JP3734769B2 - 蛍光強度測定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、蛍光強度測定方法および装置に関し、詳しくは、マイクロチップ泳動路(キャピラリ)上で泳動された試料(サンプル)に励起光を照射してサンプルからの蛍光を受光してその強度を測定する際に、サンプルの泳動状態をより広い視野範囲で画像として観察でき、かつ、効率よく蛍光強度測定ができ、装置の小型化が可能な蛍光強度測定方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のマイクロチップは、板状で実質的に透明体であり、特開平10−246721号等に記載されているように、数十μm〜百μm程度の十字の泳動路溝が透明なプラスチップ基板の内部に基板の面に沿って設けられ、溝の各端部には上部が開口したポッド(2mmφ程度の穴)がリザーバとして設けられている。
このポッドの1つあるいはいくつかから電気泳動液(GEL)が溝に注入されて充填された後に、ポッドの1つにサンプルが充填される。そして、そのポッドに対して同じ溝の対向する側のポッドに+Vの高電圧が印加されてサンプルを導入溝に沿って電気泳動させる(導入処理)。所定の時間経過後に泳動の途中で導入溝の十字路のクロスポイントに目的のものが泳動してきたタイミングを見計らって、ポッドの電圧印加を切り換えて泳動溝を分画溝側に切り換える。さらに、目標のポッドに向けてサンプルを所定の一定時間泳動させる(分画処理)。これにより、例えば、DNA解析などでは泳動路で分画され分離されたサンプル(例えば目的のDNAバンド部分)を光学的なレーザ光等を用いた検出装置で検出し、その鎖長解析などが行われる。あるいは、一定時間経過後に目的の位置に到達した分画されたサンプル、例えば、分画された目的のDNAバンド部分に励起光を照射してその蛍光強度を測定するとともに、目的とするDNAを切り出してポッドに回収する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
DNA塩基配列の長いものはその長さに応じて泳動速度も遅くなり、発光幅も広がって、連続塩基による波形の重なりが起こる。この場合の検出波形信号は、単独塩基による正規波形の信号とならずに、検出波形が隣接波形信号と重なって連接波形信号となってしまう。
また、泳動の際に発生する各塩基のスマイリングやピッチ変動によっても波形信号の重なりが発生して連接波形信号を発生させる原因になる。さらに、本来のDNA塩基配列と同時にデオキシ状態で反応が停止したDNA塩基が検出されるので、それが各完全結合のDNA塩基の検出信号に対してゴースト信号となって現れてくる。このような信号波形も波形の連接を発生させる原因になる。
しかも、対象となる目的のDNA自体がポッドに注入されていないのに、あるいは分画されていない状態で検査や測定が行われることも多々ある。
【0004】
このような問題を解決するために泳動状態をより広い視野で観察して、蛍光強度測定を行うことが提案されている。この場合に、広い視野の観察のために、また、蛍光強度を測定するために、それぞれに対象となるDNAを含む電気泳動液に励起光が照射されることになる。この場合、それぞれの励起光を同時に照射することができないために、例えば、蛍光顕微鏡で画像をCCDカメラで採取してその画像をコンピュータを介して画像表示することで、広い視野の観察系で観察した後に蛍光強度測定系に切り換えて蛍光強度測定を行う必要がある。そのために、蛍光強度の測定効率がその分低下し、切換装置等を設けなければならず、装置が大型化する問題がある。
切換装置等を設けないで、観測画像を採取する観測画像撮像部と蛍光強度を検出する蛍光強度測定部とを同時に動作させた場合には、たとえ、蛍光光の波長を通過させるフィルタを設けていても、励起光の強度が蛍光光よりはるかに強いので、フィルタでは励起光を除ききれず、もれが生じる。そのため、観測画像撮像部のマイクロチップへの照射光が蛍光強度測定部の検出光に影響を与えて、あるいは逆に蛍光強度測定部のマイクロチップへの照射光が観測画像撮像部に影響を与えて、それぞれの測定結果に狂いが生じ、特に蛍光強度測定は、事実上不可能になる。