JP3724926B2 - 回転陽極型x線管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転陽極型X線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転陽極型X線管は、電子ビームを放出する陰極や、X線を発生する陽極ターゲットなどを真空容器内に配置した構造をしている。陽極ターゲットは、軸受を形成する回転体と固定体によって支えられ、真空容器外に配置したステータコイルから与えられる回転磁界の働きで回転するようになっている。陽極ターゲットを支える軸受には、通常、ボールベアリングのようなころがり軸受、あるいは液体金属潤滑剤を用いた動圧式すべり軸受が用いられる。
【0003】
動圧式すべり軸受は、回転体と固定体の各軸受面を20μm程度の狭い間隙に保ち、また、ラジアル方向およびスラスト方向の例えば固定体の軸受面に、ヘリンボンパターンのらせん溝を形成している。そして、ガリウム(Ga)や、ガリウム−インジウムー錫(Ga−In−Sn)合金など回転動作時に液状となる金属潤滑剤を軸受面の間隙、およびらせん溝に満たした構造になっている。
【0004】
なお、動圧式すべり軸受を用いた回転陽極型X線管の例は、特公平3−77617号、特開平2−244545号、特開平2−227947号、特開平2−227948号、および特開平8−241686号の各公報に開示されている。
【0005】
ところで、動圧式すべり軸受は、玉軸受に比べて回転抵抗が大きいため、動圧式すべり軸受を用いた場合、陽極ターゲットの回転速度は毎分ほぼ3000回と、比較的低い速度で連続回転させている。回転速度が低いと、陽極ターゲットへの入力負荷を高くすることができないので、大きくて重い、熱容量の大きな陽極ターゲットが使用される。
【0006】
回転陽極型X線管を搭載したX線撮影装置は、さまざまな方向から被撮影体の撮影を行っている。したがって、撮影方向の素早い転換などで、重量のある陽極ターゲットに大きな加速度が加わり、軸受部分にもいろいろな方向から不規則に大きな荷重が加わってくる。このように大きくて不規則な荷重に対応するために、動圧式すべり軸受を構成する固定体の径の一部を大きくした構造のものが実用化されている。
【0007】
ここで、固定体の一部の径を大きくした動圧式すべり軸受を用いた従来の回転陽極型X線管について図3を参照して説明する。符号31は、X線を発生する陽極ターゲットで、陽極ターゲット31は第1回転体32に連結されている。第1回転体32はほぼ円筒状に形成され、上方部分は径の小さい径小部32aに形成され、下方部分は径が大きい径大部32bに形成されている。そして、下方部分の径大部33bに円筒状の第2回転体33に連結されている。第2回転体33は、熱および電気の伝導度の高い銅で形成されている。
【0008】
また、第1回転体32の内部空間に円柱状の固定体34が配置され、第2回転体33の内部空間には、固定体34に連結された筒状の陽極支持部材35が位置している。
【0009】
固定体34は、その上方部分Uは径が小さい径小部34aに形成され、中間部分Mは径が大きい径大部34bに形成され、また、下方部分Lは径が小さく形成され、陽極支持部材35との連結部34cになっている。
【0010】
径小部34aは、環状の凹部36を挟んで上方と下方の2つの領域に分けられ、それぞれの領域に、ラジアル方向軸受を構成するヘリンボンパターンのらせん溝A1、A2が形成されている。径大部34bには、図の上下両面に、スラスト方向軸受を構成するサークル状のヘリンボンパターンのらせん溝B1、B2が形成されている。
【0011】
そして、ラジアル方向のらせん溝A1、A2、スラスト方向のらせん溝B1、B2、および第1回転体32と固定体34の各軸受面の間隙にGa合金等の液体金属潤滑剤が満たされ動圧式すべり軸受が構成されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の回転陽極型X線管は、動圧式すべり軸受を用いる場合、固定体34の径小部34aを上方と下方の2つの領域に分け、それぞれの領域にラジアル方向軸受けを構成するらせん溝A1、A2を形成している。また、径大部34bの上下両面にそれぞれ、スラスト方向軸受を構成するらせん溝B1、B2を形成している。
【0013】
