JP3727498B2 - 光伝送システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信に利用する。特に、高速広帯域通信サービスに利用するに適する。
【従来の技術】
近年、光伝送システムでは光増幅器の広帯域化により、波長分割多重方式を用いた大容量伝送システムが実現されている。一方、今後、加入者系の光化、マルチメディアサービスの展開などにより、高速広帯域通信サービスの発展が予想され、このようなサービスを経済的に、かつ効率的に提供するために、これらのシステムのさらなる大容量化、低コスト化、保守運用の簡素化を図る必要があり、一つのアプローチとして、1波長あたりの伝送速度を高速化する方法が有効であると考えられている。高速伝送技術の進展としては、現在までに40Gbit/s級のETDM伝送実験が報告されている(M.Yoneyama,et al.,”A 40-Gbit/s Optical Repeater Circuits using lnAlAs/lnGaAs HEMT Digital IC Chip Set”,IEEE MTT-S Digest,WE1D-2,1997)。
【0002】
これらのシステムでは、光ファイバの波長分散による再生中継距離の制限の克服が重要課題となる。波長分散は、パルスを構成している異なる波長成分が屈折率の周波数依存性により異なる速度で伝搬する現象であり、その現象により光パルス幅が増大し隣接パルスに干渉するため、伝送速度や伝送距離に大きな制約を与える。波長分散による伝送制限を克服する手段として、以下の二つの方法がある。
(1)波長分散による伝送品質の劣化に対して強く(分散耐力が大きく)、受信感度劣化が小さい信号フォーマットを用いる。
(2)伝送路の波長分散値を検出して等化する。
【0003】
信号フォーマットがRZ(Return-to-Zero)である光信号では、その光変調帯域が伝送速度の4倍以上であり、NRZ(Non-Return-to-Zero)光変調帯域は、伝送速度の2倍となる。このため、NRZ信号は、RZ信号と比較して伝送路の波長分散により波形歪が生じにくい利点がある。
【0004】
一方、RZ信号フォーマットは、NRZ信号フォーマットと比較して非線形光学効果の影響に耐力があるという報告がある(D.Breuer,et al.,"COMPARSION OF NRZ-AND RZ-MODULATION FORMAT FOR 40 GBIT/S TDM STANDARD-FIBRE SYSTEM",ECOC'96,vol.2.199-200,1996)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の光伝送システムでは、さらに1チャネルあたりの伝送速度を高速化し、かつSNR(Signal-to-Noise Ratio)を確保するためには、ファイバ入力パワを増加する必要があるが、両信号フォーマットとも光ファイバの非線形光学効果と波長分散との複合効果によりファイバ入力パワに対して受信感度が最小となる分散値(最適分散値)が零分散からシフトする問題が生じる。図7に、40Gbit/sのRZ、NRZ信号フォーマットにおける伝送後の受信感度が伝送前の受信感度から1dB劣化以内の分散範囲(本件では、この範囲を分散耐力とよぶ)をファイバ入力パワに対して計算した結果を示す。図中の線は、アイ開口劣化1dBの等高線である。横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸にファイバ入力パワをとる。伝送用光ファイバの分散値は、信号光波長に対して+2ps/nm/kmで、長手方向に一様であるとした。距離は、100kmで1線形中継伝送路を仮定している。図7に示すように、NRZフォーマット信号は、RZフォーマット信号と比較して分散耐力は大きいが、両フォーマットともファイバ入力パワの増加に伴い、最適分散値が零分散からシフトすることが分かる。これらの信号フォーマットを用いた伝送システムでは、導入するシステムのファイバ入力パワに応じ最適分散値を検出する必要がある。
【0006】
最適分散値を検出する手段としては、例えば、特願平10−284626号(本願出願時に未公開)に記載の受信信号の符号誤り率が最小になる、または受信信号のQ値が最大になるように受信装置または再生中継器の受信部内に設置された可変分散等化器の分散値を制御する方式がある。しかしながら、これらの方式は受信後の信号を識別後、符号誤り率を測定する処理を行うため回路が複雑になり装置が大規模化し、コスト面で問題がある。
【0007】
以上示したように前記従来技術の信号フォーマットでは、ファイバ入力パワに対して最適分散値がシフトする問題がある。さらに、零分散からシフトした最適分散値を検出する方式では、測定に要する時間が長く、構成が複雑化し大規模化しコストが高くなる問題がある。
【0008】
本発明は、このような背景に行われたものであって、1チャネルあたりの伝送速度を高速化した大容量伝送システムを経済的に実現することができる光伝送システムを提供することを目的とする。本発明は、保守運用の簡素化を可能にすることができる光伝送システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、最適分散値がファイバ入力パワに対してシフトせず零分散近傍に存在し、かつ分散耐力が大きい信号フォーマットを生成してデータ伝送に用いるとともに、簡単な構成で零分散を検出して分散等化を行うことにより、1波長あたりの高速化を実現する大容量の光伝送システムを実現することを特徴とする。
