JP3725526B2 - 架橋ポリエステル、ポリエステルフィルム及び架橋ポリエステルの製造方法 - Google Patents

架橋ポリエステル、ポリエステルフィルム及び架橋ポリエステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル、該ポリエステルの少なくとも一部が架橋してなる架橋構造を有する架橋ポリエステル、及び、該架橋ポリエステルを用いたポリエステルフィルム、並びに、ポリエステル及び架橋ポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
脂肪族ポリエステルは、生分解性を有する成形材料として知られ、その用途は多岐に及んでいる。例えば、上記脂肪族ポリエステルは、機械的強度に優れ、軟化温度が好適であることから、ドラッグデリバリー等の医療用材料として、また、生体組織の再生医療等の生体材料として、医療分野で最も有望視されている生分解性高分子である(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、非特許文献2には、脂肪族ジカルボン酸及び3価アルコールを用い、高温条件下で合成された脂肪族ポリエステルが記載されている。該非特許文献2に記載の脂肪族ポリエステルは、網目構造を有しており、耐熱性や耐薬品性に優れていることが報告されている。
【0004】
【非特許文献1】
Albertsson A.C.編、Advances in Polymer Science:Degradable Aliphatic Polyester、Springer(ベルリン)、157巻、2002年
【0005】
【非特許文献2】
Nagata,M.、Kono,Y.、Sakai,W.、Tsutsumi,N.、Macromolecules、32巻、p.7762、1999年
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、情報通信分野では、記録媒体に記録するデジタル情報量の増加や、記録媒体の小型化に伴って、紫外線レーザによる情報の記録再生が可能な高密度光情報記録材料や、RGB(R:赤、G:緑、B:青)の発光が可能な高効率発光材料等のフォトニクス材料の開発に大きな期待が寄せられている。
【0007】
上記高密度光情報記録材料や高効率発光材料として好適に用いられる新規なフォトニクス材料としては、該フォトニクス材料の製造工程の簡略化や、高収率でのフォトニクス材料の合成が可能であり、かつ、安価な原料を用いてフォトニクス材料を製造することができることが好ましいと考えられる。また、近年、社会問題となっている環境保全等の観点から、製造時の省資源化や排出物の低減を実現することができ、使用済みのフォトニクス材料の処理を好適に行い得るフォトニクス材料が求められると予測される。
【0008】
しかしながら、これまで、上記脂肪族ポリエステルの用途は、主に成形材料に限られており、該脂肪族ポリエステルを用いた光学材料は見出されていない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造上の簡便性や環境保全等を考慮して設計され、かつ、可視・紫外領域にて光吸収及び発光を示す新規なフォトニクス材料として好適に用いられ得る、ポリエステル、該ポリエステルの少なくとも一部が架橋してなる架橋構造を有する架橋ポリエステル、及び、該架橋ポリエステルを用いたポリエステルフィルム、並びに、ポリエステル及び架橋ポリエステルの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、主鎖構造の繰り返し単位として、マロン酸から誘導されるアシル基であるマロニル基を含むポリエステルを合成するとともに、該ポリエステルの少なくとも一部が、有機塩基の存在下で、分子内及び/又は分子間に炭素間二重結合を形成することを見出すとともに、該炭素間二重結合を形成してなる架橋構造を有する架橋ポリエステルが、炭素−炭素二重結合(C=C結合)及び、2つの炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなるπ−n性共役結合を形成することによって、可視・紫外領域の光を吸収して、青色〜緑青色の発光(蛍光)を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明のポリエステルは、一般式(1)
【0012】
【化3】
Figure 0003725526
【0013】
(式中、R1は、官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)にて表される繰り返し構造を有していることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の架橋ポリエステルは、上記一般式(1)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルに含まれる、少なくとも1つのメチレン基のメチレン炭素が、該メチレン基とは異なる他のメチレン基に結合しているカルボニル基のカルボニル炭素と炭素間二重結合によって結合するように縮合してなる構造を有していることを特徴している。
【0015】
