JP3725793B2 - アレーアンテナの制御装置及び制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置の指向特性を変化させることができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法に関し、特に、指向特性を適応的に変化させることができる電子制御導波器アレーアンテナ装置(Electronically Steerable Passive Array Radiator (ESPAR) Antenna;以下、エスパアンテナという。)であるアレーアンテナのための制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術のエスパアンテナの基本的な構成は、例えば、従来技術文献1「T. Ohira, "Microwave signal processing and devices for adaptive beamforming," IEEE Antenna and Propagation society International Symposium vol. two, pp. 583-586, Salt Lake City, Utah July 16-21, 2000」や特願平11−194487号の特許出願において提案されている。このエスパアンテナは、無線信号が送受信される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が送受信されない少なくとも1個の非励振素子と、この非励振素子に接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。
【0003】
また、無線通信システムにおいては、マルチパス伝搬と、同一チャンネル干渉(CCI)とが、無線システムに悪影響を及ぼす2つの問題として存在する。これらの問題は共に、符号分割多重アクセス(CDMA)無線システムに対するシンボル間干渉(ISI)及びマルチユーザアクセス干渉(MAI)として現れる。時空間適応化処理(STAP)は、ISI及びCCI双方を抑圧する卓越した性能を提供すると考えられている。その基本原理は、従来技術文献2「J. Paulraj et al., "Space-time processing for wireless communications," IEEE Signal Processing Magazine, vol. 14, no. 6, pp. 49-83, Nov. 1997」に記述されている。最近では、直接拡散CDMA(DS−CDMA)無線通信システムのための時空間適応化処理の方法が提案されかつ解析され、2次元RAKE受信機と称されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術文献1においては、より狭いビームを形成する原理が考察されていない。また、従来技術文献2においては、CDMA信号波形を適応的に処理するための方法が考察されていない。さらに、その複雑さとコスト面から、DS−CDMAや、2次元RAKE等の無線システムを、ユーザ端末アンテナなどの民生機器として広く実用化することは困難である。それよりも、さほど複雑でない低コストの無線システムを開発することの方が望ましい。
【0005】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して構成が簡単であり、マルチパス環境においてDS−CDMA信号を受信しかつより狭いビームを形成して適応化処理を実行することができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアレーアンテナの制御装置は、無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることによりアレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置において、
上記無線信号は送信側でスペクトル拡散変調された無線信号であり、
入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して上記各可変リアクタンス素子に出力することにより上記アレーアンテナの指向特性を設定するビームパターン設定手段と、
トランスバーサルフィルタ回路で構成され、上記ビームパターン設定手段による上記アレーアンテナの指向特性の設定の後において、上記アレーアンテナによって受信された無線信号を互いに異なる複数の遅延時間だけ遅延することにより複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算して各乗算結果の信号を得た後、上記各乗算結果の信号を加算して、当該加算結果の信号を処理信号として出力する時間領域信号処理手段と、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域信号処理手段に出力することにより適応制御処理を実行する適応型制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記時間領域信号処理手段は、好ましくは、
上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所望の拡散信号を復号化する複数のマッチドフィルタと、
上記各マッチドフィルタからそれぞれ出力される復号化された各信号に対して所定の重み係数を乗算した後、当該各乗算結果の信号を加算することにより時間領域の信号処理を実行する複数のサブ信号処理回路と、
上記各サブ信号処理回路から出力される信号を加算して処理信号として出力する加算器とを備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係るアレーアンテナの制御方法は、無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることによりアレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
上記無線信号は送信側で直接拡散変調法によりスペクトル拡散変調された無線信号であり、
入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して上記各可変リアクタンス素子に出力することにより上記アレーアンテナの指向特性を設定するステップと、
