JP3731220B2 - 含Cr溶鋼の脱炭精錬方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ステンレス溶鋼も含めた含Cr溶鋼の脱炭精錬方法に関し、詳しくは、溶鋼温度の上昇とCr酸化量の増大を同時に抑制しつつ脱炭する精錬方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ステンレス溶鋼の脱炭精錬においては、脱炭反応、C+1/2O2 →COと同時に、鋼中Crの酸化反応、すなわち、Cr+3/4O2 →1/2Cr2 O3 が生ずる。このCrの酸化反応量は、鋼中のC濃度の低下に伴い増加し、特にCが1%以下になると急激に増加し始める。そして、この反応は、酸素流量、溶鋼の撹拌状況、炉内雰囲気のCO分圧等、多数の因子に影響され、本来その反応が起きる程度を調整することが難しく、多量のCrがスラグへ移行して所謂Crの酸化ロスを生じさせるものであった。また、上記と同じ理由により、Crの酸化反応で発生する反応熱の調整も難しく、精錬終了時の溶鋼温度は、目標溶鋼温度に対して高温側にはずれ、ステンレス精錬の円滑な操業を著しく妨害していた。
【0003】
ところで、この溶鋼温度の上昇を抑制する技術としては、従来より、Cr酸化反応により上昇しすぎた溶鋼温度を何らかの方法で冷却するのが一般的であった。まず、特開昭51−87112号公報に開示されたように、吹錬終了直前に測定した溶鋼温度と目標溶鋼温度との差を解消する量の小片鋼からなる冷却材を、精錬炉上のホッパから炉内に投入する冷却方法がある。この冷却方法を用いれば、溶鋼温度を目標値に調整することは可能であったが、投入直後の溶鋼の局部冷却によってCrの酸化反応は促進され、かえってCr酸化ロスが増大するという問題があった。また、この冷却材は、ホッパに備蓄、かつ投入可能な形状にする必要があるため、その加工に費用がかかり高価であるという欠点があった。さらに、比較的安価な軟鋼を冷却材として使用しても、その含有Cr量が低く、溶鋼のCr濃度が低下して別途成分調整工程が必要となり、該冷却材と成分調整用FeCrの追加量により、1ヒート当たりの処理量(以下、ヒートサイズという)が増大する問題もあった。
【0004】
これらの問題を解決するために、特公昭57−1577号公報は、霧状の水を不活性もしくは酸化性ガスで搬送して、溶融金属浴中に吹き込み該鋼浴の温度を制御することを特徴とする溶融金属の浴温度制御法を開示した。この浴温度の制御法は、水の分解、すなわち、H2 O→2H+Oによる分解熱と水の顕熱とを利用して、浴温度を低下させるものであった。しかし、この方法をステンレス溶鋼に適用した場合には、分解の際に放出される酸素で溶鋼中のCrが酸化され、逆にCr酸化ロスが増大するという問題が生じた。また、特開昭58−193309号公報は、CO2 、CaCO3 、水蒸気、水、Mn鉱石、鉄鉱石等の冷却材の1種もしくは2種以上の混合物を吹錬用ノズル出口部で酸素ガスに混入させて吹き込むことを特徴とする精錬法を開示した。しかし、その方法で用いる上記冷却材は、全て分解に際し酸素を放出するため、冷却には効果があるが、Crの酸化抑制には効果がなく、逆にCr酸化が増大するという問題があった。
【0005】
以上述べたように、ステンレス溶鋼の温度を精錬中に調整する技術としては、冷却材を溶鋼中に投入するという方法が現在一般的であるが、いずれも、Crの酸化を抑制する効果はなく、むしろ、Cr酸化を増大させるという問題があった。
一方、ステンレス精錬におけるCr酸化を抑制する技術としては、特公平2−43803号公報記載のものがある。この技術は、鋼浴中[C]濃度が1%以下の領域で、上吹ランスより酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを鋼浴表面に吹きつけると共に、鋼浴表面下から鋼浴中に不活性ガスを低流量で導入する方法である。しかし、この方法は、Cr酸化の防止に効果があっても、不活性ガスの顕熱のみが溶鋼の冷却材であり、鋼浴表面下に導入される不活性ガスが低流量のため、この顕熱による冷却効果は極めて少ないという欠点がある。また、もしスラグが上吹ガスで溶鋼中にたたきこまれ、巻き込む現象が生ずれば、スラグ中のCr2 O3 が溶鋼中のCと反応してCr2 O3 +3C→2Cr+3COの吸熱分解反応が起こり、溶鋼の冷却が期待できるが、上吹ガスが酸素ガスをも含有しているため、2Cr+3/2O2 →Cr2 O3 の反応も同時に起こり、上記冷却効果は相殺されてしまうので、この方法では全体として冷却効果がない。
【0006】