【0010】
本発明の光伝送システムは、試験信号にパルス毎の周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルスを用いた零分散検出法を用い、パルス毎の相対光位相がπの奇数倍またはその近傍にある交番位相反転パルス(Carrier Suppressed-RZ(CS-RZ))をデータ伝送用信号フォーマットに用いる。システム導入時に簡単な構成で零分散が検出でき、伝送路の総分散量を零分散に等化する。分散等化後、CS−RZフォーマットを用いてデータを伝送する。これにより、ファイバ入力パワに依らずに直ちに安定な通信を開始することができ、万が一、ファイバ入力パワがゆらいでも、分散による劣化を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、送信部と受信部との間で、モード切替情報の通信を行い、データ伝送モードまたは分散等化モードの切替を自動的に行い、分散等化モードが選択されているときには、分散等化を自動的に行うことにより、分散等化に必要な設計コストおよび人員コストを削減することができる。例えば、データ伝送モードに先立って、分散等化モードを自動的に選択するようにしておけば、自動的に、分散等化が行われた後にデータ伝送が行われるようにすることができる。
【0012】
また、本発明の光伝送システムを波長分割多重システムに適用することもできる。これにより、1チャネルあたりの伝送速度が高速な大容量伝送システムが実現され、経済化保守運用面の簡素化が可能になる。
【0013】
このときに、使用する波長数より少ない数の送信部および受信部内で上記交番チャープパルスを用いた零分散検出を行い、ある信号光波長に対応した送受信間の零分散検出結果から、他の信号光波長における分散補償量を推測して設定することにより、零分散検出のためのハードウェアを減らすことができ、経済化が可能になる。
【0014】
すなわち、本発明は、光信号を送信する送信部と、この光信号を受信する受信部と、この受信部と前記送信部との間に介挿された伝送用光ファイバとを備えた光伝送システムである。
【0015】
ここで、本発明の特徴とするところは、前記送信部には、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段と、パルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段とを備え、前記受信部には、分散量を変化させて分散補償を行う手段と、前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する手段と、その測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段とを備えたところにある。
【0016】
分散等化モードまたはデータ伝送モードのモード切替情報を前記受信部に通知する手段が設けられ、前記分散量を制御する手段は、前記通知する手段により通知されたモード切替情報が分散等化モードであるときには自動的に分散量を制御する手段を含む構成とすることもできる。このとき、データ伝送モードの選択に先立って自動的に分散等化モードを選択する手段を備えることが望ましい。
【0017】
また、本発明は、波長の異なる光信号をそれぞれ送信する複数の送信部と、自己に割当てられた波長の光信号を受信する複数の受信部と、前記複数の送信部から送信される波長の異なる光信号を合波する光合波器と、この光合波器から出力される光信号を波長の異なる複数の光信号に分離する光分波器と、この光分波器と前記光合波器との間に介挿された伝送用光ファイバとを備えた光伝送システムに適用することもできる。
【0018】
この場合の本発明の特徴とするところは、前記複数の送信部には、それぞれ、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段と、パルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段とを備え、前記複数の受信部には、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う手段と、前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する手段と、その測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段とを備えたところにある。
【0019】