上記架橋ポリエステルにおいて、上記炭素間二重結合は、上記ポリエステルの分子内、及び、ポリエステルの分子間のうちの少なくとも一方にて形成されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、上記架橋ポリエステルは、可視・紫外領域での光吸収現象及び発光現象を示すため、光記録媒体材料や発光材料等の光学材料として好適に用いることができる。特に、該架橋ポリエステルの光吸収中心及び発光中心は、1nm以下の大きさであるため、量子性に基づく種々の光学効果を有すると考えられ、フォトニクス材料として好適に用いられる可能性がある。また、該架橋ポリエステルを用いれば、光学部品の小型化にも対応することができる。
【0017】
さらに、上記架橋ポリエステルは、生分解性を示すため、廃棄物処理を好適に行い得る光学材料を提供することが可能になる。従って、上記ポリエステル、及び、該ポリエステルから得られる架橋ポリエステルは、生分解性を示す新規な光学材料として利用することができる。
【0018】
また、本発明のポリエステルフィルムは、上記架橋ポリエステルを含んでなっていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、上記ポリエステルフィルムは、上記架橋ポリエステルを含んでいるので、可視・紫外領域での光吸収現象及び発光現象を示す。従って、このポリエステルフィルムを、光記録材料や発光材料等の光学材料として好適に利用することができる可能性がある。
【0020】
また、本発明のポリエステルの製造方法は、マロニルジハライドと多価アルコールとを有機系の塩基の存在下で反応させることを特徴としている。
【0021】
上記の方法によれば、上記一般式(1)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルを、安価な原料を用いて簡便にかつ高収率で製造することができる。これにより、安価な光学材料を提供することができる。
【0022】
また、本発明の架橋ポリエステルの製造方法は、上記ポリエステルと有機塩基とを化学的に接触させることを特徴としている。
【0023】
上記の方法によれば、上記ポリエステルに、有機塩基を作用させるという簡便な手法で、ポリエステルの分子内及び/又は分子間に、上記した炭素間二重結合からなる架橋構造を形成することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるポリエステル及び架橋ポリエステル、それらの製造方法、並びに、架橋ポリエステルの利用について、説明する。
【0025】
A.ポリエステル及び架橋ポリエステル
まず、本発明にかかるポリエステルについて説明する。該ポリエステルは、主鎖構造の繰り返し単位に、マロン酸に由来するマロニル基(−OCCH2CO−)構造にエステル結合によって、炭化水素二価基が結合してなる構造を有してなる脂肪族系ポリエステルである。すなわち、上記ポリエステルは、下記一般式(1)
【0026】
【化4】
Figure 0003725526
【0027】
(式中、R1は、官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)にて表される繰り返し構造を有している。
【0028】
上記一般式(1)中の、R1は、主鎖骨格に結合する官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基であり、主鎖骨格は、飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素であってもよい。該鎖式炭化水素二価基の主鎖骨格を構成する炭素数は1以上であればよいが、20を超えると反応性が低下し、100,000を超えると溶解性が低下する傾向にある。
【0029】
上記鎖式炭化水素二価基としては、具体的には、1つの炭素に2つの遊離原子価を有するアルキリデン基やアルケニリデン基、鎖式炭化水素鎖の両端に位置する各炭素がそれぞれ1つずつ遊離原子価を有するアルキレン基や、該アルキリデン基、アルケニリデン基、及びアルキレン基を構成する原子に官能基を有する官能基結合型炭化水素二価基等を挙げることができる。上記官能基としては、例えば、メチル基やエチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール等の炭化水素基;水酸基、ハロゲン基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ニトロ基、ジアゾ基等の特性基のうちの1つ又は2つ以上を含んでいてもよい。
【0030】
上記アルキリデン基としては、エチリデン基等を挙げることができ、上記アルケニリデン基としては、ビニリデン基等を挙げることができる。また、上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロペニレン基、エチニレン基等を挙げることができる。さらに、官能基結合型炭化水素二価基としては、イソブチリデン基、イソペンチリデン基、イソヘキシリデン基等の他、上記したアルキリデン基、アルケニリデン基、及びアルキレン基に上記炭化水素基や特性基が結合してなる置換基等を挙げることができる。
【0031】
上記一般式(1)中のR1は、上記した鎖式炭化水素二価基のうち、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロペニレン基、エチニレン基等の直鎖状炭化水素二価基が好ましく、本発明のポリエステルとしては、特に、R1としてエチレン基を有するポリ(エチレンマロン酸)であることが好ましい。
【0032】
また、本発明のポリエステルは、重合度、すなわち、上記一般式(1)で表される繰り返し構造の繰り返し数が、5以上100,000以下であることが好ましい。上記重合度が5未満であると、後述する架橋構造の形成が進行し難くなって好ましくなく、100,000を超えると、溶解性が低下するため好ましくない。
