JP3727026B2 - 一分子酵素活性検出に用いられるマイクロチャンバと1000fL以下の液滴を調製する方法 - Google Patents

一分子酵素活性検出に用いられるマイクロチャンバと1000fL以下の液滴を調製する方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小容量の溶液を封入するためのマイクロチャンバに係り、より詳細には、生化学、細胞生物学又は生物物理学その他の研究の分野に於ける細胞又は生体分子試料等の現象・反応の観察或いは測定又はその他の微小粒子に関する観察及び測定において又はそのような細胞、分子又は微小粒子に関する反応のための容器として用いるのに適したマイクロチャンバに係る。更に詳細には、一つのチャンバが封入し隔離する溶液又は液滴の容量は、フェムトリットル(fL:×10 -15 リットル)のオーダーであり、光学顕微鏡下に種々の観察又は測定に適したマイクロチャンバに係る。
【0002】
【従来の技術】
光学顕微鏡により生きた(活性を有する)タンパク質、核酸などの生体分子の個々の運動を直接的に観察できるようになって以来、主として、光学顕微鏡を用いた測定により、生体分子の分子レベルの機能や活性を調べることが行われている。既に、光学顕微鏡において(その分解能は、可視光の波長(数百nm)程度であるにもかかわらず、)、蛍光色素一分子を直視することが可能となっている(下記の非特許文献1−3参照)。また、アクトミオシンの滑り運動(非特許文献1、2、4)、F1ATP分解酵素の回転(非特許文献3、5、6)、RNAポリメラーゼの回転(非特許文献7)など、所謂「モータータンパク質」と総称されるタンパク質又は酵素の一分子又は数分子(個々の分子が識別できる態様にて)の運動や分子間の結合力などの種々の特性の測定が、光学顕微鏡(特に、蛍光顕微鏡、微分干渉顕微鏡、位相差顕微鏡)下で盛んに行われ、それら分子の運動のメカニズム(例えば、分子構造がどのように変化するか、そのためのエネルギーをどのように取得し、どのように運動に変換するのかなど)が明らかにされつつある。当業者の間では、上記の如きタンパク質・核酸等その他生体分子(生体分子等)の分子を、個々識別した態様で観察し、それらについて種々の測定を行う手法のことを「一分子測定」と呼称することがあり、本明細書においても、以下、かかる用語を用いる。
【0003】
上記の生体分子等に関する光学顕微鏡下で行われている一分子測定において、生体分子等の試料は、生きた状態、即ち、活性を保持した状態である必要があるため、所定の水溶液(試料溶液又は試料液滴)中に存在した状態で取り扱われる(この点、電子顕微鏡による観察や結晶構造解析とは異なる。)。光学顕微鏡のステージに配置される際には、試料液滴は、種々の工夫があるものの、基本的には、従前の光学顕微鏡の観察で用いられたプレパラートと同様に、スライドガラス又はカバーガラス上に液滴として置かれ、必要な場合、試料液滴の上に更にもう一枚のカバーガラスを置いて、ガラス平面の間にて挾持された状態にされる。個々の対象物となる分子を識別するためには、それら分子に蛍光色素、金コロイド又は微小粒子(ポリスチレンビーズ、磁気ビーズなど)が付加され、光学顕微鏡の分解能では見ることのできない大きさの分子の存在及びそれらの運動を可視化するといったことが行われる。ただし、観察されるべき対象物は、一分子又は数分子の生体分子等であり、それら一つ一つが識別できる態様にて観察できるようにするため、水溶液中の対象物(タンパク質)濃度は、通常の生化学的な実験(例えば、蛍光光度計や分光光度計においてキュベットを用いた測定など:以下「バルク測定」と呼ぶ。)に比して、極めて低くなっている(例えば、約10pM(ピコモーラー:10-9mol/L)程度)。
【0004】
一方、上記の如き、「一分子測定」とは、別に、生化学的、化学的又は医学的実験において、所謂MEMS、NEMS技術(マイクロ・ナノマシン技術)を用い、マイクロ流体システムを利用することも盛んに行われるに到っている。マイクロ流体システムの技術においては、半導体回路の製造技術に用いられているエッチング技術やフォトリソグラフィ技術などを用いて、種々の形態の微細な流路構造を有するマイクロチャンバが構成されている。それらのマイクロチャンバは、微小体積の流体にて種々の生化学的又は化学的反応をさせるための化学反応容器として用いられている。マイクロ流体システムの製作のための材料としては、シリコン、ガラス等の硬質の物質が用いられる他、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などの種々の高分子樹脂又はシリコンゴムなどの軟質の物質が用いられている(例えば、非特許文献8−9)。かかるマイクロ流体システムについての発明は、例えば、下記の特許文献1−3等において記載されており、種々のマイクロチップ、バイオチップとして用いることが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−85961号公報
【特許文献2】
特開2001−281233号公報
【特許文献3】
特開平10−337173号公報
【非特許文献1】
サセ外4名、バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)、1995年8月、69巻、2号、p.323-328
【非特許文献2】
フナツ外4名、ネイチャー(Nature)、1995年4月6日、374巻、6522号、p.555-559
【非特許文献3】
アダチ(Adachi)外6名、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、2000年6月20日、97巻、13号、p.7243-7247
【非特許文献4】
ニシザカ(Nishizaka)外4名、ネイチャー(Nature)、1995年9月21日、377巻、6546号、p.251-254
【非特許文献5】
ノジ(Noji)外3名、ネイチャー(Nature)、1997年3月20日、386巻、6622号、p.299-302
【非特許文献6】
ヤスダ(Yasuda)外3名、セル(Cell)、1998年6月26日、93巻、7号、p.1117-1124
【非特許文献7】
ハラダ(Harada)外5名、ネイチャー(Nature)、2001年1月4日、409巻、6816号、p.113-115
【非特許文献8】
ジェッサミン・エム・ケー・エヌジー(Jessamine M. K. Ng)外3名、エレクトロフォレシス(Electrophoresis)、2002年、23巻、p.3461-3473
