JP3724770B2 - 光波長ルーティング装置 - Google Patents

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  • Optical Communication System (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光波長ルーティング装置に関し、特に、光通信システムにおける波長分割多重伝送に使用される波長ルーティング機能を有する光波長ルーティング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来のアレイ導波路回折格子型光合分波器で構成された光波長ルーティング装置を示す。図7(A)は、従来の光波長ルーティング装置の全体の概略を示す。この従来の光波長ルーティング装置は、基板3上に、M個の入力ポート7を有する入力導波路1と、入力導波路1に接続され、入力導波路1からの光を回折によって所定の角度で拡散する入力側スラブ導波路4と、入力側スラブ導波路4の出力側に接続され、複数の導波路8によって入力側スラブ導波路4からの光を伝送する回折格子型のアレイ導波路5と、アレイ導波路5の出力側に接続され、アレイ導波路5からの光を所定の角度で集光する出力側スラブ導波路6と、出力側スラブ導波路6の出力側に接続され、N個の出力ポート9を有する出力導波路2とを備える。
【0003】
図7(B)は、光入力側を示したものであり、図7(C)は、光出力側を示したものである。図7(B)において、入力導波路1のM個の入力ポート7には、それぞれ(1_1)〜(1_M)の番号が付され、また、1つの入力導波路1から出射される光の出射角がΦで示されている。図7(C)において、出力導波路2のN個の出力ポート9には、それぞれ(2_1)〜(2_N)の番号が付され、また、アレイ導波路5の各導波路8から出力される光の集光角がθで示されている。これらの角度Φおよびθは、何れも中心線0に対するものである。
【0004】
図8は、理想的な光波長ルーティング装置の波長ルーティング機能を示す。ここで、理想的な光波長ルーティング装置の入力ポートがM個で、出力ポートがN個の場合を説明する。第1番目の入力ポートにλ1 、λ2 、...、λN の波長を持つ波長分割多重光を入力した場合、第1番目から第N番目までの出力ポートにそれぞれλ1 、λ2 、...、λN の波長の光が出力される。また、第2番目の入力ポートにλ1 、λ2 、...、λN の波長を持つ波長分割多重光を入力した場合、第1番目から第N番目までの出力ポートにそれぞれλ2 、λ3 、...、λN 、λ1 の波長の光が出力され、第3番目の入力ポートにλ1 、λ2 、...、λN の波長を持つ波長分割多重光を入力した場合、第1番目から第N番目までの出力ポートにそれぞれλ3 、...、λN 、λ1 、λ2 の波長の光が出力される。この様に、理想的な光波長ルーティング装置は、入力ポートを変えた場合に出力ポートからの出力光の波長が循環される機能を有している。
【0005】
次に、上述のアレイ導波路回折格子型光合分波器で構成された波長ルーティング機能について説明する。波長λの光が入力導波路1の各入力ポート7に入力された場合、この光の波長λと、入力側スラブ導波路4内の出射角Φおよび出力側スラブ導波路6内の集光角θの関係は、以下の式で示される。
〔数1〕
λ={ns (λ)d/m}・(sin Φ+sin θ)+neff (λ)ΔL/m
【0006】
ここで、ΔLはアレイ導波路5の隣接する導波路8の導波路長差、dはアレイ導波路5と入力側スラブ導波路4および出力側スラブ導波路6との境界における隣接する導波路8の中心の間隔、neff (λ)は波長λの伝搬光に対するアレイ導波路5の等価屈折率、ns (λ)は波長λの伝搬光に対する入力側スラブ導波路4および出力側スラブ導波路6の等価屈折率、mは回折次数を示す。
【0007】
従って、入力導波路1の入力ポート7を上述の出射角Φ、および出力導波路2の出力ポート9を上述の集光角θに合わせることによって、出力導波路2の出力ポート9から、数1に示した波長λを中心波長とする光が出力される。従って、出射角Φは入力導波路1を配置する配置角であり、集光角θは出力導波路2を配置する配置角である。
【0008】
