JP3734679B2 - 往復動切断工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばレシプロソーやジグソー等の往復動切断工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、上記レシプロソーは、電動モータ等の駆動源により回転する駆動軸と、ブレード(切断刃)を取り付けたスライド軸との間に往復動機構を介在させ、この往復動機構により駆動軸の回転運動をスライド軸の往復運動に変換する構成となっている。従来、レシプロソーにおける往復動機構には、例えば特許第2860173号公報に開示された構成のものがあった。
【0003】
この従来の往復動機構は、駆動軸上の2箇所に軸受けを傾斜して取り付け、各軸受けを介して駆動軸上に2本の揺動アームを回転可能に設け、一方の揺動アームをスライド軸に連結し、他方の揺動アームをカウンタバランスに連結して、駆動軸の回転に伴う上記2本の揺動アームの揺動によりスライド軸とカウンタバランスを相互に反対方向に往復動させる構成となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の往復動機構によれば、駆動軸上の2箇所に揺動アームを設ける構成であったので、そのためのスペースを確保する必要があり、その結果当該レシプロソーの特に機長方向のコンパクト化を図ることが困難であった。
また、2本の揺動アームを傾斜状態で別々に支持する必要があるため、そのために必要な軸受けを2箇所分必要とする等の点でコスト高になる問題があった。
本発明は、従来よりもコンパクト化および低コスト化を図ることができる往復動切断工具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は前記各請求項に記載した構成の往復動切断工具とした。
請求項1記載の往復動切断工具によれば、カウンタバランスを往復動させるための揺動部材は、スライド軸を往復動させるための駆動部材に設けられている。このため、駆動軸上には駆動部材を配置すれば足り、従来のようにスライド軸を往復動させるための部材とカウンタバランスを往復動させるための部材の双方を駆動軸上に配置する必要がない。このことから、駆動軸の軸方向(機長方向)に関して従来よりも往復動切断工具のコンパクト化を図ることができる。
また、カウンタバランスを往復動させるための揺動部材を駆動軸上に傾斜状態で支持する必要がないので、従来駆動軸上の2箇所に配置した軸受けを1箇所に減らすことができ、これにより当該往復動切断工具の低コスト化を図ることができる。
【0006】
さらに、請求項1記載の往復動切断工具によれば、駆動軸が回転すると、該駆動軸に対して傾斜状態で回転可能に設けた駆動部材が駆動軸の軸方向に揺動する。駆動部材が揺動するとスライド軸がその軸方向に往復動する。一方、駆動部材には揺動部材の一端側が連結されているので、該駆動部材が揺動すると揺動部材が支持軸部を中心にして同じく駆動軸の軸方向に揺動する。揺動部材の他端側はカウンタバランスに連結されているので、該揺動部材が駆動軸の軸方向に揺動すれば、カウンタバランスが駆動軸の軸方向に往復動する。カウンタバランスはスライド軸と同軸で該スライド軸に対して軸方向に移動可能に支持されている。
また、揺動部材は長手方向中央の支持軸部を中心にして揺動するので、その一端側と他端側は相互に反対方向に変位し、従ってカウンタバランスはスライド軸とは反対方向へ往復動する。
このように請求項1記載の構成によれば、カウンタバランスを往復動させる揺動部材の一端側は、従来のように駆動軸上ではなく、該駆動軸に傾斜状態で支持した駆動部材に連結されているので、前記請求項1記載の構成と同様の作用効果を得る。
また、カウンタバランスはスライド軸と同軸上を相互に反対方向に往復動するので、例えば両者が離れた位置(同軸上ではない位置)で往復動する構成に比して、往復動により発生する振動をより効率よく低減することができる。
請求項2記載の往復動切断工具によれば、カウンタバランスのスライド軸に対するこじりの発生を防止することができる。
【0007】
なお、本明細書において、カウンタバランスとスライド軸との相互の位置関係における「同軸」との記載は、両者の重心の移動が同一線上でなされることをいうものとする。また、厳密に同一線上でなされる場合の他、両者の重心がずれている場合であっても両者が見かけ上同軸上を往復動し、かつ本発明による作用効果を大きく阻害しない範囲で重心がずれている場合を含むものとする。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態では、往復動切断工具の一例としてレシプロソー1を例に挙げて説明する。図1はレシプロソー1の先端側ほぼ半分の内部構造を示している。レシプロソー1の後ろ側には駆動モータが内蔵されている。図ではこの駆動モータの出力軸2のみが示されている。この出力軸2の先端側は軸受け8を介して当該レシプロソー1のハウジング4に回転可能に支持されている。また、軸受け8の後ろ側において出力軸2には、モータ冷却用のファン2bが取り付けられている。