【非特許文献9】
ジェイ・クーパー・マクドナルド(J. Cooper McDonald)外1名、アカウンツオブケミカルリサーチ(ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH)、2002年7月、35巻、7号、p.491-499
【非特許文献10】
ミクロス・グラツル(Miklos Gratzl)外4名、アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)、1999年7月15日、71巻、14号、p.2751-2756
【非特許文献11】
ホンウェン・ル(Hongwen Lu)外2名、アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)、1999年11月1日、71巻、21号、p.4896-4902
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の一分子測定において、生体分子等の、酵素としての基質に対する活性、例えば、酵素に於ける基質の反応速度及び反応速度の変化を調べることは、殆ど行われていない。例外的に、モータータンパク質など、その分子の運動が可視化されているものについての基質に対する活性は、その運動の速度又は運動時に分子の出す力の変化を測定することにより、その運動時における試料中の基質(例えば、ATP、GTP)の濃度と、光学顕微鏡下の測定とは別に従前のバルク測定、即ち、多数の分子が存在する状態又は個々の分子が識別できない状態における測定により得られた酵素反応に関わる各種の定数(例えば、基質の酵素に対する解離定数Kd)とを用いて、ある程度、推測することは可能である。しかしながら、光学顕微鏡下で、滑り又は回転運動の見えない、例えば、基質の化学反応を触媒するだけの酵素については、運動が検出できない以上、その活性を個々の分子が識別できる態様にて測定することはできない。また、運動が可視化されているモータータンパク質の基質に対する活性についても、バルク測定での、即ち、多数の分子の総計として得られた、いわば、統計学的に得られる反応定数等が用いられるが、そのような統計的な値と、個々の分子における値とが、同一のものであってよいか否かは、当業者においてコンセンサスが得られていることではなく、現状の一分子測定により正しく活性に関する知見が得られているか否かは明らかではない。
【0007】
従前のバルク測定においては、酵素の活性は、当業者において良く知られている如く、所定量の酵素と基質が存在する試料において酵素反応を開始し、その後の基質の消費量若しくは酵素反応により得られた生成物の量又はそれらの濃度の変化を経時的に測定することにより検出される(例えば、ATP分解酵素の活性は、所定濃度の酵素と基質であるATPとを混合して反応させた後、酵素反応生成物(リン酸Pi)の量又は濃度の経時的な変化を測定することにより、酵素の反応速度及びその変化(又は反応定数又は酵素に対する基質の解離定数)を算出する。)。従って、もし一分子測定においても、個々の酵素分子ごとに、その基質の消費量又は生成物の生成量を測定することができれば、個々の酵素分子の活性を、その分子の運動が可視化されているか否かによらず、検出することができることとなる。
【0008】
基質量又は生成物量の変化は、バルクの測定においては、種々の方法で測定されるが、酵素が活性を保持した状態で、かかる基質量又は生成物量の変化を測定する際には、基質又は生成物の濃度に感受性のある各種の生化学試薬、例えば、特定の物質に結合する蛍光色素や化学発光分子などが有利に用いられている。これらの生化学試薬は、一般に、基質又は生成物、即ち、検出物の濃度に依存して検出物と結合することにより、蛍光の波長又は強度が変化し或いは発光するところ、かかる試薬における反応の変化が大きいのは、検出物の濃度が、その検出物と試薬との解離定数(通常、1対1の結合をするため、単位は濃度である。)の近傍であり、一般的に(試薬によって、かなりの差があるものの)、殆どの試薬においては、感度良く検出できる検出物の濃度範囲は、μM(×10-6mol/L)のオーダーである。従って、一分子測定においても、酵素がμMのオーダーにて基質を消費し或いは生成物を生ずることができれば、酵素の基質の反応速度及びその変化を見積もることが可能となる。
【0009】
しかしながら、従前の一分子測定において利用されているスライドガラス又はカバーガラスで試料液滴を挾持する態様では、液滴の体積が大きすぎて、酵素分子によってμMのオーダーにて基質又は生成物の濃度を変化させることができず、従って、酵素反応による基質消費量又は生成物の濃度又は量の変化を測定することは、実質的に不可能である。
【0010】
光学顕微鏡等を用いて、一分子測定を行う場合には、通常、一回の測定時間は、秒のオーダーから数分程度までである。従って、その測定時間内に、試薬にて検出可能な基質又は生成物の濃度の変化、即ち、μMのオーダーの基質又は生成物の濃度変化が生ずることが望ましい。酵素が基質を消費する速度は、毎秒10〜100分子程度(毎分600から6000分子程度)であると言われており、従って、或る試料液滴中において、1個の酵素分子が、秒のオーダーから数分までの間にμMオーダーの基質の濃度の変化を生じせしめるには、試料の体積は、fLのオーダー又はそれ以下である必要がある。(例えば、酵素反応開始後1分間のうちに、生成物の濃度が1μMとなるよう生成されることを要求したとすると、試料液滴の体積は、1μM=v[分子数/分]/(NA[分子数/mol]×Vol[L])、ここで、vは、毎分あたりの酵素の基質の消費数あり、NAは、1molのアボガドロ数6.0×1023であり、Volは、試料液滴の体積L(リットル)である。)により見積もられ、v=6000と仮定すると、Vol=10fLとなる。)。しかも、上記の如き、基質の濃度変化を測定するための試料液滴は、基質が外部から追加されることの無いように、また、別の酵素における酵素反応の結果に影響を受けないように、酵素分子ごとに隔離された、即ち、閉じられた系である必要がある。
【0011】
従前の一分子測定の操作に於いて取り扱い可能な試料液滴の最小量は、1μL程度が限界であり、従って、従前の一分子測定の手法では、到底、基質又は生成物の濃度を、試薬の解離定数近傍にて(そのオーダーで)変化させることはできない。基質又は生成物の変化量を増大するためには、酵素濃度を増大すれば可能であるが、そうなると、そもそも、個々の酵素分子を識別する態様にて、個々の酵素分子が消費する基質量及び生成する生成物量を検出できない(なお、従前の一分子測定においては、個々の酵素分子が識別できるようにする必要があるため、試料液滴中の基質に対する酵素の濃度が、バルク測定の場合に比して非常に低く、基質の濃度変化は実質的に無視されていた。)。