トランスバーサルフィルタ回路を用いて、上記アレーアンテナの指向特性の設定の後において、上記アレーアンテナによって受信された無線信号を互いに異なる複数の遅延時間だけ遅延することにより複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算して各乗算結果の信号を得た後、上記各乗算結果の信号を加算して、当該加算結果の信号を処理信号として出力するステップと、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して設定することにより適応制御処理を実行するステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る実施形態のアレーアンテナの制御装置のブロック図である。本実施形態のアレーアンテナの制御装置は、図1に示すように、1つの励振素子A0と、6個の非励振素子A1乃至A6とを備えてなるエスパアンテナであるアレーアンテナ装置100を用いて、送信側で直接拡散変調法によりスペクトル拡散変調された無線信号を受信するための制御装置であって、特に、ビームパターンコントローラ8と、時間領域信号処理部4と、適応制御型コントローラ7とを備えたことを特徴としている。
【0011】
図1において、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に設けられた励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6から構成され、励振素子A0は、半径rの円周上に設けられた6本の非励振素子A1乃至A6によって囲まれるように配置されている。好ましくは、各非励振素子A1乃至A6は上記半径rの円周上に互いに等間隔を保って設けられる。ここで、各励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6の長さは、好ましくは、所望波の無線信号の波長λの約1/4になるように構成され、また、上記半径rはλ/4になるように構成される。励振素子A0の給電点は同軸ケーブル9を介して低雑音増幅器(LNA)1に接続され、また、非励振素子A1乃至A6にはそれぞれ可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に接続され、これら可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の各リアクタンス値はビームパターンコントローラ8からのリアクタンス値信号によって設定される。
【0012】
図2は、図1のアレーアンテナ装置100の縦断面図である。励振素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、各非励振素子A1乃至A6は、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の動作を説明すると、例えば放射素子A0と非励振素子A1乃至A6の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非励振素子A1乃至A6の電気長が励振素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。
【0013】
従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非励振素子A1乃至A6に接続された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向特性を変化させることができる。
【0014】
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100は無線信号を受信し、上記受信された信号は同軸ケーブル9を介して低雑音増幅器(LNA)1に入力されて増幅され、次いで、ダウンコンバータ2は増幅された信号を所定の中間周波数の信号(IF信号)に低域変換する。さらに、A/D変換器3は低域変換されたアナログ信号をディジタル信号にA/D変換し、A/D変換されたディジタル信号を時間領域信号処理部4に出力する。ここで、ビームパターンコントローラ8は、ユーザによりキーボードなどの入力手段を用いて入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に出力することによりアレーアンテナ装置100の指向特性を設定する。このビームパターンの設定は通信開始前に予め行われる。次いで、時間領域信号処理部4は、アレーアンテナ装置100によって受信された無線信号y(t)を複数の時間領域のサブ信号に分割し、分割した複数のサブ信号からなる信号ベクトル[Xc]を適応制御型コントローラ7に出力し、また、分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号z(t)として出力する。そして、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号発生器6により発生された学習シーケンス信号から処理信号z(t)を減算して誤差信号を計算し、さらに、適応制御型コントローラ7は、上記学習シーケンス信号及び信号ベクトル[Xc]に基づいて誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して、最適な重み係数ベクトル[W]を時間領域信号処理部4に出力することにより適応制御処理を実行する。
【0015】
アレーアンテナ装置100で受信される無線信号を送信する送信局は、学習シーケンス信号発生器6で発生される所定の学習シーケンス信号と同一の学習シーケンス信号を含む所定のシンボルレートのディジタルデータ信号に従って、無線周波数の搬送波信号を直接拡散変調法を用いてスペクトル拡散変調し、当該変調信号を電力増幅して受信局のアレーアンテナ装置100に向けて送信する。この実施形態においては、データ通信を行う前に、送信局から受信局に向けて学習シーケンス信号を含む無線信号が送信され、受信局では、適応制御型コントローラ7による適応制御処理が実行される。
【0016】
図3は、図1の時間領域信号処理部4の詳細構成を示すブロック図である。図3において、時間領域信号処理部4は、互いに縦続接続された複数(J−1)個のシフトレジスタ(SR)13−1乃至13−(J−1)と、複数J個のダウンサンプラ14−1乃至14−Jと、複数J個のマッチドフィルタ(matched fiter;整合フィルタともいう。)15−1乃至15−Jと、複数J個のサブ信号処理回路16−1乃至16−Jと、加算器17とを備えて構成される。なお、シフトレジスタ13−1乃至13−(J−1)はそれぞれ、入力されるクロックに基づいて入力信号を1シンボル期間だけ遅延して出力する。
【0017】