【0033】
次に、上記ポリエステルの少なくとも一部が架橋されてなる、本発明の架橋ポリエステルについて説明する。
【0034】
本発明の架橋ポリエステルは、上記一般式(1)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルの主鎖構造に含まれる、マロニル基中のメチレン基のメチレン炭素のうちの少なくとも1つが、該メチレン基とは異なる他のメチレン基に結合しているカルボニル基のカルボニル炭素と炭素間二重結合によって結合するように縮合してなる架橋構造を有している。言い換えれば、上記架橋ポリエステルでは、繰り返し構造に含まれるマロニル基中のメチレン基のメチレン炭素と、該メチレン基に直接的には結合していないカルボニル基のカルボニル炭素との間に縮合によって形成される炭素間二重結合を少なくとも1つ含んでなる構造を有している。
【0035】
上記メチレン炭素とカルボニル炭素との間に、炭素間二重結合の形成に際して、上記メチレン炭素に結合している水素原子と、カルボニル炭素に結合していた酸素原子とが脱水縮合により脱離して、上記メチレン炭素とカルボニル炭素とが結合する。その結果、上記架橋ポリエステルは、該炭素間二重結合(C=C結合)と、上記メチレン炭素に直接結合している2つの炭素−酸素二重結合(C=O結合)とからなるπ−n性共役結合が形成されてなる構造を有することになる。
【0036】
本発明の架橋ポリエステルは、上記炭素間二重結合と2つの炭素−酸素二重結合とによって形成されるπ−n性共役結合を有することにより、可視・紫外領域に光吸収特性及び発光特性を示す。すなわち、上記π−n性共役結合が、光吸収中心及び発光中心となって、上記架橋ポリエステルが光吸収現象や発光現象を示すことになる。
【0037】
また、架橋ポリエステルは、上記π−n性共役結合を有するため、光照射によって誘導される互変異性に基づく構造変化が生じると考えられる。このような互変異性を示す化合物では、互変体構造による準安定状態が形成されるため、発光現象のストークスシフトが生じ、また互変体構造に応じた発光が見られると考えられる(Sengupta,P.K.等、Chem.Phys.Lett.、68巻、p.382、1979年;McMorrow,D.等、J.Am.Chem.Soc.、105巻、p.5133、1983年、等参照)。実際、後述する実施例にて示すように、上記架橋ポリエステルは、少なくとも2つ波長にて発光を示しており、該発光は、架橋ポリエステルのπ−n性共役結合構造に基づく互変異性に起因する可能性が高いことが示唆される。
【0038】
上記架橋ポリエステルの光吸収現象は、具体的には、波長200nm〜500nm付近の波長領域で観測される。また、上記架橋ポリエステルの発光現象は、具体的には、350nm以上の励起光を用いた場合に、波長450nm付近〜470nm付近の波長領域で観測され、これらの各波長の発光(蛍光)は、青色〜緑青色を示す。
【0039】
このように、上記一般式(1)で表される繰り返し構造を有するポリエステルを用いて得られた上記架橋ポリエステルが、光吸収特性及び発光特性を示すことは、本発明者等によって新規に見出されたものである。従って、上記ポリエステル及び架橋ポリエステルは、従来の脂肪族ポリエステルでは見出されていなかった用途である、光学材料(フォトニクス材料)として用いることができる可能性がある。
【0040】
特に、本発明の架橋ポリエステル中の、上記光吸収中心及び発光中心は、1nm以下の大きさであると考えられることから、量子性に基づく種々の光学効果が得られる可能性が高い。それゆえ、本発明の架橋ポリエステルは、近年、情報通信分野で要求されている、高密度での情報記録、記録媒体や光学部品等の小型化にも対応することができる光学材料として有用である可能性も高い。
【0041】
さらに、生分解性を有するポリエステルを光学材料として用いれば、光学材料として不要となった場合にも、該光学材料を生分解によって処理することができる。それゆえ、上記ポリエステル及び架橋ポリエステルを光学材料として利用することは、廃棄物を低減するという環境保全の観点からも好ましい。
【0042】
上記架橋ポリエステルの架橋構造である炭素間二重結合は、上記ポリエステルの分子内にて形成されてもよく、あるいは、2以上の異なるポリエステルの分子間にて形成されてよい。また、分子内、分子間の双方に、炭素間二重結合が形成されていてもよい。
【0043】
上記ポリエステルの分子内にて、炭素間二重結合が形成されている架橋ポリエステル(以下、分子内架橋ポリエステルと記載する)では、ポリエステルの主鎖構造の一部が、上記炭素間二重結合によって架橋されて環構造をなしている。該分子内架橋ポリエステル内に形成される炭素間二重結合は、互いに隣り合う繰り返し単位にそれぞれ含まれるメチレン炭素とカルボニル炭素との間に形成されてもよく、互いに隣り合っていないが同一分子内に含まれるメチレン炭素とカルボニル炭素との間に形成されてもよい。また、分子内架橋ポリエステルに形成される炭素間二重結合は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0044】
