JP3725014B2 - ブローチ盤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はボールねじを用い、ブローチ切削速度が60m/minを超える高速立形ブローチ盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の立形ブローチ盤には油圧駆動方式とメカニカル駆動方式(ボールねじ、またはラック&ピニオン駆動)がある。図4に示すような従来の立形油圧式ブローチ盤51は、油圧シリンダー55に油圧ポンプ60から圧油を送り、油圧シリンダーのロッド先端56に結合されているラム(摺動台)59を上下に移動させている。ラム59には、プールヘッド15が取り付けられプールヘッドにブローチ3を差し込みテーブル16上のジグ17に設置した加工物4を切削する構造である。係る構造のブローチ盤51の油圧シリンダー55の上下速度は、圧油の油量により決まるが、シリンダーのパッキンの特性や寿命の点から一般的には20m/minまでが使用範囲である。なお、52は本体フレーム、61は油タンク、62は油圧ポンプ用電動機、63はバルブスタンド、64はクーラント用の切削油タンク、65はクーラントポンプである。
【0003】
一方、従来のメカニカル式ブローチ盤では、「モータとボールねじ駆動方式」、「モータとラック&ピニオン駆動方式」等がある。モータとボールねじタイプはモータとボールねじを直結あるいは、ギヤー減速またはタイミングベルト減速を行っている。また、モータとラックピニオンタイプは、ウォーム減速を行っているものが一般的である。しかし、ブローチ加工におけるブローチ引き力又は押し力は例えばブローチ径がφ50程度のもので50KNと高出力を要するためボールねじのピッチは比較的小さく、また前述のように減速機等を介するのでブローチの切削速度は3〜10m/minが一般的であった。また、ブローチ加工ラインでは、ブローチ工程の前後工程より加工サイクルタイムが短く、かかる切削速度で充分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、ブローチ加工を専門に実施しているユーザでは、前後工程の加工速度を上げる必要がないので、切削速度を上げることにより加工時間を短縮することができる。また、本願出願人が出願した特願2000−107418号(本願出願時では未公開)で述べたように、切削速度を40〜60m/minとすることにより、被加工部の硬度が50〜68HRcの被削物を超硬ブローチにて加工でき熱処理歪みを除去することができることを知得した等、ブローチ加工速度の高速化のメリットが出てきた。
【0005】
しかしながら、上述した従来の油圧式ブローチ盤においては、パッキン寿命を犠牲にしても油圧駆動方式でより高速を出すには、油圧ポンプの吐出油量を多くしてそれに応じたバルブ配管を使用すればよいが起動停止時の加減速制御が複雑になり、複雑な油圧回路となり、制御用バルブを多く必要とし、油圧装置により床面積も大きくなる。さらに、立ち上がり時の加速度は、より短時間で目標速度に到達する事が必要であるが本発明者らのテストでは油圧式では背圧などの影響で0.2〜0.3Gが限度であり、60m/minの高速化は困難である。また、エネルギー的には油圧のポンプ効率が低く無負荷時においてもある程度の電力が必要となり、機械の1サイクル当たりのエネルギーは、従来の3〜10m/min領域と40〜60m/minの高速領域では大差が無く、無駄なエネルギーが多い等という問題があった。
【0006】
また、メカニカル式ブローチ盤においては、一般に使用されているモータは交流モータ、サーボモータであり、その最大回転数は1800〜2000rpmのため従来のボールねじでの直結方式や減速機を介した駆動方式では高速化が困難であった。一方、モータを高速回転が容易な、直流モータとしても、直流モータはブラシを使用しておりブラシが摩耗する問題点がある。また、直流モータを制御するためには例えばワードレオナード方式では誘導電動機と直流発電機が必要であり、高価となり騒音や床面積に難点があり実用的ではないという問題があった。
【0007】
