JP3733817B2 - エンジンの吸入空気量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は吸気バルブのバルブタイミング制御によってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、吸気バルブのバルブタイミング制御によってエンジンの吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置としては、特開平11−210507号公報に開示されるようなものがあった。
【0003】
このものは、スロットルバルブを備えずに、電磁駆動式吸気バルブのバルブタイミング制御によってエンジンの吸入空気量を制御する構成であって、減速中に排気下死点以降にまで排気弁の開時期を遅らせることで、筒内ガスを再圧縮させ、該再圧縮による損失仕事でエンジンブレーキを発生させる構成である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電磁力によって吸気バルブを開閉駆動する場合には、エンジン回転速度とは無関係に駆動速度が一定であって、閉状態から開状態に変化するまで、また、開状態から閉状態に変化するまでにエンジン回転速度に無関係な一定の動作時間を必要とする。このため、吸気バルブの最小作動角がエンジン回転速度が高いときほど大きくなって、高回転域でかつ目標吸入空気量の少ない低負荷の領域では、吸気バルブの制御のみによっては、目標吸入空気量に制御できなくなってしまう場合がある。
【0005】
ここで、吸気通路の開口面積を絞るスロットルバルブを設け、吸気バルブの制御のみで目標吸入空気量に制御できる領域では、スロットルバルブを全開に保持するか、目標吸気圧相当に開度制御し、吸気バルブの制御のみでは目標吸入空気量に制御できない領域(高回転・低負荷領域)で、スロットルバルブの開度を絞るようにすれば、目標吸入空気量に制御させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、吸入空気量を減少させるべく、それまで全開付近に制御されていたスロットルバルブの開度を絞っても、スロットルバルブ下流側の吸気マニホールド等に充填されていた空気がシリンダ内に吸引されるため、吸入負圧の発達(吸入空気量の減少変化)が遅れ、スロットルバルブのみで吸入空気量を制御するエンジンに対して吸入空気量の減少変化が遅れ、減速時にトルク段差を生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、吸気バルブのバルブタイミングを制御することで吸入空気量を制御する領域から、スロットルバルブの開度を絞って吸入空気量を制御する領域に移行するときに、応答良く吸入空気量(トルク)を減少変化させることができるエンジンの吸入空気量制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明では、吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時点から所定時間だけ、前記スロットルバルブを前記目標吸入空気量相当よりも小さい予め記憶された所定開度に保持させる構成とした。
【0011】
かかる構成によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時点から所定時間は、目標吸入空気量相当の開度ではなく、該開度よりも小さい所定開度に保持させ、前記所定時間経過後、目標吸入空気量相当の開度に復帰させる。
請求項2記載の発明では、前記所定時間を、エンジン回転速度と目標吸入空気量に相当するスロットルバルブの開度との少なくとも一方に応じて決定する構成とした。
かかる構成によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時におけるエンジンの回転速度及び/又は目標吸入空気量相当開度に応じて、移行時からスロットルバルブ開度を減少補正する時間を決定する。
【0012】
請求項3記載の発明では、吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブを前記目標吸入空気量相当よりも小さい予め記憶された所定開度に制御したのち、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当に徐々に近づける構成とした。
【0013】
かかる構成によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、目標吸入空気量相当の開度ではなく、該開度よりも小さい所定開度に制御し、その後、目標吸入空気量相当の開度に徐々に復帰させる。換言すれば、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に開度を最大に減少補正し、その後減少補正量を徐々に小さくして、最終的には減少補正量を0として目標吸入空気量相当の開度に復帰させる。
【0014】
請求項4記載の発明では、前記所定開度を全閉とする構成とした。
かかる構成によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、一時的にスロットルバルブ開度を全閉に制御し、その後、目標吸入空気量相当の開度に戻す。
【0015】
請求項5記載の発明では、吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、エンジン回転速度と目標吸入空気量に相当するスロットルバルブの開度との少なくとも一方に応じて決定される時間だけ、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも減少補正する構成とした。
【0016】
かかる構成によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時におけるエンジンの回転速度及び/又は目標吸入空気量相当開度に応じて、移行時からスロットルバルブ開度を減少補正する時間を決定する。
