JP3724807B2 - 活性化発光ナノクリスタリン粒子をドープしたガラスマトリックス - Google Patents

活性化発光ナノクリスタリン粒子をドープしたガラスマトリックス Download PDF

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Description

発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般的には、発光ガラス(luminescent glass)、特に、ナノクリスタリン(nanocrystalline)半導体粒子とルミネセンス(luminescence)についての活性化剤(activator)をドープした(doped)ガラスに関する。
2.背景技術の説明
素材半導体(bulk semiconductor)及び絶縁材料(本明細書中では、通常、無機固体と称する)のルミネセンスは、10年来、集中的に研究が行われている。これらの材料の発光中心(luminescent center)の種類は、概略、数種のカテゴリーに分類し得る;1)電子−ホール対(electron-hole pair)の再結合(recombination)による放射(emission);2)励起子放射(exciton emission);3)充満(完全)(filled)電子殻を有する不純物による広帯域放射(broadbabd emision)及び4)遷移金属及び稀土類イオンのごとき不完全電子殻を有する不純物による狭帯域放射(narrowband emission)。不純物原子とイオンは活性化剤(及び/又は、2種以上の不純物を必要とする場合には、共活性化剤)と呼ばれる。発光無機固体、特に、添加された不純物によって活性化される発光無機固体はリン光体(phosphor)として知られている。広範囲の種類のリン光体について多数の重要な商業的な及び軍事的な用途がある。リン光体の用途を簡単に(従って、必然的に不完全に)列記すれば以下の通りである。
1)カソードルミネセンス(陰極発光)(cathodoluminescence)
カソード発光リン光体(cathodoluminescent phosphor)はテレビジョンセット、レーダースクリーン及びオシロスコープデイスプレーを包含する陰極線管(CRT)で使用されている。典型的なカソード発光リン光体はカドミウム及び亜鉛の硫化物である。カラーテレビジョンスクリーンによって放射される色は加速された電子と、そのルミネセンスの周波数(frequency)(色)について選択された不純物によって活性化されたリン光体との相互反応によるものである。
2)エレクトロルミネセンス(電圧発光)(electroluminescence)
エレクトロルミネッセンスは物質を横切る電場を適用した際の光の発生である。電圧発光リン光体についての用途は多数であり、例えば、照明及びデイスプレー技術が包含される。
3)熱ルミネセンス(熱発光)(thermoluminescence)
熱発光リン光体は加熱したときに光を放射する。放射は、紫外線(UV)又はイオン化放射線を使用するリン光体の予備励起により生じる捕捉電子(trapped electron)の解放(detrapping)によって生起する。熱発光物質は高エネルギーイオン化放射線への人体及び装置の暴露を監視するための線量計(dosimetor)として使用される。
4)放射線ルミネセンス(radioluminescence)
放射線発光リン光体は高エネルギーイオン化放射線に暴露されたときに光を放射し、しばしば、放射シンチレーターと呼ばれる。無機シンチレーターは、環境の監視及び核装置における人体の保護を包含する多数の場合にイオン化放射線の存在を検出するのに使用される。
5)増感ルミネセンス(sensitized luminescence)
赤外線(IR)刺激性(infrared stimulable)リン光体は赤外線に暴露されたときに光を放射する。この放射は、紫外線によりリン光体を励体させたときに予め形成される捕捉電子の移動及び再結合により生起する。これらのリン光体は、紫外線の励起エネルギーがリン光体中に貯蔵される(捕捉される)ということにおいて、原理的に熱発光リン光体に類似している。これらのリン光体は、例えば、赤外線の検出及び画像化(imaging)及び光学的データーの保存を包含する多数の用途を有する。
