JP3724021B2 - 導電性組成物およびそれを用いたセラミックコンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性組成物およびそれを用いたセラミックコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、セラミック電子部品であるセラミックコンデンサの厚膜電極を形成する場合には、銀粉末を導電成分とし、これにガラスフリット、有機ビヒクル、さらに必要に応じて各種添加剤を含有させた導電性組成物を、スクリーン印刷等でセラミック誘電体層上に塗布し、焼き付けて形成するのが一般的であった。
【0003】
この銀厚膜電極は電気的性質に優れ、高周波特性が良好で信頼性が高く、しかも電極膜の形成が容易かつ簡便である等の長所を有している。
【0004】
しかしながら、銀厚膜電極においては、次のような問題点があった。
(1)銀はコストが高く、コストダウンに限界があった。
【0005】
(2)銀厚膜電極にリード端子等をはんだ付けした場合、はんだ中に銀が拡散移行する、いわゆるはんだ食われ現象が発生しやすい傾向があるため、電極の密着性が低下したり、あるいは静電容量不足等の特性劣化を招くことがあった。
【0006】
(3)シルバーマイグレーションが発生しやすく、絶縁耐電圧の低下等、信頼性を損なうことがあった。特に、はんだ付けのサーマルショック等によって、セラミック誘電体層にマイクロクラックが入るのを防止できない場合には、このマイクロクラック内に銀が拡散移行しシルバーマイグレーションの進行が助長され、信頼性を低下させる恐れがある。
【0007】
上述した銀厚膜電極の欠点を改善する手段として、特公平1−51003号公報に開示の銅厚膜電極がある。この銅厚膜電極に用いられる導電性ペースト組成物は、銅微粉末と、ホウケイ酸鉛、ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛の少なくとも一種を主成分とするガラスフリットを含有し、前記銅微粉末に対する前記ガラスフリットの体積比が2乃至40%の割合からなるものである。そして、この銅厚膜電極は、銅粉末とガラスフリットを有機ビヒクル中に分散させてペースト化し、誘電体磁器素体に対して、スクリーン印刷等の方法で塗布し、これを中性雰囲気(N2)中で焼付け処理して形成している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の銅厚膜電極では、焼成により熔けたガラスが電極とセラミックとの界面部にガラス層を生成したり(ガラスボンド)、ガラスとセラミックの反応層を生成する(ケミカルボンド)ことによってセラミックに接合するために、ガラスの影響による容量低下、容量バラツキが発生しやすい。
【0009】
すなわち、電極とセラミックとの界面部において、取得容量的には、ガラス層や、反応層は無いことが最良であり、薄いものほど好ましく、使用されるガラスは誘電率が高いもの程好ましいと言える。図5は、電極セラミック界面における、ガラス層の誘電率と厚さがセラミックコンデンサの取得容量に影響を与えることを示す理論計算値である。
【0010】
そこで、ガラスの組成について考えてみると、一般に、ガラス中に低誘電率のSiO2(ε=3)を高比率で含むガラスは誘電率が低下してしまう。一方、ガラス中にBa,Pb,Bi等の重金属やZnなどの金属を含むガラスはεが大きくなる。
【0011】
従って、例えば、ガラス中の金属成分を上記のような金属成分を用いて2成分とすれば、以下の従来のガラスのように、
ホウケイ酸鉛 :B2O3-SiO2-PbO
ホウケイ酸亜鉛 :B2O3-SiO2-ZnO
ホウケイ酸ビスマス:B2O3-SiO2-Bi2O3
1成分だけが金属成分であるガラスよりも高誘電率とすることが可能である。
【0012】
また、Baを主成分とするガラスは ガラスの軟化点(Ts)が700〜800℃と高くなるため本発明が意図する銅電極の焼成温度500〜700℃での低温焼成は不可能となる。
【0013】
また、Biを主成分とするガラスは、はんだ付け時の加熱により、
2Bi2O3+3Sn→4Bi+3SnO2
の酸化ビスマス還元反応が徐々に進行して、ガラスのネットワークを脆弱化させ易く、電極の接着強度を劣化させることが特公平5−88746号公報で報告されている。このため、Bi系ガラスフリットを選択した場合には、ガラスの添加量を減らすことは端子強度の劣化につながるため難しい。
【0014】
従って、Si、Ba、Biを主成分として組成に含まないガラス系の選択が必要となり、ガラス層や、ガラスとセラミック反応層ができない電極を形成することが、誘電体セラミックの特性を100%引き出す電極として必要条件となる。