そして、回転する陽極ターゲット31の半径方向の動きをらせん溝A1、A2などによるラジアル方向軸受の軸受機能で支持し、また、軸方向の動きをらせん溝B1、B2などによるスラスト方向軸受の軸受機能で支持している。この場合、陽極ターゲット31の回転軸が傾かないようにするためには、ラジアル方向軸受のらせん溝を、例えば2箇所に設ける必要がある。
【0014】
そのため、従来の回転陽極型X線管は、固定体34の径小部34aを上下の2つの領域に分け、それぞれの領域にラジアル方向軸受のらせん溝A1、A2を形成している。
【0015】
このように、固定体34の径小部34aに2組のらせん溝A1、A2を設けた場合、固定体34の径小部34aの軸方向の長さが長くなり、全体の構造が大きくなってしまう。
【0016】
この発明は、上記した欠点を解決するもので、小型で回転が円滑な回転陽極型X線管を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明は、径が異なる径小部および径大部を有する固定体と、この固定体との間に軸受間隙を保って嵌合され、かつ陽極ターゲットが固定された回転体と、前記固定体の径小部と前記回転体との間に形成された第1のラジアル方向の動圧式すべり軸受と、前記固定体の径大部と前記回転体との間に形成されたスラスト方向の動圧式すべり軸受と、ラジアル方向およびスラスト方向の前記各動圧式すべり軸受、および前記軸受間隙に供給された動作中に液状となる金属潤滑剤とを具備した回転陽極型X線管において、前記固定体の径大部と前記回転体との間に第2のラジアル方向の動圧式すべり軸受を形成したことを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態について図1を参照して説明する。符号11は、X線を発生する円盤状の陽極ターゲットで、重金属で形成されている。陽極ターゲット11はナット12によって回転軸13に固定され、また、回転軸13は回転体14の一端に連結されている。回転体14は全体がほぼ有底円筒状で、鉄合金からなる内側円筒14aと、銅からなる外側円筒14bとを嵌め合わせ、一体に固着した構造になっている。回転体14の内側には、回転体14の内面との間に20μm程度の狭い軸受間隙を保って、鉄合金からなる円柱状の固定体15が挿入されている。また、回転体14の下端部を実質的に閉じるようにスラストリング16が設けられている。
【0019】
固定体15は、図の上方部分Uは径の小さい径小部15aに形成され、中間部分Mは径が大きい径大部15bに形成され、また、下方部分Lは陽極支持部15cになっている。
【0020】
そして、図の上下方向に延びる径小部15aと回転体14との軸受間隙部分および径大部15bと回転体14との軸受間隙部分には、それぞれ図1(b)の符号Aおよび符号Bで示すようなラジアル方向の動圧式すべり軸受17、18を構成するヘリンボンパターンのらせん溝が20μm程度の深さで同じ向きに形成されている。
【0021】
また、図の左右方向に延びる径大部15bの上下両面と回転体14との軸受間隙部分には、図1(c)の符号Cで示すようなスラスト方向の動圧式すべり軸受19、20を構成するヘリンボンパターンのらせん溝が20μm程度の深さでサークル状に形成されている。
【0022】
また、固定体15には、その中心部が軸方向に沿ってくり抜かれリザーバ21が形成されている。そして、リザーバ21から放射方向に通路22が設けられている。通路22は、スラスト方向軸受19、20が形成された固定体15の径大部15bの上下両面に通じ、例えば、径大部15bの上下両面との間にそれぞれ、例えば90度間隔で4個ずつ設けられている。
【0023】
上記した構成において、回転体14と固定体15との軸受間隙や、ヘリンボンパターンのらせん溝、リザーバ21、通路22などに液体金属潤滑剤が充填される。
【0024】
この場合、回転体14が回転状態に入ると、リザーバ21に充填されていた液体金属潤滑剤の一部は、リザーバ21上端の開口21aから回転体14との間隙Sを経て、固定体15の径小部15aと回転体14との間に形成されたラジアル方向軸受17に供給される。また、リザーバ21に収納された液体金属潤滑剤の一部は、放射方向の通路22を通して固定体15の径大部15bの上下両面に形成されたスラスト方向軸受19、20に送られ、さらに、固定体15の径大部15bに形成されたラジアル方向の動圧式すべり軸受18へと送られる。
【0025】
なお、動圧式すべり軸受19、20が形成された面に接続する通路22の位置は、液体金属潤滑剤が外側へと移動するため、できるだけ内側、例えば径小部15aに接する位置が効果的である。