上記用途で使用されている多数の無機固体リン光体は1〜数10ミクロンの範囲の粒子寸法を有する多結晶質粉末として入手される。文字通りの10年間の研究の重点的な範囲は、リン光体の構造と形状を改善するための研究にあった。単結晶リン光体、薄膜リン光体又はガラス中に埋封されたリン光体を生長させるための試みは種々の程度で成功している。これらの努力についての動機をより良好に例示するために、1μm又はそれ以上の粒子寸法を有する粉末として入手される典型的な多結晶質リン光体に注目する。大きな結晶は、無機固体の融点が非常に高いこと及び活性化剤金属イオンが存在することのため、しばしば、生長することができない。この粉末は可視光線を照射したとき、小さい粒子によって生起される高度に効率的な散乱のために白色に見える。効率的な散乱のために、リン光体粉末はそれ自身のルミネセンスに対し透明性ではない。この理由のため、リン光体を非常に薄い層として使用しなければならないか、又は、そのルミネセンスが著しく低減されるであろう。粉末リン光体の最後の不利益はその機械的な脆弱性である。粉末リン光体はなんらかの手段で保護しなければならず、通常、高温、有害な化学的環境又は摩耗に耐えることができない。粉末リン光体を透明な状態で製造することができないために、しばしば、粉末リン光体の機能が著しく制限を受ける。上記した問題はいずれか一つの用途に特有のものではなく、多数の用途において多数のリン光体に共通するものである。単結晶のリン光体を生長させることが可能な場合においても多くの問題が残されている。この結晶は機械的に脆弱であるか又は熱ショックを受けやすい。ある種の結晶は吸湿性であるか、又は、腐食性の穏やかな化学的環境にさえも耐えることができない。ある種のリン光体は、これらが老化したとき、結晶からの有毒物質の拡散のために健康に有害なものになる。
これらの欠点の幾つかを回避するために多結晶質リン光体をガラス材料中に配合するための研究が行われている。歴史的には、2つの基本的な方法が使用されている。ガラスのストライキング(striking)(熱処理)の結果として得られるガラス溶融物からの拡散的沈殿(diffusive precipitation)により、置換体無機物質(substituent inorganic material)と活性化剤からのリン光体ナノクリスタル(nanocrystal)を生長させることが試みられている。活性化剤イオンは、通常、ガラスマトリックスに非常に溶解性であり、結晶と共に沈殿するよりもガラス中に残留する傾向があるため、この試みは成功しなかった。第2の技術はミクロンサイズの(micron-sized)の結晶質リン光体をガラス(又は重合体)マトリックス中に埋封することであった。この方法により多結晶質リン光体が低融点ガラスと重合体マトリックスの両者に配合されたが、ミクロンサイズの粒子に伴う光学的問題(散乱)は改善されなかった。
B.ナノクリスタリン無機固体
無機固体、特に、半導体のナノメートルサイズの(nanometer-sized)結晶は、ナノクリスタルの基本的な物理的性質とその電子機器及び光学装置における潜在的な用途に興味があるため、過去10年間に亘って広く研究されている。物理的特性に与える小寸法の影響は、しばしば、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)と呼ばれており、ナノクリスタル自体、量子ドット(quantum dot)と呼ばれている。
ガラスマトリックス中で半導体量子ドットを生長させるか又は沈着させるために種々の技術が開発されている。I-VII及びII-VI半導体のナノクリスタルを前記した拡散的沈殿法を使用して、アルミノボロシリケートガラス中で生長させている。II-VI半導体量子ドットは種々のゾル−ゲルガラス製造法及び高周波(rf)スパッタリング法を使用して製造されている。II-VI半導体量子ドットを沈殿反応及びメタロオルガニック化学蒸着(metalloorganic chemical vapor deposition)(MOCVD又はCVD)法を使用して多孔質バイコルTM(VycorTM)(TMは登録商標)(Corning社)ガラス中に沈着させており、III-V半導体量子ドットも種々のCVD技術を使用して多孔質バイコルガラス中で調製されている。
