ieを定電流にしておくと、グリッドG近傍で往復運動をする熱電子の密度が一定になり、生成したイオンの量が測定管球S内の気体の圧力に比例するようになるので、コレクタCを流れるイオン電流Iiの値から測定管球S内の気体の密度、即ち真空槽B内の圧力を測定することが可能となる。
【0008】
グリッド電圧VGはグリッド制御装置113によって定電圧に制御できるが、エミッション電流Ieの大きさは直接制御することができない。しかし、熱電子の発生量はフィラメントFの温度に依存するため、フィラメント電流Ifを変化させるとエミッション電流Ieの大きさを変えることができる。上述のような電離真空計制御装置102では、フィラメント電流Ifをエミッション電流Ieの大きさに応じて変化させ、エミッション電流Ieを定電流にするために、エミッション電流Ieの大きさを検出するエミッション電流制御回路105がフィラメント電流制御装置112内に設けられ、そのエミッション電流制御回路105によってフィラメント電源104が制御されるように構成されており、エミッション電流制御回路105はエミッション電流Ieが所定値よりも大きい場合にはフィラメント電流Ifを減少させ、所定値よりも小さい場合にはフィラメント電流Ifを増加させるように動作する。
【0009】
このような電離真空計には種々のものが開発されており、例えば、熱電子を少なくすることで、10-1Pa以下の低真空度(高圧力)を測定できるようにしたシュルツ型電離真空計や、軟X線の影響を低減することで、10-8Pa以上の高真空度(低圧力)を測定できるようにしたベヤード−アルパート型電離真空計等があり、測定対象の圧力範囲に応じて適切なタイプの電離真空計を選択できるようになっている。
【0010】
ところで、フィラメントFは、圧力が高い雰囲気中、特に、酸素や水分等を多く含む雰囲気中で高温に加熱すると、劣化したり、焼損による断線を起こしてしまう。断線が起こった場合、フィラメントFの交換作業は非常に煩雑なので、従来技術の電離真空計では断線が生じないような圧力範囲が種類に応じて定められており、例えば圧力測定中に真空槽B内の真空度が劣化し、使用可能な圧力範囲よりも上昇した場合には、上述のフィラメント電流Ifを直ちに遮断させ、フィラメントFの温度を下げるようにしていた。
【0011】
しかしながら、真空槽B内が電離真空計101の使用可能な圧力範囲内にあり、且つ、フィラメントFが劣化していなくても、フィラメントFの断線が発生してしまう場合がある。そのような断線は、特に、電離真空計101を点灯させた瞬間に発生することが多く、原因の究明と対策が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたもので、その目的は、フィラメントの断線を確実に防止できる技術を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
一般に、真空雰囲気に置かれた物質に通電して発熱させる場合、低圧力(高真空度)であるほど真空の断熱効果によって昇温し易いことが知られており、電離真空計のフィラメントFでも、測定雰囲気の圧力が低いほど昇温し易く、小さなフィラメント電流Ifで大きなエミッション電流Ieを得ることができる。
【0014】
他方、高圧力(低真空度)の場合は、真空槽B内に残留する気体分子の熱伝導によって、フィラメントFの熱が奪われ易く、大きなフィラメント電流Ifを流さないと、フィラメントFを低圧力のときと同じ温度まで昇温させることができない。従って、規定のエミッション電流Ieを得るためには、低圧力よりも高圧力の方が必要なフィラメント電流Ifは大きくなる。
【0015】
しかし、上述したような従来技術の電離真空計制御回路102では、エミッション電流Ieを検出してフィラメント電流Ifを制御しているため、フィラメントFに過大な電流が流れた場合でも、エミッション電流Ieが規定値以上に増加し、更に、そのエミッション電流Ieの大きさを検出するまではフィラメント電流Ifを減少させることができない。
【0016】
本発明の発明者等は、フィラメントFの断線が電離真空計制御装置の起動時に発生し易い原因は、フィラメントFへの通電を開始した瞬間は、フィラメント電流Ifの増加が急速であり、僅かな制御遅れによって大きな過電流が発生してしまうことにあることを見出した。
【0017】