【0012】
ナノリットル(nL:×10-9L)、ピコリットル(pL:×10-12L)又はfLのオーダーの閉じた微小液滴を調製し、その液滴内で、化学的又は物理化学的な反応現象を観察する手法が、上記非特許文献10及び11等に記載されている。それらの方法においては、有機溶媒中に水溶液を噴霧することにより、前記オーダーの水溶液の液滴が形成されるようになっている。同文献においては、物質の拡散現象などの実験が成功裡に行われているが、水溶液を噴霧する際に、個々の微小液滴の体積にばらつきが大きく、従って、各液滴の体積を制御することが困難であるので、液滴内の基質の絶対量又は絶対濃度の変化を測定することは難しいと思われる。また、液滴の調製において、噴霧により、液滴内のタンパク質等が強い剪断力を受ける可能性があり、また、有機溶媒を通過する際に、タンパク質等が有機溶媒に接触することにより、タンパク質が変性してしまう可能性がある。また、親油性の高い物質は、外部の有機溶媒へ溶け込んでいってしまう可能性が有り、完全な閉じた系を構成しない場合がある。更に、液滴は、有機溶媒中に懸架される状態にあり、従って、液滴の形態自体が不安定であり、振動などにより、液滴同志が接触すると、液滴自体が融合してしまう可能性があり、液滴を担持する有機溶媒の容器の移動をする場合などは、極めて慎重に行う必要があろう。更にまた、液滴を噴霧して液滴の体積を適切なものとするためには、噴霧する際の圧力調節や噴霧される溶液の粘性の調節など考慮し、やや熟練した技術を必要とするものと考えられる。
【0013】
従って、上記の如き、酵素反応による基質又は生成物の濃度変化、或いはその他の化学反応による物質濃度の変化などの測定する目的で、fLオーダーの閉じた液滴を調製又は封入することができ、或いは、封入操作において、液滴中の物質を実質的に変性させることがない(或いは少ない)マイクロチャンバの如き(液滴の形態が安定した)装置、並びに、そのようなマイクロチャンバを調製する方法があれば、従来不可能であった種々の実験及び測定が可能となり便利である。また、かかる装置の調製が、比較的容易に又廉価に行われることが好ましい。
【0014】
かくして、本発明の解決しようとする一つの課題は、fLオーダーの体積の溶液又は試料液滴を封入することのできるマイクロチャンバを提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの課題は、上記の如きマイクロチャンバであって、封入される試料液滴が実質的に閉じた系を構成している、即ち、実質的に、液滴中の溶質の出入りがなく、或いは、溶液中の溶質を変性させるおそれのない又はおそれの少ないマイクロチャンバを提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの課題は、上記の如きマイクロチャンバであって、一分子測定に適した、或いは、光学顕微鏡下における実験に適したマイクロチャンバを提供することである。
【0017】
本発明の更にもう一つの課題は、上記の如きマイクロチャンバであって、個々の酵素分子を識別した態様での酵素分子の活性の測定その他の種々の化学反応のための反応容器として用いることのできるマイクロチャンバを提供することである。
【0018】
本発明の更にもう一つの課題は、上記の如きマイクロチャンバであって、マイクロチャンバの調製自体が比較的容易で、費用のかからないマイクロチャンバを提供することである。
【0019】
本発明の更にもう一つの課題は、上記の如きマイクロチャンバであって、使用中の操作が極めて簡単であるマイクロチャンバを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、固体材料で構成され、液滴を封入することができ該液滴により充填可能な少なくとも一つの容器部を有するマイクロチャンバであって、容器部の容量が1000fL以下であることを特徴とするマイクロチャンバにより達成される。
【0021】
上記の本発明によれば、液滴を封入する容器部の容積が1000fL以下であり、しかも、液滴は、有機溶媒中に懸架される如き型式ではなく固体材料で形成されたマイクロチャンバに安定的に保持され、従って、試料中の生体分子等が有機溶媒に曝されることなく、また、液滴を流体中に浮遊させた状態に比して、マイクロチャンバの使用中の操作又は取り扱いは極めて容易になる(例えば、有機溶媒中の液滴のようにチャンバを動かす際の振動によって液滴の変形したり、隣接する液滴同志が融合したりすることはない。)。試料液滴は、容器部内に封入されて、実質的に、外部から隔離されるので、試料溶液を1000fL又はそれ以下の体積あたりに酵素一分子若しくは数分子が存在するよう調製し、かかる試料の液滴を本発明のマイクロチャンバの容器部に封入することにより、酵素一分子若しくは数分子を隔離した状態で、一分子若しくは数分子の個々の反応による基質又は生成物の濃度変化を測定することができるようになる。また、体積が1000fL以下であるから、通常の一分子測定の測定時間中に、酵素一分子で、現存の各種の生化学試薬により検出可能のオーダー、即ち、μMオーダーの基質又は生成物の濃度変化を生じせしめることが可能となる。かくして、運動が可視化されているか否かにかかわらず、酵素活性の一分子測定が可能となる。勿論、酵素分子の一分子測定に限らず、その他の極めて微量においてしか観測できないその他の化学反応における物質の濃度の変化等の諸現象の観察及び測定に有利に用いることもできる。
【0022】
なお、一つのマイクロチャンバにおいて、複数の容器部が構成されていてもよく、その場合には、容器部は、アレイ状に配列されてよい。ただし、重要なことは、個々の容器部は、互いに分離され隔離されている必要がある。そのような複数の容器部を含むマイクロチャンバも本発明の範囲に属すると理解されるべきである。
【0023】
上記の本発明の構成の一つの局面においては、特に容器部の外部と容器部内に封入された液滴の間において液滴中の溶質及び溶媒の出入りが実質的にないことが好ましい。既に述べた如く、容器内の物質の反応を観察及び測定する場合において、容器部外部から液滴内の酵素又はその他の分子等の溶質が浸入し又は個々の容器部から溶質が浸出すると、正確な溶質、例えば生成物の濃度の変化等を追従することが難しくなる。従って、上記の如く、液滴中の溶質及び溶媒の出入りが実質的になく、容器部が物質的に閉じられた系を構成していることが好ましい。ただし、ここで「実質的に」液滴中の溶質及び溶媒の出入りがないとは、容器部内で行われる測定における結果に影響を及ぼさない限度で溶質及び溶媒の出入りがないと理解されるべきである。