従来の半導体量子ドットの研究は、主として、量子ドットの光学的特性、特に、非線形の(non-linear)光学的特性に集中している。材料加工の問題点は量子ドットの純度(化学量論性)、結晶の寸法及び分布及び結晶度に関連している。商業的に入手されるカドミウム硫化物/セレン化物ガラスのごとき半導体-ドープガラスからのルミネセンスは室温で測定されている。ルミネセンスは直接的再結合(recombination)に起因するバンド端部に近接する狭いバンド及び多数の著書によりトラップ(trap)又は欠陥(defect)に関連する浅い表面に起因するとされる、広い、強度の低い(less intense)、赤色に移行した(red-shifted)バンドとして出現する。ルミネセンスの特徴は半導体の化学量論性に依存することが認められている。CuCl量子ドットからの励起子及びビエキサイトン(biexciton)は低い温度(T≦108K)で観察されており、ビエキサイトンから励起子への転移(biexcition to exciton transition)によるレイジング(lasing)も同様に77Kで報告されている。
従来、ガラスマトリックス内で活性化ナノクリスタリンリン光体を発達させついで適当な熱処理を行うことは成功しなかった。
発明の要約
本発明の目的はガラスマトリックス内に分布したリン光体の透明復合体を形成させることである。
本発明の別の目的は機械的に及び化学的に安定なリン光体を提供することにある。
本発明の更に別の目的は無機発光ナノクリスタルをドープしたガラスマトリックスを形成させることにある。
これらの目的及び他の目的はガラスに無機ナノクリスタルについての活性化剤を包含する無機ナノクリスタルをドープすることにより達成される。典型的には、製造は多孔質ガラスマトリックス中に活性化剤とナノクリスタリン半導体粒子を沈着させることにより達成される。
【図面の簡単な説明】
下記の好ましい態様及び添付図面を参照することにより、本発明のより完全な理解がより容易に得られるであろう。
第1図は、硫酸銅ドーピング溶液中の硫酸銅濃度が変化していること以外、実施例1の方法によって製造された試料についての、硫酸銅濃度の関数としての熱ルミネセンスシグナルを示す。実線は蛍光励起(fluorescence excitation)を示し、一方、点線は蛍光放射(fluorescence emission)を示す。
第2図は、硝酸亜鉛ドーピング溶液中の硝酸亜鉛濃度が変化していること以外、実施例1の方法によって製造された試料についての、硝酸亜鉛濃度の関数としての熱ルミネセンスシグナルを示す。
第3図は熱ルミネセンスグローピークの位置に対するZnS濃度の影響を示す。曲線(a)はバイコルTMガラス中の銅活性化(1mg Cu/mlドーピング溶液)ZnSナノクリスタルの濃度が低い場合(ドーピング溶液中の硝酸亜鉛1g/100mlに相当)に得られる典型的な熱ルミネセンスを示し、一方、曲線(b)はバイコルTMガラス中の銅活性化(1mg Cu/ml ドーピング溶液)ZnSナノクリスタルの濃度がより高い場合(ドーピング溶液中の硝酸亜鉛10g/100mlに相当)における、より高いルミネセンスフローピークの生長を示す。
第4図は実施例1に従って製造した銅活性化ZnS/バイコルTMガラス複合体の励起及び放射スペクトルを示す。
第5図は実施例2に従って製造したユーロピウム活性化KCl/バイコルTMガラス複合体の励起及び放射曲線を示す。
好ましい態様の説明
ナノクリスタリン無機固体/ガラス複合リン光体は多孔質ガラスマトリックス内に無機固体と活性化剤を沈着させることにより製造される。沈着はガラスをドーピングするための既知の化学的方法、例えば、液体相溶液からの沈殿又はCVDを使用して達成し得る。最も好都合な方法は、多くの場合、液体相溶液からの沈殿であろう。使用される正確な沈着方法及び沈着のために使用されるパラメータは、沈着される材料がナノクリスタリンであり、ガラスがその特性を保持している限り、臨界的ではない。一般的には、沈着された結晶の寸法は結晶を沈着させるガラスの孔の寸法によって制御される。ガラスの孔は沈着された結晶の生長を制限し、従って、沈着された結晶は、この結晶が沈殿した孔の直径より小さい直径を有する。しかしながら、多孔質ガラス中の孔は、実際には、曲りくねった、場合により相互に連通している(interconnected)チャンネルであり、これは孔のように挙動する。従って、ガラス中のドーパント(dopant)の濃度が平均有効孔径(average effective pore size)に対して大き過ぎるものになった場合には、ナノクリスタルはチャンネルを通して生長し、相互に連結し、ガラスの透明性を減少させる大きな結晶に生長するであろう。
