JP3732602B2 - エネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ - Google Patents

エネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転角速度を検出するためのジャイロスコープに関し、特に、圧電振動子のエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロスコープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電振動ジャイロスコープ(以下簡単のために圧電振動ジャイロと呼ぶ)は、圧電振動子を一定方向に励振しておいた状態で、該圧電振動子がその励振方向に直角な方向の軸の周りにに回転した際、その励振方向及び回転軸に直角の方向に生ずるコリオリ力を検知して、回転角速度を検出するもので、種々の応用があるが、最近では、例えば、自動車のナビゲーションシステムや、VTRカメラの手振れ補正機構などに用いられるようになって来ている。
【0003】
圧電振動ジャイロとして、振動のエネルギーが駆動電極近傍に集中しているエネルギー閉じ込め振動モードで振動する圧電振動子を用いたエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロが、例えば、特開昭62−162915号や特開平3−322580号に提案されている。
【0004】
エネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロは、振動エネルギーが圧電振動子の局部に集中しているので、圧電振動子の支持が簡単容易であり、遊離しているリード線が不要となるとの利点がある。
【0005】
特開昭62−162915号は、振動エネルギーを局部に閉じ込めるために、振動子の厚みを局部的に厚く形成しその部分を厚み方向に分極し、厚い局部の対向端面に駆動電極を設け、対向側面に検出電極を設けたものを開示している。また、他の例として、駆動電極と検出電極を圧電板の一面に設け、駆動電極間に検出電極として交差指電極を設けたものを開示している。
【0006】
特開平3−322580号は、圧電板の一部領域を厚み方向に分極し、その分極領域の主面上に2組の対向電極を、対向方向を直角にして設け、一方の対向電極を駆動電極に、他方の対向電極を検出電極とした圧電振動ジャイロを開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭62−162915号に開示したエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロは、圧電板の厚みを局部的に厚くしなければならないとか交差指電極を形成しなければならないといった製造上の難点がある。また、一対の駆動電極と一対の検出電極が互いに近傍に設けられているので、駆動電極から圧電板内に印加した駆動電界が検出電極に影響され、駆動電界方向が変化して精度が得られないとの欠点が見られる。
【0008】
特開平3−322580号に開示したエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロは、構成は簡単で製造も容易であるが、一対の駆動電極と一対の検出電極が互いに近傍に設けられているので、駆動電極から圧電板内に印加した駆動電界が検出電極に影響され、駆動電界方向が変化し、精度の良い検出出力を得ることが困難である。
【0009】
従って、本発明は、非調和高次モードの振動がなく、高精度のエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、使用周波数以外の周波数のスプリアス振動の発生の少ない、高精度のエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロを提供することを目的とする。
【0011】
更に、本発明は、圧電板の主面の限定された領域に出力電極を駆動電極の一部に共用することによって、出力電極が駆動電界に悪影響を与えないようにした、小型で、構造簡単で、高精度のエネルギー閉じ込め振動モードを利用した圧電振動ジャイロを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、厚みtの圧電板の厚み方向に分極を有する領域の主面上に駆動用の平行電極を形成し、さらに、該平行電極間に対の一方を駆動専用電極とし、該平行電極対の他方を当該長手方向に二分割して検出用電極対とした構造を有し、前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に電界を印加してエネルギー閉じ込め厚みすべり振動を励振し、前記検出用電極対間に該圧電板に厚み方向を回転軸とした回転が加わったときに生じるコリオリ力による振動に対応した起電力に基づいて、回転角速度を検出する圧電振動ジャイロスコープであって前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に、d/t<7を満たす間隔dを形成したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープが得られる。
【0013】