AOD等の所謂炉外精錬においても、特開平4−329818号公報に開示されているように、上吹ランスより溶鋼[C]濃度を十分に低下させた後、不活性ガスを浴表面に吹き付けるという方法がある。この方法は、溶鋼中の[C]濃度を十分に低下させた後(具体的には0.03%程度、あるいはそれ以下)、上吹ランスより吹き付ける不活性ガスにより炉内PCOを低下させることで脱炭を促進させるものであるが、溶鋼[C]濃度が十分に低下しているため、スラグ中Cr2 O3 と溶鋼[C]との反応、すなわちCr2 O3 +3C→2Cr+3COという反応は容易に起こり難い。したがって、上吹ランスより吹付ける不活性ガスは、スラグと溶鋼の反応というより炉内のPCOを低下させるのが目的であり、そのガス流量は、浴中に吹き込まれる総ガス流量の0.5倍以下と少なく、溶鋼を積極的に撹拌させる効果が小で、且つ溶鋼温度を目標値に調整することはできない。さらに、特公昭62−14003号公報でも、AOD炉内の気相部に、溶鋼中に吹き込まれる全酸素ガス量の20%以上の雰囲気希釈ガスを吹込む脱炭精錬方法を開示している。しかし、この方法は、気相部にガスを吹き込むため、溶鋼とスラグを撹拌することはできず、溶鋼温度は調整できない。しかも、この方法は、特開平4−329818号公報記載のものと同様に、炉内のPCOを低下するのが目的であり、溶鋼[C]によりCr2 O3 を分解させることは不可能であった。
【0007】
また、AODで、上吹きランスを使用して鋼浴上又は炉内に不活性ガスを上吹して精錬することを特徴とする含Cr溶鋼の精錬方法として特公平1−35887号公報がある。これは主に溶鋼〔C〕を所定値に達するまで脱炭した後、空気によるNの吸収を有効に防止する含Cr溶鋼の精錬方法にかかわるものであり、溶鋼Crの〔C〕による還元、温度調整を実施したものではない。すなわち、特開平4−329818号公報と同じく、炉内のPCO又はPN2を低下させるのが主であるため、上吹きガスと底吹きガスの比はその実施例にあるごとく、最大0.56と小さく、これではスラグと溶鋼の撹拌を生じせしめることはできず、溶鋼〔C〕によりCr2 O3 を分解させることは不可能であった。
【0008】
以上述べたように、ステンレス溶鋼も含めた含Cr溶鋼の脱炭精錬においては、Cr酸化ロスの抑制及び溶鋼温度の調整を同時に達成できる技術が存在しないのが実情である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情を鑑み、溶鋼温度上昇とCr酸化ロスの抑制を同時に達成し、合わせて鋼中Cを有効に利用して還元期で使用する還元剤量を低減するステンレス溶鋼あるいは含Cr溶鋼の脱炭精錬方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため、吹錬中にスラグ中のCr2 O3 を鋼中[C]で積極的に還元させることに着眼し、溶鋼中にスラグを効率良く巻き込ませる方法の発見に鋭意努力して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、該鋼浴表面下に吹き込むガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法である。また、本発明は、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、上記酸素ガスを停止した時点より、該鋼浴表面下に吹き込む不活性ガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法である。さらに、本発明は、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、下記(1)式を満足する条件で該鋼浴表面に不活性ガスを吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法である。
【0011】
L/ΔH≧0.05 …(1)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のLh は(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
【0012】
L=Lh ・exp(−0.78h/Lh ) …(2)
Lh =63.0(QT /nT d)2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
QT :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm3 /Hr)
nT :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(QB /nB W)2/3 …(4)
QB:鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガス と不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm3/hr)
nB:鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
加えて、本発明は、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、上記酸素ガスを停止した時点より、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、下記(1)式を満足する条件で、該溶鋼表面に不活性ガスを吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法である。