ここで、使用する光の波長帯域が十分に狭く、入力導波路1および出力導波路2の配置角範囲がそれぞれ十分に狭い場合、neff (λ)はneff に、ns (λ)はns に、sin θはθに、sin ΦはΦにそれぞれ近似できるため、波長λと、配置角Φおよび配置角θの関係は一次関数的となる。
【0009】
図9は、出射角Φを固定した場合の集光角θと光の波長λの関係を示す。ここで、光の波長範囲λ1 〜λN (3−a)は、使用する光の波長範囲を示す。また、曲線(3−b)は、回折次数mの曲線を表し、曲線(3−c)は、回折次数m+1の曲線を表す。図9に示すように、入力ポート7(1_1)から光を入力した場合、m次の回折によって、集光角θ1 、θ2 、...、θN の集光位置に対応する各出力ポート9(2_1、...、2_N)にそれぞれλ1 、λ2 、...、λN の波長の光が出力される。
【0010】
次に、集光角θ1 、θ2 、...、θN のそれぞれの角度間隔と同一の角度間隔になるように、θN 、θN+1 、θN+2 ...という角度を想定する。数1により、Φを変化させた場合とθを変化させた場合のλの変化量は同一にすることができ、Φの変化量ΔΦとθの変化量Δθのλに与える影響は同一にすることができる。従って、ΔΦを隣接する各入力ポート7の配置間隔とし、Δθを隣接する各出力ポート9の配置間隔とした場合、ΔΦをΔθで置換することによって、入力ポート7(1_i)に光を入力したときの各出力ポート9(2_1、...、2_N)(各出力ポートに対応する実際の集光角はそれぞれθ1 、θ2 、...、θN である)から出力される光は、入力ポート7(1_1)に入光したときの集光角θi 、 ...、θN+i-1 (3−d)に対応した波長と同波長を有する光となる。
【0011】
ここで、集光角θN+1 において回折次数がm+1となる波長λm+1 (3_e)が、λ1 に非常に近い値となる様にmの値を設定し、λm+1 を集光角θN+1 において回折次数がmとなる波長λm で表すと、
〔数2〕
λm+1 ={neff (λm+1 )/neff (λm )}・{m/(m+1)}・λm
となる。ここで、λm =λN +Δλ1 である。また、ns (λ)はneff (λ)に近似できると仮定している。
【0012】
従来の光波長ルーティング装置において、上述のようにmを設定することにより、θN+1 のλの値を示す座標(3_e)が、λ1 の値を示す座標(3_f)に近接し、入力ポート7(1_i)(i≧2)に光を入力したとき、集光角θN+1 、...、θN+i-1 に対応する各出力ポート9(2_(N−i+2)、...2_N)から出力される光の波長は、回折次数m+1によって、それぞれλ1 、 ...、λi-1 に近い値となり、所定のルーティング機能に近い機能を得ることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示したような従来の光波長ルーティング装置によれば、ある所定の入力ポートから光を入力した場合に、N個の各出力ポートから所定の中心波長を有する光が出力されるようにN個の各出力ポートを配置すると、数1で示した式が完全には一次関数的ではなく、また、図9に示した回折次数mを表す曲線(3−b)をθ軸方向(図9の右方向)に平行移動しても回折次数m+1を表す曲線(3−c)に完全には一致せず、これらの曲線(3−b)と曲線(3−c)を一次関数に近似しても回折次数が異なるためそれぞれ近似された一次関数の傾きが異なり、更に、数2に示したように、mの値が整数であるため、ある特定のλ1 を除き、λm+1 の値が常にλ1 に等しくなるように設計することができず、図9の座標(3−e)と座標(3−f)を重ねることができないので、前記の所定の入力ポート以外の入力ポートから光を入力した場合には、各出力ポートからは、所定の中心波長からずれた中心波長を有する光が出力するという問題があった。
【0014】
図10は、従来の光波長ルーティング装置における中心波長のずれを示す。図10において、入力導波路1の入力ポート7(1_1)に光が入力された場合、出力導波路2の各出力ポート9(2_1、...、2_N)に回折次数mでそれぞれ所定の中心波長λ1 、...、λN を有する光が出力され、且つ、他の入力ポート7(1_2、...、1_M)に光を入力した場合、出力ポート9(2_1)にそれぞれ所定の中心波長λ2 、...、λM を有する光が出力されるように設計した場合の、従来の光波長ルーティング装置における集光角θと波長λの関係を表している。
