JP3729118B2 - 画像処理方法、画像処理装置、画像処理プログラム、これを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像データの輪郭部強調と粒子状ノイズ低減とを両立して画像品位を向上する画像処理方法、画像処理装置、画像処理プログラム、これを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、写真焼き付けの分野では、撮影画像が記録されている写真フィルムに光を照射し、この写真フィルムを透過した光を印画紙上に照射することによって焼き付けを行うアナログ露光が長年行われてきた。
【0003】
しかしながら、近年では、アナログ露光の他に、写真フィルム上の撮影画像をスキャナで読み取ったり、デジタルカメラを用いて撮影したりすることによって得られるデジタル画像データに基づき、赤(R),緑(G),青(B)の単色光を印画紙上に重複露光することにより焼き付けを行うデジタル露光が広く採用されている。
【0004】
このようなデジタル露光を行う写真焼付装置(デジタル写真焼付装置)では、スキャナやデジタルカメラなどのスペックに依存する画像読み取り時の解像度と、露光装置の露光ヘッドなどのスペックに依存する露光時の解像度とによって、印画紙上に露光する画像の画素密度が決まることになる。
【0005】
一般に、写真フィルムの画像を構成する粒子密度は2500dpi(dot per inch)程度であり、現在、この粒子密度と同程度の解像度性能を有するデジタル露光方式の写真焼付装置が市場に登場している。例えば、最新の写真焼付装置は、読み取り解像度が2167dpiに及ぶスキャナを備えている。このような写真焼付装置によれば、写真フィルムレベルの画像を取り込むことができる。なお、2500dpiの粒子密度を、135Fサイズ(3.6cm×2.4cm)の写真フィルム上で実現すれば、画素数に換算して3445×2362(画素)に相当する。
【0006】
このような高解像度の画像読み取り能力、更には、高解像度の画像露光能力を備えた写真焼付装置を利用すれば、アナログ露光と比較しても遜色のないプリント画像がデジタル露光によって得られる。
【0007】
一方、デジタル露光は、スキャナ等から取り込んだデジタル画像データに各種の画像処理演算を施すことによって、アナログ露光では実現できない様々な特殊効果を画像データに付与することができるという有利な特徴を有している。上記特殊効果の代表的なものとして、画像中の輪郭部(例えば、背景と人物との境界や、人物の顔の目鼻立ち)部分にめりはりを与える鮮鋭化(シャープネス)処理と呼ばれるデジタル画像処理について以下説明する。
【0008】
鮮鋭化処理は、画像中の所定領域と他の領域との境界、すなわち輪郭部をはっきり見せるための処理であり、具体的には、例えば鮮鋭化フィルタと呼ばれる演算フィルタを用いて処理することにより、輪郭部を構成している特定の着目画素(以下、各画素に対応する画素データのことも単に画素と称する)について、それに隣接する画素との濃度差(輝度差)を大きくするように、画像データを変換処理する。
【0009】
最も単純な具体例を用いて説明すれば、上記鮮鋭化フィルタとしての3×3フィルタは、3×3の画素行列における各画素の濃度データに掛け合わせる係数の行列要素で構成されており、例えば
である。中央の数値「5」は、着目画素に掛け合わせる要素である。他の数値は、着目画素に隣接する画素にそれぞれ掛け合わせる要素であり、各要素の和が基本的に1となるように設定される。上記鮮鋭化フィルタを適用するには、着目画素を各掛け合わせ要素の和で置換する。仮に、100×100画素の画像データが有るとすれば、計10000個の画素に対して、その1つ1つを順番に着目画素とみなしながら、上記3×3フィルタを10000回適用すると、鮮鋭化された画像を得ることができる。
【0010】
上記3×3フィルタを用いた効果を示す具体例をさらに説明する。例えば、道路や空などを背景とする自動車や飛行機のような物体の画像を例に取る。道路や空などの背景には、画像の色および濃淡に変化が殆ど無い画像の平坦部と呼べる領域を多く含んでいる。画像の平坦部における3×3の画素列は、例えば、
のようになっている。
【0011】
この3×3画素の画像データに、上記3×3フィルタをあてはめると、各画像データの数値に対して、対応する行列要素が掛け合わされることとなり、
となる。掛け合わされた行列要素の和は49なので、着目画素の画像データ「50」は、「49」に変換される。このように、画像の平坦部では、変換前後の値にあまり変化が現れない。
【0012】
一方、物体の輪郭部では、3×3の画素列は、例えば、
となっている。すなわち、この輪郭部では、左上側が薄く、右下側が濃い傾向にある。これに、上記3×3フィルタをあてはめると、
となる。掛け合わされた行列要素の和は35なので、着目画素の画像データ「50」は、「35」に変換される。
【0013】
さらに、着目画素の画像データ「50」の右隣に隣接する画像データ「90」に着目した場合、その3×3の画素列は、例えば、
となっている。これに、上記3×3フィルタをあてはめると、
となる。掛け合わされた行列要素の和は150なので、着目画素の画像データ「90」は、「150」に変換される。このように、画像の輪郭部では、変換前後の値に大きな変化が現れる。
【0014】
このように、鮮鋭化フィルタを用いて画像データを加工すると、画像の平坦部はあまり変化しないのに対し、輪郭部は大きく変化するので、この作業を繰り返すだけで、画像を鮮鋭化させることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記鮮鋭化フィルタを用いた従来の鮮鋭化手法では、印画紙に焼き付けた画像のざらつき感を増大させるという問題が発生するので、この問題について説明する。
【0016】
前述のように、高解像度のデジタル写真焼付装置は、ほぼ写真フィルムの画像を構成する粒子レベル(フィルム粒子レベル)の画像を取り込むことができるため、写真フィルムと等倍で印画紙に焼き付けた画像は、フィルム粒子レベルの大きさの画素集合で構成される。一方、写真フィルムにおけるフィルム粒子の発色特性は完全には均一でないため、画像を形成する色彩や濃度の中に、細かな色変化や濃度変化による画像ざらつき、換言すればフィルム粒子レベルのノイズ(以下、粒状ノイズと呼ぶ)が含まれる。
【0017】
