JP3723992B2 - 脂肪含有輸液製剤及びそれが収容された総合栄養輸液 製剤入り容器 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、脂肪含有輸液製剤及びそれが収容された総合栄養輸液製剤入り容器に関し、より詳しくは、グルコースと脂肪を含有した輸液製剤及び前記輸液製剤とアミノ酸と電解質を含有する輸液製剤が収容された総合栄養輸液製剤入り容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、末梢静脈栄養法及び中心静脈栄養法において、欧米を中心に従来の糖・電解質・アミノ酸輸液製剤に加え、エネルギー源として脂肪乳剤を用いた静脈栄養法が提唱され、臨床適用が盛んに行われている。脂肪乳剤は単位重量当りのエネルギー量が高く、また浸透圧を有していないことから、静脈栄養のエネルギー源としての利用価値は極めて高い。この脂肪乳剤に還元糖を配合した脂肪含有輸液製剤において、加熱滅菌中及び保存中に還元糖が分解して輸液製剤が着色することを抑制するため、着色防止剤としてチオグリセロール及びジチオスレイトールを添加する提案(特開平5−9112号公報)がなされている。また、加熱滅菌中及び保存中に還元糖が分解して、投与時の血管痛や静脈炎の原因となる輸液製剤の酸性化と、脂肪の分解により生成する遊離脂肪酸を抑制するため、緩衝剤としてL−ヒスチジン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを配合する提案(特開平5−65220号公報)がなされている。
しかし、輸液製剤の酸性化を抑制するためにL−ヒスチジンを配合するとの提案(特開平5−65220号公報)は、アミノ酸であるL−ヒスチジンが還元糖と褐変反応(メイラード反応)するため、加熱滅菌中及び経時的に輸液製剤が着色する原因となる。また、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは、輸液製剤に配合される添加剤として臨床で利用された実績がなく、その安全性等に問題が残る。
【0003】
他方、脂肪を投与するために臨床では脂肪乳剤が用いられているが、この脂肪乳剤はY字管を用いて投与するか、あるいは使用直前に連結管を用いて還元糖が配合された輸液製剤等の他の栄養輸液製剤と混合した後に投与している。これらの投与方法は、輸液製剤を調製する操作が煩雑になるばかりでなく細菌による感染の機会が増えるために、必ずしも満足のいくものとはいえない。また、用時に他の栄養輸液剤等と混合した場合、混合後に脂肪粒子の破壊が生じ点滴静注できないことがある。
このように、グルコースと脂肪が配合された脂肪含有輸液製剤、さらに前記輸液製剤にアミノ酸、電解質等の栄養成分を加えた総合栄養輸液剤が安全に且つ簡便に投与でき、しかも保存安定性に優れた総合栄養輸液製剤入り容器が求められている。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グルコース及び脂肪を含有する輸液製剤において、滅菌時、保存時の安定性に優れ、且つ安全性に問題のない脂肪含有輸液製剤を提供すること、また、前記輸液製剤にさらにアミノ酸と電解質の栄養成分を配合した総合輸液製剤を調製するにあたり、保存安定性に優れ、臨床においては、簡単な操作で迅速に投与でき、且つ安全に投与できる総合栄養輸液製剤入り容器を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、輸液製剤中の脂肪の安定性を改善するため、既に提案(特開平5−65220号公報)されているL−ヒスチジンやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを利用することなく、さらに好ましい緩衝剤がないか鋭意検討した。また、脂肪が配合された総合栄養輸液製剤入り容器を提供するにあたり、連通可能な隔離手段で2つの個室に分離された輸液容器に、グルコース、脂肪、電解質、及びアミノ酸の各栄養成分をどの様な組合せで前記各個室に収容するのがよいか詳細に検討した。
その結果、グルコースと脂肪を含む輸液製剤に緩衝剤としてリン酸塩を至適量を配合することで、脂肪の安定性が高まるとの知見を得た。
