JP3728012B2 - 無機質水硬性成形物用バインダーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築用材料や土木用材料として使用される無機質水硬性成形物用バインダ−の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より耐火性、断熱性および強度に優れた建材や土木用資材として珪酸カルシウム板やセメント系無機質板が広く使用されている。これらの無機質板はセメント、消石灰、生石灰等の石灰質粉体とシリカ質粉体からなる水硬性組成物にパ−ライト等の軽量化材や金属石鹸等の撥水剤および補強繊維等を添加した配合物を適量の水と混ぜてスラリ−とし、抄造法でシ−ト状にしたものを多層に加圧成形し、水和硬化して製造されている。
【0003】
更に、水硬性成形物の機械的物性、耐凍害性、寸法安定性等の向上、表面状態の改良、成形性の改善などのために、水硬性物質中にポリビニルアルコール(以下PVAという)を添加して成形を行うことが従来から行われている。例えば、特開昭49−45934号公報、特開昭49−50017号公報、特開昭51−137719号公報、特開昭60−239377号公報、特開昭61−77655号公報および特開昭61−209950号公報には曲げ強度、衝撃強度、寸法安定性の向上、クラック防止のためにPVAを使用することが記載されている。更に、特開平3−97644号公報および特開平3−193651号公報には、PVAを粉末状で水硬性材料中に添加して成形・養生を行い、水硬性成形物の強度、耐凍害性等を向上させることが開示されている。
【0004】
一方、近年水硬性成形物の製造方法においても従来広く行われていた自然養生あるいは常圧下での加熱養生から強度および寸法安定性の向上、クラック防止のために有利なオ−トクレ−ブ法による高温高圧養生が広く採用されるようになってきた。オ−トクレ−ブ法のように100℃以上の温度で養生を行う場合、通常オ−トクレ−ブ養生の前にスチ−ム養生や自然養生による予備(1次)養生が行われる。この際、水硬性成形物の固化に伴い水和熱が発生し温度上昇を来す。その際、PVA系重合体粉末の溶解温度が低いと、この段階でPVA系重合体粉末が溶解し、PVA系重合体が水硬性物質中に過度に拡散し粒子間の結合作用が大幅に低下するためか、バインダ−としての効果が低下してしまう。
【0005】
この対策としてPVAのゲル化剤を併用し、かつPVA粉末を養生される前に膨潤させておくという方法(特開平6ー271368号公報)が提案されているが、単にゲル化剤を混合したのみでは、PVA粉末を膨潤させる工程においてPVAの溶解が見られ、バインダ−効果が十分発揮されないのが現状である。そのため、予備(1次)養生の後、100℃以上の温度で養生を行っても十分効果を発揮するバインダ−が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる現状に鑑み、水硬性成形物の養生を行う際、先ず予備(1次)養生を行った後、100℃以上の温度で2次養生を行っても優れたバインダ−効果を発揮する無機質水硬性成形物用バインダ−の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の無機質水硬性成形物用バインダ−の製造方法は、上記の目的を達成するために、20℃における水膨潤度が50〜300重量%のPVA系重合体粉末をPVA系重合体のゲル化剤溶液に浸漬後、脱液し、PVA系重合体100重量部に対して、PVA系重合体のゲル化剤を1.5重量部以上含有せしめることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、20℃における水膨潤度が50〜300重量%のPVA系重合体粉末を使用することが必要である。
水膨潤度が50重量%未満のPVA系重合体の場合には、ゲル化剤を必要な量だけPVA系重合体に含ませることができず、また水膨潤度が300重量%を超えるPVA系重合体の場合には、ゲル化剤の脱液が困難となり、更に、ゲル化剤溶液が水溶液のさいには、ゲル化剤への浸漬時におけるPVA系重合体の溶出が多くなり、本発明の効果を十分発揮できない。
【0009】
本発明で使用するPVA系重合体としては、上述の水膨潤度であれば、無変性の通常のPVAおよび変性PVAのいずれでもよい。変性PVAとしては例えば、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸成分を共重合させたカルボキシル変性PVA、硫酸基等のイオン基を導入したイオン変性PVA、疎水基を導入した疎水基変性PVA、アセトアセチル基やシリル基を導入したPVA等を挙げることができるが、これに限られるものではない。PVA系重合体は1種類のみを使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0010】
また、PVA系重合体の重合度は特に限定されないが、より高い強度を有する水硬性成形物を得るためには1000以上の重合度を有するPVA系重合体を使用することが好ましい。さらに、PVA系重合体のケン化度も特に限定されないが、95モル%以上であるのが好ましい。
【0011】
PVA系重合体粉末の粒径は特に限定されないが、粒径が小さい方が水硬性成形物中に均一に分散させることができ、バインダ−効果を高め、強度を向上する観点からも好ましい。PVA系重合体粉末としては、通常80メッシュ篩を通過する微粉の割合が90重量%以上のものを使用するのが好ましい。
【0012】
更に、本発明では、該PVA系重合体粉末中にPVA系重合体のゲル化剤を含有せしめることが必須であり、PVA系重合体100重量部に対して1.5重量部以上、好ましくは2.5重量部以上含有させることが必要である。ここでゲル化剤の含有量が1.5重量部未満では100℃以下の温度でアルカリ性水溶液に溶解するようになる。
【0013】