本発明によれば、長さL1の圧電板のほぼ中央部の厚み方向に分極を有する領域の主面上に駆動用の平行電極を形成し、さらに、該平行電極間に対の一方を駆動専用電極とし、該平行電極対の他方を当該長手方向に二分割して検出用電極対とした構造を有し、前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に電界を印加してエネルギー閉じ込め厚みすべり振動を励振し、前記検出用電極対間に該圧電板に厚み方向を回転軸とした回転が加わったときに生じるコリオリ力による振動に対応した起電力に基づいて、回転角速度を検出する圧電振動ジャイロスコープであって前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に、前記L1の長さ方向にL1/d≧3を満たす間隔dを形成したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープが得られる。
【0014】
本発明の一つの態様によれば、前記主面上に第1の方向に前記の所定間隔dだけ離れた二位置の内、一方の位置に前記第一の方向と直角の方向に延在してストリップ状の第1の電極を形成し、他方の位置に前記第1のストリップ状の電極とほぼ平行な方向に互いに間隔をおいて延在したストリップ状の第2および第3の電極を形成し、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極とを前記駆動用の平行電極として励振用の駆動電圧を印加し、前記第2及び第3の電極間に生じる前記コリオリ力による振動に対応した起電力を検知するようにし、前記第1の電極と前記第2および第3の電極との間に生ずるエネルギー閉じ込め振動モードを利用したことを特徴とする圧電振動ジャイロスコープが得られる。
【0015】
本発明の前記の圧電振動ジャイロスコープにおいては、前記第2及び第3の電極はそれぞれ仮想接地機能を備えた第1及び第2の電流検出回路に接続してあり、前記第1の電極に励振用の駆動電圧を印加し、前記第1及び第2の電流検出回路出力間に生ずる差電圧を検出出力とする構成とする。
【0016】
本発明の圧電振動ジャイロスコープは、駆動及び検出回路として、前記第1及び第2の電流検出回路の出力間に接続され該両電流検出回路の出力電圧の差を検出するための差動回路と、該差動回路出力に接続された同期検波回路と、該同期検波回路の出力に接続された整流回路と、前記第1及び第2の電流検出回路の出力間に接続され自励振駆動用周波数の信号を発振するための発振回路と、該発振回路の出力に接続され前記自励振駆動用周波数の交流電圧を前記第1の電極に印加する駆動回路とを備えると良い。
【0017】
前記圧電板としては、圧電セラミックスを用い、該圧電セラミックスの前記第1乃至第3の電極間及びその近傍の領域のみを厚さ方向に分極するものとする。
【0018】
また、前記圧電板として厚み方向に分極軸を有する圧電結晶板を用いることもできる。
【0019】
【作用】
圧電板の厚み方向に分極を有する領域の主面のほぼ中央部に、駆動あるいは検出用の複数の電極を形成して構成した平行電界励振型エネルギー閉じ込め厚みすべり振動を利用した圧電振動ジャイロにおいて、前記駆動あるいは検出用の複数の電極の全てを含む円の内で最も小さな円(この円内領域を電極部と呼ぶ)の直径をd、前記圧電板の厚さをtとしたとき、図6に示すような振動モードの次数0、1、2に対応する厚みすベりモードS0、S1、S2の共振周波数は図7に示すように、d/tによって変化する。図7において、ω0 は電極部の共振周波数であり、ω0'は電極のない周辺部の共振周波数である。厚み振動は、駆動周波数をω0 とω0'の間に設定することによって電極部に閉じ込められる。この閉じ込め振動の振動モードは、基本モードS0の他に高次の振動モードS1、S2、・・・がある。d/tが大きい場合、たとえばd/t=Pにおいてω0 とω0'の間でS0、S1、S2の3つのモードが起こりうる。本発明の構造を用いた場合、d/t<7の範囲で非調和高次対称モードが生じないので、副振動のない共振子が得られる。
【0020】
また、前記圧電板の励振方向の長さをL1としたとき、厚みすべり振動の励振方向の変位分布は図8に示すような曲線で表される。本発明の構造を用いた場合、L1/d≧3の範囲でスプリアス振動のが小さくその影響は無視できる。
【0021】
よつて、本発明の構造を用いることにより、非調和高次モードがなく、スプリアスの少ない、高感度の圧電振動ジャイロが得られる。
【0022】
本発明の振動ジャイロの特筆すべき点は、d/tの値を7未満とし、L1/dを3以上としたことで、より支持の影響のない高感度の振動ジャイロを得られることである。
【0023】
従って、本発明において、重要な点は、各電極対が対向する領域に不要振動の無いきれいなエネルギー閉じ込め振動を励振することであり、d/tの値を7未満とし、L1/dを3以上とすることで、この目的を達成することが出来る。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態の一例におけるエネルギ一閉じ込め型振動ジャイロの振動子の構成を示す斜視図である。図1に示すように、圧電振動子は、例えば、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックス板で構成した、中央部が厚さ方向に分極軸を有する圧電板10を用いる。この圧電板10の前記中央部の主面上にストリップ状の第1の電極11が設けられている。この第1の電極11と所定距離だけ離れた位置に該第1の電極と平行に、第2の電極12および第3の電極13が互いに離れて成されている。これら電極11、12、13には、外部に導出するための端子部14、15、16が接続されている。なお、これら電極および端子部は、銀ペーストあるいは金スパッタで構成されると良い。もちろん他の導電膜を採用することができる。外部に導出するための端子部は振動子上に設けずリード線を用いても良い。