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、サンプルの泳動状態をより広い視野範囲で画像として観察でき、かつ、効率よく蛍光強度測定ができ、装置の小型化が可能な蛍光強度測定方法および装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するためのこの第1の発明の蛍光強度測定方法および装置の特徴は、観測画像撮像部の撮像光学系と蛍光強度測定部の蛍光強度の検出光学系とがマイクロチップを挟んで対向して配置され、所定の周期で撮像光学系の照射光と検出光学系の照射光とが時分割で交互にマイクロチップに照射されて観測画像の採取と蛍光強度の測定とがそれぞれの照射光の照射タイミングに合わせて時分割で並行して行われるものである。
さらに、第2の発明の蛍光強度測定方法および装置の特徴は、前記の構成に加えて、前記の撮像光学系がイメージセンサを有していて、このイメージセンサの撮像感度が蛍光強度測定部で測定した蛍光強度に応じて設定されあるいは制御されるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
このように、第1の発明にあっては、観測画像撮像部の撮像光学系と蛍光強度測定部の蛍光強度の検出光学系とがマイクロチップを挟んで対向して配置され、所定の周期で撮像光学系の照射光と検出光学系の照射光とが交互に照射され、それぞれの照射光の照射タイミングに合わせてそれぞれに観測画像の採取と蛍光強度の測定とが時分割で並行して行われる。
したがって、観測画像撮像部の撮像光学系の照射光と蛍光強度測定部の蛍光強度の検出光学系の照射光とが同時に発生することはないので相互に影響されることはない。
さらに第2の発明にあっては、イメージセンサの撮像感度が蛍光強度測定部で測定した蛍光強度に応じて設定されあるいは制御されることにより観測画像撮像部における撮像対象に対する明暗のダイナミックレンジを拡大することができる。
その結果、サンプルの泳動状態をより広い視野範囲で画像として観察でき、かつ、効率よく蛍光強度測定ができ、装置の小型化が可能な蛍光強度測定方法および装置を容易に実現できる。
【0007】
【実施例】
図1は、この発明の蛍光強度測定方法を適用したDNA蛍光強度測定装置の一実施例のブロック図、図2は、その測定処理のタイミングチャート、図3は、その外観説明図、図4は、蛍光強度の測定波形の説明図、図5は、観測画像の説明図、図6は、観測画像における領域設定と泳動時間対蛍光特性の説明図、図7は、この発明の蛍光強度測定方法を適用したDNA蛍光強度測定装置の他の実施例のブロック図、そして図8は、図7における観察画像撮像部における撮像できる画像のダイナミックレンジを拡大するための蛍光強度検出の説明図である。
図1において、1は、DNA蛍光強度測定装置であって、図3に示すように、マイクロチップ2を挟んで、上部に観察画像撮像部3が設けられ、下部に一点蛍光強度の蛍光強度測定部4が設けられている。観察画像撮像部3により生成されたビデオ信号は、画像処理・制御装置5とVTR6とに入力され、蛍光強度測定部4により検出された信号は、画像処理・制御装置5に入力されて所定の処理(後述)が行われる。
【0008】
観測画像撮像部3は、図1に示すように、励起光照射系31と受光系32、ビデオ信号処理回路33、そしてシャッタ駆動回路34とが内蔵されていて、励起光照射系31は、冷陰極放電灯(例えば、水銀放電灯、メタルハライドランプなどの蛍光励起波長を有する白色光源)の光源311からの光をシャッター312、バンドパスフィルタ313を経て波長λ=510〜560nmの光を通過させて、これをマイクロチップ2に対して垂直な受光系の光軸L1に対して波長分離面が45°の角度で配置されたダイクロイックミラー314に照射する。このダイクロイックミラー314により照射光は、落射方向に反射されて、マイクロチップ2の表面に対峙する形でこれの垂直上部に設けられた対物レンズ321を経てマイクロチップ2の表面にキャピラリを含む広い視野範囲で照射される。
この波長λ=510〜560nmの光の照射により、マイクロチップ2のキャピラリ(泳動路)上を泳動する蛍光強度測定途上のサンプルは、励起されて蛍光を発生する。その蛍光光は、受光系32の対物レンズ321を経てダイクロイックミラー314に至り、上部へと抜けて蛍光光の波長に対応するλ=590nmの通過帯域を持つロングパスフィルタ322を通り、CCDイメージセンサ323により受光される。
