JP3732004B2 - 一酸化炭素除去装置およびその運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムにおける一酸化炭素除去装置およびその運転方法の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムは、燃料電池のアノード側に水素を含むアノードガス、カソード側に酸素を含むカソードガスをそれぞれ供給して、水素と酸素を電気化学的に反応させて発電を行うものである。通常カソードガスとしては空気が用いられるが、アノードガスとしては天然ガス・ナフサ等の軽質炭化水素、またはメタノール等の低級アルコール類を燃料とし、これらを水蒸気改質反応あるいは部分酸化反応等の改質反応により水素リッチな改質ガスとしたものが用いられている。
【0003】
燃料の改質反応に際しては、燃料電池システムに使用されている白金(Pt)系触媒を被毒する一酸化炭素(以下CO)が副反応で生じる。このCOは、燃料電池に到達するまでにCO変成器において1%程度の濃度に低減されるが、これにCO除去装置を加えて用いると約100ppm(0.01%)以下の濃度にまで低減させることが可能となる(特開平3-276577号公報に記載)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでCO除去装置に導入する改質ガスには、CO除去反応(選択酸化反応)を行うために予め酸化剤として酸素を含む気体(空気等)を混合させる必要がある。ここで、酸素濃度が比較的高くなるCO除去装置のガス導入口付近では反応が急激に反応しやすく、このときの反応熱により触媒層温度が適正温度範囲を超えるまで上昇すると、CO選択性が低下して燃料電池システムとしては有害な水素の燃焼反応等の副反応が進行する。さらに、CO除去装置のガス排気口付近では、ガス導入口とは逆に酸素不足により本来行われるべき選択酸化反応の進行が妨げられることとなる。
【0005】
これに対し、例えば特開平8-47621号公報や特開平8-133702号公報には選択酸化反応の進行度合に応じてCO除去装置への空気供給量を調節し、反応の急激な進行を防止させる技術が開示されている。しかし、この空気量の調節によって酸素量を減らすとCOを酸化除去するための酸素量が不足する場合があり、CO除去装置全体での選択酸化反応を抑制させる副作用をも有していると考えられる。
【0006】
現在では、このようなCO除去装置の反応効率を向上させるための技術開発について、さらなる期待が寄せられている。
本発明は上記課題に鑑みてなされてたものであって、その目的はCO除去装置のガス導入口付近における急激な反応、およびガス排気口付近における反応性低下等の温度制御に関連する問題を回避し、良好に選択酸化反応の効率を維持しつつCOを除去することが可能な燃料電池システムのCO除去装置およびその運転方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
上記問題を解決するために、本発明は一酸化炭素を含む水素リッチな改質ガスに空気を混合して反応ガスを生成し、反応器内の触媒により前記反応ガス中の一酸化炭素を除去する燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置において、一酸化炭素除去前に予め反応ガスの熱容量を増加させつつ反応ガス中の一酸化炭素および酸素を希釈するために、燃料電池の冷却水により前記空気を加湿する反応ガス希釈手段を備え、且つ前記反応ガス希釈手段は、燃料電池のカソード排気ガスを改質ガス側へ供給するカソード排気ガス供給手段を備える燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置とした。
【0008】
このような反応ガス希釈手段により、酸素/一酸化炭素(O2/CO)比を大幅に変化させることなく反応温度の過度の上昇を抑制することが可能になり、効率のよいCO選択酸化反応を行うことができる。
また、前記反応ガス希釈手段を、空気を加湿する加湿手段によって実現すれば、加湿手段で空気に加えられた比較的不活性な水蒸気によって、反応ガスを安全に希釈することができると共に、反応ガス全体の熱容量を増加させ、上記温度上昇の抑制効果を高めることができる。
【0009】
