JP3733641B2 - 色信号処理回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色信号処理回路に関し、特にCCD(Charge Coupled Device)などを用いた固体撮像素子システムにおいて、フィードバック制御で自動的にホワイトバランスをとるオートホワイトバランス機能を持つ色信号処理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホワイトバランスとは、例えば固体撮像素子システムにおいて、光源の色温度が変化した場合に、図10に示すように、色温度の変化に応じて白色が黒体放射カーブ(黒体軌跡)に沿って移動し、色が付いて見える白色(例えば、低い色温度の場合は赤っぽくなり、高い色温度の場合は青っぽくなる)を無彩色の白に合わせることである。ここに、色温度とは、テスト光源と同じ色度を持った黒体の温度(°K)を言う。また、図10において、原点が無彩色の白となる。
【0003】
このホワイトバランスでは、本来白色でないものはそのままの色としなければならないことから、本来白色でないものに対してまでホワイトバランスがとられる誤動作を防ぐために、図10に一点鎖線で示すように、ホワイトバランスをとる範囲を制限する引き込み制限枠を設定し、この引き込み制限枠の範囲外にある場合は白がずれたとはみなさず、本来白色でないものとし、オートホワイトバランスを動作させない、即ち引き込み操作を行わないようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィードバック制御方式のオートホワイトバランス機能を持つ従来の色信号処理回路では、一旦ある色温度下でホワイトバランスをとると、これに連動して引き込み制限枠も動いてしまうことになるため、次に色温度が変化した場合に、初期の引き込み制限枠内で白に合わせるべきものが、移動後の引き込み制限枠外となってホワイトバランスがとられなかったり、逆に初期の引き込み制限枠外で白に合わせてはいけない色が、移動後の引き込み制限枠の中に入ってホワイトバランスがとられてしまうという問題があった。
【0005】
一例として、ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、図11(a)に示すように、高色温度へ変化することによって白色が青方向にずれた場合に、この青方向にずれた白色は、ホワイトバランスをとる操作によって無彩色の白に合わせられる(同図(b)を参照)。そして、次にホワイトバランスをとる操作が行われるときには、ここが新たな基準となる。したがって、その後、同図(c)に示すように低色温度に変化した場合に、元々の引き込み制限枠(図中、破線で示す)から見るとこの枠の中に入っているにも拘らず、一端白に合わせた引き込み制限枠(図中、実線で示す)から見ると枠の範囲外となるので、ホワイトバランスがとられないことになる。
【0006】
また、色温度が一方へ徐々に変化していった場合にも、常に引き込み制限枠内となるため、極端な色温度でも最終的に引き込んでしまうという問題もあった。一例として、ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、図12(a)に示すように、高色温度へ変化することによって白色が青方向にずれた場合に、この青方向にずれた白色がホワイトバランスをとる処理によって無彩色の白に合わせられ(同図(b)を参照)、その後に、同図(c)に示すように色温度がさらに高い方向にずれた場合に、元々の引き込み制限枠(図中、破線で示す)から見るとこの枠の外であるにも拘らず、一端白に合わせた引き込み制限枠(図中、実線で示す)から見ると枠の範囲内となるので、ホワイトバランスがとられることになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホワイトバランスの誤動作のない処理を行うことが可能な色信号処理回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による色信号処理回路は、フィードバック制御方式を採用し、R,G,Bの原色信号の相互間のゲイン調整を行うホワイトバランスアンプと、色差信号のフィールドごとの積分値を得る積分回路と、基準の色温度でのホワイトバランスをとる範囲を制限する初期設定の基準の引き込み制限枠自体の大きさを積分回路で得られた積分値に基づいて変化させて前記基準の色温度から変化した色温度に対応した引き込み制限枠とし、前記基準の色温度からの色温度変化後も、前記基準の引き込み制限枠から外れないように制御するとともに、引き込み制限枠内の上記積分値に応じてホワイトバランスアンプのゲインをコントロールするコントローラとを備え、前記積分回路がその積分範囲として高輝度部と通常輝度部の2通り設定し、被写体の条件により、輝度の高いものか通常輝度のものかどちらがより白色に近いかを判定し、白色に近い方の積分値データに基づいて前記ホワイトバランスアンプのゲインをコントロールする構成となっている。