この出力軸2にはピニオンギヤ2aが形成されており、このピニオンギヤ2aは駆動ギヤ3に噛み合わされている。駆動ギヤ3は、軸受け5,6を介してハウジング4に回転可能に支持した駆動軸7に固定されている。
【0009】
駆動軸7には、スライド軸30をその軸方向に往復動させるための駆動部材25が設けられている。また、この駆動部材25には、カウンタバランス50を往復動させるための揺動部材42,43が設けられている。駆動部材25と揺動部材42,43が本実施形態におけるレシプロソー1の往復動機構20を構成している。
先ず、駆動軸7には軸受けホルダ21が固定されている。この軸受けホルダ21の外周には、駆動軸7に対して傾斜する軸線を中心軸とする円柱形状をなす軸受け座面22が形成されている。この軸受け座面22には、2個の軸受け23,24が取り付けられている。この両軸受け23,24の外輪側には円筒形状をなす揺動盤25bが取り付けられている。揺動盤25bの図示上部には円柱体をなす揺動軸部25aが放射方向に突き出して一体に形成されている。この揺動軸部25aには直方体形状を有する支持ブロック26が回転可能に取り付けられている。但し、この支持ブロック26は、止め輪27により軸方向へは移動しないように揺動軸部25aに取り付けられている。この支持ブロック26の詳細については後述する。
【0010】
揺動軸部25aの先端面(図では上端面)には、作動軸28が同軸に突き出して設けられている。なお、図1に示すように本実施形態では、揺動軸部25aの先端面に形成した支持孔に作動軸を挿入して段付きピン形状とした構成を例示しているが、この作動軸を揺動軸部と一体に形成した構成としてもよい。
この作動軸28の先端部は、後述するカウンタバランス50の下面に形成した逃がし溝50c、スライド軸30の下面に形成した軸方向に長い逃がし溝30aを経て、スライド軸30に取り付けた中間ピン29の支持孔29a内に軸方向移動可能に挿入されている。中間ピン29は、スライド軸30に径方向に貫通してかつ回転可能に取り付けられている。上記軸受け23,24、揺動盤25b、揺動軸部25a、支持ブロック26および作動軸28等により駆動部材25が構成されており、この駆動部材25が請求項に記載した駆動部材に相当する。
スライド軸30は、軸受け31,32を介してハウジング4に軸方向移動可能に支持されている。このスライド軸30の先端には、ブレードBを取り付けるためのクランプ装置33が取り付けられている。このスライド軸30が軸方向へ往復動することによりブレードBが往復動し、これにより切断材を切断することができる。
【0011】
次に、前記した支持ブロック26の両側面には、支持孔26a,26aが形成されており、この両支持孔26a,26aには支持ピン40,41がそれぞれ回転可能に挿入されている。両支持ピン40,41には、支持孔40a,41aがその径方向に貫通して形成されている。両支持孔40a,41aには、以下説明する揺動部材42,43の下部軸部42a,43aがそれぞれ軸方向移動可能に挿通されている。
両揺動部材42,43は、その長手方向中央に支持軸部42b,43bを有し、その下側端部に上記下部軸部42a,43aを有し、その上側端部に上部軸部42c,43cを有している。支持軸部42b,43bは、それぞれハウジング4の側部内面に設けた支持孔4a,4bに回転可能に挿入されており、これにより両揺動部材42,43が支持軸部42b,43bを中心にして前後方向(図1において左右方向)に揺動可能な状態で、ハウジング4の側部内面に相互に対向して支持されている。
【0012】
両揺動部材42,43の上部軸部42c,43cは、カウンタバランス50の両側部に回転可能に支持した支持ピン51,52の支持孔51a,52aに軸方向移動可能に挿通されている。カウンタバランス50は略直方体形状を有し、そのほぼ中央に長手方向(図1において左右方向)に貫通して設けた摺動孔50aを介して前記スライド軸30に軸方向移動可能に支持されている。カウンタバランス50の形状及びスライド軸30に対する径方向の相対位置は、カウンタバランス50の重心がスライド軸の重心と同軸上を移動するように設定されている。
摺動孔50aの両側部には、前記中間ピン29を逃がすための溝部50b,50bが形成されている。また、カウンタバランス50の下面には、前記逃がし溝50cが摺動孔50aに貫通して形成されている。この逃がし溝50cは、カウンタバランス50の前端面から後端面に至って形成されている。