これによる受光光は、電気信号に変換され、その検出信号は、CCDイメージセンサ323からビデオ信号処理回路33のビデオ信号生成回路324に入力される。ここで検出信号は、ビデオ信号として生成され、ビデオ信号処理回路33に内蔵されたA/D変換器(A/D)325によりA/D変換されてデジタル値として画像処理・制御装置5の画像メモリ(フレームメモリ)51に転送される。
なお、A/D325は、コントローラ326からの制御によりA/D変換処理をする。
ところで、励起光は、ショートパスフィルタあるいはバンドパスフィルタを通して試料に照射されるので、ここでのショートパスフィルタはバンドパスフィルタが用いられてもよい。また、試料からの蛍光は、ロングパスフィルタあるいはバンドパスフィルタを通して受光されるので、ここでのロングパスフィルタはバンドパスフィルタが用いられてもよい。これらのことは、後述する蛍光強度測定部4においても同様である。
【0009】
ビデオ信号生成回路324は、ビデオ信号処理回路33のコントローラ326の制御下でA/D変換前のビデオ信号をVTR6に転送して観測画像としてVTR6に記録する。ビデオ信号生成回路324は、ビデオ信号生成回路324でビデオ信号を生成する際に偶数番目のフレームコマ落とし制御をするコントローラ326を有していて、奇数番目のフレームのビデオ信号のみ、VTR6と画像メモリ51に送出する。このとき、奇数番目のフレームのビデオ信号を次の偶数番目のフレームに差し込んで送出する。また、このとき同時にコマ落としタイミング信号FSを画像処理・制御装置5に送出する。さらに、ビデオ信号生成回路324は、このコマ落としタイミング信号FSをシャッタ駆動回路34にも送出する。シャッタ駆動回路34は、この信号FSを受けて奇数番目のフレームの期間(タイミング信号FSがHIGHレベル(以下“H”),図2(a)参照)の間にシャッター312をONにして開き、偶数番目のフレームの期間の間(タイミング信号FSがLOWレベル(以下““L”))、シャッター312をOFFにして閉じる。なお、タイミング信号FSは、垂直同期信号Vsync信号をフリップフロップ等を介して1/2分周することで得ることができる。
コントローラ326は、画像処理・制御装置5からの制御信号SRを受けたときには、これに応じてVTR6から記録されたビデオ信号を読出してA/D変換器325によりA/D変換してそれを画像メモリ51に順次転送して記録する処理を行う。なお、画像処理・制御装置5からの制御信号は、前記の制御信号SRのほか、VTR6に対する録画、再生、巻き戻し、早送りなど、通常のVTR6の操作のための制御信号が送出される。コントローラ326は、これら制御信号を画像処理・制御装置5から受けて、これらに応じてVTR6に対して指定された操作する。
【0010】
蛍光強度測定部4は、図1に示すように、励起光照射系41と受光系42とが内蔵されていて、励起光照射系41は、青色LEDの光源411からの光をバンドパスフィルタ412を経て波長λ=510〜560nmの光を通過させて、これをマイクロチップ2に対して垂直な受光系の光軸L2に対して波長分離面が45°の角度で配置されたダイクロイックミラー413に照射する。ダイクロイックミラー413により照射光は、ここで垂直上方に反射されて、マイクロチップ2の裏面に対峙する形でこれの垂直上部に設けられた対物レンズ421を経てマイクロチップ2の裏面から測定位置にピンポイントで照射される。
マイクロチップ2の測定位置の泳動路にこの波長λ=510〜560nmの光がピンポイント照射されると、マイクロチップ2の泳動路を泳動する測定対象のサンプルは、蛍光を発し、その蛍光光は、受光系42の対物レンズ421を経てダイクロイックミラー413に至り、蛍光光の波長に対応するλ=590nmを下方に通過させ、ロングパスフィルタ422を通って、APD(アバランシー・ホト・ダイオード)センサ423により受光される。
これによる受光光の検出信号は、APDセンサ423からバッファアンプ424に入力されてここで増幅され、A/D変換回路(A/D)425に入力されてA/D変換回路425によりA/D変換されてデジタル値として画像処理・制御装置5に転送される。なお、A/D425の制御信号は、図示していないが、画像処理・制御装置5から変換制御のタイミング信号を受けてもよい。
【0011】