このような粒状ノイズが画像データに存在する場合に、上記鮮鋭化フィルタ等を用いた鮮鋭化処理を行うと、画像の輪郭部だけでなく粒状ノイズの粒状性まで強調してしまい、印画紙等に焼き付けた画像のざらつき感を増大させて見苦しい画像となってしまうという問題が発生する。特に、このようなざらつき感が画像の人肌部分に現れると、画像品位が大きく低下して見えてしまう。
【0018】
このような問題を解決するために、従来様々な解決手法が提案されている。
【0019】
最も単純な解決手法としては、鮮鋭化処理後の画像データ全体にぼかし処理(例えば、平均値フィルタを用いて、ある着目画素の値をその周囲の画素から求めた平均値で置換する処理)を施す手法が考えられる。しかし、画像データ全体にぼかし処理を施すと、せっかく強調した輪郭部分までがぼやけてしまい、鮮鋭化処理の効果が薄れる。
【0020】
他の解決手法としては、画像データ全体にまずぼかし処理を施し、その後、鮮鋭化処理を施す手法も考えられる。しかし、この場合には、先んじるぼかし処理により、画像データ中の詳細構造(ディテール)が消失してしまうので、後の鮮鋭化処理による輪郭強調の効果が小さくなるという問題が生じる。
【0021】
このように、従来手法では、画像の輪郭部などを強調する鮮鋭化処理と、不要な粒状ノイズ(周期的ノイズ)の除去処理とを効果的に両立することが難しいため、新たな画像処理方法が求められている。
【0022】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像データの輪郭部強調と周期的ノイズ低減とを両立して、画像品位を向上する画像処理方法、画像処理装置、画像処理プログラム、これを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の画像処理方法は、上記の課題を解決するために、第1の画像データの各画素について鮮鋭度を強調した鮮鋭化画像データを取得する鮮鋭化画像データ取得段階と、前記第1の画像データの各画素について平滑化した平滑化画像データを取得する平滑化画像データ取得段階と、前記第1の画像データの各画素についてエッジ度を算出するエッジ度算出段階と、前記エッジ度算出段階にて算出したエッジ度の最頻値を特定するエッジ度最頻値特定段階と、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対し、前記平滑化画像データの融合比率を高めるようにエッジ度−融合比率相関を設定するエッジ度−融合比率相関設定段階と、前記エッジ度算出段階にて算出した前記第1の画像データの各画素におけるエッジ度を、前記エッジ度−融合比率相関に適用して、前記第1の画像データの各画素における融合比率を決定する融合比率決定段階と、前記融合比率決定段階にて決定した融合比率に基づき、前記鮮鋭化画像データと前記平滑化画像データとを各画素毎に融合して第2の画像データを得る画像データ融合段階とを備えることを特徴としている。
【0024】
また、請求項2に記載の画像処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項1の構成において、前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対応する極値を有するようにエッジ度−融合比率相関を設定することを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、まず、第1の画像データの各画素について、2つの画像データ、つまり鮮鋭化画像データと平滑化画像データとが得られる。鮮鋭化画像データ取得段階における鮮鋭度の強調手法としては、鮮鋭化フィルタ処理の他、コンボリューション、離散フーリエ変換解析など任意の鮮鋭化手法を採用することができる。また、平滑化画像データ取得段階における平滑化手法としては、平均値フィルタ、メディアンフィルタ、領域選択型平滑フィルタなど任意の平滑化手法を採用することができる。
【0026】
一方、前記エッジ度算出段階では、第1の画像データの各画素についてエッジ度(輪郭部度)が算出される。第1の画像データからエッジ度を算出する手法としては、公知の微分フィルタなど任意の手法を採用することができる。
【0027】
前記エッジ度算出段階では、異なる方向特性を有する複数の微分フィルタを用いてエッジ度を算出することも好ましい。これにより、ラプラシアンフィルタなどの全方位的な微分フィルタを用いる場合よりも、エッジ検出感度を向上することができる。
【0028】
その後、前記エッジ度最頻値特定段階にて、算出したエッジ度の最頻値が特定される。例えば、前記エッジ度について、度数分布(ヒストグラム)処理などを用いることにより、その最頻値を特定することができる。
【0029】
前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、特定したエッジ度の最頻値に対し、前記平滑化画像データの融合比率を高めるようにエッジ度−融合比率相関(関数)を設定する。この際、好ましくは、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対応する極値を有するようにエッジ度−融合比率相関を設定することが好ましい。
【0030】
例えば、エッジ度に対して線形な融合比率を導くエッジ度−融合比率相関であって、前記エッジ度の最頻値に対応する領域では、前記平滑化画像データの融合比率を極値的に高めるようなエッジ度−融合比率相関を設定する。
【0031】
その後、前記融合比率決定段階で、前記第1の画像データの各画素における融合比率が決定され、前記画像データ融合段階では、決定された融合比率に基づき、前記鮮鋭化画像データと前記平滑化画像データとが各画素毎に融合されて、第2の画像データが得られる。
【0032】
それゆえ、第1の画像データにおいて、対応エッジ度の出現頻度が高いと考えられる、周期的かつ定型的にあらわれるノイズ成分については、前記平滑化画像データの融合比率を高めるように、画像データの融合が行われる。この結果、輪郭強調の効果を維持しながら、このようなノイズ成分を抑制した第2の画像データを得ることができる。
【0033】
これにより、画像データの輪郭部強調と周期的ノイズ低減とを両立して、画像品位を向上することができる。
【0034】
請求項3に記載の画像処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項1または2の構成において、前記第1の画像データは、写真フィルムの読み取り画像データであることを特徴としている。
【0035】
上記の構成によれば、第1の画像データの画像において周期的に発現する、写真フィルムのフィルム粒子に起因する粒状ノイズについて、前記平滑化画像データの融合比率を高めるように、画像データの融合が行われる。