本発明の課題は前述した問題点に鑑みて、ブローチ加工速度が40m/min〜80m/minの高速加工が可能なブローチ盤を提供することである。また、高速化にあたって床面積の増大を少なくし、制御もし易い、さらにはエネルギー損失の小さい、構造も簡単なブローチ盤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1においては、立形ブローチ盤のフレーム本体の正面に配置されたブローチ及びワークの軸線に対し前記正面を挟んで対峙する軸線上に、前記フレーム本体の上部に載置されたACサーボモータと、フレーム本体上部と下部とで軸支された2条ねじで構成されたボールねじと、前記ACサーボモータと前記ボールねじ上部とのトルクを伝達する継ぎ手と、前記ボールねじに螺合して上下に移動するボールねじナットと、を有し、さらに、前記ナットと一体にされ前記ブローチ又はワークを把持可能にされたラムと、前記ラムの両側に設けられた直動ころがり軸受と、前記直動軸受を介して前記ラムが前記フレーム本体に対し上下方向に移動可能にな直動ガイドレールと、を設けたブローチ盤を提供することにより上記課題を解決した。
【0009】
ブローチ及びワークの軸線にフレーム本体を挟んで対峙させて、フレーム本体の上部にACサーボモータを載置したので、高出力の大型のモータを使用できる。また、1台のモータで制御するので制御が簡単である。また、モータとボールねじを直結し、2条ねじで構成されたボールねじを用いるので、モータの回転数をあげることなく同回転数に対して2倍のストロークを得られるので容易に高速にすることができる。さらに、ナットと一体にされたラムの両側に直動ころがり軸受を設けフレームに直動ガイドレールを介して上下移動可能に配置したので抵抗及び芯振れが少なく60m/minを超える高速においても精度の高いブローチ加工が可能である。
【0010】
なお、ボールねじの条数は3条以上でもよいがナットの加工が複雑になること、ナットの長さが長くなる等のデメリットがあり2条が好ましい。また、加工出力を確保し、加工速度を上げるためモータを大出力にするが、2条ねじを用いることにより、ACサーボモータ自体の回転数は従来の1800〜2000rpm程度のものでよく、特殊なものとはならない。
【0011】
ナットはシングルナットでもよいが、ナットにかかる負荷の増大を防止するために、ナットの長さを伸ばす必要があるが、ナットの加工が困難になるのでダブルナットとした(請求項2)。
【0012】
2条にすることにより、速度は速まるが、50KNの荷重に耐えうる負荷能力を持たせる必要がある。そこで、ボールねじのボール径を前記2条ねじの外径の0.2〜0.25倍とすることにより負荷容量を増し、高速度を得た(請求項3)。ボールねじの耐久寿命時間の設定にもよるが、ボール径が0.2未満では面圧が高く高負荷に耐えられない。ボール径が0.25超ではねじ軸谷径が小さくなりボールねじ軸に対する規定の座屈荷重に対して耐えられない。なお周速を押さえるために外径を小さくするのが好ましい。
【0013】
ACサーボモータは電気的なブレーキで制御する事ができるが、電気(制御を含む)の供給が遮断された場合には別に機械式のブレーキが必要である。なぜならボールねじ及び直動ころがり軸受を用いるが、両者とも摩擦が小さいので、ブローチ又はワークの重量、取付時の外力、ラムの重量により容易に直動ころがり軸受が動き、ボールねじが回転する。そこで、ACサーボモータとの間に前記ボールねじの回転を拘束可能な機械式ブレーキを設けた。これにより、ラムの自然降下を防ぐ(請求項4)。
【0014】
従来のような10m/min程度の低速加工においては、ブローチ加工により発生する切削屑は広い範囲に飛び散ることが少ない。しかし、本発明のブローチ盤においては60m/min、さらには80m/minの高速加工をするので、ブローチ切削屑は広い範囲で飛び散るおそれがある。そこで、ラムの上部とフレーム本体正面上部間を覆い、ブローチ加工による切屑が前記ボールねじのナットから上の部分及び直動ころがり軸受にかからないようにカバーを設けるのがよい(請求項5)。
【0015】
前述した構成のブローチ盤により、ブローチ加工力は50KN以上であって、ブローチ加工速度は80m/minが可能である従来より高速のブローチ盤を提供するものとなった(請求項6)。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の例を示すブローチ盤の縦断面図、図2は図1のA−A線拡大断面図である。本発明立形ブローチ盤1は、床面に水平に設置された機械ベース18上にフレーム本体2が垂直に設けられている。フレーム本体2の正面2aの作業者側の上方に前方フレーム16が図示しないボルトにてフレーム本体に連結固定されている。前方フレーム16上には加工ジグ17が取り付けられ、ブローチ切削加工されるワーク4が取り付けられる。ワーク4の上部にはワーク軸芯と同芯になるようにブローチ3が配設されている。フレーム本体2の正面2aの加工ジグ17に配置されたワーク4の軸線に対し正面2aを挟んで対峙する軸線上に、フレーム本体2の上部に架台19を介してACサーボモータ5がその出力軸5aを下にして載置されている。ACモータの出力軸5aと同芯に2条ねじで構成されたボールねじ6がフレーム本体の上部と下部に設けられたころがり軸受20,21で軸支されている。一般に速度60m/min以上で移動する工作機械に使用されるボールねじのボール径はボールねじの外径の0.2未満であるが、本実施の形態においてはボールねじ6の外径の0.2〜0.25倍と一般の高速用ボールねじのボールより大きくされボールとねじ溝の接触面を大きくしている。
