JP3730791B2 - スピンドルモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハードディスク、フロッピディスク、CD−ROM、DVD等の記録ディスクの駆動に用いられるスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
記録ディスクであるハードディスクの駆動用のスピンドルモータでは、シャフトの支持にボールベアリングを使用するのが一般的である。しかしながら、ボールベアリングを使用した場合、ボールベアリング自体がすべり軸受よりも高価であり、モータの製造コストの上昇を招くため、ボールベアリングと同等の特性を有し、かつ安価に構成することが可能な軸受構造が望まれる。
【0003】
ところで、すべり軸受である焼結含油軸受は、ボールベアリングよりも安価である反面、回転精度や寿命の点で劣ることから、通常は回転精度や寿命をあまり必要としない分野において利用される。
【0004】
しかしながら、このような焼結含油軸受を用いる場合であっても、軸受隙間を小さくすること及びそれに伴う加工精度の向上、並びに真円形状以外の軸受の開発といった近年の技術向上により、ボールベアリングよりもむしろ焼結含油軸受を用いる方が、いわゆる非繰返し軸振れ(NRRO;Non Repetitive Runout)を改善することができ、ハードディスクをはじめとする記録ディスク駆動用のスピンドルモータに適用することが可能な性能を有するようになってきている。
【0005】
即ち、焼結含油軸受等のすべり軸受を用いると、摺動面の面精度、焼結含油軸受とシャフトとの間のギャップ長等の条件さえ満たせば、いわゆる流体潤滑の状態となることから、固定部材(例えば焼結含油軸受)と回転部材(例えばシャフト)とが非接触状態になってボールベアリングよりもNRROが改善される。
【0006】
また、ボールベアリングの場合、ボールと内外輪が点接触に近く接触面積が小さいため、衝撃印加時に圧力が集中して軸受が塑性変形しやすいのに比べて、焼結含油軸受等のすべり軸受では、シャフトとの間の接触が面接触状態になって接触面積が大きくなり、衝撃印加時における軸受の塑性変形が生じにくくなるという利点がある。
【0007】
シャフトの軸受として、例えば焼結含油軸受からなるすべり軸受を用いた従来のスピンドルモータとしては、例えば特開平10−23702号公報に開示されるものがある。
【0008】
このようなスピンドルモータにおいては、一対のすべり軸受を軸線方向に離間して設けることで軸受スパンを大きくし、上記したNRRO特性を改善することができるが、抜け止め部を軸受外部に有することから、部材の加工及びモータの組立等に起因して軸受部の軸線方向隙間が大きくなり、モータへの衝撃印加時にロータの軸線方向の移動量が多くなり、ロータ上に載置される記録ディスクの破損等といった問題が生じるおそれがある。
【0009】
このような従来のスピンドルモータに対して、モータの軸線方向厚みを薄くすると共に、軸受内に抜け止め部を構成して抜け止め部の軸線方向隙間を小さくしたスピンドルモータの一例を図2に示す。図2に示すように、ブラケット1にはモータ収納スペースとしての凹部2が形成され、ブラケット1の凹部2の中央部に形成された円形孔3周縁のブラケット1にボス状の円筒部4が一体形成され、この円筒部4内にシャフト5が配設されている。
【0010】
そして、焼結含油軸受から成るすべり軸受6はシャフト5の中央から下部にかけて外嵌されると共に、円筒部4の内周下部に形成された段部7にすべり軸受6の下面周縁部がほぼ当接された状態で円筒部4の内側に嵌入されている。また、抜け止めリング8がシャフト5の下部に外嵌されると共に、抜け止めリング8の上面がすべり軸受6の下面に当接されてシャフト5のすべり軸受6からの上方への抜けが防止されている。尚、円形孔3を閉塞するように設けられたスラスト受け9に抜け止めリング8の下面及びシャフト5の下面が当接され、シャフト5の抜け止めリング8からの下方への抜けが防止されている。
【0011】
更に図2に示すように、円筒体4に外嵌されたコア11a及びこのコア11aに巻装された巻線11bから成るステータ11が凹部2内に配設され、アルミニウム等の非磁性材から成りハードディスクDが載置されるハブ12が、シャフト5の上端部に嵌着され、鉄等の磁性材から成るロータヨーク13がハブ12の下面周縁部に取り付けられ、駆動用マグネット14が、ロータヨーク13の内側に嵌着され、ステータ11に対向して配設されている。但し、図2において、16はプリント基板、17はステータ11の巻線11bとプリント基板16とを接続する配線である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図2に示すように、1個のすべり軸受6だけでは、軸支持に関与する長さ分に相当する軸受スパンはすべり軸受6の長さに留まり、十分な軸受スパンを確保できないため、軸受スパンの2乗に比例する軸受剛性も小さく、軸支持力が小さくなってNRROが良くないという問題がある。