あるいは、前記複数の送信部には、それぞれ、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段を備え、前記複数の送信部の内の一部の送信部には、それぞれ、前記交番位相反転パルス生成手段とともにパルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段を備え、前記複数の受信部には、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う手段を備え、前記複数の受信部の内の一部の受信部には、それぞれ、前記分散補償を行う手段とともに前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する手段を備え、この測定する手段の測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段を備えたところにある。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第一実施例)
本発明第一実施例を図1を参照して説明する。図1は本発明第一実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図である。
【0021】
本発明は、光信号を送信する送信部1と、この光信号を受信する受信部2と、この受信部2と送信部1との間に介挿された伝送用光ファイバ5とを備えた光伝送システムである。
【0022】
ここで、本発明の特徴とするところは、送信部1には、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成回路13と、パルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成回路14とを備え、受信部2には、分散量を変化させて分散補償を行う可変分散等化器21と、前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する変調周波数成分強度測定回路24と、その測定強度が最小となるように可変分散等化器21に設定する分散量を制御する分散量制御回路23とを備えたところにある。
【0023】
図1において送信部1は、光源11と、光源11からの出力光を電気信号により符号化する符号化回路12と、信号ビットレートに同期し、パルス毎の相対光位相差がπの奇数倍またはその近傍である交番位相反転パルスを生成する交番位相反転パルス生成回路13およびパルス毎の光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルスを生成する交番チャープパルス生成回路14と、生成された光信号を増幅し伝送用光ファイバ5に入力する光増幅器15から構成される。
【0024】
受信部2は、伝送後の信号を増幅する光増幅器26と、異なる分散値を生成する可変分散等化器21と、交番チャープパルスの変調周波数成分の強度を測定する変調周波数成分強度測定回路24と、その測定結果から可変分散等化器21の分散量を設定する分散量制御回路23と、伝送後のデータ信号を光/電気変換後、識別再生する光/電気変換及び識別再生器22とから構成される。
【0025】
なお、本図では、光源11からの出力光を符号化し光パルスを生成する構成を示しているが、光パルスを生成した後、入力クロック信号に同期した電気信号を用いて光パルスを生成する構成でもよい。
【0026】
本発明の伝送システムは、分散等化モードとデータ伝送モードの二つのモードがある。分散等化モードはシステム導入時に行い、分散等化モード終了後データ伝送モードヘ移行する。具体的な構成例を図2に示し、両モードの動作を説明する。
【0027】
図2では、交番位相反転パルス生成回路13および交番チャープパルス生成回路14として、一つのpush-pull Macn-Zehnder型LN変調器(LN-MZ変調器)を用いる。交番位相反転パルスと交番チャープパルスの両パルスは、この一つの変調器で生成される。ここでは、説明をわかりやすくするためにこの変調器をデータ信号変調器16、パルス生成変調器17と分けて示す。
【0028】
分散等化モード時には、データ信号変調器16への入力信号を無入力とする。ここでデータ信号変調器16の透過率が最大となる電圧にバイアス制御回路18で設定し、データ信号変調器16の過剰損失を抑圧してもよい。図8は交番チャープパルス生成の原理を説明するための図であるが、パルス生成変調器17では、交番チャープパルスを生成するためにパルス生成変調器17への1入力を無入力とし、図8に示すようにバイアス制御回路19を用いてパルス生成変調器17の透過率が最大となる電圧に設定する。生成された交番チャープパルスは、伝送路の分散に対して同符号の周波数シフトを持つパルス(入力変調周波数の1周期間隔毎に存在するパルス)が同様の分散の影響を受け、分散量の変化に対して入力変調周波数成分の強度が変化する。図9に分散に対する10GHz変調周波数成分強度の測定例を示す。横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸に10GHz成分強度をとる。10GHzのsin波を用いてLN変調器でCW光を変調し、交番チャープパルスを生成した。分散補償ファイバを用いて分散値を+600ps/nmから−600ps/nmまで変化させ、分散値に対する10GHz成分強度を測定した。
【0029】