【0015】
ここで、回折次数m+1を表す曲線が鎖線(4−a)であれば、何れの入力ポート7への光の入力でも、各出力ポート9に所定の中心波長を有する光が出力されるルーティング機能が得られるが、実際には、従来の光波長ルーティング装置によると、回折次数m+1を表す曲線は、実線(4−b)となる。この図10に示したように、従来の光波長ルーティング装置によれば、入力ポート7(1_M)から光が入力し出力ポート9(2_N)に光が出力される場合、実際に出力される光の中心波長から所定の中心波長を引いた値(中心波長偏差)の絶対値は、δλとなる。このδλは、図10の場合における全ての中心波長偏差の絶対値の内の最大値であり、これを最大中心波長偏差という。
【0016】
例えば、各々の間隔が0.8nmでλ1 =1540nm〜λ16=1552nmの範囲の16個の波長の光を12×16ch(入力ポート7が12個×出力ポート9が16個)でルーティングさせる場合、従来の光波長ルーティング装置において、入力導波路1の入力ポート7(1_1)への入力光が、出力導波路2の各出力ポート9(2_1、...、2_16)にそれぞれ所定の中心波長λ1 、...、λ16で分波され、且つ、他の入力ポート7(1_2、...、1_12)への入力光が出力導波路2の出力ポート9(2_1)にそれぞれ所定の中心波長λ2 、...、λ12で出力される様に、アレイ導波路5,入力側スラブ導波路4,出力側スラブ導波路6,入力導波路1,出力導波路2を設計する。
【0017】
図11は、上述のように設計された従来の光波長ルーティング装置を石英系材料で構成した場合の、中心波長偏差の計算値を示す。この従来の光波長ルーティング装置によると、図11に示したように、中心波長偏差を生じるという問題があり、入力ポート7(1_12)から出力ポート9(2_16)へ出力される光が、最大中心波長偏差δλ=0.0987nmを持つことが解る。
【0018】
従って、本発明の目的は、最大の中心波長偏差をできるだけ最小限に抑えた光波長ルーティング装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上に述べた目的を実現するため、複数の導波路から成るアレイ導波路と、アレイ導波路の入力側に配置される複数の入力導波路と、アレイ導波路と入力導波路との間に接続される入力側スラブ導波路と、アレイ導波路の出力側に配置される複数の出力導波路と、アレイ導波路と出力導波路との間に接続される出力側スラブ導波路と、を備え、複数の出力導波路は、複数の入力導波路のうちの波長多重信号光が入力する入力導波路の位置に応じた波長循環パターンで波長多重信号光を分波して出力光を出力し、複数の入力導波路に入力される波長分割された複数の信号光を波長多重信号光として1つの出力導波路から出力する光波長ルーティング装置において、複数の入力導波路および複数の出力導波路は、それぞれ入力側スラブ導波路及び出力側スラブ導波路との接続部において、それぞれ実質的に不等間隔で配置され、出力光の最大波長偏差を正の波長偏差と負の波長偏差の和によって分担する構成で配置されることを特徴とする光波長ルーティング装置を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明の光波長ルーティング装置を詳細に説明する。
【0021】
図1は、アレイ回折格子型光合分波器で構成された12×16chの本発明の光波長ルーティング装置を示す。図1(A)は、本発明の光波長ルーティング装置の全体の概略を示す。この光波長ルーティング装置は、基板3上に、12個の入力ポート7を有する入力導波路1と、入力導波路1に接続され、入力導波路1からの光を回折により所定の角度で拡散する入力側スラブ導波路4と、入力側スラブ導波路4の出力側に接続され、複数の導波路8によって入力側スラブ導波路4からの光を伝送する回折格子型のアレイ導波路5と、アレイ導波路5の出力側に接続され、アレイ導波路5からの光を所定の角度で集光する出力側スラブ導波路6と、出力側スラブ導波路6の出力側に接続され、16個の出力ポート9を有する出力導波路2とを備える。
【0022】