本発明は、上記知見に基づいて創作されたものであり、請求項1記載の発明は、フィラメントとグリッドとコレクタとを有する電離真空計の、前記フィラメントと前記グリッドの間に電圧を印加すると共に、前記フィラメントにフィラメント電流を流して熱電子を放出させ、気体分子に衝突させて生成したイオンを前記コレクタで捕集できるように構成された電離真空計制御装置であって、前記フィラメントに電圧を印加し、前記フィラメント電流を流す電源回路と、前記フィラメントと前記グリッドの間に流れるエミッション電流の大きさが一定になるように前記電源回路の前記出力電圧を制御するエミッション電流制限回路と、前記フィラメントに流れるフィラメント電流の大きさを検出し、前記フィラメント電流が所定の上限値を超えないように前記フィラメント電流を流しながら前記電源回路の出力電圧を制御する過電流保護回路とを有し、前記エミッション電流が一定値になるときの前記フィラメント電流よりも、前記上限値が大きく設定され、前記電源回路は、前記エミッション電流制限回路と前記過電流保護回路のいずれか一方が前記出力電圧を減少させる信号を出力しているとき、他方の信号にかかわらず、前記出力電圧を低下させるように構成された電離真空計制御装置である。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電離真空計制御装置であって、前記過電流保護回路は、前記エミッション電流制限回路が前記出力電圧を減少させる信号を出力していない間は、前記フィラメントに前記上限値の電流を流すように構成された電離真空計制御装置である。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の電離真空計制御装置であって、前記過電流保護回路は、前記電源回路に接続され、前記電源回路が供給する電圧で動作するように構成された電離真空計制御装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1を参照し、符号1は、図5の電離真空計101と同様の構成の電離真空計であり、図4に示すように、ガラスで構成された測定管球S内に、イオンコレクタC、フィラメントF、グリッドGの3つの電極が配置されている。測定管球Sは図示しない真空槽に接続され、その真空槽内の気体が測定管球S内に導入されるように構成されている。
【0021】
この図1の符号2は、本発明の一実施形態を示す電離真空計制御装置であり、フィラメント電流制御装置12、グリッド制御装置13、イオン電流検出装置14を備えている。
【0022】
フィラメント電流制御装置12はフィラメントFに接続され、グリッド制御装置13はグリッドGに接続されており、フィラメント電流制御装置12とグリッド制御装置13を起動し、フィラメントFにフィラメント電流Ifを流し、グリッドGに正のグリッド電圧を印加すると、フィラメントFからグリッドGに向けて熱電子が放出され、フィラメントFとグリッドGの間に、エミッション電流Ieが流れるように構成されている。
【0023】
イオン電流検出装置14はコレクタC接続され、コレクタCはイオン電流検出装置14によって負電圧が印加されており、フィラメントFから発生した熱電子が測定管球S内の気体分子に衝突し、気体分子の電離によって生成された正電荷のイオンがコレクタCで捕集されるように構成されている。そのイオンによってコレクタCにイオン電流Iiが流れると、その電流値はイオン電流検出装置14によって検出される。
【0024】
この場合、グリッドGに印加されるグリッド電圧が定電圧であり、エミッション電流Ieが定電流であると、イオン電流Iiから測定管球S内の圧力を算出できる。
【0025】
この電離真空制御装置2では、グリッド制御装置13は定電圧を出力し、また、フィラメント電流制御装置12はエミッション電流Ieの電流値を検出し、そのエミッション電流Ieが一定値になるようにフィラメント電流Ifを制御している。その制御動作を、図3に示したフィラメント電流制御装置12の内部回路を参照して説明する。
【0026】
このフィラメント電流制御装置12内には、過電流保護回路3、フィラメント電源4、エミッション電流制御回路5が設けられており、フィラメント電源4には、電源制御用の集積回路IC1、MOSトランジスタQ1、トランスTが設けられており、また、フォトカプラPh1、Ph2内の出力トランジスタQ11、Q12が設けられている。
【0027】
トランスT内には、一次巻線L1と、該一次巻線L1と磁気結合した二次巻線L2、補助巻線L3が設けられており、集積回路IC1には、電源入力端子a、ゲート制御端子b、2つのデューティ制御端子c、dが設けられている。
【0028】
電源入力端子aには、一次巻線L1の一端が接続され、その他端はMOSトランジスタQ1のドレイン端子に接続されている。MOSトランジスタQ1のゲート端子はゲート制御端子bに接続され、ソース端子は接地電位に接続されており、集積回路IC1が、ゲート制御端子bの電位を振幅させ、MOSトランジスタQ1を所定のデューティに従ってON/OFFさせると、電源入力端子aから一次巻線L1に向け、そのデューティに従ったスイッチング電流が流れるように構成されている。
【0029】
