JP3731610B2 - ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクローナル抗体およびその使用法 - Google Patents

ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクローナル抗体およびその使用法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合することを特徴とする新規なモノクローナル抗体および該抗体を使用するヒトアルドース還元酵素の測定方法に関する。本発明のヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクローナル抗体および該抗体フラグメントを用いることによって、ヒトアルドース還元酵素の機能および構造の解析が可能となる。また、本発明のヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いて、組織、血中または尿中のヒトアルドース還元酵素含量を測定し、その動向を把握することは、基礎医学、臨床医学の領域において非常に重要な意義を持つ。
【0002】
【従来の技術】
アルドース還元酵素[Alditol :NAD(P)+1-oxidoreductase 、EC 1.1.1.21 ]はNADPH を補酵素としてグルコースを糖アルコール(ポリオール)であるソルビトールに変換する酵素である。ソルビトールはソルビトール脱水素酵素によりフルクトースに変換され、この経路がグルコース代謝副路であるポリオール代謝経路を形成している。アルドース還元酵素は、哺乳動物の多くの組織に存在し、その生理的役割は、古くは精嚢において精子のエネルギー源としてのフルクトースの産生に関与していると考えられた。最近では、腎髄質において組織内浸透圧調節に関与するオスモライトとしてのポリオール生成に果たす役割が示唆されている。しかしながらその役割については依然として不明な点が多い。近年、糖尿病発症初期の細胞障害にアルドース還元酵素が関与していると考えられている。すなわち、糖尿病という高血糖状態では、インスリン非依存性のグルコースの取り込みを行う組織、たとえば、水晶体、網膜、末梢神経、腎糸球体などでは細胞内のグルコース濃度が上昇し、この過剰なグルコースは、アルドース還元酵素によりソルビトールに変換される。ソルビトールは極性が高く細胞外に拡散しにくい上、フルクトースへの変換速度が遅いために、細胞内に蓄積され、その結果、細胞内浸透圧を上昇させ、水の流入が起こり、細胞の膨化、細胞膜の変性を引き起こす。このことが糖尿病合併症である神経症、網膜症、腎症、白内障などの発症要因の一つと考えられており、現在糖尿病合併症の予防あるいは治療薬としてアルドース還元酵素阻害剤の開発が盛んに行われている(Gabbay K. H.,Merola L. O. and Field R. A., Science,第151 巻, 209-210 頁 (1966年) 、Robison W. G. Jr., Kador P. F. and Kinoshita J. H., Science, 第221 巻, 1177-1179 頁 (1983年) 、Engerman R.L. and Kern T.S., Diabetes, 第33巻, 97-100頁 (1984年) 、Nishimura C., Lou M. F. and Kinoshita J. H., J. Neurochem., 第49巻, 290-295 頁(1987 年) 、Kinoshita J. H. and Nishimura C., Diabetes Metab. Rev., 第4 巻, 323-337 頁(1988 年) 、Kador R. F., Nakayama T., Sato S., Smar M. and Miller, D. D., “Weiner H. and Flynn T. G. eds Progress in Clinicaland Biological Research Vol. 290, Enzymology and Molecular Biology of Carbonyl Metabolosm 2,”237-250 頁(1989 年) 、Alan R. Liss, Inc., New York )。
【0003】
近年、ヒトの胎盤、網膜および筋肉由来のアルドース還元酵素の蛋白構造が報告され (Bohren K. M., Bullock B., Wermuth B. and Gabbay K. H., J. Biol. Chem., 第264 巻, 9547-9551 頁(1989 年) 、Nishimura C., Matsuura Y., Kokai Y., Akera T., Carper D., Morjana N., Lyons C. and Flynn T. G., J. Biol. Chem., 第265 巻, 9788−9792頁(1990 年) ) 、由来する組織が異なってもその一次構造は全く同一であることが示されている。またヒト由来のアルドース還元酵素は、ラット、ウシおよびウサギ由来のアルドース還元酵素とは約80%の相同性を持つことが示されている( Carper D. A., Wistow G., Nishimura C., Graham C., Watanabe K., Fujii Y., Hayashi H., Hayaishi. O., Exp. Eye Res., 第49巻, 377-388 頁(1989 年) 、Schade S. Z., Early S. L., Williams T. R., Kezdy F. J., Heinrikson R. L., Grimshaw C. E., Doughty C. C., J. Biol. Chem., 第265 巻, 3628- 3635頁(1990 年) 、Garcia-Perez A. 、Martin B., Murphy H. R., Uchida S., Murer H., Cowley B. D. Jr., Handlar J. S., Burg M. B., J. Biol. Chem., 第264 巻, 16815-16821 頁(1989 年))。さらに、ヒトアルドース還元酵素の遺伝子工学的製造法も報告されている(Nishimura C., Yamaoka T., Mizutani M., Yamashita K., Akera T., Tanimoto T., Biochim. Biophys. Acta 、第1078巻、171 −178 頁(1991 年) ) 。
【0004】
ヒトアルドース還元酵素を特異的に認識する抗体を開発し、免疫染色法によりヒトアルドース還元酵素の分布を調べたり、免疫測定法により各組織、血液または尿などのヒトアルドース還元酵素を測定することが出来れば、ポリオール代謝の活性亢進に基づく糖尿病合併症の発症メカニズムの解明や、糖尿病合併症の治療薬として使用されているアルドース還元酵素阻害剤の投与の指標となるなど基礎医学、臨床医学の領域において非常に重要な意義を持つと考えられる。このようにヒトアルドース還元酵素に特異的に結合する抗体の開発および検体中のヒトアルドース還元酵素を特異的にかつ簡便に高感度で測定できる方法の開発が望まれていた。我々はすでにヒトアルドース還元酵素に結合する抗体および該抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定法を開発した(特開平5-317083)が、この特開平5-317083の発明で用いられるモノクローナル抗体は、ヒト由来の検体中に存在するヒトアルドース還元酵素以外の生体物質も認識している可能性があり、即ちヒトアルドース還元酵素に対する特異性という点では不充分であった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術の欠点を解決し、検体中のヒトアルドース還元酵素を特異的に、且つ簡便に高感度で測定する方法を開発することが本発明の課題である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒトのアルドース還元酵素に結合し、ウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素には結合しないモノクローナル抗体を用いた免疫測定法により、ヒト由来の検体中のヒトアルドース還元酵素をこれまでよりもより特異的に、且つ簡便に好感度で測定できることを見出し、本発明に至った。