【0013】
また、このように軸受スパンが小さいと、軸受にかかる荷重が大きくなるため、軸受の寿命が短くなるという問題もある。
【0014】
この発明が解決しようとする課題は、簡単かつ安価な構成で、特性の優れたスピンドルモータを提供できるようにすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明は、シャフトと、前記シャフトが遊挿される孔が形成され軸線方向に離間して配設される一対の円筒状のすべり軸受と、前記両すべり軸受が内嵌されるスリーブ部材とを備え、前記スリーブ部材の内側には前記一対のすべり軸受の間に位置し両すべり軸受の軸方向位置を規制する内方への突出部が設けられ。前記シャフトの外周面と前記両すべり軸受の孔の内周面との間には摺動面が形成されると共に、前記シャフトの外周面にはほぼリング状を成し、前記両すべり軸受との軸線方向に微小間隙を形成する抜け止め部材が前記両すべり軸受の間に位置してとりつけられていることを特徴としている。
【0016】
このような構成によれば、抜け止め部材によってシャフトの両軸受からの抜けが防止されると共に、抜け止め部材を挟んで一対のすべり軸受が配設されていることから、従来のように1個のすべり軸受により支持する場合に比べて、軸線方向上側に位置するすべり軸受の上端から軸線方向下側に位置するすべり軸受の下端までの部分が軸支持に関与することになるため、軸受スパンを大きくでき、NRROの改善が図れる。
【0017】
また、軸受スパンが大きくなると、軸受にかかる荷重を小さくして軸受の長寿命化が図れる。更に、両すべり軸受とシャフトとの間の接触面積が大きくなって衝撃印加時の軸受の塑性変形が生じにくくなって、ボールベアリングの場合よりも耐衝撃性の向上が図れる。また、すべり軸受自体がボールベアリングよりも安価であるため、モータを安価に構成できる。
【0018】
このとき、両すべり軸受と抜け止め部材とは必ずしも摺接する必要はないが、両すべり軸受と抜け止め部材との間の軸線方向隙間(アキシャルギャップ)が小さいほど、モータのロータ部分のがたつき(遊び)が小さくなって耐衝撃性の向上が望めることから、両すべり軸受と抜け止め部材との間のギャップをできるだけ小さくすることが好ましい。
【0019】
ところで、抜け止め部材は、強度の面から見れば完全なリング状であるのが好ましいが、必ずしも完全なリング状である必要はなく、Cリング状のものであっても構わない。
【0020】
また、本発明は、前記シャフトの前記抜け止め部材が取り付けられる部位は、前記両すべり軸受との摺動面よりも大径であることを特徴としている。こうすれば、抜け止め部材をシャフトに取り付ける際にシャフトのすべり軸受との摺動面の面精度を損なうことが防止され、高い回転精度を維持することができる。
【0021】
このとき、シャフトを部分的に太くするには、凹凸の付いた工具をシャフト部材に当てて転造することで簡単に行える。
【0022】
更に、本発明は、前記シャフトが、回転部材の一部を成すと共に、前記シャフトの一方の端部には少なくとも1枚の記録ディスクが載置されるハブ部材が固着されていることを特徴としている。こうすると、シャフト及びハブ部材を介して、記録ディスクを損傷することなく安定して回転駆動することができる。
【0023】
また、本発明は、前記両すべり軸受が、多孔質材により形成されると共に軸受油が含浸されていることを特徴としている。
【0024】
このように構成すれば、スピンドルモータが高速回転することによって、多孔質材により形成されたすべり軸受の孔中に含浸されシャフトとの摺動面に保持される軸受油に動圧が生じ、両すべり軸受とシャフトとの間はいわゆる流体潤滑の状態になって非接触状態になるため、ボールベアリングを用いる場合に比べてNRROの面で非常に有利になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態について図1を参照して説明する。但し、図1はスピンドルモータの断面図である。
【0026】
図1において、21はモータ収納スペースとしての凹部22が形成されたブラケット、23はブラケット21の凹部22の中央部に形成された円形孔、24は円形孔23周縁のブラケット21に一体形成されたスリーブ部材としての円筒部、25は円筒部24内に配設されたシャフト、26a、26bは多孔質材による焼結含油軸受から成る一対のすべり軸受、27はリング状の抜け止め部材である。
【0027】