【0036】
これにより、請求項1または2の作用効果に加えて、フィルム粒子に起因する細かな色変化や濃度変化による画像ざらつきを効果的に抑制することができる。
【0037】
請求項4に記載の画像処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項1乃至3のいずれか1項の構成において、前記エッジ度算出段階では、前記エッジ度に平滑化処理を施すことを特徴としている。
【0038】
上記の構成において、エッジ度に平滑化処理を施す手法は特に限定されるものではなく、第1の画像データから得られたエッジ度配列における局所的なピークを除去する任意の平滑化フィルタ、例えば、前述の平均値フィルタ、メディアンフィルタ、領域選択型平滑フィルタなどを採用することができる。
【0039】
上記の構成によれば、第1の画像データにおいて、ノイズ等に起因する急峻な画像変化が存在する領域であっても、この領域の画素から算出されるエッジ度は、その隣接画素から算出されるエッジ度の値を用いて平滑化処理される。一方、第1の画像データにおける画像の輪郭部,平坦部等では、周囲画素においても同レベルのエッジ度が算出されるので、上記平滑化処理による影響は小さい。
【0040】
これにより、請求項1乃至3のいずれか1項の作用効果に加えて、画像データにおける孤立点やノイズ成分が強調されることを回避しながら、画像の輪郭部等を選択的に強調する鮮鋭化処理が可能になる。また、画像データに急峻なエッジ領域が存在する場合にも、鮮鋭化処理に起因する不自然な境界線の発生を抑制することができる。
【0041】
請求項5に記載の画像処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項1乃至4のいずれか1項の構成において、前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、異なる複数のエッジ度−融合比率相関を設定し、それぞれの前記エッジ度−融合比率相関に応じて得られた複数の前記第2の画像データのうち、前記第1の画像データとのエッジ度の差が最小のものを第3の画像データとして選択することを特徴としている。
【0042】
上記の構成において、エッジ度の差を評価するには、例えば第1の画像データのエッジ度と、各第2の画像データのエッジ度との差(絶対値)を画素毎に算出したうえで、この差(絶対値)を画像データ全体または一部において積分し、積分結果が最小となる第2の画像データを、前記第1の画像データとのエッジ度の差が最小のものと判定する評価手法などが挙げられる。
【0043】
上記の構成によれば、異なる第2の画像データのうち、第1の画像データと比較して、最もエッジ度変化の小さいものが、最終的な画像データである第3の画像データとして選択される。
【0044】
これにより、請求項1乃至4のいずれか1項の作用効果に加えて、輪郭部強調や周期的ノイズ低減などの画像処理に伴うエッジ度変化を最小限として、自然な画像データを得ることができる。
【0045】
請求項6に記載の画像処理装置は、上記の課題を解決するために、画像データ入力手段と、前記画像データ入力手段から入力した第1の画像データに対して、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行する画像処理手段とを備えることを特徴としている。
【0046】
上記画像データ入力手段は、スキャナやカメラ等の画像読み取り手段の他、記録媒体を通じた画像データ入力/転送手段などであってもよい。
【0047】
また、請求項7に記載の画像処理プログラムは、上記の課題を解決するために、コンピュータに、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行させることを特徴としている。
【0048】
さらに、請求項8に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記の課題を解決するために、請求項7に記載の画像処理プログラムを記録したことを特徴としている。
【0049】
上記の構成によれば、ユーザーは、画像処理装置、あるいは画像処理プログラムを読み取り実行させるコンピュータによって、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0051】
(1.装置構成)
図2は、本発明の画像処理方法を実施する写真焼付装置(画像処理装置)の概略構成を示す説明図である。本写真焼付装置は、読み取り解像度2167dpiの画像読み取り性能を有し、ほぼフィルム粒子レベルの画像を取り込んで印画紙に焼き付ける能力を有している。
【0052】
同図に示されるように、本写真焼付装置は、画像取込部1(画像データ入力手段)と、鮮鋭化処理部2,ぼかし処理部3,エッジ検出部4,融合演算部5を有する画像処理部6と、露光部7と、現像部8とを備えている。
【0053】
画像取込部1は、写真フィルムの透過/反射光を受光することによってネガフィルムから画像データを取り込むスキャナであり、ネガフィルムに光を照射する光源と、RGBの各色フィルタ,CCD(Charge Coupled Device) を含む単板式または3板式のCCDカメラとから構成されている。
【0054】
画像取込部1は、読み取り画像の受光量に応じた電気信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータを複数画素から構成される第1の画像データとしてRGB毎に画像処理部6へ送信する。つまり、フィルム画像の色彩および濃度に対応する画像データが画像取込部1から画像処理部6に送信される。なお、上記写真フィルムがネガタイプであれば、画像取込部1は、読み取り画像データに色反転処理を施しておくことが好ましい。
【0055】
画像処理部6は、第1の画像データの鮮鋭度を強調する鮮鋭化処理部2、第1の画像データの粒状ノイズを除去する(平滑化する)ぼかし処理部3、第1の画像データのエッジ度を検出(算出)するエッジ検出部4、鮮鋭化処理部2により鮮鋭化処理された画像データとぼかし処理部3によりノイズ除去処理された画像データとを、所定の融合比率に基づき、各画素毎に融合して第2の画像データを得る融合演算部5が備えられている。
【0056】
