JP3872617B2 - 過給機付エンジンの吸入空気量制御装置 - Google Patents

過給機付エンジンの吸入空気量制御装置 Download PDF

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スロットル弁開度を電子制御すると共に、スロットル上流に過給機を備えた内燃機関の吸入空気量制御装置に関し、詳細には過渡時の吸入空気量補正制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スロットル弁開度を電子制御するスロットル制御装置を備えたエンジンの吸入空気量の制御装置として、例えば特開昭62−110536号等に示されるようなものがある。
【0003】
このものでは、アクセル開度とエンジン回転速度等に基づいてエンジンの目標トルクを算出し、該目標トルクとエンジン回転速度とに基づいて目標吸入空気量を得るべく目標スロットル弁開度を算出してスロットル弁を制御している。
【0004】
ところで、排気ターボ過給機等の過給機を備えたエンジンで前記スロットル弁の電子制御を行う場合、運転条件の変化に応じて過給圧を変化させる過渡時には、アクセル開度やエンジン回転速度等の運転条件によって定まる平衡時の過給圧に所望の速度で達するようにスロットル弁開度を制御することで、加速フィーリングの向上など運転性能を高めることが可能である。
【0005】
特に、成層燃焼と均質燃焼とを運転条件に応じて切り換えて使用するエンジンでは、各燃焼に対して同一のトルクを発生する過給圧が異なるため、燃焼切換時に応答性よく過給圧を切り換え、また、成層燃焼時の過渡特性を均質燃焼時と同様の特性とするためにも、過渡時の吸入空気量を補正して過給圧過渡特性を補正するようにスロットル弁開度制御を行うことが試みられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンの運転条件によっては、前記過渡時の吸入空気量補正制御を行なうことが、好ましくない場合があることが判明した。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、過渡時の吸入空気量補正制御を、該補正制御を行なうことが好ましいときのみ、実行することを第1の目的とする。
【0008】
また、前記吸入空気量の補正制御において、算出される吸入空気量の補正量に段差が発生するようなことがあると(例えば、吸入空気量の補正制御を所定条件で禁止する場合の、補正の許可、禁止の切換時などで段差を発生する) トルクの段差を生じてしまう。
【0009】
そこで、吸入空気量の補正量算出値に段差が発生するようなことがあっても、トルクの段差を抑制できるようにすることを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、図1(A) に示すように、
吸入空気量制御用のスロットル弁の開度を目標値に制御するスロットル制御装置と、該スロットル弁上流の過給機と、を備えた過給機付エンジンにおいて、
過渡時の過給圧応答遅れを補償するための吸入空気量補正制御を前記スロットル制御装置によって行う吸入空気量補正制御手段と、
前記吸入空気量補正制御の実行により不利益を生じる所定の運転条件を検出する所定運転条件検出手段と、
前記所定運転条件検出手段によって検出された所定の運転条件で前記吸入空気量補正制御を禁止する補正制御禁止手段と、
を含んで構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る発明によると、
過渡時の過給圧応答遅れを補償するための吸入空気量補正制御を実行することにより不利益を生じる所定の運転条件が検出され、該所定の運転条件では吸入空気量補正制御が禁止される。
【0012】
このようにして、過渡時の吸入空気量補正制御が、該補正制御を行なうことが好ましいときのみ実行され、所望の過給圧過渡特性による良好な過渡運転性が得られる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、
前記所定の運転条件は、スタートスイッチのON、OFFを切り換えてから所定時間の間、スロットルを最小開度としたときの吸入空気量を学習しているとき、エンジンの非回転時、イグニッションスイッチのOFF時、冷却水温度が所定範囲外の極低温時又は極高温時、の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明によると、