【0024】
上記の本発明の構成のもう一つの局面において、本発明のマイクロチャンバは、第一の部材と第二の部材を含み、少なくとも第一又は第二の部材が、少なくとも一つの窪みを有し、第一及び第二の部材を貼り合わせることにより、窪みが容器部を構成するようになっていてよく、或いは、第一の部材と第二の部材と第三の部材を含み、第二の部材が、少なくとも一つの孔を有し、第一及び第三の部材の間に第二の部材を挟んで、第一、第二及び第三の部材を互いに貼り合わせることにより、孔が容器部を構成するようになっていてよい。
【0025】
上記の如く、第一及び第二(又は第三)の部材にいずれかに、容器部を構成する窪み又は孔を構成し、しかる後、それらの部材を上述の如く貼り合わせるのみで、容易に、本発明のマイクロチャンバ、即ち、容器部の容量が1000fL以下であることを特徴とするマイクロチャンバが構成することができる。本発明のこの局面によれば、液滴の体積は、孔又は窪みにより定められ、有機溶媒中に液滴を噴霧し懸架する場合に比して、液滴のばらつきは、実質的に小さく若しくは無くなることとなる。また、部材を貼り合わせるだけで、所望のマイクロチャンバを構成することができ、使用者が特にマイクロチャンバの調製に熟練を要することはない。
【0026】
特に、上記の局面におけるマイクロチャンバに液滴を封入する際には、第一の部材、又は第二の部材若しくは第三の部材に試料溶液を垂らし、残りの部材と貼り合わせるだけで、容器部内に試料液滴を封入することができる。驚くべきことに、上記の如き、液滴の封入方法の場合、窪み又は孔に空気が残留するおそれがあると予想されるところ、以下に詳細に説明する実験例において示されている如く、容器部内に空気は、一切残留しなかった。また更に驚くべきことに、容器部内から液滴の漏洩も観測されなかった。更に、第二の部材の表面が疎水性を有していることが好ましい。以下に詳細に示す実験例を参照して理解される如く、複数の容器部を有するマイクロチャンバを第一の部材、又は第二の部材若しくは第三の部材を貼り合わせる際に、容器部と容器部との間に液滴の残部が、ほとんど残留することなく、容器部内に液滴が封入される。また、互いに貼り合わされる部材の少なくとも一方が柔軟性を有する場合、貼り合わせを、より成功裡に行うことができる。
【0027】
上記の本発明においては、マイクロチャンバの容器部の少なくとも一部又は第二の部材は、水に対し実質的に不透過性を有する高分子樹脂から構成されてよく、また、高分子樹脂が空気に対して透過性を有するものであってよい。本発明のマイクロチャンバは、上記の構成を形成することのできる任意の材料、例えば、ガラス、シリコン等の材料から構成されてよいが、好適には、高分子樹脂から成形される。その際、フォトリソグラフィ法により形成された鑄型を用いることが好適であることが見出されている。前記の如き性質を有する高分子樹脂を用いることにより、封入された液滴の漏洩はなく、また、空気透過性を有するものを用いることにより、空気のみ容器部外へ透過して消散され、容器部内に空気が残留することを確実に回避することができる。
【0028】
上に述べたマイクロチャンバの材料として、好適には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であり、容器部の少なくとも一部又は第二の部材は、PDMSにより形成されてよい。勿論、マイクロチャンバ全体がPDMSにより形成されていてもよく、そのようなマイクロチャンバは、本発明の範囲に属する。
【0029】
上記の本発明のマイクロチャンバにおいて、容器部が誘導加熱により加熱される物質からなる部材を含み、電磁波により加熱されるようになっていてもよく、また、容器部の周囲に容器部の内部とは連通していない流路を有し、該流路内に冷媒が流通されることにより、容器部内の温度が調節可能であるようになっていてよい。
【0030】
本発明の容器部の容積は、1000fL以下であり、従って、容易に外気温に応じて、温度が変化する可能性がある。従って、所望の温度を維持するべく、上記の如き、加熱機構又は温度調節機構が備えられていてよい。逆に、容器部の体積が非常に小さいという構成により、上記の加熱機構又は温度調節機構を採用すると、毎秒数十度の温度ジャンプを容器部内の液滴に生じせしめることも可能である。
【0031】
本発明のマイクロチャンバは、光学顕微鏡下の観察又は測定に用いるものに限定されるわけではないが、かかる用途の目的では、実質的に透明な材料から構成されていることが好ましい。このようにすることにより、容器部の内の状態を直視することが可能となり、また、酵素活性等の測定のみならず、実験が順調に進んでいるか否かを検証することも容易となる。また、光ピンセットを用いた分子操作を行うこともでき、ケージド化合物を用いた反応を行うこともできる。
【0032】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0034】
図1には、本発明の第一の実施形態であるマイクロチャンバ10の斜視図(A)、容器部12の拡大された上面図(B)及び側方断面図(C)が示されている。同図から理解される如く、この実施形態のマイクロチャンバは、平坦な表面を有するカバーガラス又はスライドガラスであってよい第一の部材14上に、窪み16を有する第二の部材18を、窪み16の開いた面が第一の部材14の面するよう貼り合わせることにより構成され、窪み16と第一の部材14の表面により容器部12が形成される。一つの窪み16の開口直径は、例えば、約2〜40μmであってよく、深さは、約400〜2000nmであってよい。従って、容器部の容積は、窪みの寸法を適宜調節することにより、約1〜2500fLの間で自在に調節することができる。窪みの間隔は、4〜100μm程度であってよく、第二の部材の全体の大きさは、汎用の光学顕微鏡の観察用のカバーガラス(例えば、24×36mm)に載置されうる任意の大きさ、例えば、10×10mmから24×36mmであってよいが、これに限定されない。第二の部材18は、好適には、高分子樹脂であってよく、より好適には、PDMSであってよいが、それらの材料に限定されるものではなく、本発明のマイクロチャンバを形成可能な材料であれば、当業者のとって公知の任意のものであってよい。また、第一の部材は、市販の光学顕微鏡のプレパラート用のカバーガラスまたはスライドガラスであってよく、あるいは、第二の部材と同様の高分子樹脂又はPDMSであってよい。容器部12の内部には、例えば、後述の図2Cに示される如き方法により、試料液滴を充填することができる。
