JP3723305B2 - 変形型分割錠剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は上下表面の両面に割溝を設けた変形型分割錠剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平8−277217号公報には、垂直方向及び水平方向にくびれ部を有する分割性錠剤が記載されている。該公報に記載の分割性錠剤は、垂直方向及び/又は水平方向にくびれ部を形成することにより、割溝を形成することなしに分割でき、その湾曲した形状から接触面積を少なくすることによりフィルムコーティングの工程における接着を防止することを主たる目的としている。従って、該分割性錠剤はその形状において垂直方向のふくらみがかなり盛り上がった2以上の分割体を有する形状であり、後記本発明の変形型分割錠剤とその形状が異なるばかりでなく、割溝を形成せずにフィルムコーティングの工程における接着を防止することのできる分割性錠剤の提供を主たる目的とした点でも異なる。
【0003】
特表平8−500599号公報には、外形が長円形であって上下表面の左右両側にそれぞれふくらみのある両面割線入り分割可能な錠剤が記載されている。該公報に記載の錠剤は、その形状が異なるばかりでなく、長円形の左右のふくらみをアレイ状様に大きくすることにより、該錠剤を静置した場合に分割可能とすることを目的とした錠剤である点で、後記本発明の変形型分割錠剤とその目的が異なる。
【0004】
実開平7−19339号公報には、上下表面の両面に割溝を設けた2分割及び複数個に分割できる円形の分割錠剤が記載されている。
【0005】
実開平2−14333号公報には、楕円形を隣接させた形状で上下表面の両面に割線が入った錠剤が記載されているが、この錠剤は外形及び上下表面がふくらみのない平面錠剤である点で後記本発明の変形型分割錠剤とは異なる。
【0006】
また、長軸幅と短軸幅の比が3:1である両面割線入り長短錠(商品名 セロケンL錠)が市販されているが、この錠剤は長円形であるのに対し、後記本発明の変形型分割錠剤がくびれた外形を有する点で形状が異なる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
錠剤は服用量を調節することが容易であることから、最も多く使用される製剤の形態である。即ち、錠剤の服用量を多くする場合には錠剤の数を増やすことにより簡単に調節でき、服用量を少なくする場合には通常錠剤を分割して調節することができる。しかしながら、錠剤を正確に分割することは通常容易ではなく、分割を目的とする錠剤には、例えば上下表面のいずれかの片面に割溝(又は割線ともいう)が中央に設けられているような工夫がなされている。しかし、実際にはこのような錠剤であっても、殊に円形錠剤では、投薬の対象となる患者や、割る方向等の条件によっては分割時に正確に分割できないことが知られている〔例えば、福田ら、病院薬学, Vol.1, No1, 33-35 (1975)参照〕。そこで、錠剤を正確に分割しやすくするために、例えば、前記実開平7−19339号公報記載の両面に割溝を設けた円形錠剤や、前記実開平2−14333号公報記載の楕円形を隣接させた形の両面割溝入り分割錠剤等の製造が試みられている。しかし、これらの錠剤も、錠剤の割り易さ、分割精度及び製造、輸送、調剤時等の不慮の衝撃に対する割溝部分の強度等の問題を総合すると十分満足できるものとは言いがたく、従って、錠剤を割り易く、且つ正確に割れ、製造、輸送、調剤時等の不慮の衝撃に対して十分な強度を有する分割用錠剤の開発が望まれていた。
【0008】
本発明者らは前記課題、殊に両面割溝入り円形錠剤における課題を解決すべく鋭意研究した結果、今回後記に示す変形型分割錠剤が、正確且つ容易に分割されると共に、取り扱い時の衝撃に対して破損しにくく、病院薬局等で使用される自動錠剤分包機への分包適合性が良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、長軸と短軸を有し、上表面と下表面の周縁間に周側面を備えた変形型錠剤であって、
(a) 長軸幅と短軸幅との比が1.2:1から3:1であり、
(b) 短軸側の外形の一部に短軸幅より短くくびれた形状を有し、
(c) 上下表面に緩やかな凸面状のふくらみを設けてあり、
(d) 短軸側の外形の最もくびれた部分を結んだ中央線部分の上下表面上に上下対向させて割溝を設けてある