【0013】
次に、カウンタバランス50の後端面と、軸受け32を取り付けたボス部4cの前端面との間には圧縮ばね55〜55が介装されており、これによりカウンタバランス50は往動方向(図1において右方)に付勢されている。
圧縮ばね55〜55は、スライド軸30の周囲3箇所に配置されている。カウンタバランス50の後端面には、スライド軸30の周囲3箇所に一定深さの保持孔50d〜50dが形成されている。各保持孔50dに圧縮ばね55の一端が挿入されて、各圧縮ばね55のスライド軸30回りの位置が固定されている。この3箇所の圧縮ばね55〜55の位置は、これら3箇所の圧縮ばね55〜55の合成付勢力の作用軸がスライド軸30の軸線に一致するように設定されており、これによりカウンタバランス50のスライド軸30に対するこじりが発生しないようになっている。
【0014】
図1及び図2に示すようにハウジング4の前端面には、切断材に当接させるアタッチメント45が取り付けられている。このアタッチメント45のハウジング4の前端からの突き出し寸法を変更することにより、ブレードBの切断加工に供される部分(切断材に当たる部分)を変更することができ、これによりブレードBを無駄なく使用でき、ひいてはその寿命を長持ちさせることができる。
【0015】
以上のように構成したレシプロソー1によれば、モータが起動してその出力軸2が回転すると、ピニオンギヤ2aと駆動ギヤ3の噛み合いを通じて駆動軸7が回転する。駆動軸7が回転すると、軸受けホルダ21が一体で回転する。この軸受けホルダ21には、駆動軸7の軸線に対して傾斜する軸線を回転中心とする軸受け23,24が取り付けられており、この軸受け23,24を介して該駆動軸7には揺動盤25bが相対的に回転可能に取り付けられている。このため、駆動軸7が回転すると、駆動部材25の揺動軸部25aが前後方向に揺動する。
揺動軸部25aの先端は、スライド軸30に取り付けた中間ピン29の支持孔29aに挿通されている。このため、揺動軸部25aが前後方向に揺動すると、スライド軸30が前後方向(図1において左右方向)に往復動する。駆動部材25が前側に揺動するとスライド軸30が前進し、駆動部材25が後ろ側に揺動するとスライド軸30が後退する。
スライド軸30が前後方向に繰り返し往復動することによりその先端に装着したブレードBが往復動し、これにより切断材を切断することができる。
【0016】
一方、駆動部材25が前後に揺動すると、揺動軸部25aに取り付けた支持ブロック26が前後に揺動し、これにより揺動部材42,43が支持軸部42b,43bを中心にして前後に揺動する。揺動部材42,43が前後に揺動することにより、カウンタバランス50が前後方向に往復動する。カウンタバランス50は、スライド軸30とは反対方向に往復動する。
すなわち、駆動部材25が前側に揺動すると(スライド軸30が前進すると)、揺動部材42,43の下部軸部42a,43aが前側に変位するので、揺動部材42,43は図1において反時計回り方向に回動する。揺動部材42,43がこの方向に回動すると、その上部軸部42c,43cは後ろ側に変位するのでカウンタバランス50は後退する。カウンタバランス50とハウジング4のボス部4dとの間には圧縮ばね55〜55が介装されているので、カウンタバランス50はこの圧縮ばね55〜55に抗して(圧縮ばね55〜55を押し縮めながら)後退する。
逆に、図1に示すように駆動部材25が後ろ側に揺動すると(スライド軸30が後退すると)、揺動部材42,43の下部軸部42a,43aが後ろ側に変位するので、揺動部材42,43は図1において時計回り方向に回動してその上部軸部42c,43cが前側に変位し、これによりカウンタバランス50が前進する。
【0017】
以上説明したように本実施形態のレシプロソー1によれば、駆動軸7上の1箇所に傾斜して設けた駆動部材25の揺動動作を利用して揺動部材42,43を揺動させ、これによりカウンタバランス50を往復動させる構成であるので、従来のように駆動軸上に2つの揺動アームを設け、これを前後逆方向に揺動させて一方がスライド軸を往復動させ、他方がカウンタバランスを往復動させる構成に比して、駆動軸7の軸方向に関してより少ないスペースで往復動機構20を組み込むことができ、これによりレシプロソー1を特にその機長方向についてコンパクト化することができる。また、往復動機構20の構成を従来に比して簡素化することができる。
【0018】
さらに、従来駆動軸上の2箇所に傾斜状態で配置していた軸受けを1箇所に減らすことができるので、当該レシプロソー1の低コスト化を図ることができる。
【0019】