【0015】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、セラミックコンデンサの容量低下、容量バラツキを低減することが可能な導電性組成物およびそれを用いたセラミックコンデンサを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するべく、導電性組成物およびそれを用いたセラミックコンデンサを完成するに至った。
本発明の導電性組成物は、銅微粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有してなる導電性組成物において、前記銅微粉末は、硼酸により表面処理され、平均粒径が0.1〜0.6μmであり、かつ、(平均粒径/メジアン径)×100で示される分散性(%)が50%以上であり、前記ガラスフリットは、誘電率が8以上であり、かつ、軟化温度が350〜550℃であり、前記銅微粉末と前記ガラスフリットとの合計100重量%のうち、0.5〜10重量%の範囲内にあることに特徴がある。
【0019】
また、本発明の導電性組成物においては、前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛からなることが好ましい。
【0020】
また、本発明の導電性組成物においては、前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を成分とする組成であって、XPbO−YB2O3−ZZnOの3元状態図において、モル%が(X,Y,Z)=A1(30,70,0)、B1(0,40,60)、C1(60,20,20)、D1(80,20,0)の各頂点を結ぶ線上および内部で表されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の導電性組成物においては、前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を成分とする組成であって、XPbO−YB2O3−ZZnOの3元状態図において、モル%が(X,Y,Z)=A2(40,60,0)、B2(20,40,40)、C2(30,30,40)、D2(60,40,0)の各頂点を結ぶ線上および内部で表されることがさらに好ましい。
【0023】
また、本発明のセラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と、前記セラミック誘電体層に上記のいずれかに記載の導電性組成物を焼き付けた厚膜電極とを備えていることに特徴がある。なお、厚膜電極とは、上記いずれかに記載の銅微粉末と、上記いずれかに記載のガラスフリットを含有するものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の導電性組成物は、銅微粉末と、誘電率が8以上であるガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有している。これらの成分により、セラミックコンデンサの電極とセラミック界面にできるガラス層での容量低下および容量バラツキを低減することが可能となる。
【0026】
すなわち、誘電率が8以上という高い誘電率を有するガラスフリットを使用するので、ガラス層の影響による容量低下がほとんどなく、従って、大きな静電容量が得られるとともに、誘電体損失の小さいセラミックコンデンサを提供することが可能となる。また、焼結性が良く、かつ、後述する分散性に優れた銅微粉末を使用するので、ガラスフリットの添加量を減らしても、電極を酸化させずに焼成することができる。また、ガラス量が少なくても電極が酸化しないことから、はんだ付け性に優れるとともに、電極の焼結性が良いことから、少量のガラスフリットであっても電極とセラミックとの接合が可能であり、かつ、強固な端子接合が可能となる。
【0027】
従って、銅微粉末と誘電率が8以上のガラスフリットとの組み合わせにより、高い誘電率であって、かつ、薄いガラス層は厚膜電極における容量低下因子を極力抑えることが可能となり、大きな静電容量が得られるとともに、誘電体損失の小さいセラミックコンデンサを提供することが可能である。
【0028】
本発明の導電性組成物に用いられる銅微粉末は、燒結性が良く、かつ、後述する分散性に優れた微粉末であれば、形状、純度などには特に限定されない。例えば、形状は球形状、扁平状など、どのような形状のものであっても使用でき、もちろん互いに異なる形状のものを混合して用いても構わない。
【0029】
従って、銅微粉末の平均粒径および分散性については必ずしも限定する必要はない。なお、平均粒径および分散性は以下のように示される値である。
