JP3732866B2 - サーメット - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、旋削工具,フライス工具等の切削加工用工具等の材料に使用されるサーメットに係り、特に、耐摩耗性及び耐欠損性に優れたサーメットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、旋削工具,フライス工具等の切削加工用工具等の材料としてサーメットを使用することが行なわれていた。
【0003】
そして、このサーメットにおける耐摩耗性等を更に改善するために、様々な研究が行なわれており、サーメットの表面を改質するため、例えば、特公昭59−17176号公報においては、硬質相を形成する成分とその量及び結合相を形成する成分とその量等を調整し、焼結合金における硬質表層の最高硬さが内部硬さに対して5〜30%高くなるようにしたものが、また特開平2−15139号公報においては、チタンの炭化物等と周期律表第6a族元素の炭化物とを用いた硬質相成分において、(窒素/窒素+炭素)で表される原子比が0.4〜0.6の範囲になるようにし、また焼結時において、液相出現温度以上で1〜30Torrの窒素ガスを導入し、最高温度到達後に減圧させて表層部に内部より靭性や硬度の高い改質部を形成することが、また特開平5−9646号公報においては、焼結合金中におけるTiとW等の量を調整すると共に、焼結合金の表層部における結合相の相対濃度を内部の平均的結合相濃度より減少させて、表面に圧縮応力を残存させて、耐熱衝撃性や耐摩耗性及び耐欠損性を高めるようにしたものが示されている。
【0004】
ここで、上記の特公昭59−17176号公報に示されるものにおいては、焼結合金における硬質表層の最高硬さが内部硬さに対して5〜30%高くなるようにしているだけであるため、表面が十分な硬度を有するとはいえず、耐摩耗性等が十分なものではなかった。
【0005】
また、特開平2−15139号公報に示されるものにおいては、上記のように(窒素/窒素+炭素)の原子比が0.4〜0.6の範囲になっており、硬質相成分における窒素の量が多いため、TiCNの硬質相の核の周りにおいて組織が十分に発達せず、硬質相の粒成長が抑制されて微細な組織になり、破壊靭性が低下すると共に、焼結時に脱窒が生じて内部組織にポア等が生じやすくなり、十分な耐欠損性を得ることができないという問題があった。
【0006】
また、特開平5−9646号公報に示されるものにおいては、上記のように耐熱衝撃性や耐摩耗性及び耐欠損性の高いサーメットを得るにあたり、その焼結工程において、液相出現温度から最終焼結温度における保持終了まで5〜30Torrの高い窒素ガス雰囲気中で焼結を行なうため、硬質相の粒子の成長が押えられて粒子が微細化し、上記の特開平2−15139号公報に示されたものと同様に、破壊靭性が低下して耐欠損性が悪くなるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、旋削工具,フライス工具等の切削加工用工具等の材料として使用されるサーメットにおける上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである
【0008】
すなわち、この発明においては、表面が十分な硬度を有し、耐摩耗性や耐欠損性に優れたサーメットを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明におけるサーメットにおいては、上記のような課題を解決するため、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で含まれると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属である配合組成のものを用い、焼結合金中における炭素と窒素の含有量が炭素/(炭素+窒素)の重量比で0.6以上になるようにしたのである。
【0010】
また、この発明におけるサーメットにおいては、最高硬さの部分がその表面から100μm以下の範囲にあって、その最高硬さがビッカース硬度(荷重0.1kgf)で2200kgf/mm2 以上で、かつこの最高硬さが内部の硬さより30%以上高くなるようにし、さらにその表面から100μm以下の範囲における破壊靭性値(Kc)が9.0MPa・m1/2 以上になるようにする。
【0011】
ここで、上記の破壊靭性値(Kc)は、公知の文献(Niihara,K., Morena,R. and Hasselman, D.P.H., “Further Reply to Comment on Elastic/Plastic Indentation Damage in Ceramics: The Median/Radial Crack System", Communications of the American Ceramic Society, C-116-117, Jul., 1982.)に示されているIF法に従って荷重10kgfで新原の式を用いて計算した値である。
【0012】
また、この発明においては、上記のようなサーメットを製造するにあたり、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で加えられると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属からなる配合組成の原料を混合して成型した後、これを焼結させるにあたり、最高温度を1380〜1550℃の範囲にすると共に、焼結時における圧力を0.05〜5.0Torrの範囲になるようにしたのである。
【0013】
ここで、この発明におけるサーメットの配合組成において、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%含有されるようにしたのは、これらのチタン化合物の量が45重量%より少ないと、得られたサーメットにおける耐摩耗性が低下する一方、その量が70重量%より多くなると、焼結性が悪くなって、表面における硬度を十分に向上させることが出来ず、耐摩耗性等が低下するためである。
【0014】