無機固体と活性化剤の沈着を行った後、熱処理を行って活性化剤のナノクリスタル中への拡散を促進しかつ結晶相の性質と品質を制御し得る。この熱処理は活性化剤の拡散を実質的に促進するのに十分な温度で実施される。典型的には、活性化温度は、また、多孔質ガラスを部分的に、又は恐らくは完全に団結させる(consolidate)ために選択される。所望ならば、多孔質ガラスを、該ガラスを団結させるのに必要な温度以下の温度で活性化し得る。しかしながら、活性化温度はガラスを液化するほど高い温度であってはならない。7930バイコルTM(Corning社)については、典型的には、約800〜1000℃の活性化温度を使用し得る。活性化温度はガラスの融点以下の温度でなければならない。ガラスの少なくとも部分的な団結(孔の少なくとも一部のつぶれ)に伴うアニーリングはガラスのTg以上の温度を必要とする。
活性化の時間は、どの程度の団結(団結が生起する場合)を必要とするかにより変動し得る。成分を混合する順序は臨界的ではないが、ガラスの全ての成分を活性化工程中に存在させなければならない。
適当な多孔質ガラスは質密に充填された(densly packed)、曲りくねった、ナノメーターサイズの、相互に連通している孔又はチャンネルを有する非晶質マトリックスである。正確な化学的組成は臨界的ではない。かかるガラスの一例は、多孔質バイコルTM(Corning社)である。バイコルTMガラスは、硼珪酸ガラスを熱処理して硼素相と珪酸塩相とに分離しついで熱処理したガラスを酸エッチング(acid etch)にかけ、それによって、硼素相の大部分を除去し、多孔質96%シリカガラスを残留させることにより得られる96%シリカガラス(96%silica glass)である。バイコルTMガラスはシート、棒、チューブ及び不規則な形状を包含する種々の寸法と形状で得られ得る。適当な多孔質ガラスマトリックスは周知のゾル-ゲルガラス技術を使用しても製造し得る。これらのガラスは金属エステル又はアルコキシドの酸触媒又は塩基触媒加水分解により調製される。単一成分又は多成分ガラスを製造することができ、例えば、珪酸塩、チタン酸塩、ゲルマニウム酸塩及びジルコニウム酸塩ガラスが包含される。ゾル-ゲルガラスの孔径、孔径の分布及び孔の密度は加水分解条件及び乾燥工程の詳細によって制御し得る。多孔質ゾル-ゲルガラスも種々の寸法と形状並びに薄いフォルムの形で製造し得る。ゾル-ゲル法によって製造し得る多孔質ガラスマトリックスとしては純粋なSiO2、純粋なAl2O3(アルミナガラス)、純粋なTiO2及びこれらを種々の特性を有するガラスを提供するために種々の割合で混合した混合物が挙げられる。
ナノクリスタリン半導体粒子(ナノクリスタル)及びその活性化材の少なくとも1種をドープすべき原料ガラスにおいては、孔は、典型的には、約10〜約100オングストロームの平均直径、多くの場合、約40〜約75オングストロームの平均直径、最も多くの場合、約40〜約50オングストロームの平均直径を有する。バイコルガラスTM(Corning 7930)は直径で約40オングストロームの平均孔寸法を有する。直径で40オングストローム以下の平均孔寸法はゾル-ゲル誘導ガラスを使用して得ることができる。直径で10オングストローム以下の平均孔寸法は溶液を孔中に拡散させることが困難であるという理由で実際的ではない。直径で100オングストロームより大きい平均孔寸法は使用される活性化剤と半導体の濃度によって変動するが、ナノクリスタルを形成させるには大き過ぎ得る。より大きな孔寸法のものから製造した場合には、ガラスの光学的特性は低下する。更に、粒子の粒度分布はガラスの、それ自体のルミネセンス放射(luminescence emission)に対する透明性を保持するように選択すべきである。この目的のためには、活性化剤が約100オングストロームより大きい直径を有する粒子を形成しないことが好ましい。100オングストロームより大きい直径を有する粒子はガラスマトリックスの透明性を減少させ、従って、ガラス内のその存在は最小限にすべきである。