一方、ポリエステルの分子間にて、炭素間二重結合が形成されている架橋ポリエステル(以下、分子間架橋ポリエステルと記載する)では、少なくとも2分子のポリエステル分子にそれぞれ含まれるメチレン炭素とカルボニル炭素とが、上記炭素間二重結合によって架橋されて分子間架橋構造をなしている。分子間架橋ポリエステルにおける炭素間二重結合の形成位置は特に限定されず、また、該分子間架橋ポリエステルに形成される炭素間二重結合は、1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0045】
さらに、分子間架橋ポリエステルは、上記ポリエステルと分子内架橋ポリエステルとの間に、炭素間二重結合が形成されてなるものであってもよい。また、分子間架橋ポリエステルは、ポリエステル及び分子内架橋ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも2つの分子間にて、分子間架橋構造が形成されるものであればよく、上記群より選ばれる3つ以上の分子間にて、分子間架橋構造が形成されていてもよい。
【0046】
また、上記架橋ポリエステルは、薄膜状に成形されたポリエステルフィルムとして用いることもできる。該ポリエステルフィルムは、詳細は後述するが、上記ポリエステル及び/又は分子内架橋ポリエステルをフィルム状に成形してなるゲル状のフィルムを用いて、分子間に炭素間二重結合を形成してなるものである。従って、上記ポリエステルフィルムには、少なくとも分子間架橋ポリエステルが含まれる。
【0047】
上記分子間架橋ポリエステルに含まれる炭素間二重結合は、ポリエステル及び/又は分子内架橋ポリエステルに含まれる少なくとも一部のマロニル基のメチレン炭素が、カルボニル基のカルボニル炭素と結合してなるものである。言い換えれば、上記ポリエステルフィルムには、未架橋のポリエステル構造が含まれており、該未架橋のポリエステル構造がマトリクス高分子としての役割を担うことによって、架橋ポリエステルの上記したπ−n性共役結合どうしの間で生じる相互作用が抑制されるので、該π−n性共役結合に基づく光吸収・発光現象を好適に観測することができると考えられる。従って、本発明の架橋ポリエステルを薄膜状に加工して、ポリエステルフィルムとして用いることにより、光記録材料や発光材料等の光学材料として好適に利用することができる可能性がある。
【0048】
また、上記架橋ポリエステル、ポリエステルフィルムは、生分解性を有しているため、上記光学材料の他、生体内での色センサーや蛍光センサーとして利用することができる可能性がある。
【0049】
B.ポリエステル及び架橋ポリエステルの製造方法
まず、上記一般式(1)にて表される構造を有するポリエステルの製造方法について説明する。上記ポリエステルは、マロニルジハライドと多価アルコールとを有機系の塩基の存在下で反応させることによって得られる。
【0050】
上記マロニルジハライドは、下記一般式(2)
X1−OC−CH2−CO−X2 ……(2)
(式中、X1,X2は、それぞれ独立してハロゲンである)にて表される構造を有する。上記X1,X2で表されるハロゲンは、それぞれ独立して、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素のうちのいずれかであり、このうち塩素が特に好ましい。つまり、上記マロニルジハライドは、X1,X2がともに塩素である、マロニルジクロリドであることが特に好ましい。
【0051】
また、上記多価アルコールは、上記一般式(1)にて表される構造のうち、マロニル基にエステル結合によって導入される、下記一般式(3)
−O−R1−O− ……(3)
(式中、R1は、官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)で表される構造を有するものである。具体的には、鎖式炭化水素二価基であるR1の主鎖の両末端に、水酸基(−OH)が結合している、2価以上の多価脂肪族アルコールであればよいが、特に2価の脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0052】
上記多価脂肪族アルコールの炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、又は、分岐鎖を有している炭化水素基を挙げることができ、このうち、直鎖状炭化水素基であることが好ましい。また、炭化水素基は、単結合からなっていてもよく、二重結合や三重結合を含んでいてもよい。
【0053】
上記炭化水素基の炭素数は、1以上であればよい。また、マロニルジハライド及び多価アルコールを用いたポリエステルの合成反応を阻害しない範囲内で、上記炭化水素基は、該炭化水素基の主鎖に結合する官能基を有していてもよい。
【0054】
上記2価の脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール類;エチレンジオール等のアルケンジオール類;アルキンジオール類等を挙げることができる。また、3価以上の脂肪族アルコールとしては、グリセリン等を挙げることができる。上記多価アルコールのうち、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0055】
また、上記有機系の塩基(以下、塩基と記載する)としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ヒドラジン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等の有機アミン類等を挙げることができ、このうち1種又は2種以上を用いればよい。
【0056】