スタートスイッチのON、OFFを切り換えてから所定時間の間は、エンジンの状態が不安定で過給圧が収束せず、平衡状態とならないため、過渡時の吸入空気量補正制御を行っても良好な過給圧過渡特性が得られない。
【0015】
また、スロットルを最小開度としたときの吸入空気量を学習しているときに、過渡時の吸入空気量補正制御を行うと、該学習に影響を及ぼし良好な学習が行えなくなる。
【0016】
エンジンの非回転時、イグニッションスイッチのOFF時も過給圧が、平衡状態とならず吸入空気量補正制御を実行する意味が無く、実行しても演算負荷が増すだけである。
【0017】
冷却水温度が所定範囲外の極低温時は、エンジンの挙動が不安定であり、このような状態で加速したときに、過給圧過渡補正を行っても意味を成さない。一方、冷却水温度が所定範囲外の極高温時は、エンジン制御用のコントロールユニットが高温になって誤作動を起こす惧れがあり、このような状態で過給圧過渡補正を行うと、意図しない加速を生じる可能性がある。
【0018】
このように、上記の各条件では、過渡時の吸入空気量補正制御を行うと却って不都合を生じるので、該吸入空気量補正制御を禁止する。
また、請求項3に係る発明は、図1(B) に示すように、
吸入空気量制御用のスロットル弁の開度を目標値に制御するスロットル制御装置と、該スロットル弁上流の過給機と、を備えた過給機付エンジンにおいて、
過渡時の過給圧応答遅れを補償するための吸入空気量補正制御を前記スロットル制御装置によって行う吸入空気量補正制御手段と、
前記吸入空気量補正制御において算出される吸入空気量の補正量に段差を生じたときに、該補正量が徐々に切り換えられるように修正して設定する補正量修正手段と、
を含んで構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明によると、
吸入空気量補正制御において、算出される吸入空気量の補正量に段差が発生したときには、補正量修正手段により、実際に使用する吸入空気量の補正量を徐々に切り換えられるように修正して設定することにより、トルク段差の発生を解消できる。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、
前記補正量修正手段は、前記吸入空気量補正制御の許可、禁止の切換時に、吸入空気量の補正量を徐々に切り換えることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明によると、
吸入空気量補正制御の許可、禁止の切換前後で、許可時に算出される吸入空気量の補正量と禁止時の補正無しとの間で補正量に段差が発生する。そこで、前記許可、禁止の切換時に、吸入空気量の補正量を徐々に切り換えられるように修正して設定することにより、切換前後のトルク段差の発生を解消できる。
【0022】
また、請求項5に係る発明は、
前記吸入空気量の補正量を徐々に切り換えるときの切換速度を、エンジン運転状態に応じて可変に設定することを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る発明によると、
吸入空気量補正制御の許可、禁止の切換に応じた前記吸入空気量の補正量の切換速度を減少するとトルク変化は緩やかになるが応答性は低下し、切換速度を増大すると応答性は高められるが、トルク変化は速められショックを感じる。そこで、エンジン運転状態、例えばエンジン回転速度と負荷等に応じて可変に設定することで、エンジン運転状態毎にトルク変化と応答性とをバランスさせた所望の過渡特性を得ることができる。
【0024】
また、請求項6に係る発明は、
前記吸入空気量の補正量を徐々に切り換えるときの切換速度を、エンジン運転状態に応じて可変に設定することを特徴とする。
【0025】
前記のように切換速度によるトルク変化と応答性の傾向があるので、切換前後の吸入空気量補正量の差に基づいて切換速度を設定することで、トルク変化と応答性をバランスさせた所望の過渡特性を得ることができる。
【0026】
また、請求項7に係る発明は、
前記吸入空気量補正制御における吸入空気量減少方向の補正量に下限値を設定したことを特徴とする。
【0027】
