JP3728197B2 - 加熱高温ガスセル - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱高温ガスセルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、測定対象であるガスを流入すると共に光源からの光を透過させるセル窓を有するセルを形成し、このセルを透過した光のガスによる吸光度を光検出器によって検出する光吸収を利用したガス分析計が用いられている。また、このガス分析計によって分析される測定対象のガスは様々であり、高温ガスをそのままの状態で分析する必要も生じている。
【0003】
前記高温ガスを分析する場合には、セルによって高温のガスが冷却されてしまうことことがあり、この高温ガスが冷却されると測定対象となっている成分の結露や再結晶化などの現象の発生がセル内で生じることが問題となっていた。特に、セル窓の部分には直接的にヒータなどの加熱手段を設けることができないのでセル窓が他の部分に比べて低温になることがあり、とりわけセル窓における測定対象成分の結露や再結晶化が問題となっていた。
【0004】
そこで、特開昭55−66736号公報(以下、従来技術という)では、内部に被分析気体を収容するセルの両側に形成された光透過窓の外側に空間を隔てて保温用光透過窓を設け、この保温用光透過窓までを加熱するようにして気密用光透過窓の温度が低下しないようにすることが提案されている。つまり、前記セルはその本体をヒータなどによって加熱できるものの光を透過させて透過光を測定するために設けられたセル窓をヒータなどによって直接加熱できないので、気密用透過窓によって保温用の空間を設け、別途ヒータによって保温用の空間ごとセル窓を加熱することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術のような構成では、セル窓を保温用の空間ごと加熱するためのヒータを別途設ける必要があり、それだけ、製造コストを引き上げるだけでなく、ヒータによって消費されるエネルギーの増加も問題となっていた。また、高温に加熱された保温用光透過窓が常温の外気に接するので、保温用光透過窓が高温に加熱されれば加熱されるほど外気に対流を発生させ、これが測定光の揺らぎ発生の原因となり、これによって測定誤差が発生することがあった。加えてセル窓と保温用光透過窓との間に設けられた空間に存在する気体にも加熱による対流が生じて測定誤差を生み出すことも考えられる。
【0006】
加えて、セルの周囲の気体は周囲環境の変化によって変動することがあるが、より厳密な測定を行っている場合には測定対象ではなく外気によって吸収される光も無視できないことがあった。また、透過光を用いたガス分析計では、測定対象ガスによる吸光度を測定可能範囲に合わせて調整するために、セルの光路長を調節することもあるが、セルの光路長を短くしたときには、例えば測定者が吐く息によって生じるCO2 ガスやH2 Oガスを検出してしまうという問題が発生することもあった。
【0007】
さらに、高温に加熱されたセルの熱は、特に保温用光透過窓およびその保持部分から接触または空気などの熱媒体を介して周囲に伝達し、検出器などの周囲の機器に悪影響を与えることも考えられる。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、ガスセルの構造に関して、サンプルの状態を保存しつつ、外気に影響されることなく精度よく計測することができる加熱高温ガスセルを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の加熱高温ガスセルは、測定対象である高温ガスをセル本体に流入すると共に光源からの光を透過させるセル窓を有し高温ガスによる吸光度を光検出器によって検出するためのガスセルであって、セル本体の外周にセル本体を加熱するヒータを設けると共に、前記セル窓の外側に真空の空間を設けてあることを特徴としている。
【0010】
したがって、前記セル窓はセル本体を加熱するヒータからの熱伝達によって高温化されると共に、セル窓を冷却する熱媒体となる気体(空気など)に接触することがないので断熱性能を得ることができ、高温を保つことができる。すなわち、必要最小限の加熱によって測定対象成分の結露および再結晶化を確実に防止でき、高温ガスの状態を正しく計測することができる。また、光路中に外乱の影響を受けかねない気体が存在しないので、それだけ分析精度を向上することができる。
【0011】