即ち本発明は、ヒトのアルドース還元酵素に結合し、ウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素には結合しないモノクローナル抗体である、ハイブリドーマAR55(FERM P−14418)が産生するモノクローナル抗体ARmAb55を使用するヒトアルドース還元酵素の免疫測定法に関する。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。モノクローナル抗体は、ケーラーとミルシュタインによる細胞融合法 (G.Kohler Milstein,Nature(London), 第256 巻,495-497頁(1975 年))により作製されたハイブリドーマを培養して分泌させ、その培養液などから分離する従来行われている方法により得ることが出来る。すなわち、ヒトアルドース還元酵素で哺乳動物を免疫した後、この動物の抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させハイブリドーマを得る。免疫に使用する動物としては特に制限はなく、各種の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等を使用することができる。モノクローナル抗体は、上記の免疫動物のうち、取扱い易さ等の理由により一般にはBalb/cマウスが用いられるが、他の系統のマウスを使用することもできる。その際、免疫に用いる抗原の濃度は、十分な量の抗原刺激を受けたリンパ球が形成されるよう選ばれるべきである。例えば1 〜100 μg の抗原を含む生理食塩水を、完全フロイントアジュバントあるいは不完全フロイントアジュバント等の懸濁液とし、動物に腹腔内注射などによって投与する。あるいは、抗原を直接脾臓内に注入しても良い。投与は2 〜4 週毎に1 〜数回行い、最終免疫は通常1 〜100 μg の抗原を含む生理食塩溶液を静脈注射により投与して行われる。最終免疫の数日後に細胞融合のため免疫した動物から抗体産生細胞、例えばリンパ球、好ましくは脾臓細胞を摘出し、ミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを得る。
【0008】
抗原に使用するヒトアルドース還元酵素としては、ヒト由来のものであれば特に限定されないが、入手し易さの点からヒト胎盤由来のものが好ましく、さらに純度の高いものが多量に得られる点から、遺伝子工学的製造法が用いられる。つまり、ヒトアルドース還元酵素のcDNAが挿入されたバキュロウィルス発現ベクターを利用してヒトアルドース還元酵素のcDNAをそのゲノムDNA 中に含有する組換えバキュロウィルスを得、この組換えウィルスを昆虫 (Spodoptera frugiperda ) 細胞に感染させてヒトアルドース還元酵素を発現させることによりヒトアルドース還元酵素を得ることが出来る。また、ヒトアルドース還元酵素のアミノ酸配列を有するペプチド等を抗原に使用する場合は、化学合成や遺伝子工学的手法によっても得られるが、その由来は問わない。
【0009】
細胞融合は、最終免疫3 〜4 日後に無菌的に取り出した脾臓から調製した脾臓細胞と適当なミエローマ細胞を融合促進剤の存在下で細胞融合させる。融合に用いるミエローマ細胞は、哺乳動物からのものでよいが、一般には、免疫に用いた動物と同じ種の動物に由来するものが好適であり、例えばマウスではSP-2/0-Ag14 、NS-1-Ag4/1、P3-X63-Ag8-U1 、P3-NS1-1-Ag1、P3-X63-Ag8、FO、X-63-Ag8-6.5.3、210.RCY3.Ag1.2.3、S194/5XXO.BU.1、SKO-007 、GM15006TG-A12 等が使用され、ラットではY3.Ag1.2.3等が使用される。融合法としては、センダイウィルスを用いるHVJ法、電気的融合法あるいは平均分子量が1000〜6000のポリエチレングリコールを用いるPEG法も使用できる。この場合融合時の脾臓細胞とミエローマ細胞の混合比率は、一般に10:1〜 2:1の範囲が好ましい。
【0010】
融合した細胞からのハイブリドーマの分離は、未融合の脾臓細胞、未融合のミエローマ細胞及び融合した細胞の混合物を未融合のミエローマ細胞が生存できない選択培地で、未融合の細胞が死滅するまでの適当な時間 (約1 週間) 培養することにより行うことが出来る。HGPRT 欠損骨髄腫細胞を融合親株として用いた場合には、選択培地は、例えばHAT 培地 (ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培地) やHA2 (ヒポキサンチン、アザセリンを含む培地) 等が使用される。この選択培地中では、未融合のミエローマ細胞は死滅し、また未融合の脾臓細胞は、非腫瘍性細胞であるので、一定期間後 (約1 週間後) 死滅するので、生育できる細胞を選択することによりハイブリドーマを得ることができる。目的の抗体を産生するハイブリドーマの検索及び単一クローン化は、通常の限界希釈法によって行うことが出来る。このようにして得られた本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、生育に適した培地中で生育でき、また超低温冷凍庫や液体窒素中などで容易に長期に保存が可能である。このようにして得られたハイブリドーマは、栄養培地中あるいは哺乳動物の腹腔内で増殖させることにより抗体を産生させることができ、産生したモノクローナル抗体は培養上清あるいはその哺乳動物の腹水または血清から精製することができる。抗体の精製は、通常の蛋白精製に用いられる生化学的手法、例えば遠心分離、透析、硫酸アンモニウム等による塩析、DEAEカラム等によるイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、アフィニティクロマトグラフィーなどにより行うことができる。
【0011】
このようにして得られたヒトアルドース還元酵素に結合するモノクローナル抗体には、免疫に用いた抗原の異なる部位に結合する数種の抗体が含まれており、ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合し、ウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素に結合しない抗体の他、ヒトアルドース還元酵素ならびにウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素のどちらに対しても結合する抗体が含まれている。また、ヒトアルドース還元酵素の近縁酵素であり、非常に類似したアミノ酸配列を持つヒトアルデヒド還元酵素に結合する抗体も含まれていることがある。我々はすでにヒトアルドース還元酵素に結合する抗体および該抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定法を開発したが( 特開平5-317083) 、これらの抗体はウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素とも結合する抗体である。ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合しウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素に結合しない抗体を得るのは非常に困難である。我々は本発明のヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を得るために、ハイブリドーマのスクリーニング方法として、抗ヒトアルドース還元酵素モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのなかから、ARmAb25 と競合しない抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることによってヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を産生するハイブリドーマを効率よく選択できることを見いだした。ARmAb25 は特開平5-317083に記載のヒトアルドース還元酵素に対するモノクロ−ナル抗体であり、ハイブリドーマ AR25 によって産生される。このハイブリドーマ AR25 は平成6年7月4日付でFERM P−14417として工業技術院生物工学技術研究所 特許微生物寄託センターに寄託してある。
【0012】