画像処理部6(コンピュータ)は、主に、本写真焼付装置に内蔵されたマイクロプロセッサおよび/またはDSP(Digital Signal Processor)によって構成され、画像取込部1からの画像データを一時的に格納するメモリと、露光部7における露光動作や、現像部8における現像動作を制御する制御部(ともに図示せず)が備えられている。なお、画像処理部6を本写真焼付装置の外部に設けられたPC(Personal Computer )によって構成してもよい。
【0057】
画像処理部6の実行する画像処理方法の詳細については後述する。
【0058】
露光部7は、画像処理部6から送信されるRGBの各画像データに基づいて印画紙への露光開始/中断を画素毎に制御することにより、画像データに基づいた画像露光を行うものである。露光部7において照射光を制御する手段としては、PLZT露光ヘッド,DMD(デジタルマイクロミラーデバイス),LCD(液晶ディスプレイ),LED(発光ダイオード)パネル,レーザー,FOCRT(Fiber Optic Cathode Ray Tube),CRT(Cathode Ray Tube)等が考えられる。ここで、PLZT露光ヘッドとは、ジルコン酸鉛(PbZrO3 )とチタン酸鉛(PbTiO3 )とを適当な比率で固溶体としたもの(PZT)に、ランタンを添加してホットプレスして得られる(Pb1-x Lax )(Zry Ti1-y )1-x/4 O3 系固溶体を偏光板等と組み合わせ、電圧を印加することによって、光の透過光量を制御する露光ヘッドのことである。
【0059】
なお、露光部7に、PLZT露光ヘッド、DMD、LCD等の自発光型でない光制御手段を採用する場合には、適宜光源を設ける。また、露光部7には、必要に応じて、RGBの回転フィルタや、各種レンズも配置される。
【0060】
現像部8は、露光部7により画像露光が行われた印画紙に現像処理液を吹きつけながら、これを搬送することによって現像処理を行う構成である。この他、現像部8は、各種現像処理液を満たした複数の水槽の中に、露光が行われた印画紙を浸しながら順に搬送する構成であってもよい。
【0061】
(2.画像処理方法の詳細)
続いて、画像処理部6(鮮鋭化処理部2,ぼかし処理部3,エッジ検出部4,融合演算部5)の実行する画像処理方法の詳細について説明する。
【0062】
まず、鮮鋭化処理部2による第1の画像データに対する鮮鋭化処理(鮮鋭化画像データ取得段階)について説明する。上記鮮鋭化処理とは、第1の画像データの一部または全部の画像中における輪郭部を鮮明にする処理である。
【0063】
鮮鋭化処理部2は、RGBの各成分から構成される第1の画像データをYCbCr系の成分に変換した後、変換後のYCbCr系成分に鮮鋭化処理を行う。鮮鋭化処理の手法としては、コンボリューションや離散フーリエ変換解析など任意の手法を採用できる。ここでは、鮮鋭化処理部2は、次のような1辺5画素(5×5)の鮮鋭化フィルタを用いて、上記YCbCr系成分のY成分のみに対して鮮鋭化処理を行う。
【0064】
すなわち、鮮鋭化処理部2は、第1の画像データにおける着目画素のY成分を、上記着目画素を中心として隣接する1辺5画素(5×5)の正方形領域のY成分に上記鮮鋭化フィルタを適用して得られた値によって置換する。鮮鋭化フィルタの適用範囲を図示すれば図3のようになる。図3において、各正方形は第1の画像データにおける各画素を示し、クロスハッチで示された画素は着目画素を示している。着目画素を中心とする1辺5画素(5×5)の正方形領域が上記鮮鋭化フィルタの適用範囲となる。
【0065】
上記鮮鋭化フィルタを適用すると、第1の画像データにおける画像の平坦部はあまり変化しないのに対し、第1の画像データにおける輪郭部は大きく変化するので、上記処理によって第1の画像データのあらわす画像を鮮鋭化させることができる。
【0066】
上記鮮鋭化処理の結果、着目画素の置換値が規定の値域、例えば8ビットの範囲を越えてしまった場合にはクリップ処理を行う。すなわち、着目画素の値域が0〜255の場合において、上記鮮鋭化処理の置換値が負数になったり、256以上になったときには、負数は0、256以上の値は255にする。
【0067】
鮮鋭化処理部2は、第1の画像データを鮮鋭化した画像データ(鮮鋭化画像データ)を、YCbCr系から元のRGB系に再変換処理しておく。
【0068】
なお、上記鮮鋭化フィルタのフィルタサイズは、1辺5画素(5×5)のものに限られず、任意のものを採用することができる。但し、1辺3画素(3×3)等の小さなフィルタサイズの鮮鋭化フィルタを採用すると、第1の画像データを構成する格子画素に対する斜め方向の輪郭部に対して、ジャギーと呼ばれる不自然な段差を生ずることが知られている。
【0069】
また、本実施形態では、第1の画像データの輝度成分(Y成分)のみに、鮮鋭化フィルタを適用するものとしたが、色成分(Cb成分,Cr成分)にも鮮鋭化フィルタを適用することができる。但し、輝度成分以外にも鮮鋭化処理を行う場合、鮮鋭化処理部2の演算量及び演算負担が増加するだけでなく、鮮鋭化処理に起因する色ムラが生じやすくなることが知られている。
【0070】
次に、ぼかし処理部3の行うぼかし処理、すなわち第1の画像データに含まれる粒状ノイズの除去(平滑化)処理(平滑化画像データ取得段階)について説明する。
【0071】
第1の画像データに含まれる粒状ノイズとは、画像取込部1で読み取るフィルムの発色特性における不均一性に起因して発生する、周期的かつ粒子状の細かな濃淡変化のことであり、画像にざらつき感として発現するものである。一般に、上記フィルムの感度が高くなるほど、上記粒状ノイズの粒径は大きくなる。このような粒状ノイズは画像データの輝度成分だけでなく、色成分についても存在する。
【0072】
上記粒状ノイズを除去する手法としては、着目画素を隣接画素の平均値で置換する平均化処理など様々の手法が知られている。ここでは、ぼかし処理部3は、いわゆるメディアンフィルタ処理により、第1の画像データに含まれる粒状性ノイズを低減する。メディアンフィルタは、広く採用される平滑化フィルタであって、着目画素をこれに隣接画素の中間値で置換する機能を有している。
【0073】
具体的には、ぼかし処理部3は、ある着目画素を中心とする1辺3画素(3×3)の正方形領域を上記隣接画素とし、着目画素を移動しながら、第1の画像データの全画素のRGB成分に対してメディアンフィルタ処理を繰り返してぼかし処理を実行する。この結果、着目画素が隣接画素から突出したノイズデータである場合には、そのノイズデータが隣接画素の中間値で置換される。したがって、上記メディアンフィルタ処理は、ノイズ低減効果をも有する。
【0074】