上記マロニルジハライドと多価アルコールとを、塩基の存在下で反応させる際には、まず、多価アルコールと塩基とを適当な有機溶媒と混合した混合液中に、適当な有機溶媒に溶解させてなるマロニルジハライド溶液を滴下する。次いで、上記混合液中にマロニルジハライド溶液が滴下されてなる混合反応溶液を攪拌し、有機溶媒を除去して得られる生成物を、メタノール等のアルコール系溶媒中に添加することにより、沈殿物として本発明のポリエステルが得られる。上記の混合反応溶液の攪拌は、大気中、常温常圧下にて、24時間〜48時間行えばよい。
【0057】
多価アルコールと塩基とを混合する有機溶媒、マロニルジハライドを溶解させる有機溶媒としては、これら多価アルコール、塩基、マロニルジハライドが完全に溶解する、あるいは、均一に分散又は拡散し得る有機溶媒であればよい。上記有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、クロロホルム等のうち1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0058】
また、マロニルジハライドと多価アルコールとは、等量モルずつ用い、上記塩基は、多価アルコール又はマロニルジハライドに対して、2等量モルとなるように用いることが好ましい。さらに、アルコール系溶媒は、多価アルコール又はマロニルジハライドに対して、過剰となるように、2.0等量モル以上を用いることが好ましい。
【0059】
上記の操作によって得られたポリエステルは、上記一般式(1)にて表される繰り返し構造を有し、該ポリエステルの両末端には、上記アルコール系溶媒に起因する置換基が導入される。すなわち、上記の操作によって得られたポリエステルは、下記一般式(4)
【0060】
【化5】
Figure 0003725526
【0061】
(式中、R2,R3は、それぞれ独立して、水素又は炭化水素基であり、nは5以上100,000以下の整数を示す)で表される構造を有する。上記R2,R3は、それぞれ独立して、上記アルコール系溶媒が有する炭化水素基又は水素である。上記アルコール系溶媒として、例えばメタノールを用いた場合には、R2はメチル基であり、R3は水素となる。
【0062】
次に、上記の操作によって合成されたポリエステルを用いた、本発明の架橋ポリエステルの製造方法について説明する。上記架橋ポリエステルのうち、分子内架橋ポリエステルは、上記ポリエステルと有機塩基とを化学的に接触させることによって得ることができる。
【0063】
上記化学的に接触とは、ポリエステルと有機塩基との間に相互作用を生じさせ得るように行う操作をいう。具体的には、上記ポリエステルを含んでなるポリエステル溶液中に有機塩基を添加する、上記有機塩基を含んでなる溶液中にポリエステルを浸漬する、上記ポリエステルからなる薄膜等に有機塩基を塗布する等の、ポリエステルに対して有機塩基が化学的に作用し得るように行う操作をいう。
【0064】
上記有機塩基としては、有機化合物からなる塩基であれば特に限定されないが、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ヒドラジン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等の有機アミン類等を挙げることができる。また、上記有機塩基のうち、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの有機塩基は、ポリエステルに対して、過剰となるように、2等量モル以上を用いることが好ましく、10等量モル以上を用いることがより好ましい。
【0065】
上記ポリエステルを適当な有機溶媒に溶解又は分散してポリエステル溶液とし、該ポリエステル溶液に、上記有機塩基を添加して、5分〜10時間攪拌する。これにより、下記式(5)
【0066】
【化6】
Figure 0003725526
【0067】
(式中、R1は、官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)にて表される、分子内でのクネーフェナーゲル縮合(Knoevenagel condensation)反応が生じ、ポリエステルが分子内にて架橋して炭素間二重結合を形成して、分子内架橋ポリエステルが得られる。なお、上記式(5)では、互いに隣接する繰り返し単位間にて、メチレン炭素とカルボニル炭素とが脱水縮合して、炭素間二重結合を形成する場合の反応について示しているが、互いに隣接しない繰り返し単位間にて、炭素間二重結合を形成する場合においても、上記式(5)と同様の反応が行われる。
【0068】
なお、上記ポリエステルを溶解するための有機溶媒は、該ポリエステルが完全に溶解する、あるいは、均一に分散又は拡散し得る有機溶媒であればよい。具体的には、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン等のうち1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0069】
また、分子間架橋ポリエステルは、フィルム状に成形されたポリエステルを用いて製造することができる。すなわち、上記ポリエステル溶液を、石英等の基板上に、スピンコート法又はキャスティング法等によって塗布した後、加熱処理を行って、上記ポリエステルのゲル状のフィルム(以下、ゲル状フィルムと記載する)を形成し、該ゲル状フィルムに対して、有機塩基を化学的に接触させる有機塩基処理を行う。
【0070】
上記有機塩基処理は、例えば、有機塩基を含む溶液中に、上記ゲル状フィルムを浸漬する、あるいは、上記ゲル状フィルムに有機塩基を塗布する又は吹き付けることによって行えばよく、処理時間は、10分〜2時間であればよい。