また、前述の総合輸液製剤入り容器に収納する各栄養成分の適正な組合せについては、2つの個室を連通させて各栄養成分を混合して投与する際、混合した後で脂肪がクリーミングしたり、粗大粒子が生じるなどの品質劣化をおこさない組み合わせを選択することが重要であり、そのためには、混合後の総合栄養輸液製剤がpHが6.5〜7.5になるよう、あらかじめ2つ個室に収容されている輸液製剤のpHを中性付近に調整しておく必要がある。アミノ酸と電解質を含有する輸液製剤を個室に収容する場合、各栄養成分を混合した後のpHを6.5〜7.5にするためには、アミノ酸と電解質を含有する輸液製剤のpHを高くしておく必要がある。ところが、前記のようにアミノ酸と電解質を含有する輸液製剤のpHを高くすると電解質成分としてカルシウムとリン酸が共存する条件下ではリン酸カルシウムの結晶が加熱滅菌後に析出する恐れがありpHを高くすることはできない。そこで、本発明者らは、アミノ酸と電解質を含有する輸液製剤を個室に収容する際、電解質の各成分から少なくともリン酸塩を除いた電解質成分を収容することでpHを高くすることができ、その結果、各栄養成分を混合した後の脂肪の保存安定性を高められるとの知見を得、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、グルコース及び脂肪を含有する輸液製剤において、3mM〜20mMのリン酸塩を配合する脂肪含有輸液製剤であり、また、プラスチック材料で形成された柔軟な輸液容器を、連通可能な隔離手段で2つの個室に分離し、グルコース、脂肪、電解質、及びアミノ酸の各栄養成分が前記個室にそれぞれ収容された輸液製剤入り容器において、前記個室の第1室に請求項1記載の脂肪含有輸液製剤が収容され、第2室にアミノ酸及びリン酸塩を除いた電解質を含有する輸液製剤が収容されている総合栄養輸液製剤入り容器である。特に前記総合栄養輸液入り容器においては、分離された2つの個室を連通させて、それぞれの個室に収容された輸液製剤を混合した際、各栄養成分が混合された総合栄養輸液製剤のpHが6.5〜7.5である総合栄養輸液製剤入り容器が好ましい。
【0006】
本発明において、グルコース及び脂肪を含有する輸液製剤のグルコース含有量は5〜30%(W/V)、脂肪の含有量は1〜10%(W/V)が好ましい。さらに、脂肪の分解を抑制するための緩衝能と栄養学的な生体必要量の双方を考慮した場合、リン酸塩の配合量としては3〜15mMが好ましいが、より好ましくは5〜10mMである。
【0007】
本発明で用いる脂肪は、脂肪乳剤として配合される。この脂肪乳剤は、例えば大豆油、ゴマ油、エゴマ油、アマニ油、綿実油、サフラワー油等の植物油、鯨油、魚油等の動物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の化学合成トリグリセリドから選ばれた1種又は2種以上の油脂を、精製大豆リン脂質、水添大豆リン脂質、精製卵黄リン脂質及び水添卵黄リン脂質から選ばれた乳化剤を用い、水中油型に乳化したものが使用できる。
特に、脂肪乳剤を製造する際、精乳化液の調製温度を5〜35℃に制御して乳化することが好ましい。特に、粗乳化液の調製温度も5〜35℃に制御すること、また、前記乳化条件に加え乳化液分散液の調製温度を65〜95℃に制御すると保存安定性の優れた脂肪乳剤が製造できる。
【0008】
本発明に用いられるアミノ酸は、遊離アミノ酸のみならずナトリウム塩、酢酸塩、塩酸塩等の塩を使用しても良く、さらには一部のアミノ酸をペプチドにしても良い。
【0009】
本発明に用いられる電解質は、従来使用されているものは何れも可能であり、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、乳酸カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等を挙げることができる。 また、リン酸塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等を挙げることができる。
【0010】
その他元素として、下記濃度範囲で、1種叉は2種以上配合したものを挙げることができる。
鉄 5〜 80μM
銅 1〜 30μM
ヨウ素 0.2〜 1μM
マンガン 1〜 60μM
【0011】