さらに、一酸化炭素除去装置を燃料電池システム用のものとし、前記加湿手段を燃料電池の冷却水により空気を加湿するものとした場合には、システム内における資源を利用することで外部より新たに装置を備える必要がなくなり、燃料電池システムのコンパクト化に寄与できる他、コスト的にも有利になる。
また一酸化炭素除去装置を燃料電池システム用のものとし、前記反応ガス希釈手段に、燃料電池のカソード排気ガスを改質ガス側へ供給するカソード排気ガス供給手段を備えると、燃料電池の運転により酸素量が低減され加湿状態にある空気であるため、上記した水による反応ガスの熱容量の制御効果とともに、通常の空気を使う場合と比べてO2/COを等しくした場合、より多くの水蒸気とN2で希釈することができ、良好な選択酸化反応を行って効率よく電力が得られる燃料電池システムとすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
(参考例1)
(燃料電池システムの全体構成の説明)
図1は、参考例1にかかる固体高分子型燃料電池システムの構成図である。
【0011】
この燃料電池システムは、天然ガス、都市ガス、ナフサ等の燃料ガスを用いて発電するものであって、その主とする構成は、燃料ガス中の硫黄成分を除去する脱硫器1と、燃料ガスを高温の水蒸気と混合するエジェクタ2と、燃料ガスを水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質装置3と、改質ガス中のCOを水蒸気によりCO2に酸化して(シフト反応)除去するCO変成器4と、改質ガス中のCOを選択酸化してさらに除去するCO除去装置5と、CO除去装置5からの改質ガスを燃料極(アノード極)61に取り入れ、空気極(カソード極)62に酸素源である空気を取り入れて発電する固体高分子型燃料電池6とに大きく分けられる。
【0012】
脱硫器1は脱硫用のコバルト-モリブデン(Co-Mo)系または酸化亜鉛(ZnO)系触媒等が内部に充填されており、ヒータ(不図示)で約200℃300℃付近まで加熱されることにより燃料ガスに含まれる硫化水素(H2S)・硫化アルキル(R-SH)等の各種硫黄成分を吸着除去する。
改質装置3は、本参考例1では水蒸気改質反応による改質方式を採用しており、内部に改質触媒としてニッケル(Ni)系触媒が充填された円筒状の改質器31と、燃料ガスを燃焼して前記改質器31を高温に加熱昇温させるバーナ32とで構成されている。
【0013】
CO変成器4は、円筒状容器にCO変成用触媒として銅-亜鉛系触媒等が充填されており、改質装置3から送出される改質ガスと水蒸気の混合ガスを筒長さ方向に流通させながら、180℃〜250℃程度の運転温度においてCOをCO2に酸化し(シフト反応)、改質ガスのCO濃度を約1%(10、000ppm)にまで低減する。
【0014】
CO除去装置5は、本参考例1では選択酸化反応器51と空気加湿器56から構成される。この選択酸化反応器51と空気加湿器56は後述の配管52、105により互いに連結されている。
このうち空気加湿器56の主体をなす円筒状のバッファ槽561は筒長さ方向を上下にして内部中程まで冷却水Aが満たされており、この冷却水A中に吹き込み管として空気導入管55がバッファ槽蓋562を介して挿入されている。バッファ槽蓋562にはさらに加湿空気流通管54が挿通されており、冷却水A上方の空気部Bの加湿空気がエアポンプ53の吸引によって加湿空気流通管52へ送出される。当該加湿空気流通管52を流れる加湿空気は、選択酸化反応器51に改質ガスを送り込む配管105に送出され、改質ガスと混合されて反応ガスの生成に供される。
【0015】
冷却水Aは、燃料電池6内に冷却制御部として備えられたクーリング部63の内部へ環状配管111を通して循環される冷媒が、バッファ槽561内に滞留したものである。燃料電池6内部の冷却処理に供された冷却水(約80℃)は、このように一旦前記バッファ槽561にて滞留する間に、蒸発等による損失分を補充タンク(不図示)により補充されつつ、前記加湿空気の生成に用いられる。冷却水Aはポンプ113の駆動により一定時間後に環状配管111から熱交換器112に導入され、ここで適温まで冷却された後に再びクーリング部63に送り込まれる。
【0016】
選択酸化反応器51は円筒状容器に選択酸化触媒として白金-アルミナ(Pt-Al2O3)系触媒等が充填されたものであって、前記反応ガスを内部に取り込み、触媒適正温度域(上記触媒の場合はほぼ100℃〜250℃の範囲)において選択酸化反応を行いCO濃度を約0.01%(100ppm)以下まで低減する。