また、カウンタバランス50には、圧縮ばね55〜55の付勢力が作用している。この圧縮ばね55〜55の付勢力は、カウンタバランス50および両揺動部材42,43を経て駆動部材25を後ろ側に揺動させる方向に作用する。このため、駆動部材25は、モータ駆動力と圧縮ばね55〜55の付勢力との合計駆動力により後ろ側に揺動し、従って、スライド軸30は、従来の駆動モータのみによる場合に比して圧縮ばね55〜55の付勢力分だけ大きな力で後退する。スライド軸30が後退してブレードBが引かれる時に切断材が切断されるとすれば、本実施形態に係る往復動機構20によりモータの駆動力のみによる構成に比してより大きな力の切断力を付与することができる。
【0020】
また、カウンタバランス50の往復動に伴うその重心の移動がスライド軸30の軸線上にほぼ沿ってなされるよう、該カウンタバランス50の形状及びスライド軸30に対する位置が設定されているので、従来のように大きな距離だけ離れている場合に比して、偶力(当該レシプロソー1を回転させようとする力)の発生を抑制することができ、この点で当該レシプロソー1の振動をより効率よく低減することができる。
【0021】
さらに、駆動軸7の回転による駆動部材25の揺動により、スライド軸30が往復動して切断加工がなされるとともに、スライド軸30とは反対方向にカウンタバランス50が往復動する。このため、スライド軸30の往復動により発生する振動と、カウンタバランス50により発生する振動の位相が逆になり、従って双方の振動が相互に吸収され、当該レシプロソー1の振動は低減される。
しかも、カウンタバランス50の往復動に伴うその重心の移動がスライド軸30の軸線上にほぼ沿ってなされるよう、該カウンタバランス50の形状及びスライド軸30に対する位置が設定されている。このため、両者の重心が大きな距離だけ離れている場合に比して、偶力(当該レシプロソー1を回転させようとする力)の発生を抑制することができ、この点で当該レシプロソー1の振動をより効率よく低減することができる。
【0022】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、カウンタバランス50の後面とボス部4cの前面との間に圧縮ばね55〜55を介装して、モータ駆動力のみによる構成に比してより大きな切断力を得る構成を例示したが、この圧縮ばね55〜55を省略することもできる。
また、往復動切断工具の一例としてレシプロソー1を例示したが、ジグソー等のその他の往復動切断工具にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るレシプロソーの内部構造を示す側面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係るレシプロソーの内部構造を示す平面図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る往復動機構の縦断面図である。
【符号の説明】
1…レシプロソー(往復動切断工具)
7…駆動軸
20…往復動機構
21…軸受けホルダ
22…軸受け座面
25…駆動部材、25a…揺動軸部、25b…揺動盤
26…支持ブロック、26a…支持孔
28…作動軸
30…スライド軸
42,43…揺動部材
42a,43a…下部軸部、42b,43b…支持軸部、42c,43c…上部軸部
50…カウンタバランス
Claims (2)
- ハウジングに回転可能に設けた駆動軸と、該駆動軸の回転により該駆動軸の軸方向に揺動してスライド軸をその軸方向に往復動させる駆動部材と、前記スライド軸と同軸で移動するカウンタバランスと、前記ハウジングに、長手方向略中央の支持軸部を介して揺動可能に設けられ、一端側が前記駆動部材に連結され、他端側が前記カウンタバランスに連結されて、前記駆動部材とは反対方向に揺動して前記カウンタバランスを前記スライド軸とは反対方向に往復動させる揺動部材を備え、
前記揺動部材の一端側は、前記駆動部材に支持された支持ブロックに軸回りに回転可能に設けた支持ピンに対して軸方向移動可能に連結され、他端側は前記カウンタバランスに軸回りに回転可能に設けた支持ピンに対して軸方向移動可能に連結されて、前記駆動部材の揺動による前記支持ブロックの変位により当該揺動部材を前記支持軸部を中心にして揺動させる構成とした往復動切断工具。 - 請求項1記載の往復動切断工具であって、
前記揺動部材は、前記ハウジングの側部内面に相互に対向して配置するとともに、前記カウンタバランスと前記ハウジングとの間において前記スライド軸の周囲複数箇所に、前記カウンタバランスを往動方向に付勢する圧縮ばねを介装した往復動切断工具。
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