本発明のヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体とは、該抗体それ自体とともにヒトアルドース還元酵素に結合する該抗体のフラグメントも含まれる。そのような抗体フラグメントとしては、例えばF(ab')2 、Fab'、Fab などを挙げることができる。かかる抗体フラグメントは、例えばF(ab')2 やFab'の場合には、上述のようにして得られた抗体を公知の方法、例えば該抗体をペプシンで消化してF(ab')2 フラグメントとするか、さらにF(ab')2 フラグメントを還元処理することによってFab'フラグメントとすることにより得られる (石川栄治著、酵素標識法、生物化学実験法27、学会出版センター、1991など) 。さらに本発明のモノクロ−ナル抗体は、前記の特性を持つモノクロ−ナル抗体であれば、マウス抗体、改変型ヒト抗体、マウス−ヒト・キメラ抗体なども含まれる。
【0013】
また、本抗体を用いて酵素免疫測定法 (EIA ) 、蛍光免疫測定法 (FIA ) または放射線免疫測定法 (RIA ) を行うことにより微量のヒトアルドース還元酵素を特異的に、かつ正確に測定することが可能となった。たとえば、EIA としては、「エンザイムイムノアッセイ (生化学実験法11) 」 (第1 版、P.Tijssen 著、石川栄治監訳、東京化学同人、1989年) 等に記載されているそれ自体公知の方法を用いることができる。ここでは、サンドイッチ法および競合法のそれぞれに基づくEIA について簡単に説明するが、RIA およびFIA のそれぞれにおいても、EIA と同様な原理によるものである。サンドイッチ法によるEIA では、抗体を担体に固相化 (固相化一次抗体) し、これに抗原を加え、抗原抗体反応により抗原を固相化一次抗体に結合させる。次に酵素を標識した抗体 (酵素標識二次抗体) を入れ、抗原抗体反応により、酵素標識二次抗体を上記の固相化一次抗体に結合している抗原の上に結合させる。その後、抗原に結合しなかった酵素標識二次抗体を除去し、基質を加えて酵素反応を行い、既知量の抗原と二次抗体に標識した酵素活性との関係を示す検量線から、検体中の抗原量を求める。なお操作を簡単にするため、固相化一次抗体に抗原と酵素標識二次抗体とを同時に入れる方法 (一段法サンドイッチ法EIA ) も行われる。通常、サンドイッチ法では、一次抗体と二次抗体とが互いに認識部位の異なる抗体を組み合わせて用いられ、本発明のモノクローナル抗体を一次抗体、二次抗体いずれに用いた場合でも、ヒトアルドース還元酵素に特異的な測定が可能である。この場合、もう一方の抗体は、ヒトアルドース還元酵素に結合する抗体であればポリクローナル抗体であっても、または認識部位が異なれば如何なる種類のモノクローナル抗体であっても構わない。
【0014】
ポリクローナル抗体は通常行われている方法、例えば「日本生化学会編、新生化学実験講座12、東京化学同人、1992」記載の方法によって得られる。免疫動物としては、特に限定されるものではないが、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、マウス、ニワトリなどが挙げられる。免疫動物としてウサギを用いる場合には、抗原を適当な濃度に生理食塩水などで希釈し、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバントまたは水酸化アルミニウムアジュバントなどの懸濁液とし、10〜1000μg /回・匹を注射し、さらに2 〜4 週間後に追加免疫注射を1 〜3 回行い、抗血清を得る。注射は多数箇所の皮下に行うのが好ましい。抗血清からポリクローナル抗体の調製は、上記モノクローナル抗体の精製と同様の方法で行うことができる。
【0015】
競合法によるEIA では、抗原と一定量の抗体と抗原抗体反応を行わせ、次に抗原とは結合しなかった抗体を固相化抗原と抗原抗体反応を行わせる。固相化抗原に結合した抗体量を酵素標識抗体により測定する。あるいは、抗原と予め一定量の酵素を標識した抗体 (以下標識抗体) とで抗原抗体反応を行わせた後、抗原とは結合しないで残存した標識抗体と固相化抗原とで抗原抗体反応を行わせ、その後固相に結合した酵素量を測定する。酵素量の測定は、通常の方法により行うことが出来るが、いずれの場合も既知量の標識抗原を用いて作成した検量線から検体中の抗原量を算出することが出来る。または、一定量の酵素標識抗原と検体との混合液を固相化抗体と接触させて、抗原抗体反応を行わせ、標識抗原と非標識抗原とを競合させて抗体と結合させる。その後、固相化抗体に結合した酵素標識抗原量を、酵素の基質に加えて測定し、既知量の標識抗原を用いて作成した検量線から抗原量を算出する。
【0016】
サンドイッチ法および競合法のそれぞれにおいて、抗体をペプシンで消化して得られるF(ab')2 、F(ab')2 を還元して得られたFab'、および抗体をパパインで消化して得られたFab などの抗原に結合する抗体フラグメントを抗体として、また、これらを標識した標識抗体として使用することが出来る。抗体および抗原のそれぞれに標識する酵素としては、パーオキシダーゼ、β−D −ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどがあり、「単クローン抗体」 (岩崎辰夫 他著、講談社 サイエンティフィック(1984)) 、「酵素標識法 (生物化学実験法 27 ) 」 (第1 版、石川栄治著、学会出版センター、1991年) などに記載されている方法で標識することが出来る。一方、固相としては、シリコン、ナイロン、プラスチック、ガラスからなるスティック、ビーズ、マイクロプレートもしくは試験管などが利用できる。また、本発明におけるヒトアルドース還元酵素の抗体は、組織、血液、尿などからのヒトアルドース還元酵素の分離精製などにも使用することが出来る。以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0017】
【実施例】
実施例1
ヒトアルドース還元酵素に結合するポリクローナル抗体の調製
(1) 免疫に使用される抗原の調製
前記の西村等の方法[Nishimura et al., Biochim. Biophys. Acta, 第1078巻, 171 −178 頁(1991 年) ]に従い、ヒトアルドース還元酵素 (以下、本抗原と記すこともある) 15mgを得た。ヒトアルドース還元酵素の蛋白定量は、ブラッドフォード法によりウシγグロブリンを標準品として定量した。
(2) ポリクローナル抗体の作成
日本白色ウサギ (雌、2.0Kg ) に500 μg のヒトアルドース還元酵素を完全フロイントアジュバントと共に皮下免疫し、3 週間飼育後、同量のヒトアルドース還元酵素とFCA を追加免疫した。さらに2 週毎に2 回同様な追加免疫を行ったのち、最終免疫から10日後に耳動脈より採血した。血液を数時間室温にて静置後、4 ℃で一晩置き、5000×g で10分間遠心分離を行い、その上清に終濃度が0.02%となるようNaN3を添加して、血清標品を得た。得られた血清標品からプロテインA カラム (Ampure PA Kit 、Amersham) を用いて免疫グロブリンG(IgG ) 分画を精製し、ウサギ抗ヒトアルドース還元酵素ポリクローナル抗体( 以下、ポリクローナル抗体と記す) を得た。
【0018】
(3) ポリクローナル抗体の特異性
ヒト由来のHela細胞株と人の組織の抽出物を対象として、1μg /mlの本抗体を用いてウエスタンブロット法による解析を行ったところ、ヒトアルドース還元酵素と同じ分子量の位置に、抗体と反応する蛋白を認めた。さらに、アルドース還元酵素の近縁酵素として人組織中に多量に存在するアルデヒド還元酵素に対する本抗体の交差反応をウエスタンブロット法にて調べた。それぞれヒトアルドース還元酵素0.1 μg 、ヒト腎臓アルデヒド還元酵素0.1 μg および0.2 μg をSDS ポリアクリルアミド電気泳動を行った後、抗体を用いてウエスタンブロット法による解析を行ったところ、ヒトアルドース還元酵素は検出されたが、ヒト腎臓アルデヒド還元酵素は検出されなかった。
【0019】
実施例2
ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体の調製
(1) 免疫に使用される抗原の調製
実施例1の(1) と同様にしてヒトアルドース還元酵素11mgを得た。
(2) 免疫脾細胞の調製
9 週齢の雄Balb/cマウス の腹腔内にヒトアルドース還元酵素40μg と完全フロイントアジュバント (Complete Freund's adjyuvant ) とのエマルジョンを投与した。さらに4 週後に、ヒトアルドース還元酵素30μg と不完全フロイントアジュバントとのエマルジョンを腹腔内に追加投与した。さらに7 日後、ヒトアルドース還元酵素30μg を含む生理食塩水溶液を静脈に投与した。最終免疫の3 日後にマウスを屠殺し、脾臓を摘出し細胞融合に用いた。