画像処理・制御装置5は、マイクロプロセッサ(MPU)50と、画像メモリ51、波形メモリ52、メモリ53、CRTディスプレイ(CRT)54、キーボード55、マウス55a、プリンタ(図示せず)、そしてインタフェース56等からなり、バス57を介してこれら回路がMPU50と相互に接続されている。
APDセンサ423で受光した蛍光強度を示す信号は、インタフェース56を介して受けて時間対蛍光強度の波形データ(図4参照)として波形データメモリ52に記憶され、CRTディスプレイ54あるいはプリンタに出力される。さらに、バス57を介して接続されたHDD(ハードディスク装置)等の記憶装置58には測定した画像データ(画像メモリ51に記憶されたもの)がファイルとして記憶され、また、測定に必要な各種データファイル、プログラムなどがこれに格納されている。
【0012】
MPU50は、バス57を介してコマ落としタイミング信号FSの立下がり信号(図2(a)参照、タイミング信号FSが“H”から“L”の時点)を割込み信号として受けて、このタイミング信号FSに同期してインタフェース56を介して青色LEDの光源411を駆動する。そのための駆動信号DSを光源411に送出する(図2(c)参照)。これにより、この信号DSを受けて奇数番目のフレームの期間の間光源411がOFFし、偶数番目のフレームの期間の間、光源411がONになって、サンプルを励起して蛍光を発生させる。発生した蛍光は、透明なマイクロチップ2から外部へと放射される。
その結果、図2に示すように、シャッター312が閉じているとき、言い換えれば、マイクロチップ2に光源311からの光が照射されていないときに光源411からの光がマイクロチップ2(そのキャピラリ部分)に照射されて、これによりサンプルの蛍光強度を測定することができる。逆に、シャッター312が開いているときには、言い換えれば、マイクロチップ2に光源411からの光が照射されていないときには光源311からの光がマイクロチップ2に照射されて、蛍光による映像を観測画像として採取することができる。
なお、シャッター312は、インタフェース56、シャッタ駆動回路34を介してMPU50により開閉制御される。
【0013】
APDセンサ423により検出された蛍光強度は、バッファアンプ423,A/D変換回路424を経てデジタル値としてインタフェース56に入力される。そして、コマ落としタイミング信号FSに同期して、MPU50は、インタフェース56,バス58を介してこのデジタル値を受けて、これをMPU50が波形メモリ52に順次測定データとして記憶する。
その結果、波形メモリ52には、タイミング信号FSをサンプルタイミングとして時間対蛍光強度のデータがデジタル値でそれぞれの測定時点(1/30秒間隔)においてそれぞれ検出された蛍光強度が順次記憶されていき、結果として、例えば、図4に示すような波形信号が記憶される。なお、横軸は時間(秒)であり、縦軸は蛍光強度である。また、コマ落としタイミング信号FSは、ビデオ信号の各フレームに対応して発生するので、インターレースをしない場合には、その周期は1/30秒となる。そこで、図2に示すようなタイミングで、観測画像データと測定データ(蛍光強度の時間的な変化)とが採取されることになる。
一方、画像メモリ51には、図5に示すような蛍光による画像が記憶される。
【0014】
さて、メモリ53には、観測画像表示処理プログラム53a、領域設定・データ抽出プログラム53bと、蛍光強度特性表示プログラム53c、作業領域53d、パラメータ領域53e、そして各種の処理プログラム(図示せず)が格納されている。
観測画像表示処理プログラム53aは、MPU50により実行されて、MPU50は、VTR6から記録されたビデオ信号を読出す制御信号SRを発生して画像メモリ51に各フレームの画像データを順次受けてそれを表示データに展開して観測画像としてCRT54に表示する処理をする(図5参照)。
領域設定・データ抽出プログラム53bは、領域設定の機能キー入力に応じてMPU50により実行されて、MPU50は、シャッター312を開き、バンドパスフィルタ313と、ロングパスフィルタ322を光路から外して(これらフィルタの移動機構は図示せず)、マイクロチップ2の視野範囲の画像を画像メモリ51に採取し、それを画像メモリ51から読出して、表示データに展開し、CRT54の画面上に表示する。このとき白色光がマイクロチップ2に照射されて、図6(a)に示すようなキャピラリ画像が表示され、これに加えて矩形の設定領域60を測定画面上に重ね表示する。そして、重ね表示された設定領域60の大きさをマウス操作に応じて変更する制御をする。このとき、マウス55aの操作で決定された矩形枠の大きさのデータをパラメータ領域53dに領域設定データとして記憶する。なお、このときには蛍光強度測定部4は動作していない。