【0017】
請求項6記載の発明では、前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御すると共に、エンジンへの燃料噴射量を減量補正する構成とした。
【0018】
かかる構成によると、スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御することで、吸入負圧の発達、引いては、吸入空気量の速やかな減少を図るが、同時に燃料噴射量を減量補正して、吸入空気量の減少と空燃比のリーン化とでエンジントルクを小さくする。
【0019】
請求項7記載の発明では、前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御すると共に、エンジンの点火時期を遅角補正する構成とした。
【0020】
かかる構成によると、スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御することで、吸入負圧の発達、引いては、吸入空気量の速やかな減少を図るが、同時に点火時期を遅角補正して、吸入空気量の減少と点火時期の遅角補正とでエンジントルクを小さくする。
【0021】
【発明の効果】
請求項1,3記載の発明によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に吸入負圧の発達を促進させ、吸入空気量が応答良く減少変化するようにし、以って、減速トルクに段差が生じることを防止できるという効果がある。
【0022】
請求項4記載の発明によると、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、スロットルバルブを一時的に全閉に制御することで、吸入負圧の発達を効果的に促進させて、吸入空気量(トルク)を確実に目標に沿って減少変化させることができるという効果がある。
【0023】
請求項2,5記載の発明によると、スロットルバルブ開度を目標吸入空気量相当よりも小さくする制御が過剰に行われることを回避して、目標吸入空気量への追従変化を果たせるという効果がある。
【0024】
請求項6記載の発明によると、吸入空気量の減少応答性を改善しつつ、空燃比をリーン化させることで、トルクの確実な減少変化が得られるという効果がある。
【0025】
請求項7記載の発明によると、吸入空気量の減少応答性を改善しつつ、点火時期を遅角させることで、トルクの確実な減少変化が得られるという効果がある
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は実施の形態におけるエンジンのシステム構成図である。
【0027】
この図1に示すエンジン1には、電磁駆動式の吸気バルブ2及び排気バルブ3が各気筒にそれぞれ装着される。
各気筒の吸気バルブ2上流側の吸気ポート4には燃料噴射弁5が装着され、吸気コレクタ部6には、吸気圧力を検出する吸気圧センサ7と、吸気温度を検出する吸気温度センサ8とが設けられる。
【0028】
吸気コレクタ部6上流の吸気ダクト部9には、モータ等のアクチュエータで開閉駆動される電制式スロットルバルブ11が介装され、該スロットルバルブ11の上流には、エンジン1の吸入空気流量を検出するエアフローメータ12が設けられる。
【0029】
排気マニホールド13の集合部には、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する酸素センサ14が設けられる。排気は、排気マニホールド13,マニホールド触媒15,床下触媒16及びマフラー17を通過して大気中に放出される。
【0030】
エンジン1のクランク軸に軸支させたシグナルプレート18には、単位角度毎の被検出部と、気筒判別用のフェーズ信号を発生させるための被検出部とが設けられ、ポジションセンサ19及びフェーズセンサ20がこれらの被検出部を検出することで単位角度毎のポジション信号とフェーズ信号とを出力する。
【0031】
また、前記電磁駆動式の吸気バルブ2及び排気バルブ3のリフトタイミングを検出するリフトタイミングセンサ21が各吸・排気バルブに備えられる。
更に、各気筒の燃焼室には、それぞれにイグニッションコイル22を備える点火プラグ23が設けられる。
【0032】
また、アクセルペダル24の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルワークユニット25が設けられる。
前記各種センサからの検出信号は、エンジンコントロールユニット25に入力され、エンジンコントロールユニット25はこれらの検出信号に基づく演算処理によって電制式スロットルバルブ11及び燃料噴射弁5を制御する一方、前記電磁駆動式の吸気バルブ2及び排気バルブ3を制御するEMVコントロールユニット26との間で相互通信を行う。
【0033】
前記EMVコントロールユニット26は、EMVドライブユニット27を介して前記電磁駆動式の吸気バルブ2及び排気バルブ3の開閉動作(バルブタイミング)を制御するものであり、具体的には、バルブを閉弁方向に駆動する閉弁用電磁コイル、及び、バルブを開弁方向に駆動する開弁用電磁コイルに対する励磁電流の供給を制御する。
【0034】
前記電磁駆動式の吸気バルブ2及び排気バルブは、図2に示すように、シリンダヘッド上に設けられる非磁性材料製のハウジング121と、吸気バルブ2(又は排気バルブ3、以下吸気バルブ2で代表する) のステム131に一体に設けられてハウジング121内に移動自由に収納されるアーマチュア122と、該アーマチュア122を吸引して吸気バルブ2を閉弁作動させる電磁力を発揮可能なようにアーマチュア122の上面に対向する位置でハウジング121内に固定配置される閉弁用電磁コイル123と、該アーマチュア122を吸引して吸気バルブ2を開弁作動させる電磁力を発揮可能なようにアーマチュア122の下面に対向する位置でハウジング121内に固定配置される開弁用電磁コイル124と、吸気バルブ2の閉弁方向に向けてアーマチュア122を付勢する閉弁側戻しバネ125と、吸気バルブ2の開弁方向に向けてアーマチュア122を付勢する開弁側戻しバネ126と、を備えて構成される。