請求項7に係る発明によると、
吸入空気量補正制御により、吸入空気量が減少方向に過剰に補正されると、エンジンに大きな負荷が加わる可能性がある。そこで、吸入空気量減少方向の補正量に下限値を設定することにより、エンジンに過大な負荷が加わることを防止する。
【0028】
また、請求項8に係る発明は、
前記吸入空気量補正制御手段は、スロットル弁上流の目標過給圧を設定し、該目標過給圧と実際の過給圧の検出値又は推定値との相違に基づいて目標吸入空気量を補正することにより、前記スロットル制御装置によるスロットル弁開度制御を介して、過給圧の過渡特性を補正制御することを特徴とする。
【0029】
請求項8に係る発明によると、
目標過給圧と過給圧の推定値との相違に基づいて、スロットル弁開度制御を介して吸入空気量が補正されることにより、過給圧の遅れを適度に抑制した所望の過給圧過渡特性を得るような制御を行え、以って、加減速時に要求に応じたトルク応答を得たり、また、均質燃焼と成層燃焼との切り換え時のトルク変化を抑制したりすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施形態のシステム構成を示す。
【0031】
アクセル開度センサ1は、ドライバによって踏み込まれたアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出する。
クランク角センサ2は、単位クランク角毎のポジション信号及び気筒行程位相差毎の基準信号を発生し、前記ポジション信号の単位時間当りの発生数を計測することにより、あるいは前記基準信号発生周期を計測することにより、エンジン回転速度を検出できる。
【0032】
エアフローメータ3は、エンジン4への(単位時間当りの)吸入空気量を検出する。
水温センサ5は、エンジンの冷却水温度を検出する。
【0033】
空燃比センサ6は、排気中の酸素成分等からエンジンに供給される混合気の空燃比を検出する。
エンジン4には、燃料噴射信号によって駆動し、燃料を直接燃焼室内に噴射供給する燃料噴射弁7、燃焼室に装着されて点火を行う点火栓8が設けられる。該燃焼室内への直接噴射方式により、成層燃焼によるリーン化が可能となり、空燃比(当量比)を広範囲に可変制御することができるが、水温や負荷条件その他に応じて均質燃焼に切り換えて運転される。
【0034】
また、エンジン4の吸気通路9には、スロットル弁10が介装され、該スロットル弁10の開度をステップモータ等により電子制御するスロットル制御装置11が備えられている。また、前記スロットル弁10の開度を検出するスロットルセンサ21が装着されている。更に、エンジン4の排気通路12にタービン部13Aを介在させ、吸気通路9にコンプレッサ部13Bを介在させた可変容量型の排気ターボ過給機13が搭載されている。該過給機13は、タービン部13Aのタービン入口面積を可変に絞る可動ベーンを備えており、該可動ベーンの絞り量をアクチュエータによって制御することにより、過給圧を増減制御できるようになっている。
【0035】
前記各種センサ類からの検出信号は、コントロールユニット14へ入力され、該コントロールユニット14は、前記センサ類からの信号に基づいて検出される運転状態に応じて前記スロットル制御装置11を介してスロットル弁10の開度を制御し、前記燃料噴射弁7を駆動して燃料噴射量(燃料供給量)を制御し、点火時期を設定して該点火時期で前記点火栓8を点火させる制御を行い、また、前記過給機13の過給圧を制御する。
【0036】
このような構成を有する過給機付エンジンのスロットル弁上流の圧力(過給圧)状態に応じたスロットル弁の開度制御を、図3に示したブロック図を参照して説明する。
【0037】
まず、目標吸入空気量を以下のように算出する。
前記アクセル開度センサ1により検出されたアクセル開度AP0に対応するスロットル弁の開口面積AAP0をマップからの検索等により算出する一方、アイドル回転速度制御(ISC)により算出した空気量QISCとスロットル弁全閉時の漏れ空気量mQLEAKとを加算した値に空気量/スロットル開口面積換算係数mLPMTQAAXを乗じてISCに対応するスロットル開口面積AQSISCを算出し、前記AAP0とAQSISCとを加算して目標スロットル開口面積TTAAP0を算出する(次式参照)。
【0038】
TTAAP0=AAP0+(QISC+mQLEAK)×mQLEAK