上記メディアンフィルタのフィルタサイズは特に限定されるものではないが、フィルタサイズが小さすぎると、その適用領域内にノイズが存在した場合、ノイズの影響を受け易くなる一方、フィルタサイズが大きすぎると、複数の異なるノイズの影響を受けてしまうため、ノイズの適切な低減にとって好ましくない。また、フィルタサイズを大きくしすぎると、ぼかし処理部3の演算負担が大幅に増加する。そこで、本実施形態では、比較的小さな演算量で効果的に粒状ノイズを除去できるフィルタサイズとして、着目画素を中心とする3×3領域のメディアンフィルタを採用した。
【0075】
また、本実施形態では、輝度成分および色成分の粒状ノイズ低減を目的として、第1の画像データのRGB各成分にそれぞれメディアンフィルタ処理を行うものとしたが、処理対象となる表色系はRGB系に限られるものではない。例えば、第1の画像データの表色系を、輝度成分を有する任意の表色系に変換し、変換後の一部成分あるいは全成分にメディアンフィルタ処理を施すことにより、粒状ノイズの低減を行ってもよい。
【0076】
次に、エッジ検出部4による第1の画像データのエッジ度検出処理(エッジ度算出段階)について説明する。エッジ度とは、画像データの着目画素が輪郭部に相当するか否かの指標となる値である。本実施形態では、エッジ検出部4は、第1の画像データに複数の微分フィルタを適用することによって、上記エッジ度の検出を行う。具体的には、エッジ検出部4は、第1の画像データに微分フィルタA〜Dの4種類の微分フィルタを適用することにより、合計4つのエッジ度を算出する。
【0077】
上記微分フィルタA〜Dは、第1の画像データにおいて、それぞれ画像の縦方向、横方向、左上と右下とを結ぶ斜め方向、右上と左下とを結ぶ斜め方向に対応しており、上記画像においてこれらの方向に伸びる輪郭部が存在する場合に、高いエッジ度を算出するものである。すなわち、上記微分フィルタA〜Dは方向特性を有している。なお、上記4種類の微分フィルタの成分を、中央成分を対称点として反転させても、同一のエッジ度を算出することができる。
【0078】
第1の画像データの各画素は、RGB3色から構成されているため、各画素に対して3色×4種類=12個のエッジ度が算出されることになり、エッジ検出部4は、上記12個のエッジ度のうち、その絶対値が最大のものを着目画素に対するエッジ度として採用する。
【0079】
本実施形態では、エッジ検出部4が方向特性を有する4種類の微分フィルタを用いることにより、下記ラプラシアンフィルタなどの全方位的な微分フィルタを用いる場合よりも、第1の画像データにおけるエッジ検出感度を向上することができる。
【0080】
また、上記微分フィルタA〜Dは、1辺3画素(3×3)のフィルタサイズを有しているが、これらの成分は0,±1,±2という比較的小さい値であるから、エッジ検出部4の演算負担は小さいものとなっている。
【0081】
エッジ度の算出に用いる微分フィルタのフィルタサイズは、1辺3画素(3×3)に限られるものではないが、上記フィルタサイズが大きすぎると、エッジの検出感度が悪化し、凹凸が激しく微細な模様(人間の毛髪など)をあらわす画像領域に対する応答性が悪くなる。また、上記フィルタサイズが大きくなる程、エッジ検出部4の演算負担は増加する。
【0082】
次に、エッジ検出部4は、上記手順で得られたエッジ度に対して平滑化処理を施す。上記平滑化処理には、第1の画像データから各画素に対して得られたエッジ度配列における局所的なピークを除去する任意の平滑化フィルタ、例えば、前述のメディアンフィルタや領域選択型平滑フィルタ等を採用することができる。本実施形態では、エッジ検出部4は、次のような平均値フィルタAを適用することにより、上記エッジ度配列の平滑化処理を行う。
【0083】
上記平均値フィルタの適用により、着目画素のエッジ度は、該着目画素を中心とする1辺3画素(3×3)のエッジ度で平滑化された値に置換される。このとき、第1の画像データにおける急峻な画像変化に対するエッジ度は、隣接画素の影響によって平滑化処理される一方、第1の画像データにおける輪郭部においては、着目画素のエッジ度と隣接画素のエッジ度との差は小さいので、上記平滑化処理を行った後でも、比較的高いエッジ度が維持される。
【0084】
上記平均値フィルタでは、フィルタサイズを1辺3画素(3×3)としたが、平均値フィルタのフィルタサイズが大きいほど、後述の融合処理において、画像の高周波成分を低減し、低周波成分を残す効果が高くなる。なお、フィルタサイズが大きくなるほど、エッジ検出部4の演算負担が増加することはいうまでもない。平滑化フィルタの他の例としては、平均値フィルタA以外にも、次のようなものも挙げられる。
【0085】
但し、平均値フィルタA〜Cのいずれも係数の総和を1にする正規化を行う必要がある。
【0086】
次に、融合演算部5の行う画像データの融合処理(画像データ融合段階)について説明する。
【0087】
前述のように、本発明の写真焼付装置は、鮮鋭化処理部2で得られた鮮鋭化画像データと、ぼかし処理部3で得られたノイズ除去画像データとを所定の割合で融合することにより、第2の画像データを得るものであり、融合演算部5によって上記融合処理が行われる。
【0088】
上記融合処理において、鮮鋭化画像データとノイズ除去画像データとの融合比率をあらわす融合係数は、エッジ検出部4によって平滑化して算出されるエッジ度に基づいて定められる。融合演算部5は、上記エッジ度に基づいて上記融合係数を設定するためのルックアップテーブルLUTを備えている。
【0089】
ルックアップテーブルLUTは、例えば図5に示すようなエッジ度−融合係数相関を示すグラフ(数値表)から構成されており、同図においてエッジ度Em は、エッジ検出部4によって平滑化して算出されたエッジ度のうち、最頻値をあらわしている。
【0090】
すなわち、本発明のエッジ度−融合係数相関は、エッジ度の最頻値に対し、ノイズ除去画像データ(平滑化画像データ)の融合比率を高める、より好ましくは、エッジ度の最頻値に対応する極値を有するという特徴を備えている。この結果、図5に示すエッジ度−融合係数相関のように、融合係数とエッジ度とは線形関係ではなく、エッジ度Em に対して融合係数は局所的に小さくなっている。
【0091】
このようなエッジ度−融合係数を設定するのは、次の理由によるものである。
【0092】
前述のように、第1の画像データに含まれる粒状ノイズは、画像取込部1で読み取るフィルムの発色特性における不均一性に起因して発生する、周期的かつ粒子状の細かな濃淡変化である。
【0093】
したがって、第1の画像データにおける大部分の領域に粒状ノイズが規則的に存在するため、不規則な画像を含む第1の画像データにおいて、エッジ度を算出した場合、上記粒状ノイズ部分に対応するエッジ度の発生頻度が必然的に大きくなる。第1の画像データが変化の少ない平坦な画像を含む場合には、この傾向は更に強くなる。
