JP3727857B2 - アレーアンテナの制御装置及び制御方法 - Google Patents

アレーアンテナの制御装置及び制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置の指向特性を変化させることができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法に関し、特に、指向特性を適応的に変化させることができる電子制御導波器アレーアンテナ装置(Electronically Steerable Passive Array Radiator (ESPAR) Antenna;以下、エスパアンテナという。)であって、TDMA受信信号又はCDMA受信信号を処理可能なアレーアンテナの制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エスパアンテナは、例えば、従来技術文献1「T. Ohira, "Microwave signal processing and devices for adaptive beamforming," IEEE Antenna and Propagation society International Symposium vol. two, pp. 583-586, Salt Lake City, Utah July 16-21, 2000」や特願平11−194487号の特許出願において提案されている。このエスパアンテナは、無線信号が送受信される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が送受信されない少なくとも1個の非励振素子と、この非励振素子に接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。
【0003】
また、無線通信には、マルチパス伝搬と、同一チャンネル干渉(CCI)とが、無線システムに悪影響を及ぼす2つの問題として存在する。これらの問題はそれぞれ、TDMA無線システムにおける周波数の再使用に起因するシンボル間干渉(ISI)及び同一チャンネル干渉、又はCDMA無線システムにおけるマルチユーザアクセス干渉(MAI)として現れる。
【0004】
以上の問題点を解決するために、時空間適応型処理(STAP)(従来技術文献2「J. Paulraj et al., "Space-time processing for wireless communications," IEEE Signal Processing Magazine, Vol. 14, No. 6, pp. 49-83, November 1997」参照。)が提案され、この処理は、ISI及びCCI双方の抑制において卓越した性能を発揮するものと考えられている。最近では、TDMA又は直接拡散(シーケンス)CDMA(DS−CDMA)無線通信システムに対して、時空間適応型処理(STAP)の方法が提案され、解析されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、STAPシステムのアンテナアレーチャンネルの実現は複雑で高コストであるため、例えば無線構内ネットワークシステム、あるいはユーザ端末機のようにコストが極めて重要な要素であるとされる状況では特に、これらを実際に広く適用することは困難である。これは、構成が簡単であってより低いコストのSTAPシステムを開発することが実際的な重要事項であることを意味している。
【0006】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して簡単な構成を有しかつ製造コストが安価であり、エスパアンテナのための時空間適応処理を行うことができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアレーアンテナの制御装置は、無線信号を受信するための放射素子と、上記放射素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の可変リアクタンス素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置において、
上記アレーアンテナにおいて受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力する時間領域信号処理手段と、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域信号処理手段に出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定する適応型制御手段とを備え、
上記基準関数は、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変数とする関数であり、上記受信された無線信号を含む関数として表されたことを特徴とする。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから所定のスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする。
さらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから所定のスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るアレーアンテナの制御方法は、無線信号を受信するための放射素子と、上記放射素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の可変リアクタンス素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
上記アレーアンテナにおいて受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力するステップと、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域の信号処理のために出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定するステップとを含み、
上記基準関数は、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変数とする関数であり、上記受信された無線信号を含む関数として表されたことを特徴とする。
また、上記アレーアンテナの制御方法において、上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから所定のスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする。
さらに、上記アレーアンテナの制御方法において、上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから、上記受信された無線信号と上記学習シーケンス信号とから算出されるスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
従来の適応型アルゴリズムで形成されるヌル、又は信号処理に先立って予め形成される(formed in advance before)ビームとは異なり、本発明では、可変なビームパターンと時間領域の等化器とを併用して時空間適応型フィルタリングを実現することができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法を提供する。エスパアンテナは、最小コストで所望の信号に向けて空間的にビームを形成する能力を有すると考えられている。本発明では、TDMA又はCDMA信号波形のためにエスパアンテナを使用して時空間適応型フィルタリング(STAF)を実現するためのアレーアンテナの制御装置及び制御方法を提案する。
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本発明に係る実施形態のアレーアンテナの制御装置のブロック図である。本実施形態のアレーアンテナの制御装置は、図1に示すように、1つの励振素子A0と6個の非励振素子A1乃至A6とを備えてなる従来技術のエスパアンテナで構成されたアレーアンテナ装置100と、上記アレーアンテナ装置100で受信された無線信号を処理する時間領域信号処理部4と、それらを制御する適応制御型コントローラ7とを備えたことを特徴とする。
【0012】