=AAP0+AQSISC
前記目標スロットル開口面積TTAAP0をエンジン回転速度NE,排気量(総シリンダ容積) MVOLで順次除算して体積効率指標値TGADNVを算出し、該TGADNVに基づいて目標基本体積流量比TQH0STを算出する。
【0039】
TGADNV=TTAAPONE/MVOL
TGADNV→TGH0ST
該目標基本体積流量比TQH0STは、スロットル弁全開時の吸入空気量に対する吸入空気量の比率として求められ、TGADNVが大きいときほど大きくなって1に近づく特性を有している。
【0040】
前記目標基本体積流量比TQH0STにスロットル弁全開時の基準当量比(理論空燃比相当値=1)相当の目標基本吸入空気量TTPSTを算出する。即ち、均質ストイキ燃焼(理論空燃比での均質燃焼)でのエンジン回転速度NEと目標トルクとに応じた過給圧PCHSを発生している状態でのスロットル弁全開時のシリンダ吸入空気量を、過給無しの標準大気圧Pa(=760[mmHg])状態でのスロットル弁全開時のシリンダ吸入空気量TP100に、前記ストイキ時の平衡過給圧PCHSと大気圧Paとの比(PCHS/Pa)を乗算することによって算出し、該算出したシリンダ吸入空気量を、前記目標基本体積流量比TQH0STに乗算することによって目標基本吸入空気量TTPSTを算出する(次式参照)。
【0041】
TTPST=TQH0ST×TP100×PHCS/Pa
また、エンジン運転状態に基づいて目標当量比TFBYA00を可変に制御するので、前記基準当量比に対応した目標基本吸入空気量TTPSTを目標当量比TFBYA00で除算し、さらに、当量比によって変化する燃焼効率に基づいて設定された燃焼効率補正係数ITAFを乗じることにより、目標当量比相当の目標吸入空気量TTP0を算出する(次式参照)。ここで、前記燃焼効率ITAFは、当量比が小さいリーン燃焼時ほど燃焼効率が高く、燃料量が少なくて済むので、これに伴い空気量も減少させるように小さい値(<1)となるように設定される。
【0042】
TTP0=TTPST/TFBYA00×ITAF
このようにして設定された目標吸入空気量TTPに対し、過渡時の過給圧変化の遅れを抑制して、燃焼切換時のトルク段差の発生を回避しつつ所望の過給圧過渡特性が得られるように補正するための過渡補正係数ITAPDを算出する。
【0043】
まず、基本過渡補正係数ITAPD0を算出する。以下に、前記基本過渡補正係数ITAPD0算出の詳細を、図4に示したブロック図に基づいて説明する。まず、平衡過給圧PCHに、時系列の加重平均演算を行って所望の加減速立ち上がり性能を得るための遅れ処理を施して目標過給圧PCTRGとする(次式参照)。
【0044】
PCTRG=PCH×τPC1+PCTRG(old)×(1−τPC1)
ここで、平衡過給圧PCHは、同一運転状態に維持されたときに平衡する過給圧であり、エンジン負荷に相当する前記目標基本体積流量比TQH0STとエンジン回転速度NEとに基づいてマップからの検索等により求めるが、均質ストイキ燃焼時(PCHS)、成層リーン燃焼時(PCHLH)、均質リーン燃焼時(PCHLS)とで別個に算出する。また、重み係数τPCも目標基本体積流量比TQH0STとに基づいてマップからの検索等により求める。そして、フラグFTFMCHの値に基づいてこれら燃焼状態に応じた各遅れ処理値を選択する。
【0045】
一方、前記目標過給圧PCTRGの変化に伴う実際の過給圧の変化を推定し、推定過給圧PCESTを演算する。該推定過給圧PCESTも各燃焼毎の平衡過給圧PCHに、次式のように遅れ処理を施して算出するが、目標過給圧PCTRGに比較して遅れを持たせるように重み係数τPC2を前記τPC1より十分小さい値に設定している。
【0046】
PCEST=PCH×τPC2+PCEST(old)×(1−τPC2)
そして、前記目標過給圧PCTRGを前記推定過給圧PCESTで除算することにより、前記目標吸入空気量TTP0の基本過渡補正係数ITAPD0を算出する。
【0047】
次に、過給圧過渡補正の許可、禁止条件を判別するとともに、該判別結果が切り換えられたときの補正切換制御について、図5のブロック図を参照しつつ説明する。 まず、エンジン運転状態に基づいて、以下の補正禁止条件に該当するか否かを判別し、いずれの条件にも該当しないときには、エンジン運転状態に関しては禁止すべき状態ではないと判断して出力信号FTED0Kを「1」とし、いずれかの条件に該当する場合は、補正を禁止すべきと判断して出力信号FTED0Kを「0」とする。