【0094】
そこで、融合演算部5は、エッジ検出部4によって平滑化して算出されたエッジ度の最頻値を特定し(エッジ度最頻値特定段階)、この最頻値に対し、ノイズ除去画像データ(平滑化画像データ)の融合比率を高めるようにエッジ度−融合比率相関を設定する(エッジ度−融合比率相関設定段階)。なお、エッジ度の最頻値特定には、エッジ度について、度数分布(ヒストグラム)処理を用いる。
【0095】
その後、融合演算部5は、エッジ検出部4の検出した第1の画像データの各画素におけるエッジ度を、前記エッジ度−融合比率相関に適用して、第1の画像データの各画素における融合比率を決定し(融合比率決定段階)、この融合比率に基づき、鮮鋭化画像データとノイズ除去画像データ(平滑化画像データ)とを各画素毎に融合して第2の画像データを得る。
【0096】
すなわち、鮮鋭化画像データにおける着目画素データをVa 、上記ノイズ除去データにおいて上記着目画素と同一画素における画素データをVb とすれば、融合演算部5は、第2の画像データにおける画素データVc を下記(1)式によって算出する。
Vc =Wa Va +Wb Vb ・・・(1)
上記(1)式において、Wa ,Wb はそれぞれ融合係数であって、Wa +Wb =1の関係式を満たす。
【0097】
融合演算部5は、エッジ検出部4によって得られるエッジ度とルックアップテーブルLUTとによって、鮮鋭化画像データに対応する融合係数Wa を設定すれば、ノイズ除去画像データに対応する融合係数Wb を、Wb =1−Wa の関係式を用いて一意的に定めることができる。
【0098】
例えば、ルックアップテーブルLUTに格納される融合係数Iが0≦I≦255の値域を有する場合、次の(2)式によってVc を算出できる。
Vc =[I×Va +(255−I)×Vb ]/255 ・・・(2)
このような融合処理を第1の画像データの全画素について行うことにより、融合演算部5は、第1の画像データにおける輪郭部強調などの鮮鋭化処理と不要な粒状ノイズの除去処理とを効果的に両立した第2の画像データを得ることができる。
【0099】
以上の画像処理方法をフローチャートにまとめれば、図1のとおりである。
【0100】
図4(a)(b)は、第1の画像データと第2の画像データとを模式的に例示する説明図である。
【0101】
図4(a)は、第1の画像データのイメージ例を示す説明図であり、横軸は画像データの所定方向における画像広がり、縦軸は画像データの値(画素値,いずれも正値)を示している。図4(b)は、同図(a)に例示した第1の画像データに、上記画像処理方法を適用して得られる第2の画像データのイメージ例を示す説明図であり、横軸は同図(a)と同一方向における画像広がり、縦軸は画像データの値(画素値,いずれも正値)を示している。
【0102】
図4(a)と同図(b)とを比較すれば、上記画像処理によって、第1の画像データの平坦部における粒状ノイズは低減する一方、エッジの立ち上がりは急峻となり鮮鋭化が行われる様子がわかる。
【0103】
最後に、本実施形態の写真焼付装置における画像処理方法の適用例を図6乃至図10に示す。
【0104】
図6は、画像取込部1が読み込んだ第1の画像データをそのまま露光部7に出力した場合の印画紙画像例を示している。
【0105】
図7は、画像取込部1が読み込んだ第1の画像データに対して前記鮮鋭化処理のみを施し、露光部7に出力した場合の印画紙画像例を示している。
【0106】
図8は、画像取込部1が読み込んだ第1の画像データに対して前記ぼかし処理(平坦化処理)のみを施し、露光部7に出力した場合の印画紙画像例を示している。
【0107】
図9は、図7の鮮鋭化画像データと図8のノイズ除去画像データとを単純に加算平均した画像データを、露光部7に出力した場合の印画紙画像例を示している。これに対して、図10は、画像取込部1が読み込んだ第1の画像データに本発明の画像処理方法を適用して得られた第2の画像データを、露光部7に出力した場合の印画紙画像例を示している。
【0108】
図6〜図10における輪郭部やざらつき感を比較すると、図6における元画像が、図7では輪郭部が強調され、図8ではざらつき感が減少する一方、図7と図8とを単純融合した図9の画像では、人肌のざらつき感が目立つ。
【0109】
一方、本発明の画像処理方法を適用した図10の画像では、輪郭部の強調とざらつき感の減少が極めて自然な形で両立していることがわかる。
【0110】
〔実施の形態2〕
本発明の更なる実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0111】
本実施形態では、融合演算部5のルックアップテーブルLUTには、異なる複数のエッジ度−融合比率相関が設定されており、融合演算部5は、それぞれの前記エッジ度−融合比率相関に応じて得られた複数の第2の画像データのうち、異なるエッジ度−融合係数相関に基づく複数の前記第2の画像データのうち、そのエッジ度が前記第1の画像データのエッジ度に最も近いものを第3の画像データとして選択する。以下、具体的手順について説明する。
【0112】
まず、融合演算部5が異なるエッジ度−融合係数相関に基づいて、第1の画像データから、複数の第2の画像データを求める手順については、実施形態1と同一である。前述のように、ルックアップテーブルLUTには、異なる複数のエッジ度−融合係数相関が設定されるが、いずれのエッジ度−融合係数相関も、エッジ度の最頻値に対し、ノイズ除去画像データ(平滑化画像データ)の融合比率を高める、より好ましくは、エッジ度の最頻値に対応する極値を有するという特徴を備えている。その後、融合演算部5による画像データの融合が行われると、それぞれの前記エッジ度−融合比率相関に応じて、複数の第2の画像データが得られる。
【0113】
次に、上記複数の第2の画像データにおける各エッジ度をそれぞれ検出して、第1の画像データのエッジ度と比較する。エッジ度の検出手順としては、実施形態1におけるエッジ検出部4と同一の手順によることもできるが、本実施形態ではより好ましい形態として、融合演算部5は下記の微分フィルタEを用いる。
【0114】
すなわち、複数の第2の画像データと、第1の画像データとをそれぞれYCbCr系に変換し、輝度成分(Y成分)に上記微分フィルタEを適用することにより、各エッジ度を検出する。
【0115】
