JP3726345B2 - トラクタの前輪駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラクタの前輪駆動装置に関るものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
トラクタ等において、操向旋回時に旋回径に拘らず一定の増速比で前輪を増速する構成では、旋回径が大きいときに前輪の回転速度が過ぎたり、旋回径が小さいときは逆に過ぎることがある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前輪1と後輪2とを駆動して走行する四WD走行形態のトラクタにおいて、
トラクタの車体5下側に、操向ケース33,33を介して左右前輪1,1を取付けるフロントアクスル13と、ステアリングハンドル3の操向操作に連動して左右揺動自在に支持するアーム18を設け、
前記アーム18に、ミッションケース7から出力される動力を伝動ベルト26,29を介して受ける変速軸27と、同軸27に沿って移動自在の複式割プーリ30を設けると共に、同複式割プーリ30を挟んで左前輪1へ動力を伝達するベルト31と、右前輪1へ動力を伝達するベルト32とを架け渡し、前記ステアリングハンドル3の操向によりアーム18を左右に移動させて旋回外側の前輪1へ動力を伝達するベルトの回転を増速し、旋回内側の前輪1へ動力を伝達するベルトの回転を減速させる構成としたトラクタの前輪駆動装置の構成とする。
【0004】
【発明の効果】
トラクタ、ステアリングハンドル3を操向操作して旋回するときは、このステアリングハンドル3の操向角に応じて左右の前輪1が駆動される。旋回外側の前輪1は、このステアリングハンドル3の操向角が小さく旋回径が大きいときは、ベルト31(32)による増速比は小さく、逆に操向角が大きく旋回径が小さいときは、増速比は大きくなってより高速駆動される。また他側の前輪1は、前記複式割プーリ30の移動により減速される。
【0005】
このように、ステアリングハンドル3の切り角に応じて、左右各前輪1,1の駆動比を変えるものであるから操向旋回径に応じた適切な回転速度に維持でき、安定した、円滑な操向旋回を行うことができる。
【0006】
【実施例】
モーアを装着して、芝刈するトラクタ車体5は、ステアリングハンドル3によって操向しうる左右一対の前輪1と、操縦席6後部のミッションケース7の左右両側部に突出のリヤアクスルハウジング8に軸装される左右一対の後輪2とを有し、前部に搭載のエンジンEによって、該ミッションケース7内の伝動機構や前輪増速装置4等を経て、前輪1及び後輪2を駆動して走行しうる四WD走行形態としている。
【0007】
9はエンジンEからミッションケース7の入力軸へ連動する伝動軸、10はミッションケース7内の差動装置から連動される後車軸、11はフロントアクスル13の左右両側端において操向軸12の回りに操向自在の操向ケース33に軸装されたホイルディスクで、前輪1を取付けできる。該フロントアクスル13の中央部は、センタピボット14で車体5の前部下側に対して揺動自在に支持される。15はエンジンEの後側のダッシュボード16側に配置したラジエータである。
【0008】
前輪増速装置4は、ベルト伝動機構からなり、車体5の下部にアーム軸17回りに左右揺動自在にアーム18が設けられ、このアーム18の前端に、前記操向軸12回りに左右一対の操向アーム19間を連結するタイロッド20の中間部のピン21を長孔22部に嵌合させて、このタイロッド20の左右動に応じてアーム18が左右に回動しうる。該左右一側の操向アーム19には、前記ステアリングハンドル3によって操向連動されるドラグロッド23が連結されている。
【0009】
前記ミッションケース7部の前輪取出軸24から、車体5前部において前記アーム18の前後中間部位置上に対向して設けられるプーリ軸25との間にベルト26を掛け渡し、更にこのプーリ軸25と前部のアーム18に軸受された変速軸27との間を、この変速軸27上の変速割プーリ28でベルト29掛けで連動している。アーム18がアーム軸17回りに揺動してプーリ軸25直下に位置するとき、割プーリ28の径は最大で、この位置から左右へ回動するに伴ってベルト29弾力が増して割プーリ28の径が小さくなり、変速軸27が高速に変速される構成である。
【0010】
前記変速軸27から左右の各前輪1への連動構成は、この変速軸27下端の複式割プーリ30と、フロントアクスル13両端部の操向軸12との間を左右のベルト31,32で連動し、前記アーム18が左右に回動することにより、割プーリ30の径が変更されて変速連動される。例えば、このアーム18が左側に操向回動される、ベルト31が緩んで、右側のベルト32が張るために、複式割プーリ30は、左側のベルト31側の径が大きくなって増速され、右側のベルト32側の径が小さくなって減速される。
【0011】
左右の操向軸12は、前輪操向ケース33内のベベルギヤ機構34等を介してホイルディスク11を連動する。このように、ステアリングハンドル3の一定以上の操向によって、ドラグロッド23、操向アーム19、及びタイロッド20等を介して、左右の操向ケース33が操向軸12の回りに回動されて、前輪1の操向が行われる。この操向によって、タイロッド20を介してアーム18がアーム軸17の回りに左右操向側へ回動される。
【0012】
エンジンEの駆動によって、ミッションケース7の伝動機構を経て、後輪2が伝動されて走行されると共に、前輪取出軸24からベルト26伝動によってプーリ軸25が回転される。更にこのプーリ軸25からベルト29を介して伝動される割プーリ28、及び30は、前記タイロッド20によるアーム18の回動により、この回動された側、即ち、操向側の前輪1を増速伝動する。