【0017】
燃料電池6は固体高分子型燃料電池であり、アノード(負極)部61とこれに対向するカソード(正極)部62、および前記電極部61、62の対向間に配された電解質部(不図示)、そして燃料電池6筐体内部に挿通された前記環状配管111を備えるクーリング部63等よりなる。
(配管についての説明)
燃料ガス(改質ガス)系の配管としては図1に示すように、都市ガスなどの燃料ガス供給源(不図示)から脱硫器1に燃料ガスを送る配管100、脱硫器1からエジェクタ2に燃料ガスを送る配管101、前記燃料ガス供給源から改質装置3のバーナ32に燃料ガスを送る配管102、エジェクタ2から改質装置3に燃料ガスと熱水蒸気の混合ガスを送る配管103、改質装置3からCO変成器4に改質ガスを送る配管104、CO変成器4から選択酸化反応器51に改質ガスを送る配管105、選択酸化反応器51から三方弁107を経て燃料電池6のアノード部61に改質ガスを送出する配管106、108、アノード部61からバーナ32に未反応のアノード排ガスを送る配管109等が配設されている。
【0018】
水系の配管としては、燃料電池6のクーリング部63、空気加湿器56、熱交換器112に順次冷却水を循環させる環状配管111が配設されている。水蒸気と空気の混合ガス(加湿空気)に対しては、加湿空気流通管54、52がある。その他には、バーナ32に空気を送る配管114と、システム起動時に選択酸化反応器51から送出されるガスを燃料電池6を迂回させてバーナ32に送るため、三方弁107からガス流通経路としてバイパス配管110が備わっている。
【0019】
また図の簡単化のため図示しないが、これらの配管には流量を調節するバルブ(不図示)が各々挿設され、燃料電池システムの運転状況に合わせて調節できるようになっている。
(運転方法についての説明)
以上のような構成を有する本燃料電池システムの起動初期においては、まず燃料ガスの改質反応を開始するために改質装置3の改質器31の昇温が重要となる。したがって、初めに燃料ガスが全て配管102を流通しバーナ32に直接送られるようにバルブを操作する。
【0020】
次に、配管114および配管102からバーナ32に空気と燃料ガスをそれぞれ送り込み、バーナ32を点火して燃料ガスを燃焼させ、改質器31を加熱昇温する。このとき三方弁107は、ガスをバイパス配管110側に流通させるように設定しておく。また同時にCO変成器4、選択酸化反応器51および燃料電池6も、ヒータ(不図示)などの外部熱により加熱昇温する。
【0021】
改質器31が約400℃まで加熱昇温され、CO変成器4および選択酸化反応器51が水蒸気の露点以上に昇温された後、バルブを操作して脱硫器1に燃料ガスを導入し、脱硫処理を行う。
次に脱硫処理した燃料ガスを配管101からエジェクタ2に導入し、ここで燃料ガスと高温の水蒸気を混合し、配管103から改質器31に導入する。
【0022】
次に前記混合ガスを改質器31の内部に通過させ、改質反応を開始させる。生成した改質ガスをCO変成器4および選択酸化反応器51側に順次送り、配管106から配管110へ流通させてバーナ32に供給する。これにより、改質器31は運転温度範囲の700〜800℃まで加熱昇温され、CO変成器4および選択酸化反応器51もCO変成反応と高温の改質ガスによりそれぞれ加熱昇温される。
【0023】
改質器31、CO変成器4、選択酸化反応器51および燃料電池6が運転温度範囲まで加熱昇温された時点で、3方弁107を燃料電池6側に切り換えて通常運転に入る。これで燃料電池6のアノード部61に水素リッチな改質ガスが導入され、カソード部62にはエアポンプ64、空気導入管65を通じて空気が取り入れられるので、電気化学的反応が進行し発電が行われる。
【0024】
なお燃料電池システム内における各構成の運転温度範囲は、改質器31が約700〜800℃、CO変成器4が約180〜300℃、選択酸化反応器51が約100〜250℃、燃料電池6が約70〜80℃である。この運転温度範囲において、本燃料電池システムでは燃料電池6から外部負荷への電力供給が行われる。
【0025】
通常運転中の燃料電池システムにおける空気加湿器56は、エアポンプ53が加湿空気流通管52方向に吐出するように駆動されると、バッファ槽561内部が減圧されて燃料電池システム周辺の空気が空気導入管55からバッファ槽561内の冷却水A中に取り込まれる。この空気は冷却水Aの温度(約80℃)を露点として加湿され、その後空気部Bに移動し、加湿空気流通管54、52を介してエアポンプ53により配管105へ送出される。これによって選択酸化反応器51には、CO変成器4からの改質ガスと、前記加湿空気混合ガスとを混合した反応ガスが送り込まれる。