前記真空の空間が、前記セル本体と同径の熱伝導率の低い材料からなる筒形状でセル窓の外側に一端部を取り付けられる筒体と、この筒体の他端部に形成された光透過窓とからなる密閉空間によって形成される場合には、真空の空間を容易に形成できるだけでなく、万一セル窓が破損するような事態が発生したとしても、セル本体内の高温ガスが外部に漏れ出すことを確実に防止できる。すなわち、安全性を向上できる。
【0012】
前記セル本体が高温ガスの濃度によってセル長を調節してなり、セル本体の両端部に取り付けられた筒体の長さによって全体の長さを一定に形成する場合には、前記真空の空間を、測定システムのデッドスペースと置き換えることにより、セル長を調節しても周囲状態の変動影響を受けることを防止できる。また、前記真空の空間を含めた加熱高温ガスセルの全体的な長さが統一されるので扱いやすくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の加熱高温ガスセルを用いたガス分析計の例を示している。
【0014】
図1は本発明の加熱高温ガスセル1を搭載するガス分析計2の一例の全体構成を示す図である。図1において、3は例えば測定対象試料である高温ガスGを流入するガスセル、4はこのガスセル3に対して照射する赤外光IRを生成する赤外光源、5は赤外光源4からの赤外光IRを変調する干渉計、6はガスセル3から出力される赤外光IRを検出する例えば半導体検出器などの赤外線検出器、7,8,9は光源4からの赤外光IRを加熱高温ガスセル3内に導き、検出器6に集光させるように配置された反射鏡である。
【0015】
また、10は前記光学系を形成する各部材4〜9を配置すると共に、その内部を窒素ガスなどの不活性ガスによって密閉するか、パージするための容器である。すなわち、前記加熱高温ガスセル3を用いたガス分析計が、その光学系4〜9を形成した部分を不活性ガスによって密封またはパージすることにより、外気の湿度などの成分による悪影響を受けないようにすることができる。なお、本例では前記容器10は3つのブロック10a〜10cに分けることにより、それぞれの部分に適切な方法で外乱の影響を抑制可能とする例を示しているが、本発明はこの構成を限定するものではない。
【0016】
また、窒素ガスのような不活性ガスは人体に無害であるから、これを容器10内にパージする場合は容器10に小さな漏れ部分があっても可能であり、より簡素で実施しやすいが、前記容器10を密閉できる構造にして不活性ガスを密封する方がランニングコストを抑えることができる。さらに、光学系を構成する各部材4〜9および容器10が耐圧構造であるなら、不活性ガスのパージや封入に代えて前記容器10内を真空引きすることにより、測定対象以外による光吸収をほぼ完全に除去することができる。
【0017】
本発明の加熱高温ガスセル3はSUS316などの金属を材料とし赤外光の入射窓11a(セル窓)と出射窓11b(セル窓)とを有するほぼ円筒状のセル本体11と、このセル本体11の両セル窓11a,11bの外側にそれぞれ一端部を取り付けてなる例えばガラス製の円筒状の筒体12と、両筒体12の他端部に取り付けられる赤外光透過窓(光透過窓)12aとを有している。なお、セル窓11aまたは11bと赤外光透過窓12aによって挟まれた空間Aは真空引きされて、その内部において熱媒体となる気体を排除する。
【0018】
また、前記セル本体11の外周にはこれを加熱するヒータ13を巻き付けると共に、セル本体11内に対する高温ガスGの流入口11cと流出口11dとを形成している。ヒータ13はセル本体11を常時高温に加熱するように温調されており、高温ガスGに含まれる各成分がセル本体12で結露することがないようにしている。
【0019】
さらに、ヒータ13からの熱は両セル窓11a,11bに伝達し、セル窓11a,11bの温度をほぼセル本体11と同程度に加熱する。このとき、セル窓11a,11bの外側には筒体12と、赤外光透過窓12aによって真空の空間Aが形成されているので、外気とセル窓11a,11bとの熱交換を遮断することができる。つまり、ヒータ13から発生しセル本体11を介してセル窓11a,11bに伝わった熱は、何らかの熱媒体を介して外部に放熱されることがない。
【0020】
言い換えれば、上記構成のセル窓11a,11bに加わる熱は対流熱伝達することも、熱伝導によって外部に伝達することもないので、ほとんど冷却されることがない。したがって、セル窓11a,11bだけが空気などの外気で冷却されることによって、セル窓11a,11bにおいて結露や再結晶化が発生することを確実に防止できる。
【0021】