【0010】
上記構成の色信号処理回路において、色差信号のフィールドごとの積分値は光源の色温度に対応している。そこで、この積分値に基づいて初期設定の基準の引き込み制限枠自体の大きさを変化させて基準の色温度から変化した色温度に対応した引き込み制限枠とし、基準の色温度からの色温度変化後も、初期設定の基準の引き込み制限枠から外れないように制御する。すなわち、高色温度でホワイトバランスがとれている状態から低色温度に変化した場合、引き込み制限枠を低色温度側に広くなるように変化させる。逆に、低色温度でホワイトバランスがとれている状態から高色温度に変化した場合、引き込み制限枠を高色温度側に広くなるように変化させる。特に、様々な色を含む映像の色を足し合わせると白色になるという考え方から、積分範囲として高輝度部と通常輝度部の2通り設定し、被写体の条件により、輝度の高いものか通常輝度のものかどちらがより白色に近いかを判定し、白色に近い方の積分値データに基づいてホワイトバランスアンプのゲインコントロールを行う。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用される固体撮像素子システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、レンズ1は被写体(図示せず)の画像を固体撮像素子2の撮像面上に投写する。固体撮像素子2は例えばCCDからなり、レンズ1を通ってきた画像を電気信号に変換し、プリアンプ3に供給する。プリアンプ3は、固体撮像素子2の出力信号をサンプルホールドして必要なデータを取り出すとともに、適正なレベルに合わせるためにゲインコントロールを行う。このプリアンプ3の出力信号は、A/D変換回路4でアナログ信号からディジタル信号に変換された後、ディジタル信号処理回路5に供給される。
【0013】
ディジタル信号処理回路5は、A/D変換回路4からのディジタル入力信号をR(赤),G(緑),B(青)の原色信号(以下、R,G,B信号と称する)に分離する原色分離回路51と、R,G,B信号の相互間のゲインを調整することによってホワイトバランスをとるホワイトバランスアンプ52R,52G,52Bと、忠実な色再現のためのガンマ(γ)補正を行うγ補正回路53などから構成されている。ここに、ホワイトバランスをとる(合わせる)とは、R,G,B信号の比率を等しくすることである。なお、本例では、A/D変換回路4をディジタル信号処理回路5の前段に配置したが、当該処理回路5内に設けるようにしても良い。
【0014】
このディジタル信号処理回路5において、ホワイトバランスを調整するに当たっては、
R×Rゲイン=G×Gゲイン=B×Bゲイン
すなわち、
R×Rゲイン−G×Gゲイン=B×Bゲイン−G×Gゲイン=0
なる関係式が成り立つように、ホワイトバランスアンプ52R,52G,52Bの各ゲインを操作する。本例では、ホワイトバランスアンプ52Gのゲインを固定とし、G信号を基準として他の2つのホワイトバランスアンプ52R,52Bの各ゲインをコントロールすることによって、ホワイトバランスの調整が行われる。したがって、G信号に対するホワイトバランスアンプ52Gを省略することも可能である。
【0015】
ホワイトバランス調整後のR,G,B信号は、γ補正などの信号処理が行われた後、図示せぬ輝度(Y)信号と合わされて映像信号となり、さらにD/A変換回路6でディジタル信号からアナログ信号に変換されて出力される。なお、D/A変換回路6についても、A/D変換回路4の場合と同様に、ディジタル信号処理回路5内に配置するようにしても良い。ホワイトバランスアンプ52R,52G,52Bを経たR,G,B信号は、オプティカルディテクタ(OPD)7にも供給される。
【0016】
オプティカルディテクタ7の回路構成の一例を図2に示す。同図において、オプティカルディテクタ7は、R信号からG信号を減算する減算器71と、B信号からG信号を減算する減算器72と、減算器71,72の各出力信号である色差信号、即ちR−G信号およびB−G信号をフィールドごとに積分する積分回路73とを含んだ回路構成となっている。
【0017】
積分回路73は、図3に示すように、輝度レベルに基づく積分スライスレベルによって高輝度部と通常輝度部とに分けられた異なる積分範囲を持ち、高輝度部では積分スライスレベルよりも高い輝度のデータ(R−G,B−G)のみを積分し、通常輝度部では積分スライスレベルよりも低い輝度のデータ(R−G,B−G)のみを積分する。ただし、輝度が極端に高い場合は飽和しているものと判断し、高輝度リミッタ以上のデータについては積分しない。また、輝度が低すぎるデータはノイズとみなし、低輝度リミッタ以下のデータについても積分を行わない。