【0035】
図2に、図1のマイクロチャンバの製作方法及びマイクロチャンバ内へ試料液滴を封入する方法の一つの実施形態が模式的に例示されている。
【0036】
まず、窪み16を有する第二の部材18の製作においては、通常のフォトリソグラフィ法を用いて、第二の部材18の鑄型20を形成する。より詳細には、ガラス基板21上に金の薄膜22を蒸着し、金の薄膜上をフォトレジストにてコーティングし、所定のパターンのクロム膜を有するガラス(図示せず)をフォトレジストコート上に載置し、紫外線を照射する。次いで、紫外線が照射されたフォトレジストを除去し、かくして、フォトレジスト膜24が金膜に残ったもの、即ち、フォトレジストをパターニングしたものが鑄型とされる(図2A)。図から容易に理解されるように、フォトレジストが残留する部分が窪み16に対応する鑄型部分であり、従って、その寸法は、形成されるべき窪み16と実質的に同一の寸法を有するべきである。
【0037】
次いで、PDMSと硬化剤を重量比10:1で混合させた液状PDMSを調製し、その液状PDMS26を鑄型20上に適用し(図2B)、その状態でPMDSを硬化させる。この過程において、硬化を促進させるために、PMDSを担持した鑄型は、約80℃に設定したホットプレート上に載置されることが好ましい。かくして、約60分の後、PMDSの硬化が完了し、PMDSからなる第二の部材18が鑄型20から剥がされる。なお、この実施形態においては、PMDSは、金の薄膜上に載置された状態であり、その場合には、PMDSの部材は、何等化学的な処理を施すことなく、手にて容易に剥がすことができる。
【0038】
鑄型20は、繰返して第二の部材の成形に利用できるので、同一の仕様の第二の部材を量産することが可能である。また、窪み16に対応するフォトレジスト膜24の形状は、フォトリソグラフィー法において精度よく制御できるので、窪み16の形状及び寸法は、自在に制御され、ばらつきの少ない多数の同一の形状及び寸法の窪み16(即ち、容器部12)を形成することができる。図に示されている窪みの形状は、円柱であるが、その他の形状であってもよい。
【0039】
マイクロチャンバに試料液滴を封入する際には(図2C)、カバーガラス(第一の部材)上に適当な量の、例えば、1〜3μLの試料液滴28を置いて適当に広げた後、その上に第二の部材が貼り合せられ、図2Dの如く、窪み16とカバーガラス14の面から構成される容器部12内に液滴が封入される。部材を貼り合せるためには、何等、接着剤等の物質を用いる必要はない。
【0040】
驚くべきことに、第二の部材18を試料液滴の載った第一の部材に貼り合せる際、窪み16、即ち、容器部12内の空気を追い出す操作を何等行うことなく、容器部内12は、空気が残留せず、試料液滴により充填された状態となる。理由は、明らかではないが、PDMSが水には不透過性を示すが、空気に対しては、ある程度の透過性を有するためであるとも考えられ、或いは、容器部12内の空気量自体が極めて微量であるため、部材が貼り合わされると同時に空気が液滴中に溶解したためとも考えられる。本実施形態において用いられるPDMSに空気の透過性があるか否かは、明らかではないが(水に対して不透過性を有することは知られている)、水に対し不透過性を有し、空気に対して透過性を有する材料が用いられれば、より確実に、何等、特別な操作をすることなく、液滴を容器部内に保持したまま、容器部内12から空気を除去することが確実に達成される。
【0041】
また、更に、驚くべきことに、第一及び第二の部材が貼り合わされる前、第一の部材上には、第二の部材の窪み16のパターンに関係無く、試料液が存在するにもかかわらず、貼り合わせた後、隣接する容器部12の間に液滴が残留することがない。理由は明らかではないが、PDMSの表面が疎水性を呈することにより、第二の部材18が第一の部材14上の試料液滴に接触すると、第二の部材18の凸部、即ち、窪み16以外の部分において、試料液滴は、該凸部の表面によりはじかれ、窪み16内に流入することとなると考えられる。
【0042】
かくして、第一の実施形態のマイクロチャンバにおいては、試料液滴が載置された第一の部材に第二の部材を貼り合わせるだけで、複数の、同一体積のfLオーダーの液滴を形成し、互いに隔離した状態で保持することが可能となる。
【0043】
図3は、本発明のマイクロチャンバの更なる実施形態を示す。
【0044】
図3Aは、第一の実施形態を更に改良したものであり、第一の部材上にニッケル蒸着膜30がパターニングされており、誘導加熱により、容器部12内の温度を上昇させることができるよう構成されている。より詳細には、図3Aの例においては、マイクロチャンバ10の容器部12内に試料液滴を封入した後、当業者において任意の方法により発生された電磁場(例えば、光学顕微鏡のステージ32に電磁コイル34を備え、これにより発生される電磁場(図3B))中にマイクロチャンバを配置することにより、ニッケル蒸着膜30において、渦電流が発生し、熱が発生されることとなる。容器部の容積は、fLオーダーであり、極めて小さいので、容器部内の液滴において、毎秒数十度の温度ジャンプを発生させることができ、このことは、以下に説明する如き、酵素の活性測定を行う上で、非常に有用である。
【0045】
図4A及び4Bは、第一の実施形態の別の改良例であり、第二の部材18の容器部12の間に流路38を設けた例を示している。流路38は、好ましくは、図示の如く、隣接する容器部12の間に延在するよう設けられ、流路内には、所望の温度に調節された冷媒が流通せしめられる。図3の説明において述べた如く、容器部内の液滴の体積が極めて小さいので、比較的速やかに容器部12内の温度を変更することができる。流路部材は、第二の部材と同様の態様により、形成されてよい。
【0046】
図5Aは、本発明のマイクロチャンバの第二の実施形態の模式図を示している。この実施形態においては、第一の部材14と、第三の部材40とで、孔42を有する第二の部材18を、挾持した態様にて構成される。第二の部材18は、図1と同様の方法により製作されてよい。このマイクロチャンバの容器部12に液滴を封入する際には、第一又は第三の部材のいずれか一方と第二の部材とを貼り合せた後、第一、第二又は第三の部材の一方に試料液滴を載置し、しかる後に、他方が試料液滴の上に載置される。図1及び図2に示されている第一の実施形態と同様に、貼り合せる際に他に特別な操作をしなくとも、容器部12内に空気が残留せず、また、隣接する容器部12の間に液滴が残留しない点は同様である。第三の部材40は、第一の部材又は第二の部材と同様の材料で形成されてよい。