25〜30容量%の孔密度は、単離されかつ分離されたナノクリスタリン構造体の形成を可能にするという理由で理想的である。孔の容量が大き過ぎる場合には、半導体結晶が余りにも近接しかつ結合してナノクリスタルより大きい粒子を形成し得る。低い孔密度は、単に、ガラス中に導入され得る半導体物質の量を低減させるに過ぎない。この状態はドープ繊維−光学ケーブル(doped fibre-optic cable)のごときある種の用途には望ましい。
本発明の材料における半導体粒子のナノクリスタリン性は臨界的である。半導体粒子は寸法の小さいナノクリルスタルであるため、これをドープしたガラスはその透明性を保持している。ナノクリルスタルが十分に小さく(約80オングストローム以下)かつ粒度分布が狭く、従って、僅かの粒子(存在するとして)が120オングストローム以上の場合には、ナノクリルスタルは量子が閉じ込められた(quantum-confined)ものになる。この量子閉じ込め(quantum-confinement)の効果は多くの環境において好ましいが、量子閉じ込め半導体粒子は本発明の多数の利点を得るのには必要でない。
ナノクリスタリン光体/ガラス複合体を製造するために多孔質ガラス中に沈着させるべき適当な無機固体リン光体物質の選択は、最も有用なかつ効率的な素材リン光体(bulk phosphor)に関する従来の知識に従って行われる。無機固体と活性化剤の多数の組合せを使用して製造される種々の形式のリン光体の多数のものが文献的に知られらている。最も有用なリン光体のあるものは、遷移金属又は希土類イオンで活性化された亜鉛の硫化物又はカルシウム、マグネシウム及びストロンチウムのごときアルカリ土金属の硫化物である。活性化ZnSリン光体はカソードルミネセンス、放射線ルミネセンス、エレクトロルミネセンス及びIR感度(IR sensitivity)を包含する種々の用途において広範囲の利用性が見出だされている。種々の活性化剤及び共活性化剤が知られておりまた所望の用途についてその最適な相対的濃度が知られている。例えば、有用なZnSリン光体は下記のもの:希土類イオン、銀、銅、鉛、塩化物及びマンガンイオンから選ばれた活性化剤及び(必要な場合)共活性化剤を使用して製造されている。上記の記載は完全ではない。
半導体ナノクリルスタルをルミネセンス的に(luminescently)活性化するのに有効な活性化剤濃度、即ち、ナノクリスタリン半導体を適当な波長での電子的励起に応答して可視及び赤外領域の光を放射することができるものにせしめるのに有効な活性化剤濃度を提供するのに十分な活性化剤(又は活性化/共活性化剤)を使用すべきである。
ドーパントの濃度と種類により、異なる物理的及び光学的特性を有するナノクリスタリン半導体ドープガラスが得られる。例えば、銅活性化硫化亜鉛ガラスは下記のごとき傾向を示す:
−ドーピング溶液中の硫化銅濃度を水100cm3当り、0から約0.1gに増大させた場合、銅濃度が増大するにつれて熱ルミネセンスが増大する。銅濃度を更に増大させた場合には、熱ルミネセンスの強度が減少する(第1図)。
−ZnS濃度が高い場合、ガラスからの熱ルミネセンスの放射が減少する(第2図)。中間濃度のZnSは高温で熱ルミネセンスグローピークを与える(第3図)。
これらの傾向は本発明のドープガラス組成物の全ての特徴であり得る。低い濃度では、ドーパントの濃度を増大させると、発光結晶(luminescent crystal)の数が増大し、従って、全体のルミネセンスが増大する。活性化剤及び/又は半導体の濃度があまりに高くなった場合には、結晶が大きく生長し過ぎてガラスが透明性とルミネセンスを失う。中間濃度の半導体においては、発光ナノクリスタリン半導体粒子が相互に作用して(comminucate)、その電子エネルギー水準と特徴的なスペクトルが若干変化する。また、ガラスのそれ自体の蛍光に対する透明性を保持するためには、ガラス中の約100オングストロームより大きい粒子径を有する活性化剤粒子の数を最小にすべきである。約100オングストロームより大きい粒子径を有する活性化剤粒子の形成を防止することは望ましいことでさえあり得る。恐らくは、但し必ずではないが、活性化剤はナノクリスタリン半導体粒子の格子内で置換し得る(substitute)。しかしながら、活性化は活性化剤とナノクリスタリン半導体粒子との間の近接効果(proximity effect)の結果であり得る。