【0035】
そして、閉弁用電磁コイル123と開弁用電磁コイル124とを共に消磁したときに、吸気バルブ2は全開位置と閉弁位置との間の略中央に位置するように、閉弁側戻しバネ125と開弁側戻しバネ126とのバネ力が設定され、閉弁用電磁コイル123のみを励磁したときに吸気バルブ2は閉弁し、開弁用電磁コイル124のみを励磁したときに吸気バルブ2は開弁するように駆動される。
【0036】
ここで、エンジンコントロールユニット25及びEMVコントロールユニット26は、電磁駆動式吸バルブ2及び電制式スロットルバルブ11を制御することで、エンジンの吸入空気量を制御するよう構成され、この吸入空気量制御の概略を、図3のブロック図に従って説明する。
【0037】
目標空気量演算部51には、アクセル開度及びエンジン回転速度が入力され、これらに基づいて目標吸入空気量(詳しくは、行程容積に対する新気量の標準状態での体積である体積流量比の目標値)を設定する。
【0038】
可変動弁開度演算部52は、前記目標吸入空気量に応じて吸気バルブ3の閉時期IVCを設定し、該閉時期IVCにおいて吸気バルブ3を閉弁させるべく、EMVドライブユニット27に制御信号を出力する。
【0039】
尚、吸気バルブ2の開時期IVCは排気上死点付近に固定される。また、吸気バルブ3の閉時期で吸入空気量を制御する場合には、スロットルバルブで制御する場合に対して空気量制御の応答が速いため、開時期IVC(目標吸入空気量)の変化を遅らせてスロットルバルブで吸入空気量を制御する場合と同等の応答となるようにしてある。
【0040】
また、前記目標吸入空気量は、応答性補正部53を介して第1の目標スロットル開度演算部54に入力されると共に、第2の目標スロットル開度演算部55に入力される。
【0041】
前記第1の目標スロットル開度演算部54は、所定の目標ブースト(目標負圧)とするための目標スロットル開度を前記目標吸入空気量に応じて演算するが、前記応答性補正部53で第1の目標スロットル開度演算部54に入力される目標吸入空気量に遅れを生じさせて、実際の吸入空気量変化の応答に対応して目標スロットル開度が演算されるようにしてある。
【0042】
また、第2の目標スロットル開度演算部55は、吸気バルブ2を最小作動角に制御しても目標吸入空気量に制御できない領域(低負荷・高回転領域)で、スロットルバルブを目標ブースト相当の開度よりも絞って目標吸入空気量を得るための目標スロットル開度を演算する。
【0043】
そして、前記第1の目標スロットル開度演算部54及び第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度は、それぞれ演算切換部56に入力され、該演算切換部56から最終的な目標スロットル開度が出力される。
【0044】
前記演算切換部56には、領域切換え判定部57における領域判定信号、具体的には、吸気バルブ2の開時期IVCの制御で目標吸入空気流量に制御できる領域であるか否かを示す信号が入力される。
【0045】
前記演算切換部56は、基本的には、吸気バルブ2の開時期IVCの制御で目標吸入空気流量に制御できる領域(以下、バルブタイミング制御領域という)では、第1の目標スロットル開度演算部54で演算された目標スロットル開度を最終結果として出力して目標ブーストに制御する一方、吸気バルブ2の開時期IVCの制御では目標吸入空気流量に制御できない領域(以下、スロットルバルブ制御領域という)では、第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度を最終結果として出力する。
【0046】
また、前記演算切換部56は、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、目標スロットル開度を補正設定する機能を有しており、前記演算切換部56の詳細を示す図4のブロックに従って上記補正機能を説明する。
【0047】
図4のブロックにおいて、目標スロットル開度(目標TVO)選択部61には、前記第1の目標スロットル開度演算部54及び第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度がそれぞれ入力されると共に、前記領域切換え判定部57からの領域判定信号が入力され、バルブタイミング制御領域では、第1の目標スロットル開度演算部54で演算された目標スロットル開度を出力し、スロットルバルブ制御領域では、第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度を出力する。
【0048】
切換え時補正値選択部62には、前記目標スロットル開度選択部61から出力された目標スロットル開度と、前記領域判定信号とが入力され、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時において、第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度を、補正値の初期値として選択する。
【0049】
尚、前記補正値の初期値として固定値を与える構成としても良い。
前記切換え時補正値選択部62で選択された補正値の初期値は、一次遅れ処理部63に出力され、前記初期値から徐々に補正値を減じる設定を行う。前記一次遅れ処理部63において補正値を減衰させる時定数は、一次遅れ係数設定部64において、エンジン回転速度と目標スロットル開度とに応じて設定される。
【0050】
前記一次遅れ処理部63から出力される補正値は、切換え時補正値反映切換え部65で、実際に補正に用いるか否かが選択される。