(3) ハイブリドーマの調製
脾臓をピンセットでほぐして得られた細胞を、GIT 培地 (日本製薬製) に懸濁し、これをナイロンメッシュに通過させ、単細胞浮遊液を得た。この単細胞浮遊液を、0.83%塩化アンモニウム溶液 (9 容量部) と0.17M トリス (ヒドロキシメチル) アミノメタン塩酸緩衝液 (pH7.6) (1 容量部) との混液で4 ℃で1 分間処理し、単細胞浮遊液中の赤血球を破壊し、遠心分離で取り除いた。10%ウシ胎仔血清添加GIT 培地 (以下10%FCS-GIT 培地と記す) で培養した対数増殖のマウスミエローマ細胞SP-2をGIT 培地で2 回洗浄した。脾細胞とこのマウスミエローマ細胞SP-2とを7.5:1 の比率でGIT 培地に懸濁し均一にした後、遠心分離により細胞を回収し、その細胞を水溶液中で37℃に加温した。
【0020】
この細胞に、予め37℃に加温した平均分子量1,500 の50%ポリエチレングリコール溶液 (ベーリンガー・マンハイム製) 2.0ml を1 分間かけて徐々に加え、さらに1 分間細胞融合反応を行った。この混合液に、GIT 培地10mLを4 分間かけて滴下して細胞融合反応を停止させ、これを遠心分離して細胞を得た。ハイブリドーマ増殖因子を含むハイブリドーマ作製用添加試薬「ブライクローン」( 大日本製薬株式会社製) を5 %含むGIT 培地 (以下 5%HCF-GIT 培地と記す) を用いこの細胞を5 ×106 細胞/mlの濃度になるように懸濁し、次いで96穴マイクロウェルプレート (コーニング社製) の各ウェルに、この懸濁液を100 μl ずつ分注した。このプレートを 5.5%炭酸ガス含有雰囲気中で37℃で1 日培養した後、4 ×10-7M アミノプテリン、1.6 ×10-5M チミジンおよび1 ×10-4M ヒポキサンチンを含有する 5%HCF-GIT 培地 (以下 HAT-5%HCF-GIT 培地と記す) 100 μl を各ウェルに添加した。1 日後、各ウェルから半量の培地を吸引除去し、次いで HAT-5%HCF-GIT 培地を100 μl 添加した。その後、2 日または3 日毎に半量の培地を新たな培地と交換し、培養を続けた。細胞融合10日後にハイブリドーマの増殖が認められた。
【0021】
(4) ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体産生ハイブリドーマの選別
ハイブリドーマ培養上清中のヒトアルドース還元酵素に結合する抗体のスクリーニングは、ヒトアルドース還元酵素を固定したマイクロプレートを用いてEIA により行った。ヒトアルドース還元酵素の固定は96穴イムノマイクロプレート (ヌンク社製) の各ウェルに0.5 μg/mlとなるよう0.15M NaCl含有0.01M リン酸緩衝液(pH7.4 ) (以下PBS と記す) に溶解したヒトアルドース還元酵素溶液100 μl を添加し、室温で2 時間吸着させた。このプレートをPBS で5 回洗浄後、各ウェルに0.2 %ウシ血清アルブミンおよび0.05%Tween20 を含むPBS 溶液 (以下BSA −Tween 20-PBSと記す) を加え、蛋白の非特異的吸着が起こらないように各ウェルを完全にブロックした。
【0022】
各ウェルに、前記(3) のようにして得られたハイブリドーマ培養上清のPBS による希釈液100 μl を添加し、室温で1 時間反応させ、ウェルに固定化した酵素にモノクローナル抗体を結合させた。酵素に結合したモノクローナル抗体の検出は、ベクタスティンABC キット (ベクターラボラトリーズ社製) を用いた。すなわち、プレートを0.05%Tween20 含有PBS(以下 Tween20-PBSと記す) で5 回洗浄後、ビオチン化ヤギ抗マウスイムノグロブリン抗血清のBSA-Tween20-PBS 溶液を100 μl 添加して、1 時間反応させ、次いでTween 20-PBSで洗浄後、100 μl のアビジン化パーオキシダーゼのBSA-Tween20-PBS 溶液を添加し、20分間反応させた。このプレートをTween20-PBS で5 回洗浄後、各ウェルに0.03%過酸化水素と1mg/mlのオルトフェニレンジアミン二塩酸塩を含む100mM クエン酸緩衝液(pH 5.0)との等量混合液を100 μl 加え、室温で10分間インキュベートした。その後、各ウェルに2N硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000 (インターメッド社製) を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。融合細胞を入れた合計384 ウェルのうち、156 ウェルにハイブリドーマの増殖が認められ、このうちヒトアルドース還元酵素に結合する抗体産生陽性ウェルは43個であった。
【0023】
(5)ARmAb25と競合しないモノクロ−ナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を産生するハイブリドーマを効率よくスクリーニングする方法として、ARmAb25 と競合しないモノクロ−ナル抗体を産生するハイブリドーマをヒトアルドース還元酵素を固定したマイクロプレートを用いたEIAにより選択した。合計43種のヒトアルドース還元酵素に結合する抗体活性を持つハイブリドーマの培養液を、HAT-5%HCF-GIT 培地を入れた24穴平底マイクロプレート (コーニング社製) に移した。増殖してきたハイブリドーマの一部を、GIT培地を入れた24穴平底マイクロプレートに移し、3 日後に培養上清を採取した。ヒトアルドース還元酵素のマイクロプレートへの固定は実施例2(4)に従い、各ウェルに0.1 μg/mlとなるように溶解したヒトアルドース還元酵素溶液を添加し吸着させた。各ウェルをBSA −Tween 20-PBSでブロックしたのち、得られたハイブリドーマ培養上清のBSA −Tween 20-PBS溶液による段階希釈液100 μl を添加し、4 ℃で1 晩反応させ、ウェルに固定化したヒトアルドース還元酵素にモノクロ−ナル抗体を結合させた。プレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄し、各ウェルに、ARmAb25のHRP 標識Fab' (特開平5-317083記載) のBSA-Tween 20-PBS溶液 (20ng/ml)を100 μl 加え、1時間反応させた。このプレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄した後、100 μl のオルトフェニレンジアミン含有基質 (1.0 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.015%過酸化水素) を加え室温で20分間反応させた。このウェルに4N硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダー NJ-2000を用いて、反応生成液の 490nmの吸光度を測定した。43個の抗体産生陽性ウェルのうちARmAb25と競合しなかったもの、およびわずかに競合したもの合計17個の抗体産生陽性ウェルについてハイブリドーマのクローニングを行った。
【0024】
(6) ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体産生ハイブリドーマのクローニング
ヒトアルドース還元酵素に結合する抗体活性を持つ合計17種のハイブリドーマの培養液を、HAT-5%HCF-GIT 培地を入れた24穴平底マイクロプレート (コーニング社製) に移した。増殖してきたハイブリドーマを、HAT-5%HCF-GIT 培地を入れた96穴マイクロプレートを用いて限界希釈法によりクローニングした。クローニング操作を2 回行い、合計13個のクローンを得た。
(7) ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体の精製