【0048】
(1)スタートスイッチのON、OFFを切り換えてから所定時間DLTEST以内 のとき。
(2)スロットル弁を最小開度としたときの吸入空気量を学習しているとき。
【0049】
(3)エンジンの非回転時。
(4)イグニッションスイッチのOFF時。
(5)冷却水温度TWNが所定範囲外の高温時(TWN>TETWH) 又は低温時( TWN<TETWL)。
【0050】
即ち、(1)のスタートスイッチのON、OFFを切り換えてから所定時間以内のときは、エンジンの状態が不安定で過給圧が収束せず、平衡状態とならないため、過渡時の吸入空気量補正制御を行っても良好な過給圧過渡特性が得られないので、過給圧過渡補正を禁止する。
【0051】
また、(2)のスロットルを最小開度としたときの吸入空気量を学習しているときは、該吸入空気量の学習時に、過渡時の吸入空気量補正制御を行うと、該学習に影響を及ぼし良好な学習が行えなくなるので、過給圧過渡補正を禁止する。
【0052】
また、(3)のエンジンの非回転時、(4)のイグニッションスイッチのOFF時も過給圧が、平衡状態とならず吸入空気量補正制御を実行する意味が無く、実行しても演算負荷が増すだけであるので、過給圧過渡補正を禁止する。
【0053】
また、(5)の冷却水温度が所定範囲外の極低温時は、エンジンの挙動が不安定であり、このような状態で加速したときに、過給圧過渡補正を行っても意味を成さない。一方、冷却水温度が所定範囲外の極高温時は、エンジン制御用のコントロールユニットが高温になって誤作動を起こす惧れがあり、このような状態で過給圧過渡補正を行うと、意図しない加速を生じる可能性がある。そこでこれらの温度条件では、過給圧過渡補正を禁止する。
【0054】
一方、前記エンジン運転状態とは別に、エンジンの機械系部品等の故障診断結果に応じて故障有りとの診断時には「1」、故障無しとの診断時には「0」とされる出力信号FTETDFSが、否定回路21によりレベルを反転された後、前記エンジン運転状態に基づく出力信号FTETDOKと共に、論理積回路22に入力されて論理積を採られる。
【0055】
したがって、前記論理積回路22の出力は、前記エンジン運転条件に基づいて過給圧補正が許可され、かつ、故障診断結果も過給圧補正を許可するときに、過給圧補正を許可すべく、出力を「1」とし、少なくとも一方の結果が過給圧補正を許可していないときには、出力を「0」とする。
【0056】
そして、前記論理積回路22の出力が「1」つまり過給圧補正を許可する状態が継続して維持されている場合には、第1スイッチ回路23、第2スイッチ回路24が共に図示の「1」側に切り換えられ、許可・禁止切換過渡時用の第1演算回路25において遅延回路26により設定される所定周期毎にDRITPDずつ加算処理される値RITAPDDが、制限回路27により上限値の100%に制限して設定される。
【0057】
この状態で、前記基本過渡補正係数ITAPD0は、第3スイッチ回路28が前記故障診断結果の出力信号FTEDFSの値「0」に応じて図示の「0」側に切り換えられるので、そのまま、前記100%に設定された値RITADDと共に、第3演算回路29に入力される。
【0058】
前記第3演算回路29では、下記の演算式により最終的に出力される過渡補正係数ITADDを算出する。
ITAPD=[RITAPDD×ITAPD0+(100%−RITAPDD)]/100%・・・(1)
ここで、RITAPDD=100%であるので、ITAPD=ITAPD0となり、
過給圧補正許可が継続しているときは、基本過渡補正係数ITAPD0がそのまま過渡補正係数ITAPDとして出力されて、後述するように過給圧過渡補正が実行されることとなる。
【0059】
一方、前記論理積回路22の出力が「0」、つまり過給圧補正を禁止する状態が継続して維持されている場合には、第1スイッチ回路23、第2スイッチ回路24が共に図示の「0」側に切り換えられ、許可・禁止切換過渡時用の第2演算回路30において遅延回路26により設定される所定周期毎にDRITPDずつ減算処理される値RITADDが、制限回路27により下限値の0%に制限して設定される。
【0060】