【0018】
このように、オプティカルディテクタ7では、特殊な条件(例えば、全面単色などの条件)の場合にホワイトバランス処理が誤動作しないように、様々なリミッタや特殊な処理が施される。そして、フィールドごとに高輝度部/通常輝度部の異なる積分範囲で積分して得られた積分値データ(R−G,B−G)は、次段のコントローラ8に供給される。なお、本例では、R,G,B信号から色差信号R−G,B−Gを生成し、しかる後この色差信号R−G,B−Gを積分するとしたが、R,G,B信号を先ず積分し、しかる後この積分したR,G,B信号から色差信号R−G,B−Gを生成するように構成することも可能である。
【0019】
コントローラ8は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。このコントローラ8の機能ブロックの一例を図4に示す。同図において、コントローラ8は、オプティカルディテクタ7から供給される高輝度部の積分値データ(R−G,B−G)と通常輝度部の積分値データ(R−G,B−G)とを比較し、0に近い方の積分値データを出力する比較回路81と、この比較回路81で選択されたR−G,B−Gの各積分値データを加算してR+B−2Gのデータを出力する加算器82と、R−Gの積分値データからB−Gの積分値データを減算してR−Bのデータを出力する減算器83と、R+B−2G,R−Bの各データに基づいてR信号およびB信号の各ゲインを設定するゲイン設定回路84の各機能を備え、これらの機能をソフトウェアによって実行する。
【0020】
このように、R−G,B−Gの各色差信号を積分して得られる各積分値データを、コントローラ8において、加減算処理にてR+B−2G,R−Bの各データに変換することにより、加算および減算という簡単な演算処理だけでデータ変換できるため、ソフトウェアの負担を軽減することができる。なお、本例では、R+B−2G,R−Bの各データの算出を、マイクロコンピュータからなるコントローラ8において、ソフトウェアにて行うとしたが、コントローラ8の比較回路81、加算器82、減算器83およびゲイン設定回路84の各機能をハードウェアで構成することも可能であり、この場合にはハードウェアの負担を軽減できることになる。
【0021】
コントローラ8において、R+B−2G,R−Bの各データに基づいて設定されたRゲイン情報およびBゲイン情報は、ディジタル信号処理回路5のホワイトバランスアンプ52R,52Bにフィードバックされる。すなわち、コントローラ8は、R+B−2G,R−Bの各データに基づいて、ソフトウェアによってホワイトバランスを合わせる処理を行うとともに、ホワイトバランスゲインとオプティカルディテクタ7からの評価値データからホワイトバランスが合っている状態の色温度とその後どのように変化したかを判定し、ホワイトバランスをとる範囲を制限する引き込み制限枠の大きさを、光源の色温度変化に対応して変化させる処理を行う。
【0022】
ホワイトバランスを合わせるには、先ず、高輝度部、通常輝度部のそれぞれの積分値データを比較し、原点(R−G=0,B−G=0)、即ち0に近い方を採用する。図5に示す例の場合は、高輝度部の積分値データの方が通常輝度部の積分値データよりも0に近いので、高輝度部の積分値データを採用する。そして、評価値データがどの座標位置にあるかを判定し、引き込み制限枠内であれば、その座標位置(象限、または軸上)によりホワイトバランスゲインを操作し、原点(R−G=0,B−G=0)に近付ける。
【0023】
本例の場合は、Rゲインを下げ、Bゲインを上げる操作を行う。そして、求めたRゲイン、Bゲインをディジタル信号処理回路5内のホワイトバランスアンプ52R,52Bに反映させる。評価値データが引き込み制限枠外の場合は、ホワイトバランスを合わせる操作を行わない。なお、引き込み制限枠を設定しているのは、本来白色でないものまで引き込んでしまうような誤動作を防ぐためである。
【0024】
以下、コントローラ8において、R+B−2G,R−Bの各データに基づいて実行されるホワイトバランスを合わせるための具体的な操作の手順について、図6のフローチャートにしたがって説明する。
【0025】
先ず、オプティカルディテクタ(OPD)7から評価値データ、即ちR−G,B−Gの各積分値データを取り込み(ステップS1)、この取り込んだ積分値データが輝度レベルの低いデータ(例えば、全面青、全面赤の被写体)であるか否かを判定する(ステップS2)。そして、評価値データが輝度レベルの低いデータであれば、本処理を終了する。評価値データが輝度レベルの低いデータでなければ、そのデータが適正範囲外であるか否か、即ち積分値データが低すぎる、あるいは高すぎる場合の判定を行う(ステップS3)。
【0026】