【0026】
次に、この発明の他の実施形態について図2を参照して説明する。図2では、図1に対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明は一部省略している。
この実施形態では、固定体15の径大部15bの上下両面を結ぶ垂直方向の通路23が、リザーバ21を囲んで例えば90度間隔に4個形成されている。この構成の場合も、通路23は液体金属潤滑剤を収納する機能を有し、また、通路23に収納された液体金属潤滑剤は固定体15の径大部15bに形成されたスラスト方向の動圧式すべり軸受19、20に送られ、そこから、さらに固定体15の径大部15bに形成されたラジアル方向の動圧式すべり軸受18へと送られる。この場合も、液体金属潤滑剤は外側へと移動するため、通路23を設ける位置はできるだけ内側、例えば径小部15aに接する位置が効果的である。
【0027】
上記した各実施の形態では、固定体の径大部と回転体との間にラジアル方向の動圧式すべり軸受を形成している。このため、固定体の径小部に形成するラジアル方向の動圧式すべり軸受は1つでよく、固定体の径小部が短くなり、全体の構造を小形にできる。
【0028】
また、回転体が回転する中心軸に沿って固定体に潤滑剤用のリザーバを形成し、このリザーバと、スラスト方向の動圧式すべり軸受が形成された固定体の径大部の面とを結ぶ通路を形成している。この場合、固定体に形成されたリザーバや通路に液体金属潤滑剤が収容される。そして、リザーバや通路に収納された液体金属潤滑剤が固定体の径大部に形成されたスラスト方向の動圧式すべり軸受に供給される。これによって、スラスト方向の軸受機能の低下が防止され、円滑な回転が維持される。
【0029】
また、スラスト滑り軸受が形成された固定体の径大部の2つの面を結ぶ通路を形成した場合も、液体金属潤滑剤が通路に収容され、通路から、固定体の径大部に形成されたスラスト方向の動圧式すべり軸受に液体金属潤滑剤が供給される。これによって、スラスト方向の軸受機能の低下が防止され、円滑な回転が維持される。
【0030】
【発明の効果】
この発明によれば、径小部および径大部にそれぞれラジアル方向軸受のらせん溝が形成されているので、特に軸方向の長さを短くでき、小型で回転が円滑な回転陽極型X線管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を説明する概略の断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態を説明する概略の断面図である。
【図3】従来例を説明する概略の断面図である。
【符号の説明】
11…陽極ターゲット
12…ナット
13…回転軸
14…回転体
14a…内側円筒
14b…外側円筒
15…固定体
15a…径小部
15b…径大部
16…スラストリング
17、18…ラジアル方向の動圧式すべり軸受
19、20…スラスト方向の動圧式すべり軸受
21…リザーバ
22…通路
Claims (4)
- 径が異なる径小部および径大部を有する固定体と、この固定体との間に軸受間隙を保って嵌合され、かつ陽極ターゲットが固定された回転体と、前記固定体の径小部と前記回転体との間に形成された第1のラジアル方向の動圧式すべり軸受と、前記固定体の径大部と前記回転体との間に形成されたスラスト方向の動圧式すべり軸受と、ラジアル方向およびスラスト方向の前記各動圧式すべり軸受、および前記軸受間隙に供給された動作中に液状となる金属潤滑剤とを具備した回転陽極型X線管において、前記固定体の径大部と前記回転体との間に第2のラジアル方向の動圧式すべり軸受を形成したことを特徴とする回転陽極型X線管。
- 固定体の径小部と回転体との間、および、固定体の径大部と前記回転体との間に形成されたラジアル方向の動圧式すべり軸受は、それぞれ1つずつである請求項1記載の回転陽極型X線管。
- 回転体が回転する中心軸に沿って固定体に潤滑剤リザーバが形成され、かつ、前記リザーバとスラスト方向の動圧式すべり軸受が形成された前記固定体の径大部の面とを結ぶ通路が形成されている請求項1記載の回転陽極型X線管。
- スラスト方向の動圧式すべり軸受が形成された固定体の径大部の2つの面を結ぶ通路が形成されている請求項1記載の回転陽極型X線管。
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