また、上記のチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%になるようにしたのは、この硬質相成分が75重量%より少ないと、得られたサーメットにおける耐塑性変形性が弱まる一方、その量が95重量%より多くなると、得られたサーメットにおける耐欠損性が著しく低下するためである。
【0015】
また、上記の硬質相成分に対してグラファイトを添加させるようにしたのは、このグラファイトの添加により配合組成中における炭素量を増やし、焼結時における脱炭が効率良く行なわれて、この脱炭によるサーメットの表面硬化が効果的に行なわれるようにするためであり、このグラファイトの添加量を硬質相成分に対して0.5〜2.0重量%としたのは、グラファイトの量が0.5重量%より少ないと、焼結時における脱炭が効率良く行なわれず、脱炭によるサーメットの表面硬化が十分に行なえなくなる一方、2.0重量%より多いと、得られたサーメットの内部から表面全体に遊離炭素が出現して、サーメットの耐欠損性が低下するためである。
【0016】
また、この発明のサーメットにおいては、最高硬さの部分がその表面から100μm以下の範囲で、その最高硬さがビッカース硬度(荷重0.1kgf)で2200kgf/mm2 以上になるようにしたのは、最高硬さの部分が表面から100μmを越えると、初期摩耗が大きくなって耐摩耗性が低下するためであり、またビッカース硬度(荷重0.1kgf)が2200kgf/mm2 より低いと、その表面の最高硬さが十分でなく耐摩耗性が低下するためである。
【0017】
さらに、このサーメットの表面から100μm以下の範囲における破壊靭性値が9.0MPa・m1/2 以上になるようにしたのは、これより破壊靭性値が低いと耐欠損性が十分でないためである。
【0018】
また、このサーメットを製造するにあたって、焼結時における最高温度が1380〜1550℃の範囲になるようにしたのは、1380℃より低いと、焼結が十分に行なわれなくて、ポアが生じやすくなり、耐欠損性が悪くなる一方、1550℃を越えると、粒子の成長が著しくて、表面が荒れたり変形したりすると共に、その表面硬度も低下して十分な耐摩耗性を得られなくなるためである。
【0019】
また、焼結時における圧力が0.05〜5.0Torrの範囲になるようにしたのは、圧力が0.05Torrより低いと、サーメット表面からの脱炭が多くなりすぎて、脆化相が生じやすくなる一方、5.0Torrより高いと、サーメットの表面における脱炭がうまく行なわれず、その表面を十分に硬化させることができなくなるためである。
【0020】
【作用】
この発明におけるサーメットにおいては、上記のようにチタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で含まれると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属である配合組成のものを用い、これを焼結させてサーメットを得るようにしたため、サーメットの表面からの脱炭が効率良くうまく行なわれて、表面が十分な最高硬さをもつようになる。
【0021】
また、この焼結合金中における炭素と窒素の含有量が、炭素/(炭素+窒素)の重量比で0.6以上になるようにしたため、焼結合金中の硬化相の微細化が抑制され、その表面において、TiC又はTiCNに富む核の周りにチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の周辺組織が大きく発達し、硬質相が内部より大きくなって、その表面における破壊靭性が向上するようになる。
【0022】
さらに、この発明においては、サーメットを製造するにあたって、燒結時における最高温度を1380〜1550℃の範囲にすると共に、焼結時における圧力を0.05〜5.0Torrの範囲にしたため、燒結によってポアが生じたり、粒子が成長しすぎるということがなく、サーメットの表面における脱炭もうまく行なわれて、サーメットにおける耐欠損性や耐摩耗性が十分に向上されるようになる。
【0023】
【実施例】
以下、この発明の実施例に係るサーメット及びその製造方法について具体的に説明すると共に、比較例を挙げ、この発明の実施例に係るサーメットが耐摩耗性や耐欠損性に優れていることを明らかにする。
【0024】
(実施例1〜7及び比較例1〜6)
これらの実施例及び比較例のものにおいては、その原料として、チタン化合物であるTiC,TiN,TiCN(C:N=7:3とC:N=1:1の2種類)と、チタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物であるWC,TaC,NbC,Mo2 Cと、鉄族金属であるCo,Niと、グラファイト(C)とを下記の表1に示す割合で配合させたものを用いるようにした。
【0025】
【表1】
【0026】
そして、上記の表1に示す配合組成で各原料を湿式混合させた後、これらをそれぞれCNMG120408のインサート形状にプレス成型し、下記の表2に示す焼結条件(液相出現後の昇温時の雰囲気,焼結時の雰囲気,最高温度)で焼結を行ない、得られた焼結体におけるC/(C+N)の比を求め、その結果を下記の表2に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
次に、上記のように焼結して得た実施例1〜7及び比較例1〜6の各サーメットについて、その表面近傍の最高硬さと内部硬さとを微小硬さ計により荷重0.1kgfで測定し、内部硬さに対する最高硬さの上昇率を求めると共に、実施例1〜7及び比較例1〜6の各サーメットの表面における破壊靭性値(Kc)を求め、これらの結果を下記の表3に示した。なお、破壊靭性値(Kc)については、前記のようにIF法に従い荷重10kgfでビッカース硬さ計を用い新原の式で計算して求めた。
【0029】
【表3】
【0030】
次に、上記実施例1〜7及び比較例1〜6の各サーメットに対して一定の研削及びホーニング加工を施し、これらの各サーメットを用いて耐摩耗試験及び耐欠損試験を行なった。
【0031】