この状態で、前記第3演算回路29における前記演算式(1)でRITADD=0であるため、過渡補正係数ITADD=1となって出力され、過給圧過渡補正の禁止が維持される。
【0061】
次に、過給圧過渡補正の許可・禁止の切換直後の制御について説明する。まず、禁止から許可に切り換えられる場合について説明する。許可への切り換えにより、前記論理積回路22の出力が「0」から「1」に切り換わると、第1スイッチ回路23、第2スイッチ回路24の「1」側への切り換えにより、第1演算回路25において切り換え前に0%に維持されていた値RITADDが、遅延回路26により設定される所定周期毎にDRITPDずつ加算処理され、制限回路27により上限値の100%に制限されるまで加算処理が継続される。
【0062】
このように0%から100%まで漸増する値DRITPDが、第3演算回路29に入力され、一方、過給圧補正の許可により第3スイッチ回路28が「0」側に切り換えられるので、基本過渡補正係数ITAPD0が、そのまま第3演算回路29に入力される。
【0063】
これにより、前記第3演算回路29での前記(1)式による演算において、過渡補正係数ITAPDは、補正禁止状態の1から基本過渡補正係数ITAPD0へと徐々に変化し、その後は基本過渡補正係数ITAPD0がそのまま出力される。
【0064】
図6は、加速時(例えば成層燃焼での緩加速時)の途中で、過給圧過渡補正が禁止から許可に切り換えられたときの変化の様子を示す。まず、加速操作によって平衡過給圧がステップ的に変化し、これに遅れ処理を施した目標過給圧と推定過給圧とに基づいて基本過渡補正係数ITAPD0が算出されるが、過給圧過渡補正が禁止されているとき(FTETDOK=0)は、過渡補正係数ITAPDは1に維持され、過給圧過渡補正は実行されない。
【0065】
そして、過給圧過渡補正が許可に切り換えられると(FTETDOK=0)、前記の値RITAPDDが0%から100%に漸増し、これに伴い、過渡補正係数ITAPDは、禁止時の値1から基本過渡補正係数ITAPD0へと徐々に変化し、その後は基本過渡補正係数ITAPD0をそのまま出力する。
【0066】
このように、過渡補正係数ITAPDによる過給圧過渡補正が徐々に切り換えられるので、トルク段差の発生を抑制しつつ、応答性よく平衡過給圧に収束させることができる。
【0067】
なお、減速時などに、吸入空気量を減少補正するため基本過渡補正係数ITAPD0が1より小の値に設定されている途中で、過給圧過渡補正が禁止から許可に切り換えられた場合も同様であり、過渡補正係数ITAPDは、禁止時の値1から1より小さい基本過渡補正係数ITAPD0へと徐々に切換制御される。
【0068】
次に、過給圧過渡補正が許可から禁止になる場合について説明する。禁止への切り換えにより、前記論理積回路22の出力が「1」から「0」に切り換わると、第1スイッチ回路23、第2スイッチ回路24の「0」側への切り換えにより、第2演算回路29において切り換え前に100%に維持されていた値RITADDが、遅延回路26により設定される所定周期毎にDRITPDずつ減算処理され、制限回路27により下限値の0%に制限されるまで減算処理が継続される。このように100%から0%まで漸減する値DRITPDが、第3演算回路29に入力される。
【0069】
一方、過給圧補正の禁止がエンジン運転状態に基づいたものであり、故障を原因としていないときは、信号FTETDFSの値が「0」であって、第3スイッチ回路27により、基本過渡補正係数ITAPD0がそのまま第3演算回路29に入力される。
【0070】
これにより、前記第3演算回路29での前記(1)式による演算において、過渡補正係数ITAPDは、基本過渡補正係数ITAPD0から補正禁止状態の1へと徐々に変化し、その後は1に維持されて出力される。
【0071】
したがって、この場合も、過給圧過渡補正係数ITAPDが徐々に切り換えられながら補正が禁止されることとなるため、トルク段差によるショックの発生を防止できる。
【0072】
これに対し、過給圧補正の禁止が部品等の故障発生を原因とする場合は、出力信号FTEDFSの値「1」に応じて第3スイッチ回路28が図示の「1」側に切り換えられ、この場合、前記基本過渡補正係数ITAPD0と補正無し状態の値である100%とのうち小さいほうの値がセレクトロー回路31によって選択され、この選択された値が前記第3演算回路29に入力される。即ち、過給圧を減少する方向の補正は許容するが(但し、後述するように吸入空気量に対して下限値を設定する)、過給圧を増大する方向の補正は予測しない加速を生じるなど好ましくない事態を招く可能性があるので、補正を禁止するようにITAPD0=100%に設定する。