【0071】
これにより、下記式(6)
【0072】
【化7】
Figure 0003725526
【0073】
(式中、R1,R4は、それぞれ独立して官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)に従って、分子間でのクネーフェナーゲル縮合反応が生じ、ゲル状フィルム内にて、ポリエステルが分子間で架橋して炭素間二重結合を形成して、分子間架橋ポリエステルを含んでなるポリエステルフィルムが得られる。
【0074】
なお、上記ゲル状フィルムは、一般式(1)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルを含むポリエステル溶液を用いて形成したが、分子内架橋ポリエステルを含むポリエステル溶液を用いてゲル状フィルムを形成してもよい。ゲル状フィルム内に、分子内架橋ポリエステルが含まれていれば、ゲル状フィルムの有機塩基処理によって、分子内架橋ポリエステルと分子間架橋ポリエステルとを含んでなるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0075】
このように、本発明のポリエステル及び架橋ポリエステルは、非常に安価な原料を用いて、少ない製造工程にて製造することができる。さらに、簡便な手法で、上記ポリエステル及び分子内架橋ポリエステルを薄膜化することによって、分子間架橋ポリエステルを含んでなるポリエステルフィルムを得ることができる。従って、本発明のポリエステル、架橋ポリエステル及びポリエステルフィルムは、製造工程の簡便性の観点からも、光学材料として非常に有用であると考えられる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例・比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕
本発明のポリエステルである、ポリエチレンマロン酸エステルを以下の手順で合成した。
【0078】
すなわち、三方コック、滴下漏斗、マグネティック攪拌棒を装着した200mLの丸底フラスコに乾燥窒素を流した後、該丸底フラスコに、0℃の温度条件下にて、エチレングリコール2.20g(35.5mmol)と、トリエチルアミン6.79g(67.2mmol)と、乾燥THF(40mL)とを入れ、さらに、マロニルジクロリド5.0g(35.5mmol)を7mLのTHFに溶解してなるTHF溶液を滴下した。得られた反応混合溶液を、室温で48時間攪拌した後、不溶性の塩を濾過によって除去し、さらにTHFを蒸発除去して、残留物を得た。続いて、過剰量のメタノールに該残留物を添加し、赤色の油性ゴム状ポリマーを沈殿物として得た(収率35%)。
【0079】
得られた上記沈殿物を、CDCl3中に溶解させ、25℃の温度条件下にて、1H−NMRスペクトル測定(400MHz)、及び、13C−NMRスペクトル測定(100MHz)を行った。その結果を図1(a)(b)に示す。
【0080】
図1(a)に示されるように、化学シフトδが4.39ppm(図中、スペクトルピークb)及び、3.47ppm(図中、スペクトルピークa)の付近には、それぞれ、ポリエチレンマロン酸エステル中の、エチレン基のエチレン水素(化学式中、b)及び、メチレン基のメチレン水素(化学式中、a)に特徴的な一重線のシグナルが観測された。また、ポリエチレンマロン酸エステル中の、末端のメトキシ水素(化学式中、c)に特徴的な一重線のシグナルが、δ=4.30ppm付近に観測され、もう一方の末端の水酸基(化学式中、e)に隣接するメチレン基のメチレン水素(化学式中、d)に特徴的な一重線のシグナルが、δ=3.83ppm付近に観測された。なお、図1(a)中のスペクトルピークfについては、後述する。
【0081】
さらに、図1(b)に示されるように、ポリエチレンマロン酸エステル中の、カルボニル基のカルボニル炭素(化学式中、a’)、エチレン基のエチレン炭素(化学式中、c’)、メチレン基のメチレン炭素(化学式中、b’)のそれぞれに特徴的なシグナルが、それぞれ、化学シフト166.0ppm、62.8ppm、41.0ppm付近に観測された。
【0082】
また、上記沈殿物を0.15g/mLとなるようにアセトンに溶解してなるアセトン溶液を用い、キャスティング法によって、石英基板上に薄膜状に成形してなる薄膜状サンプルについて、赤外吸収スペクトル測定を行った。その結果を図2に示す。
【0083】
図2に示されるように、ポリエチレンマロン酸エステルの末端の水酸基(図1(a)の化学式中、aを参照)に特徴的な吸収ピークが、3500cm-1付近に観測され、メチレン基のC−H結合に特徴的な吸収ピークが、2900cm-1付近に観測された。また、カルボニル基に特徴的な吸収ピークが、1750cm-1付近に観測された。なお、1684cm-1に、炭素間二重結合(C=C結合)に特徴的な吸収ピークが見られるが、このピークについては後述する。
【0084】
さらに、上記沈殿物について、元素分析を行った結果、C:H=46.38:4.95であることが分かった。元素分析によって得られた上記の結果は、ポリエチレンマロン酸エステルの化学式(C564n(nは重合度)から計算される計算結果C:H=46.16:4.65にほぼ一致した。
【0085】