【0017】
上部ころがり軸受20はボールねじの上方の力(切削時荷重)及びラジアル荷重を受けるようにされた4列のころがり軸受20aと下方の力(ラム戻り時荷重)及びラジアル荷重を受ける1列のころがり軸受20bが下から順に軸受箱20cを介してフレーム本体2に取り付けられている。下部ころがり軸受21は、上部が軸受内に塵埃等が入らないようにされたシールが設けられたボールねじ振れ止め用として1列のラジアル軸受がフレーム本体2に軸箱22を介して設けられている。下部ころがり軸受21に対し、ボールねじ6はラジアル方向に規制されているが上下方向には伸縮可能に嵌合している。また、ボールねじ6等の自重や加工荷重等の上下の荷重は上部ころがり軸受20で支持するようにされている。なお、この上部ころがり軸受20はボールねじサポート用スラストアンギュラ玉軸受け高負荷タイプを用いた。
【0018】
ACサーボモータ5の出力軸5aには継ぎ手8、機械式ブレーキ12、ボールねじ6の上部6aとが連結されている。継ぎ手8はフレキシブルディスクカップリング、機械式ブレーキ12は無励磁ブレーキと呼ばれる一般的なものであり、説明を省略する。
【0019】
ボールねじ6に螺合して上下に移動するボールねじのダブルナット7がラム9に嵌合固定されている。ダブルナット7はダブルナットスキマタイプを用いダブルナットでの予圧時の接触面積の減少を防ぐ。また、シングルナットでは研削ができない2条ねじのような長いねじ溝を可能にし、許容荷重を増大している。ダブルナット7と一体にされたラム9はブローチ3を把持するための把持(つかみ)部15がフレーム本体2の正面2aを超えて図1で見て逆L字に張り出しており、さらに、両側に水平方向(図2でみて上下)に張り出すガイド部9a,9aが設けられている。両ガイド部9aにはころが内側面に配置された凹部10a,10aがフレーム本体2の反正面側(図2でみて右方)に向くように直動ころがり軸受10がラム9の上下方向にそれぞれ3列ずつ直列に配置されている。フレーム本体2にはボールねじ6を挟んで上下に延びる縦リブ2d,2dが両側に設けられ直動ころがり軸受10の凹部10aと嵌合しころが転動する転動面が形成された直動ガイドレール11が取り付けられている。この直動ガイドレール11はボールねじ6の軸心と平行に配置されラム9を精度良く上下に移動可能に支持する。
【0020】
ラム9の上部に巻き取り式のスライドカバー13の先端13aが両側幅一杯に固定され、本体フレーム正面上部2bにスライドカバー13の巻き取り部13cが取り付けられている。これにより、直動ころがり軸受10と直動ガイドレール11、ボールねじナット7とボールねじ部6への切り屑侵入を防ぐ。なお、多くの切削屑はラム9のつかみ部15上方及び周辺に溜まるが、ラムの下方に飛び散るものもあり、ラムの下方にも上下を逆にしてスライドカバー14が設けられている。
【0021】
【実施例】
係るブローチ盤において、ACサーボモータ5を37KW、定格回転数2000rpmの高出力サーボモ−タとし、ボールねじ6の外径φ63mm、ボール溝ピッチ20mm、リード40mm(2条ねじ)、ボール径φ12.7mm(外径の0.202倍)のボールねじを使用して運転した。図3は無負荷運手時の速度線図結果である。図3に示すように、無負荷時の起動停止時の加速度1Gを達成し、切削速度80m/minを実現した。さらに、切削速度60m/min時に50KNの推力を得ることができた。なお、50KN出力で60m/minを得るためには、2条ねじとするほか一般的なボールねじのボール径がφ9.525mmを使用した場合はボールねじの外径はφ80mmが選択されるが、本実施例ではボール径を大きくすることにより、ボールねじの外径をφ63mmとし小型化ができた。なお、ACサーボモータは射出成形機用に市販されているものを用いた。また、ACサーボモータの制御にはNCを用いている。
【0022】
