JP3731862B2 - マグネットダンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等に用いられ、特にステッピングモーター等の回転軸に取り付けられ回転速度の変動(回転ムラ)を低減し回転をスムーズにすることが可能なマグネットダンパに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、回転シャフト側に軸受部材により回転自在に保持されるフライホイールと、該シャフトに固定されている磁性体からなるフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石と、前記フランジヨークと前記永久磁石の間に介在するスペーサからなるマグネットダンパがあり(特開平8−335512号公報)、図7にその構造を示す。
【0003】
図7において、40はフライホイールであり、円板状永久磁石41の外周側に樹脂42を積層一体化したものである。また、50は磁性体のフランジヨークである。
【0004】
一般に、マグネットダンパでは、取付けられるステッピングモーターの仕様によって必要とされる特性値(慣性モーメントや吸引力)が異なるため、各々のステッピングモーターに適合したマグネットダンパの設計が必要になる。例えば、図7の従来技術では、各々のステッピングモーター毎に異なる直径の磁石41を用意する必要があり、構造上、多品種となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のマグネットダンパでは取付けられるステッピングモーターの仕様によって必要とされる特性値(慣性モーメント、吸引力)が異なるため各々のステッピングモーターに適合したマグネットダンパの設計が必要になっていた。
【0006】
そこで、本発明の第1の目的は、上記の点に鑑み、ステッピングモーター等の多様な仕様に迅速に対応可能なマグネットダンパを提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、フランジヨークと永久磁石間のスペーサの材質を改善することで、スペーサの削りかすの発生防止を図り、長期間使用においても安定に動作するマグネットダンパを提供することにある。
【0008】
本発明の第3の目的は、フランジヨークの構造を改善することで、フランジヨークの製造を容易とし、ひいては原価低減を図ることのできるマグネットダンパを提供することにある。
【0009】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願第1発明は、回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されている磁性体からなるフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
前記永久磁石が部分着磁され
前記永久磁石の内周から該内周と外周間の所定半径位置に至るまでの着磁部と、該着磁部より外側の無着磁部とからなっているか、又は
前記永久磁石の内周から外周に至る扇形の無着磁部を1箇所又は複数箇所設け、残りの扇形部分を着磁部分として、
前記永久磁石と前記フランジヨーク間の磁気吸引力が所望値に設定されていることを特徴としている。
【0011】
また、本願第2発明は、回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されている磁性体からなるフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
前記フランジヨークと前記永久磁石間にスペーサが介在しており、該スペーサが超高分子ポリエチレン樹脂であることを特徴としている。
【0012】
本願第3発明は、回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されているフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
前記フランジヨークが磁性体からなるフランジ部と磁性体又は非磁性体からなる軸部の別部品よりなり、前記フランジ部と前記軸部とを結合一体化した構成であることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るマグネットダンパの実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1乃至図3で本発明の第1の実施の形態を説明する。ここで、図1は半分を断面とした側面図(図2のI−Iよりみた断面を示している)、図2は正面図、及び図3は回転シャフト及びヨーク部材を省略した正面図(図1のIII−III矢視図)である。
【0015】
これらの図において、1は鋼板で、中心穴2a又は2b及び積層用の2個以上の貫通穴3を有するように円板状に金属プレス金型加工で打ち抜いたものであり、複数枚積層されて貫通穴3を貫通する貫通固定部材5により一体化されてフライホイール10を構成している。但し、磁性体のフランジヨーク30に対向する側の鋼板1の中心穴2bは、フェライト焼結磁石等の円板状の部分着磁永久磁石(マグネット)20を取り付けるために他の部分の中心穴2aよりも大径となっている。この結果、フライホイール10のフランジヨーク30に対向する側に鋼板1の積層体の中心穴2bで形成された円板状凹部4が形成される。