前記切換え時補正値反映切換え部65には、切換え時補正値反映タイマー部66からの補正許可信号が入力され、補正が許可される状態でのみ補正値を出力する。前記切換え時補正値反映切換え部65から出力される補正値によって、目標スロットル開度が減少補正され、該減少補正された目標スロットル開度が最終結果として出力される。
【0051】
前記切換え時補正値反映タイマー部66には、領域判定信号とエンジン回転速度と目標スロットル開度とが入力され、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時から、エンジン回転速度及び目標スロットル開度に応じた補正時間が経過するまでのスロットルバルブ制御領域で、補正値による目標スロットル開度の減少補正を許可する。
【0052】
上記補正により、図5のタイムチャートに示すように、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に一旦スロットル開度TVOが全閉に制御され、その後スロットルバルブ制御領域での本来の目標開度に徐々に近づくことになる。
【0053】
このように、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時にスロットル開度TVOを減少補正すれば、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に吸入負圧の発達を促進させ、吸入空気量を応答良く減少変化させることができ、スロットルバルブでのみ吸入空気量を制御するエンジンと同等の応答性で減速時にトルクを減少させることができる。
【0054】
図6のフローチャートは、前記図4のブロック図に示した、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時におけるスロットル開度TVOの減少補正の様子を示すのものである。
【0055】
図6のフローチャートにおいて、ステップS1では、目標スロットル開度を読み込み、ステップS2では、領域判定信号を読み込む。
ステップS3では、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であるか否かを判別し、移行時でない場合には、ステップS9へジャンプして進み、ステップS1で読み込んだ目標スロットル開度を最終結果としてそのまま出力する。
【0056】
一方、ステップS3で、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であると判定されると、ステップS4へ進んで、エンジン回転速度を読み込み、ステップS5では、エンジン回転速度と目標スロットル開度とから一次遅れ係数を設定する。
【0057】
ステップS6では、前記一次遅れ係数により初期値から時間経過と共に減少される補正値を算出する。
ステップS7では、補正値を反映させる補正時間をエンジン回転速度及び目標スロットル開度に基づいて算出し、ステップS8では、目標スロットル開度の前記補正値による減少補正を行い、ステップS9で前記減少補正した目標スロットル開度を最終結果として出力する。
【0058】
ところで、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時における目標スロットル開度の補正では、瞬間的に目標スロットル開度を全閉にして、その後本来の目標スロットル開度に徐々に近づけるようにしたが、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行から所定時間、目標スロットル開度を全閉に保持し、その後本来の目標スロットル開度にステップ的に戻すようにしても、同様な効果を得ることができる。
【0059】
上記補正を行う場合の演算切換部56の詳細を、図7のブロック図に示す。
図7において、目標スロットル開度(目標TVO)選択部71には、前記第1の目標スロットル開度演算部54及び第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度がそれぞれ入力されると共に、前記領域切換え判定部57からの領域判定信号が入力され、バルブタイミング制御領域では、第1の目標スロットル開度演算部54で演算された目標スロットル開度を出力し、スロットルバルブ制御領域では、第2の目標スロットル開度演算部55で演算された目標スロットル開度を出力する。
【0060】
前記目標スロットル開度選択部71で選択された目標スロットル開度は、切換え時全閉保持時間演算部72に入力される。
前記切換え時全閉保持時間演算部72には、前記目標スロットル開度の他、エンジン回転速度(回転数rpm)、及び、領域判定信号が入力され、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時から、目標スロットル開度及びエンジン回転速度に応じた時間だけ、スロットルバルブの全閉保持信号をスロットルバルブ開度(TVO)出力切換え部73に出力する。
【0061】
前記TVO出力切換え部73では、全閉保持信号が出力される間、目標スロットル開度選択部71で選択された目標スロットル開度に代えて、目標スロットル開度を全閉として出力する。
【0062】
上記補正により、図8のタイムチャートに示すように、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時から所定時間だけスロットル開度TVOが全閉に保持され、その後スロットルバルブ制御領域での本来の目標開度にステップ的に戻ることになる。
【0063】
このように、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時にスロットル開度TVOを全閉に保持すれば、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に吸入負圧の発達を促進させ、吸入空気量を応答良く減少変化させることができ、スロットルバルブでのみ吸入空気量を制御するエンジンと同等の応答性で減速時にトルクを減少させることができる。