補助巻線L3には、ダイオードD2、コンデンサC2が接続されており、一次巻線L1と集積回路IC1と共に過電流保護回路3用の補助電源が構成されており、一次巻線L1に上述のスイッチング電流が流れ、補助巻線L3に誘起された電圧がコンデンサC2で平滑され、過電流保護回路3に供給されるように構成されている。
【0030】
また、二次巻線L2には、ダイオードD1、コイルL4、コンデンサC1が接続され、フィラメント電源4の一次側の一次巻線L1に対する二次側が構成されている。コンデンサC1の高電圧側の端子はフィラメントFの一端に接続され、低電圧側の端子は、過電流保護回路3内に設けられたフィラメント電流検出抵抗RS1を介してフィラメントFの他端に接続されており、一次巻線L1にスイッチング電流が流れ、二次巻線L2に電圧が誘起されると、コイルL4とコンデンサC1とで平滑され、フィラメントFにフィラメント電流Ifを供給するように構成されている。
【0031】
従って、フィラメントFを流れたフィラメント電流Ifは、フィラメント電流検出抵抗RS1を流れ、フィラメント電流検出抵抗RS1の両端にフィラメント電流Ifの電流値に応じた電圧を発生させる。
【0032】
他方、フィラメントFとフィラメント電流検出抵抗RS1との接続点にはエミッション電流制御回路5内に設けられたエミッション電流検出抵抗RS2の一端が接続され、その他端は接地電位に接続されており、グリッドGとフィラメントF間に流れたエミッション電流Ieは、フィラメント電流検出抵抗RS1を流れずエミッション電流検出抵抗RS2を流れ、その両端にエミッション電流Ieの電流値に応じた電圧を発生させる。
【0033】
エミッション電流制御回路5内には、オペアンプOp2、ツェナーダイオードDz2、フォトカプラPh2内の発光ダイオードD12が設けられており、ツェナーダイオードDz2のカソード端子は抵抗R5を介して電源電圧Vccに接続され、アノード端子は接地電位に接続されており、電源電圧Vccから電流が供給されると、ツェナーダイオードDz2のカソード端子からツェナー電圧Vz2が出力され、オペアンプOp2の非反転入力端子に入力されるように構成されている。
【0034】
オペアンプOp2の電源端子は電源電圧Vccに接続され、グラウンド端子は接地電位に接続され、電源電圧Vccから電力が供給されて動作するように構成されている。その反転入力端子には、エミッション電流検出抵抗RS2に生じた電圧が入力されており、エミッション電流検出抵抗RS2に生じた電圧が、非反転入力端子に入力されるツェナー電圧Vz2よりも大きいときに、出力端子がローレベルになるように構成されている。
【0035】
オペアンプOp2の出力端子には、抵抗R4を介して、フォトカプラPh2内の発光ダイオードD12のカソード端子が接続され、そのアノード端子は電源電圧Vccに接続されており、出力端子がローレベルになると、発光ダイオードD12に電流が流れ、発光するように構成されている。なお、符号Cfは発振防止用のコンデンサである。
【0036】
その発光ダイオードD12とフィラメント電源4内に設けられたトランジスタQ12とは、フォトカプラPh2内で光結合されており、オペアンプOp2がローレベルを出力し、発光ダイオードD12が発光したときに、そのトランジスタQ12がON状態になるように構成されている。
【0037】
トランジスタQ12のコレクタ端子とエミッタ端子は、集積回路IC1の2つのデューティ制御端子c、dにそれぞれ接続されている。集積回路IC1は、トランジスタQ12がOFF状態にあり、従ってデューティ制御端子c、d間が開放されている場合にMOSトランジスタQ1のONデューティを大きくし、逆に、トランジスタQ12がON状態にあり、デューティ制御端子c、d間が短絡されている場合にMOSトランジスタQ1のONデューティを小さくするように構成されている。
【0038】
従って、発光ダイオードD12が発光するとMOSトランジスタQ1のONデューティが小さくなり、一次巻線L1側から二次巻線L2と補助巻線L3側に向けて伝達されるエネルギーが減少し、その結果、コンデンサC1の電圧が下がり、フィラメント電流Ifが減少する。逆に発光ダイオードD12が発光を停止するとフィラメント電流Ifが増加する。
【0039】
上述のように、エミッション電流制御回路5では、エミッション電流Ieの電流値が大きく、エミッション電流検出抵抗RS2に生じた電圧Ie・RS2が、ツェナー電圧Vz2よりも高い場合にオペアンプOp2の出力端子がローレベルになり、発光ダイオードD12が発光する。
【0040】
従って、エミッション電流制御回路5は、エミッション電流Ieが所定の値よりも大きいと、フィラメント電流Ifを減少させるように動作し、その結果、フィラメントFの温度が低下し、エミッション電流Ieを減少させ、逆に、エミッション電流Ieの電流値が小さく、エミッション電流検出抵抗RS2に生じた電圧Ie・RS2がツェナー電圧Vz2よりも低い場合に、エミッション電流制御回路5はフィラメント電流Ifを増加させるように動作し、その結果、フィラメントFの温度が上昇し、エミッション電流Ieが大きくなる。