ことを特徴とする変形型分割錠剤が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明で用いられるいくつかの用語及び本発明の変形型分割錠剤の特徴について、実施例の錠剤を記載した図面を参照して説明する。
【0011】
「長軸側」とは、円形以外の錠剤において互いに垂直の2方向に分けた場合に長い方を結ぶ長軸〔例えば、図1(A)のL参照〕の端側を意味し、「短軸側」とは、長軸に垂直な短軸(例えば、図1(A)のS参照〕の端側を意味する。「長軸幅」とは長軸のうち最長の長さのものの幅を意味し〔例えば、図1のD参照)、「短軸幅」とは短軸のうち最長の長さものの幅〔例えば、図1(A)のD' 参照〕を意味する。
【0012】
「周側面」とは、錠剤の周縁に、上下表面にほぼ垂直方向に形成された連続した面を意味する〔例えば、図1(B)及び(C)の1h参照〕。
【0013】
「中央線」とは、短軸側の外形に形成されるくびれの最もくびれた部分〔例えば、図1の1dと1e参照〕を結んだ線上の線〔例えば、図1(A)の1c参照〕を意味する。「中央線部分」とは、中央線を含む近接部分を意味する。本発明の変形型分割錠剤においては、中央線部分に割溝を設けているので「中央線部分」を以下の説明では「割溝部分」と称することもある。
【0014】
「割溝」とは、錠剤の上下表面に錠剤の中心に向かってある幅で一定の深さに切り込んだ溝を意味するが、割溝は錠剤が通常小さいために見た目には線の如く見えることから割線と称されることもあり、本明細書においては割溝と割線とは同義のものとして用いる〔例えば、図1(B)の1p及び1q参照〕。
【0015】
「面取り」とは、錠剤の上表面及び/又は下表面に、錠剤の周縁から一定の長さで一定の傾斜をもった面を施すことを意味し、その形成された面を「傾斜縁面」と称する〔例えば、図1(B)の1i及び1j参照〕。
【0016】
本発明の錠剤は長短形錠の変形型であって、長軸幅と短軸幅の比は通常、1.2:1〜3:1の範囲であるが、1.5:1から2.5:1の範囲が好ましく、特に約2:1が好ましい。
【0017】
長軸側の周縁の形状としては、調剤時等に機械等にぶつかったときに錠剤の損傷が少ないように、円弧状〔例えば、図1(A)の1a及び1b参照〕、長軸側の両先端の角部が丸みを帯びている直線状(例えば、図5参照)又は先端部が丸みを帯びている三角形状(例えば、図7参照)が挙げられるが、円弧状が好ましく、特に短軸幅〔例えば、図1(A)のD’参照〕が円弧の直径である形状が好ましい。
【0018】
本発明の錠剤には、上下表面と周側面とが接する周縁に面取りを施して傾斜縁面を設けていることが好ましく、その面取り角度(α)〔例えば、図1(B)参照〕は通常、約10度〜約50度であるが、約30度が好ましい。
【0019】
本発明の錠剤の中央線の両端付近のくびれの形としては、対称形状の円弧状〔例えば、図1(A)の1d及び1e付近参照〕、中央線の両端を底部とする緩やかなV字状(例えば、図8参照)が挙げられるが、フィルムコーティングを施す場合や取り扱い時の錠剤強度の点から円弧状が好ましい。
【0020】
くびれを形成する円弧(例えば、図2における点線とくびれ部分1d又は1eを結ぶ曲線参照)は、例えば中央線の両側の延長線上に、中央線の中心点(例えば、図2の1x参照)からそれぞれの寸法が短軸幅(D’)(例えば、図2参照)の約1〜約3倍、好ましくは約1.5倍の位置(例えば、図2の1y又は1z参照)を起点として、最大くびれ間の長さ(D'')(例えば、図2参照)がそれぞれ短軸幅D’の約70〜約90%になるように円弧が設定される。
【0021】
円弧状又はV字上の最大くびれ間の長さ(D'')は、通常、短軸幅の約70〜約90%になるように設定するが、約75〜約85%に設定するのが好ましい。この理由としては、該寸法が90%を越えると、くびれを設けた効果が乏しく分割性が低下し、一方、70%未満であると、上下割溝間の連結部の強度が低下し、搬送途中あるいは調剤中、更には保管時に衝撃が加わっただけでも割れが生じるおそれがあることが挙げられる。
【0022】
本発明の錠剤の上下表面に設けた緩やかな凸面状のふくらみとしては、例えば、円弧の形状〔例えば、図4(B)参照〕が挙げられるが(但し、割溝部分を除く)、好ましくは傾斜縁面を形成し、傾斜縁面の内側の両端〔例えば、図1(B)の1k及び1l(1エル)参照〕から錠剤の中央に向かってもりあがった円弧の形状〔例えば、図1(B)参照〕が挙げられる(但し、割溝部分を除く)。
【0023】