さらに、本発明によって調製される輸液製剤には、ビタミン類等必要な栄養素を、一日必要量を考慮して配合することができる。
【0012】
本発明の総合栄養輸液製剤を収容した輸液容器は、例えばプラスチック製の柔軟な袋状容器であって、その中央部が帯状に剥離可能に熱溶着された連痛手段により厳密に隔離された二つの個室のそれぞれに輸液注入口又は排出口が設けられたものが使用できる。
【0013】
【作用】
本発明の脂肪含有輸液製剤においは、緩衝能を発揮するに十分なリン酸塩が配合されているので、滅菌時及び保存時にグルコースが分解しても輸液製剤が酸性化することはない。従って、前記酸性化にともなう脂肪の分解、すなわち脂肪酸トリグリセライドエステルの加水分解が抑制され遊離脂肪酸の発生を抑えることが可能となる。さらに、脂肪含有輸液製剤の酸性化が抑制されることによりクリーミングが生じたり、脂肪粒子が粗大化することもない。
本発明の総合栄養輸液製剤入り容器においては、グルコースと脂肪を含有する前述の脂肪含有輸液製剤とアミノ酸と電解質を含有する輸液製剤を分離して輸液容器に収納しているため、グルコースとアミノ酸の褐変反応(メイラード反応)が起らず、また、電解質により脂肪の品質が劣化することもない。
従来、輸液容器中に電解質成分であるカルシウムとリン酸を共存さると、加熱滅菌直後にリン酸カルシウムの結晶が析出するおそれがあるため、カルシウムとリン酸を含有する電解質を配合した輸液製剤のpHは酸性側に調整されていた。
しかし、脂肪を含有する本発明の総合輸液製剤入り容器の場合は、脂肪が酸性側のpHで品質劣化しやすいことを考慮して、各個室(第1室、第2室)を連通させて各栄養成分を混合した際の輸液製剤のpHを、至適条件すなわちpH6.5〜7.5になるよう調整する必要がある。そのためには、前記個室(第2室)に収容されたアミノ酸と電解質を含有する輸液製剤のpHを酸性側ではなく、中性付近にに調整する必要がある。
そこで、本発明の総合栄養輸液製剤入り容器は、アミノ酸と電解質を含有する輸液製剤が収容されている個室(第2室)において、リン酸塩が除かれた電解質成分が収納されている。これは、前記個室(第2室)に収納されている輸液製剤のpHを中性付近に調整したいとの理由によるものである。
さらに、前述の理由により電解質成分から除いたリン酸塩は、グルコースと脂肪を含有する輸液製剤に配合すると、単なる栄養成分としての役割と、その緩衝の前述のような滅菌時及び保存時の安定性を高める効果をも示す。
【0014】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
【実施例1】
表1に示した組成物のうち、精製大豆油310gに精製卵黄レシチン37.2gを加え、湯浴上で80℃に加温しポリトロンホモジナイザーで攪拌した。溶液を冷却後、62gのグルコースを含む水溶液310mlを加え、ポリトロンホモジナイザーで粗乳化を行った。粗乳化の終わった液を、マイクロフルイダイザーを用いて高圧乳化を行った。得られた乳化液に、予めグルコース687g、リン酸二水素ナトリウム(二水和物)3.3gを溶解した水溶液5000mlを加え、1N水酸化ナトリウムでpHを約6に調整後、さらに蒸留水で全液量を7000mlに調整した。この溶液を孔径5μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第1室に700mlずつ充填し、空間部を窒素ガスで置換後密栓した。次に、表2に示した組成物を、注射用蒸留水に加温溶解して2500mlとし、1規定の酢酸水溶液でpHを7.2に調整した後、全量を3000mlとした。この溶液を孔径0.22μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第2室に300mlずつ充填した。ついで、常法にしたがって高圧蒸気滅菌を行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【実施例2〜5】
実施例1の第1室組成の中でリン酸二水素ナトリウムの量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0019】
【表3】
【0020】
【実施例6】