また、切削速度60m/min、C/T(サイクルタイム)=12.8秒、角形スプライン溝数4(大径φ34、内径φ30、幅4)、微量オイルミストを切削部に噴霧するセミドライ加工を行ったところ、1サイクルあたりの、ACサーボモータ消費電力量は0.0067Kwh、セミドライ加工用などのエアーコンプレッサ消費電力量0.0077Kwh、合計0.0144Kwhとなった。一方、従来の油圧式5トンブローチ盤を用いて切削速度5m/min、C/T=23.3秒の他は同一条件で運転した結果、1サイクルあたりの油圧ポンプの電動機消費電力量は0.0138Kwh、エアーコンプレッサ消費電力量0.0151Kwh、合計0.0289Kwhとなり、本発明においては約50%の省エネルギーを達成した。
【0023】
【発明の効果】
本発明においては、立形ブローチ盤のフレーム本体の上部に高出力のACサーボモータを載置し、2条ねじで構成されたボールねじを用い、ラムの両側に配置された直動ころがり軸受でガイドしたので、モータの回転数を高くすることなく、又、簡単な構造で、ブローチ加工速度が40m/min〜80m/minの高速加工が可能なブローチ盤を提供するものとなった。また、従来の加工速度を含め3〜80m/minの加工も容易にできるものとなった。また、従来の油圧式に較べ省エネルギーを図れるのは勿論、高速域においては予想を超える省エネルギー効果を得るものとなった。
【0024】
また、ダブルナットの採用により、さらに、ボール径をボールねじの外径の0.2〜0.25倍と負荷容量を増し、ボールねじ外径を小径化できるので機械を小型にできると同時に、周速を下げることができるのでより高速が可能である。また、機械式ブレーキを設けたので、非通電時や、修理時のラムの自然降下を防ぎ、また、射出成形機用の内蔵ブレーキを持たないものが多い高出力形のACサーボモータを使用できる。また、ボールねじナット及び直動ころがり軸受のカバーを設けることにより高速での運転により適したものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すブローチ盤の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例のブローチ盤を用いて行った無負荷運手時の速度線図結果である。
【図4】従来の立形油圧式ブローチ盤の縦断面図である。
【符号の説明】
1 (立形)ブローチ盤
2 フレーム本体
2a フレーム本体の正面
2b フレーム本体正面上部
3 ブローチ
4 ワーク
5 ACサーボモータ
6 ボールねじ
7 ボールねじナット
8 継ぎ手
9 ラム
10 直動ころがり軸受
11 直動ガイドレール
12 機械式ブレーキ
13 カバー
Claims (6)
- 立形ブローチ盤のフレーム本体の正面に配置されたブローチ及びワークの軸線に対し前記正面を挟んで対峙する軸線上に、前記フレーム本体の上部に載置されたACサーボモータと、フレーム本体上部と下部とで軸支された2条ねじで構成されたボールねじと、前記ACサーボモータと前記ボールねじ上部とのトルクを伝達する継ぎ手と、前記ボールねじに螺合して上下に移動するボールねじナットとを有し、さらに、前記ナットと一体にされ前記ブローチ又はワークを把持可能にされたラムと、前記ラムの両側に設けられた直動ころがり軸受と、前記直動軸受を介して前記ラムが前記フレーム本体に対し上下方向に移動可能になる直動ガイドレールと、を有することを特徴とするブローチ盤。
- 前記ボールねじナットはダブルナットであることを特徴とする請求項1記載のブローチ盤。
- 前記ボールねじのボール径は前記2条ねじの外径の0.2〜0.25倍であることを特徴とする請求項1又は2記載のブローチ盤。
- 前記ボールねじとACサーボモータとの間に前記ボールねじの回転を拘束可能な機械式ブレーキが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のブローチ盤。
- 前記ラムの上部とフレーム本体正面上部間を覆い、ブローチ加工による切屑が前記ボールねじのナットから上の部分及び直動ころがり軸受にかからないようにカバーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のブローチ盤。
- 前記ブローチ盤のブローチ加工力は50KN以上であって、ブローチ加工速度は80m/minが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のブローチ盤。
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