次に、第2の画像データにおける上記エッジ度と第1の画像データにおける上記エッジ度との差の絶対値を全画素について積分して、両エッジ度の差dを算出する。上記積分を行う際には、第1の画像データにおける均一ノイズの影響を緩和するために、所定の閾値を設け、該閾値を越える値のみを積分することも好ましい。
【0116】
最後に、融合演算部5は、前記複数の第2の画像データのうち、両エッジ度の差dが最小のものを第3の画像データ、すなわち露光部7に出力すべき最終画像データとして選択する。この結果、異なる第2の画像データのうち、第1の画像データと比較して、最もエッジ度変化の小さいものが、最終的な画像データである第3の画像データとして選択されることになる。
【0117】
これにより、輪郭部強調や周期的ノイズ低減などの画像処理に伴うエッジ度変化を最小限として、自然な画像データを得ることができる。
【0118】
なお、上記の手順では、両エッジ度の差dを算出するための積分対象を画像データ全体としたが、画像の重要部や中央部など、画像データの特定領域のみを対象としてもよい。
【0119】
以上、実施形態1及び2で説明した画像処理方法は、その処理を実行するプログラムで実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。この記録媒体は、例えば、画像処理部6に備えられる図略のメモリ(例えばROMそのもの)であってもよいし、また本実施形態の写真焼付装置の外部にプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムを供給するメディアであってもよい。
【0120】
上記いずれの場合においても、格納されているプログラムは各種のマイクロプロセッサのアクセスにより実行される構成であってもよいし、格納されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムを画像処理部6のプログラム記憶エリア(図略)にダウンロードすることにより、そのプログラムが実行される構成であってもよい。この場合、ダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0121】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピーディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0122】
また、本発明においては、インターネットを含む通信ネットワークと接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する伝送媒体を適用することもできる。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用プログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであってもよい。
【0123】
なお、記録媒体に格納されている内容としてはプログラムに限定されず、データであってもよい。
【0124】
【発明の効果】
請求項1に記載の画像処理方法は、以上のように、第1の画像データの各画素について鮮鋭度を強調した鮮鋭化画像データを取得する鮮鋭化画像データ取得段階と、前記第1の画像データの各画素について平滑化した平滑化画像データを取得する平滑化画像データ取得段階と、前記第1の画像データの各画素についてエッジ度を算出するエッジ度算出段階と、前記エッジ度算出段階にて算出したエッジ度の最頻値を特定するエッジ度最頻値特定段階と、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対し、前記平滑化画像データの融合比率を高めるようにエッジ度−融合比率相関を設定するエッジ度−融合比率相関設定段階と、前記エッジ度算出段階にて算出した前記第1の画像データの各画素におけるエッジ度を、前記エッジ度−融合比率相関に適用して、前記第1の画像データの各画素における融合比率を決定する融合比率決定段階と、前記融合比率決定段階にて決定した融合比率に基づき、前記鮮鋭化画像データと前記平滑化画像データとを各画素毎に融合して第2の画像データを得る画像データ融合段階とを備える構成である。
【0125】
また、請求項2に記載の画像処理方法は、以上のように、請求項1の構成において、前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対応する極値を有するようにエッジ度−融合比率相関を設定する構成である。
【0126】
それゆえ、第1の画像データにおいて、対応エッジ度の出現頻度が高いと考えられる、周期的かつ定型的にあらわれるノイズ成分については、前記平滑化画像データの融合比率を高めるように、画像データの融合が行われる。
【0127】
これにより、画像データの輪郭部強調と周期的ノイズ低減とを両立して、画像品位を向上することができるという効果を奏する。
【0128】
請求項3に記載の画像処理方法は、以上のように、請求項1または2の構成において、前記第1の画像データとして、写真フィルムの読み取り画像データを採用している。
【0129】
それゆえ、第1の画像データの画像において周期的に発現する、写真フィルムのフィルム粒子に起因する粒状ノイズについて、前記平滑化画像データの融合比率を高めるように、画像データの融合が行われる。
【0130】
これにより、請求項1または2の作用効果に加えて、フィルム粒子に起因する細かな色変化や濃度変化による画像ざらつきを効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【0131】
請求項4に記載の画像処理方法は、以上のように、請求項1乃至3のいずれか1項の構成において、前記エッジ度算出段階では、前記エッジ度に平滑化処理を施す構成である。
【0132】
それゆえ、第1の画像データにおいて、ノイズ等に起因する急峻な画像変化が存在する領域であっても、この領域の画素から算出されるエッジ度は、その隣接画素から算出されるエッジ度の値を用いて平滑化処理される。
【0133】
これにより、請求項1乃至3のいずれか1項の作用効果に加えて、画像データにおける孤立点やノイズ成分が強調されることを回避しながら、画像の輪郭部等を選択的に強調する鮮鋭化処理が可能になる。また、画像データに急峻なエッジ領域が存在する場合にも、鮮鋭化処理に起因する不自然な境界線の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0134】