【0026】
以上のような構成により、選択酸化反応中の過度の温度上昇を回避するために反応ガス成分の空気を加湿するわけであるが、その効果が得られる具体的な作用としては主に次の2つが挙げられる。すなわち、水蒸気の体積を用いてCOやO2等の反応ガス成分の濃度を希釈することと、水蒸気の熱容量を利用して反応ガス全体の熱容量を大幅に増大させることで、上記温度上昇の抑制効果を高める。
【0027】
また、この水蒸気は燃料電池の電解質膜(固体高分子電解質膜)の乾燥を防ぎ、良好な発電を行うために電解質膜を湿潤する目的にも用いられる。
なお、本参考例1ではバルブ等の公知のガス流量調節器によって改質ガス中のCOと加湿空気中のO2との比を維持するように制御がなされている。この制御に関する設定は、使用する燃料ガスの組成等に応じて適宜調整可能になっている。
【0028】
(実施の形態1)
続いて本発明の実施の形態1について説明する。図2は、本実施の形態における燃料電池システムの主要構成を示す概略図である。システム構成の多くは参考例1と同様であるが、空気加湿器56で生成した加湿空気を燃料電池6で使用し、カソード排気ガスとしたものをCO除去装置5の選択酸化反応器51へ導入する点が異なる。
【0029】
一般的に燃料電池においては、空気が酸素源として用いられている。酸性電解質型燃料電池では、カソード付近において酸素と水素イオンが反応して水が生じるので、燃料電池に供給される空気が排出される時には酸素量が当初より数割減少し、かつ酸素量に対する窒素量が増加した水蒸気リッチな排気ガス(カソード排気ガス)となる。特に固体高分子型燃料電池においては、電解質膜を湿潤状態に維持するため加湿空気がカソード側に供給されるので、カソード排ガス中では酸素に対して比較的多くの窒素と水蒸気が含まれることとなる。これらはともに反応ガスの熱容量を増加させることができるので、本実施の形態ではこのカソード排気ガスを反応ガス成分として利用するものである。
【0030】
その具体的な手段としては図2に示すように、カソード部62の排気管68に配管105側と連結するカソード排気ガス供給管69を備える。カソード排気ガス供給管69にはエアポンプ70を配置する。また、カソード部62の空気導入管65と前記排気管68で直結するバイパス配管66を設け、当該バイパス配管66と空気導入管65の連結部に三方弁67を配設する。
【0031】
なお本燃料電池システムでは、燃料電池6の電解質膜を湿潤するために空気加湿器56で加湿した空気をカソード部62へ導入する。
(燃料電池システムの運転方法)
以上のような構成の燃料電池システムの運転方法は、システムの運転とともに以下のように行う。なお前記実施の形態と重複する一部の説明を省略する。
【0032】
当該燃料電池システムの起動初期の操作は前記のシステムとほぼ同様である。まず燃料ガスを配管102からバーナ32に送り込み、これを燃焼して改質器31を400℃程度まで加熱昇温する。
続いて燃料ガスを脱硫器1および改質器31側に送り、CO変成器4・選択酸化反応器51の内部を順次流通させて配管110よりバーナ32に導入するように三方弁107を調節する。また、これと平行して三方弁67を調節し、配管105にエアポンプ64、70により通常の加湿空気が送り込まれるようにする。一定時間後にCO変成器4・選択酸化反応器51がそれぞれの反応の開始可能レベルに到った後、前記三方弁107を操作して選択酸化反応器51からの改質ガスを燃料電池6のアノード部61側へ流通させ、三方弁67をカソード部62側に設定して加湿空気をカソード部62へ導入する。これにより、燃料電池6にて発電が開始され、選択酸化反応器51への反応ガスにカソード排気ガスが導入される。以上の操作でCO除去装置5および燃料電池システムを通常運転に移行させることができる。
【0033】
(反応ガス組成比と反応効率の説明)
次に、上記した参考例1および実施の形態1のCO除去装置に導入する反応ガスの組成と、CO除去装置の反応効率について、反応ガス組成比を表す図(図3)と、選択酸化反応器51中の触媒層の温度分布を表す図(図4)を用いて説明する。