【0013】
例えば、左旋回では左側のベルト31が増速され、反対の右側のベルト32は減速される。しかもこの増速比は、アーム18の回動角度によって、割プーリ28及び30の回転径が共に増速側に大きくなるため、操向角にほぼ比例するように増速される。又、操向と反対側の右前輪1の伝動は、割プーリ28の径が小径になって増速しても、割プーリ30によるベルト32側の径は小さくなって減速される。このため、この右側の前輪1の回転速度は殆ど変化されず、後輪2とほぼ同じ速度で伝動される。
【0014】
このように、ステアリングハンドル3の操向によって、前輪1を左、又は右に操向し、旋回するときは、後輪2に対して左右前輪1のいずれか一方を増速伝動して、しかも、そのステアリングハンドル3の切角に応じて増速比を変えるものであるから、旋回を円滑に行わせることができ、旋回走行に対して増速駆動される前輪1の過度の駆動をなくして、走行土壌面や、走行芝草面を掻き乱すようなことも少くすることができる。
【0015】
図4,図5において、上例と異なる点は、前記フロントアクスル13のセンタピボット14部近くの上方にドラグロッド23で連動されるピットマンアーム35をアーム軸36回りに回動自在に設け、このピットマンアーム35と左右側方の操向ケース33のナックルアーム部との間をタイロッド20で連結する。このタイロッド20は、ばね37を介して伸縮自在である。
【0016】
タイロッド20の途中は伸縮自在のソケット部38を有した側20Aと、ねじ部39及びストッパー部40を有した側20Bとを設けて嵌合させる。このタイロッド20Bの先端のねじ部39にばね37を嵌合させて、ナット41でこのばね37の張力を調節しうる。このばね37で張圧されるソケット38は、タイロッド20Bと一体のストッパー40で受け止められる。42はタイロッド20のボールジョイントである。
【0017】
フロントアクスル13がセンタピボット14回りに上下に回動したとき、タイロッド20に圧縮力や引張力を生ずるが、ばね37によってこれらの圧力を吸収できる。図6において、上例と異なる点は、前記タイロッド20Bのばね37を、タイロッド20Aのソケット38の外側に設けたものである。
【0018】
図7、前記車体5下の前輪1と後輪2との間にミッドマウントされるモーアデッキ43の平面図と、その伝動ケース部の背面図を示す。
このデッキ上面中央部に取付ける伝動ケース44に、中央部のセンタブレード軸45を軸装し、このセンタブレード軸45の一側に偏位して高く膨出する入力軸ケース部46を設けて、入力軸47を軸受けし、この入力軸47に車体5の前端側又は後端側の動力取出軸と連動の伝動軸を連結して伝動できる。該センタブレード軸45の上端面はできるだけ低くして、この上方に車体5の前輪1を伝動するための前輪伝動軸48を対向させることができる。
【0019】
この前輪伝動軸48は、前記ベルト26,29等の前輪増速装置4に代えて、後輪2側のミッションケース7から前輪1側のフロントアクスルハウジング内の差動装置へ連動するために構成されるもので、モーアデッキ43を昇降してもこの伝動ケース44の上面との間隔を大きく維持することができ、邪魔にならないようにすることができる。
【0020】
前記モーアデッキ43の左右両側部には、他のサイドブレード軸49,50が軸受けされて、各ブレード軸45,49,50の上端部間に亘ってベルト51が掛け渡される。52はテンションプーリである。又、各ブレード軸45,49,50の下端には各々ブレード53が取付けられ、この回転によって芝草を刈取ることができ、刈取られる芝草は一側の排出口54から放出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】前輪増速装置部の斜視図と、その一部の拡大正面図。
【図2】その平面図。
【図3】側面図。
【図4】一部別実施例を示すタイロッド部の正面図と、その一部の拡大平面図。
【図5】その分解斜視図。
【図6】一部別実施例を示すタイロッド部の平面図。
【図7】モーアデッキ部の平面図と、その伝動ケース部の背面図。
【符号の説明】
前輪
後輪
3 ステアリングハンドル
4 前輪増速装置
車体
7 ミッションケース
13 フロントアクスル
18 アーム
26 (伝動)ベルト
27 変速軸
29 (伝動)ベルト
30 複式割プーリ
31 ベルト
33 操向ケース

Claims (1)

  1. 前輪1と後輪2とを駆動して走行する四WD走行形態のトラクタにおいて、
    トラクタの車体5下側に、操向ケース33,33を介して左右前輪1,1を取付けるフロントアクスル13と、ステアリングハンドル3の操向操作に連動して左右揺動自在に支持するアーム18を設け、
    前記アーム18に、ミッションケース7から出力される動力を伝動ベルト26,29を介して受ける変速軸27と、同軸27に沿って移動自在の複式割プーリ30を設けると共に、同複式割プーリ30を挟んで左前輪1へ動力を伝達するベルト31と、右前輪1へ動力を伝達するベルト32とを架け渡し、前記ステアリングハンドル3の操向によりアーム18を左右に移動させて旋回外側の前輪1へ動力を伝達するベルトの回転を増速し、旋回内側の前輪1へ動力を伝達するベルトの回転を減速させる構成としたトラクタの前輪駆動装置。
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