JP3726691B2 - 赤外線ガス分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種排気ガスや大気中に含まれるガスの成分を測定するための赤外線ガス分析装置に関し、特に内燃機関の燃焼室の排ガスの CO2等の濃度の測定に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、試料ガス中に含まれる特定成分(CO,CO2等)の 濃度を検出する方法として、赤外線が試料ガス中を通過した際の吸収量を測定する方法がある。この方法は、試料ガスを充填し赤外線を通過させる容積部(以下、分析セルと称す)の圧力および温度の影響で試料ガスの濃度が変化し測定精度が悪化することが知られており、従来技術では圧力および温度の変化の小さい場所から試料ガスを吸引するか、圧力および温度を別の容器または配管中で安定させてから試料ガスを分析セルに吸入する方法が、一般に用いられている。
また、特開平6−249779号公報に開示されたガス分析計のように、試料ガスの圧力と温度を測定し、検出した特性成分の濃度を補正することにより、温度や圧力の変化による濃度測定値への影響を除去し、高精度な測定を可能とする等の方法が、公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来技術では、試料ガスの圧力、温度変化が極めて短時間に発生し、かつその変化量が大きく、高圧、高温であり、更に試料ガスの濃度も短時間で変化する、例えば内燃機関における圧縮・燃焼行程中の燃焼室のガスの分析等においては、従来の試料ガスの圧力と温度を安定させてから試料ガスを吸入して分析を行う方法を採用した場合、応答性が数百msのオーダーしか確保できないため、数msのオーダーで変化する試料ガスの濃度変化を検出することはできない。仮に圧力および温度を測定し、それらより検出濃度を補正しても、装置の構成上必ず発生する試料ガスの検出遅れ等を考慮し、かつ圧力および温度が短期間で大きく変化する状況下で、試料ガス濃度の検出精度を確保することは極めて困難である。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、高圧、高温で、かつ圧力・温度・試料ガス濃度が不安定な状態にある試料ガスを数msのオーダーの応答性で検出し、かつ測定部位内の圧力および温度の変化を極力分析セルに伝えないようにして、高精度の検出を行うことが可能な赤外線ガス分析装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された赤外線ガス分析装置を提供する。
請求項1に記載の赤外線ガス分析装置は、分析セルの試料ガスの出口を大気開放とし、大気圧より高い圧力の試料ガスを測定部位から分析セルに自然吸入すると共に、分析セルに試料ガスを導入する入口の口径aと分析セルから試料ガスを排出する出口の口径bとにおいて、出口側の口径bを入口側の口径aよりも大きくしたものであり、これにより分析セル内の試料ガスの置換を良くし、数msのオーダーの応答性で試料ガスを検出可能とし、且つ分析セル内での試料ガスの抜けをよくすることができ、試料ガスの圧力変動を抑制できるようにしている。
【0006】
請求項2の赤外線ガス分析装置は、分析セルからの試料ガスの出口側の口径bをその入口側の口径aの3倍以上と規定したものであり、これにより、試料ガスの圧力変動は効果的に抑制できる。
【0007】
請求項3の赤外線ガス分析装置は、測定部位から分析セルの入口までをつなぐ配管と分析セルとを一定の温度に保つ温調手段を設けたものであり、これにより、分析セル内での試料ガス温度を一定に保つことができる。
このように、請求項1〜3の手段を採用することで、試料ガスの圧力変動及び温度変化を分析セルに極力伝えない構造とすることができ、圧力及び温度が不安定な試料ガスが分析セルに導入されることによる精度悪化が防止でき、内燃機関における燃焼室内のガスのような試料ガスの圧力変動・温度変化が極めて短時間で大きい状況下でも、高精度なガス分析を実現できる。
【0008】
請求項4の赤外線ガス分析装置は、測定部位の試料ガスの導入部から分析セルの入口までをつなぐ配管の内径dを、0.4〜1mmに規定したものであり、これにより、高い応答性を確保できるようにしている。
請求項5の赤外線ガス分析装置は、測定部位と分析セルとをつなぐ配管の長さlが、その内径dの500倍以上であることを規定したものであり、試料ガスの温度変化を1%以下に抑えることができ、分析セル内の温度を一定に保つ上で好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の赤外線ガス分析装置について図面に従って説明する。図1は、本発明の赤外線ガス分析装置の全体構成を示しており、この赤外線ガス分析装置を、例えば内燃機関の圧縮燃焼行程の試料ガスの濃度を検出する場合に適用した1つの実施例を示している。測定部位である内燃機関の燃焼室14から試料ガスは、配管1を通って分析セル2に導入される。分析セル2は、試料ガスを充填する分析部21と、配管1からの試料ガスを分析部21へと導通する入口22と、分析部21からの試料ガスを大気に排出する出口23とを有している。