表4に示した組成物のうち、精製大豆油310gに精製卵黄レシチン37.2gを加え、湯浴上で80℃に加温しポリトロンホモジナイザーで攪拌した。溶液を冷却後、62gのグルコースを含む水溶液310mlを加え、ポリトロンホモジナイザーで粗乳化を行った。粗乳化の終わった液を、マイクロフルイダイザーを用いて高圧乳化を行った。得られた乳化液に、予めグルコース687g、リン酸二水素ナトリウム(二水和物)7.0g及びリン酸水素二ナトリウム0.7gを溶解した水溶液3000mlを加え、さらに蒸留水で全液量を7000mlに調整した。この溶液を孔径5μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第1室に700mlずつ充填し、空間部を窒素ガスで置換後密栓した。次に、表2に示した組成物を、注射用蒸留水に加温溶解して2500mlとし、1規定の酢酸水溶液でpHを7.2に調整した後、全量を3000mlとした。この溶液を孔径0.22μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第2室に300mlずつ充填した。ついで、常法にしたがって高圧蒸気滅菌を行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0021】
【表4】
【0022】
【実施例7】
表5に示した組成物のうち、精製大豆油310gに精製卵黄レシチン37.2g及びグリセリン77.5gを加え、湯浴上で加温しポリトロンホモジナイザーで攪拌した。溶液を冷却後、適当量の蒸留水を加え、ポリトロンホモジナイザーで粗乳化を行った。粗乳化の終わった液を、マイクロフルイダイザーを用い高圧乳化を行った。得られた乳化液に、予めグルコース749g、リン酸二水素ナトリウム(二水和物)7.4g及びリン酸水素二ナトリウム0.35gを溶解した水溶液3000mlを加え、さらに蒸留水で全液量を7000mlに調整した。この溶液を孔径5μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第1室に700mlずつ充填し、空間部を窒素ガスで置換後密栓した。次に、表2に示した組成物を、注射用蒸留水に加温溶解して2500mlとし、1規定の酢酸水溶液でpHを6.7に調整した後、全量を3000mlとした。この溶液を孔径0.22μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第2室に300mlずつ充填した。ついで、常法にしたがって高圧蒸気滅菌を行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0023】
【表5】
【0024】
【実施例8〜9】
実施例8は実施例6の第2室のpHが6.7に、実施例9は第2室のpHが7.6となるように、酢酸水溶液の添加量を減らした。その他の操作はすべて実施例6と同様に行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0025】
【実施例10】
表2に示した組成物を、注射用蒸留水に加温溶解して2500mlとし、1規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.8に調整した後、全量を3000mlとした。この溶液を孔径0.22μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第2室に充填した。次に、表6の組成物のうち、精製大豆油310gに精製卵黄レシチン37.2gを加え、湯浴上で80℃に加温しポリトロンホモジナイザーで攪拌した。溶液を冷却後、31gのグルコースを含む水溶液310mlを加え、ポリトロンホモジナイザーで粗乳化を行った。粗乳化の終わった液を、マイクロフルイダイザーを用いて高圧乳化を行った。得られた乳化液に、予めグルコース718g、リン酸二水素ナトリウム(二水和物)6.4g及びリン酸水素二ナトリウム1.3gを溶解した水溶液3000mlを加え、さらに蒸留水で全液量を7000mlに調整した。この溶液を孔径5μmのメンブランフィルターで濾過し、二室バッグの第1室に充填し、空間部を窒素ガスで置換後密栓した。ついで、常法にしたがって高圧蒸気滅菌を行い、目的とする輸液製剤を得た。
【0026】
【表6】
【0027】