【0073】
そして、前記(1)式でITAPD0=100%のときは、ITAPD=1となり、吸入空気量増大方向の補正は、故障診断結果がNGになると同時に禁止される。エンジン運転状態による禁止条件に比較して禁止に緊急性を要するからである。
【0074】
また、ITAPD0<100%のとき、つまり吸入空気量を減少方向に補正するときは、該ITAPD0がそのまま第3演算回路29に入力されるので、前記エンジン運転状態に基づく禁止時と同様に、過給圧過渡補正が徐々に禁止されることとなる。
【0075】
以上のようにして設定された過渡補正係数ITAPDを用いて、吸入空気量の補正制御による過給圧補正制御が実行される。
即ち、図3に戻って、前記過渡補正係数ITAPDを前記目標吸入空気量TTP0に乗じて仮想目標吸入空気量TTP0PSを算出する。
【0076】
TTP0PS=TTP0×ITAPD
次に、前記全開時のシリンダ吸入空気量TP100に下限流量補正係数QH0BCVを乗じて算出したシリンダ吸入空気量の下限値と、前記仮想目標吸入空気量TTP0PSとのうち大きいほうの値が選択され、TTPPTとして出力される。
【0077】
即ち、前記過渡補正係数ITAPDにより仮想目標吸入空気量TTP0PSが小さすぎる値に設定されてしまうと、スロットル弁が閉じ側に補正され過ぎることにより、シリンダ内の負圧が過大となって、エンジンに大きな負荷を与えてしまうことになる。そこで、仮想目標吸入空気量TTPPSを下限値以上の値となるように制限することにより、このような事態の発生を防止できる。
【0078】
この下限値以上に規制して設定された仮想目標吸入空気量TTPPSを目標値としてスロットル弁開度を制御する。
即ち、前記仮想目標吸入空気量TTPPSを、前記全開時のシリンダ吸入空気量TP100に、目標過給圧PCTRGと標準大気圧Paとの比PCTRG/Paを乗じた値つまり該目標過給圧PCTRGでのスロットル弁全開時のシリンダ吸入空気量で除算することにより、該目標過給圧PCTRG状態での体積流量比TGQH0を算出し、該体積流量比TGQH0に基づいてマップからの検索等により、体積効率相当値TDADNVを算出する。この値TDADNVにエンジン回転速度NE,排気量MVOLを順次乗じて、目標スロットル弁開口面積TAAIRを算出し、該目標スロットル弁開口面積TAAIRを目標スロットル弁開度TDTV0に変換し、該目標スロットル弁開度TDTV0となるようにスロットル弁の開度を制御する(次式参照)。
【0079】
TGQH0=TTPPS×TP100×PCH/Pa
TGQH0→TDADNV
TAAIR=TDADNV×NE×MVOL
TAAIR→TDTV0
このようにすれば、過渡補正係数ITAPDを用いて目標吸入空気量TTP0を補正した仮想目標吸入空気量TTPPSが得られるようにスロットル弁開度が制御されることにより、過給圧の遅れを適度に抑制した所望の過給圧過渡特性が得られ、均質燃焼と成層燃焼との切り換え時のトルク変化が抑制される。
【0080】
そして、前記所定のエンジン運転条件のとき及び部品故障発生時には、過給圧過渡補正を禁止することにより、予測しない加減速の発生や、単なる演算負荷の増大などを防止できる。
【0081】
また、部品故障発生による過給圧補正禁止の場合を除き、過給圧過渡補正の許可・禁止の切換を徐々に行う構成としたため、トルク段差の発生が抑制されショックを防止できる。
【0082】
また、前記過給圧過渡補正の許可・禁止の切換時における過渡補正係数ITAPDを徐々に切り換えるときの切換速度を、切換時の状態に応じて適度な速度となるように可変に設定する構成としてもよく、トルク変化と応答性とをバランスさせた所望の過渡特性を得ることができる。そのため、図5に点線で示すように、該切換時のエンジン運転状態例えばエンジン回転速度と負荷(アクセル開度)とに基づいて前記RITAAPDDの周期毎の増減補正量であるDRITPDを可変に設定したり、図5に一点鎖線で示すように、切換前後の基本過渡補正係数ITAPD0の差に応じてDRITPDを可変に設定するような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成・機能を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態のシステム構成を示す図。