また、領域設定・データ抽出プログラム53bは、所定測定開始機能キーに応じてメインプログラムからコールされて、パラメータ領域53dに記憶されている、観測画像データにおいて図6(a)に示す領域60の範囲を示す領域設定データを読出してこれに従って、タイミング信号FS(1/30秒)に同期して動作して1/30秒ごとに画像メモリ51に記憶された観測画像データ(ビデオ信号処理回路33から得られるビデオ信号のA/D変換データからなる画像データ)から指定された設定領域60内のデータのみを抽出する。そして、その設定領域60内のデータ値の平均値(蛍光強度の平均値)を明るさの平均値として算出して作業領域53cに時間経過(1/30秒ごと)に対応して順次記憶していく。さらに、作業領域53cに記憶された新規の平均値を時間経過対応の測定データとしてHDD58に転送して特定データの所定の領域に順次記憶する。そして、蛍光強度特性表示プログラム53cをコールする。
【0015】
蛍光強度特性表示プログラム53cは、MPU50により実行されて、所定の機能キー入力により、波形データメモリ55のデータを読出して表示データを生成して、CRT54の画面上に表示する。これにより図4に示すような波形信号を表示する。
また、領域設定・データ抽出プログラム53bの実行後にコールされて、このプログラムがMPU50に実行されたときには、MPU50は、HDD58から前記の記憶された測定データを所定の領域から読出して、リアルタイムで平均値のデータを追加したグラフとして縦軸と横軸を加えた形でCRT54に表示する。その結果、図6(b)に示すような蛍光強度の時間に対する明るさのグラフがCRT54の画面上に表示される。
なお、全体的なプログラム処理については、所定の機能キーの押下に応じて前記した各プログラムがメインプログラムからコールされて順次実行されていくだけでの単純な流れとなるので、その説明は割愛する。
【0016】
図7は、観察画像撮像部3が撮像できる画像のダイナミックレンジを拡大した実施例である。蛍光物質、特に蛍光染色されたDNAの発光強度は、弱いものが多いでの、十分な画像が得られない場合がある。これに対して、CCDイメージセンサ323の感度(絞りとシャッタ速度の調整を含めた感度)の調整によりある程度暗い映像を採取することも可能であるが、それには限界がある。その上に、強い蛍光を発生する物質の場合には、過大入力となってしまい、カメラ側の安全装置が作動して撮影ができなくなる問題がある。
このようなことから、ロングパスフィルタ322を介してCCDイメージセンサ323により受光しても撮像対象の明暗に対するダイナミックレンジは、あまり広く採れない。
【0017】
そこで、図7においては、ロングパスフィルタ322とCCDイメージセンサ323との間にイメージインテンシファイア(IIF,これは映像増倍管,マイクロチャネルプレート型映像増倍装置など)324が設けられている。また、画像処理・制御装置5のメモリ53には撮像感度制御プログラム53fが設けられている。これらにより、画像処理・制御装置5がコントローラ326を制御し、さらにイメージインテンシファイア324の増倍率をコントローラ326からの制御信号で制御することで、撮像感度の制御をして撮像できる画像のダイナミックレンジを拡大する。
なお、このような撮像感度の制御をコントローラ326からの制御信号ではなく、これとは別にコントローラを設けて行ってもよいが、回路を簡単にするために、ここでは、コントローラ326を用いている。また、画像処理・制御装置5の内部は、図1の実施例ほど詳細に説明していないが、図7では、図1に示す構成要素と同一のものは同一の符号で示してある。したがって、それらの説明はここでは割愛する。
ところで、3μm〜10μm角程度のピンポイント測定点を持つAPDセンサ423を備える蛍光強度測定部4は、例えば、1.2mm×1.0mm程度の所定の視野を持つCCDイメージセンサ323等のいわゆるCCDカメラよりも撮像対象の明暗に対する検出ダイナミックレンジが広い。そこで、この蛍光強度測定部4の広いダイナミックレンジの蛍光強度検出を利用して観察画像撮像部3が撮像できる画像の明暗の範囲を広げる撮像感度制御をイメージインテンシファイア324の制御で行う。そのための蛍光強度検出の一例を図8に示す。