図1のA/D変換器3から出力された受信信号y(t)は、ダウンサンプラ14−1と、シフトレジスタ13−1に入力される。ダウンサンプラ14−1は、入力された受信信号y(t)を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をマッチドフィルタ15−1に出力する。次いで、マッチドフィルタ15−1は、ダウンサンプリングされた信号を、受信機のコントローラ(図示せず。)から入力される所望波のユーザの拡散符号のデータDcpに基づいて、白色雑音の中にうずもされた所望波信号を最大のSN比で検出し、具体的には、拡散符号の1周期ごとにパルス信号を出力する。そして、マッチドフィルタ15−1からの信号は、詳細後述するサブ信号処理回路16−1を介して加算器17に出力される。
【0018】
シフトレジスタ13−1から出力される信号は、ダウンサンプラ14−2とシフトレジスタ13−2に入力され、ダウンサンプラ14−2は入力された信号を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をマッチドフィルタ15−2及びサブ信号処理回路16−2を介して加算器17に出力する。以下同様に、シフトレジスタ13−j(j=2,3,…,J−1)から出力される信号は、ダウンサンプラ14−(j+1)とシフトレジスタ13−(j+1)に入力され、ダウンサンプラ14−(j+1)は入力された信号を、A/D変換器3のサンプリング周波数の1/J倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をマッチドフィルタ15−(j+1)及びサブ信号処理回路16−(j+1)を介して加算器17に出力する。さらに、加算器17は入力された複数J個の信号を加算して加算結果の信号を処理信号z(t)として出力する。
【0019】
次いで、サブ信号処理回路16−1の詳細構成について説明する。サブ信号処理回路16−1は、それぞれ所定の遅延時間Tcを有して縦続接続された複数(Nc−1)個の遅延回路21−1乃至21−(Nc−1)と、複数Nc個のダウンサンプラ22−1乃至22−Ncと、複数Nc個のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncと、加算器24とを備えて構成される。マッチドフィルタ15−1から出力された信号は、遅延回路21−1とダウンサンプラ22−1に入力され、ダウンサンプラ22−1は入力された信号を、ダウンサンプラ14−1乃至14−Jのサンプリング周波数の1/Nc倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−1を介して加算器24に出力する。以下同様に、遅延回路21−nc(nc=2,3,…,Nc−1)から出力される信号は、遅延回路21−(nc+1)とダウンサンプラ22−(nc+1)に入力され、ダウンサンプラ22−(nc+1)は入力された信号を、ダウンサンプラ14−1乃至14−Jのサンプリング周波数の1/Nc倍のサンプリング周波数でダウンサンプリングし、処理後の信号をトランスバーサルフィルタ回路23−(nc+1)を介して加算器24に出力する。さらに、加算器24は入力される複数Nc個の信号を加算して加算結果の信号を加算器17に出力する。
【0020】
ここで、図3において、適応制御型コントローラ7から各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncへ入力される重み係数データはそれぞれ、Dw1,Dw2,…,DwNcで表されている。また、重み係数の演算のために各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncから適応制御型コントローラ7に出力される複数の異なる時間遅延のサブ信号のデータはそれぞれ、Dx1,Dx2,…,DxNcで表されている。また、他のサブ信号処理回路16−2乃至16−Jは上述のサブ信号処理回路16−1と同様に構成される。
【0021】
図4は、図3のサブ信号処理回路16−1内のトランスバーサルフィルタ回路23−1の構成を示すブロック図である。トランスバーサルフィルタ回路23−1は、入力信号を例えば1シンボルの1/4乃至1/2の時間だけそれぞれ遅延させ互いに縦続接続された(M−1)個の遅延回路25−1乃至25−(M−1)と、複数M個の乗算器26−1乃至26−Mと、加算器27とを備えて構成される。トランスバーサルフィルタ回路23−1に入力される信号は、サブ信号のデータとして適応制御型コントローラ7に出力され、かつ、重み係数w1,1,1の乗算係数を有する乗算器26−1を介して加算器27に出力されるとともに、互いに縦続接続された(M−1)個の遅延回路25−1乃至25−(M−1)、並びに重み係数w1,1,Mの乗算係数を有する乗算器26−Mを介して加算器27に出力される。また、遅延回路25−1から出力される信号は、適応制御型コントローラ7に出力されるとともに、重み係数w1,1,2の乗算係数を有する乗算器26−2を介して加算器27に出力され、以下同様にして、遅延回路25−ma(ma=2,3,…,M−1)から出力される信号は、適応制御型コントローラ7に出力されるとともに、重み係数w1,1,ma+1の乗算係数を有する乗算器26−(ma+1)を介して加算器27に出力される。さらに、加算器27は入力される複数M個の信号を加算して加算結果の信号を出力する。
【0022】
ここで、重み係数wの添え字は、第1の添え字でサブ信号処理回路16−1乃至16−Jのシリアル番号1乃至Jを、第2の添え字で各サブ信号処理回路16−1乃至16−J内のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncのシリアル番号1乃至Ncを、第3の添え字で各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Nc内の乗算器26−1乃至26−Mのシリアル番号1乃至Mを表す。
【0023】
なお、他のトランスバーサルフィルタ回路23−2乃至23−23−Ncは、上述のトランスバーサルフィルタ回路23−1と同様に構成される。
【0024】
以上のように構成されたアレーアンテナの制御装置においては、適応制御型コントローラ7は、J×Nc個の各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncから出力された全てのサブ信号からなる信号ベクトル[Xc]と、学習シーケンス信号とに基づいて、例えば最小平均2乗誤差(MMSE)基準を用いた所定の適応制御アルゴリズムを用いて、誤差信号が最小となるように、サブ信号処理回路16−1乃至16−Jのすべてのトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncのための各重み係数を演算し、各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncに帰還して設定する。