10日前に各々0.5ml のプリスタン (2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン) を腹腔内に投与されたBalb/cマウスの腹腔内に前記(6) で得られたヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体産生ハイブリドーマ細胞 2〜5 ×106 個を移植した。約1 週間後、マウスの腹腔より腹水を採取し、その腹水からモノクロ−ナル抗体を25〜50%飽和硫酸アンモニウム溶液により塩析した粗抗体を得た。この粗抗体を少量のPBS に溶解し、アフィゲルプロテイン A -MAPSキット (バイオラッド社製) を用いて分離し、さらに、抗体溶液を PBSに透析した後、4 ℃で保存した。腹水1ml あたり1.5 〜10mgの精製抗体を得た。
【0025】
実施例3
ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクロ−ナル抗体の特性
(1) モノクロ−ナル抗体の免疫グロブリンサブクラスの同定
精製した抗体の免疫グロブリンのサブクラスをマウスモノクロ−ナル抗体アイソタイピングキット (アマシャム社製) を用いて同定した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003731610
全てのモノクロ−ナル抗体はIgG1であった。
【0027】
(2) ヒトアルドース還元酵素およびヒトアルデヒド還元酵素との反応性
ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクローナル抗体とヒトアルドース還元酵素およびヒトアルデヒド還元酵素との反応性は、ヒトアルドース還元酵素またはヒトアルデヒド還元酵素を固定したマイクロプレートを用いてEIA により調べた。ヒトアルドース還元酵素あるいはヒトアルデヒド還元酵素のマイクロプレートへの固定は、実施例1の(4) と同様な方法により行い、これにBSA-Tween20-PBS に溶解したモノクロ−ナル抗体 (0.1 μg/ml〜 100μg/ml) を100 μl 添加し、室温で1 時間インキュベートした。ヒトアルドース還元酵素あるいはヒトアルデヒド還元酵素を固定したマイクロプレートに結合した抗体の検出は、ベクタスティンABC キットを用いる実施例2の(4) と同様な方法で行った。ヒトアルドース還元酵素を固定したマイクロプレートに 0.1μg/mlのモノクロ−ナル抗体を添加した結果ならびにヒトアルデヒド還元酵素を固定したマイクロプレートに100 μg/mlのモノクロ−ナル抗体を添加した結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0003731610
ARmAb47 、ARmAb49 、ARmAb55 およびARmAb56 はヒトアルドース還元酵素に結合し、ヒトアルデヒド還元酵素には結合しない抗体であった。一方、ARmAb43 、ARmAb52 はわずかながらヒトアルデヒド還元酵素に結合する抗体であった。
【0029】
(3) モノクロ−ナル抗体のヒトアルドース還元酵素に対する結合部位の異同
抗体のヒトアルドース還元酵素に対する結合部位の異同を決定するため、特開平5-317083記載の各種マウス抗ヒトアルドース還元酵素モノクローナル抗体(ARmAb2 、7 、19、21、35および36) を西洋ワサビパーオキシダーゼ (以下HRP と記す) で標識し、この標識抗体とARmAb43 、47、49、52、55、56の各非標識抗体との競合反応を行わせ、阻害の有無からそれぞれの抗体のヒトアルドース還元酵素への結合部位の異同を調べた。抗体へのHRP の標識は、過ヨウ素酸酸化法 (酵素免疫測定法 第3版、石川栄治他著、医学書院、1987年) に基づき行ったものを使用した。イムノマイクロプレートの各ウェルに、ヒトアルドース還元酵素のPBS 溶液 (0.2 μg/ml) を100 μl 添加し、室温で2 時間吸着させた。このプレートをPBS で3 回洗浄後、各ウェルにBSA-PBS を加え、ウェルへの蛋白の非特異的吸着が起こらぬようウェルを完全にブロックした。各ウェルへ、HRP 標識抗体を100 μl と0.2 %BSA を含むTween20-PBS (BSA-Tween20-PBSと記す) で段階希釈した非標識抗体 (0 〜1mg/ml) を100 μl 同時に加え、室温で1 時間抗原抗体反応を行った後、このプレートをTween 20-PBSで4 回洗浄した。各ウェルへ100 μl のオルトフェニレンジアミン含有基質(過酸化水素とオルトフェニレンジアミン二塩酸塩とを、それぞれの濃度が0.015 %および1mg/mLとなるように100mM クエン酸緩衝液(pH5.0 )に溶解した液、以下同様)を添加し、室温で30分間反応を行わせ、2N硫酸100 μl を添加して反応を停止させた。反応液の490nm の吸光度を、イムノリーダーNJ-2000 で測定した。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0003731610
ARmAb55 は他のどの標識抗体とも競合せず、他の5 種類のモノクロ−ナル抗体はARmAb7、19、21、35とは競合しARmAb2、36とは競合しなかった。以上の結果より、ARmAb43 、ARmAb47 、ARmAb49 、ARmAb52 およびARmAb56 はそれぞれARmAb7、19、21、35のアルドース還元酵素に対する結合部位と同じ部位または非常に近接した部位に結合する抗体であり、一方ARmAb55 はARmAb2、7 、19、21、35、36とは異なる部位に結合するモノクローナル抗体であった。
【0031】
(4) 各種動物アルドース還元酵素との反応性
(各種動物水晶体ホモジネートの調製)
本発明で得られたモノクローナル抗体のヒト以外の動物のアルドース還元酵素に対する反応性を検討するために、各種動物水晶体よりアルドース還元酵素を含むホモジネートを調製した。ウシ、イヌ、モルモット、ラット、ウサギの眼球より水晶体を摘出した。これらをそれぞれ3 〜5 容量の0.01M リン酸緩衝液(pH 7.0)に浸し、4 ℃でホモジネートし、15,000×g 、30分遠心した。
(アルドース還元酵素の精製)
上記ホモジネートを10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で希釈した後、Matrix gel orange A アフィニティーカラムにかけ、0.6M NaClを含む上記緩衝液にて溶出画分を得た。AR活性画分を限外濾過(セントリカットU−10、クラボウ社)にて濃縮した。得られた試料について活性測定、ウエスタンブロッティングを行った。
(アルドース還元酵素活性測定)
アルドース還元酵素の活性測定は、(Nishimura C., Yamaoka T., Mizutani M., Yamashita K., Akera T., Tanimoto T., Biochim. Biophys. Acta 、第1078巻、171-178 頁(1991 年))に準じて行った。すなわち、0.1Mリン酸緩衝液(pH 6.2)、150 μM NADPH 、10mM DL-キシロースと試料を含む1 mlの反応液を、NADPH を添加した時点から波長320nm での吸光度の減少を3 分間測定し、アルドース還元酵素により酸化されたNADPH 量を求めた。吸光度の測定は、日立Spectrophotometer U-2000を用い、25℃で行った。ブランクとして、試料を添加しない際の非特異的な吸光度の減少を測定し以下の式1から試料中のアルドース還元酵素の活性を測定した。
【0032】
【式1】
酵素活性(unit/mL)
=(△A Tset/min−△A Blank/min)×1.0/ε/試料液量( μl)
△A Tset/min :試料添加時の1 分間あたりの吸光度の減少
△A Blank/min:ブランクの1 分間あたりの吸光度の減少
ε:NADPH の340nm におけるマイクロモル吸光係数( ε=6.22μmol -1× cm-1)
このようにして前記調製した各種動物水晶体ホモジネート、および精製アルドース還元酵素中のアルドース還元酵素活性を測定した結果、いずれのホモジネート、精製物もアルドース還元酵素活性を有していた。
(ウエスタンブロッティング)
上記精製アルドース還元酵素を対象として、10μg /mlの本発明モノクローナル抗体を用いてウエスタンブロット法による解析を行った。その結果を表4に示した。
【0033】
【表4】
Figure 0003731610
ARmAb55 はヒト以外の他のどのアルドース還元酵素とも結合せず、ヒトのアルドース還元酵素特異的なモノクローナル抗体であった。ARmAb43 、ARmAb47 、ARmAb49 、ARmAb52 およびARmAb56 はそれぞれ他の動物のアルドース還元酵素とも結合するモノクローナル抗体であった。ARmAb55 はハイブリドーマ AR55 によって産生される。このハイブリドーマ AR55 は平成6年7月4日付でFERM P−14418として工業技術院生物工学技術研究所 特許微生物寄託センターに寄託してある。また、いずれのホモジネートを試料として同様にウエスタンブロッティングを行った場合でもアルドース還元酵素と同じ位置以外に抗体との反応物は認められなかった。