【0041】
従って、このエミッション電流制御回路5では、フィラメント電流Ifの電流値を制御することにより、エミッション電流Ieを、
Ie = Vz2/RS2
の一定値になるように制御していることになる。
【0042】
このように、エミッション電流Ieの電流値によって制御されるフィラメント電流IfはフィラメントFを流れた後、過電流保護回路3内に設けられたフィラメント電流検出抵抗RS1を流れ、フィラメント電流検出抵抗RS1の両端にIf・RS1の電圧を発生させる。
【0043】
過電流保護回路3内には、オペアンプOp1、ツェナーダイオードDz1、フォトカプラPh1内の発光ダイオードD11が設けられており、ツェナーダイオードDz1のカソード端子は、抵抗R1を介してコンデンサC2の高電圧側の端子に接続されており、アノード端子はコンデンサC2の低電圧側の端子に接続されており、コンデンサC2の高電圧側の端子から電流が供給されるとカソード端子に定電圧のツェナー電圧Vz1を発生させるように構成されている。そのツェナー電圧Vz1は可変抵抗R2で所望の値に分圧され、オペアンプOp1の非反転入力端子に入力されている。
【0044】
オペアンプOp1の電源端子とグラウンド端子は、コンデンサC2の高電圧側の端子と低電圧側の端子にそれぞれ接続され、補助巻線L3、ダイオードD2、コンデンサC2で構成される補助電源から電力が供給されるように構成されている。
【0045】
補助巻線L3は、二次巻線L2と共に、同じ一次巻線L1から電力が供給されているので、二次巻線L2と補助巻線L3の巻数を適当に選択することにより、二次巻線L2に電圧が誘起され、フィラメントFへフィラメント電流Ifが供給された直後に過電流保護回路3が動作を開始できる。
【0046】
その過電流保護回路3内にオペアンプOp1の反転入力端子には、前述の電流検出抵抗RS1に生じた電圧If・RS1が入力されており、フィラメント電流検出抵抗RS1に生じた電圧If・RS1が、非反転入力端子に入力されるツェナー電圧Vz1を分圧した電圧よりも高い場合に出力端子がローレベルになるように構成されている。
【0047】
オペアンプOp1の出力端子には、フォトカプラPh1内の発光ダイオードD11のカソード端子が、抵抗R3を介して接続され、そのアノード端子はコンデンサC2の高電圧側の端子に接続されており、出力端子がローレベルになる場合に発光ダイオードD11に電流が流れ、発光するように構成されている。
【0048】
発光ダイオードD11は、フィラメント電源4内のトランジスタQ11とフォトカプラPh1内で光結合されており、発光ダイオードD11が発光するとトランジスタQ11がON状態になるように構成されている。
【0049】
トランジスタQ11は、フォトカプラPh2内のトランジスタQ12と同様に、コレクタ端子をデューティ制御端子cに、エミッタ端子をデューティ制御端子dに接続されており、従って、一方のトランジスタ(Q11)がON状態になった場合には、他方のトランジスタ(Q12)の状態にかかわらず、2つのデューティ制御端子c、d間が短絡し、フィラメント電流Ifが減少する。
【0050】
この電離真空計制御装置2では、測定管球S内が所定の圧力範囲内にあり、規定のエミッション電流Ieを流す場合、フィラメント電流Ifの電流値は、過電流保護回路3内のオペアンプOp1の出力端子をローレベルにさせないように構成されている。従って、測定系が定常状態にあるときは、過電流保護回路3内の発光ダイオードD11は発光せず、その発光ダイオードD11と光結合したトランジスタQ11はONしないので、フィラメント電流Ifは、エミッション電流検出装置5内のフォトダイオードD12と光結合したトランジスタQ12のON/OFFによって制御され、エミッション電流Ieの電流値が一定に保たれる。
【0051】
他方、フィラメント電流検出抵抗RS1は、フィラメントFに断線に到らない程度の過電流が流れると過電流保護回路3内の発光ダイオードD11を発光させるように設定されており、例えば、定常状態でのフィラメント電流Ifが最大1.2Aである場合、過電流保護回路3内のオペアンプOp1がローレベルを出力し、発光ダイオードD11を発光させるフィラメント電流Ifは2.0Aに設定されている。
【0052】
従って、電源投入時等、過大なフィラメント電流Ifが流れた場合、エミッション電流制御回路5によって制御されるトランジスタQ12がON状態になる前に、過電流検出回路3によって制御されるトランジスタQ11がON状態になるので、エミッション電流制御回路5が動作を開始するよりも早くMOSトランジスタQ1のONデューティが下がり、フィラメント電流Ifが減少し始める。
【0053】