【0025】
次いで、本発明に係る実施形態のアレーアンテナの制御装置及び制御方法の動作原理について詳細に説明する。
【0026】
最初に、アレーアンテナ装置100で受信された信号の信号モデルを導入する。初めに、P個のDS−CDMAのユーザ端末を有するN個(N>1)のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置100について定式化する。p番目のユーザ端末の送信された信号のベースバンド波形信号sp(t)は次式で表される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、sap(m)はp番目のユーザ端末のm番目の情報シンボルを示し、ρp(t)は、次式のようにp番目のユーザ端末のパルス波形整形関数を示す。
【0029】
【数2】
(0≦t≦T)
【0030】
{cp(j)},j=0,…,Nc−1はp番目のユーザ端末に割り当てられた拡散コードであり、Tはチップ間隔Tcとシンボル毎のチップ数Nc(例えば、Nc=127)との積に等しいシンボル継続時間であり、また、Ψ(t)は時間区間[0,Tc]内で定義される正規化されたチップ波形信号である。さらに、オーバーサンプリング周期をΔとすると、Tc/Δ=2であり、伝送ビットレートをfbとするとシンボルビットレートは2×127×fbで表される。拡散符号シーケンスは、採用する規格に依存して周期的であってもよいし、非周期的であってもよい。本実施形態では、周期的であるケースであって、すなわち非ランダム性のCDMA無線システムについて考察する。N個のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置で受信されたアレー受信信号ベクトル[x(t)]は、次式のように表されるN次元ベクトルである。以下、本願明細書においては、ベクトル又は行列を[ ]で表す。
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、N次元ベクトル[gp(t)]を表す次式を、p番目のユーザ端末の、時空間シンボル波形信号、又はシンボルレベルの時空間チャンネルインパルス応答という。
【0033】
【数4】
【0034】
θlp p,τlp p,ξlp pはそれぞれ、p番目のユーザ端末のlp番目の経路に対応する到来角(AOA)、遅延時間、及び伝搬損失を表す。さらに、N次元ベクトル[a(θ)]は到来角θに対応するアレーのステアリングベクトルを表し、Lpはp番目のユーザ端末のマルチパス波の総数を示し、N次元ベクトル[n(t)]はアレーノイズベクトルを示す。
【0035】
数5をp番目のユーザ端末の時空間チップ波形信号、又はチップレベルの時空間チャンネルインパルス応答であるN次元ベクトルとして定義すると、数6のように、上記時空間チップ波形と時空間シンボル波形[gp(t)]との関係式が得られる。
【0036】
【数5】
【数6】
【0037】
数6から、時空間シンボル波形信号[gp(t)]はp番目のユーザ端末の拡散符号コードによって、時空間チップ波形信号[hp(t)]を符号化した波形信号であり、時空間シンボル波形信号[gp(t)]の継続時間は時空間チップ波形信号[hp(t)]の継続時間に依存することが分かる。数5及び数6を数3に包含させると、次式が得られる。
【0038】
【数7】
【0039】
次いで、以下のことを仮定する。
<仮定1>
情報シンボルsap(m),p=1,2,…,Pは独立かつ同一の分布であり、次式を満足する。
【0040】
【数8】
E{sap(m)saq *(n)}=δp,qδm,n
【0041】
ここで、Eはエルゴード性の統計に基づくアンサンブル時間平均である期待値、[・]*は複素共役を示し、δp,qはクロネッカーのデルタ関数を示す。
【0042】
<仮定2>
複数のチャンネルhp(t),p=1,2,…,Pは、所定のデータ通信を行う関心を持たれた周期の間は線形かつ時間について不変であり、時間区間[0,DpTc]内の有限の継続時間に属する。
【0043】
<仮定3>ノイズベクトルはゼロ平均であり、次の2つの式を満足し、さらに、時間的及び空間的に白色である。
【0044】
【数9】
E{[n(t)]N[n(t)]N T}=0
【数10】
E{[n(t)]N[n(t)]N H}=σ2I
【0045】
ここで、[・]T及び[・]Hはそれぞれ転置及び共役転置を示し、σ2はノイズパワーを表し、Iは単位行列である。ノイズベクトルはまた、ユーザ端末信号との相関性はないものと仮定される。
【0046】
さらに、アレーアンテナ装置100の信号モデルについて説明する。図1に図示された励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6を備えたアレーアンテナ装置100からの出力受信信号y(t)は次式で表される。
【0047】
【数11】
y(t)=[i]T[x(t)]
【0048】
数11については、従来技術文献3「大平孝ほか,「エスパアンテナの等価ウェイトベクトルとアレーファクタ表現式」,電子情報通信学会技術報告,A・P2000−44,SAT2000−41,MW2000−44,2000年7月」において詳細に説明されており、これを参照して以下に簡単に説明する。
【0049】
アンテナ素子数Nが7であるアレーアンテナ装置100においては、アレーアンテナ装置100のステアリングベクトル[a(θ)]は次式で示される。
【0050】
【数12】
[a(θ)]
=[1,exp(j(2πr/λ)cos(θ)),
…,exp(j(2πr/λ)cos(θ−5×2π/6))]T
【0051】
ここで、アレーアンテナ装置100の半径r=λ/4、λは所望波の無線信号の波長を表し、従来技術文献3において考察された等価ウェイトベクトル[i]は、次のように導出される。
【0052】
【数13】
[i]=C[I+YX]−1[y0]
【0053】
ここで、
【数14】
[y0]=[y00,y10,y10,y10,y10,y10,y10]T
【数15】
【数16】
【0054】
Xはアレーアンテナ装置100のビームパターンを設定する可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を要素に含むリアンクタンス行列であり、Yはアレーアンテナ装置100のアンテナ素子間の相互結合を表すアドミタンス行列である。また、アドミタンス行列Yの各要素は以下の意義を有する。
【0055】