本発明の活性化ナノクリスタリン無機固体リン光体、例えば、ZnSがその例であるII-VI型半導体、砒化ガリウムがその例であるIII-V型半導体、珪素がその例であるIV-IV型半導体、塩化カリウムがその例であるハロゲン化アルカリ又は硫化カルシウムがその例であるアルカリ土硫化物から製造し得る。活性化剤及び/又は共活性化剤イオンはユーロピウムがその例である希土類金属又はマンガンがその例である遷移金属から選択し得る。共活性化剤は、しばしば、塩素イオンがその例であるハロゲンイオンを含有し得る。ユーロピウムを活性化剤として使用することにより青色及び赤色混合ルミネセンスが得られる。
本発明のドープガラスはカソードルミネセンス、エレクトロルミネセンス、熱ルミネセンス、放射線ルミネセンス又は増感ルミネセンスを示し得る。励起後の光の放射は、励起直後であるか、又は、遅延し得る(エネルギートラッピング)。観察されるルミネセンスの正確な形式は、特徴的な方法において、使用される半導体及び活性化剤並びにこれらの材料のガラスの濃度に依存するであろう。観察されるルミネセンスの形式は励起条件に依存する。特定の形式のルミネセンスを増大させるために、リン光体を化学的に取扱いかつ推測し得る。
本発明のドープガラスの製造についての一般的な、例示的な手順を以下に記載する。この一般的な手順は例示に過ぎない。例示されているドーピング法は溶液からの沈殿であるが、他のドーピング法、ドーパント及び多孔質ガラスも使用し得ることを理解すべきである。
典型的なドーピング法においては、多孔質バイコルTMガラスのごとき多孔質ガラスの小片を硝酸亜鉛のごとき水溶性金属塩の水溶液に浸漬する。水溶液を多孔質ガラス中に完全に拡散させる。金属塩溶液濃度はゼロから金属塩の溶解限度(硝酸亜鉛については、水1cm3当り、1.8g)の間で変動させ得る。硫化亜鉛のごとき金属硫化物ドーパントが望ましい場合には、これは、例えば、チオアセトアミドの水溶液を水溶性塩の水溶液に添加することにより、その場で、形成させ得る。チオアセトアミド/金属塩溶液の反応は、溶液の温度に応じて1時間〜数時間進行する。温度が低い場合(約25℃〜約50℃)、反応は遅く、多孔質ガラス片中での金属硫化物の分布が不均一になる。金属硫化物を形成させる別の方法は金属をドープしたガラス片を約1時間、硫化水素(H2S)ガスに接触させることである。H2Sガスは多孔質ガラス片中に迅速に拡散し、沈着した金属塩と反応する。ついで、所望のドーパントを含有する多孔質ガラスを硫化銅又は塩化ユーロピウムのごとき金属塩活性化剤の水溶液に浸漬する。金属塩活性化剤の濃度はゼロから金属塩の溶解限度(硫酸銅については、水1cm3当り、約0.4gであるが、硫酸銅の場合には、0.2gを越えても改善は認められない)の間で変動させ得る。この溶液を、典型的には室温付近で多孔質ガラス中に拡散させる。ついで、ガラスを、ガラスの割れを防止するために、1時間に亘って、ゆっくり乾燥させる。
温度を約300℃までゆっくり(数時間で)上昇させついで温度をより急速に(1時間で)、典型的には約1100℃−1150℃以下まで上昇させる。ガラスを3〜24時間、高温に保持して、ガラスリン光体を完全に活性化させる。ガラスを1〜3時間で室温に冷却させる。かく得られたガラスは、ドープされた活性化ガラスの吸収バンドとオーバーラップする放射線波長に暴露したとき高度に発光性である。銅で活性化したZnSについては、300nm以下の紫外線波長に暴露したとき、強い青色−緑色ルミネセンスを発生する。
本発明を説明した上で、本発明を実施するのに最も良好な態様を含めて、本発明の特定の用途を例示するための実施例を例示する。これらの特定の実施例は本発明を限定するものではない。
実施例
実施例1−硫化亜鉛/銅ドーピング
0.1gの硝酸亜鉛6水和物を100mlの蒸留水に溶解した。得られた溶液に1ccの濃硝酸を添加した。ついで、1gの多孔質コーニング(Corning)7930バイコルTMガラスを酸溶液に添加し、この溶液中にガラスを1〜2時間浸漬してガラス中に硝酸亜鉛溶液を完全に拡散させた。ついで、ガラスを溶液から取出し、乾燥させた。