図1において、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に設けられた励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6から構成され、励振素子A0は、半径rの円周上に設けられた6本の非励振素子A1乃至A6によって囲まれるように配置されている。好ましくは、各非励振素子A1乃至A6は上記半径rの円周上に互いに等間隔を保って設けられる。各励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6の長さは、例えば、所望波の波長λの約1/4になるように構成され、また、上記半径rはλ/4になるように構成される。励振素子A0の給電点は同軸ケーブル9を介して低雑音増幅器(LNA)1に接続され、また、非励振素子A1乃至A6はそれぞれ可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に接続され、これら可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値は適応制御型コントローラ7からのリアクタンス値信号によって設定される。
【0013】
図2は、アレーアンテナ装置100の縦断面図である。励振素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、各非励振素子A0乃至A6は、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の動作を説明すると、例えば放射素子A0と非励振素子A1乃至A6の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非励振素子A1乃至A6の電気長が励振素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。
【0014】
従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非励振素子A1乃至A6に接続された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向性特性を変化させることができる。
【0015】
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100は無線信号を受信し、上記受信された信号は同軸ケーブル9を介して低雑音増幅器(LNA)1に入力されて増幅され、次いで、ダウンコンバータ(D/C)2は増幅された信号を所定の中間周波数の信号(IF信号)に低域変換する。さらに、A/D変換器3は低域変換されたアナログ信号をディジタル信号にA/D変換し、A/D変換されたディジタル信号を時間領域信号処理部4に出力する。次いで、時間領域信号処理部4は、アレーアンテナ装置100によって受信された無線信号y(t)を複数の時間領域のサブ信号に分割し、分割した複数のサブ信号からなる信号ベクトル[Y]を適応制御型コントローラ7に出力し、また、分割された複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号z(t)として出力する。そして、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号発生器6により発生された学習シーケンス信号から上記処理信号z(t)を減算して誤差信号を計算し、さらに、適応制御型コントローラ7は、上記学習シーケンス信号及び信号ベクトル[Y]に基づいて誤差信号が最小となるように最適な重み係数ベクトル[W]を演算して時間領域信号処理部4に出力することにより適応制御処理を実行する。ここで、具体的には、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、処理信号z(t)と学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して時間領域信号処理部4に出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を計算して設定する。
【0016】
アレーアンテナ100で受信される無線信号を送信する送信局は、学習シーケンス信号発生器6で発生される所定の学習シーケンス信号と同一の学習シーケンス信号を含む所定のシンボルレートのディジタルデータ信号に従って、無線周波数の搬送波信号を、例えばQPSKなどのディジタル変調法、又は直接拡散スペクトル拡散変調法を用いて変調し、当該変調信号を電力増幅して受信局のアレーアンテナ装置100に向けて送信する。本発明に係る実施形態においては、データ通信を行う前に、送信局から受信局に向けて学習シーケンス信号を含む無線信号が送信され、受信局では、適応制御型コントローラ7による適応制御処理が実行される。
【0017】
次に、図3乃至図5を参照して、図1の時間領域信号処理部4についてより詳細に説明する。図3は、時間領域信号処理部4の第1の実施形態であるTDMA用時間領域信号処理部4−1のブロック図である。TDMA用時間領域信号処理部4−1は、互いに縦続接続された複数(J−1)個のシフトレジスタ(SR)13−1乃至13−(J−1)と、複数J個のダウンサンプラ14−1乃至14−Jと、複数J個のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jと、加算器17とを備えて構成される。上記シフトレジスタ(SR)13−1乃至13−(J−1)はそれぞれ、入力されるクロックに基づいて入力信号を1シンボル期間だけ遅延して出力する。トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jは、重み係数の演算のために、複数の時間遅延のサブ信号に分割された信号データDx1乃至DxJを適応制御型コントローラ7に出力し、かつ、適応制御型コントローラ7によって演算された重み係数データDw1乃至DwJを、入力された各信号に乗算して出力する。
【0018】
図1のA/D変換器3から出力された受信信号y(t)は、ダウンサンプラ14−1と、シフトレジスタ13−1に入力される。ダウンサンプラ14−1は、入力された受信信号y(t)を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号を詳細後述するトランスバーサルフィルタ回路23−1を介して加算器17に出力する。シフトレジスタ13−1から出力された信号は、ダウンサンプラ14−2と、シフトレジスタ13−2に入力される。ダウンサンプラ14−2は、入力された信号を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−2を介して加算器17に出力する。以下同様に、シフトレジスタ13−j(j=2,3,…,J−1)から出力された信号は、ダウンサンプラ14−(j+1)と、シフトレジスタ13−(j+1)に出力される。ダウンサンプラ14−(j+1)は、入力された信号を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−(j+1)を介して加算器17に出力する。さらに、加算器17は、入力された複数J個の信号を加算し、加算結果の信号を処理信号z(t)として出力する。
【0019】
図4は、図3のトランスバーサルフィルタ回路23−1の構成を示すブロック図である。トランスバーサルフィルタ回路23−1は、ダウンサンプラ22−1を通過して入力される信号を、例えば1シンボルの1/4乃至1/2の時間だけそれぞれ遅延させ互いに縦続接続された複数(M−1)個の遅延回路25−1乃至25−(M−1)と、複数M個の乗算器26−1乃至26−Mと、加算器27とを備えて構成される。トランスバーサルフィルタ回路23−1に入力される信号は、サブ信号のデータとして適応制御型コントローラ7に出力され、かつ、重み係数w1,1の乗算係数を有する乗算器26−1を介して加算器27に出力されるとともに、互いに縦続接続された(M−1)個の遅延回路25−1乃至25−(M−1)と、重み係数w1,Mの乗算係数を有する乗算器26−Mとを介して加算器27に出力される。ここで、重み係数wの添え字は、第1の添え字でトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jのシリアル番号1乃至Jを、第2の添え字で上記各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−J内の乗算器のシリアル番号1乃至Mを表す。また、遅延回路25−1から出力される信号は、適応制御型コントローラ7に出力されるとともに、重み係数w1,2の乗算係数を有する乗算器26−2を介して加算器27に出力され、さらに、遅延回路25−2から出力される信号は、適応制御型コントローラ7に出力されるとともに、重み係数w1,3の乗算係数を有する乗算器26−3を介して加算器17に出力される。以下同様にして、遅延回路26−ma(ma=3,…,M−1)から出力される信号は、適応制御型コントローラ7に出力されるとともに、重み係数w1,ma+1の乗算係数を有する乗算器26−(ma+1)を介して加算器27に出力される。そして、加算器27は入力されるM個の信号を加算し、加算結果の信号を加算器17に出力する。