図9に示すように、零分散時に強度が最小となる分散に対する周波数成分強度には周期性があり、その周期は変調周波数に依存する。可変分散等化器21の分散値を変化させて、変調周波数成分強度測定回路24で伝送後の交番チャープパルスの変調周波数成分強度を測定する。分散量制御回路23で可変分散等化器21の分散値を強度が最小となる分散値に設定する。設定後、分散等化モードを終了しデータ伝送モードに移行する。可変分散等化器21は、例えば、分散量が異なる分散ファイバを光スイッチを用いて切り替える構成により実現される。また、その他の構成としては、複数のファイバグレーティングを光スイッチで切り替えてもよいし、チャープドファイバグレーティングを温度または張力を加えてもよいし、PLC(K.Takiguchi,et al.,"Variable group-delay dispersion equalizer based on a lattice-form programmable optical filter",Electron. Lett.,Vol.31,No.15,pp.1240-1241,1995)の温度を変化させて分散量を変化させてもよい。変調周波数成分強度測定回路24は、例えばRFスペクトルアナライザを用いてもよいし、RFパワメータを用いてもよい。
【0030】
データ伝送モード時には、データ信号変調器16ヘデータ信号を入力する。パルス生成変調器17には、信号ビットレートに同期し、かつ信号ビットレートの1/2の周波数であるクロック信号を両極から入力する。また、図10はCS−RZ信号フォーマット生成の原理を説明するための図であるが、図10に示すようにバイアス制御回路19でパルス生成変調器17の透過率が最小となる電圧に設定し、CZ−RZ信号フォーマットを生成する。図11に40GHz、CS−RZ信号フォーマットの分散耐力をファイバ入力パワに対して計算した結果を示す。横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸にファイバ入力パワをとる。比較として、図7にRZ、NRZ信号フォーマットの計算結果を示す。伝送路条件は、図7に示した計算条件と同一である。
【0031】
図7に示すように、NRZでは分散耐力は大きいが、最低分散値が零分散からシフトし、かつ最適分散値にファイバ入力パワ依存性がある。一方RZでは、分散耐力が小さい。これらに対して、CS−RZではファイバ入力パワを+12dBmとしても最適分散値が殆どシフトせず零分散付近に存在し、且つ分散耐力がRZフォーマットと比較して大きいことがわかる。
【0032】
これにより、交番チャープパルスを用いて零分散を検出し、CZ−RZ信号フォーマットを用いてデータ伝送することで、構成が簡単な高速光伝送システムを実現できる。
【0033】
また、図3には、交番チャープパルスを生成する別の構成例を示す。図3に示す構成では、データ信号及び交番チャープパルス変調器34を用いて交番チャープパルスを生成する。
【0034】
分散等化モード時に、データ信号及び交番チャープパルス変調器34の1入力を無入力とする。データ信号及び交番チャープパルス変調器34に入力する信号は、モード切替回路36で生成した“0”、“1”繰り返しパタン信号を用いる。さらに、バイアス制御回路18で図8に示すようにデータ信号及び交番チャープパルス変調器34の透過率が最大となる電圧に設定して、交番チャープパルスを生成する。交番位相反転パルス変調器35への入力は無入力として駆動しない。ここで、バイアス制御回路19で、交番位相反転パルス変調器35の透過率が最大となる電圧に設定し、交番位相パルス変調器35の過剰損失を抑圧してもよい。図12(a)に生成した10GHz“0”、“1”パタン信号を示し、図12(b)にこの信号を用いて生成した交番チャープパルス光波形を示す。
【0035】
データ伝送モード時には、モード切替回路36でデータ信号を生成し、データ信号及び交番チャープパルス変調器34の両極へ入力して符号化を行う。
【0036】
図13(a)に生成した交番チャープ信号を用いて分散に対する10GHz成分強度を測定した結果を示し、図13(b)に40Gbit/sCZ−RZの各ファイバ入力パワにおける分散に対する受信感度を測定した結果を示す。図13(a)は横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸に10GHz成分強度をとる。図13(b)は横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸に受信感度をとる。伝送路はDSF280kmの3線形中継系で、各線形中継区間の分散値は、約+2.4ps/nm/kmである。受信部2内に分散補償ファイバを用いて総分散量を変化させて測定を行った。“0”、“1”信号パタンで生成した交番チャープパルスの変調周波数成分強度を測定することで伝送路の零分散が測定できること、さらにCZ−RZ信号フォーマットは、最適分散値が零分散でファイバ入力パワに対して最適分散値がほとんどシフトしないことを実証した。
【0037】
図3に示した方式では、モード切替回路36内の電気多重回路に入力する信号を変えることで、異なる繰り返し周波数の“0”、“1”信号パタンを生成することができる。そのため、信号ビットレートに依存しない交番チャープパルスを生成することができ、測定可能な分散範囲を拡大することができる。
【0038】