1.0gのチオアセトアミドを100mlの蒸留水に溶解し、1mlの濃硝酸を添加することによりチオアセトアミド溶液を調製した。ついで、チオアセトアミド溶液を30℃に設定した恒温浴中に置いた。ついで、乾燥させた亜鉛担持多孔質ガラスを硫化物溶液中に装入し、硫化物と少なくとも10時間反応させてナノクリスタリンZnSを形成させた。ついで、多孔質ガラス試料を溶液から取出し、乾燥させた。
0.01gの硫酸銅を100mlの水に溶解した。ついで、硫化亜鉛含有ガラス試料を硫酸銅溶液に装入し、1〜2時間浸漬して多孔質ガラス中に硫酸銅溶液を完全に拡散させた。ついで、銅ドープ硫化亜鉛含有ガラス試料を硫酸銅溶液から取出し、乾燥させた。
ついで、乾燥させた硫化亜鉛/銅ドープ多孔質ガラスを室温のオーブン中に置いた。ついで、オーブン温度を約1℃/分の速度で300℃の温度まで上昇させた。次の1時間の間に、オーブン温度を1150℃まで上昇させた。ガラス試料を少なくとも3時間、1150℃で燒成しついで室温まで冷却した(冷却はオーブンを閉鎖し、その中で試料を冷却させるか、又は、試料をオーブンから取出すことにより行い得る)。
ZnSリン光体ガラスの吸収スペクトルは約260nmで最大を示し、広いテール(tail)が約320nmまで伸長していた。この吸収特性はZnSナノクリスタライト(nanocrystallite)(量子ドット)内での励起子吸収(excitonic absorption)の特徴であった。吸収ピークの位置は励起子の量子閉じ込めによる励起子エネルギー(exciton energy)のブルーシフト(blue shift)を反映していた。吸収スペクトルの幅はガラス複合体中の量子ドットの寸法の分布を反映していた。UV光線によるナノクリスタリンリン光体の励起の後、エネルギーの銅イオンへの移行が生起する。放射は励起された銅イオンから発生する。放射は、素材(bulk)銅活性化ZnSリン光体からの放射と同様、約500nmに中心がある広いバンドをその特徴とする。放射の量子効果も素材(bulk)銅活性化ZnSリン光体に類似している。放射の一時的な減退(temporal decay)は素材リン光体におけるものより速い。第4図には銅活性化ZnS量子ドットリン光体複合体の試料の放射及び蛍光励起スペクトルが示されている。実線の曲線は240nm〜350nmの光学的励起起源(optical excitation source)を走査し、全放射を監視することにより得られた。太い点線の曲線は試料を266nmで励起することにより得られた放射曲線である。試料の元素分析の結果から硫化亜鉛と銅の各々の濃度は5ppm以下であることが判った。
実施例2−多孔質バイコルガラス内で製造された、ユーロピウウムイオンで活性化されたKCl
水100ml中の1gのKClの溶液を使用してガラスを直接ドープし、ついで水100ml中の1gのEuClの溶液をドープしたこと以外、実施例1の方法を使用した。硫化物は使用しなかった。
KClリン光体ガラスの吸収スペクトルは約240nmで最大を示し、広いテール(tail)が約300nmまで伸長していた。この吸収特性はハロゲン化アルカリの結晶格子内のユーロピウムイオンによる吸収の特徴である。吸収ピークの位置と幅はユーロピウムイオンによって示される、結晶母体環境の種類と影響を反映している。UV光線によるナノクリスタリンリン光体の励起の後、放射は励起ユーロピウムイオンから発生した。放射はEu+3放射による615nmでの狭ピークの他に、Eu+2イオンからの放射による約450nmに中心のある広いバンドをその特徴とする。放射と蛍光励起スペクトルは第5図に示されている。太い実線の曲線は224nm〜350nmの光学的励起源を走査し、全放射を監視することにより得られた。細い実線の曲線は試料を266nmで励起させることにより得られた放射スペクトルである。
本発明の多数の変更及び変化が上記の教示から可能であることは明らかである。従って、請求の範囲の範囲内で、本発明を上記で特に説明した以外の方法で実施し得ることが理解される。

Claims (20)

  1. ナノクリスタリン半導体粒子をドープしたガラスマトリックスと、該ガラスマトリックス内の、上記ナノクリスタリン半導体粒子のための金属活性化剤とからなる発光ガラスであって、上記金属活性化剤はナノクリスタリン半導体粒子をルミネセンス的に活性化するのに有効な濃度で存在しておりそして上記発光ガラスはそのルミネセンス放射に対して透明性である発光ガラス。