【0020】
また、図3のトランスバーサルフィルタ回路23−2乃至23−Jは、互いに縦続接続された複数(M−1)個の遅延回路と、複数M個の乗算器と、加算器とを備えて、トランスバーサルフィルタ回路23−1と同様に構成される。時間領域信号処理部4は、各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jから出力された信号データDx1乃至DxJを、信号ベクトル[Y]に合成して適応制御型コントローラ7に出力する。また、時間領域信号処理部4は、適応制御型コントローラ7から入力された重み係数ベクトル[W]を、重み係数データDw1乃至DwJに分解して、各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jにおいてそこに入力された信号と乗算する。
【0021】
図5は、図3の第1の実施形態に取って代わる、時間領域信号処理部4の第2の実施形態に係るCDMA用時間領域信号処理部4−2のブロック図である。本実施形態においては、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jの代わりに、複数J個のマッチドフィルタ(matched filter;整合フィルタともいう。)15−1乃至15−Jと、上記各マッチドフィルタ15−1乃至15−Jに接続されたサブ信号処理回路16−1乃至16−Jとを備えたことを特徴とし、それ以外の構成は第1の実施形態のTDMA用時間領域信号処理部4−1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0022】
図5において、互いに縦続接続されたJ−1個のシフトレジスタ13−1乃至13−(J−1)と、J個のダウンサンプラ14−1乃至14−Jとは、TDMA用時間領域信号処理部4−1と同様に構成される。ダウンサンプラ14−1から出力された信号はマッチドフィルタ15−1に入力され、マッチドフィルタ15−1は、ダウンサンプリングされた信号を、受信機のコントローラ(図示せず。)から入力される所望波のユーザ端末の拡散符号のデータDcpに基づいて、白色雑音の中にうずもれた所望波信号を最大のSN比で検出し、具体的には、拡散符号の1周期毎にパルス信号を出力する。次いで、マッチドフィルタ15−1からの信号は、詳細後述するサブ信号処理回路16−1を介して加算器17に出力される。また、ダウンサンプラ14−2から出力された信号は、マッチドフィルタ15−2及びサブ信号処理回路16−2を介して加算器17に出力される。以下同様に、各マッチドフィルタ15−j(j=3,4,…,J)は、ダウンサンプラ14−faから出力された信号を、サブ信号処理回路16−jを介して加算器17に出力する。
【0023】
次いで、図5のサブ信号処理回路16−1の詳細構成について説明する。サブ信号処理回路16−1は、それぞれ所定の遅延時間Tcを有して縦続接続された複数(Nc−1)個の遅延回路21−1乃至21−(Nc−1)と、複数Nc個のダウンサンプラ22−1乃至22−Ncと、複数Nc個のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncと、加算器24とを備えて構成される。マッチドフィルタ15−1から出力された信号は、遅延回路21−1及びダウンサンプラ22−1に出力される。ダウンサンプラ22−1は入力された信号を、ダウンサンプラ14−1乃至14−Jのサンプリング周波数の1/Nc倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−1を介して加算器24に出力する。
【0024】
トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncは、重み係数の演算のために、複数の時間遅延のサブ信号に分割された信号データDx1乃至DxNcを適応制御型コントローラ7に出力し、かつ、入力された各信号に、適応制御型コントローラ7によって演算された重み係数のデータDw1乃至DwNcをそれぞれ乗算する。トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncの詳細構成は、第1の実施形態に係るTDMA用時間領域信号処理部4−1のトランスバーサルフィルタ回路と同様である(図4参照。)。ここで、乗算される各重み係数wを区別するために、重み係数wの添え字は、第1の添え字でサブ信号処理回路16−1乃至16−Jのシリアル番号1乃至Jを、第2の添え字で上記各サブ信号処理回路の中のトランスバーサルフィルタ回路のシリアル番号1乃至Ncを、第3の添え字で上記各トランスバーサルフィルタ回路の中の乗算器のシリアル番号1乃至Mを表すものとする。
【0025】
また、遅延回路21−1から出力された信号は、遅延回路21−2とダウンサンプラ22−2に入力され、ダウンサンプラ22−2は入力された信号を、ダウンサンプラ14−1乃至14−Jのサンプリング周波数の1/Nc倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−2を介して加算器24に出力する。以下同様に、遅延回路21−nc(nc=2,3,…,Nc−1)から出力された信号は、遅延回路21−(nc+1)とダウンサンプラ22−(nc+1)に入力され、ダウンサンプラ22−(nc+1)は入力された信号を、ダウンサンプラ14−1乃至14−Jのサンプリング周波数の1/Nc倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−(nc+1)を介して加算器24に出力する。さらに、加算器24は入力される複数Nc個の信号を加算して加算結果の信号を加算器17に出力する。
【0026】
サブ信号処理回路16−2乃至16−Jについても、その内部は、サブ信号処理回路16−1と同様に構成される。加算器17は、サブ信号処理回路16−1乃至16−Jから出力される複数J個の適応制御された信号を加算して、加算結果の信号を処理信号z(t)として出力する。時間領域信号処理部4は、サブ信号処理回路16−1乃至16−J内の複数J×Nc個の各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncから出力された信号データDx1乃至DxNcを、信号ベクトル[Y]に合成して適応制御型コントローラ7に出力する。また、時間領域信号処理部4は、適応制御型コントローラ7から入力された重み係数ベクトル[W]を、重み係数データDw1乃至DwNcに分解して、複数J×Nc個の各トランスバーサルフィルタ回路23−2乃至23−Ncにおいてそこに入力された信号と乗算する。
【0027】
以上のように構成されたアレーアンテナの制御装置においては、適応制御型コントローラ7は、時間領域信号処理部4から出力される信号ベクトル[Y]と所定の学習シーケンス信号とに基づいて、例えば最小平均2乗誤差(MMSE)基準を用いた所定の適応制御アルゴリズムを用いて、誤差信号が最小となるように複数J×Nc×M個の乗算器26−1乃至26−Mのための各重み係数を演算し、各乗算器26−1乃至26−Mにフィードバックして設定する。
【0028】
適応制御型コントローラ7は、さらに、アレーアンテナ装置100の指向性を制御するためのリアクタンス値信号を出力する。ここで、適応制御型コントローラ7は、例えばコンピュータなどのディジタル計算機で構成され、データ通信を開始する前に、時間領域信号処理部4で発生されたサブ信号と、学習シーケンス信号発生器6で発生された学習シーケンス信号sb(m)とに基づいて、図6のフローチャートに図示された適応制御処理を実行することにより上記アレーアンテナ装置100の主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるための各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値X,…,Xを計算して設定することを特徴としている。具体的には、適応制御型コントローラ7は、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値X,…,Xを順次所定のシフト量ΔXだけ摂動させ、各リアクタンス値を変数とする所定の基準関数(本実施形態では、後述する数68における、受信信号y(t)から演算されたサブ信号と上記発生された学習シーケンス信号sb(m)との関数fh)の勾配ベクトルを計算する。次いで、計算された勾配ベクトルに基づいて当該基準関数値が最大となるようにリアクタンス値X,X,…,Xを計算し、リアクタンス値X,X,…,Xからなるリアクタンス値信号を可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に向けて出力し、それによって、上記アレーアンテナ装置100の主ビームを所望波の方向に向けかつ干渉波の方向にヌルを向けるように設定する
