JP3725245B2 - バンパスプリング - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両サスペンション装置のショックアブソーバに付設されるバンパスプリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3に車両サスペンション装置の全体概略図を示す。図中、車両のサスペンション装置は、ショックアブソーバ1とその上半部周りに配設される懸架スプリング2を備え、上記ショックアブソーバ1は、チューブ状の本体部11とその内部に上下動自在に嵌装されるピストンロッド12を有している。該ロッド12の上端部は、車体に固定されるアッパーサポート3に設けた筒状保持部31に挿通され、ナット32で固定される。
【0003】
上記懸架スプリング2はその上下をスプリングシート21、22にて保持されており、上部スプリングシート21下方の上記ピストンロッド12周りには、蛇腹状に成形された筒状弾性部材よりなるバンパスプリング4が嵌着してある。このバンパスプリング4は、ショックアブソーバ本体部11と車両側部材の間に介在して、ショックアブソーバ1の伸縮による両者の干渉を防止し、衝撃を緩和している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記バンパスプリング4は、十分な剛性を与えるため、通常、高硬度のゴム材料で構成される。ところが、この場合、ばね特性に非線形特性がなく、急激にばねが高くなるため、初期の乗り心地が良くない。また、打音や干渉音が発生しやすいという不具合があった。
【0005】
しかして、本発明の目的は、バンパスプリングのばね特性に非線形性をもたせて乗り心地を良くすること、打音や干渉音の発生を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明請求項1の構成において、バンパスプリングは、ショックアブソーバのピストンロッド周りに嵌着した蛇腹状の筒状弾性部材よりなり、筒状弾性部材を、内周側の第一の筒状弾性体の外周の蛇腹状の全体に第二の筒状弾性体を同心状に積層して筒状の二層構造とするとともに、第一の筒状弾性体を第二の筒状弾性体よりも低硬度で、かつ、高級脂肪酸アミドを含有する弾性材料で構成し、第二の筒状弾性体を第一の筒状弾性体よりも高硬度の弾性材料で構成した硬度の異なる筒状弾性体を同心状に積層して構成したバンパスプリングである。
そして、車両側部材とショックアブソーバ本体部の間に介在して、上記ショックアブソーバの伸縮による衝撃を緩和する。
【0007】
このように、バンパスプリングを硬度の異なる筒状弾性体を積層して構成することで、そのばね特性に非線形性を与えることができる。また、各筒状弾性体を同心状に積層したのでばねの調整が容易にできる。従って、従来の高硬度の筒状弾性体とこれより低硬度の筒状弾性体とを組み合わせれば、低硬度の筒状弾性体の作用でばね定数(静ばね定数)を下げることができ、適度な剛性を保持しつつ、初期当たりを柔らかくして乗り心地を向上させることができる。
【0008】
具体的には、例えば、上記筒状弾性部材を、第一の筒状弾性体をJIS硬度Hs70未満の低硬度の弾性材料で構成し、第二の筒状弾性体をJIS硬度Hs70〜80の高硬度の弾性材料で構成したバンパスプリングである。
【0009】
このように、二層構造とする場合、高硬度の第二の筒状弾性体を外周側に配すると、筒状弾性部材が弾性変形しやすく、より柔らかいばね特性とすることが可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施の形態を示す。図中、バンパスプリングを構成する筒状弾性部材4は二層構造で、内周側の厚肉の第一の筒状弾性体41と、その外周に積層したこれより薄肉の第二の筒状弾性体42を有し、上記第一の筒状弾性体41の筒内周にショックアブソーバのピストンロッド(図略)が挿通保持されるようになしてある。上記筒状弾性部材4は、全体を蛇腹状に成形して、入力時に全体が均一に伸縮するようになしてあり、ショックアブソーバ本体と当接する下端部に応力が集中しないようにしている。
【0012】
上記第一の筒状弾性体41と第2の筒状弾性体42は、硬度の異なる弾性材料で構成され、その組み合わせおよび肉厚等を適宜選択することにより筒状弾性部材4の全体のばね特性を調整することができる。ここでは上記第二の筒状弾性体42を、通常のバンパスプリング材同様の高硬度の弾性材料、例えば、JIS硬度Hs70〜80程度のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で構成し、第一の筒状弾性体41をこれより低硬度の弾性材料、例えば、JIS硬度Hs70より低硬度のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で構成する。
【0013】
TPOは、エチレンと炭素数3ないし4のα−オレフィンとからなる共重合体ゴム(EPM、EPDM)および軟質ポリマーをベースとし、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系熱可塑性樹脂、軟化剤等を配合してなり、強度と弾性率のバランスのとれた材料物性を示すため、バンパスプリング用材料として好適に使用される。