【0025】
図示のとおり、厚み方向をZ軸、電極の対向方向をX軸、これらに直交する方向をY軸とする三次元座標を決める。
【0026】
圧電板10が、図示の通り、縦横(図でXおよびY方向)寸法L1×L2、厚みtを有するものとし、電極11と電極12および13とは寸法L1を持つX方向で対向し、その対向間距離dは、d/t<7およびL1/d≧3を満足するように設けられている。
【0027】
動作を説明すると、第1の電極11と第2および第3の電極12および13との間に駆動電圧(交流)を印加すると、X方向の振動が励振される。この状態で、圧電板10がZ軸の周りに回転すると、Y方向にコリオリ力による振動が発生し、これにより、第2および第3の電極間に起電力が発生する。この起電力を検知することによって、コリオリ力による振動の大きさを、したがって、回転角速度を検出することができる。
【0028】
なお、振動のエネルギーは圧電板の前記中央部に閉じ込められ、周辺に及ばないので、圧電板の周辺部を支持することが容易である。
【0029】
特に、電極11、12および13の位置が、前記式d/t<7およびL1/d≧3を満足するように選ばれているから、非調和高次モードの振動がなく、スプリアスの少ない圧電振動ジャイロが実現されている。
【0030】
図2は図1の圧電振動子1に接続される回路構成を示すブロック図である。図2を参照をすると、圧電振動子1の第2及び第3の電極12及び13には、電流検出回路18、19がそれぞれ接続されている。電流検出回路18、19の出力側には、差動増幅回路22が接続され、同期検波回路23、整流回路24を介して、圧電振動ジャイロの検出出力が得られる。一方、電流検出回路18、19は自励発振条件を満たすための発振回路25に接続され、X方向振動を与えるための駆動回路26を介して第1の電極11に接続されており、自励発振回路を構成している。この自励発振回路により圧電振動子の厚みすベり振動の共振周波数にほぼ等しい周波数の交流電圧が電極11に印加される。
【0031】
図3は、図2の電流検出回路18および19の構成例を示す図で、第2および第3の電極12および13を仮想的に接地させる機能を備えるものである。この回路は、演算増幅器31の非反転入力端子(+)は基準電圧に接地されており、演算増幅器31の出力端子から反転入力端子に抵抗器Rが接続されている。反転入力端子(−)は,演算増幅器の仮想接地機能により常に前記の接地基準電位に保たれる。この反転端子に電流が流入すると、抵抗器Rにより電圧に変換される。すなわち、Vout=−iRなる出力を得る。すなわち、この電流検出回路は、機能的には入カインピーダンスがほぼ0で、入力電流に比例した出力電圧を得ることが出来る回路である。
【0032】
この電流検出回路を図2の電流検出回路18および19に用いる。その際、反転入力端子(−)を第2および第3の電極12および13に接続する。これにより、駆動電圧は、第1の電極11と第2および第3の電極12および13との間に加わることになり、第2および第3の電極12および13間の起電力は、電流検出回路18および19の出力間の電位差として検出できることになる。
【0033】
次に、本発明の上記実施の形態における圧電振動子の駆動原理を、図面を参照して具体的に説明する。
【0034】
図4(a)及び(b)は、図1および図2に示したエネルギー閉じ込め型振動子の基本構造をそれぞれ示す平面図及び電極部分のみを示す断面図である。図4(a)及び(b)を参照すると、厚さ方向(Z軸方向)に分極された圧電板10の中央部の同一面上に、X軸方向に間隔を持って対向するスリット状の電極D1およびD2が形成されている。なお、T1およびT2は端子部である。端子T1およびT2間に電圧を印加すると、対向する電極D1およびD2の間の圧電板10の領域(電極間領域)には、ほぼ板の面に平行な方向(X方向)の電界が印加されるため、この電界と直交する厚さ方向(Z軸方向)の分極との相互作用により、電極間領域にはX方向にひずみが生ずることになる。電極D1、D2の寸法を圧電板10の特性に合わせて設計し、印加電圧を電極間領域の共振周波数に合った周波数の交流電圧とすると、電極間領域に厚みすべり振動を励起することができる。その振動は電極間領域の周囲には減衰して伝搬せずに閉じ込められる。すなわちエネルギー閉じ込め振動子を構成することができる。また、この振動は、圧電板の面に平行な電界によって生ずる厚みすべり振動であるので、平行電界励振型厚みすべり振動と呼ばれる。なお、厚みすべり振動とは、圧電板の変位の方向が板面に平行で、波の伝搬方向が板の厚さ方向の振動である。この振動の様子を図解するために、図5に半波長で共振している場合の厚さ方向(Z軸方向)の変位分布を示す。
【0035】