【0029】
次いで、本発明に係る実施形態のアレーアンテナの制御装置及び制御方法の原理について説明する。
【0030】
初めに、P名のユーザ端末を擁するN(N>1)個の素子で構成されるアンテナアレーに到来する信号のモデルについて考察する。送信局から送信された無線信号は、接地導体11を含む平面内で定義される入射角(到来角(Angle of Arrival;AOA)ともいう。)θで入射して、アレーアンテナ装置100で受信される。本実施形態では、励振素子A0を中心として、非励振素子A1の方向をθ=0と定める。送信される信号のp番目のユーザ端末のベースバンド波形信号s(t)は、次のように表される。
【0031】
【数1】
Figure 0003727857
【0032】
ここで、sb(m)はp番目のユーザ端末の信号に係るm番目の情報シンボルを示し、ρp(t)は情報シンボル波形を表す。TDMAシステムでは、情報シンボル波形ρp(t)は各ユーザ端末の信号に対して同一であることが多く、スペクトル拡散された余弦変調波形として考えられる。Tは、シンボル持続時間又はシンボル周期を示す。CDMAシステムでは次式が成立し、これをp番目のユーザ端末のパルス波形整形関数と呼ぶ。
【0033】
【数2】
Figure 0003727857
(0≦t≦T)
【0034】
ここで、{c(j)},j=0,…,Nc−1はp番目のユーザ端末に割り当てられた拡散コードであり、Tはチップ間隔Tcとシンボル当たりのチップ数Ncとの積に等しいシンボル継続時間であり、Ψ(t)は時間区間[0,Tc]で定義される正規化されたチップ波形信号である。さらに、オーバーサンプリング周期をΔとすると、Tc/Δ=2であり、伝送ビットレートをfbとするとシンボルビットレートは2×127×fbで表される。拡散符号シーケンスは、採用する規格に依存して周期的であっても、非周期的であってもよい。本願明細書では、周期的な場合について考察する。雑音のない、N個のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置で受信された、N次元のアレー受信信号ベクトル[x(t)]は、次のように表される。以下、本願明細書においてベクトル又は行列を[・]で表す。
【0035】
【数3】
Figure 0003727857
【0036】
ここで、数3の中のN次元ベクトル[g(t)]を次式のようにp番目のユーザ端末の時空間シンボル波形信号、又はシンボルレベルの時空間チャンネルインパルス応答と呼ぶ。
【0037】
【数4】
Figure 0003727857
【0038】
θ ,τ ,ξ はそれぞれ、p番目のユーザ端末の信号のl番目の経路に対応する到来角(AOA)、時間遅延及び伝搬損失を表す。さらに、N次元ベクトル[a(θ)]はθに対応するアレーステアリングベクトルを表し、sb(m)及びLはそれぞれ、p番目のユーザ端末の信号に係るm番目の情報シンボル、マルチパス波の総数を示す。数3の成分に対して、以下の事項を仮定している。
<仮定1>受信する信号は、分数間隔(fractionally spaced)のシンボル周期でサンプリングされた場合は広義の周期的な定常状態であり、シンボルレートでサンプリングされた場合は広義の定常状態である。広義の周期的な定常状態の信号ベクトル[x(t)]は、次式で定義される。
【0039】
【数5】
E{[x(t)][x(t)]
=E{[x(t+T)][x(t+T)]
【0040】
ここで、[・]は共役転置を、E{・}は統計的期待値を示す。
<仮定2>情報シンボルsb(m),p=1,2,…,Pは独立かつ同一分布であり、かつ次式を満たす。
【0041】
【数6】
E{sb(m)sb (n)}=δp,qδm,n
【0042】
ここで、[・]は複素共役を、δp qはクロネッカーのデルタ関数を示す。<仮定3>複数のチャンネル{g(t)},p=1,2,…,Pは、所定のデータ通信を行う関心を持たれた周期の間は線形かつ時間的に不変であり、時間区間[0,DT]内で有限の持続時間に属する。
【0043】
次に、特にアレーアンテナ装置100で受信された信号のモデルについて定式化する。図1が示す励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6を備えたアレーアンテナ装置100から出力された、雑音のない受信信号y(t)は、次式で特定される(従来技術文献3「大平孝ほか,“エスパアンテナの等価ウェイトベクトルとアレーファクタ表現式”,電子情報通信学会技術報告,A・P2000−44,SAT2000−41,MW2000−44,2000年7月」を参照)。
【0044】
【数7】
y(t)=[i][x(t)]
【0045】
また、ステアリングベクトル[a(θ)]は次式で表される。
【0046】
【数8】
[a(θ)]
=[1,exp(j(2πr/λ)cos(θ)),
…,exp(j(2πr/λ)cos(θ−5×2π/6))]
【0047】
ここで、アレーの直径はr=λ/4であり、λは所望波の無線周波数の波長を表し、従来技術文献3において考察された等価ウェイトベクトル[i]は次式のように導出される。
【0048】
【数9】
[i]=C[I+YX]−1[y
【0049】
ここで、Iは単位行列である。
【0050】
【数10】
[y]=[y00,y10,y10,y10,y10,y10,y10
【数11】
Figure 0003727857
【数12】
Figure 0003727857
【0051】
Xはアンテナのパターンを調整するためのリアクタンス行列であり、R=50Ωは無線受信機の入力インピーダンスであり、X,…,Xは、適応制御型コントローラ7からリアクタンス値信号として出力されるパラメータである。Yはアンテナの素子間の相互結合を表すアドミタンス行列、[y]は関連したアドミタンスベクトルであって、その成分は以下のものを含む。
【0052】
(a)y00は励振素子A0の自己入力アドミタンスを表す。
(b)y10は励振素子A0と非励振素子A1乃至A6との結合アドミタンスを表す。
(c)y11は非励振素子A1乃至A6の自己入力アドミタンスを表す。
(d)y21は互いに隣接する非励振素子A1とA2、A2とA3、A3とA4、A4とA5、A5とA6、乃至A6とA1の結合アドミタンスを表す。
(e)y31は間に1つの非励振素子をはさんで並ぶ2つの非励振素子A1とA3、A2とA4、A3とA5、A4とA6、A5とA1、乃至A6とA2の結合アドミタンスを表し、
(f)y41は励振素子A0をはさんで対向する2つの非励振素子A1とA4、A2とA5、乃至A3とA6の結合アドミタンスを表す。
【0053】
相反性とアレーアンテナ装置100の巡回的な対称性のために、以上のように6つの成分のみが独立である。また、Cはアンテナの利得に関する係数である。図1が示すアレーアンテナ装置100の場合、実際の測定結果から近似的にC=131.2という値を得ている。表1には、アドミタンスベクトル[y]とアドミタンス行列Yへの異なる入力値(エントリ)が示されている。
【0054】
【表1】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
00=0.00860035−0.0315844j
10=−0.00372642+0.0072319j
11=0.00962295−0.01656835j
21=−0.000377459+0.0117867j
31=0.00002720885−0.0063736j
41=0.001779525+0.002208335j
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0055】
数3を数7に代入しかつ相加性雑音を考慮すると、アレーアンテナ装置100の単一ポートから出力された受信信号y(t)は次式のように表すことができる。
【0056】
【数13】
Figure 0003727857
【0057】
ここで、数13に含まれた次の関数も、p番目のユーザ端末の時空間シンボル波形信号と呼ばれる。
【0058】
【数14】
Figure 0003727857
【0059】
ここで、次式で表されるf(θ)はアレーアンテナ装置100のパターンである。
【0060】
【数15】
f(θ)=f(θ,X,…,X)=[i][a(θ)]
【0061】
2つの時空間インパルス応答g(t)と[g(t)]は、明らかに同じ持続時間を有している。相加性雑音は、以下の仮定を満足している。
<仮定4>相加性雑音は、次の2つの式を満たすゼロ平均の白色雑音であり、ユーザ端末の信号とは無相関である。
【0062】
【数16】
E{n(t)}=0
【数17】
E|n(t)|=σ
【0063】
ここで、σはノイズのパワーを表す。
【0064】