図1(B)は、光入力側を示したものであり、図1(C)は、光出力側を示したものである。図1(B)において、入力導波路1の12個の入力ポート7にはそれぞれ(1_1)〜(1_12)の番号が付され、また、1つの入力導波路1から出射される光の出射角がΦで示されている。図1(C)において、出力導波路2の16個の出力ポート9には、それぞれ(2_1)〜(2_16)の番号が付され、また、アレイ導波路5の各導波路8から出力される光の集光角がθで示されている。これらの角度Φおよびθは、何れも中心線0に対するものである。
【0023】
この光波長ルーティング装置において、ルーティングさせる光の所定の中心波長は、各波長間隔Δλ1 =0.8nmでλ1 =1540nm〜λ16=1552nmの範囲の16個の波長とする。
【0024】
この光波長ルーティング装置は、石英系の材料で構成され、そのコアの材料は一定の屈折率を有し、コアの屈折率より所定の値だけ小さな屈折率を有するクラッド層の中に該コアを埋め込んで構成され、これらの屈折率の比屈折率差は0.8%となっている。
【0025】
入出力導波路1、2およびアレイ導波路5の各導波路8は高さが6μm、幅が6μmに形成されている。この入出力導波路1、2およびアレイ導波路5を伝搬する基本モードの光の等価屈折率neff (λ)を、各波長において等価屈折率法によって算出して設計に使用する。また、入力側スラブ導波路4および出力側スラブ導波路6の等価屈折率ns (λ)は、neff (λ)に近似する。更に、アレイ導波路5と入力側スラブ導波路4および出力側スラブ導波路6との境界におけるアレイ導波路5の各導波路8の中心間隔dは20μmとし、入力側スラブ導波路4および出力側スラブ導波路6の焦点距離fは9.236mmとする。
【0026】
次に、回折次数mは、数2におけるλm+1 がλm 以下であり、且つ、λm+1 −λ1 の絶対値が最小となる条件により求める。本発明においては、λm =λ16+Δλ1 =1552.8nm、neff (λm+1)=1.4493467、neff (λm )=1.4491545とし、従って、m=118となる。
【0027】
δλは、従来の設計方法における最大波長偏差とし、上述の計算結果よりδλ=0.0987nmとなる。出力導波路2の各出力ポート9(2_i)の配置角θi (1≦i≦16、iは自然数)は、Φ=θ=0のとき、λ=(λ1 +λ16)/2となるように数1によって、ΔL=ΔL’を計算した後、
〔数3〕
λ2i={ns (λ2i)d/m}sin θi +{neff (λ2i)ΔL’/m}
を計算して求める。
【0028】
ここで、λ2iは、
〔数4〕
(1≦i≦K)のとき、
λ2i=λ1 −δλ/4+(i−1)Δλ1
(K+1≦i≦N)のとき、
λ2i=λK+1 −δλ/4+(i−K−1)Δλ2
ここで、Δλ2 =Δλ1 +δλ/2/(M−2)、N=16、M=12、K=N−M+1
によって求められる。
【0029】
また、出力導波路2の配置角θi (1≦i≦12、iは自然数)は、上記のΔL’を使用して、
〔数5〕
λ1i={ns (λ1i)d/m}sin Φi +neff (λ1i)ΔL’/m
によって求められる。
【0030】
ここで、λ1iは、
〔数6〕
λ1i=λ1 −δλ/4+(i−1)Δλ3 (1≦i≦M)
ここで、Δλ3 =Δλ1 +δλ/2/(M−1)
によって求められる。
【0031】
最後に、アレイ導波路5の隣接する導波路8の導波路長差ΔLは、Φ=Φ1 、θ=0のときにλ=(λ1 +λ16)/2となるように数1から求め、ΔL=126.3764μmとなる。
【0032】
以上で求めたパラメータを用いて、数1により各入力ポート7から、各出力ポート9に出力される光の中心波長を計算し、所定の中心波長との差を求め、中心波長偏差を計算した。
【0033】
図2は、本発明の光波長ルーティング装置による中心波長偏差の計算結果を示す。図2において、入力ポート7(1_12)から出力ポート9(2_1)に光が出力される場合に、最大中心波長偏差δλ=0.0256nmとなることが解る。即ち、本発明の光波長ルーティング装置における最大中心波長偏差δλ(0.0256nm)は、従来の光波長ルーティング装置による最大中心波長偏差δλ(0.0987nm)の約1/4に低減された。
【0034】
次に、本発明の光波長ルーティング装置における入力導波路1および出力導波路2の配置方法を説明する。
【0035】