(a)y00は励振素子A0の自己入力アドミタンスを表す。
(b)y10は励振素子A0と各非励振素子A1乃至A6との結合アドミタンスを表す。
(c)y11は各非励振素子A1乃至A6の自己入力アドミタンスを表す。
(d)y21は互いに隣接する1対の非励振素子A1乃至A6の結合アドミタンスを表す。
(e)y31は間に1つの非励振素子を挟んで並置する1対の非励振素子A1乃至A6の結合アドミタンスを表す。
(f)y41は励振素子A0を挟んで対向する1対の非励振素子A1乃至A6の結合アドミタンスを表す。
【0056】
相反性とアレーアンテナ装置100の巡回的な対称性のために、以上のように6つの成分のみが独立である。さらに、数13の係数Cは、アンテナの利得に関する係数である。本実施形態のアレーアンテナ装置100の場合には、実際に測定した結果より、C=約131.2を得た。アドミタンスベクトル[y0]及びアドミタンス行列Yのためのエントリの一実施例を表1に示す。
【0057】
【表1】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
y00=0.00860035−0.0315844j
y10=−0.00372642+0.0072319j
y11=0.00962295−0.01656835j
y21=−0.000377459+0.0117867j
y31=0.00002720885−0.0063736j
y41=0.001779525+0.002208335j
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0058】
ところで、数3を数11に代入し、相加性ノイズを考慮すれば、アレーアンテナの制御装置100からの受信信号y(t)は次式で表される。
【0059】
【数17】
【0060】
ここで、
【数18】
gap(t)=[i]T[gp(t)]
である。
【0061】
次いで、[gp(t)]と同様に、gap(t)もp番目のユーザ端末の時空間シンボル波形信号と呼ばれる。アレーアンテナ装置100の構成及びリアクタンス行列が個別に固定されるか否かに関わらず、時空間シンボル波形信号のgap(t)及び[gp(t)]は異なる次元の数値であることは明らかである。従って、処理の複雑さは低減されるであろう。空間的ノイズが合計ノイズ出力信号を支配しているとき、ノイズベクトル[n(t)]と、数17におけるノイズna(t)は、次式を満たす。
【0062】
【数19】
na(t)=[i]T[n(t)]
【0063】
抵抗及びリアクタンスのノイズがノイズ入力を支配しているとき、ノイズna(t)は時間的な白色雑音と考えられることが分かる。
【0064】
数4から数7までの定義と同様に、数17に関連した時空間チップ波形信号hap(t)と時空間シンボル波形信号gap(t)は次式のように定義される。
【0065】
【数20】
【数21】
【数22】
f(θ)
=f(θ,X1,X2,X3,X4,X5,X6)
=[i]T[a(θ)]
【0066】
アレーのステアリングベクトルと等価ウェイトベクトルとの内積であるf(θ)は、実際の測定によると、その最大が約6dBのパターンである。
【0067】
次いで、時間領域信号処理部4において実行される処理について説明する。シフトレジスタ13−1乃至13−(J−1)において用いられるサンプリング周期を、Δ=Tc/Jと表記する。ここで、J≧1はオーバーサンプリングの係数を表す整数である。実施形態において、Jを例えば1又は2に定めることができる。こうして、時間tを、nTc−iΔ(nは0以上の任意の整数;i=0,…,J−1)で表されるようにサンプリングすると、数17の受信信号y(t)の離散形式の表現は次式のようになる。
【0068】
【数23】
【0069】
数23で表された信号y(nTc−iΔ)を、i=0,…,J−1まで積み重ねることによって、下記のようなJ次元の新たな信号ベクトル[ya(nTc)]が得られる。
【0070】
【数24】
【0071】
ここで、[ya(nTc)],[gbp(nTc−mT)],[hbp(nTc−jTc−mT)],[nb(nTc)]を、それぞれ以下のように、信号ベクトル、時空間シンボル波形信号、時空間チップ波形信号、及びノイズを示すJ次元ベクトルを意味する。
【0072】
【数25】
[ya(nTc)]=[y(nTc),…,y(nTc−(J−1)Δ)]T
【数26】
[gbp(nTc−mT)]
=[gap(nTc−mT),…,gap(nTc−(J−1)Δ−mT)]T
【数27】
[hbp(nTc−jTc−mT)]
=[hap(nTc−jTc−mT),…,
hap(nTc−(J−1)Δ−jTc−mT)]T
【数28】
[nb(nTc)]
=[na(nTc),…,na(nTc−(J−1)Δ)]T
【0073】
次いで、本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置における適応制御処理について説明する。
【0074】
まず、所望の方向にメインビームを形成することについて説明する。与えられた方向に向けてビームを形成することの目的は、所望されたユーザ端末の信号が到来する方向を含み、かつ、望ましくないユーザ端末の信号を、より小さなサイドローブによってビームの外側に抑圧することである。与えられた角度に向けられたビームを設計又は構成することは、所望の与えられたビームに整合するように、適当なリアクタンスのセットを見出すことである。例えば、ある理想的なビームパターンf0(θ)を設定ビームパターンとして入力し、次式の右辺に含まれた基準関数を最小化することによって、好ましいリアクタンス値のセット(X1 (0),X2 (0),X3 (0),X4 (0),X5 (0),X6 (0))を見出すことができる。
【0075】
【数29】
【0076】
ここで、関数argminは、引数を最小化するときのリアクタンス値のセット(X1,X2,X3,X4,X5,X6)を示す。積分範囲のΩはアレーアンテナ装置100の視野(すなわち、0≦θ<2π)を表す。数29は、未知の環境において所望されたユーザ端末を探索するために、それぞれ異なる方向を向いたビームのグループを設計又は構成するための方法を提供する。数29に基づいて発見されたリアクタンス値のセットは、リアクタンス値信号として可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に対して出力され、それによって、アレーアンテナ装置100の指向特性を変化させることができる。実際に上記リアクタンス値信号の探索を実行する制御装置であるビームパターンコントローラ8は、最も単純なディジタル論理回路と、1個のPROM(プログラム可能な読み出し専用メモリ)チップとによって、容易に実現することができる。具体的には、ビームパターンコントローラ8は、メインビームの方向角度θと、リアクタンス値のセット(X1 (0),X2 (0),X3 (0),X4 (0),X5 (0),X6 (0))とのデータベースをPROMに格納しておき、当該データベースを上記数29の右辺を満たすようなリアクタンス値のセット(X1,X2,X3,X4,X5,X6)を検索することにより、求めることができる。