評価値データが適正範囲外であれば、本処理を終了する。評価値データが適正範囲内であれば、高輝度部、通常輝度部で積分したそれぞれのR−G,B−Gの積分値データを比較し、0に近い方のデータを採用する(ステップS4)。そして、採用した方の積分値データを用いて加算、減算を行うことにより、R−G,B−Gの積分値データをR+B−2G,R−Bのデータに変換する(ステップS5)。次に、R+B−2Gの符号を判定し(ステップS6)、続いてR−Bの符号を判定する(ステップS7)。この符号判定により、R−B,R+B−2Gの座標軸において、データがどこにあるかを判定する。
【0027】
次に、データが引き込み制限枠内にあるか否かを判断する(ステップS8)。データが引き込み制限枠外であれば、本処理を終了する。一方、データが引き込み制限枠内にあれば、ディジタル信号処理回路5内のホワイトバランスアンプ52R,52Bの各ゲインをコントロールすることによってホワイトバランスをとる引き込み操作を行う(ステップS9)。そして、ホワイトバランスゲインと積分範囲をディジタル信号処理回路5に戻し、一連の処理を終了する。
【0028】
ここで、引き込み制限枠、不感帯および収束点と引き込みのためのゲイン操作について、図7を用いて説明する。なお、不感帯を設けてあるのは、完全に0にならない(原点に収束しない)場合に発振してしまうことを防ぐためである。図7において、データが第1象限にある場合はホワイトバランスアンプ52Rのゲイン(Rゲイン)を下げ、第2象限にある場合はホワイトバランスアンプ52Bのゲイン(Bゲイン)を上げ、第3象限にある場合はRゲインを上げ、第4象限にある場合はBゲインを下げる。
【0029】
また、データがR−B,R+B−2Gの各軸上にある場合は、RゲインおよびBゲインを同時に操作する。すなわち、データがR+B−2G>0でかつR+B−2G軸上にある場合は、Rゲイン、Bゲインを共に下げる。データがR+B−2G<0でかつR+B−2G軸上にある場合は、Rゲイン、Bゲインを共に上げる。データがR−B>0でかつR−B軸上にある場合は、Rゲインを下げかつBゲインを上げる。データがR−B<0でかつR−B軸上にある場合は、Rゲインを上げかつBゲインを下げる。
【0030】
次に、色温度変化に合わせた引き込み制限枠の縮小・拡大の実例について、図8に基づいて説明する。なお、図8中、破線の枠が初期設定の基準の引き込み制限枠、細い実線の枠が収束後の引き込み制限枠、太い実線が縮小・拡大した引き込み制限枠をそれぞれ示している。
【0031】
先ず、Rゲインが小、Bゲインが大、評価値データ(R−B)がマイナスで引き込み制限枠外の場合(a)について説明する。ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内で低色温度へ変化すると、破線で示す座標の原点の白が、実線で示す座標の原点に収束する。この状態から、次に高色温度に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外になると、このままでは、ホワイトバランスがとられない。
【0032】
ところが、今回の評価値データ(R−B)は、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外になっているものの、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内であることから、ホワイトバランスがとられるべきものである。そこで、収束後の引き込み制限枠を、太い実線の枠で示すように、今回の評価値データ(R−B)を取り込む範囲まで高色温度側に拡大する処理を行う。これにより、前回低色温度で収束し、今回高色温度側に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外となった場合であっても、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内である限り、ホワイトバランスの操作が行われる。
【0033】
次に、Rゲインが大、Bゲインが小、評価値データ(R−B)がマイナスで引き込み制限枠内の場合(b)について説明する。ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内で高色温度へ変化すると、破線で示す座標の原点の白が、実線で示す座標の原点に収束する。この状態から、さらに高色温度に変化した場合、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内であれば、そのままホワイトバランスがとられることになる。
【0034】