図3において、入力導波路1の入力ポート7(1_M)に光を入力したとき、出力導波路2の出力ポート9(2_1)に所定の波長λM の光が出力される従来の方法(出力導波路2の各出力ポート9の配置範囲が(6−a)で示される)の場合、出力ポート9(2_N)では、中心波長偏差が−δλとなる。ここで、δλは、入力ポート7(1_1)に入力された光が、回折次数mで出力導波路2の各出力ポート9(2_1、...、2_N)にそれぞれ所定の波長λ1 、...、λN の中心波長を有する光が出力され、且つ、入力導波路1の他の入力ポート7(1_2、...、1_M)に入力したときに出力ポート9(2_1)にそれぞれ所定の中心波長λ2 、...、λM の光が出力される様にした場合の最大中心波長偏差である。
【0036】
この中心波長偏差を小さくするために、出力導波路2の各出力ポート9の配置を(6−b)とし、これによって、出力導波路2の出力ポート9(2_N)の中心波長偏差が、−δλ/2に低減する。
【0037】
更に、入力導波路1の入力ポート7(1_M)の配置角を、出力導波路2の出力ポート9(2_1)の偏差が+δλ/4となるように+ΔΦM だけずらすことによって、出力導波路2の各出力ポート9の配置範囲が等価的に(6−c)の範囲となり、出力ポート9(2_N)の中心波長偏差が−δλ/4に低減される。
【0038】
次に、入力導波路1の入力ポート7(1_1)に光を入力した場合、上述の出力導波路2の配置方法によると、出力導波路2の配置範囲は増加するが、入力導波路1の入力ポート7(1_1)の配置角を出力導波路2の出力ポート9(2_1)の偏差が−δλ/4となるように、従来の配置(出力導波路2の各出力ポート9の配置範囲が(6−d)で示される)から−ΔΦM だけずらすことによって、出力導波路2の各出力ポート9の配置範囲が等価的に(6−e)の範囲となり、出力ポート9(2_N)の中心波長偏差が+δλ/4に低減される。
【0039】
次に、入力ポート7(1_1)、(1_M)、および(1_i)に光を入力した場合の出力導波路2の各出力ポート9の波長偏差を図4より図6において説明する。
【0040】
図4は、入力ポート7(1_1)に光を入力した場合の本発明の光波長ルーティング装置における波長偏差を示す。実線(7−a)は、数1、即ち、任意のθにおける回折次数mによって実際に出力される波長λを示し、破線(7−b)および(7−c)は、この任意のθにおいて出力される光の所定の波長を示す。即ち、この任意のθにおいて、実線上のλから破線上のλを引いた値が中心波長偏差となる。図4に示したように、本発明の光波長ルーティング装置によると、入力ポート7(1_1)に光を入力したときの中心波長偏差は、±δλ/4の範囲内に抑えられる。
【0041】
ここで、出力ポート9(2_1)から出力ポート9(2_(N−M+2))までは、隣接する出力ポート9が波長間隔Δλ1 で光を出力するように配置されているため、θの配置間隔も従来の光波長ルーティング装置と殆ど変わらないが、出力ポート9(2_(N−M+2))から出力ポート9(2_N)までは、光の波長間隔がΔλ2 =Δλ1 +δλ/2/(M−2)で出力される様に配置されているため、θの配置間隔は、従来の光波長ルーティング装置に比べて広くなっている。
【0042】
図5は、入力ポート7(1_M)に光を入力した場合の本発明の光波長ルーティング装置における波長偏差を示す。実線(8−a)および(8−b)は、数1、即ち、任意のθにおけるそれぞれ回折次数mおよびm+1によって実際に出力される波長λを示し、破線(8−c)および(8−d)は、この任意のθにおいて出力されるべき光の所定の波長を示す。即ち、この任意のθにおいて、実線上のλから破線上のλを引いた値が中心波長偏差となる。
【0043】
先ず、出力ポート9(2_1)から出力ポート9(2_(N−M+1))までは、隣接する出力ポート9が波長間隔Δλ1 で光を出力するように配置されているため、θの配置間隔も従来の光波長ルーティング装置と殆ど変わらず、本発明の光波長ルーティング装置における中心波長偏差は、従来の+δλ/4と殆ど等しくなる。
【0044】