図14に10GHzで変調した交番位相反転パルスを用いて、分散に対する変調周波数(10GHz)成分の強度を測定した結果を示す。横軸に伝送路の総分散量をとり、縦軸に10GHz成分強度をとる。図13(a)に示した交番チャープパルスを用いた結果と比較し、分散に対する周期性は広いが、零分散近傍の強度変化に誤差が生じる。そこで、交番位相反転パルスを用いて広い分散範囲を検索し、交番チャープパルスに切り替えて零分散を検出する方式が有効である。具体的に図2を用いて説明する。
【0039】
分散等化モード時に、はじめにバイアス制御回路19によりパルス生成変調器17の透過率が最小となる電圧に設定して交番位相反転パルスを生成し、受信部2の可変分散等化器21の分散値を変化させて分散に対する変調周波数成分強度を測定する。測定後、バイアス制御回路19によりパルス生成変調器17の透過率が最大となる電圧に設定して交番チャープパルスを生成し、零分散近傍の分散に対する変調周波数成分強度を測定して零分散を検出する。零分散検出後、可変分散等化器21の分散値を設定し、データ伝送モードに復帰する。
【0040】
これは図3の光伝送システムにも適用できる。この場合には、バイアス制御回路18の電圧を制御して、データ信号及び交番チャープパルス変調器34の透過率が最小および最大となる電圧に設定して、“0”、“1”信号パタンで生成した交番位相反転パルスおよび交番チャープパルスを生成することができる。これにより、データ信号及び交番チャープパルス変調器34のバイアス電圧制御のみで測定可能な分散範囲を拡大できる。
【0041】
(第二実施例)
本発明第二実施例の光伝送システムを図4を参照して説明する。図4は本発明第二実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図である。本発明第二実施例では、分散等化モードまたはデータ伝送モードのモード切替情報を受信部2に通知する制御信号送受信回路40および41が設けられ、分散量制御回路23は、制御信号送受信回路40および41により通知されたモード切替情報が分散等化モードであるときには自動的に分散量を制御する。また、制御信号送受信回路40および41は、データ伝送モードの選択に先立って自動的に分散等化モードを選択する。
【0042】
すなわち、本発明第二実施例の特徴は、制御信号送受信回路40および41、制御用回線55を備えたことである。このように、送信部1と受信部2との間に制御用回線55を配線し、送信部1に制御信号送受信回路40を備え、受信部2に制御信号送受信回路41を備える。
【0043】
制御用回線55は、空間的に別ファイバを用いてもよいし、信号光波長と異なる波長を用いて波長分割多重してもよい。この構成により、分散等化モードとデータ伝送モードの切替や測定を自動的に行うことができ、試験の際の人員およびコストを削減することができる。
【0044】
(第三実施例)
本発明第三実施例を図5を参照して説明する。図5は本発明第三実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図である。
【0045】
本発明は、波長の異なる光信号をそれぞれ送信する送信部1−1〜1−nと、自己に割当てられた波長の光信号を受信する受信部2−1〜2−nと、送信部1−1〜1−nから送信される波長の異なる光信号を合波する光合波器50と、この光合波器50から出力される光信号を波長の異なる複数の光信号に分離する光分波器51と、この光分波器51と光合波器50との間に介挿された伝送用光ファイバ5とを備えた光伝送システムである。
【0046】
ここで、本発明の特徴とするところは、送信部1−1〜1−nには、それぞれ、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成回路13と、パルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成回路14とを備え、受信部2−1〜2−nには、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う可変分散等化器21と、前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する変調周波数成分強度測定回路24と、その測定強度が最小となるように可変分散等化器21に設定する分散量を制御する分散量制御回路23とを備えたところにある。
【0047】
このように、本発明第三実施例は、本発明第一実施例の光伝送システムを複数用いて波長分割多重伝送システムを構成するところにある。40Gbit/s/chの8波WDM伝送系においてファイバ入力パワに対する分散耐力を計算した結果では、NRZ信号フォーマットの場合に、ファイバ入力パワに対して各チャネルとも、最適分散値が零分散からシフトする。一方、CS−RZ信号フォーマットを用いた場合には、ファイバ入力パワに対して最適分散値が零分散からシフトしない。したがって、本発明第一および第二実施例と同様の分散等化を行うことができる。
【0048】
本発明では、波長分割多重システムにおいても簡易に分散等化が行えるため、伝送システムのさらなる大容量化が経済的に実規される。これにより、経済化、保守運用面の簡素化が可能になる。
【0049】
(第四実施例)
本発明第四実施例の光伝送システムを図6を参照して説明する。図6は本発明第四実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図である。