数9乃至数14より、アレーアンテナ装置100の出力信号もリアクタンスX,X,…,Xの非線形関数であることが分かる。
【0065】
次に、時間領域信号処理部4で実行される、望ましくない信号を除去するための時空間適応型フィルタリングについて説明する。アレーアンテナ装置100の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が、与えられたリアクタンス値のセットを有するときのアレーアンテナの制御装置の時間的処理を、最初に、図3に図示されたTDMA用時間領域信号処理部4−1を用いて実行する。TDMAの場合は、シンボル波形信号に基づいて処理が行われる。シフトレジスタ13−1乃至13−(J−1)におけるサンプリング周期をΔで表し、J=T/Δ(Jは1以上の整数)をオーバーサンプリングの係数とする。受信信号y(t)を仮定A2により時間t=iΔ+mT(ここで、mは任意の整数;i=0,1,…,J−1)でサンプリングすると、数13は次式のようになる。
【0066】
【数18】
Figure 0003727857
(i=0,1,…,J−1)
【0067】
仮定A1に記述された端末の信号の周期的な定常状態を利用すると(従来技術文献4「L. Tong et al., "Blind identification and equalization based on second-order statistics: a time domain approach," IEEE Transaction. Information Theory, Vol. 40, pp. 340-349, March 1994」参照。)、図3に図示された分数間隔の等化器であるトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Jの拡張されたマルチチャンネルモデルの方法は、次式のように容易に確立することができる。
【0068】
【数19】
Figure 0003727857
【0069】
ここで、J次元の信号ベクトル[yb(t)]、時空間インパルス応答ベクトル[h(d)]、及びノイズベクトル[nb(m)]は次式で表される。
【0070】
【数20】
[yb(m)]
=[y(mT),y(mT−Δ),…,y(mT−(J−1)Δ)]
【数21】
[h(d)]
=[ga(dT),ga(dT−Δ),
…,ga(dT−(J−1)Δ)]
【数22】
[nb(m)]
=[n(mT),n(mT−Δ),…,n(mT−(J−1)Δ)]
【0071】
各mについて受信信号[yb(m)]の次元はJであり、Jは「オーバーサンプリングチャンネルの数」と呼ばれる。オーバーサンプリングによる拡張チャンネル数の限界については、従来技術文献5「A. J. van der Veen, "Resolution limits of blind multi-user multi-channel identification scheme - the band-limited case", in Proceeding of ICASSP '96, Atlanta, GA, May 1996」に議論されている。M個のシンボルの周期内の連続サンプルについて、次のJ×M次元信号ベクトル[Y(m)]と、p番目のユーザ端末の信号に係るM+D個の情報シンボルからなるシンボルベクトル[S(m)]と、J×M次元ノイズベクトル[N(m)]とを形成する。
【0072】
【数23】
[Y(m)]=[yb(m),yb(m−1),…,yb(m−M+1)]
【数24】
[S(m)]
=[sb(m),sb(m−1),…,sb(m−M−D+1)]
【数25】
[N(m)]=[nb(m),nb(m−1),…,nb(m−M+1)]
【0073】
ユーザ端末pに係る次のシルベスター(Sylvester)たたみ込み行列を、そのチャンネルの(D+1)×Jの長さ(次元)のインパルス応答[[h(0)],[h(1)],…,[h(D)]の項で定義すると、次式のようなMJ×(M+D)次行列になる。
【0074】
【数26】
Figure 0003727857
【0075】
ここで、“0”は、J次元の0ベクトルを表す。数19は次式へと拡張することができる。
【0076】
【数27】
Figure 0003727857
【0077】
ゆえに、TDMA用時間領域信号処理部4−1におけるサブ信号に対する等化は、次式によって実行することができる。
【0078】
【数28】
(m)=[W][Y(m)]
【0079】
ここで、
【数29】
[W]=[w1,0,…,wJ ,0,…,w1, M −1,…,wJ M −1
は、図4に図示された等化器であるトランスバーサルフィルタ回路23−1のための重み係数ベクトルである。最小平均2乗誤差(MMSE)基準に基づいて、トランスバーサルフィルタ回路23−1のための最適な重み係数は、数30から解かれ、かつ公知のウィーナー−ホップの解、すなわち数31によって与えられる。
【0080】
【数30】
Figure 0003727857
【数31】
[WMMSE=[R−1[r(v)]
【0081】
ここで、sb(m)は所望のユーザ端末の信号の学習シーケンス信号であり、v≧0は、遅延時間vを考慮した因果的フィルタリング(causal filtering)の実現に必要な学習シーケンス信号の遅延である。数30から明らかなように、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号を所定の遅延時間vだけ遅延した信号sb(m−v)と、処理信号z(m)との誤差が最小となるように重み係数ベクトル[W]を演算することにより適応制御する。[R]及び[r(v)]はそれぞれ、以下のように演算される、信号ベクトルの時間的相関行列と、学習シーケンス信号と信号ベクトルの間の相関ベクトルである。
【0082】
【数32】
[R]=E{[Y(m)][Y(m)]
【数33】
[r(v)]=E{sb (m−v)[Y(m)]}
【0083】
適応制御型コントローラ7は、数31乃至33によって求められた重み係数ベクトル[W]を時間領域信号処理部4に出力し、重み係数ベクトル[W]は、複数J×M個の乗算器26−1乃至26−Mにおいて信号ベクトル[Y]と乗算され、乗算結果の信号が加算器27及び17で加算されて出力される。出力された信号z(k)と学習シーケンス信号との誤差信号に基づいて、適応制御型コントローラ7は上述の処理を繰り返して数30の誤差を収束させることにより、出力信号z(k)の残留誤差パワーを最小化させる。また、アレーアンテナ装置100の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が、与えられたリアクタンス値のセットを有するときの最小の残留誤差パワーは、次式のように求められる。
【0084】
【数34】
Figure 0003727857
【0085】
実際には、数34の最小残留誤差パワーは、リアクタンス値X,…,Xの関数である。
【0086】
アレーアンテナ装置100の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が、与えられたリアクタンス値のセットを有するときのアレーアンテナの制御装置の時間領域処理を、次に、図5に図示されたCDMA用時間領域信号処理部4−2を用いた場合について説明する。CDMAの場合は、当該時間領域処理は、パルス波形整形関数及びそれらの関連したマッチドフィルタ15−1乃至15−Jからの出力信号に対して行われる。シフトレジスタ13−1乃至13−(J−1)におけるサンプリング周期をΔ=Tc/Jで示し(Jは自然数であるオーバーサンプリング係数)、受信信号y(t)を時間t=laTc−iΔ,(laは自然数;i=0,1,…,J−1)でサンプリングすると、数13の離散形式は、次式のようになる。
【0087】
【数35】
Figure 0003727857
【0088】
離散化された受信信号y(laTc−iΔ),i=0,…,J−1を積み重ねると、次式のような信号ベクトルが得られる。
【0089】
【数36】
Figure 0003727857
【0090】
ここで、[yv(laTc)],[gv(laTc)],[nv(laTc)]によって、それぞれ以下のように、信号ベクトル、時空間シンボル波形信号、及びノイズを示すJ次元ベクトルを意味する。
【0091】
【数37】
[yv(laTc)]
=[y(laTc),…,y(laTc−(J−1)Δ)]
【数38】
[gv(laTc)]
=[ga(laTc),…,ga(laTc−(J−1)Δ)]
【数39】
[nv(laTc)]
=[n(laTc),…,n(laTc−(J−1)Δ)]
【0092】
正規化されたチップ波形について、次式を仮定する。
【0093】
【数40】
Ψ(kTc−laTc)=δk
【0094】
このとき、p番目のユーザ端末の離散的なパルス波形整形関数は、次式で示される。
【0095】
【数41】