また、上記沈殿物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Shimadzu社製、40℃でTHFを溶出液として使用)を用い、ポリスチレン標準を用いたキャリブレーションに基づいて見積もったところ、重量平均分子量Mwが3200であり、数平均分子量Mnが1600であり、分子量分散Mw/Mnが2.0であることが分かった。
【0086】
以上の結果より、得られた沈殿物は、ポリエチレンマロン酸エステルであることが分かった。
【0087】
〔比較例〕
3.99×102Pa(3mmHg)以下の減圧下にて、塩化水素を除去しながら、マロニルジクロリドとエチレングリコールとを塊状重合によって合成した。
【0088】
得られた合成物は、重量平均分子量Mwが500未満のオリゴマーであり、高分子量のポリマーを得ることができなかった。
【0089】
また、上記オリゴマーをCDCl3中に溶解させ、25℃の温度条件下にて、1H−NMRスペクトル測定を行った結果を図3に示す。
【0090】
〔実施例2〕
上記実施例1にて得られたポリエチレンマロン酸エステル(以下、ポリエステルと記載する)を用い、以下の手順で本発明の分子内架橋ポリエステルを得た。すなわち、上記ポリエステルをTHF中に、2.5×10-3Mとなるように溶解させたTHF溶液を調製し、さらに該THF溶液が2.5×10-3Mとなるようにトリエチルアミンを添加し、室温で攪拌して、THF−アミン溶液を調製した。その結果、トリエチルアミンを添加する前には、黄色を示していたTHF溶液が、トリエチルアミンの添加により、橙色を示すTHF−アミン溶液が得られた。
【0091】
また、上記THF溶液及びTHF−アミン溶液の紫外可視吸収スペクトル測定を行った結果を図4に示す。図4に示されるように、トリエチルアミンを添加する前のTHF溶液の紫外可視吸収スペクトル(図中、実線)では、カルボニル基のn−π*遷移に起因する光吸収が322nmに観測され、弱い光吸収が363nmに観測された。一方、トリエチルアミンを添加した後のTHF−アミン溶液の紫外可視吸収スペクトル(図中、破線)では、上記カルボニル基のn−π*遷移に起因する光吸収が減少した。また、長波長領域での光吸収強度が増加するとともに、吸収位置が398nm付近にシフトした。
【0092】
さらに、THF−アミン溶液から、溶媒を蒸発除去して得られた残分をCDCl3中に溶解させて、1H−NMRスペクトル測定(400MHz)を行った。その結果を図5に示す。
【0093】
図5と図1(a)とを比較すると、図1(a)のスペクトルにて、3.71ppm付近に見られるスペクトルピークfが、わずかに増加していることが分かった。また、このスペクトルピークfは、エチレンジアミンを用いて合成していない上記比較例のオリゴマーの1H−NMRスペクトル(図3)では観測されなかった。さらに、図2に示す赤外吸収スペクトルでは、炭素間二重結合に特徴的な吸収ピークが1684cm-1に観測された。
【0094】
以上の結果より、ポリエステルのTHF溶液中に、トリエチルアミンを添加することにより、下記反応式(7)
【0095】
【化8】
Figure 0003725526
【0096】
に従って、上記ポリエステルが分子内で架橋して、分子内架橋ポリエステルが得られると考えられ、上記スペクトルピークfは、上記反応式(7)中の環構造に含まれるエチレン基のエチレン水素(式中、f)であると考えられる。
【0097】
なお、実施例1のポリエステルにおいても、スペクトルピークf(図1(a))、及び、赤外吸収スペクトルの1684cm-1の吸収ピーク(図2)が見られることから、上記ポリエステルの合成反応の副反応として、上記反応式(7)で示される反応が生じている可能性が示唆される。
【0098】
また、上記THF−アミン溶液について、330nm〜420nmの範囲内の波長の光で励起して、発光スペクトル測定を行った。その結果を図6に示す。さらに、400nm〜470nmにモニター波長を変化させて、励起スペクトル測定を行った。その結果を図7に示す。
【0099】
図6に示されるように、350nm及び370nmの光で励起した場合には、398nm付近に発光スペクトルの吸収極大が見られる。また、上記370nmの光で励起した場合には、454nm及び470nmに肩吸収が見られる。さらに、420nmの光で励起した場合には、454nm及び470nmに2つの吸収極大が見られ、この2つの発光は、それぞれ青色及び青緑色であり、裸眼で識別することができた。一方、330nm以下の短波長の光で励起した場合には、ほとんど発光現象が観測されなかった。
【0100】
また、図7に示されるように、400nm及び470nmにモニター波長を固定した場合の励起スペクトルは、それぞれ、370nm及び410nmに励起極大を有することが分かった。なお、図7中、×にて示すピークは、励起スペクトルの蛍光波長での重複による人工的なピークであり、無視することができるものである。
【0101】
以上の結果から、上記分子内架橋ポリエステルの互変異性に起因する、2つの異なる波長での発光現象が見られることが示唆される。
【0102】
〔実施例3〕
上記実施例1にて得られたポリエステルを用い、以下の手順で本発明のポリエステルフィルムを得た。すなわち、上記ポリエステルをTHF中に、2.5×10-3Mとなるように溶解して調製したTHF溶液を、石英基板上に、スピンコート法によって塗布し、室温で真空乾燥して、ゲル状のフィルムを得た。続いて、該ゲル状のフィルムを、室温条件下、トリエチルアミン中に10分〜50分間浸漬し、本発明のポリエステルフィルムである架橋ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