【0034】
実施例4
ヒトアルドース還元酵素に結合するポリクローナル抗体およびヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定 ( ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を用いるサンドイッチ法に基づく EIA)
実施例3の(4) の結果より、ARmAb55 を一次抗体または二次抗体として用いることにより、ヒトアルドース還元酵素を特異的に測定することが可能である。
(HRP標識Fab'の調製)
ARmAb55 を2mg/ml含むPBS 溶液10mlに1Mクエン酸緩衝液(pH3.2 )を添加して、pH4.0 に調整した。これに、250 μg のブタ胃粘膜ペプシン (シグマ社製) を添加し、37℃で12時間インキュベートして抗体を消化させた。これに3Mトリス塩酸緩衝液 (pH8.6)を加えてpH7.0 とし、2ml に濃縮した後、この濃縮液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH6.0)で平衡化したスーパーローズ12HR16/50 カラム (ファルマシア社製) に通し、F(ab')2 画分を得た。回収されたF(ab')2 の量は5.2mg であった。F(ab')2 画分を2mL に濃縮して、これに 2- メルカプトエチルアミンおよびEDTAをそれぞれ10mMおよび0.5mM となるように添加し、37℃で90分間インキュベートしてF(ab')2 を還元した。これを5mM EDTAを含有する0.1Mリン酸緩衝液 (pH 6.0) で平衡化したスーパーローズ12HR 16/50カラムに通して、Fab'画分を得たところ、4.5mg のFab'が回収された。
【0035】
HRP へのマレイミド基の導入は、10mgのHRP を0.1Mリン酸緩衝液 (pH7.0 ) に溶解した後、これに10mgの N-(ε- マレイミドカプロイルオキシ)-スクシンイミド(ジーベンケミカル社製)を1ml のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した溶液150 μL を添加して、30℃で60分間反応させることにより行った。この反応液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH 6.0) で平衡化したPD10カラム (ファルマシア社製) に通して、マレイミド基を導入したHRP 画分を得た。前記によって調製された濃度1.5mg/mlのFab'溶液3ml に、濃度が3.6mg/mlのマレイミド基を導入したHRP を1.2ml 加えて、30℃で60分間反応させた。この反応液を1.5 mlに濃縮し、この濃縮液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH6.5 ) で平衡化したスーパーローズ12HR 16/50カラムに通して、10mlのHRP 標識Fab'画分を得た。なお調製されたHRP 標識Fab'においてHRP とFab'との結合モル比はほぼ1:1であった。
【0036】
(a) 二段法サンドイッチEIA (以下ポリ−モノ二段法と記す)
96穴のイムノマイクロプレート (ヌンク社製) の各ウェルに50mM炭酸水素ナトリウム緩衝液 (pH 9.6) で希釈した5 μg/mlのポリクローナル抗体を150 μl 添加し25℃で一晩静置し、抗体を固相化した。次に、プレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄後、BSA-Tween20-PBS を各ウェルに300 μL ずつ添加し、室温で1 時間ブロッキングした。次にウェルにBSA-Tween20-PBS で希釈したヒトアルドース還元酵素を100 μl 加え室温で90分間反応させた後、このプレートを300 μl のTween20-PBS で5 回洗浄した。次に、各ウェルに、上記の ARmAb55のHRP 標識Fab'のBSA-Tween20-PBS 溶液 (150ng/ml) を100 μl 加え、30分間反応させた。このプレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄した後、100μl のオルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え室温で30分間反応させた。このウェルに2N硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダー NJ-2000を用いて、反応生成液の 490nmの吸光度を測定した。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
(b) 一段法サンドイッチEIA (以下ポリ−モノ一段法と記す)
ポリクローナル抗体を50mM炭酸緩衝液 (pH9.5)で5 μg/mlに調製し、これをイムノマイクロプレートの各ウェルに150 μl ずつ添加し、室温で一晩かけて吸着させた後、このイムノマイクロプレートをPBS で5 回洗浄し、各ウェルにBSA-PBS を満たして室温で、1 時間ブロッキングし抗体固定プレートを作成した。前記のようにして調製されたARmAb55のHRP 標識Fab'を150ng/mlになるようにBSA-Tween20-PBS で希釈し、これを各ウェルに50μl 添加し、さらに各ウェルにBSA-Tween20-PBS で段階希釈したヒトアルドース還元酵素溶液を50μl 添加して、室温で90分間反応させ、次いでTween20-PBS で5 回洗浄した。各ウェルに100 μl オルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え、室温で反応を30分間行った後、このプレートに2N硫酸を100 μl 加え反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000 を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。ヒトアルドース還元酵素濃度と490nm の吸光度の関係を表6に示す。
【0038】
【表6】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
【0039】
実施例5
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定 ( サンドイッチ法に基づく EIA )
実施例3の(4) の結果よりARmAb55 を一次抗体 (固相へ結合する抗体) あるいは二次抗体 (酵素標識抗体) に用いることによってヒトアルドース還元酵素を特異的に測定することが可能であるが、モノクロ−ナル抗体を一次抗体と二次抗体両方に用いる場合は同じ抗体同士、または抗原への結合部位が類似している抗体同士の組み合わせでは実質的に測定不能である。実施例3の(3) の抗体の競合阻害実験の結果より、ARmAb55 と組み合わせ可能なモノクロ−ナル抗体が判定できる。ここでは、ARmAb55 とARmAb25 を使用した例を示す。
(a) 二段法サンドイッチEIA (以下モノ−モノ二段法と記す)
ARmAb55 をPBS で5 μg/mlに調製し、イムノマイクロプレートの各ウェルに150 μl ずつ添加して、室温で一晩吸着させた後、PBS で5 回洗浄し、このウェルを非特異的吸着が起こらないように、BSA-PBS で室温で1 時間ブロッキングした。次にこのウェルにBSA-Tween 20-PBSで希釈したヒトアルドース還元酵素100 μl を加え、室温で90分間反応させ、このプレートをTween 20-PBSで5 回洗浄した。この後、各ウェルに、実施例4と同様にしてHRP を標識したARmAb25 をBSA-Tween 20-PBSで150 ng/ml になるように希釈し、これを各ウェルに100 μl 加え室温で30分間反応させ、次いで BSA-Tween 20-PBS で5 回洗浄した。これに100 μl のオルトフェニレンジアミン含有基質 ( 0.5 mg/mlオルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え室温で30分間反応させた。このウェルに 2N 硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダー NJ-2000を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。結果を表7に示す。