【0047】
図5Bは、図5Aの実施形態の改良例であり、図中、孔42の上部にそれよりも小さい開孔44が形成されている。この実施形態においては、図5Aの例と同様に試料液滴を封入した後、測定中に第三の部材を除去することにより、新たな物質又は溶液を容器部12内に導入することができるようになっている。第三の部材を除去する際、容器部12内が負圧になることを避けるべく、第三の部材を柔軟な部材により形成し、図5Cに示す如く、端部から該部材を湾曲しつつ第ニの部材と分離できるようになっていることが好ましい。
【0048】
実験例1
直径0.1μmのプラスチックビーズを含む試料液滴を本発明のマイクロチャンバの容器部内に封入し、ブラウン運動を観察することにより、容器部内に液滴が封入されており、且、ビーズの大きさ程度の物質が容器部の内外を出入りできないよう閉じられた溶液空間が構成されていることを確認した。実験手順は、以下の通りである。マイクロチャンバは、図1に示されている実施形態のものを用いた。第二の部材としては、直径4μm、深さ2μmの窪みが4μm間隔で配列したアレイパターンを有するものを図2において説明した手順により作成した。PDMSは、ダウコーニング社のSYLGARD(登録商標)を用いた。液滴の封入は、図2Cに関連して説明された手順により封入した。マイクロチャンバ内のビーズは、モレキュラープローブス(Molecular Probes)社の蛍光ビーズ(Carboxylate-Modified Microsphere, Red, 0.1 micro m)を用い、蛍光顕微鏡(オリンパス社:IX70)により、100倍の油浸の対物レンズを用いて観察した。
【0049】
図6Aは、本発明のマイクロチャンバの容器部の光学顕微鏡像である。同図においては、明るい(白い)概ね円形の像(左上の印で示されている。)がビーズの蛍光像であり、やや明るい円形の枠の如く見えているもの(縦4行×横4列の計16個が示されている。)が、容器部の縁である(容器部の像は、位相差顕微鏡像である。)。この顕微鏡像から、概ね全てのビーズが容器部内に封入されていることが理解されるであろう。図6Bは、図6Aの如く容器部内にトラップされたビーズの重心の約2分間にわたる軌跡50を示す(軌跡は、顕微鏡像を慣用のビデオカメラで記録し、一連のビデオフレームにおいてビーズの像の輝度重心の位置(図中の各点)により決定した。)。図中の円52は、容器部の概ねの外郭を示す。同図から理解される如く、ビーズのブラウン運動は、容器部内においてのみに限られており、従って、容器部内に液滴が封入されていることを示されている。また、ビーズは、円52内においてランダムに運動しており(軌跡が、円の中心に集中しているのは、対物レンズの焦点から外れる際にビーズの像が中心に偏るためである。)、円外へ流れる傾向は見られなかった。このことは、容器部の内外を横切る水の流れがなく、液滴が外部から隔離されていることを示す。
【0050】
実験例2
本発明のマイクロチャンバの容器部に、水溶性の蛍光色素サルフォローダミンG(モレキュラープローブス社:分子量は552.59)を溶解した試料液滴を封入し、容器部の内外において、試料液滴中の溶質の出入りが実質的にないことを確認した。実験手順は、以下の通りである。マイクロチャンバは、実験例1と同様に製作されたものと同様である。容器部内には3μMのサルフォローダミンGを含む試料液滴を実験例1と同様の手順により封入した。その後、マイクロチャンバを蛍光顕微鏡に設置し、隣接した複数ある容器部(図6A参照)のうち、特定のもののみに励起光を照射し、その容器部の蛍光強度が約30%以下になるまで、色素を褪色させた。その後、それまで励起光を当てていない(褪色させていない)容器部にも励起光をあて、褪色させた容器部の蛍光強度と褪色させていなかった容器部の蛍光強度を経時的に測定した。
【0051】
図7Aは、初めに褪色させた容器部(a)及び褪色させていない容器部の(b)の絶対蛍光強度の時間変化をそれぞれ示している。図中、同図から理解される如く、初めに褪色させた容器部及びその他の容器部の蛍光強度は、励起光を当てることにより、徐々に褪色されていくところ、初めに褪色させた容器部の蛍光強度が増大することがなかった。このことは、初めに褪色させた容器部内への隣接する容器部からの色素の流入がないということを示しており、即ち、容器部に封入された溶質が漏洩せず、容器部の内外において、溶質の出入りがないことを示している。図7Bは、初めに褪色させた容器部(a)及び褪色させていない容器部(b)のそれぞれについて、蛍光測定開始時の蛍光強度で規格化した、相対蛍光強度の時間変化を示している。図から理解される如く、初めに褪色させた容器部(a)と褪色させていない容器部(b)との相対強度変化は、ほぼ完全に一致している(僅かにずれているが、測定精度からすると、驚くべきほどの一致である)。この結果からも、互いに隣接する容器部の間で、色素、即ち、液滴中の溶質の流通が実質的に無いことが理解される。
【0052】
実験例3
本発明のマイクロチャンバの容器部に、回転運動を観察することのできるF1ATP分解酵素を含有する試料液滴を封入し、F1の回転運動を観察することにより、酵素分子が変性することなく、活性を有する状態で容器部の内に封入されることを確認した(F1は、回転モーターの如き殻と回転軸からなる構造を有し、ATPを酵素反応により分解することにより、モーターの回転軸に相当するγドメインが殻内で回転する。)。実験手順は、以下の通りである。マイクロチャンバは、実験例1と同様に製作されたものと同様である。実験例1と同様の方法により6nM F1、1mM ATP、 50mM MOPS(pH7.0)、50mM KClからなる試料液滴を容器部内に封入し、容器部内を位相差顕微鏡下で観察した。F1の調製は、上記非特許文献5−6に記載されている方法により行い、F1の回転は、F1のγドメインにビーズ(直径0.3μm)が二つ結合したものを付加し、そのビーズが回転することにより確認した。図8は、その位相差顕微鏡像であり、ビーズは、容器部内の矢印Aにて示された点を中心に矢印Bに示す方向に一方向に回転することが確認された。F1に付加したビーズが一方向に回転したということは、F1等の酵素分子が容器部内の表面に安定的に着座し、変性することなく、ATP分解活性を有していることを示しており、従って、本発明のマイクロチャンバの容器部内に、酵素分子を、変性することなく、活性を保った状態で安定的に封入することができることを示唆している。
【0053】
本発明のマイクロチャンバの適用例