【0018】
図8において、点線枠で示す7は、マイクロチップ2のキャピラリ2a上に設定されたイメージセンサ323の視野であり、8は、蛍光強度測定部4の検出点、9は、蛍光染色されたDNAである。このように、キャピラリ2aを流れてくるDNA9に対して蛍光強度測定部4の検出点8の位置をイメージセンサ323の視野7の手前(キャピラリ2aの上流側)に設定する。
この検出点の蛍光強度は、1/30秒ごとに蛍光強度測定部4により検出されて波形メモリ52に順次記憶されていく。
そこで、新しく検出された蛍光強度が波形メモリ52に記憶される都度、画像処理・制御装置5のメモリ53に設けられた撮像感度制御プログラム53fがMPU50にコールされて実行される。撮像感度制御プログラム53fがMPU50により実行されると、MPU50は、蛍光強度測定部4で検出した現在から過去に受けた蛍光強度の値、数個を抽出してそれらの平均値を算出する。そして、この平均値に対応する値の制御信号Siをインタフェース56を介してコントローラ326に送出する。なお、撮像感度制御プログラム53fの処理は、単純な流れであり、前記の説明で十分で理解できると考えられるので、その処理のフローチャートは割愛する。
【0019】
コントローラ326は、制御信号Siの値に応じてイメージインテンシファイア324の増倍率を制御する。このときの制御信号Siの値は、蛍光強度測定部4で検出したそのときどきの蛍光強度に応じて適正な映像を撮影できる増幅率にイメージインテンシファイア324を設定するものである。これにより、暗い発光強度の蛍光物質から明るい蛍光を発生する物質まで撮像できる範囲を広げて、広いダイナミックレンジを確保することができる。なお、制御信号Siの値は、1/30秒ごとに発生することなく、ある検査対象やある検査条件に対応して設定値として1回発生するだけであってもよい。もちろん、検査対象や検査条件が変更されたときには制御信号Siをその都度発生する。
この制御信号Siは、さらに点線で示すように、CCDイメージセンサ323側に送出されて、CCDイメージセンサ323の絞りとシャッタ速度を調整して感度調整する構成を加えるようにしてもよい。
さらに、CCDイメージセンサ323として撮像画像の明暗に応じた感度調整がCCDイメージセンサ323の映像増幅率等で多少広い範囲で調整できるものであれば、必ずしもイメージインテンシファイア324を設ける必要はない。あるいは、前記の調整は、点線で示すCCDイメージセンサ323側だけの調整であってもよい。この場合には、実線で示す制御信号Siは不要となり、点線で示す制御信号Siにより、CCDカメラの撮像感度を制御することになる。それは、例えば、CCD素子の印加電圧やCCD素子に結合されたプリアンプの増幅率等の制御で可能である。
なお、以上の場合、制御信号Siは、必ずしも過去に受けた蛍光強度の値、数個の平均値を採る必要はなく、現在の1/30秒の蛍光強度の測定値で次の1/30秒の撮像画像を適正に採取するための制御してもよい。しかし、前記のように平均値を採ってその都度制御するようにすれば、ノイズに影響されずに適正な感度制御をすることができる。
【0020】
以上説明してきたが、実施例においては、観測画像は、蛍光光をロングパスフィルタ322を通して観測しているが、ロングパスフィルタ322を削除して直接蛍光光をCCDにより受光して蛍光光の観測画像を採取してもよい。
また、領域設定・データ抽出プログラム53bをMPU50が実行したときには、シャッター312を開き、バンドパスフィルタ313と、ロングパスフィルタ322を光路から外すことができ、このときには、マイクロチップ2の視野範囲の画像を白色光を照射した形で画像メモリ51に採取することができる。
これによりキャピラリ内にゲルが正常に入っているかどうか、キャピラリ内にあわが入っていないかどうかなどの観察映像を蛍光強度測定系の励起光に影響されることなく、判定することができる。さらに、一点蛍光測定系の位置が適正な位置にあるか否かの判定も可能である。このような観測をする場合には白色照射が非常に有効になるが、白色照射ではなく、励起光を照射して領域設定等をすることができることはもちろんである。