【0014】
なお、上記第一の筒状弾性体41および第二の筒状弾性体42を構成する弾性材料は、TPOに限らず、他の熱可塑性エラストマー、あるいはゴム材料を使用してももちろんよい。いずれの場合も、筒状弾性体41、42を同系材料で構成すると両者の接合性が向上するので好ましい。
【0015】
上記構成によれば、従来の高硬度の筒状弾性体42とこれより低硬度の筒状弾性体41を積層した構成としたので、ばね特性の非線形性を大きくすることができ、低荷重時はばね定数(静ばね定数)が低く、荷重増とともにばね定数が高くなるような荷重特性とすることができる。従って、適度な剛性を保持しつつ、初期当たりを柔らかくして乗り心地を向上し、打音、干渉音を解消することができる。また、各筒状弾性体41、42を同心状に積層したので、例えば筒状弾性体を軸方向に積層した場合に比べてばねの調整が容易で、所望のばね特性を実現できる。
【0016】
また、弾性変形しにくい高硬度の筒状弾性体が内周側にあると、これに追従する外周側の低硬度の筒状弾性体も変形しにくくなるが、本実施の形態では、低硬度の第一の筒状弾性体41を内周側に配したので、その弾性変形が妨げられず、より柔らかいばね特性とすることができる。
【0017】
なお、上記実施の形態では、バンパスプリングを内周側の第一の筒状弾性体41と外周側の第二の筒状弾性体42の二層構造としたが、これに限らず、硬度の異なる三層以上の筒状弾性体を組み合わせた構成とすることもできる。また、内周側の第一の筒状弾性体41を低硬度の弾性材料で、外周側の第二の筒状弾性体42を高硬度の弾性材料で構成したが、これに限らず、内周側が高硬度に外周側が低硬度になるような構成としてもよい。このように、所望のばね特性が得られるように、その構成を適宜変更することができる。
【0018】
図2は本発明の第二の実施の形態で、本実施の形態では内周側の第一の筒状弾性体41を高摺動性ゴム材料で構成している。なお、高摺動性ゴム材料は、一般に硬度が低く、上記第一の実施の形態同様、低硬度弾性材料としての機能を併せ有する。従って、外周側の第二の筒状弾性体42は高硬度のゴム材料、例えばJIS硬度Hs70〜80程度の天然ゴム系材料で構成する。この場合も、筒状弾性体41、42の肉厚、比率等は所望のばね特性に応じて適宜選択される。
【0019】
ここで、高摺動性ゴム材料としては、例えば、高級脂肪酸アミドを含有するゴム材料が挙げられる。高級脂肪酸アミドは、具体的には、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の炭素数12〜22の飽和・不飽和脂肪酸アミドが挙げられ、使用中にこれらがブルーミングして潤滑剤として機能し、摺動性を向上させる。この時、高級脂肪酸アミドの配合量は、通常、5〜20重量%の範囲とするのがよい。
【0020】
上記構成によれば、内周側の第一の筒状弾性体41を低硬度かつ高摺動性のゴム材料で構成したので、上記第一の実施の形態の効果に加え、さらに以下のような効果が得られる。すなわち、第一の筒状弾性体41が高摺動性であるため、その内周に保持されるピストンロッドとの摩擦係数が小さくなる。このため両者の間にすべりが発生して、見かけのばね定数(動ばね定数)が低下し、乗り心地をより向上させることができる。また、摺動性が良好であるため、高アンダーカット形状でも離型性に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示すバンパスプリングの全体断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態を示すバンパスプリングの全体断面図である。
【図3】従来のバンパスプリングを車両サスペンション装置に取り付けた状態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
1 ショックアブソーバ
11 ショックアブソーバ本体部
12 ピストンロッド
2 懸架スプリング
21、22 スプリングシート
3 アッパーサポート
31 筒状部材
32 ナット
4 筒状弾性部材
41 第一の筒状弾性体
42 第二の筒状弾性体

Claims (2)

  1. ショックアブソーバのピストンロッド周りに蛇腹状に成形した筒状弾性部材を嵌着して車両側部材とショックアブソーバ本体部の間に介在させ、上記ショックアブソーバの伸縮による衝撃を緩和するようになしたバンパスプリングであって、上記筒状弾性部材を、内周側の第一の筒状弾性体の外周の蛇腹状の全体に第二の筒状弾性体を同心状に積層して筒状の二層構造とするとともに、上記第一の筒状弾性体を上記第二の筒状弾性体よりも低硬度で、かつ、高級脂肪酸アミドを含有する弾性材料で構成し、上記第二の筒状弾性体を上記第一の筒状弾性体よりも高硬度の弾性材料で構成した硬度の異なる筒状弾性体を同心状に積層して構成したことを特徴とするバンパスプリング。
  2. 上記筒状弾性部材を、上記第一の筒状弾性体をJIS硬度Hs70未満の低硬度の弾性材料で構成し、上記第二の筒状弾性体をJIS硬度Hs70〜80の高硬度の弾性材料で構成した請求項1記載のバンパスプリング。
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