次に、出力ポート9(2_(N−M+2))において、出力ポート9(2_(N−M+1))と出力ポート9(2_(N−M+2))の配置角θの配置間隔は、波長間隔がΔλ1 で光が出力されるようになっている。従って、もし、入力ポート7(1_M)の配置角が従来の光波長ルーティング装置と同じであれば、出力ポート9(2_(N−M+1))から出力される光の波長はλN となるが、本説明では出力ポート9(2_(N−M+1))から出力される光の波長がλN +δλ/4となるような入力ポート7(1_M)の配置角となっているため、出力ポート9(2_(N−M+2))から出力される光は、mがある程度大きな値のとき、座標(8−e)から+{m/(m+1)}×δλ/4〜+δλ/4だけ増加した波長となる。即ち、出力ポート9(2_(N−M+2))のλおよびθを表す座標は、座標(8−f)となる。
【0045】
ここで、出力ポート9(2_(N−M+2))の波長偏差δλ’は、上述のλm+1 を用いて、
〔数7〕
δλ’≒λm+1 −λ1 +δλ/4
となる。ここで、λm+1 は、座標(8−e)に対応している。
【0046】
従来の光波長ルーティング装置においては、λm+1 −λ1 が出力ポート9(2_(N−M+2))の波長偏差である。ここで、破線(8−g)上で示される波長λN+1 =λN +Δλ1 の光が出力される方向の自由スペクトル域がNΔλ1 以上、且つ、最小となるような回折次数をmとしているため、λm+1 −λ1 ≦0且つλm+1 −λ1 の絶対値が最小となる。従って、δλ’は、λm+1 −λ1 からδλ/4の範囲に抑えられる。
【0047】
出力ポート9(2_(N−M+2))から出力ポート9(2_N)までは、上述のように、出力ポート9(2_N)の中心波長偏差が−δλ/4であり、波長間隔がΔλ2 の一定の間隔で光が出力される様に配置されているため、波長偏差は、−δλ/4からδλ’の範囲に抑えられている。
【0048】
図6は、入力ポート7(1_i)(2≦i≦M−1)に光を入力したときの波長偏差を示す。入力導波路1の入力ポート7を変えたときの出力ポート9(2_1)から出力される光の所定の波長は、一点鎖線(9−a)によって示される。隣接する入力ポート7間において、出力ポート9(2_1)から出力される光の波長間隔は、Δλ3 =Δλ1 +δλ/2/(M−1)である。ここで、Δλ2 =Δλ1 +δλ/2/(M−2)であるため、Mがある程度大きいときΔλ2 とΔλ3 とが近似すると、入力ポート7間の配置間隔と出力ポート9(2_(N−M+2)、...、2_N)の配置間隔がほぼ等しくなる。すなわち、一点鎖線(9−a)と二点鎖線(9−b)(図4の破線(7−b)に等価)の傾きがほぼ等しくなる。これによって、出力ポート9(2_1、...、2_(N−i+1))に出力される光の所定の波長は、破線(9−c)および(9−d)となる。ここで、破線(9−c)と二点鎖線(9−e)の傾きは、等しい。また、破線(9−d)と二点鎖線(9−b)の傾きは、等しい。二点鎖線(9−e)と図4の破線(7−c)は等価であり、二点鎖線(9−b)と図4の破線(7−b)は等価である。
【0049】
一方、隣接する入力ポート7の配置間隔において、出力ポート9(2_N)から出力される光の波長間隔もΔλ3 である。従って、Δλ2 とΔλ3 とが近似すると、入力ポート7を変えたときの出力ポート9(2_N)から出力される光の所定の波長は、図5の一点鎖線(8−d)と等価な破線(9−f)によって示される。ここで、入力ポート7(1_i)(2≦i≦M−1)に光を入力した場合、出力ポート9(2_(N−i+2)、...、2_N)から出力される光の波長も破線(9−f)によって示されることになる。
【0050】
従って、入力ポート7(1_i)(2≦i≦M−1)に入力したときの光の波長偏差は、−δλ/4から+δλ/4の範囲に抑えられる。
【0051】
以上、本発明の光波長ルーティング装置によると、上述の入力導波路1および出力導波路2の配置を行うことによって、何れの入力導波路1および出力導波路2の組合せにおいても、光の波長偏差を±δλ/4の範囲に抑えることができるようになった。
【0052】
図2からも解るように、最大波長偏差に対応するものは、入力ポート7(1_1)および入力ポート7(1_M)と、出力ポート9(2_1)および出力ポート9(2_N)の4つのポートの組合せにおける波長偏差である。この4つのポートにおける波長偏差は、入力導波路1の各入力ポート7の配置範囲と、出力導波路2の各出力ポート9の配置範囲で決定される。また、出力ポート9の配置方法は、入力ポート7(1_1)に光を入力した場合の光の出力波長に基づいて設定される。
【0053】