【図3】同上実施形態の機能構成を示すブロック図。
【図4】同上実施形態の基本過渡補正係数演算部分の機能構成を示すブロック図。
【図5】同上実施形態の過渡補正係数演算部分の機能構成を示すブロック図。
【図6】同上実施形態の加速時に過給圧補正が禁止から許可に切り換えられたときの様子を示す図。
【符号の説明】
1 アクセル開度センサ
2 クランク角センサ
4 エンジン
9 吸気通路
10 スロットル弁
11 スロットル弁制御装置
12 排気通路
13 可変容量ターボ過給機
14 コントロールユニット

Claims (8)

  1. 吸入空気量制御用のスロットル弁の開度を目標値に制御するスロットル制御装置と、該スロットル弁上流の過給機と、を備えた過給機付エンジンにおいて、
    過渡時の過給圧応答遅れを補償するための吸入空気量補正制御を前記スロットル制御装置によって行う吸入空気量補正制御手段と、
    前記吸入空気量補正制御の実行により不利益を生じる所定の運転条件を検出する所定運転条件検出手段と、
    前記所定運転条件検出手段によって検出された所定の運転条件で前記吸入空気量補正制御を禁止する補正制御禁止手段と、
    を含んで構成したことを特徴とする過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  2. 前記所定の運転条件は、スタートスイッチのON、OFFを切り換えてから所定時間の間、スロットルを最小開度としたときの吸入空気量を学習しているとき、機関の非回転時、イグニッションスイッチのOFF時、冷却水温度が所定範囲外の極低温時又は極高温時、の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  3. 吸入空気量制御用のスロットル弁の開度を目標値に制御するスロットル制御装置と、該スロットル弁上流の過給機と、を備えた過給機付エンジンにおいて、
    過渡時の過給圧応答遅れを補償するための吸入空気量補正制御を前記スロットル制御装置によって行う吸入空気量補正制御手段と、
    前記吸入空気量補正制御において算出される吸入空気量の補正量に段差を生じたときに、該補正量が徐々に切り換えられるように修正して設定する補正量修正手段と、
    を含んで構成したことを特徴とする過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  4. 前記補正量修正手段は、前記吸入空気量補正制御の許可、禁止の切換時に、吸入空気量の補正量を徐々に切り換えることを特徴とする請求項3に記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  5. 前記吸入空気量の補正量を徐々に切り換えるときの切換速度を、エンジン運転状態に応じて可変に設定することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  6. 前記吸入空気量の補正量を徐々に切り換えるときの切換速度を、前記補正量算出値の段差の大きさに基づいて可変に設定することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  7. 前記吸入空気量補正制御における吸入空気量減少方向の補正量に下限値を設定したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
  8. 前記吸入空気量補正制御手段は、スロットル弁上流の目標過給圧を設定し、該目標過給圧と実際の過給圧の検出値又は推定値との相違に基づいて目標吸入空気量を補正することにより、前記スロットル制御装置によるスロットル弁開度制御を介して、過給圧の過渡特性を補正制御することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の過給機付エンジンの吸入空気量制御装置。
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