【0016】
前記円板状凹部4には、前記中心穴2aと同じ内径の中心穴21を持つ円板状の部分着磁永久磁石20が配置固定され、積層された鋼板1の中心穴2aの内周及び永久磁石20の中心穴21の内周に円筒形軸受部材15が挿入固定されている。このフライホイール10の中心穴への軸受部材15の固定及びフライホイールの凹部4への永久磁石20の固定は接着剤を用いて一度に行う。なお、鋼板1の中心穴2aはプレス加工で高精度で形成されているから、永久磁石20の中心穴21を幾分大きく形成しておくことで、永久磁石20の内周面加工はせずに軸受部材15を中心穴2a,21に挿入して接着可能である。
【0017】
前記フライホイール10を磁性体にて構成することで、部分着磁永久磁石20とフランジヨーク30間に磁気回路を構成している。ここで、フェライト焼結磁石等の円板状の部分着磁永久磁石20は、部分着磁が施されたものであり、その内周から内周と外周間の所定半径位置に至るまでの着磁部20aと、それより外側の無着磁部20bとからなる。所定半径よりも内側の着磁部20aは厚み方向に着磁され、かつ図3の磁極配置の如く片側に多極を有するように多極着磁が施されているものであり、前記着磁部20aの領域を増減することにより部分着磁永久磁石20とフランジヨーク30間の磁気吸引力を増大又は低下させて所望値に設定することが可能である。
【0018】
一方、35は電動機等の回転シャフトであり、この回転シャフト35には、鋼材等の磁性体で回転軸部31及びその端部の円形フランジ部32を有するように形成されたフランジヨーク30がビス36等で固定されている。前記永久磁石20及び軸受部材15を一体化したフライホイール10は軸受部材15により回転シャフト35側、つまりフランジヨーク30の回転軸部31の外周に回転自在に嵌合され、フランジヨーク30のフランジ部32が、円形薄板状の超高分子ポリエチレン樹脂のスペーサ37を介して永久磁石20に対向する配置となる。前記永久磁石20とフランジヨーク30(主としてフランジ部32)との磁気吸引力によりフライホイール10はシャフト35側に回転可能に保持される。この場合、フライホイール10の慣性は十分大きく設定され、回転シャフト35に回転むらが生じるとフライホイール10は等速回転運動を持続しようとして回転シャフト35に対してスリップし、ダンパ効果を発揮する。
【0019】
なお、貫通固定部材5は鋼板1の中心に対して、2個以上点対称に設けるようにし、リベット、はとめ、螺子部材等を用いることができる。とくに、リベットや、はとめとすれば、鋼板1の積層作業がいっそう簡単でコスト低減を図り得る。
【0020】
この第1の実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0021】
(1) 永久磁石20を部分着磁することにより、必要とされる吸引力が変更された場合にも、永久磁石の外形寸法、材質等を変更しないで、永久磁石製造過程での着磁ヨークの交換により着磁面積を変化させることで対応が可能となる。つまり、各種ステッピングモーター等の仕様によって必要とされる多様な特性値(慣性モーメント、吸引力)に迅速かつ容易に適合させることができる。
【0022】
(2) スペーサについては永久磁石20とフランジヨーク30の吸引力が強力で長時間駆動された場合、スペーサが削られて吸引力変化及び削りかすが散乱し周辺機器に影響を与える恐れがある。そこで、スペーサ材として超高分子量ポリエチレン樹脂を採用し、超高分子量ポリエチレン樹脂製のスペーサ37とすることで、削りかすの発生を防止でき、信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
(3) フライホイール10は、複数枚の少なくとも2つ以上の貫通穴3の開いた鋼板1を、各々の貫通穴3に貫通固定部材5を挿通固定して積層した構成であり、積層する鋼板に特殊加工が不要であって、フライホイール部分を簡単な金属プレス金型にて作製可能である。また、鋼板の積層一体化をリベット等の貫通固定部材5にて容易に実行でき、積層枚数の変更(つまり、慣性モーメントの変更)も容易で安価で小ロット生産に適した構造とすることができる。また、積層する鋼板1の中心穴の径を部分的に変えることで、永久磁石20を配置するための凹部4を容易に形成できる。
【0024】
上記第1の実施の形態の図3では、永久磁石20の所定半径よりも内側を着磁部としたが、図4のように永久磁石20の内周から外周に至る扇形の無着磁部20dを1箇所又は複数箇所設け、残りの扇形部分を着磁部20cとして厚み方向に着磁してもよい。この場合も、片側に多極を有するように多極着磁を施すとよい。
【0025】
図5(A),(B)及び図6(A),(B)で本発明の第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態は、フランジヨーク30の構造が第1の実施の形態と異なっている他は第1の実施の形態と同様である。この場合、磁性又は非磁性体の回転軸部31と磁性体のフランジ部32とを別部材とし、両者を嵌合して組み合わせた構造としている。すなわち、回転軸部31の一端部には嵌合凸部31aが、フランジ部32の中央部には嵌合凹部32aが形成されている。嵌合凸部31a、嵌合凹部32aは回り止め形状となっている。そして、回転軸部31の嵌合凸部31aをフランジ部32の嵌合凹部32aに嵌合してかしめによりがたつきのないように結合一体化する。このかしめによる一体化は、回転軸部31とフランジ部32とが金属製の場合にとくに好ましい。