上記の如く、本発明のマイクロチャンバは、容器部内にfLオーダーの液滴を容器部外と隔離した状態で封入することができるので、かかる容器部内に、酵素と、基質と、基質又は生成物に感受性のある生化学試薬とを含む試料液滴を、例えば、1の容器部に酵素一分子が存在するように封入し、その後、酵素反応を開始することにより、生化学試薬の基質又は生成物に対する応答から、酵素反応による基質又は生成物量の変化を経時的に測定し、酵素分子1個の活性の測定を行うことが可能となる。
【0054】
以下の適用例は、ATP分解酵素であるF1ATP分解酵素の一分子の酵素活性の検出する場合のものである。実験内容は、以下の通りである。
【0055】
マイクロチャンバは、図1−5に例示された任意のものが用いられてよい。容器部に封入される試料液滴の組成は、4μM PBP(リン酸結合タンパク質)、6nM F1(ATP分解酵素)、10μM ATPであってよい。
【0056】
ATP分解酵素は、周知の如く、その酵素反応によりATPをADPとリン酸Piに分解するところ、PBPは、解離定数Kd=0.1μMにて、Piに結合するタンパク質であり、本適用例で用いられるものは、Pi結合部位に蛍光色素クマリンが修飾されている。PBPにPiが結合すると、クマリン基の蛍光強度は、約10倍上昇するので、酵素反応により、生成物であるPiが生成され、その濃度が上昇することにより、容器部内のクマリンの蛍光強度が増大することとなる。その蛍光強度の増大から生成物の増加量が算出され、F1のATPの分解速度、即ち、酵素としての活性を検出することが可能となる。
【0057】
上記のF1の濃度によれば、1個の容器部当りに一つのF1分子が封入されることとなる。F1分子が容器部に存在していることは、F1分子の一部を任意の蛍光色素又はビーズにてラベルすることにより光学顕微鏡下で検出することができる。F1のATPを分解する速度は、バルクの測定によれば、10μMのATPの存在下では、毎秒約30個であるといわれている。
【0058】
試料調製後の実験手順は、以下の通りである。
a)マイクロチャンバへの試料液滴の封入 図2Cに記載の手順により、F1を含む上記試料液滴がマイクロチャンバに封入される。本発明のマイクロチャンバにおいては、一旦、液滴が封入されると、容器部内の物質の出し入れはできない。従って、上記試料の調製及び封入操作は、氷上で行い、計測開始まで酵素反応ができるだけ進まないようにする必要がある。
b)マイクロチャンバの蛍光顕微鏡への設置 クマリンの励起波長のピークは、425nmであり、蛍光波長のピークは、465nmである。かくして、慣用の蛍光顕微鏡用の水銀ランプを励起光源とし、慣用のフィルタセットを用いて、クマリンの蛍光強度の測定を行うことができる。
c)蛍光強度変化の測定 上記試料においては、PBPの濃度が4μMであるので、Piの濃度が4μMに達すると、蛍光強度は飽和する。マイクロチャンバの容器部の容積を1fLとして、上記のバルク測定で得られたF1のATPの分解速度から見積もると、Piの濃度は、約200秒で1μM増大し、蛍光強度は、約3倍強増大する。即ち、数分の間にて、生成物の濃度が、試薬の検出可能な濃度範囲において変化し、精度よく、生成物の生成量を経時的に算出することができる。かくして、蛍光強度の時間変化率を測定することにより、生成物Piの生成速度が算出され、F1一分子のATP分解酵素としての活性を検出することができることとなる(従来の一分子測定において用いられていた試料液滴の体積は、1μL程度あり、その場合、蛍光強度の時間変化率は、100万分の1になってしまう。)
【0059】
なお、当業者にとって、上記の酵素活性測定の手法は、任意の酵素、タンパク質又はその他の生体分子等の反応活性の測定において用いることができることは、理解されるべきであり、本発明の範囲に属する。その際、基質又は試薬等も、反応活性を調べたい酵素分子に対応して任意に選択されてよいことは理解されるべきである。
【0060】
【発明の効果】
従来の酵素反応活性の検出は、バルク測定によるものであり、即ち、多数の酵素分子の反応活性の統計である。他方、実際の細胞内の生じている種々の現象は、一分子又は数個の酵素分子における酵素反応が、きっかけになって生ずる場合も多く、その一分子又は数個の酵素分子における酵素反応が損なわれることにより、生ずる病気又は疾患も有り得る。従って、1個の酵素分子又は数個の分子の酵素反応活性の検出が可能となることにより、その酵素分子に関連した病気又は疾患の原因の解明に役立つと考えられる。また、個々の酵素分子の反応活性と、個々のそれらの分子の運動又は構造変化とを対応させることにより、酵素反応における分子構造の変化のメカニズムが明らかにされ、そのメカニズムをナノマシンテクノロジーの分野等に応用することができる。このように、1個の酵素分子の酵素活性を測定できることは、種々の分野において有用であるところ、本発明のマイクロチャンバによれば、1個の酵素分子の酵素活性が、慣用の光学顕微鏡、生化学試薬等と組み合わせることにより、比較的簡単に検出できるようになる。
【0061】
本発明の特徴において、特記されるべきことは、外部から隔離された状態でfLオーダーの液滴を封入すること、換言すれば、fLオーダーの液滴を閉じ込めることに成功した点である。従来の技術において述べた如く、従前より、MEMS、NEMS技術を用い、種々の流路構造を有するマイクロ流体システムが構成されていたが、そのいずれも、流体の流入口及び流出口を有するものであり、本発明者の知る限りにおいて、従来において、fLのオーダーで、しかも空間内に空気を残さずに、液滴をトラップし隔離した状態にできるものは存在していない。
【0062】
本発明のマイクロチャンバの第一又は第二の部材は、上記の如く、フォトリソグラフィー法により鑄型を形成し、かかる鑄型を基に高分子樹脂成形する態様により形成されてよいが、その他の手法、たとえば、ガラス等の硬質の材料にエッチング等の処理によって窪みを形成する、といった別の任意の方法で形成されてもよい。このことに関連して、マイクロチャンバの製作において、上記の如き、フォトリソグラフィー法等を含むMEMS、NEMS技術が採用されることにより、マイクロチャンバの容器部の寸法を揃えることができるので、マイクロチャンバにおいて体積のばらつきのない複数の液滴、即ち液滴のアレイを調製することができる。換言すれば、本発明のマイクロチャンバによれば、複数の体積のそろったfLオーダーの液滴を調製することが可能となったといえる。
【0063】