【0064】
図9のフローチャートは、前記図7のブロック図に示した、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時におけるスロットル開度TVOの減少補正の様子を示すのものである。
【0065】
図9のフローチャートにおいて、ステップS11では、目標スロットル開度を読み込み、ステップS12では、領域判定信号を読み込む。
ステップS13では、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であるか否かを判別し、移行時でない場合には、ステップS17へジャンプして進み、ステップS11で読み込んだ目標スロットル開度を最終結果としてそのまま出力する。
【0066】
一方、ステップS13で、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であると判定されると、ステップS14へ進んで、エンジン回転速度を読み込み、ステップS15では、エンジン回転速度と目標スロットル開度とからスロットルバルブを全閉に保持する時間を決定する。
【0067】
そして、ステップS16では、ステップS15で決定された時間だけ、目標スロットル開度を全閉に補正し、ステップS17で全閉である目標スロットル開度を出力させる。
【0068】
ところで、上記のように、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時にスロットル開度TVOを減少補正しても、充分なトルク低下を実現できない場合には、同時に点火時期の遅角補正及び/又は燃料噴射量の減量補正を行うようにすると良い。
【0069】
図10のブロック図は、点火時期の遅角補正を示すものである。
図において、余剰空気量演算部81は、エンジン回転速度と目標吸入空気量とから、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時における余剰な吸入空気量を算出する。
【0070】
前記余剰吸入空気量の情報は、トルク補正量演算部82に出力され、ここで、余剰吸入空気量がトルクの減少補正要求(トルク補正量)に変換される。
前記トルク補正量は、トルク補正分点火時期補正部83に出力され、基本点火時期演算部84で演算された点火時期が、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時にトルク補正量に対応して遅角補正される。
【0071】
図11のブロック図は、前記トルク補正分点火時期補正部83の詳細を示すものであり、点火時期補正量演算部831には、トルク補正量とエンジン回転速度が入力され、トルク補正量に見合った点火時期補正量(遅角補正量)が演算される。
【0072】
切換え時補正量反映タイマー832は、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時からエンジン回転速度及び目標スロットル開度に応じた時間だけ、前記点火時期補正量(遅角補正量)を出力させ、前記基本点火時期を前記点火時期補正量に従って遅角補正させる。
【0073】
図12のフローチャートは、上記点火時期の遅角補正制御を示すものである。ステップS21では、基本点火時期を読み込み、ステップS22では、領域判定信号を読み込む。
【0074】
ステップS23では、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であるか否かを判別し、移行時でない場合には、ステップS29へジャンプして進み、ステップS21で読み込んだ基本点火時期を最終結果としてそのまま出力する。
【0075】
一方、ステップS23でバルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であると判定されると、ステップS24へ進んで、エンジン回転速度を読み込み、ステップS25では、目標吸入空気量を読み込む。
【0076】
ステップS26では、前記エンジン回転速度と目標吸入空気量とから余剰空気量を算出し、ステップS27ではこの余剰空気量をトルク補正量に変換する。
ステップS28では、前記トルク補正量を点火時期補正量に変換し、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時から所定時間、前記点火時期補正量で基本点火時期を遅角補正する。
【0077】
図13のブロック図は、燃料噴射量の減量補正(空燃比のリーン化補正)を示すものである。
図において、余剰空気量演算部91は、エンジン回転速度と目標吸入空気量とから、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時における余剰な吸入空気量を算出する。
【0078】
前記余剰吸入空気量の情報は、トルク補正量演算部92に出力され、ここで、余剰吸入空気量がトルクの減少補正要求(トルク補正量)に変換される。
前記トルク補正量は、トルク補正分点火空燃比補正部93に出力され、基本空燃比演算部94で演算された基本空燃比が、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時にトルク補正量に対応してリーン化され、該空燃比に応じて燃料噴射量を決定させることで、燃料噴射量を減量補正する。
【0079】
図14のブロック図は、前記トルク補正分空燃比補正部93の詳細を示すものであり、空燃比補正量演算部931には、トルク補正量とエンジン回転速度が入力され、トルク補正量に見合った空燃比補正量(空燃比リーン化量)が演算される。
【0080】
切換え時補正量反映タイマー932は、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時からエンジン回転速度及び目標スロットル開度に応じた時間だけ、前記空燃比補正量(空燃比リーン化量)を出力させ、前記基本空燃比を前記点火時期補正量に従ってリーン化させ、以って、燃料噴射量を減量補正させる。