ところが、今回の評価値データ(R−B)は、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内になっているものの、基準の引き込み制限枠(破線の枠)外であることから、ホワイトバランスがとられてはいけないものである。そこで、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)を、太い実線の枠で示すように、今回の評価値データ(R−B)を取り込まない範囲まで低色温度側に縮小する処理を行う。これにより、前回高色温度で収束し、さらに高色温度側に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内となった場合であっても、基準の引き込み制限枠(破線の枠)外である限り、ホワイトバランスの操作が行われない。
【0035】
次に、Rゲインが小、Bゲインが大、評価値データ(R−B)がプラスで引き込み制限枠内の場合(c)について説明する。ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内で低色温度へ変化すると、破線で示す座標の原点の白が、実線で示す座標の原点に収束する。この状態から、さらに低色温度に変化した場合、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内であれば、そのままホワイトバランスがとられることになる。
【0036】
ところが、今回の評価値データ(R−B)は、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内になっているものの、基準の引き込み制限枠(破線の枠)外であることから、ホワイトバランスがとられてはいけないものである。そこで、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)を、太い実線の枠で示すように、今回の評価値データ(R−B)を取り込まない範囲まで高色温度側に縮小する処理を行う。これにより、前回低色温度で収束し、さらに際色温度側に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)内となった場合であっても、基準の引き込み制限枠(破線の枠)外である限り、ホワイトバランスの操作が行われない。
【0037】
次に、Rゲインが大、Bゲインが小、評価値データ(R−B)がプラスで引き込み制限枠外の場合(d)について説明する。ある基準の色温度において、ホワイトバランスがとれている状態から、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内で高色温度へ変化すると、破線で示す座標の原点の白が、実線で示す座標の原点に収束する。この状態から、次に低色温度に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外になると、このままでは、ホワイトバランスがとられない。
【0038】
ところが、今回の評価値データ(R−B)は、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外になっているものの、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内であることから、ホワイトバランスがとられるべきものである。そこで、収束後の引き込み制限枠を、太い実線の枠で示すように、今回の評価値データ(R−B)を取り込む範囲まで低色温度側に拡大する処理を行う。これにより、前回高色温度で収束し、今回低色温度側に変化し、収束後の引き込み制限枠(細い実線の枠)外となった場合であっても、基準の引き込み制限枠(破線の枠)内である限り、ホワイトバランスの操作が行われる。
【0039】
上述したように、固体撮像素子システムにおける色信号処理回路において、フィードバック制御で自動的にホワイトバランスをとる操作を行う際に、光源の色温度がどのように変化したかを判別し、収束時の光源の色温度と、変化した後の光源の色温度とに合わせて引き込み制限枠の大きさを変化させることにより、もともと設定した基準の引き込み制限枠から外れないような制御ができる。
【0040】
すなわち、ある色温度の光源下においてホワイトバランスをとった後、次に色温度が変化した場合に、基準の引き込み制限枠内であって白に合わせる色温度であればホワイトバランスをとり、そうでないものはとらないように、誤動作のないホワイトバランスをとる操作を行うことができる。
【0041】
また、様々な色を含む映像の色をすべて足し合わせると白色になるという考え方からR−G,B−Gの色差信号を積分するとともに、その積分範囲として高輝度部と通常輝度部の2通り設定し、被写体の条件により、輝度の高いものか通常輝度のものかどちらがより白色に近いかを判定し、白色に近い方の積分値データに基づいてホワイトバランスのゲインコントロールを行うことで、より精度の高いオートホワイトバランスを実現できる。
【0042】