【0026】
また、回転軸部31を樹脂製にする場合、磁性体金属のフランジ部32と回転軸部31とをインサート成型で一体的に製造してもよい。
【0027】
この第2の実施の形態によれば、フランジヨーク30を回転軸部31とフランジ部32の別部品として、回転軸部31とフランジ部32とを結合一体化する構造とすることで、フランジヨーク30の製造を容易とし、機械切削加工による場合に比較して原価低減を図ることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、フライホイール10がフランジヨーク30の回転軸部31の外周に配置された構造としたが、フライホイール中心穴の軸受部材が回転シャフト1の外周に直接的に回転自在に嵌合している構造であっても差し支えない。
【0029】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本願第1発明によれば、フランジヨークとの間で磁気吸引力を発生する永久磁石を部分着磁し(前記永久磁石の内周から該内周と外周間の所定半径位置に至るまでの着磁部と、該着磁部より外側の無着磁部とからなっているか、又は前記永久磁石の内周から外周に至る扇形の無着磁部を1箇所又は複数箇所設け、残りの扇形部分を着磁部分として、)、前記永久磁石と前記フランジヨーク間の磁気吸引力を所望値に設定することにより、取り付けられるステッピングモーター等の仕様が異なった場合にも新規に金型を製作する必要がなく、仕様変更にかかるコストもリードタイムも大幅に削減出来る。
【0031】
本願第2発明によれば、フランジヨークと永久磁石間にスペーサが介在しており、該スペーサが超高分子ポリエチレン樹脂であるため、長時間駆動時のスペーサ磨耗による吸引力変化及び削りかすによる周辺機器への影響をなくすことが可能である。
【0032】
本願第3発明によれば、フランジヨークをフランジ部と軸部の別部品として、前記フランジ部と前記軸部とをかしめ等で結合一体化した構成としたので、製造容易として原価低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマグネットダンパの第1の実施の形態を示す一部を断面とした側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】実施の形態におけるフライホイール、軸受部材及び永久磁石配置、さらには部分着磁した永久磁石の着磁領域を示す正面図である。
【図4】部分着磁した永久磁石の着磁領域の他の例を示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるフランジヨークの構造を説明する分解側面図である。
【図6】同じくフランジヨークを構成する回転軸部及びフランジ部を示す正面図である。
【図7】マグネットダンパの従来例を示す一部を断面とした側面図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2a,2b,21 中心穴
3 貫通穴
4 円板状凹部
5 貫通固定部材
10 フライホイール
15 軸受部材
20 部分着磁永久磁石
20a,20c 着磁部
20b,20d 無着磁部
30 フランジヨーク
31 回転軸部
32 フランジ部
35 回転シャフト
37 スペーサ

Claims (3)

  1. 回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されている磁性体からなるフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
    前記永久磁石が部分着磁され
    前記永久磁石の内周から該内周と外周間の所定半径位置に至るまでの着磁部と、該着磁部より外側の無着磁部とからなっているか、又は
    前記永久磁石の内周から外周に至る扇形の無着磁部を1箇所又は複数箇所設け、残りの扇形部分を着磁部分として、
    前記永久磁石と前記フランジヨーク間の磁気吸引力が所望値に設定されていることを特徴とするマグネットダンパ。
  2. 回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されている磁性体からなるフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
    前記フランジヨークと前記永久磁石間にスペーサが介在しており、該スペーサが超高分子ポリエチレン樹脂であることを特徴とするマグネットダンパ。
  3. 回転シャフト側に、軸受部材により回転自在に保持される磁性体のフライホイールと、該シャフトに固定されているフランジヨークと、前記フライホイール側に固定されている永久磁石とを具備し、前記永久磁石と前記フランジヨーク間に磁気回路を構成したマグネットダンパにおいて、
    前記フランジヨークが磁性体からなるフランジ部と磁性体又は非磁性体からなる軸部の別部品よりなり、前記フランジ部と前記軸部とを結合一体化した構成であることを特徴とするマグネットダンパ。
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