また、実施例では、CCD323にシャッタがある場合に言及していないが、CCD323にシャッタがある場合には、このシャッタをタイミング信号FSに同期させて、シャッタ312の開閉動作とは逆になるように開閉動作をさせるとよい。さらに、蛍光映像をCCDイメージセンサ323(撮像するカメラ)は、CCDのイメージセンサに限定されるものではなく、MOS型BBD等のイメージセンサ等を用いることができることはもちろんである。
またさらに、実施例では、領域設定60の選択設定の後に蛍光強度測定に入り、設定領域の蛍光強度の平均値を得て、時間−蛍光強度特性を画面上に表示しているが、領域設定60の設定と蛍光強度の測定とは、切り離して、それぞれ独立に行ってもよいことはもちろんである。
【0021】
実施例では、波形メモリ、画像メモリをプログラムを格納したメモリと独立に設けているが、波形メモリ、画像メモリをプログラムを格納したメモリに領域として確保し、これらメモリを一体的に形成してもよい。
実施例において、観測画像の採取と蛍光強度の測定を切換える周期は、ビデオ信号の各フレームに対応して発生するようにしているが、インターレースをする場合には、1フィールドが1/60秒となるので、採取画像がインターレースとなように、奇数番目のフィールドと次の偶数番目のフィールドとの連続する2フィールドを1/30秒で採取し、次の奇数番目のフィールドと次の偶数番目のフィールドとの連続する2フィールドをコマ落としするようにすればよい。採取画像や一点蛍光測定の期間は、1/30秒のうちのある一定期間で行われてもよいことはもちろんである。
また、1フレームの画像をより高速に採取する場合には、切換える周期は、1/30秒に限定されないことはもちろんである。さらに、実施例でのコマ落としは、1フレームおきにしているが、泳動速度が遅いサンプルの場合には、コマ落としフレームを数フレームとして観測画像を数フレームおきに採取してもよい。逆に、泳動速度が速いサンプルの場合には、コマ落としフレームを数フレームに1回として観測画像のフレームを増加させてもよい。
さらに、VTR6は、HDDを内蔵するデジタルの録画再生装置であってもよく、ビデオテープに記憶するものに限定されない。
また、実施例では、設定領域60を矩形として説明しているが、これは、矩形に限定されるものではなく、例えば、キャピラリの泳動路が湾曲している場合などにはそれに併せて湾曲させてもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明のとおり、この発明にあっては、観測画像撮像部の撮像光学系と蛍光強度測定部の蛍光強度の検出光学系とがマイクロチップを挟んで対向して配置され、所定の周期で撮像光学系の照射光と検出光学系の照射光とが交互に照射され、それぞれの照射光の照射タイミングに合わせてそれぞれに観測画像の採取と蛍光強度の測定とが時分割で並行して行われる。
したがって、観測画像撮像部の撮像光学系の照射光と蛍光強度測定部の蛍光強度の検出光学系の照射光とが同時に発生することはないので相互に影響されることはない。
その結果、サンプルの泳動状態をより広い視野範囲で画像として観察でき、かつ、効率よく蛍光強度測定ができ、装置の小型化が可能な蛍光強度測定方法および装置を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の蛍光強度測定方法を適用したDNA蛍光強度測定装置の一実施例のブロック図である。
【図2】図2は、その処理のタイミングチャートである。
【図3】図3は、その外観説明図である。
【図4】図4は、蛍光強度の測定波形の説明図である。
【図5】図5は、観測画像の説明図である。
【図6】図6(a)は、観測画像における領域設定の説明図、図6(b)は、泳動時間対蛍光特性の説明図である。
【図7】図7は、この発明の蛍光強度測定方法を適用したDNA蛍光強度測定装置の他の実施例のブロック図である。
【図8】図8は、図7における観察画像撮像部における撮像できる画像のダイナミックレンジを拡大するための蛍光強度検出の説明図である。
【符号の説明】
1…DNA蛍光強度測定装置、
2…マイクロチップ、
3…観察画像撮像部、4…一点蛍光強度測定部、
5…画像処理・制御装置、6…VTR、
31,41…励起光照射系、32,42…受光系、
33…ビデオ信号処理回路、