ここで、耐摩耗試験においては、被削材にSNCM447(Hs38)の丸棒を使用し、切削速度230m/min,切り込み2mm,送り0.2mm/revで10分間切削を行ない、それぞれの逃げ面における摩耗を測定し、また耐欠損試験においては、被削材にSCM447(Hs31)の4溝付きの丸棒を使用し、切削速度120m/min,切り込み2.5mm,送り0.05mm/revから100回衝撃毎に0.05mm/revずつ上昇させ、各サーメットにおいて欠損した時の送り量を測定し、これらの結果を下記の表4に示した
【0032】
【表4】
【0033】
上記の表3及び表4の結果によると、上記実施例1〜7の各サーメットにおいては、何れもその表面における最高硬さが2200kgf/mm2 以上で、内部硬さより30%以上高くなっており、またその表面の破壊靭性値(Kc)も9.0MPa・m1/2 以上と高くなっており、また上記の耐摩耗試験においても、逃げ面における摩耗が0.15mm以下と少なくなっていて、耐摩耗性に優れていると共に、耐欠損試験においても、送り量が0.35mm/revまで欠損が生じておらず、耐欠損性にも優れていた。
【0034】
これに対して、C/(C+N)の値が0.6より小さい比較例1のものにおいては、表面における硬化が十分ではなく、内部硬さに対する表面の最高硬さの上昇が少なくなっていると共に、破壊靭性値も低く、耐摩耗性及び耐欠損性が低くなっていた。また、C/(C+N)の値が0.6より小さく、焼結中に脱窒によって表面を硬化させるようにした比較例2のものにおいては、表面の最高硬さが内部硬さより十分に上昇しており、耐摩耗性に優れていたが、表面の破壊靭性値が低く、耐欠損性が悪くなっていた。また、グラファイトを添加しなかった比較例3のものにおいては、表面における硬化が十分ではなく、内部硬さに対する表面の最高硬さの上昇が少なく耐摩耗性が悪くなっていた。また、グラファイトを硬質相成分に対して2重量%より多く添加した比較例4のものにおいては、表面の最高硬さが内部硬さより十分に上昇して耐摩耗性に優れており、また表面の破壊靭性値も部分的に高くなっていたが、組織中に多量の遊離炭素が出現して耐欠損性が悪くなっていた。また、チタンの炭化物,窒化物の量が45重量%以下の比較例5のものにおいては、表面における硬化が十分ではなく、内部硬さに対する表面の最高硬さの上昇が少なくて耐摩耗性が悪くなっており、クレータ摩耗も著しく深くなっていた。また、硬質相成分の重量が95重量%を越える比較例6のものにおいては、表面の最高硬さがある程度高くなっていて耐摩耗性に優れていたが、表面の破壊靭性値が非常に低く、耐欠損性が著しく悪くなっていた。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明におけるサーメットにおいては、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で含まれると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属である配合組成のものを用いると共に、焼結合金中における炭素と窒素の含有量が炭素/(炭素+窒素)の重量比で0.6以上になるようにしたため、燒結時において表面からの脱炭が効率良くうまく行なわれて、表面が十分な最高硬さをもつようになると共に、その表面においてTiC又はTiCNの周りにチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の周辺組織が大きく発達して、その表面における破壊靭性が向上し、耐摩耗性や耐欠損性に優れたサーメットが得られるようになった。
【0036】
さらに、この発明においては、サーメットを製造するにあたり、燒結時における最高温度を1380〜1550℃の範囲にすると共に、焼結時における圧力を0.05〜5.0Torrの範囲にしたため、燒結によってポアが生じたり、粒子の成長しすぎたりするということがなく、サーメットの表面における脱炭もうまく行なえて、サーメットにおける耐欠損性や耐摩耗性が十分に向上した。
Claims (4)
- チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で含まれると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属からなる配合組成であり、焼結合金中における炭素と窒素の含有量が炭素/(炭素+窒素)の重量比で0.6以上になっていることを特徴とするサーメット。
- 請求項1のサーメットにおいて、最高硬さの部分がその表面から100μm以下の範囲にあり、その最高硬さがビッカース硬度で2200kgf/mm2 以上で、かつこの最高硬さが内部の硬さより30%以上高くなっていることを特徴とするサーメット。
- 請求項1又は2に記載のサーメットにおいて、その表面から100μm以下の範囲における破壊靭性値(Kc)が9.0MPa・m1/2 以上であることを特徴とするサーメット。
- チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなるチタン化合物が45〜70重量%、このチタン化合物とチタンを除く周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物の1種又は2種以上からなる金属化合物とを合わせた硬質相成分が75〜95重量%の割合で加えられると共に、この硬質相成分に対してグラファイトが0.5〜2.0重量%加えられて、残りが鉄族金属からなる配合組成の原料を混合して成型した後、これを焼結させてサーメットを製造するにあたり、燒結時における最高温度を1380〜1550℃の範囲にすると共に、焼結時における圧力を0.05〜5.0Torrの範囲にしたことを特徴とするサーメットの製造方法。
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1995
- 1995-01-31 JP JP03627695A patent/JP3732866B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH08209283A (ja) | 1996-08-13 |
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