【0077】
次いで、最適なシンボルレベルの処理について説明する。ここでは、DS−CDMA無線システムのための最適処理の方法について詳述する。シンボルレベルの処理は、処理が時空間フィルタにおいてシンボルレートで実行されるために、このように呼ばれる。
【0078】
正規化されたチップ波形信号を次式で表されると仮定する。
【数30】
Ψ(nTc−lTc)=δnl
【0079】
このとき、p番目のユーザ端末の離散的なパルス波形整形関数は次式のように表される。
【0080】
【数31】
(0≦l≦Nc−1)
【0081】
表記を簡単にするために、以下、拡散符号コードcp(j)を次式で表す。
【数32】
cap(l)=cp(Nc−l),0≦l≦Nc−1
【0082】
このとき、p0番目のユーザ端末のパルス波形整形関数によって、マッチドフィルタ15−1乃至15−Jにおいて処理された出力信号ベクトルは、次のように定義される。
【0083】
【数33】
【0084】
数24を数33に代入すると、次式が得られる。
【0085】
【数34】
【0086】
ここで、
【数35】
【数36】
【数37】
【0087】
数24において作成されたオーバーサンプリングに基づくサブチャンネルモデリングと同様に、サブ信号処理回路16−1乃至16−Ncでの処理を説明するために、nTcをkT−jTc(ここで、0≦j≦Nc−1)として、シンボルレベルの時空間信号ベクトル[Xb(kT)]を次式のように、Nc個のJ次元ベクトルからなるJ×Nc次元ベクトルで定義する。
【0088】
【数38】
[Xb(kT)]
=[[XT(kT)],…,[XT(kT−(Nc−1)Tc)]]T
【0089】
数36及び数38から、次式が得られる。
【0090】
【数39】
【0091】
ここで、数39において以下の表記法に従ってJ×Nc次元ベクトルを表す。
【0092】
【数40】
【数41】
【数42】
[Xbn(kT)]
=[[Xn(kT)]T,…,[Xn(kT−(Nc−1)Tc)]T]T
【0093】
J×Nc次元ベクトル
【数43】
の継続時間は制限されるため、数39の時空間信号ベクトルは次のように表すことができる。
【0094】
【数44】
【0095】
ここで、Dpは、p番目のユーザ端末チャンネルのシンボルレベルの長さである。数44では、
【数45】
は、p0番目のユーザ端末のコードに対してマッチドフィルタ15−1乃至15−Jにおいて処理をした後も依然としてp番目のユーザ端末の離散的時空間波形信号と呼ぶことができ、シンボルレベル時空間信号ベクトルにおける所望のユーザ端末のピークは波形信号
【数46】
のピーク成分である。数44から、式の右辺の第1項は所望のユーザ端末のシンボル成分を含み、第2項は抑圧されなければならない望ましくないユーザ端末の重ねあわされた相互相関成分を含むことが分かる。
【0096】
図4で説明された、J×Nc個のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncにおいて実行されるシンボルレベルの適応化処理は、数44に基づいて行うことができる。すなわち、次式を満たす。
【0097】
【数47】
【0098】
ここで、図4に図示された重み係数より次のJ×Nc次元ベクトルを生成する。
【数48】
[wma]
=[w1,1,ma,w2,1,ma,…,wJ,1,ma,w1,2,ma,w2,2,ma,…,
wJ,2,ma,…,w1,Nc,ma,w2,Nc,ma,…,wJ,Nc,ma]T
(ma=1,2,…,M)
【0099】
これによって、次式のように数47のJ×Nc×M次元重み係数ベクトル[W]を表すものとする。また、J×Nc×M次元信号ベクトル[Xc(kT)]も次式のように定義される。
【0100】
【数49】
[W]=[[w0]T,…,[wM−1]T]T
【数50】
[Xc(kT)]
=[[Xb(kT)]T,…,[Xb(kT−(M−1)Tc)]T]T
【0101】
前述のように、信号ベクトル[Xc(kT)]は、時間領域信号処理部4の中のJ×Nc個の各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncから出力された全てのサブ信号の要素から構成される。また、重み係数ベクトル[W]は、適応制御型コントローラ7によって以下に説明される基準に基づいて演算され、適応制御型コントローラ7は演算された重み係数ベクトル[W]を各トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Nc内のJ×Nc×M個の乗算器26−1乃至26−Mに出力し、次いで、乗算器26−1乃至26−Mと加算器27,24及び17によって数47の演算が実行された後に、処理信号z(t)を出力する。
【0102】
トランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncのタップ長Mは、第p0番目のユーザ端末チャンネルのシンボルレベルの長さ
【数51】
と、同一チャンネルユーザ端末の数と、性能条件とに従って選択する。時空間適応化処理(STAP)の完全な処理状態は、ノイズのない状態として表すことができ、すべてのユーザ端末の成分数はすべての有効チャンネルで構成される信号ベクトルの次元より少ない。すなわち、次式を満たす。
【0103】
【数52】
【0104】
特に、次式を満たす場合は、要求された性能が満足されればシンボルレベルタップは不要である。
【0105】
【数53】
【0106】
数54のMMSE基準の下では、最適の重みベクトルは数55のように得られる。
【0107】
【数54】
【数55】
【0108】
ここで、
【数56】
[Rc]=E{[Xc(kT)][Xc(kT)]H}
【数57】
【0109】
【数58】
は、学習シーケンス信号発生器6によって発生された、p0番目のユーザ端末の情報シンボルである学習シーケンス信号を表し、遅延時間vは最高性能を出力するように選択される。数54から明らかなように、適応制御型コントローラ7は、学習シーケンス信号を所定の遅延時間だけ遅延した信号sap0(k−v)と、処理信号z(k)との誤差が最小となるように重み係数ベクトル[W]を演算することにより適応制御する。より具体的には、図1を参照すると、適応制御型コントローラ7は、複数のサブ信号からなる信号ベクトル[Xc]と、学習シーケンス信号とに基づいて数55を用いて重み係数ベクトル[W]を計算して時間領域信号処理部4に出力し、数54の基準を満たすように上述の処理を繰り返して収束させることにより、出力信号z(k)の残留誤差パワーを最小化する。