【0040】
【表7】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
(b) 一段法サンドイッチEIA (以下モノ−モノ一段法と記す)
ARmAb55 を50mM炭酸緩衝液 (pH9.5 ) で5 μg/mlに調製し、これをイムノマイクロプレートの各ウェルに250 μl ずつ添加し、室温で一晩吸着させた後、このイムノマイクロプレートをPBS で5 回洗浄し、各ウェルにBSA-PBS を満たして室温で、1 時間ブロッキングし抗体固定プレートを作成した。前記のようにして調製されたARmAb25の HRP標識Fab'を150ng/mlになるようにBSA-Tween20-PBS で希釈しこれを各ウェルに100 μl 添加し、さらに各ウェルにBSA-Tween20-PBS 段階希釈したヒトアルドース還元酵素溶液を100 μl 添加して、室温で90 分間放置し、次いでTween20-PBSで5 回洗浄した。各ウェルに200 μl オルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え、室温で反応を30分間行った後、このプレートに4N 硫酸を100 μl 加え反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000 を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。ヒトアルドース還元酵素濃度と490nm の吸光度の関係を表8に示す。
【0041】
【表8】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
実施例6
ヒトアルドース還元酵素に結合するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定 ( モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いるサンドイッチ法に基づく EIA)
(HRP 標識Fab'の調製)
ウサギ抗ヒトアルドース還元酵素ポリクローナル抗体を2mg/ml含む酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)10ml に、250 μg のブタ胃粘膜ペプシン (シグマ社製) を添加し、37℃で20時間インキュベートして抗体を消化させた。これに3Mトリス塩酸緩衝液 (pH8.6)を加えてpH7.0 とし、2mL に濃縮した後、この濃縮液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH7.0)で平衡化したスーパーローズ12HR16/50 カラム( ファルマシア社製) に通し、F(ab')2 画分を得た。回収されたF(ab')2 の量は 8.2mg であった。F(ab')2 画分を2ml に濃縮して、これに2 −メルカプトエチルアミンおよびEDTAをそれぞれ10mMおよび0.1mM となるように添加し、37℃で90分間インキュベートしてF(ab')2 を還元した。これを5mM EDTAを含有する0.1Mリン酸緩衝液 (pH 6.0) で平衡化したスーパーローズ12HR 16/50カラムに通して、Fab'画分を得たところ、6.5mg のFab'が回収された。HRP へのマレイミド基の導入は、10mgのHRP を0.1Mリン酸緩衝液 (pH7.0 ) に溶解した後、これに10mgの N-(ε- マレイミドカプロイルオキシ)-スクシンイミド(ジーベンケミカル社製)を1ml のN,N - ジメチルホルムアミドに溶解した溶液150 μl を添加して、30℃で60分間反応させることにより行った。この反応生成液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH 6.0) で平衡化してPD10カラム (ファルマシア社製) に通して、マレイミド基を導入したHRP 画分を得た。前記によって調製された濃度2.0mg/mlのFab'溶液3.2ml に、濃度が4.0mg/mlのマレイミド基を導入したHRP を1.3ml 加えて、30℃で60分間反応させた。この反応生成液を1.5 mlに濃縮し、この濃縮液を0.1Mリン酸緩衝液 (pH6.5 ) で平衡化したスーパーローズ12HR 16/50カラムに通して、10mlのHRP 標識Fab'画分を得た。なお調製されたHRP 標識Fab'においてHRP とFab'との結合モル比はほぼ1:1であった。
(a) 二段法サンドイッチEIA (以下モノ−ポリ二段法と記す)
96穴のイムノマイクロプレート (ヌンク社製) の各ウェルに50mM 炭酸水素ナトリウム緩衝液 (pH 9.6) で希釈した5 μg/mlのARmAb55 を150 μl 入れ25℃で一晩静置し、抗体を固相化した。次に、プレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄後、BSA-Tween 20-PBSを各ウェルに300 μl ずつ添加し、室温で1 時間ブロッキングした。次にウェルにBSA-Tween 20-PBSで希釈したヒトアルドース還元酵素を100 μl 加え室温で90分間反応させた後、このプレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄した。次に、各ウェルに、上記のウサギ抗ヒトアルドース還元酵素ポリクローナル抗体のHRP 標識Fab'のBSA-Tween 20-PBS溶液 (150ng/ml) を100 μl 加え、30分間反応させた。このプレートを300 μl のTween 20-PBSで5 回洗浄した後、100 μl のオルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え室温で30分間反応させた。このウェルに2N硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダー NJ-2000を用いて、反応生成液の 490nmの吸光度を測定した。結果を表9に示す。
【0042】
【表9】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
(b) 一段法サンドイッチEIA (以下モノ−ポリ一段法と記す)
ARmAb55 を50mM炭酸緩衝液 (pH9.5 ) で5 μg/mlに調製し、これをイムノマイクロプレートの各ウェルに150 μl ずつ添加し、室温で一晩かけて吸着させた後、このイムノマイクロプレートをPBS で5 回洗浄し、各ウェルにBSA-PBS を満たして室温で、1 時間ブロッキングし抗体固定プレートを作成した。前記のようにして調製されたウサギ抗ヒトアルドース還元酵素ポリクローナル抗体のHRP 標識Fab'を150ng/mlになるようにBSA-Tween20-PBS で希釈し、これを各ウェルに50μl 添加し、さらに各ウェルにBSA-Tween20-PBS で段階希釈したヒトアルドース還元酵素溶液を50μl 添加して、室温で90分間放置し、次いでTween20-PBS で5 回洗浄した。各ウェルに100 μl オルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え、室温で反応を30分間行った後、このプレートに2N硫酸を100 μl 加え反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000 を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。ヒトアルドース還元酵素濃度と490nm の吸光度の関係を表10に示す。
【0043】
【表10】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素濃度と吸光度は直線性を示した。
実施例7
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いたヒト赤血球中アルドース還元酵素の測定