  2. 前記ガラスは放射線の吸収直後に可視又は赤外スペクトル中の光線を放射する、請求項1に記載の発光ガラス。
  3. 前記ガラスは、放射線を吸収した際に、捕獲電子を形成させそして上記捕獲電子を解放した後に、可視又は赤外スペクトル中の光線を放射する、請求項1に記載の発光ガラス。
  4. 前記ガラスは、加熱の際に前記電子を解放する、請求項3に記載の発光ガラス。
  5. 前記ガラスは赤外線に暴露された際に前記捕獲電子を解放する、請求項3に記載の発光ガラス。
  6. 前記ナノクリスタリン半導体粒子はII-VI及びIII-V半導体からなる群から選ばれる、請求項1に記載の発光ガラス。
  7. 前記ナノクリスタリン半導体粒子はZnS及びGaPからなる群から選ばれ、前記活性化剤は遷移金属イオン、稀土類イオン又はハロゲン化物イオンである、請求項6に記載の発光ガラス。
  8. 前記活性化剤はCu+1又はCl-である、請求項7に記載の発光ガラス。
  9. 多孔質ガラスマトリックスにナノクリスタリン半導体粒子を、上記ガラス中のナノクリスタリン半導体粒子が発光ガラスのそのルミネセンス放射に対する透明性を著しく低減させることのない粒度分布を有するようにドープし、
    上記多孔質ガラスマトリックスに上記ナノクリスタリン半導体粒子をルミネセンス的に活性化するのに有効な量の活性化剤を、上記ガラス中の上記活性化剤が発光ガラスのそのルミネセンス放射に対する透明性を著しく低減させることのないように添加し;
    前記活性化剤とナノクリスタリン半導体粒子をその内部に含有する上記多孔質ガラスマトリックスを約800℃〜上記多孔質ガラスマトリックスが溶融する温度以下の温度に加熱することにより、上記多孔質ガラス中のナノクリスタリン半導体粒子を活性化することからなる、ルミネセンス放射に対して透明性である発光ガラスの製造方法。
  10. 前記ドーピング工程の後に、前記多孔質ガラスマトリックスを少なくとも一部、圧壊する工程を更に包含する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記多孔質ガラスマトリックスは、前記ドーピング工程前には、約10〜100オングストロームの平均孔径を有する、請求項9に記載の方法。
  12. 前記多孔質ガラスマトリックスは、前記ドーピング工程前には、約80オングストローム以下の平均孔径を有する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記多孔質ガラスマトリックスは、前記ドーピング工程前には、約40〜約80オングストロームの平均孔径を有する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記多孔質ガラスマトリックスは、前記ドーピング工程前には、約40〜約50オングストロームの平均孔径を有する、請求項13に記載の方法。
  15. 前記多孔質ガラスマトリックスを浸漬させた溶液から前記ナノクリスタリン半導体粒子を沈殿させることにより、上記多孔質ガラスマトリックスに上記ナノクリスタリン半導体粒子をドープする、請求項9に記載の方法。
  16. 前記多孔質ガラスマトリックスを浸漬させた溶液から前記活性化剤を沈殿させることにより、多孔質ガラスマトリックスに上記活性化剤をドープする、請求項15に記載の方法。
  17. 前記多孔質ガラスマトリックスに前記ナノクリスタリン半導体粒子を化学蒸着によりドープする、請求項9に記載の方法。
  18. 前記多孔質ガラスマトリックスに前記ナノクリスタリン半導体粒子をメタロオルガニック化学蒸着によりドープする、請求項17に記載の方法。
  19. 前記多孔質ガラスマトリックスを金属塩を含有する溶液に浸漬し;該金属塩をガス状H2S、H2Se又はH2Teに暴露することにより該金属塩を金属カルコゲナイド(chalocogenide)ドーパントに転化することからなる工程により前記多孔質ガラスマトリックスに前記ナノクリスタリン半導体粒子をドープする、請求項9に記載の方法。
  20. 前記金属塩は金属ハロゲン化物であり、ガス状H2Sに暴露することにより金属硫化物に転化する、請求項19に記載の方法。
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