なお、本明細書において真空の空間Aと表現するのは真空ポンプ等によって気体を排除して、その空間Aに熱媒体となる気体が存在しないということができる程度のものを示しており、僅かに気体が残されていても熱伝達にほぼ影響を与えないものも含まれる。
【0022】
また、上記構成の加熱高温ガスセル3はいわばセル窓11a,11bに加えて別のセル窓(光透過窓)12aを有している。したがって、サンプル供給状態の異常などにより、たとえセル窓11a,11bの破損が生じたとしても、光透過窓12aにより外部からは遮断されているので、サンプルガスGが周囲へ漏出することを防止できる。とりわけ、測定対象であるサンプルガスGに毒性がある場合には、サンプルガスGが周囲に漏れないことが付加価値として重要である。
【0023】
さらに、上記構成の加熱高温ガスセル3を用いることにより、その全体的な長さを任意に調節することができる。図2は加熱高温ガスセル3の変形例を示す図である。
【0024】
図2(A)はセル本体11の光路長を長く設定した場合の加熱高温ガスセル14の構成を示し、図2(B)はセル本体11の光路長を短く設定した場合の加熱高温ガスセル15の構成を示している。
【0025】
図2(A),2(B)において、Lは加熱高温ガスセル14,15の全体的な長さを示しており、この長さLは図1において説明した加熱高温ガスセル3の設置部分の長さ(容器10b,10cの間の距離)と同じとする。L1 ,L2 は加熱高温ガスセル14,15の光路長であり、測定対象となるサンプルガスGの濃度によって適宜選択可能としている。
【0026】
本例の場合、セル本体11の光路長L1 ,L2 の長短によって生じるデッドスペースは筒体12で占有する真空の空間Aの光路長によって調節される構成となる。つまり、セル本体11が高温ガスGの濃度によってセル長L1 ,L2 を調節してなり、セル本体11の両端部に取り付けられた筒体12の長さによって全体の長さLを一定に形成する構成としている。
【0027】
より詳述すると、図2(A)に示す加熱高温ガスセル14はその光路長L1 が、図2(B)に示す加熱高温ガスセル15の光路長L2 よりも長く形成しているので、加熱高温ガスセル14は加熱高温ガスセル15よりも濃度の低いサンプルガスGを測定する場合に用いることができる。逆に、加熱高温ガスセル14において光吸収の測定範囲をオーバーするようなサンプルガスGの場合には、加熱高温ガスセル15のように光路長L2 がより短くなっているものを使用する。
【0028】
何れにしても、加熱高温ガスセル3,14,15の全体的な長さLが共通となっているので、これらの加熱高温ガスセル3,14,15を取り替えても、図2に示した光学系に外気に接する隙間を作ることがなく、周囲環境の変動、例えばCO2 ガス量、H2 Oガス量、空気のゆらぎなどの測定に対する悪影響を排除することができる。つまり、より高精度の測定を行うことができる。
【0029】
さらに、ヒータ13から発生した熱はセル本体11を介してセル窓11a,11bに容易に伝達し、セル窓11a,11bを高温に加熱するが、筒体12は熱伝導率の低い材料の一例であるガラスによって形成されているので、ヒータ13からの熱が筒体12を介して外部に伝達することを効果的に防止できる。従って、セル本体11を高温に加熱している状態でもこの熱が外部の機器に悪影響を及ぼすことを防止できる。逆に、セル窓11a,11bが外気などによって冷却されて、サンプルガスGの結露や再結晶が発生することも防止できる。
【0030】
加えて、図2(A),(B)に仮想線によって示すように、ヒータ13を筒体12の一端部(セル窓11a,11bに近い部分)まで拡大した場合には、セル窓11a,11bの加熱をより確実に行うことができる。このように構成することによって、筒体12の一端部においてヒータ13から発生し、セル窓11a,11bを加熱するための熱が筒体12の一端部側外周から外気に放出されることを防止できる。
【0031】
なお、前記加熱高温ガスセル3を用いたガス分析計は、干渉計5を用いたガス分析計2に限定されるものではなく、非分散形赤外線ガス分析計や、紫外線など波長の異なる光を用いる分析計など、光の吸光度を測定するガス分析計であればどんなものにも活用することができる。
【0032】
さらに、上述の各例ではセル窓の外側に設けた真空の空間Aは、前記セル本体11とほぼ同径の熱伝導率の低い材料からなる筒形状でセル窓11a,11bの外側に一端部を取り付けられる筒体12と、この筒体12の他端部に形成された光透過窓12aによって形成した例を開示しているが、本発明はこの構成を限定するものではない。すなわち、前記ガスセル本体11を全体として真空引きされた空間A内に配置した状態でガス分析することも可能である。この場合、加熱高温ガスセルはセル本体11およびその周囲を真空引きするための容器を含む。