L/ΔH≧0.05 …(1)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のL h は(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
L=L h ・exp(−0.78h/L h ) …(2)
L h =63.0(Q T /n T d) 2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
Q T :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm 3 /Hr)
n T :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(Q B /n B W) 2/3 …(4)
Q B :鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm 3 /hr)
n B :鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
ただし、この場合、上記(4)式のQBは、不活性ガス流量(Nm3/hr)である。
さらに、加えて、本発明は、精錬炉で脱炭精錬した含Cr溶鋼を未還元で又は脱酸剤により弱還元して取鍋に出鋼し、該精錬炉から取鍋に同時移行したスラグと共に真空精錬を行う含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下の領域で下記(5)式を満足する条件で、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、かつ該鋼浴表面に不活性ガスを吹き付けることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法でもある。
【0013】
L/ΔH≧0.005 …(5)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のL h は(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
L=L h ・exp(−0.78h/L h ) …(2)
L h =63.0(Q T /n T d) 2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
Q T :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm 3 /Hr)
n T :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(Q B /n B W) 2/3 …(4)
Q B :鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガス と不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm 3 /hr)
n B :鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
ただし、この場合も、上記(4)式のQBは、不活性ガス流量(Nm3/hr)である。
【0014】
【作用】
本発明では、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、該鋼浴表面下に吹き込むガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に吹きつけたり、上記酸素ガスを吹止めした時点より、該鋼浴表面下に吹込む不活性ガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に上吹きするようにしたので、スラグは鋼浴(以下、単に浴という)中に十分に巻き込まれるようになる。その結果、スラグ中のCr2 O3 は溶鋼中の[C]と反応(Cr2 O3 +3C=2Cr+3CO)し、Cr酸化ロスが低減するようになる。これは、従来吹止め後の還元期においてスラグ中のCr2 O3 をFeSi等の還元剤を用いて還元し、Crの溶鋼への戻りを図っていたが、本発明では脱炭吹錬中においても鋼中[C]によって還元を行わせるためである。また、Cr2 O3 の鋼中〔C〕によるCr2 O3 1kgあたりの分解吸熱は−1274kcal/kg−Cr2 O3 (日刊工業新聞社鉄鋼熱計算用数値より)であるので、溶鋼温度も低下するようになる。なお、この反応を起こすには、スラグ中にCr2 O3 が存在し、且つ溶鋼中に十分な[C]が存在していることが必要である。
【0015】