ただし、好ましくは平均粒径が0.1〜2.0μmであり、かつ、分散性が20%以上である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粉末の吸油量が多くなり、スクリーン印刷が可能なペースト粘度に加工することが難しいので好ましくない。一方、平均粒径が2.0μmを越える場合または分散性が20%未満の場合には、低温焼成での電極燒結性が悪くなり、容量低下や誘電体損失増大、端子強度劣化などの問題が生じてしまうので好ましくない。なお、さらに好ましくは、平均粒径が0.1〜0.6μmであり、かつ、分散性が50%以上である。
【0030】
本発明の導電性組成物に用いられるガラスフリットは、ガラスとしては高い誘電率である誘電率8以上を有するものである。誘電率が8未満の場合には、取得容量が低下し、かつ、誘電体損失が上昇し、セラミックコンデンサの実用特性を損なうことになる。
【0031】
また、上記ガラスフリットの添加量は、電極とセラミックとの界面に生じるガラス層の発生を防止するために、ガラスフリットの添加量を可能な限り少量とすることが要求される。好ましくは、上記銅微粉末と上記ガラスフリットとの合計100重量%のうち、0.5〜20重量%である。添加量が0.5未満の場合には、燒結性の優れた高い分散性を有する銅微粉末を使用した場合でも電極の酸化が生じて、はんだ付け性が劣化してしまうので好ましくない。また、電極とセラミックの接合媒体が少なすぎるために端子強度が十分に取得できなくなるため好ましくない。一方、添加量が20重量%を越える場合には、燒結性の悪い銅微粉末を使用した場合でも、ガラスの電極浮きが生じて、はんだ付け性が著しく劣化してしまう。さらに、界面部にガラス層が厚く生じてしまうために、静電容量の低下や誘電体損失の増大など、セラミックコンデンサの基本特性の劣化が著しいので好ましくない。なお、さらに好ましくは、上記銅微粉末と上記ガラスフリットとの合計100重量%のうち、0.5〜10重量%である。
【0032】
上記ガラスフリットの具体例としては、例えば、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を成分とするガラスフリットが挙げられる。なぜなら、これらの成分からなるガラスフリットは、上述したSi、Ba、Biをガラス組成の主成分として含んでいないために、誘電率が5〜25と極めて高い数値が得られるからである。
【0033】
上記酸化硼素、酸化鉛および酸化亜鉛を成分とするガラスフリットのより好ましい具体例としては、図1に示したXPbO−YB2O3−ZZnOの3元状態図において、モル%が(X,Y,Z)=A1(30,70,0)、B1(0,40,60)、C1(60,20,20)、D1(80,20,0)の各頂点を結ぶ線上およびその内部の領域になる。その3成分の組成比率がA1とB1の各頂点を結ぶ線より上になると、誘電体損失の増大、端子強度の劣化、はんだ付け不良をおこし実用特性を満たさないので好ましくない。また、B1,C1,D1の各頂点を結ぶ線より下になると、静電容量、誘電体損失は良好な値であるが、端子強度が低く、はんだ付け不良となるので好ましくない。なお、さらに好ましくは、A2(40,60,0)、B2(20,40,40)、C2(30,30,40)、D2(60,40,0)の各頂点を結ぶ線上およびその内部の領域である。
【0034】
なお、ガラスフリットとしては、上記3成分以外にSiO2,AL2O3,R2O(R=Li,Na,K,Rb,Cs)等を修飾酸化物として微量添加してもよい。この場合、ガラスの安定性が増し、セラミックコンデンサの信頼性が向上する。
【0035】
また、ガラスフリットとしては、軟化点が350〜550℃の範囲のガラスフリットを使用することが好ましく、この場合、500〜700℃の低温度で0.5〜1.5時間での雰囲気焼成が可能となるとともに、ガラスとセラミックの反応層の生成を防止でき、セラミックの還元や変質の防止が可能となる。軟化点が350℃未満の場合には、ガラスが電極焼き付け時に低粘度となり、セラミック内へ拡散することで、電極とセラミックの接合が不良となるため好ましくない。一方、軟化点が550℃を超える場合には、低温焼成で十分にガラスが熔けないため、電極とセラミックの接合が不十分となり、誘電体損失の増大、端子強度の低下を生じるため好ましくない。
【0036】
ここで、本発明に用いられる銅微粉末は、硼酸により表面処理されている。詳しくは、銅微粉末を核としてその周囲を硼酸が被覆する構造となっており、このような構造を得るためには、銅微粉末に対して硼素原子量換算で0.01〜0.5重量%の硼酸と、この硼酸が飽和濃度以下となる量のケトン系、炭化水素系、芳香族系いずれかの溶媒とを加え合わせて混合処理した後、乾燥処理して溶媒のみを蒸発させる。
【0037】