このように、フィラメントFに過大なフィラメント電流Ifが流れた場合、エミッション電流Ieを介さずに、過電流保護回路3が直接フィラメント電流Ifの電流値を検出し、所定の上限値以上にならないように構成されているので、過電流保護動作が早く、確実である。
【0054】
図2に、フィラメントFに印加されるフィラメント電圧Vfを横軸に、流れるフィラメント電流Ifを縦軸にとり、フィラメント電流Ifを上限値Ifmaxで制限する場合の関係をグラフに示す。
【0055】
この図2のグラフを参照し、電源投入時のVf=0、If=0の状態から、フィラメント電流Ifが増加し、上限値のIfmaxになったところで、フィラメント電流検出抵抗RS1に生じた電圧RS1・Ifmaxが、可変抵抗R2から得られる電圧よりも大きくなるように設定されており、従って、フィラメント電流Ifが上限値Ifmaxに達したとき、フィラメント電圧Vfは最大値のVfmaxとなる。その後、例えばフィラメントFの温度が下がった場合等、フィラメント電流Ifが更に増加しようとする場合には、過電流保護回路3はフィラメント電圧Vfを低下させ、フィラメント電流Ifが上限値Ifmax以上にならないように制御する。
【0056】
なお、以上説明した過電流保護回路3は、MOSトランジスタQ1のON/OFFを制御して、フィラメント電圧Vfを減少させ、フィラメント電流Ifの上限値を制限したが、本発明はそれに限定されるものではない。また、本発明が用いられる電離真空計は、シュルツ型電離真空計やベヤード−アルパート型電離真空計等のフィラメントFから放出された熱電子を用いる電離真空計を広く含む。要するに、フィラメントFに通電して発熱させ、熱電子を放出させる際に、フィラメント電流Ifをフィラメント電流検出抵抗Rfその他の手段で直接検出し、フィラメントFの過電流保護を行う電離真空計制御装置(分圧計(MSQ)を含む)であれば本発明に含まれる。
【0057】
【発明の効果】
フィラメントの断線を確実に防止することができる。
低真空度で電離真空計の電源を投入してもフィラメントが断線することがない。従って、電離真空計の取り扱いが容易になる。
また、電源投入時であってもフィラメントには突入電流が流れないので、フィラメントや電源の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の電離真空計制御装置を説明するための回路ブロック図
【図2】その電離真空計制御装置の過電流保護の状態を説明するためのグラフ
【図3】その電離真空計制御装置の内部回路図
【図4】一般的な電離真空計の構造を説明するための図
【図5】従来技術の電離真空計制御装置のブロック図
【符号の説明】
1…電離真空計 2…電離真空計制御装置 3…過電流保護回路
F…フィラメント G…グリッド C…コレクタ Ii…イオン電流 Ie…エミッション電流 If…フィラメント電流 上限値…Ifmax
Claims (3)
- フィラメントとグリッドとコレクタとを有する電離真空計の、前記フィラメントと前記グリッドの間に電圧を印加すると共に、前記フィラメントにフィラメント電流を流して熱電子を放出させ、気体分子に衝突させて生成したイオンを前記コレクタで捕集できるように構成された電離真空計制御装置であって、
前記フィラメントに電圧を印加し、前記フィラメント電流を流す電源回路と、
前記フィラメントと前記グリッドの間に流れるエミッション電流の大きさが一定になるように前記電源回路の前記出力電圧を制御するエミッション電流制限回路と、
前記フィラメントに流れるフィラメント電流の大きさを検出し、前記フィラメント電流が所定の上限値を超えないように前記フィラメント電流を流しながら前記電源回路の出力電圧を制御する過電流保護回路とを有し、
前記エミッション電流が一定値になるときの前記フィラメント電流よりも、前記上限値が大きく設定され、
前記電源回路は、前記エミッション電流制限回路と前記過電流保護回路のいずれか一方が前記出力電圧を減少させる信号を出力しているとき、他方の信号にかかわらず、前記出力電圧を低下させるように構成された電離真空計制御装置。 - 前記過電流保護回路は、前記エミッション電流制限回路が前記出力電圧を減少させる信号を出力していない間は、前記フィラメントに前記上限値の電流を流すように構成された請求項1記載の電離真空計制御装置。
- 前記過電流保護回路は、前記電源回路に接続され、前記電源回路が供給する電圧で動作するように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の電離真空計制御装置。
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Cited By (1)
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