ゲル化剤としては、硼酸、硼砂、硼酸アンモニウム、2価および3価の各種鉄塩、ジルコニウム塩、アルミニウム塩、過マンガン酸塩等を挙げることができる。それらのうちでは特に硼酸、硼砂等の硼素系化合物が無機質水硬性成形物用バインダ−のゲル化剤として適している。上記したゲル化剤は1種類のみを使用しても、または互いに悪影響を及ぼさない範囲で2種以上を併用しても良い。
【0014】
PVA系重合体粉末を浸漬するゲル化剤溶液に使用する溶剤としてはゲル化剤が溶けるものであれば特に限定されるものではなく、水およびメタノ−ル、エタノ−ル等のアルコ−ル類等の有機溶剤を単独または併用して使用することができるが、水を使用するのが好ましい。
【0015】
また、浸漬後の脱液の方法は遠心分離、濾別等が一般的であるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて脱液したものを更に乾燥してもよい。
【0016】
上記により製造した無機質水硬性成形物用バインダ−を使用することによって、自然養生、スチ−ム養生等の一次養生ではバインダ−が溶解せず、通常オ−トクレ−ブで飽和蒸気圧下約120〜180℃で行われる2次養生の段階で初めてバインダ−が溶解し、水硬性成形物のマトリックス中に浸透し補強効果が発現すると同時に、バインダ−が存在していた部分が独立した空隙となり水硬性成形物の見掛けの密度を下げることにより軽量化が図れるものと考えられる。
【0017】
本発明で製造される無機質水硬性成形物用バインダ−は、建築、土木等の種々の分野で使用される水硬性成形物のバインダ−として広く使用することができ、特に軽量性と強度および耐凍害性が要求される屋根、外壁、床材、道路用ブロック、護岸ブロック等の建材として使用される水硬性成形物のバインダ−として極めて有効に使用することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げ具体的に説明する。
【0019】
実施例1
20℃の水に対する膨潤度が100%、重合度1720、ケン化度99.5モル%の未変性PVA(ユニチカケミカル製)の80メッシュパス粉末100重量部を30℃の硼酸飽和水溶液に1時間浸漬した後、遠心分離機で脱水した。得られた無機質水硬性成形物用バインダ−は、硼酸を4.5重量部(対PVA100重量部)含有し、浸漬時の溶出も0.5%と少なかった。このものを水酸化カルシウムの飽和水溶液に投入し昇温したところ、100℃では溶解せず、120℃(加圧下)で溶解した。
【0020】
この無機質水硬性成形物用バインダ−3重量部を使用し、セメント86重量部、ワラスナイト10重量部、セピオライト1重量部、パルプ3重量部とともに水中で攪拌分散し、固形分濃度が30重量%のスラリ−を作成し、型枠に流込んだ後、25Kg/cm2 の圧で脱水成形し、含水率約50%の厚さ7mmの板材を作成した。得られた板材を80℃で24時間湿熱養生し、更に160℃で10時間オ−トクレ−ブ養生し、100℃で16時間乾燥した。
得られた成形物の曲げ強度は、JIS A1408 「建築ボ−ド類の曲げ試験法」に準じて、幅4cm、スパン長10cmで測定したところ、250Kg/cm2 であった。
総合評価は表2に示すように、良好であった。
【0021】
実施例2〜実施例6
実施例1において表1に示す条件を使用した以外は、実施例1と同様に行った。得られた結果は表2に示すように、浸漬時の溶出量は0.3〜1.5%と少なく、ゲル化剤の含有量は1.6〜14.7重量部で、いずれも1.5重量部以上であった。また、溶解温度は110〜140℃で、いずれも100℃を超えており、成形物の曲げ強度は226〜243Kg/cm2 といずれも良好であり、総合評価はいずれも良好であった。
【0022】
【表1】
Figure 0003728012
【0023】
実施例7
実施例1における未変性PVAの代わりに、20℃の水に対する膨潤度が150%で炭素数18のアルキルビニルエ−テルを0.5%共重合した変性PVA粉末(膨潤度150%、重合度1500、ケン化度88.0モル%)を使用した以外は実施例1と同様に行った。結果は表2に示すように、浸漬時の溶出量は1.5%と少なく、ゲル化剤の含有量は7.6重量部で、溶解温度は130℃で、成形物の曲げ強度は238Kg/cm2 と良好であり、総合評価は良好であった。
【0024】
比較例1
実施例1の硼酸水溶液の濃度を0.5%に変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果は表2に示すように、浸漬時の溶出量は0.5%と少なかったが、ゲル化剤の含有量は0.6重量部と少なく、溶解温度は80℃と低く、成形物の曲げ強度は197Kg/cm2 と劣っており、総合評価は不良であった。
【0025】
比較例2
実施例3で使用したPVAの膨潤度を350%に変えた以外に、実施例1と同様に行った。結果は表2に示すように、浸漬時の溶出量は20%と大きく、ゲル化剤の含有量、溶解温度、成形物の曲げ強度は測定不能であって、総合評価は不良であった。
【0026】
参考例
実施例1の成形物についてバインダ−を使用せずに作成したものの曲げ強度を参考例として表2に示した。成形物の曲げ強度は185Kg/cm2 と劣っており、総合評価は不良であった。
【0027】
【表2】
Figure 0003728012
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、100℃以下の温度では実質的にアルカリ性水溶液に溶解せず、予備(一次)養生の後、100℃以上の温度で2次養生を行っても優れたバインダ−効果を発揮することにより、建築、土木等の種々の分野で使用される強度の優れた水硬性成形物を製造することのできる無機質水硬性成形物用バインダ−を提供することができる。

Claims (1)

  1. 20℃における水膨潤度が50から300重量%のポリビニルアルコール系重合体粉末をポリビニルアルコール系重合体のゲル化剤溶液に浸漬後、脱液することにより、ポリビニルアルコール系重合体100重量部に対して、ポリビニルアルコール系重合体のゲル化剤を1.5重量部以上含有せしめることを特徴とする無機質水硬性成形物用バインダーの製造方法。
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