【0050】
本発明は、波長の異なる光信号をそれぞれ送信する送信部1−1〜1−nと、自己に割当てられた波長の光信号を受信する受信部2−1〜2−nと、送信部1−1〜1−nから送信される波長の異なる光信号を合波する光合波器50と、この光合波器50から出力される光信号を波長の異なる複数の光信号に分離する光分波器51と、この光分波器51と光合波器50との間に介挿された伝送用光ファイバ5とを備えた光伝送システムである。
【0051】
ここで、本発明の特徴とするところは、送信部1−1〜1−nには、それぞれ、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成回路13を備え、送信部1−1および1−nには、それぞれ、交番位相反転パルス生成回路13とともにパルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成回路14を備え、受信部2−1〜2−nには、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う可変分散等化器21を備え、受信部2−1および2−nには、それぞれ、可変分散等化器21とともに前記交番チャープパルスを受光し変調周波数成分の強度を測定する変調周波数成分強度測定回路24を備え、その測定強度が最小となるように可変分散等化器21に設定する分散量を制御する分散量制御回路23を一つ備えたところにある。
【0052】
本発明第四実施例の特徴は、信号光波長に対応する送信部1−1〜1−nおよび受信部2−1〜2−nの波長数より少ない数の送信部1−1および1−n、受信部2−1および2−nのみに交番チャープパルス生成回路14および変調周波数成分強度測定回路24を備えたところにある。図6には、波長分割多重の両端チャネルに対応する送信部1−1、1−n、受信部2−1、2−nのみに、交番チャープパルス生成回路14および変調周波数成分強度測定回路24を備えた構成を示す。
【0053】
分散等化モード時には、交番チャープパルス生成回路14および変調周波数成分強度測定回路24を備えた送信部1−1、1−nおよび受信部2−1、2−n間のみでその信号光波長に対する分散等化を行う。各信号光波長に対応する受信部2−1〜2−n内の可変分散等化器21の分散値は、分散等化を行った受信部2−1、2−nの測定結果を基に推定して設定する。
【0054】
伝送用光ファイバの波長分散値は波長毎に変化するが、その変化量は、波長に対してほぼ1次近似で求められる。40Gbit/s/chの8波WDM伝送系においてファイバ入力パワに対する分散耐力を計算した結果では、NRZ信号フォーマットは、ファイバ入力パワに対して各チャネル毎の最適分散値のシフト量が変化する。そのため、最適分散値は導入するシステムの送信パワに依存し容易に設定できない。一方、CS−RZ信号フォーマットは、ファイバ入力パワに対して最適分散はほぼ零分散からシフトしない。つまり、信号光の設定波長間隔から、分散スロープと波長間隔により最適分散値に求まる。
【0055】
例えば、波長分割多重の両端チャネルのみに分散等化モードを備えたシステムを供給することで大容量伝送システムを実現することができ、経済化が可能になる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光伝送システムは、簡易構成で実現できる交番チャープ信号を用いた零分散検出とファイバ入力パワに対して最適分散値が零分散から殆どシフトせず、かつ分散耐力の大きいCS−RZ信号フォーマットを用いた伝送方式を備えることにより、1チャネルあたりの伝送速度を高速化した大容量伝送システムを経済的に実現でき、保守運用の簡素化を可能にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図。
【図2】本発明第一実施例の光伝送システムの具体的構成を示す図。
【図3】本発明第一実施例の光伝送システムの他の具体的構成を示す図。
【図4】本発明第二実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図。
【図5】本発明第三実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図。
【図6】本発明第四実施例の光伝送システムの要部ブロック構成図。
【図7】40Gbit/s、RZ、NRZ、信号フォーマットにおける分散耐力をファイバ入力パワに対して計算した結果を示す図。
【図8】交番チャープパルスの発生原理を説明するための図。
【図9】交番チャープパルスを用いた零分散検出方法の実測結果を示す図。
【図10】交番位相反転パルスの発生原理を説明するための図。
【図11】40Gbit/s、1波長伝送系のCS−RZ信号フォーマットにおけるファイバ入力に対する分散耐力の計算結果を示す図。
【図12】10Gbps、“0”、“1”パタン信号の波形とその信号を用いて生成した交番チャープパルスの光波形を示す図。
【図13】1波長での10Gbps、“0”、“1”パタン信号により生成した交番チャープパルスを用いた零分散検出方法の実測値とその伝送路に対応する40Gbit/s、CS−RZ信号フォーマットの分散耐力の実測値を示す図。