上記のように、銅微粉末が硼酸により表面処理されていると、焼き付けた時に硼酸が150〜300℃で溶融、ガラス化し、銅微粉末を外気から遮断するため、バインダーを分解するために窒素中に含まれている酸素に対し、銅微粉末の酸化を防止することができる。つまり、銅微粉末の表面には硼素皮膜が確実に形成されることになり、銅微粉末の酸化防止、および誘電体磁器素体の還元を防止することができる。また、銅微粉末が硼素で表面処理されていると、焼き付けされた銅厚膜電極は、その焼き付け時に硼素が150〜300℃でガラス化したのち、ガラスフリットが350〜550℃で軟化する為に、銅はガラスフリットに対して濡れがよくなり、500〜700℃程度の焼き付け温度で、緻密な銅厚膜電極を形成することができる。なお、銅の表面処理に際しては、硼酸処理に限られたものではなく、例えば、硼酸エステル有機物溶液、硼酸溶液、および硼素の有機塩の溶液を、ペースト中に直接添加しても良い。
【0038】
本発明に用いられる有機ビヒクルは、上記銅微粉末およびガラスフリットの成分をペースト化するための成分であり、このような有機ビヒクルは特に限定されない。好ましい具体例としては、例えば、不活性有機ビヒクルとしてエチルセルロースをテルピネオールに溶解させたものや、アクリル樹脂をテルピネオールに溶解させたものなどがある。
【0039】
上記有機ビヒクルの使用量は、本発明の導電性組成物を用いる物品に応じて変更すればよく、従って、必ずしも限定する必要はないが、例えば、本発明の導電性組成物がセラミックコンデンサに用いられる場合には、有機ビヒクルは上記銅微粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルの合計100重量%のうち、10〜40重量%含有することが好ましい。
【0040】
本発明の導電性組成物は、これら上記の成分を予め混合し、混練させてペースト化することにより、容易に作製することができる。そして、このようにして作製された本発明の導電性組成物をセラミック誘電体層に塗布し、500〜700℃で焼き付けることにより、積層セラミックコンデンサの外部電極や板物セラミックコンデンサの端子電極などの厚膜電極を形成することができる。なお、焼き付け温度を500〜700℃としたのは、500℃未満の場合には、銅の焼結が十分でなく、またガラスが十分に溶融しないため電極がセラミックに接合しないため好ましくないからである。また、700℃を越える場合には、ガラスとセラミックの反応が生じるため反応層(PbTiO3)の影響が顕著に発生し、セラミックコンデンサの基本特性である静電容量や誘電体損失の劣化が著しくなるため好ましくないからである。
【0041】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
本発明の導電性組成物を用いたセラミック電子部品である板物セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1は、板物セラミックコンデンサの断面図である。
図1に示すように、板物セラミックコンデンサは、セラミック素体である板状のセラミック誘電体層1と、セラミック誘電体層1の両主平面に対向するように配置された一対の端子電極3と、端子電極3にはんだ付けされたリード端子4と、外装樹脂2とを備えている。
【0043】
セラミック誘電体1は、例えば、チタン酸バリウムまたはチタン酸ストロンチウムを主成分とする磁器材料で構成し、セラミック誘電体1の対向両主平面には端子電極3がそれぞれ形成されており、さらに、セラミック誘電体1と端子電極3とを覆うように外装樹脂2が設けられている。
【0044】
また、リード端子4は、端子電極3と図示しない回路基板とを接続するために設けられており、一端を外装樹脂2の内部に配設して端子電極3と導通させて、他端を回路基板と導通させるため外装樹脂2から突出させている。
【0045】
図2は、積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2に示すように、積層セラミックコンデンサは、直方体状の積層体5と、積層体5の両端に対向するように配置された一対の外部電極7a、7bとを備えている。
【0046】
ここで、積層体5は、例えば、チタン酸バリウムまたはチタン酸ストロンチウムを主成分とする磁器材料で構成されたセラミック誘電体層であるセラミックシート6が、複数枚積層されたものを焼成して一体化することにより構成されている。
【0047】
積層体5の内部には、内部電極9a、9bが交互に複数配置されている。
内部電極9aは、積層体5の一側面に配置された外部電極7aに接続されており、他方側面に配置された外部電極7bとは絶縁されている。
一方、内部電極9bは外部電極7bに接続されており、外部電極7aとは絶縁されている。また、内部電極9a、9bは、それぞれ平行に配置されている。