なお燃料電池システムに導入する燃料ガスとしては、都市ガス13A(組成;メタン88%、エタン6%、プロパン4%、ブタン2%)を使用した。改質装置内の改質器に導入される水蒸気の水分子と燃料ガス中の炭素原子とのモル比率(スチーム/カーボン比)は約2.5である。また、改質器における改質反応温度を約700℃付近、CO変成器での変成反応温度を約230℃付近にそれぞれ設定した。
【0034】
図3には、CO変成器4から送出される改質ガス301に各種の気体を混合して反応ガスとし、通常の空気を混合したガス(従来例)302、燃料電池6の冷却水で加湿した空気(露点80℃)を混合したガス(参考例1)303、および燃料電池6のカソード排気ガス(空気利用率50%、露点80℃)を混合したガス(実施の形態1)304の反応ガスの成分を示した。尚、それぞれO2/CO比が3となるようにしている。反応ガス組成はH2、CO、CO2、CH4、H2O、N2、O2等の成分からなり、このうちCOの選択酸化反応に主として関係するのはCOとO2成分である(選択酸化反応;CO+1/2O2→CO2)。
【0035】
尚、参考例1、実施の形態1と従来例で電池出力1kWあたりのガス流量は以下の通りである(水素利用率70%、平均セル電圧0.6Vの場合)。
従来例; 28.7L/min
参考例1; 31.0L/min
実施の形態1; 35.3L/min
この図から明らかなように、従来の空気混合ガス302中ではH2Oが10.9%程度含まれるのに対し、加湿空気混合ガス303では17.5%、カソード排気混合ガス304に到っては20.6%に達する。このように、上記した実施の形態1における反応ガスはH2Oを従来の2倍近くの組成比で含んでいる。なおO2/CO比は、COの選択酸化反応に伴って他の成分の酸化反応が多少ながら生じるため、O2量を理論上よりも多めに(O2/CO比を3程度に)設定するのが好ましい。
【0036】
以上のような組成の反応ガスをCO除去装置の選択酸化反応器に導入すると、酸化触媒層の温度分布はそれぞれ図4の温度分布表のようになる。当図において曲線(i)は従来の空気混合ガス302、曲線(ii)は加湿空気混合ガス303、曲線(iii)はカソード排気混合ガス304の各温度曲線を示す。
まず選択酸化反応器51内部に約100〜150℃ほどの空気混合ガス302を導入した場合は、導入後間もなくガス入口付近で急激に反応するため触媒層が温度上昇し高温状態(約200〜250℃)に到達するようになる。選択酸化反応の適正温度領域の上限は約200℃付近であるから、反応器にガスが導入されてからCO除去がなされるのは触媒層がこの高温領域に達するまでの間に限られている。しかしながら曲線(i)が示すように、選択酸化反応を為し得る実際の触媒層の領域はこのガス導入口付近に限られていた。
【0037】
しかしながらこれに対し、加湿空気混合ガス303(曲線ii)を選択酸化反応器(51)に導入した場合には、反応ガスが選択酸化触媒に接触してもO2成分が希釈されているために反応が抑制され、穏やかに反応が開始される。また、水蒸気の増加により反応ガスの熱容量が増加しているために反応温度の急激な温度上昇も回避されるので、図4に示すように触媒温度の上昇カーブが緩やかになり、その分選択酸化反応に寄与する触媒層の領域がガス入口からガス出口にわたって長くなる。これにより、CO除去効率が向上される。
【0038】
カソード排ガス304(曲線iii)を使用した場合には、上記加湿空気混合ガス303(曲線ii)の効果に加えて次の効果がある。すなわちカソード排ガス304の酸素濃度は燃料電池の稼働により通常空気に比べて低いため、露点およびO2/CO比を加湿空気混合ガス303と同様にした場合にはガス中のN2及び水蒸気量がさらに増加することになり、これによって酸化反応の抑制効果が向上される。また熱容量も増加するため、反応温度の上昇に対して、より有効な制御を為すことができる。
【0039】
このような水蒸気による効果は、反応ガスに添加する水蒸気の量に一般に比例し、その効果は反応ガスの水蒸気飽和量を最大値として、一酸化炭素除去装置周辺の空気の水蒸気量を最小値とした場合の範囲に得られる。この範囲において、水蒸気量が多いほど反応ガスの熱容量を増加させつつ、一酸化炭素および酸素濃度を希釈して選択酸化反応の効率を高める効果は高くなる。しかし、多量に水蒸気を添加する場合には、水蒸気発生のための熱源を必要とするため、システムの熱バランスを考慮して添加量を調整する必要があるのは言うまでもない。また、水蒸気量が少なくてもわずかながら効果があるが、燃料電池6の排熱を利用し、冷却水やカソード排気ガスの温度(約80℃)程度を露点として添加量を設定した方が、加湿のための設備を新たに備える必要もなく、効果的な結果を得られるので望ましい。