【0110】
本発明に係る実施形態によって、数33に基づく処理の方法が実現されている。与えられた所望波の方向にステアリングされたビームと、時間領域の適応処理とによって最小化された残留誤差パワーは次式で表される。
【0111】
【数59】
【0112】
【実施例】
本発明者らは、本実施形態に係る適応化処理に基づいたアレーアンテナの制御装置の有効性を確認するために、コンピュータシミュレーションを行なった。コンピュータシミュレーションによって定常状態性能を評価し、収束速度の問題について議論する。これらのシミュレーションでは、図1に図示されたような7素子より成るアレーアンテナ装置100を採用し、そこにおいて、その中央の励振素子A0が受信された信号を出力し、それを取り囲む非励振素子A1乃至A6が可変リアクタンス素子12−1乃至12−6を有する反射器又は導波器である可変リアクタンス素子である。当該シミュレーションでは、15個のCDMAユーザ端末の信号が存在するものとし、第1のユーザ端末を所望のユーザ端末であるとする。すべてのユーザ端末の信号のコード長さは127である。各ユーザ端末は、6つのマルチパス波を有している。各ユーザ端末の経路のAOAはガウス分布し、それらの伝搬損失及び時間遅延は、それぞれレイリー分布及び指数分布に従う。所望の第1のユーザ端末の詳細なパラメータを表2に示す。
【0113】
【表2】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
No. θ(度) τ(シンボル) ξ(伝搬損失)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1 12.30 0.00 −0.9669+0.2550j
2 21.50 0.04 0.7437−0.3081j
3 20.20 0.05 −0.5206−0.5100j
4 8.70 0.12 −0.3081−0.4569j
5 23.40 0.33 −0.1806+0.3931j
6 13.20 0.47 −0.1912+0.1275j
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0114】
第1のユーザ端末の直接波のアレーアンテナ装置100でのSNRを、−10dBと仮定する。他のすべてのユーザ端末のSNRは、−26.55dBから−4.76dBの間でランダムに変動することが分かる。また、すべてのユーザ端末のマルチパス波のAOAを、アレーアンテナ装置100の視野内で一様に分布されているもの仮定する。
【0115】
本発明者らは、図4のトランスバーサルフィルタ回路23−1乃至23−Ncの段数Mを1とした方法を、本シミュレーションにおける処理方法として用いて実験する。一般性を失うことなく、オーバーサンプリング係数J=1を仮定する。シミュレーションでは、アレーアンテナの制御装置の最大利得を1と仮定している。与えられたリアクタンス値におけるシンボルレベルの適応化処理の定常状態残留誤差パワーを表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
リアクタンスパラメータは、理想的な狭いビームパターンとして数29から得られた。表3より、当該アンテナの最大出力残留誤差パワーは約6dB向上していることが分かる。これは、無線アドホックネットワークシステムにとって非常に重要である。
【0118】
図5は、シンボルの反復数と残留誤差パワーとの関係を示す曲線図であって、LMSアルゴリズムの収束性能を示している。この図5から明らかなように、本実施形態のアレーアンテナの制御装置であれば、約200シンボルで収束している。
【0119】
比較のために、表3に係る異なる方向で設計又は構成された5つのビームに対するシミュレーション結果を図6乃至図10に示す。図6は表3のケースAに係るビームパターンを示すグラフであり、図7は表3のケースB、図8は表3のケースC、図9は表3のケースD、及び図10は表3のケースEに係るビームパターンを示すグラフである。これら種々のケースで設定するビームパターンを変化させている。アレーアンテナの制御装置及び制御方法は、所望のユーザ端末信号の到来波を包含するように構成されたビームに対して、より良い性能を提供することが分かる。本シミュレーションから、良好に設計又は構成されたビームを使用するとより良い性能が得られることが分かった。
【0120】
本発明らは、DS−CDMA信号波形のためのエスパアンテナに基づく信号処理の方法を提案し、本実施形態の定常状態性能及び収束性能を示した。適正にパターン形成されたエスパアンテナを使用することによって、少なくとも6.5dBの性能向上を達成でき、それによって、本発明のアレーアンテナの制御装置及び制御方法は、アドホック無線ネットワークシステムにおいて適当に性能を向上させるために経済的な方法を提供することが分かる。
【0121】
エスパアンテナの、所望波信号に対してビームを空間的に形成し、望ましくない信号に対してヌルを空間的に形成する能力は、アドホック無線通信システムにおいて用いられると好適である。本発明において、本発明者らは、無線アドホックネットワークシステムにおけるDS−CDMA信号波形のためのエスパアンテナに基づいた信号処理の方法を提供した。エスパンテナの空間的なフィルタリングのために、チャンネル間のユーザ局の信号の抑圧は非常に改善される。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、DS−CDMA信号を受信するために、ビームパターンコントローラ8により所望のビームパターンに設定することによりユーザ端末の信号の同一チャンネル干渉を空間的に抑圧するとともに、DS−CDMA信号を時間領域信号処理部4により所望信号のシンボル間干渉を抑圧することができる。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、無線信号は送信側でスペクトル拡散変調された無線信号であり、入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して上記各可変リアクタンス素子に出力することにより上記アレーアンテナの指向特性を設定した後、上記受信された無線信号を複数の時間領域のサブ信号に分割し、分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算した後加算することにより時間領域の信号処理を実行して処理信号として出力し、上記処理信号と所定の学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して設定することにより適応制御処理を実行する。従って、従来技術に比較して構成が簡単であり、製造コストを大幅に軽減できるとともに、マルチパス環境においてDS−CDMA信号を受信しかつより狭いビームを形成して適応化処理を実行することができる。