このとき、両すべり軸受26a、26bにはシャフト25が遊挿される遊挿孔が形成されてこの遊挿孔にシャフト25が遊挿されると共に、両すべり軸受26a、26bの遊挿孔の内周面とシャフト25の外周面との間に摺動面が形成される。更に、円筒部24の内周ほぼ中央部に内方に突出して突出部28が形成され、この突出部28の上面に上側のすべり軸受26aの下面周縁部が当接されると共に、突出部28の下面に下側のすべり軸受26bの上面周縁部が当接された状態で円筒部24に両すべり軸受26a、26bが内嵌されている。
【0028】
また、シャフト25の抜け止め部材27が取り付けられる部位である下部は、両すべり軸受26a、26bとの摺動面よりも盛り上がって大径に形成されており、抜け止め部材27はシャフト25の盛り上がった下部に外嵌されると共に、抜け止め部材27の上面が上側のすべり軸受26aの下面に、抜け止め部材27の下面が下側のすべり軸受26bの上面に当接して配設されて、シャフト25の両すべり軸受26a、26bからの上下への抜けが防止されている。尚、このようにシャフト25を部分的に大径にするには、周知のように凹凸の付いた工具をシャフト部材に当てて転造することで実現可能である。
【0029】
更に、図1において、31は円筒部24に外嵌されたコア31a及びこのコア31aに巻装された巻線31bから成り凹部22内に配設されたステータ、32はアルミニウム等の非磁性材から成りシャフト25の上端部に嵌着されハードディスクDが載置されるハブ部材、33は鉄等の磁性材から成りハブ部材32の下面周縁部に取り付けられたロータヨーク、34は駆動用マグネットであり、ロータヨーク33の内側に嵌着され、ステータ31に対向して配設されている。但し、36はプリント基板、37はステータ31の巻線31bとプリント基板36とを接続する配線である。
【0030】
ところで、このような構成のスピンドルモータの組立手順について簡単に説明すると、以下の通りである。まず、シャフト25の所定部位に抜け止め部材27を圧入し、ステータ31等が取り付けられたブラケット21の円筒部24に、上側のすべり軸受26aを圧入した後、抜け止め部材27を圧入したシャフト25をすべり軸受26aの内側に挿入し、その後ロータヨーク33が取り付けられたハブ部材32をシャフト25の上端部に嵌着し、最後に下側のすべり軸受26bを円筒部24に下方から圧入する。
【0031】
このとき、両すべり軸受26a、26bと同じ軸上の抜け止め部材27を挟んで両すべり軸受26a、26bを配設する構成であるため、近年の加工技術の向上に伴って抜け止め部材27の両端面を高精度に加工することができ、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27との間の隙間を非常に小さく(例えば10μm程度)することができて、ハードディスク等の駆動用モータへの適用が可能になるのである。
【0032】
従って、抜け止め部材27を挟んで一対のすべり軸受26a、26bをシャフト25に配設することで、抜け止め部材27によってシャフト25の両すべり軸受26a、26bからの抜けを防止できると共に、軸受スパンを大きくすることが可能になる。
【0033】
そして、軸受スパンを大きくできれば、軸受スパンの2乗に比例する軸受剛性を大きくすることが可能になり、これにより軸支持力も大きくすることができてNRROの改善を図ることが可能になると共に、両すべり軸受26a、26bにかかる荷重を小さくして両すべり軸受26a、26bの長寿命化を図ることができる。また、すべり軸受26a、26b自体がボールベアリングよりも安価であるため、モータを安価に構成することが可能になる。
【0034】
更に、モータが高速回転することによって、多孔質材により形成された両すべり軸受26a、26bの孔中に含浸されシャフト25との摺動面に保持される軸受油に動圧が生じて、両すべり軸受26a、26bとシャフト25との間は、いわゆる流体潤滑の状態になって非接触状態になることから、ボールベアリングを用いる場合に比べてNRROの面で非常に有利である。
【0035】
また、両すべり軸受26a、26bとシャフト25との間の接触面積が大きくなり、これにより衝撃印加時の両すべり軸受26a、26bの塑性変形が生じにくくなって、ボールベアリングの場合よりも耐衝撃性の向上を図ることが可能になる。
【0036】
このように、上記した実施形態によれば、1個のすべり軸受によりシャフトを支持する構成(図2参照)に比べて、軸受スパンを大きくしてNRRO、寿命を大きく改善でき、ボールベアリングを用いた場合と比較しても、非常に安価で済み、NRRO及び耐衝撃性が同等か、或いはボールベアリングを用いた場合よりも優れ、良好な特性を有するスピンドルモータを得ることが可能になる。
【0037】
また、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27とが当接し、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27との間のアキシャルギャップが非常に小さいため、モータのロータ部分のがたつき(遊び)が小さくなって耐衝撃性を向上することができる。