【0033】
また、前記筒体12を設ける場合に、上述の例では筒体12を構成する材料として熱伝導率の低い材料の一例としてガラスからなる例を開示しているが、本発明はこれに限られるものではなく、ガラスに一部金属を組み合わせたもので形成されていてもよい。
【0034】
図3は前記筒体12の部分の構成を拡大して示す図である。
図3において、12A,12Bはそれぞれ異なる材質で形成された筒部分であり、その一端部分12Aを金属、他端部分12Bをガラスによって形成する。また、この一端部分12Aと他端部分12Bは融着によって接合されており、一端部分12Aの端部には取り付け用のフランジ12bを設けている。なお、図3において図1,2と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。
【0035】
16は前記フランジ12bを用いて筒体12をセル本体11に取り付けるための止めネジ、17は前記止めネジ16によって筒体12をセル本体11に取り付けたときにその接合部分の気密性を保つためのメタルOリング、12cは前記金属部分に設けられた吸引開口部であって、この吸引開口部12cには真空ポンプ18がバルブ19を介して接続されている。
【0036】
すなわち、前記止めネジ16によって筒体12をセル本体11に取り付けた後に、前記真空ポンプ18を稼働することにより、筒体12,光透過窓12aセル本体11およびセル窓11aなどによって閉ざされた空間A(セル窓11aと光透過窓12aによって挟まれた空間)を容易に真空にすることができる。
【0037】
また、金属部分12Aは筒体12の一端部にのみ形成されているので、ヒータ13からの熱は金属部分12Aには容易に伝わるものの、これ以上の熱の伝達は他端側に形成されたガラスなどの熱伝導率の低い材料からなる他端部分12Bによって阻まれるので、この熱が外部に容易に発散することもない。すなわち、筒体12は全体として熱伝導率の低い材料からなる。
【0038】
そして、一端部分12Aを、形成後に加工可能な材料の一例である金属によって形成することによりフランジ12aに対する止めネジ16挿通用の孔の形成や、前記吸引開口部12cの形成を容易に行うことができる。
【0039】
さらに、上述した各例に示す加熱高温セル3,14,15は高温に加熱した状態でその成分を測定する必要のある全てのガスを、その種類に関係なくサンプルガスGとして使用することが可能である。
【0040】
特に、サンプルガスGが高温ガスであってもセル内で結露や再結晶が生じることがないので、極めて正確に再現性のよい薄膜の生成を可能とする。また、本発明の加熱高温ガスセルを用いることにより、外気の成分変化による測定値への影響を最小限に抑えることができるので、その精度向上を達成できる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の加熱高温ガスセルを用いれば、セル窓がセル本体を加熱するヒータからの熱伝達によって高温化され、これを冷却する熱媒体となる気体がセル窓に接することがないので断熱性能を得ることができ、高温を保つことができる。すなわち、外気などによってセル窓が冷却して測定対象成分がセル窓上で結露したり再結晶化することを効果的に防止できる。また、光学系の光路中に外乱の影響を受けかねない気体が存在しないので、それだけ分析精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱高温ガスセルを用いたガス分析計の構成を概略的に示す図である。
【図2】加熱高温ガスセルの変形例を示す図である。
【図3】加熱高温ガスセルの部分拡大図である。
【符号の説明】
3…加熱高温セル本体、4…光源、6…検出器、11…セル本体、11a,11b…セル窓、12…筒体、12a…光透過窓、13…ヒータ、A…真空の空間(密閉空間)、G…高温ガス、IR…光(赤外光)、L1 ,L2 …セル長、L…全体の長さ。
Claims (1)
- 測定対象である高温ガスをセル本体に流入すると共に光源からの光を透過させるセル窓を有し高温ガスによる吸光度を光検出器によって検出するためのガスセルであって、セル本体の外周にセル本体を加熱するヒータを設けると共に、前記セル窓の外側に真空の空間を設けてあることを特徴とする加熱高温ガスセル。
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