図1および図2の振動子は、上の基本構造を利用したものである。すなわち、第1の電極11がD1電極であり、これと対向する、第2の電極12および第3の電極13がD2電極である。D2電極は、検出電極を構成するために2分割され第2の電極12および第3の電極13を構成し、それぞれ仮想接地機能を備える電流検出回路18および19に接続している。これにより、第2の電極12および第3の電極13は、仮想的に基準電位に保たれているから、電位的には接地端子とみなすことができる。従って、第1の電極11に前記圧電板の厚みすベり振動モードの共振周波数にほぼ等しい周波数の励振用の駆動電圧を印加すると、図4の振動子と同様に、第1、第2、および第3の電極11、12および13によって囲まれる領域(電極間領域)に、第1の電極11の中心と、第2および第3の電極12および13の中心を結ぶ直線の中点を結ぶ直線の方向(X方向)のエネルギー閉じ込め振動モードの厚みすベり振動が発生する。
【0036】
この状態で、前記圧電板10をその主面と直交する軸の回りに回転させたると、コリオリ力の作用により、前記励振されている厚みすベり振動の方向と直角な方向(Y方向)の厚みすベり振動が発生する。このコリオリ力により発生した厚みすベり振動により、第1の電極11と第2の電極12の間、および第1の電極11と第3の電極13との間のインピーダンスが変化し、その結果として、前記電流検出回路18及び19に流れ込む電流値が変化する。第2の電極12と第3の電極13は前述したように、励振されている厚みすベり振動の方向(X方向)に対して対称に配置されているため、電流検出回路18、19に流れ込むコリオリ力による振動によって変化する電流は、振幅が等しく、互いに180度位相の異なった電流となる。従って、電流検出回路18および19の出力電圧も、互いに180度位相の異なった電圧となり、これらの出力電圧の差を差動回路22により差電圧として検出し、同期検波回路23によってこの電圧を所定のタイミングで同期検波し、整流回路24で整流することにより、印加した回転角速度に比例した直流の出力電圧を検出出力として得ることが出来る。
【0037】
一方、電流検出回路18、19は自励発振条件を満足するための発振回路25と振動子駆動回路26を介して電極11に接続され、自励発振ループを構成している。これにより、振動子の共振周波数を自動的に迫尾して効率よく振動子を駆動できるから、高感度なジャイロを得ることができる。
【0038】
図9は、他の回路構成を示すもので、第1の電極11を接地し、第2および第3の電極間に抵抗R1およびR2の直列回路からなる分圧回路を接続し、その分圧電圧で発振駆動回路27を制御する。この発振駆動回路は、接地され、これにより、第1の電極11と第2および第3の電極との間に駆動電圧が印加される。なお、発振駆動回路27は図2の発振回路25と駆動回路26とからなるものである。分圧回路の両端は、差動回路22に接続される。この差動回路22、検波回路23、整流回路24は、図2と同様である。
【0039】
ここで、本発明に用いる圧電板が「厚み方向の分極を有する」とは、厚み方向にのみ分極されているものに限定するものではなく、厚み方向の分極成分を有するものも含むものとする。もちろん厚み方向の分極成分の大きな方が良いので、厚み方向のみに分極されているものが最も有利である。
【0040】
圧電板10として圧電セラミックスを用いた場合には、公知のように分極処理を必要とするが、分極領域は、圧電板の全体に亘っても良いし、振動を閉じ込める領域のみに限っても良い。
【0041】
圧電板10として、圧電結晶板(例えば水晶、LiNbO3、LiTO3等)を用いることができる。その場合、厚み方向の分極軸を持たせるために、Zカットの板が最も好ましいが、回転Yカットの板を用いることもできる。
【0042】
尚、上記実施の形態においては、d/t<7およびL/d≧3の両条件を同時に満たすものを示したが、高調波振動モードの抑制とスプリアス振動の抑制のいずれか一方のみを図る場合には、それに対応した一方の条件のみを満たすようにすれば良いことは言う迄もない。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、エネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロにおいて、駆動電極および検出電極をd/t<7、および/あるいは、L1/d≧3を満足するように設けることによって、被調和高次モードの振動が発生せず、かつ/あるいは、スプリアスの少ない、高感度の圧電振動ジャイロを得ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、電板の主面上に平行に配置した1対のスリット状電極のみを用いて駆動を行い、該一対の電極の内の一方の電極を2分割して検出電極として検出を行うので、駆動電界が検出電極の存在によって悪影響を受けず、X方向振動を励振するための電界を保ったままY方向振動を検出することができ、小型、構造が簡単、高精度、高感度の振動ジャイロを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による圧電振動子の構成を示す斜視図である。
【図2】圧電振動子を用いたジャイロの回路構成を示すブロック図である。
【図3】図2の回路で用いる電流検出回路の一例を示す回路図である。