【0081】
図15のフローチャートは、上記空燃比のリーン化補正制御(燃料噴射量の減量補正制御)を示すものである。
ステップS31では、基本空燃比を読み込み、ステップS32では、領域判定信号を読み込む。
【0082】
ステップS33では、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であるか否かを判別し、移行時でない場合には、ステップS39へジャンプして進み、ステップS31で読み込んだ基本空燃比を最終結果としてそのまま出力する。
【0083】
一方、ステップS33でバルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時であると判定されると、ステップS34へ進んで、エンジン回転速度を読み込み、ステップS35では、目標吸入空気量を読み込む。
【0084】
ステップS36では、前記エンジン回転速度と目標吸入空気量とから余剰空気量を算出し、ステップS37ではこの余剰空気量をトルク補正量に変換する。
ステップS38では、前記トルク補正量を空燃比補正量に変換し、バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時から所定時間、前記空燃比補正量で基本空燃比をリーン化補正する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるエンジンのシステム図。
【図2】電磁式動弁機構の詳細を示す断面図。
【図3】吸入空気量の制御ブロック図。
【図4】領域移行時におけるスロットル開度補正の第1実施形態を示すブロック図。
【図5】上記第1実施形態におけるスロットル開度特性を示すタイムチャート。
【図6】上記第1実施形態におけるスロットル開度補正制御を示すフローチャート。
【図7】領域移行時におけるスロットル開度補正の第2実施形態を示すブロック図。
【図8】上記第2実施形態におけるスロットル開度特性を示すタイムチャート。
【図9】上記第2実施形態におけるスロットル開度補正制御を示すフローチャート。
【図10】領域移行時における点火時期補正を示すブロック図。
【図11】点火時期補正の詳細を示すブロック図。
【図12】領域移行時における点火時期補正を示すフローチャート。
【図13】領域移行時における空燃比(燃料噴射量)補正を示すブロック図。
【図14】空燃比(燃料噴射量)補正の詳細を示すブロック図。
【図15】領域移行時における空燃比(燃料噴射量)補正を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン
2…電磁駆動式吸気バルブ
3…電磁駆動式排気バルブ
5…燃料噴射弁
11…電制式スロットルバルブ
23…点火プラグ
25…エンジンコントロールユニット
26…EMVコントロールユニット
Claims (7)
- 吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、
前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時点から所定時間だけ、前記スロットルバルブを前記目標吸入空気量相当よりも小さい予め記憶された所定開度に保持させることを特徴とするエンジンの吸入空気量制御装置。 - 前記所定時間を、エンジン回転速度と目標吸入空気量に相当するスロットルバルブの開度との少なくとも一方に応じて決定することを特徴とする請求項1記載のエンジンの吸入空気量制御装置。
- 吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、
前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブを前記目標吸入空気量相当よりも小さい予め記憶された所定開度に制御したのち、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当に徐々に近づけることを特徴とするエンジンの吸入空気量制御装置。 - 前記所定開度を全閉とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの吸入空気量制御装置。
- 吸気バルブのバルブタイミングを制御することでエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するバルブタイミング制御領域と、スロットルバルブの開度を絞ってエンジンの吸入空気量を目標吸入空気量に制御するスロットルバルブ制御領域とに分けて吸入空気量を制御する構成のエンジンの吸入空気量制御装置において、
前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、エンジン回転速度と目標吸入空気量に相当するスロットルバルブの開度との少なくとも一方に応じて決定される時間だけ、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも減少補正することを特徴とするエンジンの吸入空気量制御装置。 - 前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御すると共に、エンジンへの燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のエンジンの吸入空気量制御装置。
- 前記バルブタイミング制御領域からスロットルバルブ制御領域への移行時に、前記スロットルバルブの開度を前記目標吸入空気量相当よりも小さい開度に制御すると共に、エンジンの点火時期を遅角補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のエンジンの吸入空気量制御装置。
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