【図14】交番位相反転パルスを用いて分散に対する10Gbps成分強度を測定した結果を示す図。
【符号の説明】
1、1−1〜1−n 送信部
2、2−1〜2−n 受信部
5 伝送用光ファイバ
11 光源
12 符号化回路
13 交番位相反転パルス生成回路
14 交番チャープパルス生成回路
15、26 光増幅器
16 データ信号変調器
17 パルス生成変調器
18、19 バイアス制御回路
21 可変分散等化器
22 光/電気変換及び識別再生器
23 分散量制御回路
24 変調周波数成分強度測定回路
34 データ信号及び交番チャープパルス変調器
35 交番位相反転パルス変調器
36 モード切替回路
40、41 制御信号送受信回路
50 光合波器
51 光分波器
55 制御用回線

Claims (5)

  1. 光信号を送信する送信部と、この光信号を受信する受信部と、この受信部と前記送信部との間に介挿された伝送用光ファイバとを備えた光伝送システムにおいて、
    前記送信部には、一つの push-pull
    Mach-Zehnder LN 変調器 (LN-MZ 変調器 ) を用いて、 LN-MZ 変調器を透過率が最小となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段と、LN-MZ 変調器を透過率が最大となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段とを備え、
    前記受信部には、分散量を変化させて分散補償を行う手段と、前記交番チャープパルスを受光し基本変調周波数成分の強度を測定する手段と、その測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段とを備えた
    ことを特徴とする光伝送システム。
  2. 分散等化モードまたはデータ伝送モードのモード切替情報を前記受信部に通知する手段が設けられ、前記分散量を制御する手段は、前記通知する手段により通知されたモード切替情報が分散等化モードであるときには自動的に分散量を制御する手段を含む請求項1記載の光伝送システム。
  3. データ伝送モードの選択に先立って自動的に分散等化モードを選択する手段を備えた請求項2記載の光伝送システム。
  4. 波長の異なる光信号をそれぞれ送信する複数の送信部と、自己に割当てられた波長の光信号を受信する複数の受信部と、前記複数の送信部から送信される波長の異なる光信号を合波する光合波器と、この光合波器から出力される光信号を波長の異なる複数の光信号に分離する光分波器と、この光分波器と前記光合波器との間に介挿された伝送用光ファイバとを備えた光伝送システムにおいて、
    前記複数の送信部には、それぞれ、一つの push-pull Mach-Zehnder LN 変調器 (LN-MZ 変調器 ) を用いて、 LN-MZ 変調器を透過率が最小となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段と、LN-MZ 変調器を透過率が最大となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段とを備え、
    前記複数の受信部には、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う手段と、前記交番チャープパルスを受光し基本変調周波数成分の強度を測定する手段と、その測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段とを備えた
    ことを特徴とする光伝送システム。
  5. 波長の異なる光信号をそれぞれ送信する複数の送信部と、自己に割当てられた波長の光信号を受信する複数の受信部と、前記複数の送信部から送信される波長の異なる光信号を合波する光合波器と、この光合波器から出力される光信号を波長の異なる複数の光信号に分離する光分波器と、この光分波器と前記光合波器との間に介挿された伝送用光ファイバとを備えた光伝送システムにおいて、
    前記複数の送信部には、それぞれ、一つ push-pull Mach-Zehnder LN 変調器 (LN-MZ 変調器 ) を用いて、透過率が最小となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎の相対光位相差をπの奇数倍またはその近傍に設定する交番位相反転パルス生成手段を備え、
    前記複数の送信部の内の一部の送信部には、それぞれ、前記交番位相反転パルス生成手段とともに、LN-MZ 変調器を透過率が最大となる電圧にバイアスし、光信号のビットレートに同期しパルス毎に光周波数シフトの符号が反転する交番チャープパルス生成手段を備え、
    前記複数の受信部には、それぞれ、分散量を変化させて分散補償を行う手段を備え、
    前記複数の受信部の内の一部の受信部には、それぞれ、前記分散補償を行う手段とともに前記交番チャープパルスを受光し基本変調周波数成分の強度を測定する手段を備え、
    この測定する手段の測定強度が最小となるように前記分散補償を行う手段に設定する分散量を制御する手段を備えた
    ことを特徴とする光伝送システム。
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