また、本発明では、鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、前記(1)式を満足する条件で該鋼浴表面に不活性ガスを吹きつけるようにしたり、上記酸素ガスを停止した時点より、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、前記(1)式を満足する条件で該溶鋼表面に不活性ガスを吹きつけるようにしたので、上記効果は一層確実に達成できるようになる。
【0016】
さらに、本発明では、精錬炉で脱炭精錬した含Cr溶鋼を未還元で又は脱酸剤により弱還元して取鍋に出鋼し、該精錬炉から取鍋に同時移行したスラグと共に真空精錬を行う含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下の領域で前記(5)式を満足する条件で、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、かつ該鋼浴表面に不活性ガスを吹き付けるようにしたので、真空精錬としても前記とほぼ同様の効果が得られる。
【0017】
以下、本発明の完成までの経緯と内容の補足をしておく。
鋼浴表面上に存在するスラグを浴中に多量に巻き込ませるには、該鋼浴表面に上吹きするガスがかなりの量必要である。一方、ステンレス等、含Cr溶鋼の脱炭精錬においては、鋼浴表面下に酸素又は不活性ガスのうち1種または2種以上を吹き込むことも重要である。この鋼浴表面下への吹込みガスは、ガスが浴中を浮上する際に、同時に溶鋼もガスと同じ向きの流れを生じせしめる。したがって、スラグを浴中に巻き込ませるには、鋼浴表面への吹付けガスばかりでなく該鋼浴表面下に吹き込むガス流量も影響するのである。そこで、発明者は、水モデル実験を行い、鋼浴表面へ吹込む不活性ガスの流量と鋼浴表面下に吹き込まれるガスの流量との間の関係を調査し、上吹きガス流量が鋼浴表面下へ吹込れるガス量の0.7倍以上必要であると推定した。
【0018】
さらに、その推定の正しさを証明するため、1チャージが110トンのSUS304を上底吹転炉で十数チャージ吹錬した。その結果を図1に示す。図1は、溶鋼[C]濃度が1.0%から0.25%まで脱炭された時のCr酸化ロス量(Kg/t)と底吹ガス(酸素、窒素の混合ガス)流量(Nm3 /min)に対する上吹き不活性ガス(窒素)流量(Nm3 /min)の比との関係を表わしている。図1より、上吹き不活性ガス流量が底吹ガス流量の0.7倍以上でCr酸化ロスが著しく低減することが明らかである。一方、図2には、従来法を用いて上底吹転炉でSUS304を吹錬し、溶鋼Crの酸化ロス量と溶鋼[C]濃度との関係を調査した結果を示す。図2より、溶鋼[C]濃度が1.0%以下に低下すると、Cr酸化ロス量が急激に増加することがわかり、浴表面上に不活性ガスを吹くのは、溶鋼[C]濃度が1%以下であることが良いと判断した。溶鋼[C]濃度が1%を越えている状態では、スラグ中のCr2 O3 が少なく、Cr酸化ロス低減の効果は小さくなり、温度低下も小さいと予想できるためである。また、溶鋼[C]濃度が低過ぎると同じくCr2 O3 の分解反応は生じないので、このCr2 O3 の分解反応に必要な溶鋼[C]濃度は0.05%以上とした。
【0019】
なお、浴表面上に不活性ガスを上吹きする時、炉内にスラグの滓化剤、例えばホタル石、砂利等を投入すると、スラグは溶鋼とより混合し易くなり、Cr2 O3 の還元は一層促進される。
以上のように、溶鋼[C]濃度が1%以下で、且つ0.05%以上のどの[C]濃度の区間においても、浴表面下に吹き込まれるガス流量の0.7倍以上の流量の不活性ガスを浴表面上に吹くことにより、Cr2 O3 の分解吸熱反応を生じせしめることはできる。従って、浴表面上に吹く不活性ガス流量、このガス流量を吹く時の溶鋼[C]濃度域等を適切に選択すれば、溶鋼温度降下量及びCr酸化ロス量を調整できることになる。
【0020】
そして、このCr酸化ロス量と溶鋼温度降下量を調整する方法を検討し、鋼浴表面下に吹き込むガスによる鋼浴表面の運動と鋼浴表面に吹き付ける不活性ガスによる鋼浴表面の運動を制御して該鋼浴表面上のスラグを効率よく上記溶鋼に巻き込ませることで、調整が可能であることがわかった。
つまり、鋼浴表面に吹き付ける不活性ガスによる鋼浴表面の運動は、鋼浴表面のへこみ深さLと相関があり、下記(2)式(瀬川、鉄冶金反応工学(1977)、94頁〔日刊工業新聞〕)で表わされる。
【0021】
L=Lh ・exp(−0.78h/Lh ) …(2)
Lh =63.0(QT /nT d)2/3 …(3)
L:鋼浴表面のへこみ深さ(mm)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
QT :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm3 /Hr)
nT :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
一方、鋼浴表面下に吹き込むガスによる鋼浴表面の運動は、鋼浴表面の盛上り高さΔHと相関があり、下記(6)式(加藤:博士論文、(1989)〔東北大学〕)で表わされる。
【0022】