請求項5に記載の画像処理方法は、以上のように、請求項1乃至4のいずれか1項の構成において、前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、異なる複数のエッジ度−融合比率相関を設定し、それぞれの前記エッジ度−融合比率相関に応じて得られた複数の前記第2の画像データのうち、前記第1の画像データとのエッジ度の差が最小のものを第3の画像データとして選択する構成である。
【0135】
それゆえ、異なる第2の画像データのうち、第1の画像データと比較して、最もエッジ度変化の小さいものが、最終的な画像データである第3の画像データとして選択される。
【0136】
これにより、請求項1乃至4のいずれか1項の作用効果に加えて、輪郭部強調や周期的ノイズ低減などの画像処理に伴うエッジ度変化を最小限として、自然な画像データを得ることができるという効果を奏する。
【0137】
請求項6に記載の画像処理装置は、以上のように、画像データ入力手段と、前記画像データ入力手段から入力した第1の画像データに対して、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行する画像処理手段とを備える構成である。
【0138】
また、請求項7に記載の画像処理プログラムは、以上のように、コンピュータに、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行させる構成である。
【0139】
さらに、請求項8に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、以上のように、請求項7に記載の画像処理プログラムを記録した構成である。
【0140】
これにより、ユーザーは、画像処理装置、あるいは画像処理プログラムを読み取り実行させるコンピュータによって、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る写真焼付装置(画像処理装置)が実行する画像処理方法を説明するフローチャートである。
【図2】上記写真焼付装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】鮮鋭化フィルタの適用範囲例を示す説明図である。
【図4】(a)は第1の画像データの様子を模式的に示す説明図であり、(b)は第2の画像データの様子を模式的に示す説明図である。
【図5】ルックアップテーブルのエッジ度−融合係数相関を示すグラフである。
【図6】画像取込部が読み込んだ第1の画像データをそのまま露光部に出力した場合の出力結果を示す図面代用写真である。
【図7】画像取込部が読み込んだ第1の画像データに対して鮮鋭化処理のみを施し、露光部に出力した場合の出力結果を示す図面代用写真である。
【図8】画像取込部が読み込んだ第1の画像データに対してぼかし処理(ノイズ除去処理)のみを施し、露光部に出力した場合の出力結果を示す図面代用写真である。
【図9】図7の鮮鋭化画像データと図8のノイズ除去画像データとを単純に加算平均した画像データを露光部に出力した場合の出力結果を示す図面代用写真である。
【図10】画像取込部が読み込んだ第1の画像データに本発明の画像処理方法を適用して得られた第2の画像データを、露光部に出力した場合の出力結果を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
1 画像取込部(画像データ入力部)
2 鮮鋭化処理部
3 ぼかし処理部
4 エッジ検出部
5 融合演算部
6 画像処理部
7 露光部
8 現像部
Claims (8)
- 第1の画像データの各画素について鮮鋭度を強調した鮮鋭化画像データを取得する鮮鋭化画像データ取得段階と、
前記第1の画像データの各画素について平滑化した平滑化画像データを取得する平滑化画像データ取得段階と、
前記第1の画像データの各画素についてエッジ度を算出するエッジ度算出段階と、
前記エッジ度算出段階にて算出したエッジ度の最頻値を特定するエッジ度最頻値特定段階と、
前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対し、前記平滑化画像データの融合比率を高めるようにエッジ度−融合比率相関を設定するエッジ度−融合比率相関設定段階と、
前記エッジ度算出段階にて算出した前記第1の画像データの各画素におけるエッジ度を、前記エッジ度−融合比率相関に適用して、前記第1の画像データの各画素における融合比率を決定する融合比率決定段階と、
前記融合比率決定段階にて決定した融合比率に基づき、前記鮮鋭化画像データと前記平滑化画像データとを各画素毎に融合して第2の画像データを得る画像データ融合段階とを備えることを特徴とする画像処理方法。 - 前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、前記エッジ度最頻値特定段階にて特定したエッジ度の最頻値に対応する極値を有するようにエッジ度−融合比率相関を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
- 前記第1の画像データは、写真フィルムの読み取り画像データであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理方法。
- 前記エッジ度算出段階では、前記エッジ度に平滑化処理を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- 前記エッジ度−融合比率相関設定段階では、異なる複数のエッジ度−融合比率相関を設定し、それぞれの前記エッジ度−融合比率相関に応じて得られた複数の前記第2の画像データのうち、前記第1の画像データとのエッジ度の差が最小のものを第3の画像データとして選択することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- 画像データ入力手段と、
前記画像データ入力手段から入力した第1の画像データに対して、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行する画像処理手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。 - コンピュータに、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。 - 請求項7に記載の画像処理プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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