Figure 0003727857
(0≦la≦Nc−1)
【0096】
表記を簡単にするために、
【数42】
cb(la)=c(Nc−la), 0≦la≦Nc−1
とすると、マッチドフィルタ15−1乃至15−Jによって、p番目のユーザ端末のパルス波形整形関数を逆拡散した後の出力信号ベクトルは、次式で示すことができる。
【0097】
【数43】
Figure 0003727857
【0098】
ここで、
【数44】
Figure 0003727857
【数45】
Figure 0003727857
【0099】
数19のベクトルの定式化と同様に、laTcをkT−jTc(ここで、0≦j≦Nc−1)で表し、サブ信号処理回路16−1乃至16−Nc内におけるシンボルレベルの信号ベクトルを次式のように定義する。
【0100】
【数46】
[Xc(kT)]
=[[Xb(kT)],…,[Xb(kT−(Nc−1)Tc)]
【0101】
数43により、数46は、次式で示すことができる。
【0102】
【数47】
Figure 0003727857
【0103】
ここで、
【数48】
Figure 0003727857
【数49】
Figure 0003727857
【0104】
仮定3より、J×Nc次元の波形信号
【数50】
Figure 0003727857
の持続時間が制限されていることが知られている。ゆえに、数47は次式のように表すことができる。
【0105】
【数51】
Figure 0003727857
【0106】
ここで、
【数52】
Figure 0003727857
は、p番目のユーザ端末チャンネルのシンボルレベルの長さである。数51は、右辺の第1項が所望のユーザ端末からの信号の全成分を包含しているのに対して、第2項は望ましくないユーザ端末からの信号の重ね合わされた相互相関成分を含んでいることを示している。上記相互相関成分は抑圧されなければならない。数51に基づいて、シンボルレベルの適応型処理は次式のように実行することができる。
【0107】
【数53】
Figure 0003727857
【0108】
ここで、J×Nc×M次元の信号ベクトル[Y(k)]と、重み係数ベクトル[W]は次式で表される。
【0109】
【数54】
[Y(k)]
=[[Xc(kT)],…,[Xc(kT−(M−1)T)]
【0110】
【数55】
[W]=[[w,…,[wM−1
【数56】
[wma
=[w1,1,ma,w2,1,ma,…,wJ,1,ma,w1,2,ma,w2,2,ma,…,
J,2,ma,…,w1,Nc,ma,w2,Nc,ma,…,wJ,Nc,ma
(ma=1,2,…,M)
【0111】
数56は、信号ベクトル[Y(kT)]に乗算される重み係数であり、その全ての重み係数から、数55の重み係数ベクトル[W]が生成される。トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncのタップ数Mは、p番目のユーザ端末チャンネルのシンボルレベルの長さ
【数57】
Figure 0003727857
と、同一チャンネルのユーザ端末数と、性能要件とに従って選択される。TDMAの場合の処理と同様に、MMSE基準、すなわち、数58に基づいて、最適な重み係数ベクトルが数59のように取得される。
【0112】
【数58】
Figure 0003727857
【数59】
Figure 0003727857
【0113】
ここで、信号ベクトルの時間的相関行列[R]と、学習シーケンス信号と信号ベクトルとの相関ベクトル[γp0(v)]とはそれぞれ次式で表される。
【0114】
【数60】
[R]=E{[Y(k)][Y(k)]
【数61】
Figure 0003727857
【0115】
ここで、
【数62】
Figure 0003727857
はp番目のユーザ端末の学習シーケンス信号(学習シンボルシーケンス)を示す。数58から明らかなように、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号を所定の遅延時間vだけ遅延した信号sbp0(k−v)と、処理信号z(k)との誤差が最小化され、アレーアンテナの制御装置が最良の性能を出力するように重み係数ベクトル[W]を演算することにより適応制御する。適応制御型コントローラ7は、数59乃至61によって求められた重み係数ベクトル[W]を時間領域信号処理部4に出力し、重み係数ベクトル[W]は、J×Nc個のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncにおいて信号ベクトル[Y]と乗算され、乗算結果の信号が加算器24において加算されてサブ信号処理回路16−1乃至16−Ncから出力される。出力される処理信号z(k)と学習シーケンス信号との誤差信号に基づいて、適応制御型コントローラ7は上述の処理を繰り返して収束させることにより、出力される処理信号z(k)の残留誤差パワーを最小化させる。数34と同様に、アレーアンテナ装置100の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が与えられたリアクタンス値のセットを有するときの最小残留誤差パワーは、次式のように表される。
【0116】
【数63】
Figure 0003727857
【0117】
適応制御型コントローラ7は、以上説明したように、時間領域信号処理部4において所望信号を時間領域において適応処理すると同時に、アレーアンテナ装置100において所望信号を空間領域において処理することができる(時空間併用適応型フィルタリング)。上記の内容から、アレーアンテナ装置100の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が所定のリアクタンス値のセットを有するときは、TDMAの場合もCDMAの場合も共に処理の定式化が同一の方法に包含され得ることが分かる。以下、処理信号z(m)は、TDMA及びCDMA双方の場合の処理出力を表し、これは次式で表される。
【0118】
【数64】
z(m)=[W][Y(m)]
【0119】
上述のように、信号ベクトル[Y(m)]は、また、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値の関数であり、p番目のユーザ端末の信号に対する最適な時空間の処理を併用する適応型フィルタリングは、重み係数ベクトル[W]及びリアクタンス値X,X,…,Xを同時に参照して数65を最小化すること、すなわち、数66のように表記される。
【0120】
【数65】
σtotal =E|sb(m−v)−z(m)|
【数66】
Figure 0003727857
【0121】
与えられたデータのセットの下では、数66の最適な重み係数ベクトル及びリアクタンス値の解法は、関連付けられたフィールド上での大域的な検索の実行であることが知られている。しかしながら、こうした時間のかかる大域的な検索を実際に使用することは不可能である。よって、何らかの代替方法を考える必要がある。
【0122】
最適化方法の中でも最も基本的な方法は、座標に基づいた択一検索法(alternative search)であり、多くの用途に首尾良く適用されている。本願明細書では、この座標に基づいた択一検索法を使用して数66の最適化問題を解く。
【0123】
次いで、上記時空間併用適応型フィルタリングを実際に行うためのブロック更新アルゴリズムについて説明する。以上の説明においては、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値が予め与えられた値を有すると仮定して、重み係数ベクトル[W]を計算する手順が説明された。本願明細書の以下の部分では、図6のフローチャートに基づいて、適応制御型コントローラ4によって実行される、アレーアンテナ装置100のリアクタンス値の適応制御処理について説明する。座標に基づく択一検索の点において、数66の最適化問題を、視点の異なる2つの段階の手順から定式化する。まず、一般的な手順の説明として、リアクタンス値X,X,…,Xが固定されていると仮定し、最適な重み係数ベクトルを解く。これは、数31又は数59に示されている。従って、数66は、次式のようになる。
【0124】
【数67】
Figure 0003727857
【0125】
ここで、
【数68】
[Wopt=[R]−1[r(v)]
【数69】
[R]=E{[Y(m)][Y(m)]
【数70】
[r(v)]=E{sb (m−v)[Y(m)]}
【0126】
学習シーケンス信号の遅延時間vは、数30及び数58の基準に基づいて、時間vだけ遅延された学習シーケンス信号と処理信号z(t)との誤差が最小化されるように、適応制御型コントローラ7によって予め決定されている。また次式は、p番目のユーザ端末のシンボル信号のパワーである。
【0127】
【数71】
σ =E|sb(m)|
【0128】
