JP3725469B2 - コイルの電気絶縁構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリソレノイドや電動モータ等の回転電機に用いて好適なコイルの電気絶縁構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コイルを巻回したコイルボビンの中心にマグネットロータを配するとともに、コイルボビンの外側に磁性体により形成したヨークを配してなるロータリソレノイドや電動モータ等の回転電機は知られており、既に、本出願人も、このような構成を有するロータリソレノイド装置を、特開2001−258233号公報により提案した。
【0003】
ところで、同公報におけるロータリソレノイド装置をはじめ、この種の回転電機は、コイルボビンに巻回したコイルの外側が、ケーシングを兼ねた導電性(磁性)を有する金属製のヨークにより覆われるため、通常、コイルの表面に絶縁テープを巻いたり絶縁シートを貼付けることにより、コイルとヨーク間の電気絶縁性能を確保している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の電気絶縁構造は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、製造面において難があり、例えば、手作業による場合には、製造工数の増大や品質のバラツキを招くとともに、他方、自動化する場合には、製造装置の複雑化によるコストの増大を招く。
【0006】
第二に、製造中にコイルのマグネットワイヤがほつれたりコイルを傷付ける虞れがあるなど、コイルに対する十分な保護を図れない。
【0007】
第三に、この種の回転電機には、小型化と高性能化の両立が要求される傾向があるため、コイルとヨーク間の絶縁距離が短くなり、この結果、従来の電気絶縁構造によっては十分な電気絶縁性能を確保できない。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、製造時の自動化を容易にしてコストダウン,生産性向上及び品質向上を図ることができるとともに、コイルに対する保護強化、さらには、十分かつ確実な電気絶縁性能の確保を図ることができるコイルの電気絶縁構造の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明に係るコイルの電気絶縁構造1は、コイルCを巻回したコイルボビン2の中心にマグネットロータ3を配するとともに、コイルボビン2の外側に磁性体により形成したヨーク4を配した回転電機Mにおいて、コイルボビン2に係合して位置決めされ、かつ当該コイルボビン2と組合わさることによりコイルCの表面全体を覆う絶縁成形体5を装着するとともに、絶縁成形体5は、ドーナツ状に形成した端面部11…とこの端面部11…から直角に突出した一又は二以上の側面部12i,12j…を、合成樹脂等の絶縁材により一体成形した一対の絶縁パーツ5p,5qにより構成してなることを特徴とする。
【0010】
この場合、好適な実施の形態により、回転電機Mには、ロータリソレノイドMrを適用できる。
【0011】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施例に係る電気絶縁構造1を備えるロータリソレノイドMr(回転電機M)の構成部品について、図1〜図4を参照して説明する。
【0013】
2は、コイルボビンであり、軸方向に二分割した一対のボビン半体2p,2qからなる。一方のボビン半体2pは、内筒半部21pと、この内筒半部21pの180〔°〕対向した位置から径方向外方に突出したコイル巻付半部22pa,22pbと、各コイル巻付半部22pa,22pbの先端から周方向へ半円状に延設したバリヤ半部23pa,23pbを、合成樹脂等の絶縁材により一体成形する。この場合、バリヤ半部23paと23pb間には、所定の隙間Spi,Spjを設ける。また、図3に示すように、内筒半部21pの内面には、中心方向へ突出させることにより、リード線La,Lbを保持し、かつガイドするチャンネル状のガイド部24a,24bを一体に設けるとともに、バリヤ半部23pa,23pbには、リード線La,Lbを外部に導出する断面U形の導出口部25a,25bを一体に設ける。なお、他方のボビン半体2qも、基本的な構成は一方のボビン半体2pと同じとなるが、ガイド部24a,24b及び導出口部25a,25bを設けない点が一方のボビン半体2pとは異なる。
【0014】
これにより、一対のボビン半体2pと2qを、図1に示すように衝合わせれば、コイルボビン2を構成することができる。即ち、各内筒半部21p…同士が組合わさることにより内筒部21が構成されるとともに、各コイル巻付半部22pa…同士及び22pb…同士が組合わさることによりコイル巻付部22a,22bが構成され、さらに、各バリヤ半部23pa…同士及び23pb…同士が組合わさることによりバリヤ部23a,23bが構成される。この場合、コイル巻付部22a,22bの内側には、断面が矩形となり、かつ内端と外端が開口したコア収容空間が形成される。
【0015】