ΔH=2.0×10-3・H-1.3・ε2/3 …(6)
ΔH:鋼浴表面の盛上り高さ
H:不活性ガスを吹き込む羽口の鋼浴深さ
ε:撹拌エネルギー
さらに、撹拌エネルギーεは、下記(7)式(中西ら:川鉄技報、15(1983)、p100)で表わされるので、
ε=28.5(qB /W)TK log(1+H/1.48) …(7)
qB :鋼浴表面下に吹き込むガス流量
W:溶鋼重量
TK :溶鋼温度
一般的な精錬炉における含Cr溶鋼の〔C〕濃度が1%以下の領域において、(6)式及び(7)式から下記(4)式を導出したのである。
【0023】
ΔH=52.0(QB /nB W)2/3 …(4)
ΔH:鋼浴表面下に吹き込むガスによる鋼浴表面のもり上り高さ(mm)
QB :鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm3 /hr)
nB :鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
そこで、100トンのSUS304を上底吹き転炉に装入し、鋼浴へこみ深さLを変化させることで、L/ΔHを変化させて吹錬を行った。この吹錬は、底吹きガスを酸素ガスとN2 ガスとの混合ガスで行った場合と、N2 ガスのみで行った場合の2通り行った。その際、前者は、溶鋼の〔C〕濃度が0.25%に低下してから、底吹きガスを酸素ガス0.33Nm3 /t・分及びN2 ガス0.77Nm3 /t・分とし、上吹きガスをN2 ガス0.5〜2.5Nm3 /t・分で吹き、溶鋼の〔C〕濃度が0.05%になったところで吹き止め、この間の溶鋼Cr酸化ロス量と上吹きN2 ガス1Nm3 /tあたりの溶鋼温度変化を調査した。また、後者は、溶鋼の〔C〕濃度が0.25%のところから、上吹き酸素ガスを停止し、底吹きN2 ガスを0.15Nm3 /t・分、上吹きN2 ガスを0.5〜2.5Nm3 /t・分で5分間吹き、この時のCr酸化ロス量と上吹きN2 ガス1Nm3 /t・分あたりの溶鋼温度変化を調査した。
【0024】
これらの結果を、図3及び図4に示すが、L/△H≧0.05の条件であればCr酸化ロス量及び溶鋼温度も同時に低下させ得ることが判った。したがって、L/△H≧0.05を本発明の要件とし、その要件を満足する適当なL/△Hを選択することで、目標の溶鋼温度まで冷却することが可能となった。
次に、真空精錬において本発明と同様のことが実施できないかを調査した。60トンのSUS430を上底吹転炉で脱炭精錬した後、溶鋼の〔C〕濃度が0.20%で取鍋に出鋼した。該取鍋には、転炉から不可避的に30kg/tのスラグも入った。このスラグは、転炉においてFeSi等で還元していないので、44%のCr2 O3 を含くんでいた。この取鍋を真空槽に入れて、取鍋の底部より底吹きガスとしてArを0.015Nm3 /t・分の流量で吹込み、同時に上吹ランスよりN2 ガスを0.015〜0.33Nm3 /t・分の流量で5分間吹き付け、該溶鋼とスラグを撹拌した。その時の溶鋼のCr酸化ロスと溶鋼の温度変化を図5と図6に示す。図5及び6から、L/△H≧0.005であれば、Cr酸化ロスと溶鋼温度は同時に低減することがわかった。
【0025】
以上の結果から、真空精錬における本発明の要件をL/△H≧0.005としたが、この場合、取鍋内には不可避的に存在するスラグだけではなく、積極的に多量の未還元、又は弱還元のスラグを転炉から取鍋に移行させてもよい。また、VOD真空精錬のごとく、送酸を実施した後に、本発明を適用することも可能であり、本発明を実施し、目標の温度に調整した後、再び送酸を実施することも可能である。なお、前述の上底吹転炉の場合と同様に、鋼浴面上に不活性ガスを上吹する時、スラグの滓化剤を投入すると、スラグは溶鋼とより混合し易くなり、Cr2 O3 の還元は一層促進され、脱炭速度も増大する。
【0026】
【実施例】
表1、表2に示すヒートサイズ及び化学組成を有するステンレス粗溶鋼を用いて6ケースの本発明に係る脱炭精錬を試行した。その際、本発明の適用領域にそれぞれ対応した従来法による操業も行ったが、両者の操業条件を表3、表4に一括して示す。また、表3、表4には、各ケースでのL/ΔHの値も示してある。
【0027】
これらの試行では、精錬容器に転炉及び取鍋を用いたが、転炉は底吹きガスを炉底に設けたノズルから、また取鍋は底部に設けたノズルから吹き込んだ。そして、吹錬中には、鋼中の[C]が1.0%、0.25%の時、及び吹止時(還元直前)の3回に亙り、サブランスを用いて溶鋼温度と溶鋼[C]、及び[Cr]濃度が測定され、それら測定値は操業成績の評価に使用された。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
なお、上記した従来法は、すべて現在工程化されている脱炭精錬方法である。(実施例1)