34…シャッタ駆動回路、
50…マイクロプロセッサ(MPU)、
51…画像メモリ(フレームメモリ)、
52…波形メモリ、53…メモリ、54…CRTディスプレイ(CRT)、
55…キーボード、56…インタフェース、57…バス、
58…外部記憶装置、
53a…観測画像表示処理プログラム、
53b…領域設定・データ抽出プログラム、
53c…蛍光強度特性表示プログラム、
53d…作業領域、53e…パラメータ領域、
53f…撮像感度制御プログラム53、
312…シャッター、313,412…ショートパスフィルタ、
314,413…ダイクロイックミラー、321,421…対物レンズ、
322,422…ロングパスフィルタ、323…CCDイメージセンサ、
324…ビデオ信号生成回路、325…A/D変換器、
326…制御回路、411…青色LEDの光源、
423…APDセンサ、424…バッファアンプ、
425…A/D変換回路(A/D)。
Claims (10)
- 観測画像撮像部で観測画像を採取するとともに蛍光強度測定部で蛍光強度を検出する蛍光強度測定方法において、
前記観測画像撮像部の撮像光学系と前記蛍光強度測定部の前記蛍光強度の検出光学系とがマイクロチップを挟んで対向して配置され、
所定の周期で前記撮像光学系の照射光と前記検出光学系の照射光とが時分割で交互に前記マイクロチップに照射されて前記観測画像の採取と前記蛍光強度の測定とがそれぞれの前記照射光の照射タイミングに合わせて時分割で並行して行われることを特徴とする蛍光強度測定方法。 - 前記照射光は、前記マイクロチップのキャピラリ内を泳動する試料に照射されるものであって、前記試料に蛍光を発生させる励起光であり、前記観測画像撮像部は、前記蛍光強度測定部の測定範囲に対してより広い視野を有するものである請求項1記載の蛍光強度測定方法。
- さらに、ビデオ信号録画再生装置を有し、前記所定の周期は、1/30秒であり、前記観測画像撮像部は、1/30秒で1フレームの画像を採取して1/30秒おきにそれを生成して前記ビデオ信号録画再生装置に記憶する請求項1記載の蛍光強度測定方法。
- 前記撮像光学系は、イメージセンサを有していて、このイメージセンサの撮像感度が前記蛍光強度測定部で測定した蛍光強度に応じて設定されあるいは制御される請求項1記載の蛍光強度測定方法。
- さらに、前記イメージセンサの手前にイメージインテンシファイアが設けられ、前記イメージセンサの撮像感度の設定あるいは制御に換えてあるいはこの撮像感度の設定あるいは制御に加えて前記イメージインテンシファイアの映像増幅率が制御される請求項4記載の蛍光強度測定方法。
- 観測画像を採取する観測画像撮像部と蛍光強度を検出する蛍光強度測定部とを有する蛍光強度測定装置において、
前記観測画像撮像部の撮像光学系と前記蛍光強度測定部の前記蛍光強度の検出光学系とがマイクロチップを挟んで対向して配置され、
所定の周期で前記撮像光学系の照射光と前記検出光学系の照射光とを時分割で交互に前記マイクロチップに照射する制御回路を備え、前記観測画像の採取と前記蛍光強度の測定とがそれぞれの前記照射光の照射タイミングに合わせて時分割で並行して行われることを特徴とする蛍光強度測定装置。 - 前記照射光は、前記マイクロチップのキャピラリ内を泳動する試料に照射されるものであって、前記試料に蛍光を発生させる励起光であり、前記観測画像撮像部は、前記蛍光強度測定部の測定範囲に対してより広い視野を有するものである請求項6記載の蛍光強度測定装置。
- さらに、ビデオ信号録画再生装置を有し、前記所定の周期は、1/30秒であり、前記観測画像撮像部は、1/30秒で1フレームの画像を採取して1/30秒おきにそれを生成して前記ビデオ信号録画再生装置に記憶する請求項6記載の蛍光強度測定装置。
- 前記撮像光学系は、イメージセンサを有していて、このイメージセンサの撮像感度が前記蛍光強度測定部で測定した蛍光強度に応じて設定されあるいは制御される請求項6記載の蛍光強度測定装置。
- さらに、前記イメージセンサの手前にイメージインテンシファイアが設けられ、前記イメージセンサの撮像感度の設定あるいは制御に換えてあるいはこの撮像感度の設定あるいは制御に加えて前記イメージインテンシファイアの映像増幅率が制御される請求項9記載の蛍光強度測定装置。
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