特に、輝度別積分の高輝度部と通常輝度部のどちらのデータを採用するかを判断する際に、R−G,B−Gの各データをパラメータとして用いるようにしたことで、乗算、除算の演算処理を行わなくて済むため、ハードウェア、ソフトウェアの負担を軽減できる。なお、本例では、R−G,B−Gの色差信号を積分するとしたが、R−Y,B−Yの色差信号を積分し、その積分値データを用いることも可能である。
【0043】
また、ホワイトバランスを合わせる際に、R−B,R+B−2Gの各データを用いるようにしたことにより、R−Bが被写体(または、光源)の色温度に対して白色が変化する軌跡(黒体放射カーブ)に近いため精度の良い制御を行え、またR+B−2Gが被写体が蛍光灯下にある場合(または、光源が蛍光灯の場合)に白色が変化する方向であるため、R−Bと同様に精度の良い制御を行える。しかも、非線形回路であるγ補正回路53を通過する前のR,G,B信号を用いてゲイン情報を得ているため、色ずれの心配もない。
【0044】
図9は、R−Y,B−Y軸上でのR−B,R+B−2Gおよび黒体放射カーブ(シミュレーション)を示す座標系である。同図から明らかなように、太い実線で示す黒体放射カーブとR−Bがほぼ一致していることがわかる。したがって、R−Bの値で引き込み制限枠を設定し、この引き込み制限枠を軸に沿って動かすように制御を行えば、容易に色温度変化による白を無彩色の白に合わせることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フィードバック制御方式のホワイトバランス機能を備えた色信号処理回路において、光源の色温度に対応している色差信号のフィールドごとの積分値に基づいて初期設定の基準の引き込み制限枠自体の大きさを変化させて基準の色温度から変化した色温度に対応した引き込み制限枠とし、基準の色温度からの色温度変化後も、初期設定の基準の引き込み制限枠から外れないように制御することにより、ホワイトバランスの誤動作のない処理を行うことができることになる。特に、積分範囲として高輝度部と通常輝度部の2通り設定し、被写体の条件により、輝度の高いものか通常輝度のものかどちらがより白色に近いかを判定し、白色に近い方の積分値データに基づいてホワイトバランスアンプのゲインコントロールを行うことで、より精度の高いオートホワイトバランスを実現できる。したがって、オートホワイトバランスを持つ民生用、業務用、産業機器用カメラに適用した場合に、画質向上に寄与できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される固体撮像素子システムの構成を示すブロック図である。
【図2】オプティカルディテクタの一例の回路ブロック図である。
【図3】積分回路での積分範囲を示す図である。
【図4】コントローラの一例の機能ブロック図である。
【図5】ホワイトバランス操作の一例を示す概念図である。
【図6】ホワイトバランスの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】引き込みのためのゲイン操作の概念図である。
【図8】色温度変化に合わせた引き込み制限枠の縮小・拡大の実例を示す図である。
【図9】R−Y,B−Yの座標系を示す図である。
【図10】引き込み制限枠を示す図である。
【図11】従来技術の課題を説明する図(その1)である。
【図12】従来技術の課題を説明する図(その2)である。
【符号の説明】
2 固体撮像素子 4 A/D変換回路 5 ディジタル信号処理回路
6 D/A変換回路 7 オプティカルディテクタ 8 コントローラ
51 原色分離回路 52R,52G,52B ホワイトバランスアンプ
53 γ(ガンマ)補正回路 71,72,83 減算器
73 積分回路 81 比較回路 82 加算器
84 ゲイン設定回路
Claims (1)
- フィードバック制御によって自動的にホワイトバランスをとる処理を行う色信号処理回路であって、
R(赤),G(緑),B(青)の原色信号の相互間のゲイン調整を行うホワイトバランスアンプと、
色差信号のフィールドごとの積分値を得る積分回路と、
基準の色温度でのホワイトバランスをとる範囲を制限する初期設定の基準の引き込み制限枠自体の大きさを前記積分回路で得られた積分値に基づいて変化させて前記基準の色温度から変化した色温度に対応した引き込み制限枠とし、前記基準の色温度からの色温度変化後も、前記基準の引き込み制限枠から外れないように制御するとともに、前記引き込み制限枠内の前記積分値に応じて前記ホワイトバランスアンプのゲインをコントロールするコントローラとを備え、
前記積分回路は、その積分範囲として高輝度部と通常輝度部の2通り設定し、被写体の条件により、輝度の高いものか通常輝度のものかどちらがより白色に近いかを判定し、白色に近い方の積分値データに基づいて前記ホワイトバランスアンプのゲインをコントロールする
ことを特徴とする色信号処理回路。
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