本発明のポイントは、吹込みガスのパターン(吹錬時期による使用ガスの種類と流量の変化)であり、そのパターンを従来法1と比較して表5に示す。表5で明らかなように、本発明法1では、鋼中[C]が0.6%に低下するまで鋼浴表面に酸素を吹き、その後は、上吹き酸素ガスを吹止め、底吹きガス(酸素ガスと窒素ガスの合計量)に対してほぼ0.71倍の流量で、不活性ガスとしての窒素を上吹きしている。一方、従来法1は、この上吹き不活性ガスの吹込みは採用していないケースである。吹止後のFeSi使用量は、従来法1が21.70Kg/tであったのに対し,本発明法1が13.60Kg/tであり、還元剤原単位の減少が達成されている。なお、溶鋼の還元後の化学成分は、すでに表1、表2に示してある。
【0033】
【表5】
【0034】
なお、精錬成績としては、表6に示すように、本発明法1は、従来法1に比較して溶鋼温度の上昇防止、Cr酸化ロスの抑制ともに達成できている。
【0035】
【表6】
【0036】
(実施例2)
次に、本発明法2の吹込みガスのパターンを、従来法2と比較して表6に示す。表7で明らかなように、本発明法2は、鋼中の[C]が1.0%に低下するまで、鋼浴表面に酸素ガスを吹き、その後は底吹きガスに対してほぼ2.3倍の流量で窒素ガスを上吹きしている。従来法2は、このようなガスパターンを用いず吹止め、19.64Kg/tのFeSiで還元したが、本発明法2では10.60Kg/tと半分で済んだ。
【0037】
還元後の溶鋼化学成分は、表1、表2に、また、精錬成績は、表8に示してあるが、本発明法2も、本発明法1の結果と同様に、溶鋼温度の上昇防止、Cr酸化ロスの抑制に効果があった。
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
(実施例3)
表1、表2に示したステンレス粗溶鋼を取鍋に入れ、本発明法3のVOD真空精錬装置内での脱炭精錬を実施した。その際、比較例として、同様にVOD真空精錬装置を用いた従来法3も実施した。上吹きランスの高さは、鋼浴表面から1.0mとし、上底吹ガスは、表9に示すパターンに従い吹込んだ。表9より明らかなように、本発明法3は、鋼中の[C]が吹止目標値0.055%に低下するまで、酸素ガスを上吹き、アルゴンガスを底吹きして脱炭吹錬を終了し、その後、還元剤を投入する直前に、上及び底吹きするアルゴンガスの流量比を1.0とした。還元剤FeSiの使用量は、従来法3の9.50Kg/tに対して、本発明法3は5.80kg/tであった。
【0041】
【表9】
【0042】
また、還元後の溶鋼化学成分は、前記同様に表1、表2に示してある。さらに、精錬成績は、表10で明らかにしたが、本発明法3は、従来法3に比較して溶鋼温度の上昇防止及びCr酸化ロスの抑制が十分に達成されていることがわかる。FeSi中のSiは、75%で、このときのFeSi使用量は5.80kg/tであった。
【0043】
【表10】
【0044】
(実施例4)
本発明法4の吹込みガスパターンを、従来法4と比較して表11に示す。表11で明らかなように、本発明法4は、鋼中の〔C〕が1.0%以下に低下した時点から、鋼浴表面に底吹きガスに対してほぼ2.3倍の流量で窒素ガスを上吹し、さらに酸素を停止した時点より、5分間、底吹きガスとして窒素ガスを70Nm3 /分で吹き、鋼浴表面には窒素ガスを200Nm3 /分で上吹きした。従来法4は、かかるガスパターンを用いずに吹止され、13.81kg/tのFeSiで還元する必要があったが、本発明法4では3.4kg/tと従来法の約半分以下で済んだ。
【0045】
還元後の溶鋼化学成分は、表1、表2に、精錬成績は、表12に示しているが、本発明法4も他の実施例と同様に、溶鋼温度の上昇防止、Cr酸化ロスの抑制に効果があった。
【0046】
【表11】
【0047】
【表12】
【0048】
(実施例5)
本発明法5の吹込みガスのパターンを、従来法5と比較して表13に示す。表13で明らかなように、本発明法5及び従来法5とも溶鋼中〔C〕が0.25%に低下した時点から送酸を停止し、5分間、上吹窒素ガスを鋼浴表面に吹きつけた。そのときの上吹N2 ガス流量の底吹Arガス流量に対する比は、いずれも0.66であったが、L/ΔHは従来法5が0.017であるのに対し、本発明法5は0.36であった。その結果、還元用FeSi原単位は、従来法5の19.2kg/tに対して、本発明法5では15.5kg/tと低い値となった。
【0049】
還元後の溶鋼化学成分は、表1、表2に、精錬成績は、表14に示しているが、本発明法5も、他の実施例と同様に、溶鋼温度の上昇防止、Cr酸化ロスの抑制に効果があった。
【0050】
【表13】
【0051】
【表14】
【0052】
(実施例6)
SUS430を上底吹転炉に装入して脱炭精錬を行った後に、FeSi等で還元せずに取鍋へ出鋼し、該取鍋を真空槽の中に入れて、真空度1torr以下で真空脱炭精錬を実施した。その時の処理前成分は、表1、表2に、また、本発明法の精錬条件を従来法と比較して表3、表4にすでに示してある。なお、該取鍋内には、上底吹転炉で生成したスラグを全量(約40kg/t)移してある。この時のスラグ中Cr2 O3 は、従来法及び本発明法とも約45%であった。本発明法6の吹込みガスのパターンを従来法と比較して表15に示すが、本発明法6は、送酸を実施せず、上吹窒素ガスのみを鋼浴表面に処理開始と同時に5分間吹きつけ、スラグと溶鋼を撹拌した。従来法6も同様の条件で実施した。上吹窒素ガス流量の底吹アルゴンガス流量に対する比は、本発明法が0.66であるのに対し、従来法6では0.55であったが、L/△Hは本発明法6が0.14であるのに対し、従来法6は1.4×10-5であった。