【図4】図1および図2の圧電振動子に採用した振動子基本構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は、電極の端子部を除いた側面図である。
【図5】図4の基本構造の振動子の厚みすべり振動における厚み方向の変位分布を示す図である。
【図6】振動モードの次数に対応するX方向の振動波形を示す図である。
【図7】圧電板のX方向の長さと厚みの比に応じて発生する振動周波数と各振動モードの次数との関係を示すグラフである。
【図8】厚みすべり振動の励振方向(X方向)の変位分布を示す図である。
【図9】圧電振動子を用いたジャイロの他の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 圧電振動子
10 圧電板
11 第1の電極
12 第2の電極
13 第3の電極
14、15、16 端子部
18 電流検出回路
19 電流検出回路
22 差動回路
23 同期検波回路
24 整流回路
25 発振回路
26 駆動回路
27 発振駆動回路
31 演算増幅器

Claims (7)

  1. 厚みtの圧電板の厚み方向に分極を有する領域の主面上に駆動用の平行電極を形成し、さらに、該平行電極間に対の一方を駆動専用電極とし、該平行電極対の他方を当該長手方向に二分割して検出用電極対とした構造を有し、
    前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に電界を印加してエネルギー閉じ込め厚みすべり振動を励振し、前記検出用電極対間に該圧電板に厚み方向を回転軸とした回転が加わったときに生じるコリオリ力による振動に対応した起電力に基づいて、回転角速度を検出する圧電振動ジャイロスコープであって
    前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に、d/t<7を満たす間隔dを形成したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  2. 長さL1の圧電板のほぼ中央部の厚み方向に分極を有する領域の主面上に駆動用の平行電極を形成し、さらに、該平行電極間に対の一方を駆動専用電極とし、該平行電極対の他方を当該長手方向に二分割して検出用電極対とした構造を有し、
    前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に電界を印加してエネルギー閉じ込め厚みすべり振動を励振し、前記検出用電極対間に該圧電板に厚み方向を回転軸とした回転が加わったときに生じるコリオリ力による振動に対応した起電力に基づいて、回転角速度を検出する圧電振動ジャイロスコープであって
    前記駆動専用電極と前記検出電極対との間に、前記L1の長さ方向にL1/d≧3を満たす間隔dを形成したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  3. 請求項1あるいは2の圧電振動ジャイロスコープにおいて、
    前記主面上に第1の方向に前記所定間隔だけ離れたに位置の内、一方の位置に前記第1の方向と直角の方向に延在してストリップ状の第1の電極を形成し、他方の位置に前記第1のストリップ状の電極とほぼ平行な方向に互いに間隔をおいて延在した第2および第3の電極を形成し、
    前記第1の電極と前記第2及び第3の電極とを前記駆動用の平行電極として励振用の駆動電圧を印加し、
    前記第2および第3の電極間に生じる前記コリオリ力による振動に対応した起電力を検知するようにし、前記第1の電極と前記第2及び第3の電極との間に生ずるエネルギー閉じ込め振動モードを利用したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  4. 請求項3の圧電振動ジャイロスコープにおいて、前記前記第2及び第3の電極はそれぞれ仮想接地機能を備えた第1及び第2の電流検出回路に接続してあり、前記第1の電極に励振用の駆動電圧を印加し、前記第1及び第2の電流検出回路出力間に生ずる差電圧として検出出力を得るように構成したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  5. 請求項4の圧電振動ジャイロスコープにおいて、前記第1及び第2の電流検出回路の出力間に接続され該両電流検出回路の出力電圧の差を検出するための作動回路と、該作動回路出力に接続された同期検波回路と、該同期検波回路の出力に接続された整流回路と、前記第1及び第2の電流検出回路の出力間に接続され自励振駆動用周波数の交流電圧を前記第1の電極に印加する駆動回路とを備えていることを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の圧電振動ジャイロスコープにおいて、前記圧電板として圧電セラミックスを用い、該圧電セラミックスの前記第1乃至第3の電極間及びその近傍の領域のみを厚さ方向に分極したことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載の圧電振動ジャイロスコープにおいて、前記圧電板として厚み方向に分極軸を有する圧電結晶板を用いたことを特徴とするエネルギー閉じ込め型圧電振動ジャイロスコープ。
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