次に試験用の比較液1、2及び3を調製した。
比較液1
実施例1の第1室組成物中、リン酸二水素ナトリウム(二水和物)の量を1.1gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、目的とする比較液1を得た。
比較液2
実施例1の第1室組成物よりリン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを除いて脂肪乳剤を調製し、比較液1とした。
比較液3
実施例6の第2室のpHを6.0になるように酢酸水溶液の添加量を増やし、その他の操作はすべて実施例1と同様に行い、比較液3を得た。
【0028】
【試験例1】
高圧蒸気滅菌前の実施例1〜5の輸液製剤及び比較液1を105℃で10分間高圧蒸気滅菌し、脂肪が入っている第1室の分析を行った。表7に示すように、リン酸塩の添加量が3mM以上の実施例1〜5では滅菌前後のpH変動が小さいの対して、1mMの添加量である比較液1はpHの変動がかなり大きい。この結果より、リン酸塩の添加量が3mM以上であることがpH変動を少なくし、安定な製剤を得るために必要であることが明らかである。
【0029】
【表7】
【0030】
【試験例2】
実施例6、7及び10の輸液製剤を比較液1とともに40℃で3カ月間保存し、脂肪が入っている第1室の分析を行った。表8に示すように、リン酸塩を含有しない比較液1ではpHの大幅な低下が認められ、遊離脂肪酸(FFA)は実施例6、7及び10に比べて高い値を示した。また、リン酸塩の添加による脂肪粒子の破壊は外観上も、粒子径上も認められなかった。
【0031】
【表8】
【0032】
【試験例3】
実施例6〜10の輸液製剤を40℃で3カ月間保存し、アミノ酸・電解質が入っている第2室の分析を行った。保存期間中、結晶などの異物を認めなかった。また、比較のために実施例1の第2室に充填されている輸液に第1室に含まれているのと同量のリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムを添加して加熱滅菌したところ、リン酸カルシウムの結晶が析出した。この結果より、リン酸塩とカルシウムを分離することが製剤化するために有効な手段であることが明らかである。
【0033】
【試験例4】
実施例6〜10で得られた輸液製剤と比較液2の二室間を連通し、25℃で2日間保存した後に、外観観察、さらに、遠心沈降法により2μm以上の粗大粒子の割合を測定した(表9)。その結果、実施例6〜10の輸液製剤は、外観の変化もほとんど認められず、且つ2μm以上の粗大粒子の生成も全く認められなかった。それに対して比較液2では脂肪粒子の破壊によると思われる黄色油状物質と粗大粒子の生成が認められた。この結果より、混合使用時の安定性に対してpHが重要であり、pHを6.5〜7.5に調整した本発明の輸液製剤が有用であることは明らかである。
【0034】
【表9】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、滅菌時及び保存時の安定性に優れた脂肪及びグルコースを含有する輸液製剤を提供することができる。また、保存安定性に優れ、臨床においてはF、簡単な操作で迅速に投与でき、且つ安全に投与できる総合栄養輸液製剤入り容器を提供することができる。
Claims (2)
- プラスチック材料で形成された柔軟な輸液容器を、連通可能な隔離手段で2つの個室に分離し、グルコース、脂肪、電解質、及びアミノ酸の各栄養成分が前記個室にそれぞれ収容された輸液製剤入り容器において、前記個室の第1室にグルコース及び脂肪を含有し、3mM〜20mMのリン酸塩が配合されている脂肪含有輸液製剤が収容され、第2室にアミノ酸及びリン酸塩を除いた電解質を含有する輸液製剤が収容されていることを特徴とする総合栄養輸液製剤入り容器。
- 分離された2つの個室を連通させて、それぞれの個室に収容された輸液製剤を混合した際、各栄養成分が混合された総合栄養輸液製剤のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする請求項1記載の総合栄養輸液製剤入り容器。
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