【0053】
この結果は、表16に示す通り、従来法6では上吹窒素ガスを停止後、脱炭が目標通りに進行しなかったため、溶鋼温度も低下しなかった。そこで酸素ガスを吹き、脱炭を行い冷材で溶鋼温度調整を行ったが、Cr酸化ロス量が増大し、還元用FeSi原単位も15.2kg/tと高い値になった。一方、本発明法6では、上吹き窒素ガスのみで脱炭が進行し、目標溶鋼〔C〕の範囲に適中し、かつ溶鋼温度も低下させることができた。その結果、還元用FeSi原単位も5.5kg/tと従来法6の約1/3で済んだ。
【0054】
還元後の溶鋼化学成分はすでに表1、表2に示してある。
【0055】
【表15】
【0056】
【表16】
【0057】
(実施例7)
本発明法7の吹込みガスパターンを、従来法7と比較して表17に示す。表17によれば、本発明法7と従来法7は、鋼中の炭素が1.0重量%以下に低下した時点から、鋼浴表面に底吹きガスに対して0.32倍の流量で窒素ガスを上吹きしている。その際のL/ΔHは従来法7が0.04であるのに対し、本発明法7では、1.58〜1.59であった。
【0058】
【表17】
【0059】
その結果、還元用FeSi原単位は、従来法7の12.1kg/tに対して、本発明法7では5.2kg/tと低い値となった。還元後の溶鋼化学成分は、前記表1、表2に、精錬成績は表18に示すが、本発明法7も、他の実施例と同様に、溶鋼温度の上昇防止、Cr酸化ロスの抑制に効果があることがわかる。
【0060】
【表18】
【0061】
(実施例8)
本発明法8の吹込みガスパターンを、従来法8と比較して表19に示す。表19によれば、本発明法8は、鋼中の炭素が0.25重量%近傍に達した時点(サブランスの一本目を投入した直後)で酸素を停止し、鋼浴表面に底吹き窒素ガスに対して2.0倍の窒素ガスを5分間上吹きしている。その後、再び底吹き酸素ガスで吹錬し、同時に鋼浴表面に、底吹き酸素ガスに対して1.32倍の窒素ガスを上吹きした。
【0062】
【表19】
【0063】
その結果、還元用FeSi原単位は、従来法の14.3kg/tに対し10.3kg/tと低い値となった。還元後の溶鋼化学成分は、前記表1、表2に、精錬成績は、表20に示しているが、本発明法8も他の実施例と同様、溶鋼温度の上昇防止及びCr酸化ロスの抑制に効果があることがわかる。
【0064】
【表20】
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では、含Cr溶鋼の脱炭精錬中に、上底吹きガスのパターンを変更し、溶鋼中の残存[C]を有効に利用してスラグ中のCr2 O3 を還元し、合わせて溶鋼温度も調整するようにした。その結果、精錬中の溶鋼温度の上昇防止及びCr酸化ロスの抑制を達成することができた。また、高価なCr還元用のFeSi原単位を大幅に低減できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼中[C]が1.0%〜0.25%の領域での、Cr酸化ロス量と上底吹きガス量の比との関係を示す図である。
【図2】吹錬中の溶鋼中〔C〕濃度変化に伴うCr酸化ロス量の変化を示す図である。
【図3】Cr酸化ロス量とL/△Hとの関係を示す図である。
【図4】上吹窒素ガス 1Nm3 /tあたりの溶鋼の温度変化とL/△Hとの関係を示す図である。
【図5】溶鋼〔C〕が0.20%の時から上吹窒素ガスを5分間吹いた時の溶鋼温度変化とL/△Hとの関係を示す図である。
【図6】溶鋼〔C〕が0.20%の時から上吹窒素ガスを5分間吹いた時のCr酸化ロスとL/△Hとの関係を示す図である。
Claims (5)
- 鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、
上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、該鋼浴表面下に吹き込むガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。 - 鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、
上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、上記酸素ガスを停止した時点より、該鋼浴表面下に吹き込む不活性ガス流量の0.7倍以上の不活性ガスを該鋼浴表面に吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。 - 鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、