従って、もしδλが、入力導波路1の入力ポート7(1_1)への入力光が、出力導波路2の各出力ポート9(2_1、...、2_N)にそれぞれ所定の中心波長λ1 、...、λN で分波され、かつ、他の入力ポート(1_2、...、1_M)への入力光が、出力導波路2の出力ポート9(2_1)に、それぞれ所定の中心波長λ2 、...、λM の光として出力される様に設計された(従来の)光ルーティング装置における入力ポート7(1_M)から出力ポート9(2_N)に出力される光の中心波長λMNと所定の波長λM-1 の差の絶対値よりも小さな値とすると、図3の(6−e)の配置範囲が狭くなるため、入力ポート7(1_1)への光の入力の場合には波長偏差の範囲を小さくできるが、(6−c)と(6−e)で示される配置範囲は等しいため、同時に(6−c)の配置範囲も狭くなり、入力ポート7(1_M)への光の入力の場合には、波長偏差の範囲が大きくなってしまい、結局、最大波長偏差は、δλ/4よりも大きくなってしまう。
【0054】
逆に、もしδλが上述の値よりも大きな値とすると、図3の(6−e)の配置範囲が広くなるため、入力ポート7(1_1)への光の入力の場合における波長偏差の範囲が大きくなってしまう。従って、δλの値は、上述の波長λMNと波長λM-1 の差の絶対値が最適なものとなる。
【0055】
以上、本発明の光波長ルーティング装置について説明したが、入力ポート7(1_2、...、1_(M−1))の配置角度は、上述の波長間隔Δλ3 に相当する実質的に均等な配置間隔である必要はなく、入力ポート7(1_1)および入力ポート7(1_M)における中心波長偏差の範囲内に収まるような配置角度であればよい。図2で示した実施の形態では、入力ポート7(1_5)に光を入力したときの中心波長偏差の範囲が他の入力ポート7に光を入力した場合と比べて最も小さくなり、0.0303nmである。従って、入力ポート7(1_5)の配置角度は、他の入力ポート7に比べて、最も大きく変化させることができる。
【0056】
また、図1では、石英系材料を基に光波長ルーティング装置を説明したが、他の材料を用いても同様の効果を得ることができることが解った。
【0057】
また、本発明の光波長ルーティング装置におけるポートの配置方法は、M×Nの光波長ルーティング装置のみならず、光波長合分岐器、Add/Dropフィルタ等にも適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明の光波長ルーティング装置によれば、波長分割多重信号光の最大波長偏差を正の波長偏差と負の波長偏差の和によって分担するように入出力導波路を不等間隔に配置したため、基本的構造を変えないで波長偏差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光波長ルーティング装置を示す概略図である。
【図2】本発明の光波長ルーティング装置による中心波長偏差の計算値を示す概略図である。
【図3】本発明の出力導波路の出力ポートの配置範囲と出力光の波長偏差を示す概略図である。
【図4】本発明の出力導波路の出力ポートの配置範囲と出力光の波長偏差を示す概略図である。
【図5】本発明の出力導波路の出力ポートの配置範囲と出力光の波長偏差を示す概略図である。
【図6】本発明の出力導波路の出力ポートの配置範囲と出力光の波長偏差を示す概略図である。
【図7】従来の光波長ルーティング装置を示す概略図である。
【図8】理想的な光波長ルーティング装置における入出力ポートと光の波長の対応を示す概略図である。
【図9】従来の光波長ルーティング装置における出力導波路の各ポートの配置角と出力光の中心波長の関係を示す概略図である。
【図10】従来の光波長ルーティング装置における出力導波路の各ポートの配置角と出力光の中心波長の関係を示す概略図である。
【図11】従来の光波長ルーティング装置による中心波長偏差の計算値を示す概略図である。
【符号の説明】
1 入力導波路
2 出力導波路
3 基板
4 入力側スラブ導波路
5 アレイ導波路
6 出力側スラブ導波路
7 入力ポート
8 導波路
9 出力ポート

Claims (7)

  1. 複数の導波路から成るアレイ導波路と、前記アレイ導波路の入力側に配置される複数の入力導波路と、前記アレイ導波路と前記入力導波路との間に接続される入力側スラブ導波路と、前記アレイ導波路の出力側に配置される複数の出力導波路と、前記アレイ導波路と前記出力導波路との間に接続される出力側スラブ導波路と、を備え、前記複数の出力導波路は、前記複数の入力導波路のうちの波長多重信号光が入力する入力導波路の位置に応じた波長循環パターンで前記波長多重信号光を分波して出力光を出力し、前記複数の入力導波路に入力される波長分割された複数の信号光を波長多重信号光として1つの出力導波路から出力する光波長ルーティング装置において、