上記ゲル状のフィルム及び架橋ポリエステルフィルムの、THFやクロロホルムといった有機溶媒に対する溶解性を調べた。その結果、ゲル状のフィルムは、有機溶媒に完全に溶解し、架橋ポリエステルフィルムは上記有機溶媒にほとんど溶解しなかった。
【0104】
また、得られた架橋ポリエステルフィルムについて、赤外吸収スペクトル測定を行った。その結果を図8に示す。図8に示されるように、炭素間二重結合に特徴的な、1684cm-1の吸収ピークが、図2に比較してわずかに増大していることが分かった。
【0105】
さらに、上記架橋ポリエステルフィルムについて、紫外可視吸収スペクトル測定を行った結果を図9に示す。図9に示されるように、トリエチルアミンで処理する前後の紫外可視吸収スペクトルの変化は、実施例2で説明した図4と同様の吸収スペクトルの変化が見られることが分かった。すなわち、ゲル状のフィルム(図中、実線)で見られたカルボニル基のn−π*遷移に起因する光吸収が、架橋ポリエステルフィルム(図中、破線)では減少し、また、該架橋ポリエステルフィルムでは、長波長領域での光吸収強度が増加するとともに、その吸収位置が長波長側にシフトした。
【0106】
以上の結果より、上記ゲル状のフィルムをトリエチルアミン中に浸漬することにより、下記反応式(8)
【0107】
【化9】
Figure 0003725526
【0108】
に従って、上記ポリエステルが分子間で架橋して、分子間架橋ポリエステルを含んでなる架橋ポリエステルフィルムが得られることが示唆される。
【0109】
【発明の効果】
本発明のポリエステルは、主鎖構造の繰り返し単位として、マロン酸から誘導されるマロニル基に、エステル結合によって、官能基を有していてもよい炭化水素二価基が結合してなる構造を有してなる脂肪族系ポリエステルである。また、本発明の架橋ポリエステルは、上記ポリエステルが有機塩基と化学的に接触することにより、該ポリエステルの少なくとも一部が、分子内及び/又は分子間に炭素間二重結合を形成してなるものである。
【0110】
それゆえ、上記架橋ポリエステルを用いれば、可視・紫外領域にて光吸収及び発光を示す生分解性の光学材料を提供することができるという効果を奏する。また、架橋ポリエステルを含むポリエステルフィルムを形成することにより、光記録材料や発光材料等の光学材料として好適に利用することができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、実施例にて得られたポリエチレンマロン酸エステルの1H−NMRスペクトルを示すグラフであり、(b)は、実施例にて得られたポリエチレンマロン酸エステルの13C−NMRスペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例にて得られたポリエチレンマロン酸エステルの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】比較例にて得られたオリゴマーの1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
【図4】上記ポリエチレンマロン酸エステルのTHF溶液の紫外可視吸収スペクトル(実線)、及び、該THF溶液にトリメチルアミンを添加したTHF−アミン溶液の紫外可視吸収スペクトル(破線)を示すグラフである。
【図5】上記THF−アミン溶液の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
【図6】上記THF−アミン溶液の発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】上記THF−アミン溶液の励起スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例にて得られた架橋ポリエステルフィルムの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図9】ポリエステルのゲル状のフィルムの紫外可視吸収スペクトル(実線)、及び、該ゲル状のフィルムをトリエチルアミンに浸漬して得られる上記架橋ポリエステルフィルムの紫外可視吸収スペクトル(破線)を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 一般式(1)
    Figure 0003725526
    (式中、R1は、官能基を有していてもよい鎖式炭化水素二価基である)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルに含まれる、少なくとも1つのメチレン基のメチレン炭素が、該メチレン基とは異なる他のメチレン基に結合しているカルボニル基のカルボニル炭素と炭素間二重結合によって結合するように縮合してなる構造を有していることを特徴とする架橋ポリエステル。
  2. 上記炭素間二重結合は、上記ポリエステルの分子内、及び、ポリエステルの分子間のうちの少なくとも一方にて形成されていることを特徴とする請求項1記載の架橋ポリエステル。
  3. 請求項1又は2記載の架橋ポリエステルを含んでなっていることを特徴とするポリエステルフィルム。
  4. 上記一般式(1)にて表される繰り返し構造を有するポリエステルと有機塩基とを化学的に接触させることを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリエステルの製造方法。
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