上記溶鋼の[C]濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、下記(1)式を満足する条件で該鋼浴表面に不活性ガスを吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
L/ΔH≧0.05 …(1)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のLhは(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
L=Lh・exp(−0.78h/Lh) …(2)
Lh=63.0(QT/nTd)2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
QT:鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm3/Hr)
nT:上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(QB/nBW)2/3 …(4)
QB:鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm3/hr)
nB:鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton) - 鋼浴表面の上下又は鋼浴表面下に、酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、
上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下、0.05重量%以上の領域で、上記酸素ガスを停止した時点より、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、下記(1)式を満足する条件で、該溶鋼表面に不活性ガスを吹きつけることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
L/ΔH≧0.05 …(1)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のL h は(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
L=L h ・exp(−0.78h/L h ) …(2)
L h =63.0(Q T /n T d) 2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
Q T :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm 3 /Hr)
n T :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(Q B /n B W) 2/3 …(4)
Q B :鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性 ガスとの混合ガスの流量(Nm 3 /hr)
n B :鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
ただし、この場合、上記(4)式のQBは、不活性ガス流量(Nm3/hr)である。 - 精錬炉で脱炭精錬した含Cr溶鋼を未還元で又は脱酸剤により弱還元して取鍋に出鋼し、該精錬炉から取鍋に同時移行したスラグと共に真空精錬を行う含Cr溶鋼の脱炭精錬方法において、
上記溶鋼の〔C〕濃度が1重量%以下の領域で下記(5)式を満足する条件で、該鋼浴表面下に不活性ガスを吹込み、かつ該鋼浴表面に不活性ガスを吹き付けることを特徴とする含Cr溶鋼の脱炭精錬方法。
L/ΔH≧0.005 …(5)
ここで、Lは鋼浴表面に吹きつける不活性ガスによる鋼浴へこみ深さ(mm)で(2)式で表わされ、(2)式のL h は(3)式で、ΔHは鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによる鋼浴盛上り高さ(mm)であり、(4)式で求められる。
L=L h ・exp(−0.78h/L h ) …(2)
L h =63.0(Q T /n T d) 2/3 …(3)
h:不活性ガスを吹きつける上吹きランスの鋼浴表面からの高さ(mm)
Q T :鋼浴表面に吹きつける不活性ガス流量(Nm 3 /Hr)
n T :上吹きランスの孔数
d:上吹ランスの孔径の平均値(mm)
ΔH=52.0(Q B /n B W) 2/3 …(4)
Q B :鋼浴表面下に吹き込む酸素ガス若しくは不活性ガス若しくは酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスの流量(Nm 3 /hr)
n B :鋼浴表面下に吹き込むガスの羽口数
W:溶鋼重量(ton)
ただし、この場合も、上記(4)式のQBは、不活性ガス流量(Nm3/hr)である。
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