また、3はマグネットロータであり、磁性体により形成したシャフト31と、このシャフト31の外周面に固定した一対のマグネット32a,32bを有する。この場合、マグネットロータ3は、図3に示すように、シャフト31の径方向に形成した孔部に規制ピン33を挿入し、この規制ピン33の両端により、シャフト31の外周面に配した半円状をなす一対のマグネット32a,32bを位置規制するとともに、マグネット32a,32bは合成樹脂等の絶縁材を用いたモールド部34によりシャフト31上に固定する。なお、各マグネット32a,32bは、内側面と外側面に異極が現れるとともに、一方のマグネット32aの内側面はS極、他方のマグネット32bの内側面はN極となる。
【0016】
さらに、4は磁性体により形成したヨークであり、円筒形のヨーク本体部36と、このヨーク本体部36の両端開口を閉塞する端板部37p,37qを備える。なお、ヨーク4はロータリソレノイドMrのケーシングを兼ねている。各端板部37p,37qは、中心に、シャフト31が挿通する開孔部38p,38qを有するとともに、内側面には軸方向に突出した筒形の支持部39p,39qをそれぞれ一体に有する。各支持部39p,39qの外周面は、内筒部21の内周面に嵌合するとともに、各支持部39p,39qの内周面により、ベアリング41p,41qをそれぞれ保持する。
【0017】
一方、本発明に従って一対の絶縁パーツ5p,5qを用意する。この場合、絶縁パーツ5p…は、同一のものを二つ用意すれば足りる。この絶縁パーツ5pと5qにより絶縁成形体5が構成される。絶縁パーツ5pは、図1に示すように、全体をドーナツ状に形成し、かつ180〔゜〕対向位置に一対の段差面11i,11jを設けた端面部11と、段差面11i,11jから直角に突出した一対の側面部12i,12jを備え、合成樹脂等の絶縁材により一体成形する。この絶縁パーツ5pの基本的形状には、コイルボビン2に係合して位置決めされ、かつ当該コイルボビン2と組合わさることによりコイルCの表面全体を覆う形状を選定する。
【0018】
次に、本実施例に係るロータリソレノイドMrの組立方法(製造方法)について、各図を参照して説明する。
【0019】
まず、図1に示すように、一対のボビン半体2pと2qを衝合わせることにより、コイルボビン2を組立てる。この場合、組立てる際は、図3及び図4に示すように、一対の内筒半部21p…間,21q…間に、それぞれコア27a,27bを介在させる。これにより、各コイル巻付部22p,22qの内側に、コア27a,27bがそれぞれ収容される。
【0020】
そして、コイル巻付部22p,22qに、マグネットワイヤを順次巻付けることにより、コイル巻付部22p,22qにコイルCを巻回する。また、コイルCの巻始端,巻終端には、それぞれリード線La,Lbを半田付等により接続し、各リード線La,Lbは、それぞれガイド部24a,24bに収容し、さらに、導出口部25a,25bに収容することにより、図2に示すように、外部に導出する。
【0021】
また、コイルボビン2には、図1に示すように、一対の絶縁パーツ5p,5qを装着する。この場合、一方の絶縁パーツ5pは、図1に示すように、ボビン半体2pに対して矢印H方向から装着し、絶縁パーツ5pの端面部11を、ボビン半体2pの内筒半部21pとバリヤ半部23pa,23pb間に嵌合(係合)させるとともに、一対の側面部12i,12jを、隙間Spi,Spjに収容してバリヤ半部23pa,23pbの相互間に嵌合(係合)させる。これにより、絶縁パーツ5pは、ボビン半体2p(コイルボビン2)に位置決めされ、かつ仮固定される。なお、他方の絶縁パーツ5qも、ボビン半体2qに対して同様に装着する。
【0022】
以上の工程により、図2に示すアッセンブリユニットUを得ることができる。このアッセンブリユニットUは、一対の絶縁パーツ5p,5qとコイルボビン2が組合わさることにより、コイルCの表面全体が覆われる。したがって、このアッセンブリユニットUでは、コイルCの露出部分がほとんど無くなるため、例えば、製造中にコイルCのマグネットワイヤがほつれたり、コイルCを傷付ける虞れが解消され、コイルCに対する十分かつ確実な保護を図ることができる。
【0023】
一方、アッセンブリユニットUは、ヨーク本体部36に収容するとともに、コイルボビン2における内筒部21の内側に、マグネットロータ3を収容する。そして、この状態で、マグネットロータ3の一端側から、ベアリング41p及び端板部37pを装着するとともに、マグネットロータ3の他端側から、ベアリング41q及び端板部37qを装着する。この場合、ヨーク本体部36の両端には、断差係合部を形成してあるため、各端板部37p,37qを当該断差係合部に係合させるとともに、ヨーク本体部36の両端縁をカーリング(カシメ)することにより、各端板部37p,37qとヨーク本体部36を固定する。なお、ヨーク本体部36には、導出口部25a,25bを外部に露出させるための不図示の切欠部が形成されている。これにより、図3及び図4に示すロータリソレノイドMrを得ることができる。
【0024】