【0048】
このようなセラミック電子部品である板物セラミックコンデンサの端子電極3および積層セラミックコンデンサの外部電極7a、7bが、本発明に係る導電性組成物を焼き付け形成された焼結膜からなる厚膜電極である。
【0049】
以下、本発明の導電性組成物を作製する工程およびセラミックコンデンサを作製する工程について説明する。
(実施例1)
表1に、本実施例で用いた銅粉末種A、B、C、D、Eについて粉末特性を示す。
【0050】
ここで、比表面積(m2/g)については、B.E.T.法を用いて150℃、30minの条件で乾燥処理を行った後、流動法により気体吸着量を測定し乾燥粉体の表面積を求めた。
【0051】
また、メジアン径については、日機装(株)製レーザー回折式MICRO TRAC粒度分析計を用い、分散溶媒にはエタノールとイソプロピルアルコールの混合溶剤を用いてホモジナイザーで銅粉を300μA(3min)で分散して測定用サンプルとした。
【0052】
【表1】
【0053】
まず、表1に示す銅微粉末と、この銅微粉末に対して硼素原子量換算で0.01乃至0.5wt%の硼酸と、この硼酸が飽和濃度以下となる量のケトン系、炭化水素系、芳香族系いずれかの溶媒とを加え合わせて混合処理した後、乾燥処理して溶媒のみを蒸発させたものからなる銅微粉末を作製する。
【0054】
次に、前述のように表面処理して得られた銅微粉末70wt%と、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を含有するPbO−B2O3−ZnO系ガラスフリット(PbO=40,B2O3=40,ZnO=20mol%、ガラス誘電率ε=21)と、さらに残りの量としてテルピネオールにエチルセルロース8wt%を溶解して作製した有機ビビクルとを準備した。そして、これを三本ロール等の混練機により、十分に分散させて各種焼付け電極用銅ペーストを作製した。
【0055】
なお、上記ガラスフリット量は、例えば表2に示すように、固形成分である銅微粉末とガラスフリットの添加量の合計を100wt%とした場合の割合(%)で規定した。
ガラス量(%)=ガラス添加量(wt%)/{銅添加量(wt%)+ガラス添
加量(wt%)}×100(%)
これによって、焼成後に飛散する有機ビヒクルを除いた、厚膜電極中に含まれるガラスの比率が調合時に明らかとなる。以下の実施例においてもガラスフリット量は、同様の算式で規定している。
【0056】
そして、本ペーストを直径14.0mmφ,厚み0.5mmのチタン酸バリウム系誘電体セラミックスにスクリーン印刷し、焼成温度600℃ ,IN−OUT 60minでN2雰囲気焼成を行い、セラミックコンデンサを作製した。
【0057】
以下、このようにして得られたセラミックコンデンサの静電容量(Cap)、誘電体損失(DF)、端子強度、半田付性、電極燒結性の測定結果を銅粉末種A〜Eそれぞれの場合に分けて表2から表6に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
表2から表6において、端子引張り強度は直径14.0mm、厚さ0.5mmの円形状の誘電体磁器素体に前述のようにして焼付けして形成した電極に直径0.6mmのリード線を直接はんだ付けし、120mm/minの定速で、その引張り強度を測定した。また、はんだ付け性は、前記電極焼き付け後の誘電体磁器素体をロジン系フラックスを使用してはんだに浸漬し、そのはんだ付け性を目視判断した。燒結性は前記電極焼き付け後の誘電体磁器素体を断面研磨し、研磨電極面を走査型電子顕微鏡により撮影し、電極面積にしめる銅面積を画像解析により定量数値化した。
【0064】
次に、表2〜表6の測定結果について説明する。
粒径の大きい銅微粉末A、Bや分散性の低い銅微粉末Dはガラスフリットの添加量を多くしないと、電極の酸化がおこり、低容量、高誘電体損失となった。
【0065】
また、A,B,Dの銅微粉末はガラスの添加量を適正値にした場合良好なはんだ付け性、端子強度が得られた。
【0066】
しかし、A,B,Dの分散の悪い燒結性の低い銅微粉末で、ガラス量を増やして電極の酸化を抑えた電極膜の構造は、膜中、界面にポアが多く、界面にガラス層が厚くできるため十分にセラミック誘電体の特性を引き出すことができなかった。
【0067】
これに対しC,Eの高分散性銅微粉末を使用した場合には、ガラス添加量をA,B,Dのように12%以上も添加すると、銅の燒結によって焼成時に熔けたガラスが電極表面に浮き出てガラス膜を形成したり、界面にガラス層を形成したりするために、容量低下、誘電体損失増大、はんだ付け性劣化、端子取付け不良となり使用できなかった。
【0068】
しかし、高分散性銅微粉末でガラス添加量を1〜6%の適正量に減らすと膜中にポアがなく、界面にガラスが少ない膜構造のメッキ電極に近い物性の厚膜電極が得られた。