【0010】
分析セル2の片側には、赤外光を発生する光源3が配置され、他方の側には、特定波長の光量を検出する検出手段が設けられている。この検出手段は、一定波長帯の赤外光を透過する光学フィルタ8と、この光学フィルタより透過した赤外光を受光し、その吸収量を検出する赤外線センサ9とよりなる。光源3と分析セル2との間には、光源3で発生した赤外光を分析セル2へ集光する集光レンズ4と、赤外光の透過・遮断を一定間隔で繰り返して断続光を発生させるチョッパー6とが配置されている。チョッパー6は、円周上にスリット61をもつ円盤であり、モータ5により回転することで、集光レンズ4で集光した赤外光の透過・遮断を一定間隔で繰り返して断続光を発生する。
【0011】
分析セル2は、その両側端部に分析部21を形成するためにガラス10が配置されている。ガラス10は分析部21に赤外線を透過する。このガラス10は、分析成分の吸収波長域で減衰の小さい材質から成っている。
分析セル2と検出手段との間には、更に集光レンズ7が配置されている。したがって、チョッパー6、分析部21及びガラス10を介して透過してきた赤外光は、集光レンズ7で集光されて検出手段で受光する。
【0012】
測定部位であり燃焼室14の導入部と分析セル2の入口とをつなぐ配管1及び分析セル2の外側には、温調手段としてのヒータ11が設けられる。このヒータ11は、分析セル2に設けられた熱電対12で測定した温度にしたがって、分析セル2および配管1内部の温度を一定に保つように、温調回路13でヒータ11の電源をオン・オフ制御される。
【0013】
上述のように構成された赤外線ガス分析装置は、以下のようにしてガス濃度を計測する。機関の燃焼室14内の試料ガスは、圧縮・燃焼行程では高圧であるため、配管1を通って導入され、分析セル2の分析部21を通り、大気へと排出される。試料ガスの濃度検出は、光源3、集光レンズ4、チョッパー6を介して分析セル2に導かれた赤外光が分析部21を通過した際に、赤外光が分析したい成分によって特定の波長帯域が減衰することを利用することによって行われる。光学フィルタ8は一定波長帯域の赤外光のみを透過するものを用い、赤外線センサ9で検出した光量の減少によってガス濃度を計測する。
【0014】
図2は、試料ガスとして CO2を用いた時の赤外線センサ9での検出出力とCO2 濃度との関係を示すグラフである。この場合、光学フィルタ8として4.3±0.1μmの波長帯域の赤外光を透過するものと用いている。図2に示すように、CO2 濃度は、赤外線センサ9の出力と相関があり、出力の減少によってCO2 濃度を得ることができる。
【0015】
図3は、本発明の実施の形態の赤外線ガス分析装置の分析セル2及び配管1を更に詳しく説明するための部分拡大図である。図3に示されるように、測定部位(燃焼室)14から分析セル2へ試料ガスを吸入する経路内で断面積が最小となる部位の口径は、分析セル2の入口22の径aであり、分析セル2から試料ガスを排出する経路内で断面積が最小となる部位の口径は、分析セル2の出口23の径bである。また、分析セル2の分析部21の内径をcとすると、a,b,c間には、a<b<cの関係がある。
【0016】
図4は、(1)分析セルの出口径/入口径の比を1;即ちb/a=1、とした場合と、(2)分析セルの出口径/入口径の比を3.5、即ちb/a=3.5、とした場合における測定部位の圧力と分析部21の圧力及び分析成分としてCO2を検出したときのCO2濃度との関係を示すグラフである。この場合、測定部位から入力される CO2濃度は9.9%の一定濃度のガスを使用している。図4(1)のグラフから、分析セルの出口径bと分析セルの入口径aとがb/a=1の関係(即ち、a,bが同口径)にある場合、入力される測定部位の圧力が高くなると分析セル2の分析部21の圧力が上昇し、試料ガスは一定濃度であるにもかかわらず検出した CO2濃度が変化する。この検出濃度の変化をなくすには、分析部21内の圧力上昇を抑制すれば良く、その方法は、図4(2)に示されるように、分析セルの出口径bを分析セルの入口径aより大きくすることによって実現でき、分析部の急激な圧力上昇を抑制でき、検出濃度の変化を抑えることができる。即ち、b/a=3.5とした場合、測定部位の圧力が高くなっても分析部の圧力はほとんど変らない。
【0017】
図5は、分析セルの出口径bと分析セルの入口径aの比(b/a)と測定部位の圧力を0から0.9MPa まで変化させたときの検出濃度の変化率との関係を示すグラフである。図5のグラフから見られるように、分析セルの出口径bを分析セルの入口径aの3倍以上とすることで圧力の影響による検出濃度の変化を抑えることができる。
【0018】