健康な23-58 才の男子5 名、女子5 名の静脈よりヘパリン採血した全血0.5 〜1.0 mlに等量のACD 液 (acid-citrate-dextrose solution;23mMクエン酸、44.9mMクエン酸ナトリウム、81.7mMデキストロース) を加え、4 ℃で保存したものを検体として用いた。それぞれの検体に、10mlの氷冷PBS を加え混和後、1,500 ×g で4 ℃、10分間遠心して上清を除き、さらに10mlの氷冷PBS を加え同じ条件で遠心分離する操作を2 回繰り返した後、沈澱物 (赤血球) に 20mM リン酸緩衝液 (pH7.0 ) を全血と同じ容量になるまで加え -80℃で凍結保存した。次に凍結赤血球サンプルを融解し、ドライアイスアセトンで再凍結させる操作を2 回行い、赤血球を完全に溶解させた。その後遠心分離を行い溶血液を得たのち、実施例5(a) 及び(b) の酵素免疫測定法により溶血中に含まれるアルドース還元酵素量を測定した。各溶血液は BSA-Tween20-PBSで200 倍希釈して測定した。溶血液中に含まれるヘモグロビン量は、ラウリル硫酸ナトリウム法 (ヘモグロビン−テストワコーII) により測定した。その結果を表11に示す。
【0044】
【表11】
Figure 0003731610
赤血球中のヒトアルドース還元酵素は二段法および一段法いずれの方法でも測定が可能であった。
【0045】
実施例8
ヒトアルドース還元酵素に結合するポリクローナル抗体あるいはヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いたヒト血液中アルドース還元酵素の測定
健康な25-45 才の男子5 名、女子5 名の静脈よりヘパリン採血した全血0.5 〜1.0ml を-80 ℃で凍結保存した。次に、凍結サンプルを溶解し、再凍結させる操作を2 回行い、血液中の赤血球を完全に溶解させた後、遠心分離を行い溶血液を得た。実施例5(b) (モノ−モノ一段法)及びポリクローナル抗体とARmAb25を用いた酵素免疫測定法( 特開平5-317083記載 )(ポリ−モノ二段法)により溶血液中に含まれるアルドース還元酵素量を測定した。各溶血液はBSA-Tween20-PBS で 200倍希釈して測定した。溶血液中に含まれるヘモグロビン量は、ラウリル硫酸ナトリウム法 (ヘモグロビン−テストワコーII) により測定した。その結果を表12に示す
【0046】
【表12】
Figure 0003731610
全血中のヒトアルドース還元酵素量はポリ−モノ法およびモノ−モノ法いずれの方法でも測定が可能であったが、本願発明のモノクローナル抗体 ARmAb55を用いないポリ−モノ法による測定法の値に比べ、 ARmAb55を用いないモノ−モノ法による測定法の値の方が小さい。このことは、本願発明のモノクローナル抗体 ARmAb55を用いる測定法の方がヒトアルドース還元酵素に対する特異性が高いことを示唆している。
【0047】
実施例9
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体(モノ−モノ一段法)および従来のヒトアルドース還元酵素に結合する抗体を用いた各種動物 水晶体アルドース還元酵素の測定
実施例3(4) で得られた各種動物精製アルドース還元酵素及び実施例1(1) で得られた精製ヒトアルドース還元酵素を試料として、実施例5(b) のモノ−モノ一段法、実施例6(b) のモノ−ポリ一段法およびモノクローナル抗体ARmAb49とモノクローナル抗体ARmAb56 を用いた酵素免疫測定法(49-56 法)により各試料中に含まれるアルドース還元酵素量を測定した。ARmAb49 とARmAb56 を用いた酵素免疫測定法は以下のようにして行った。ARmAb49 を50mM炭酸緩衝液 (pH9.5 ) で5 μg/mlに調製し、これをイムノマイクロ プレートの各ウェルに250 μl ずつ添加し、室温で一晩吸着させた後、このイムノマイクロプレートをPBS で5 回洗浄し、各ウェルにBSA-PBS を満たして室温で、1 時間ブロッキングし抗体固定プレートを作成した。実施例4と同様にして調製されたARmAb56 の HRP標識Fab'を150ng/mlになるようにBSA-Tween20-PBS で希釈しこれを各ウェルに100 μl 添加し、さらに各ウェルにBSA-Tween20-PBS で希釈した各種動物精製アルドース還元酵素溶液を100 μl 添加して、室温で90分間放置し、次いでTween20-PBS で5 回洗浄した。各ウェルに200 μl オルトフェニレンジアミン含有基質 (0.5 mg/ml オルトフェニレンジアミン、0.0075%過酸化水素) を加え、室温で反応を30分間行った後、このプレートに4N硫酸を100 μl 加え反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000 を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。各試料は、BSA-Tween 20-PBSで20倍希釈して測定した。その結果を表13に示す。
【0048】
【表13】
Figure 0003731610
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体ARmAb55を用いたモノ−モノ法、モノ−ポリ法では、各種アルドース還元酵素を試料とした場合ヒトアルドース還元酵素以外の試料では490nm での発色が認められず、これらはヒトアルドース還元酵素に特異的な酵素免疫測定法であった。
【0049】
実施例10
ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を用いたヒトアルドース還元酵素の測定(競合法に基づくEIA )
96穴イムノマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウェルに0.5 μg/mlとなるようPBS に溶解したヒトアルドース還元酵素溶液200 μl を添加し、室温で2 時間吸着させた。このプレートを0.05% Tween20を含むPBS で5 回洗浄後、各ウェルにBSA-Tween20-PBS を加え、蛋白の非特異的吸着が起こらないように各ウェルを完全にブロックした。一方、試験管に被検体としてBSA-Tween20-PBS で段階希釈したヒトアルドース還元酵素溶液とBSA-Tween20-PBS で50ng/ml に希釈したARmAb55 とをそれぞれ 150μl 添加し、室温で1 時間反応させた。この反応液200 μl を上記のヒトアルドース還元酵素を固定したプレートの各ウェルに添加し、室温で1 時間反応させた。酵素に結合したモノクローナル抗体の検出は、ベクタステインABC キット(ベクターラボラトリーズ社製)を用いた。すなわち、プレートを0.05% Tween20含有PBS (以下 Tween20-PBSと記す)で5回洗浄後、ビオチン化ヤギ抗マウスイムノグロブリン抗血清のBSA-Tween20-PBS 溶液を100 μl 添加して、1 時間反応させ、次いでTween20-PBS で5 回洗浄後、100 μl のアビジン化パーオキシダーゼのBSA-Tween20-PBS 溶液を添加し、20分間反応させた。このプレートをTween20-PBS で5回洗浄後、各ウェルに0.03%過酸化水素と 1mg/ml のオルトフェニレンジアミン二塩酸塩を含む100mM クエン酸緩衝液(pH 5.0)との等量混合液を100 μl 加え、室温で10分間インキュベートした。その後、各ウェルに2N硫酸を100 μl 加えて反応を停止させ、イムノリーダーNJ-2000(インターメッド社製) を用いて、反応生成液の490nm の吸光度を測定した。結果を表14に示した。
【0050】
【表14】
Figure 0003731610
表14に示したとおり、アルドース還元酵素濃度に依存した検量線を得た。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、ヒトアルドース還元酵素に特異的に結合するモノクロ−ナル抗体を使用して、ヒトの血液、尿あるいは組織中の微量のアルドース還元酵素を簡便に、しかも特異的に測定することが可能となった。

Claims (1)

  1. ヒトのアルドース還元酵素に結合し、ウシ、イヌ、モルモット、ラットまたはウサギのアルドース還元酵素には結合しないモノクローナル抗体である、ハイブリドーマAR55(FERM P−14418)が産生するモノクローナル抗体ARmAb55を使用するヒトアルドース還元酵素の免疫測定法。
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