【0069】
この時、高取得容量、低誘電体損失でセラミック特性を100%近くまで取り出す事が可能となり、はんだ付け性が良く、強固な端子強度が取得できる電極が提供できる。
【0070】
以上のことから 高分散性銅微粉末を使用することで、ガラス添加量を低減でき、セラミックコンデンサの電気特性が向上することが判った。
【0071】
(実施例2)
まず、銅微粉末Cを(実施例1)と同様の方法により表面処理して得られた粉末70wt%と、表7に示す組成比率からなる酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を含有するPbO−B2O3−ZnO系ガラスフリット2%(1.4wt%)と、残りの量28.6wt%として、テルピネオールにエチルセルロース8wt%を溶解して作製した有機ビビクルとを混合し、三本ロール等の混練機により十分に分散させて各種焼付け電極用銅ペーストを作製した。このペーストを(実施例1)と同様の方法で塗布・焼成・評価した。図3に、本実施例のガラス組成を示す。
【0072】
また、このようにして得られたセラミックコンデンサの静電容量(Cap)誘電体損失(DF)、端子強度、はんだ付け性、電極燒結性の測定結果を表7に併せて示す。
【0073】
【表7】
【0074】
表7から明らかなように、この発明によるガラスフリット組成ははんだ付け性が良く、誘電体損失も小さく、さらに端子強度も大きい。
【0075】
表7において、試料番号1のものはガラス化の適正範囲を逸脱しており、良好な特性を示すものではなかった。
試料番号4と13のものは、静電容量は良好であったが、誘電体損失が大きく、端子強度も低くはんだ付け性は不良であった。
【0076】
(実施例3)
まず、銅微粉末Cを(実施例1)と同様の方法により表面処理して得られた粉末70wt%と、表7の試料番号6の組成比率からなる酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を含有するPbO−B2O3−ZnO系ガラスフリットと、さらに残りの量としてテルピネオールにエチルセルロース8wt%を溶解して作製した有機ビビクルとを混合し、三本ロール等の混練機により十分に分散させて各種焼付け電極用銅ペーストを作製した。このペーストを(実施例1)と同様の方法で塗布・焼成・評価した。なお、上記ガラスフリットの添加量は表8のとおりである。
【0077】
また、このようにして得られたセラミックコンデンサの静電容量(Cap)誘電体損失(DF)、端子強度、はんだ付け性、電極燒結性の測定結果を表8に併せて示す。
【0078】
【表8】
【0079】
表8の結果より、ガラスフリットの誘電率は高いほど高容量取得でき、低誘電体損失となることがわかる。
【0080】
(実施例4)
まず、銅微粉末Cを(実施例1)と同様の方法により表面処理して得られた粉末70wt%と、表7の試料番号6の組成比率からなる酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を含有するPbO-B2O3−ZnO系ガラスフリット2%(1.4wt%)と、さらに残りの量としてテルピネオールにエチルセルロース8wt%を溶解して作製した有機ビビクル28.6wt%とを混合し、三本ロール等の混練機により十分に分散させて各種銅焼付け電極用銅ペーストを作製した。このペーストを(実施例1)と同様の方法で塗布・焼成・評価した。
【0081】
また、このようにして得られたセラミックコンデンサの静電容量(Cap)誘電体損失(DF)、端子強度、はんだ付け性、電極燒結性の測定結果を表9、表10に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
また同時に、電極界面部をXRD(X線回折)で分析し、界面部に生じるチタン酸鉛(PbTiO3)の発生についても調査した。図4に、電極セラミック界面におけるPbTiO3の生成X線回折ピークを示す((a)PbTiO3反応層あり、(b)PbTiO3反応層なし)。
【0087】
【発明の効果】
本発明の導電性組成物を用いれば、焼結性が良く、分散性に優れた銅微粉末を使用することによって、ガラスフリットの添加量を減らしても、電極を酸化させずに焼成することが可能である。従って、ガラスフリット量が少なくても電極が酸化しないことから、はんだ付け性に優れるとともに、電極の焼結性がよいことから、少量のガラスフリットであっても電極とセラミックとの接合が可能であり、かつ、強固な端子接合が可能となる。また、ガラスフリットの添加量を少なくすることができるので、電極とセラミック界面部のガラス層を非常に薄くすることが可能である。よって、メッキ膜に近い物性の厚膜構造となり、ガラス層の影響によって容量が低下することを低減できるため、大きな静電容量が得られるとともに誘電体損失の小さいセラミックコンデンサを作製することが可能である。