次いで、最適化問題を解くブロック更新の手順をより具体的に説明する。受信データの制限された長さと数67に従って最適なリアクタンス値を探し、それによって信号ベクトルの時間的相関行列[R]と、学習シーケンス信号と信号ベクトルとの相関ベクトル[r(v)]とを推定する。すなわち、次の2つの演算を実行する。
【0129】
【数72】
Figure 0003727857
【数73】
Figure 0003727857
【0130】
ここで、m=Nl,l=0,1,…,Mであり、Mは収束に必要なデータブロック数を示す。シンボル数Nは、与えられたリアクタンス値のセットの下では、最小平均2乗(LMS)アルゴリズムの使用によって、重み係数ベクトル[W]がN個のシンボル周期内で定常状態に収束できるように選択される。数7、数9、数13、数26、数54及びこれらに関連する等式により、信号ベクトル[Y(m)]はリアクタンス値X,X,…,Xが陽に表現された関数ではないことが分かる。つまり、相関ベクトルの2次形式の項[r(v)][R]−1[r(v)]はリアクタンス値X,X,…,Xの陰関数であることを意味する。
【0131】
陰関数に対して、最適なリアクタンス(Xh,Xh,…,Xhoptを発見するために適当な更新アルゴリズムは、リアクタンスを更新するための最急降下アルゴリズムであり、リアクタンス値X,X,…,Xに関する項[r(v)][R]−1[r(v)]の勾配ベクトルが評価されなければならない。項[r(v)][R]−1[r(v)]は、長さの限定された、与えられたデータブロックに従って評価されるため、ブロック更新アルゴリズムは、項[r(v)][R]−1[r(v)]のデータブロックに基づく推定値に関して構成される。次式を基準関数として仮定する。
【0132】
【数74】
Figure 0003727857
【0133】
ここで、右辺の第2項はリアクタンス値X,…,Xを変数とする。σh はp番目のユーザ端末のシンボル信号の評価されたパワーである。最急降下アルゴリズム(従来技術文献6「R. A. Monzingo et al., "Introduction to Adaptive Arrays", John Wiley & Sons, Inc., 1980」を参照)の文脈においては、数74より、リアクタンス値に対して適応制御処理を実行するための、次のような更新方程式が得られる。
【0134】
【数75】
Figure 0003727857
【0135】
ここで、
【数76】
Xv=[X,X,…,X
【数77】
Xv(k)=[X (k),X (k),…,X (k)
【0136】
【数78】
Figure 0003727857
【数79】
Figure 0003727857
【0137】
ここで、αは更新のためのステップサイズであり、例えば1000乃至2000の値を取る。
【0138】
図6に図示された適応制御処理によるリアクタンス値の更新の手順は以下のように実行される。ステップS1において、リアクタンス値更新の反復回数を制御する数εを設定し、さらに、初期状態としてリアクタンスの更新回数kを0に定める。次に、ステップS2において、リアクタンス値ベクトルの初期値Xv(0)=(X (0),X (0),…,X (0))を設定し、次いで、ステップS3において、リアクタンス値ベクトルXv(k)に対応するリアクタンス値信号を発生して、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に出力して設定する。例えば、リアクタンス値ベクトルの初期値を0ベクトルに設定し、全方向性のビームパターン(図9を参照)から更新アルゴリズムを開始することができる。そして、ステップS4において、受信信号ベクトル[Y(m)]及び学習シーケンス信号ベクトルsb(m)に基づいて、数72及び数73を用いて、相関行列[R]及び相関ベクトル[r(v)]を計算し、数68を用いて最適な重みベクトル[Wopt]を計算して時間領域信号処理部4に出力する。次いで、ステップS5において、数78及び数79を用いて基準関数fhの勾配を計算し、さらに、数75によってリアクタンス値ベクトルXv(k)からリアクタンス値ベクトルXv(k+1)を計算する。次いで、ステップS6において、次式の不等式が成立するか否かを決定する。
【0139】
【数80】
|fh(Xv(k))−fh(Xv(k+1))|≦ε
【0140】
ここで、εは反復しきい値であり、ステップS6において数80の不等式が成立するときはステップS8に進む一方、成立しないとき(NO)はステップS7に進み、kを1だけインクリメントしてステップS3に戻る。ステップS8において、リアクタンス値ベクトルXv(k+1)に対応するリアクタンス値信号を発生して、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に出力して設定し、適応制御処理を終了する。
【0141】
以上説明したエスパアンテナに基づいた時空間適応型フィルタリングを用いれば、所望信号の到来方向にアレーアンテナ装置100のビームをステアリングして空間的な干渉を抑圧し、時間領域信号処理部4によって受信信号の中に含まれるISI等の時間的な干渉を抑圧することができる。
【0142】
【実施例】
本発明者らは、図1のアレーアンテナの制御装置についてコンピュータシミュレーションを実行し、このアレーアンテナの制御装置を用いることによる時空間適応型フィルタリングの有効性を確かめた。このシミュレーションでは、構内ネットワークシステムであって、15個の同一チャンネルのDS−CDMAユーザ端末の信号が存在し、ユーザ1を所望ユーザとする。全てのユーザ端末の信号のコード長さは、127に設定する。各ユーザ端末の信号は6つのマルチパス波を有し、角度が互いに8度の間隔を有するように設定された各ユーザ端末の信号の経路のAOAはガウス分布し、かつそれらの時間遅延は1.1シンボル周期で広がった遅延を有する指数分布に従うものと仮定する。マルチパス波の伝搬損失は、ユーザ端末の信号の直接波のアレー素子のSNRに包含されるものとする。この場合は、ユーザ1の端末の信号に対するSNRが−10dBと仮定されており、他の全てのユーザ端末の信号のSNRは−26.55dB乃至−4.76dBでランダムに変化する。また全てのユーザ端末は、アレーアンテナ装置100の視野内に一様に分布しているものとする。表2は、ユーザ1の端末の信号の詳細なパラメータを記載している。
【0143】
【表2】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
経路 θ(度) τ(シンボル) ξ(伝搬損失)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1 12.30 0 −0.9669+0.2550j
2 21.50 0.04 0.7437−0.3081j
3 20.20 0.05 −0.5206−0.5100j
4 8.70 0.12 −0.3081−0.4569j
5 23.40 0.33 −0.1806+0.3931j
6 13.20 0.47 −0.1912+0.1275j
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
ここでは、オーバーサンプリング係数をJ=1と設定し、またトランスバーサルフィルタ回路のタップ数をM=1と設定している。上述したように、例えば、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6が、
【数81】
Xv=[−53,−136,61,51,59,−146]
のような与えられたリアクタンス値のセットを有する場合、Nはシンボルレベルのサンプル数であり、これに基づいて数64の重み係数ベクトルは従来のLMSアルゴリズムによって数68のその定常状態へと収束することができる。
【0145】
図7は図6の適応制御処理において、定常状態に収束するシンボルレベルのサンプル数Nを決定するための残留誤差パワーの収束曲線の一例を表すグラフである。図7から明らかなように、重み係数ベクトルは約200のシンボル周期内でその定常状態へと収束することが分かる。これは、シンボル周期の数N=200を採用できることを意味している。このシミュレーションのリアクタンスの反復では、シンボル周期の数としてN=200を採用している。更新アルゴリズムの収束の際の挙動を示すため、データブロック数M=7×20と、数81のための反復しきい値ε=1×10−10を設定する。
【0146】