更に、本発明の特徴として特記されるべきことは、本発明のマイクロチャンバによれば、複数の体積のそろったfLオーダーの液滴の調製が極めて容易に、即ち、熟練した技術を要せずに為される点である。図2に示されている実施形態に関連して説明した如く、一旦、第二の部材を形成した後は、第一の部材に試料液滴を載置し、その後、第二の部材を貼り合わせるだけで、複数の体積のそろったfLオーダーの液滴の調製される。しかも、液滴は、閉じた系を構成しているので、液滴内で生じた化学的な反応による物質の量の変化を測定する目的に適したものである。
【0064】
本発明は、酵素一分子の酵素活性を検出する目的で発明されたものであるが、本発明のマイクロチャンバは、その他の生化学、細胞生物学又は生物物理学の分野に於ける実験装置に適用できることは、理解されるべきである。例えば、本発明の複数の容器部を有するマイクロチャンバにおいて、第一の部材にDNA又はRNAを貼り付け、容器部にタンパク質合成活性を有する溶液を封入すると、各容器部内には、各々の容器部の第一の部材の表面に貼り付けられた核酸に対応するタンパク質、即ち、別々のタンパク質が合成され、トラップされることとなる。かくして、本発明のマイクロチャンバをタンパク質解析のハイスループットの検出チップとして用いることも可能となる。
【0065】
以上の説明は、本発明の実施の態様に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易になされることは、理解されるべきであり、本発明は、上記に例示された実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施形態によるマイクロチャンバの模式的な斜視図(A)と、容部の拡大上面図(B)と、(B)の線C−Cに沿って見た断面図(C)である。
【図2】図1のマイクロチャンバの製造過程と、容器部に液滴を封入する過程の模式図。(A)は、フォトリソグラフィー法により形成された第二の部材のための鑄型の模式的な断面図であり、(B)は、(A)の鑄型にPDMSを適用した状態の断面図であり、(C)は、試料液滴を載置した第一の部材に(B)で作成された第二の部材を貼りつける際の過程の模式図であり、(D)は、容器部に液滴を封入した状態のマイクロチャンバの模式的な断面図である。
【図3】(A)第一の部材に誘導加熱可能なニッケル膜が蒸着されている図1と同様のマイクロチャンバの模式図。(B)電磁コイルを備えた光学顕微鏡のステージとその上に載置されたマイクロチャンバの模式図。
【図4】冷媒が流通する流路を有する図1と同様のマイクロチャンバの模式的な拡大された上面図(A)と、(A)の線B−Bに沿って見た断面図(B)。
【図5】本発明の別の実施形態によるマイクロチャンバの模式的な拡大断面図(A)と、第二の部材の上部かに開口部が設けられたマイクロチャンバの模式的な拡大断面図(B)と、(B)のマイクロチャンバにおいて、第三の部材を除去する過程を模式的なマイクロチャンバの拡大断面図。
【図6】(A)実験例1のビーズを含む試料液滴を封入したマイクロチャンバの容器部の光学顕微鏡像。ビーズは、蛍光ビーズであり、像は、蛍光観察と位相差観察を同時に行って得られたものである。スケールバーは8μm。(B)ビデオカメラで撮影されたブラウン運動を一つのビーズの軌跡を示す図。図中、各点は、各ビデオフレームにおけるビーズの位置を示す。かかるビーズの位置は、ビーズの画像からビーズの輝度の重心の位置として決定した。
【図7】(A)実験例2の蛍光色素を含む試料液滴が封入された容器部の絶対蛍光強度の時間変化。(B)実験例2の蛍光色素を含む試料液滴が封入された容器部の、各容器部の蛍光測定開始時の蛍光強度を1として規格化した相対蛍光強度の時間変化。
【図8】マイクロチャンバの容器部内に閉じ込められたF1にラベルされたビーズの位相差光学顕微鏡像。中心部の黒い像は、位相差顕微鏡の光学系により生ずる影である。
【符号の説明】
10…マイクロチャンバ
12…容器部
14…第一の部材
16…窪み
18…第二の部材
20…鑄型
28…試料液滴
30…ニッケル蒸着膜
34…電磁コイル
38…冷媒の流路
40…第三の部材
50…ビーズの軌跡
52…容器部の輪郭

Claims (4)

  1. 固体材料で構成され、液滴を封入することができ該液滴により充填可能な少なくとも一つの容量が1000fL(フェムトリットル)以下の容器部を有するマイクロチャンバにして、
    第一の部材と第二の部材を含み、
    少なくとも前記第一又は第二の部材が少なくとも一つの窪みを有し、前記第一及び第二の部材を貼り合わせることにより、前記窪みが前記容器部を構成し、
    前記容器部の少なくとも一部が水に対し実質的に不透過性を有し且空気に対して透過性を有する高分子樹脂から構成され、
    互いに貼り合わされる前記第一又は第二の部材のうちの少なくとも一方の表面が疎水性を有し、
    これにより、前記第一及び第二の部材の間に広げられた液体を挟んで前記第一及び第二の部材をそれぞれの部材の表面を直に貼り合わせることにより、前記容器部内に空気が残留することなく液滴が充填され封入されること
    を特徴とするマイクロチャンバ。
  2. 請求項1のマイクロチャンバであって、前記高分子樹脂がポリジメチルシロキサンであることを特徴とするマイクロチャンバ。
  3. 請求項1のマイクロチャンバであって、前記第二の部材が少なくとも一つの孔を有する部材と第三の部材とを含み、前記窪みが前記孔を有する部材と前記第三の部材とが貼り合わされることにより形成され、更に、前記容器部が、前記第二の部材と前記第一の部材とを互いに貼り合わせることにより、前記孔が前記容器部の一部を構成することを特徴とするマイクロチャンバ。
  4. 実質的に外部から隔離され前記外部と溶質及び溶媒の出入りのない1000fL以下の液滴を調製する方法であって、
    第一の部材と第二の部材とを準備する過程にして、前記第一又は第二の部材の少なくとも一方が少なくとも一つの容量が1000fL以下の窪みを有し、互いに貼り合わされると前記窪みが少なくとも一部が水に対し実質的に不透過性を有し且空気に対して透過性を有する高分子樹脂から成る容器部を構成し、互いに貼り合わされる前記第一又は第二の部材のうちの少なくとも一方の表面が疎水性を有している第一の部材と第二の部材とを準備する過程と、
    前記第一及び第二の部材の間に広げられた液体を挟んで前記第一及び第二の部材をそれぞれの表面が互いに直に接触するよう貼り合わせて前記窪みを閉鎖して形成される前記容器部内に空気が残留することなく液滴を充填し封入する過程と
    を含むことを特徴とする方法。
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