【0040】
なお実施の形態では、反応ガスに水蒸気を混合する例を示したが、COの選択酸化反応に対して比較的不活性な成分であればよいので、他にN2であってもよい。但しN2等を使用する場合には、これを供給するための設備を別途配設しなければならない。
さらに上記実施の形態では反応器51が円筒形状である例を示したが、角筒形状などでもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置は、一酸化炭素を含む水素リッチな改質ガスに空気を混合して反応ガスを生成し、反応器内の触媒により前記反応ガス中の一酸化炭素を除去する燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置において、一酸化炭素除去前に予め反応ガスの熱容量を増加させつつ反応ガス中の一酸化炭素および酸素を希釈するための反応ガス希釈手段を備え、当該反応ガス希釈手段は、カソード排気ガス供給手段を有し、当該カソード排気ガス供給手段は、前記空気と燃料電池の冷却水による水蒸気とを混合してなる混合ガスが燃料電池のカソードに導入された後のカソード排気ガスを前記改質ガス側へ供給する構成であるため、従来のように反応器のガス導入口付近で選択酸化反応が急激に進行して反応効率が低下するのを回避でき、良好に選択酸化反応の効率を維持しつつ、COを除去することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 燃料電池システム(参考例1)の主要構成を示す概略図である。
【図2】 本発明の一適用例である燃料電池システム(実施の形態1)の主要構成を示す概略図である。
【図3】 反応ガス組成比を表す図である。
【図4】 選択酸化反応器の触媒層の温度分布を表す図である。
Claims (3)
- 一酸化炭素を含む水素リッチな改質ガスに空気を混合して反応ガスを生成し、反応器内の触媒により前記反応ガス中の一酸化炭素を除去する燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置において、
一酸化炭素除去前に予め反応ガスの熱容量を増加させつつ反応ガス中の一酸化炭素および酸素を希釈するための反応ガス希釈手段を備え、
当該反応ガス希釈手段は、カソード排気ガス供給手段を有し、
当該カソード排気ガス供給手段は、前記空気と燃料電池の冷却水による水蒸気とを混合してなる混合ガスが燃料電池のカソードに導入された後のカソード排気ガスを前記改質ガス側へ供給する
ことを特徴とする燃料電池システム用の一酸化炭素除去装置。 - 前記燃料電池は、固体高分子型燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の一酸化炭素除去装置。
- 燃料電池システムにおける一酸化炭素除去装置の運転方法であって、一酸化炭素を含む水素リッチな改質ガスに空気を混合して反応ガスを生成する反応ガス生成ステップと、反応器内の触媒により前記反応ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去ステップとを備え、
前記反応ガス生成ステップでは、前記空気を燃料電池の冷却水による水蒸気と混合してこれを加湿し、当該水蒸気と空気の混合ガスを、燃料電池のカソード排気ガスとともに前記改質ガスと混合して反応ガスの熱容量を増加させつつ、反応ガス中の一酸化炭素および酸素濃度を希釈するサブステップを備える
ことを特徴とする一酸化炭素除去装置の運転方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP06690698A JP3732004B2 (ja) | 1998-03-17 | 1998-03-17 | 一酸化炭素除去装置およびその運転方法 |
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JP06690698A JP3732004B2 (ja) | 1998-03-17 | 1998-03-17 | 一酸化炭素除去装置およびその運転方法 |
Publications (2)
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