【0038】
更に、シャフト25の抜け止め部材27の取り付け部位を両すべり軸受26a、26bとの摺動面よりも大径にしているため、抜け止め部材27をシャフト25に取り付ける際に、シャフト25の両すべり軸受26a、26bとの摺動面の面精度を損なうことを防止でき、高い回転精度を維持することが可能になる。また、抜け止め部材27をリング状にしたため、抜け止め部材27の強度を大きくすることができ、衝撃等による抜け止め部材27の破損を防止することが可能になる。
【0039】
なお、上記した実施形態では、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27とが当接している場合について説明したが、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27とは必ずしも当接している必要はなく、両すべり軸受26a、26bと抜け止め部材27と許容できる範囲内で離間して配設されていても構わない。
【0040】
また、上記した実施形態では、抜け止め部材27をリング状にした場合について説明したが、抜け止め部材27は必ずしも完全なリング状である必要はなく、Cリング状のものであっても構わない。
【0041】
更に、上記した実施形態では、シャフト25が回転するように構成した場合について説明したが、シャフト25が固定の場合であってもこの発明を同様に実施することができ、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。この場合、図1におけるブラケット21がハブ部材に、ハブ部材32がブラケットに相当するような構成となる。
【0042】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、NRRO及び耐衝撃性を改善することができると共に、長寿命化を図ることができ、特性の優れた記録ディスク駆動用のスピンドルモータを簡単かつ安価に提供することができる。
【0044】
また、請求項2に記載の発明によれば、抜け止め部材をシャフトに取り付ける際にシャフトのすべり軸受との摺動面の面精度を損なうことが防止され、高い回転精度を維持することができる。
【0045】
また、請求項3に記載の発明によれば、シャフト及びハブ部材を介して、記録ディスクを損傷することなく安定して回転駆動することが可能になる。
【0046】
また、請求項4に記載の発明によれば、スピンドルモータが高速回転することによって、多孔質材により形成されたすべり軸受の孔中に含浸されシャフトとの摺動面に保持される軸受油に動圧が生じ、両すべり軸受とシャフトとの間はいわゆる流体潤滑の状態になって非接触状態になるため、ボールベアリングを用いる場合に比べてNRROの面で非常に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の断面図である。
【図2】この発明の比較例の断面図である。
【符号の説明】
24 円筒部(スリーブ部材)
25 シャフト
26a、26b すべり軸受
27 抜け止め部材
32 ハブ部材
Claims (4)
- シャフトと、前記シャフトが遊挿される孔が形成され軸線方向に離間して配設される一対の円筒状のすべり軸受と、前記両すべり軸受が内嵌されるスリーブ部材とを備え、前記スリーブ部材の内側には前記一対のすべり軸受の間に位置し両すべり軸受の軸線方向位置を規制する内方への突出部が設けられ、前記シャフトの外周面と前記両すべり軸受の孔の内周面との間には摺動面が形成されると共に、前記シャフトの外周面にはほぼリング状を成し、前記両すべり軸受との軸線方向に微小間隙を形成する抜け止め部材が前記両すべり軸受の間に位置してとりつけられていることを特徴とするスピンドルモータ。
- 前記シャフトの前記抜け止め部材が取り付けられる部位は、前記両すべり軸受との摺動面よりも大径であることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
- 前記シャフトが、回転部材の一部を成すと共に、前記シャフトの一方の端部には少なくとも1枚の記録ディスクが載置されるハブ部材が固着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスピンドルモータ。
- 前記両すべり軸受が、多孔質材により形成されると共に軸受油が含浸されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のスピンドルモータ。
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