このロータリソレノイドMrは、リード線La,Lbに給電し、コイルCを励磁すれば、一対のコア27a,27bの先端磁極面に、それぞれ異極を発生させることができる。したがって、シャフト3に不図示のストッパ機構を付設し、コア27a,27bの先端磁極面の磁極の発生状態を制御すれば、シャフト3をストッパ機構により規制される所定角度範囲において反復的に回動変位させることができる。なお、この際、リターンスプリングを使用して単安定ロータリソレノイドとしてもよいし、リターンスプリングを使用することなく、双安定ロータリソレノイドとしてもよい。また、デッドポイントをずらした単安定ロータリソレノイドとすることもできる。
【0025】
よって、このような本実施例に係るロータリソレノイドMrによれば、図3に示すように、コイルCと各端板部37p,37q間、さらには、コイルCとヨーク本体部36間に、絶縁パーツ5p,5qが介在する電気絶縁構造1を構成することができる。したがって、ロータリソレノイドMr(回転電機M)に対して、小型化と高性能化の両立が要求され、磁性体、特に、導電性を有する金属により形成されるヨーク4とコイルC間の絶縁距離が短くなった場合であっても、絶縁パーツ5p,5q(絶縁成形体5)の存在により、十分かつ確実な電気絶縁性能を確保できる。しかも、製造時の自動化が容易となり、この側面からコストダウン,生産性向上及び品質向上を図ることができる。また、絶縁成形体5は、一対の絶縁パーツ5p,5qを備えるとともに、絶縁パーツ5pは、ドーナツ状に形成した端面部11とこの端面部11から直角に突出した一又は二以上の側面部12i,12jを、合成樹脂等の絶縁材により一体成形できるため、容易に実施可能であり、さらなる低コスト性に貢献できる。
【0026】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,材料,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。例えば、回転電機MとしてロータリソレノイドMrを例示したが、電動モータ等の任意の回転電機Mに適用することができる。また、ロータリソレノイドMrの極数として2極の場合を例示したが極数は任意である。
【0027】
【発明の効果】
このように、本発明に係るコイルの電気絶縁構造は、コイルを巻回したコイルボビンの中心に、マグネットロータを配するとともに、コイルボビンの外側に、磁性体により形成したヨークを配した回転電機において、コイルボビンに係合して位置決めされ、かつ当該コイルボビンと組合わさることにより、コイルの表面全体を覆う絶縁成形体を装着するとともに、絶縁成形体は、ドーナツ状に形成した端面部とこの端面部から直角に突出した一又は二以上の側面部を、合成樹脂等の絶縁材により一体成形した一対の絶縁パーツにより構成してなるため、次のような顕著な効果を奏する。
【0028】
(1) 回転電機に対して、小型化と高性能化の両立が要求され、コイルとヨーク間の絶縁距離が短くなった場合であっても、絶縁成形体の存在により、十分かつ確実な電気絶縁性能を確保できる。
【0029】
(2) 製造時の自動化が容易となり、この側面からコストダウン,生産性向上及び品質向上を図ることができる。
【0030】
(3) コイルボビンを有するアッセンブリユニットでは、コイルの露出部分がほとんど無くなるため、製造中にコイルのマグネットワイヤがほつれたり、コイルを傷付ける虞れが解消され、コイルに対する十分かつ確実な保護を図ることができる。
【0031】
(4) 絶縁成形体を、一対の絶縁パーツを備えて構成するとともに、絶縁パーツを、ドーナツ状に形成した端面部とこの端面部から直角に突出した一又は二以上の側面部を、合成樹脂等の絶縁材により一体成形してなるため、容易に実施可能であり、さらなる低コスト性に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係るロータリソレノイド(回転電機)に備えるコイルボビン及び絶縁成形体(絶縁パーツ)の斜視図、
【図2】同ロータリソレノイドに備えるコイルボビンに絶縁成形体(絶縁パーツ)を装着したアッセンブリユニットの斜視図、
【図3】同ロータリソレノイドの縦断面図、
【図4】同ロータリソレノイドの横断面図、
【符号の説明】
1 電気絶縁構造
2 コイルボビン
3 マグネットロータ
4 ヨーク
5 絶縁成形体
5p 絶縁パーツ
5q 絶縁パーツ
11 端面部
12i 側面部
12j 側面部
C コイル
M 回転電機
Mr ロータリソレノイド

Claims (2)

  1. コイルを巻回したコイルボビンの中心に、マグネットロータを配するとともに、前記コイルボビンの外側に、磁性体により形成したヨークを配した回転電機におけるコイルの電気絶縁構造において、前記コイルボビンに係合して位置決めされ、かつ当該コイルボビンと組合わさることにより、前記コイルの表面全体を覆う絶縁成形体を装着するとともに、前記絶縁成形体は、ドーナツ状に形成した端面部とこの端面部から直角に突出した一又は二以上の側面部を、合成樹脂等の絶縁材により一体成形した一対の絶縁パーツにより構成してなることを特徴とするコイルの電気絶縁構造。
  2. 前記回転電機は、ロータリソレノイドであることを特徴とする請求項1記載のコイルの電気絶縁構造。
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