【0124】
さらに、本発明によれば、無線通信システム、特にアドホック無線ネットワークシステムにおいて用いられるエスパアンテナにおいて、同一チャンネル干渉とシンボル間干渉を抑圧する性能を大幅に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るアレーアンテナ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1のアレーアンテナ装置100の縦断面図である。
【図3】 図1の時間領域信号処理部4の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】 図3のトランスバーサルフィルタ回路23−1の構成を示すブロック図である。
【図5】 図1のアレーアンテナの制御装置のシミュレーション結果であって、繰り返しシンボル数に対する残留誤差パワーを示すグラフである。
【図6】 表3のケースAに係るビームパターンを示すグラフである。
【図7】 表3のケースBに係るビームパターンを示すグラフである。
【図8】 表3のケースCに係るビームパターンを示すグラフである。
【図9】 表3のケースDに係るビームパターンを示すグラフである。
【図10】 表3のケースEに係るビームパターンを示すグラフである。
【符号の説明】
A0…励振素子、
A1乃至A6…非励振素子、
1…低雑音増幅器、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
4…時間領域信号処理部、
6…学習シーケンス信号発生器、
7…適応制御型コントローラ、
8…ビームパターンコントローラ、
9…同軸ケーブル、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
13−1乃至13−(J−1)…シフトレジスタ、
14−1乃至14−J,22−1乃至22−Nc…ダウンサンプラ、
15−1乃至15−J…マッチドフィルタ、
16−1乃至16−J…サブ信号処理回路、
17,24,27…加算器、
23−1乃至23−Nc…トランスバーサルフィルタ回路、
21−1乃至21−(Nc−1),25−1乃至25−(M−1)…遅延回路、
26−1乃至26−M…乗算器、
100…アレーアンテナ装置。
Claims (3)
- 無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることによりアレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置において、
上記無線信号は送信側でスペクトル拡散変調された無線信号であり、
入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して上記各可変リアクタンス素子に出力することにより上記アレーアンテナの指向特性を設定するビームパターン設定手段と、
トランスバーサルフィルタ回路で構成され、上記ビームパターン設定手段による上記アレーアンテナの指向特性の設定の後において、上記アレーアンテナによって受信された無線信号を互いに異なる複数の遅延時間だけ遅延することにより複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算して各乗算結果の信号を得た後、上記各乗算結果の信号を加算して、当該加算結果の信号を処理信号として出力する時間領域信号処理手段と、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して上記時間領域信号処理手段に出力することにより適応制御処理を実行する適応型制御手段とを備えたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。 - 上記時間領域信号処理手段は、
上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所望の拡散信号を復号化する複数のマッチドフィルタと、
上記各マッチドフィルタからそれぞれ出力される復号化された各信号に対して所定の重み係数を乗算した後、当該各乗算結果の信号を加算することにより時間領域の信号処理を実行する複数のサブ信号処理回路と、
上記各サブ信号処理回路から出力される信号を加算して処理信号として出力する加算器とを備えたことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御装置。 - 無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子と、上記複数の非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることによりアレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御方法において、
上記無線信号は送信側で直接拡散変調法によりスペクトル拡散変調された無線信号であり、
入力される所望の設定ビームパターンに基づいて、それに対応したリアクタンス値信号を演算して上記各可変リアクタンス素子に出力することにより上記アレーアンテナの指向特性を設定するステップと、
トランスバーサルフィルタ回路を用いて、上記アレーアンテナの指向特性の設定の後において、上記アレーアンテナによって受信された無線信号を互いに異なる複数の遅延時間だけ遅延することにより複数の時間領域のサブ信号に分割し、上記分割した複数のサブ信号に対してそれぞれ所定の重み係数を乗算して各乗算結果の信号を得た後、上記各乗算結果の信号を加算して、当該加算結果の信号を処理信号として出力するステップと、
所定の学習シーケンス信号と上記各サブ信号とに基づいて、上記処理信号と上記学習シーケンス信号との誤差信号が最小となるように上記重み係数を演算して設定することにより適応制御処理を実行するステップとを含むことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
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