    前記複数の入力導波路および前記複数の出力導波路は、それぞれ入力側スラブ導波路及び出力側スラブ導波路との接続部において、それぞれ実質的に不等間隔で配置され、前記出力光の最大波長偏差を正の波長偏差と負の波長偏差の和によって分担する構成で配置されることを特徴とする光波長ルーティング装置。
  2. 前記複数の出力導波路は、N(N=K+L)個の出力導波路を有し、前記複数の入力導波路のうち1番目の入力導波路から入力された光が、前記K+L個の光に分波されて前記K+L個の出力導波路からそれぞれ出力され、前記K個の出力導波路から出力された出力光が、それぞれλ1 −δλ/4、λ1 −δλ/4+Δλ1 、λ1 −δλ/4+2Δλ1 、...、λ1 −δλ/4+(K−1)Δλ1 (但し、λ1 は所定の信号光の波長、Δλ1 及びδλは、0<Δλ1 、0<δλ<Δλ1 )の等波長間隔Δλ1 の中心波長を有し、前記L個の出力導波路から出力された出力光が、それぞれλ1 −δλ/4+KΔλ1 、λ1 −δλ/4+KΔλ1 +Δλ2 、λ1 −δλ/4+KΔλ1 +2Δλ2 、...、λ1 −δλ/4+KΔλ1 +(L−1)Δλ2 (但し、Δλ2 は、0<Δλ2 )の等波長間隔Δλ2 の中心波長を有する、ように配置されることを特徴とする請求項1記載の光波長ルーティング装置。
  3. 前記複数の入力導波路は、M(M=L+1)個の入力導波路を有し、前記複数の入力導波路のうち、1番目の入力導波路及びM番目の入力導波路に、それぞれλ1 −δλ/4及びλ1 +(M−1)Δλ1 +δλ/4の中心波長を有する入力光を入力したときに、前記N個の出力導波路のうちの1番目の出力導波路にそれらの入力光が出力する、ように配置されることを特徴とする請求項2記載の光波長ルーティング装置。
  4. 前記複数の入力導波路は、M(M=L+1)個の入力導波路を有し、前記M個の入力導波路に、それぞれλ1 −δλ/4、λ1 −δλ/4+Δλ3 、λ1 −δλ/4+2Δλ3 、...、λ1 −δλ/4+(M−1)Δλ3 (但し、Δλ3 =Δλ1 +δλ/2/(M−1))の等波長間隔Δλ3 の中心波長を有する入力光を入力したときに、前記N個の出力導波路のうちの1番目の出力導波路にそれらの入力光が出力する、ように配置されることを特徴とする請求項2記載の光波長ルーティング装置。
  5. 前記1番目の入力導波路から入力された前記波長λ1 −δλ/4の中心波長を有する光は、回折次数m(mは整数)で前記1番目の出力導波路へ出力され、
    前記1番目の入力導波路から入力された光が、回折次数mで、λN+1 (λN+1 =λ1 +NΔλ1 )の中心波長を有する出力光として出力されるようなN+1番目の出力導波路を設定したとき、
    前記N+1番目の出力導波路からの前記出力光の自由スペクトル域が、NΔλ1 以上且つ最小であることを特徴とする請求項3または4記載の光波長ルーティング装置。
  6. 前記出力光の等波長間隔Δλ2 は、Δλ1 +δλ/2/(M−2)である、ことを特徴とする請求項3または4記載の光波長ルーティング装置。
  7. 前記入力側スラブ導波路、アレイ導波路、および出力側スラブ導波路は、前記1番目の入力導波路からの入力光が、それぞれλ1 、...、λN の前記等波長間隔Δλ1 の中心波長を有する出力光として前記N個の出力導波路から前記回折次数mで出力され、前記複数の入力導波路のうちの2番目以降の入力導波路に入力される光のうち、それぞれλ2 、λ3 、...、λM-1 、λM の波長を有する光が、前記1番目の出力導波路から前記回折次数mで出力されるように構成される光波長ルーティング装置を設定した場合に、
    M番目の入力導波路からN番目の出力導波路に回折次数m+1で出力される光の中心波長をλMNとしたとき、前記δλは、前記λMNと前記λM-1 の差の絶対値であることを特徴とする請求項3または4記載の光波長ルーティング装置。
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