傾斜縁面は通常傾斜した連続的な平面状であるが、連続的な緩やかな曲面状であってもよい。また、周側面と傾斜縁面又は上下表面のふくらみとの接点付近には、傾斜面又はふくらみではなく一部分水平な平面、すなわち、はかま部分が形成されていてもよい。
【0024】
傾斜縁面の幅は、通常、長軸幅の約10%以下であるが、約5〜約8%が好ましい。
【0025】
上記ふくらみの程度としては、傾斜縁面がない場合には〔例えば、図4(B)参照〕、周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の上下寸法(t)〔例えば、図4(B)参照〕を、通常、錠剤の最大厚み(T)〔例えば、図4(B)参照〕の約5〜約25%に設定するが、約10〜約18%に設定するのが好ましく、約15%が更に好ましい。この理由としては、上記寸法比を5%未満にすると、上下表面が平面状に近くなるため、ふくらみを設けた効果が乏しく、上下割溝の間の連結部の強度が低下し、一方、25%を越えると分割性が低下することが挙げられる。
【0026】
また、傾斜縁面を設ける場合には〔例えば、図1(B)参照〕、傾斜縁面の内側の端〔図1の1k、1l(1エル)、1r又は1s参照〕とふくらみの頂上間の上下寸法(t’)〔例えば、図1(B)参照〕を周側面の端とふくらみの頂上間の上下寸法(t)〔例えば、図1(B)参照〕の約20〜約60%に設定するのが好ましく、約25〜約40%に設定するのが更に好ましい。この理由としては、上記寸法比を20%未満にすると、上下表面が平面状に近くなるため、ふくらみを設けた効果が乏しく、上下割溝の間の連結部の強度が低下し、一方、60%を越えると分割性が低下することが挙げられる。
【0027】
錠剤の最大厚み(T)は、通常、長軸幅の約20〜約40%であるが、約25〜約30%が好ましい。
【0028】
周側面の上下端間の幅(T−2t)〔例えば、図1(B)参照〕は、通常錠剤の最大厚み(T)の約40〜約80%であるが、約60〜約70%が好ましい。
【0029】
上下表面の割溝は、断面がV字状、凹状又は円弧状のいずれでもよいが、V字状が最も好ましい。また、V字状の先端部付近では丸みを帯びているか、平らになっていてもよいし、あるいは上下表面側が広くなった台形状となっていてもよい。
【0030】
V字状の形状では、その外方への開き角度(β)〔例えば、図1(B)参照〕が約40〜約120度であり、約60〜約120度が好ましく、約90度が更に好ましい。
【0031】
上記上下表面より切り込んでいる各割溝の深さ(H)〔例えば、図1(B)参照〕は、錠剤の最大厚み(T)〔例えば、図1(B)参照〕の約5〜約30%であり、好ましくは約6〜約20%の範囲であり、特に好ましい範囲は約8〜約18%である。
【0032】
かくして説明された本発明の変形型分割錠剤としては、具体的には対称形である図1、図4及び図5〜図8の錠剤が挙げられるが、これらの錠剤の左右部分又は上下部分を分けてそれぞれ組み合わせた形の錠剤も本発明の錠剤に含まれる。
【0033】
本発明の変形型分割錠剤の好ましい形態としては、周側面を備えた変形型錠剤であって、
(a) 長軸幅と短軸幅の比が1.5:1から2.5:1であり、長軸側の周縁部の外形は円弧状であり、
(b) 中央線付近での短軸側外形が短軸幅(D’)より短くくびれた形状であり、その最大くびれ間の長さ(D'')は、短軸幅の75〜85%であり、
(c) 上下表面と周側面とが接する周縁に面取りを施して傾斜縁面を設けてあり、
(d) 上下表面上の緩やかな凸面状のふくらみが、傾斜縁面の内側の両端を結ぶ円弧状であり、傾斜縁面の内側の端とふくらみの頂上間の上下寸法(t’)が周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の上下寸法(t)の25〜40%であり、
(e) 中央線部分の上下表面上に上下対向させて割溝を設け、その割溝の形状がV字状であり、割溝における外方への開き角度が60度〜120度であり、上下表面より切り込んでいる各割溝の深さが錠剤の最大厚みに対して約6%〜約20%である
変形型分割錠剤が挙げられる。
【0034】
本発明の変形型分割錠剤は、各種活性物質の投与の医学的形態として適しており、所望の医薬的活性成分も本錠剤の活性成分(以下、主薬と記すこともある)として使用することができる。主薬は、例えば、錠剤重量の約0.1 〜約90重量%で存在することができるが、約0.1 〜約70重量%が好ましく、約0.1 〜約35重量%が更に好ましい。
【0035】