また、図3に示される測定部位から分析セル2の入口までをつなぐ配管1の内径d及びその長さlは、応答性と分析部21の温度を一定に保つ上で好適な寸法が存在する。これらの関係が図6と図7に示されている。図6は、配管1の内径dと分析成分としてCO2 を用い、CO2 濃度を0%から9.9%へと変化させたときの10%−90%の応答性との関係を示すグラフである。図6から、配管1の内径dを小さくすると管内の壁面抵抗が大きくなり、流量低下が大きいため応答性が低下し、変曲点である配管内径dは、0.4mmであり、配管内径dを0.4mm以上とすることで高い応答性を確保することができることが解る。また、配管内径dが大きいと精度悪化の要因になるデッドボリュームが増大するため、極力小さい方が良い。図6においては、配管内径dが1mm以上ではほとんど応答性は向上しないことから、配管1の内径dは、0.4〜1mmが好適である。
【0019】
図7は、配管1の内径d、長さlと、温調制御の設定温度と分析部21の温度との温度差の関係を示すグラフである。この場合、温調制御の設定温度は、60℃(333K)である。図7から、温度変化を1%以下の3℃以下に抑えることのできる配管長さlは、配管内径dが0.4mmのとき配管長さlは200mmで、配管内径dが1mmのとき配管長さlは500mmである。従って、この関係を配管長さlと配管内径dの比(l/d)で表すと、l/d≧500が好適である。
なお、本発明は、内燃機関の燃焼室内におけるガス分析を例にとって説明しているが、試料ガスの圧力変動・温度変化が極めて短時間で、かつ大きい他の機器のガス分析にも利用可能なものである。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の赤外線ガス分析装置によれば、大気圧より高い圧力の試料ガスを直接分析セルに自然吸入する構成とすることによって、分析セル内の試料ガスの置換を良くすることができ、数msのオーダーの応答性で試料ガスを検出することができ、また、圧力および温度が不安定な試料ガスが分析セルに導入されることによる精度悪化については、試料ガスの圧力変動・温度変化を分析セルに極力伝えない構造とすることで、これを防止し、更に測定部位と分析セルとをつなぐ配管を応答性を確保し、分析セル内の温度を一定に保つ形状とすることによって、内燃機関における燃焼室内のガスのような試料ガスの圧力変動・温度変化が極めて短時間で大きい状況下でも高精度なガス分析を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の赤外線ガス分析装置の全体構成を説明する図である。
【図2】赤外線センサの検出出力とCO2濃度との関係を示すグラフである。
【図3】図1中の分析セル及び配管を詳細に示す部分拡大図である。
【図4】(1)分析セル出口径b/入口径aの比が1の場合と、(2)分析セル出口径b/入口径aの比が3.5の場合における、測定部位の圧力と分析部の圧力および検出CO2濃度との関係を示すグラフである。
【図5】測定部位の圧力を変化させたときの分析セル出口径bと分析セル入口径aの比(b/a)とCO2の検出濃度の変化率との関係を示すグラフである。
【図6】CO2 濃度を0%から9.9%へと変化させたときの、配管内径dと10%−90%応答性の関係を示すグラフである。
【図7】配管の内径d、長さlと、温調制御の設定温度と分析部の温度との温度差の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…配管
2…分析セル
3…光源
4,7…集光レンズ
5…モータ
6…チョッパー
8…光学フィルタ
9…赤外線センサ
10…ガラス
11…ヒータ
12…熱電対
Claims (5)
- 試料ガスが連続的に流れる分析セルの片側に赤外線光源が、他方の側に特定波長の光量を検出する検出手段を備えた赤外線ガス分析装置において、
前記分析セルの試料ガスの出口を大気開放とし、大気圧より高い圧力の試料ガスを測定部位から前記分析セルに自然吸入すると共に、前記分析セルから試料ガスを排出する経路内で断面積が最小となる部位の口径bを、測定部位から前記分析セル内へ試料ガスを吸入する経路内で断面積が最小となる部位の口径aよりも大きくすることを特徴とする赤外線ガス分析装置。 - 前記分析セルから試料ガスを排出する経路内で断面積が最小となる部位の口径bを、前記測定部位から前記分析セルへ試料ガスを吸入する経路内で断面積が最小となる部位の口径aの3倍以上とすることを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析装置。
- 前記測定部位から前記分析セルの入口までをつなぐ配管および前記分析セルを一定の温度に保つ温調手段を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線ガス分析装置。
- 前記測定部位の試料ガスの導入部から前記分析セルの入口までをつなぐ配管が、その内径dが0.4〜1mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外線ガス分析装置。
- 前記測定部位の試料ガスの導入部から前記分析セルの入口までをつなぐ配管が、その長さlが内径dの500倍以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外線ガス分析装置。
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