図8は、図6の適応制御処理において、データブロック更新のための基準関数値の収束曲線の一例を示すグラフであり、図9は、図6の適応制御処理を実行したときの、リアクタンス値ベクトルの初期値Xv(0)=(0,0,0,0,0,0)に対応するアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。このリアクタンス値ベクトルの初期値Xv(0)から開始して図6の適応制御処理を実行して更新し、更新の回数kがそれぞれ、2回、4回、9回、13回、19回のときのビームパターンを図10乃至図14に示す。表2及び図14から明らかなように、所望のユーザ端末の信号の全てのマルチパス波は定常状態パターンによって包含されかつ強化され、望ましくないユーザ端末の信号のマルチパス波は定常状態パターンの低位ローブによって軽減されることが分かる。この2つの図面から、アレーアンテナ装置100のビームパターン形成と時間領域信号処理部における受信信号の時間的な等化とを併せて実施することにより、時空間適応型フィルタリングを効果的に実現できることは明らかである。
【0147】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、エスパアンテナにおいて受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力し、所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域信号処理手段に出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定するように構成した。従って、従来技術に比較して簡単な構成を有しかつ製造コストが安価であり、エスパアンテナのための時空間適応処理を行うことができる。また、同一チャンネル干渉信号を適応的なビームパターン形成によって空間的に有効的に抑制することができ、また、シンボル間干渉信号は時間的な波形に基づく適応型等化によって有効的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施形態のアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1のアレーアンテナ装置100の断面図である。
【図3】 図1の時間領域信号処理部4の第1の実施形態であって、TDMA用時間領域信号処理部4−1の構成を示すブロック図である。
【図4】 図3のトランスバーサルフィルタ回路23−1の構成を示すブロック図である。
【図5】 図1の時間領域信号処理部4の第2の実施形態であって、CDMA用時間領域信号処理部4−2の構成を示すブロック図である。
【図6】 図1の適応制御型コントローラ7によって実行される適応制御処理を説明するフローチャートである。
【図7】 図6の適応制御処理において、定常状態に収束するシンボルレベルのサンプル数Nを決定するための残留誤差パワーの収束曲線の一例を表すグラフである。
【図8】 図6の適応制御処理において、データブロック更新のための基準関数値の収束曲線の一例を示すグラフである。
【図9】 図6の適応制御処理を実行したときの、リアクタンス値ベクトルの初期値Xv(0)=(0,0,0,0,0,0)に対応するアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【図10】 図6の適応制御処理を実行し、リアクタンス値の更新回数が2回であるときのアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【図11】 図6の適応制御処理を実行し、リアクタンス値の更新回数が4回であるときのアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【図12】 図6の適応制御処理を実行し、リアクタンス値の更新回数が9回であるときのアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【図13】 図6の適応制御処理を実行し、リアクタンス値の更新回数が13回であるときのアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【図14】 図6の適応制御処理を実行し、リアクタンス値の更新回数が19回であるときのアレーアンテナ装置100のビームパターンのグラフである。
【符号の説明】
A0…励振素子、
A1乃至A6…非励振素子、
1…低雑音増幅器、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
4…時間領域信号処理部、
4−1…TDMA用時間領域信号処理部、
4−2…CDMA用時間領域信号処理部、
6…学習シーケンス信号発生器、
7…適応制御型コントローラ、
9…同軸ケーブル、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
13−1乃至13−(J−1)…シフトレジスタ、
14−1乃至14−J,22−1乃至22−Nc…ダウンサンプラ、
15−1乃至15−J…マッチドフィルタ、
16−1乃至16−J…サブ信号処理回路、
17,24,27…加算器、
23−1乃至23−J,23−1乃至23−Nc…トランスバーサルフィルタ回路、
21−1乃至21−(Nc−1),25−1乃至25−(M−1)…遅延回路、
26−1乃至26−M…乗算器、
100…アレーアンテナ装置。

Claims (6)

  1. 無線信号を受信するための放射素子と、上記放射素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の可変リアクタンス素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置において、
    上記アレーアンテナにおいて受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力する時間領域信号処理手段と、
    所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域信号処理手段に出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定する適応型制御手段とを備え
    上記基準関数は、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変数とする関数であり、上記受信された無線信号を含む関数として表されたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。
  2. 上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから所定のスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御装置。
  3. 上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから、上記受信された無線信号と上記学習シーケンス信号とから算出されるスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御装置。
  4. 無線信号を受信するための放射素子と、上記放射素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記複数の可変リアクタンス素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
    上記アレーアンテナにおいて受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力するステップと、
    所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域の信号処理のために出力し、上記誤差信号に対応する値を示す所定の基準関数の勾配ベクトルを計算し、上記基準関数の値が最小となるように上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を計算して設定するステップとを含み、
    上記基準関数は、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変数とする関数であり、上記受信された無線信号を含む関数として表されたことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
  5. 上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから所定のスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする請求項4記載のアレーアンテナの制御方法。
  6. 上記基準関数は、上記受信された無線信号のパワーから、上記受信された無線信号と上記学習シーケンス信号とから算出されるスカラー値を減算してなる関数として表されたことを特徴とする請求項4記載のアレーアンテナの制御方法。
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