本発明の変形型分割錠剤を製造するための錠剤処方としては、通常の錠剤の製造のために用いられる処方を用いることができる。その処方に用いられる添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、吸収促進剤、着色剤が挙げられる。
【0036】
本発明の変形型分割錠剤は、通常の錠剤処方及び適当な型に設計した杵及び臼を用いて、例えば、後記実施例に記載した形状に製錠することにより製造することができる。
【0037】
さらに、本発明の変形型分割錠剤は適当な形に形成後、必要に応じて通常用いられるコーティング剤を用いフィルムコーティングを施すことができる。
【0038】
本発明の分割錠剤の具体的な例として、後記実施例1及び実施例2に記載の錠剤の他に以下に示すK錠、L錠、M錠及びN錠を挙げるが、本発明はこれらの錠剤に限定されるものではない。
【0039】
K錠:図5に示した変形型分割錠剤で、長軸幅と短軸幅の比が約1.8:1であり、長軸側の周縁部の外形が後記実施例1のそれとは異なる変形型分割錠剤である。
【0040】
L錠:図6に示した変形型分割錠剤で、長軸幅と短軸幅の比が約3:1である。
【0041】
M錠:図7に示した変形型分割錠剤で、長軸幅と短軸幅の比が約2:1であり、長軸側の周縁部の外形が後記実施例1のそれとは異なる変形型分割錠剤である。
【0042】
N錠:図8に示した変形型分割錠剤で、長軸幅と短軸幅の比が約2:1であり、短軸側のくびれの形状が実施例1のそれとは異なる変形型分割錠剤である。
【0043】
以下に、常法により製造した変形型分割錠剤の形状の特徴を実施例として示し、本発明を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例に記載の錠剤の処方と比較例に記載の錠剤の処方とは同一又は実質的に同一である。
【0044】
【実施例】
実施例 1:本発明の変形型分割錠剤の形状の特徴――
図1(A)に示すように、実施例1の変形型分割錠剤1は、長軸幅D(11.5 mm)と短軸幅D’(5.75 mm)の比が1:2であり、長軸の両端1a及び1bは短軸幅D’を直径とする円弧状であり、中央線(即ち、割溝)1cの両端付近の形状を短軸幅D’より更に短く円弧状にくびれさせた対称形状に形成しており、図2に示すように、上記円弧状のくびれ1d及び1eは,中央線の両側の延長線上に、中央線の中心点1xからそれぞれの寸法が短軸幅D’約1.5倍の位置(1y及び1z)を起点として、それぞれ半径を6.5 mmとする円弧(─点線で示す)を描き、最大くびれ部分、即ち寸法D''(4.75 mm)を短軸幅D’の約83%に設定している。
【0045】
図1(B)に示すように、上表面1f及び下表面1gに設けた長軸方向の緩やかな凸面状のふくらみは、長軸方向の上下表面と周側面とが接する周縁に面取りを施してなる傾斜縁面の内側のそれぞれの端1k及び1l(1エル)又は1m及び1nを結ぶ円弧状(半径:81 mm)であり、傾斜縁面の内側の端(例えば1k)とふくらみの頂上間の寸法t’(0.15 mm) を周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の寸法t(0.55 mm) の約27%に設定している。中央線部分の上表面1f及び下表面1gに断面V字状として上割溝1p及び下割溝1qを設け、これらの切り込みの割溝の深さH(0.3 mm) は錠剤の最大厚みT(3.2 mm) に対して9.4 %で、割溝の開き角度βは約90度に設定している。なお、傾斜縁面の面取り角度αは約30度である。
【0046】
図1(C)に示すように、上表面1f及び下表面1gに設けた短軸方向の緩やかな凸面状のふくらみは、短軸方向の上下表面とが接する周縁に面取りを施してなる傾斜縁面の内側のそれぞれの端1r及び1s又は1t及び1uとふくらみの頂上1vを通る円弧(半径:14.1 mm)であり、傾斜縁面の内側の端(例えば1r)とふくらみの頂上間の寸法t’(0.15 mm)を周側面の端とふくらみの頂上間の寸法t(0.55 mm)の約27%に設定している。
【0047】
上記実施例1の錠剤を2分割する場合、図3(A),(B)に示すように○印部分を指で持ち、上割溝部分1pを開く方向(A)に分割しても、閉じる方向(B)に分割しても、割溝1p及び1qに沿って正確に分割することができる。
【0048】
実施例 2: 本発明の変形型分割錠剤(傾斜縁面のない錠剤)の形状の特徴――