【0088】
さらに、誘電率が8以上という高い誘電率を有するガラスフリットを使用するので、ガラス層での容量低下を極力低減することが可能である。
【0089】
従って、銅微粉末と誘電率が8以上のガラスフリットとの組み合わせにより、高い誘電率であって、かつ、薄いガラス層は、厚膜電極における容量低下因子を極力抑えることが可能となり、よって大きな静電容量が得られるとともに、誘電体損失の小さいセラミックコンデンサを提供することが可能である。
【0090】
また、本発明の導電性組成物は銅厚膜電極からなるため、コストの安価なセラミックコンデンサを提供することが可能である。しかもこの銅厚膜電極は、銀厚膜電極と同様の電気的、物理的特性を有するから、高周波特性の良好なセラミックコンデンサが得られる。また、銀電極の場合に不可避であったシルバーマイグレーションおよびはんだ喰われ現象が大きく抑制できるので、信頼性および寿命性に優れ、容量変化率の小さな高信頼性のセラミックコンデンサーを提供することが可能である。さらに、はんだ付け時のサーマルショックにより誘電体磁器素体にマイクロクラックが発生したとしても、シルバーマイグレーションおよびはんだ喰われ現象が大きく抑制できるので、これらによる信頼性や寿命劣化のない高信頼性のセラミックコンデンサを提供することが可能である。
【0091】
さらに、本発明の導電性組成物を用いれば、低温で電極が焼成できるため、ガラスとセラミックの反応層の生成を抑制することが可能である。よって、反応層における容量低下、誘電体損失の増大を防止することが可能である。また、低温で雰囲気焼成するために、セラミックス還元や変質に起因する誘電体セラミックの誘電率低下を防止することが可能である。従って、大きな静電容量が得られるとともに、誘電体損失の小さいセラミックコンデンサを作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である板物セラミックコンデンサの断面図。
【図2】本発明の一実施例である積層セラミックコンデンサの断面図。
【図3】本発明のPbO−B2O3−ZnOからなるガラスフリットの三元状態図。
【図4】電極セラミック界面における、PbTiO3の生成、X線回折ピークを示す図。
【図5】電極セラミック界面における、ガラス層の誘電率と厚みがセラミックコンデンサの取得容量に影響を与えることを示す図。
Claims (5)
- 銅微粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有してなる導電性組成物において、
前記銅微粉末は、硼酸により表面処理され、平均粒径が0.1〜0.6μmであり、かつ、(平均粒径/メジアン径)×100で示される分散性(%)が50%以上であり、
前記ガラスフリットは、誘電率が8以上であり、かつ、軟化温度が350〜550℃であり、前記銅微粉末と前記ガラスフリットとの合計100重量%のうち、0.5〜10重量%の範囲内にある
ことを特徴とする導電性組成物。 - 前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛からなることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
- 前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を成分とする組成であって、XPbO−YB2O3−ZZnOの3元状態図において、モル%が(X,Y,Z)=A1(30,70,0)、B1(0,40,60)、C1(60,20,20)、D1(80,20,0)の各頂点を結ぶ線上および内部で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性組成物。
- 前記ガラスフリットは、酸化硼素、酸化鉛、および酸化亜鉛を成分とする組成であって、XPbO−YB2O3−ZZnOの3元状態図において、モル%が(X,Y,Z)=A2(40,60,0)、B2(20,40,40)、C2(30,30,40)、D2(60,40,0)の各頂点を結ぶ線上および内部で表されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の導電性組成物。
- セラミック誘電体層と、前記セラミック誘電体層に請求項1から請求項4のいずれかに記載の導電性組成物を焼き付けた厚膜電極とを備えていることを特徴とするセラミックコンデンサ。
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