図4(A)に示すように、実施例2の変形型分割錠剤2は、長軸幅D(11 mm)と短軸幅D’(5.5 mm) の比が1:2であり、長軸の両端2a及び2bは短軸幅D’を直径とする円弧状であり、中央線(割溝)2cの両端付近の形状を短軸幅D’より更に短く円弧状にくびれさせた対称形状に形成しており、実施例1に示した方法と同様にしてくびれを形成させている。最大くびれ部分、即ち2d及び2eを結んだ寸法(4.2 mm) を短径軸D’の約76%に設定している。
【0049】
図4(B)に示すように、上表面2f及び下表面2gに設けた長軸方向の緩やかな凸面状のふくらみは、長軸方向の周側面2hの端2i’及び2j’を結ぶ円弧状(半径:30 mm)であり、周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の寸法t(0.5 mm) を錠剤の最大厚みT (3.6 mm) の約14%に設定している。中央線部分の上表面2f及び下表面2gに断面V字状として上割溝2p及び下割溝2qを設けている。これらの割溝の深さH(0.4 mm) は錠剤の最大厚みT(3.6 mm) に対して約11%に設定している。
【0050】
図4(C)に示すように、上表面2f及び下表面2gに設けた短軸方向の緩やかな凸面状のふくらみは、短軸方向の周側面2hの端2r’及び2s’とふくらみの頂上2vを通る円弧状(半径:7.45 mm)であり、周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の寸法t(0.5 mm) を錠剤の最大厚みT (3.6 mm) の約14%に設定している。
【0051】
(比較例)
以下に、後記試験において実施例1及び実施例2の錠剤(図1及び図4の変形型分割錠剤)と比較するために用いた錠剤の形状の特徴を比較例1〜3に示し、これらの錠剤の図面についてはそれぞれ図9〜図11に示す。
【0052】
比較例 1: 長円形両面割線錠の形状の特徴――
図9に示す比較例1の錠剤は、長円形で上下表面にふくらみのない平面錠で、上下表面の中央線部分にそれぞれ割溝を設けている。長軸幅と短軸幅の比は、2:1であり、V字状の割溝の深さは、それぞれ上下表面間の約13%である。
【0053】
比較例 2: 円形両面割線錠の形状の特徴――
図10に示す比較例2の錠剤は、真円形で上下表面にふくらみのない平面錠で、上下表面に対向して直径方向に割溝を設けてある。V字状の割溝の深さは、それぞれ上下表面間の約13%である。
【0054】
比較例 3: 変形型両面割線錠(平面錠)の形状の特徴−−
図11に示す比較例3の錠剤は両面割線入り変形型錠剤(長軸幅 11.5 mm, 短軸幅 5.75 mm) で、実施例1の錠剤とは上下表面がふくらみのない平面である点で異なる。V字状の割溝の深さは、それぞれ上下表面間の約13%である。
【0055】
【作用】
以下に、実施例の錠剤と比較例の錠剤の分割性、衝撃の強度及び自動錠剤分包機による分包適合性についての試験を示し、本発明の錠剤の優れた特徴を示す。
【0056】
試験例1:分割性試験――
5名(男性4名、女性1名)のパネラーに試験の目的を説明せず、実施例及び比較例の錠剤各10錠につき、割溝に沿って手分割するように指示した。分割方法は各パネラーに任せた。
【0057】
分割によって得られた半錠各20個の重量を精密に秤量し、重量の標準偏差を求め、平均値で除して変動係数(CV%)を算出し、その結果を表1に示す。なお、変動係数が小さいほど分割した半錠の等量精度が高いことを示しており、本実験においてはCV%が4%以下の錠剤を分割性が良好な錠剤と評価した。
【0058】
【表1】
【0059】
上記表1から明らかなように、本発明の変形型分割錠剤はCV値1.2 〜2.9 %と分割後の半錠の重量変動が極めて小さく、上下表面が平面である長円形錠剤(比較例1の錠剤)や真円形錠剤(比較例2の錠剤)に比べて明らかに分割性が優れていた。なお、比較例3の錠剤は実施例1と上下表面上が平面であることを除いて同形状の錠剤であるので、実施例1の錠剤と同様に分割性は優れていた。
【0060】
試験例2: 錠剤の強度測定試験――
厚さ7 mmのガラス板を水平な床面に設置し、実施例の錠剤又は比較例の錠剤の錠剤1錠につき1mの高さからガラス板上に自然落下させる操作を15回繰り返し、破損するに至った回数を測定した。測定は10錠について行い、落下回数の合計を下記数1に従って算出し、その結果を表2に示す。なお、下記数1において15回で破損しなかった場合は落下点数を15点とした。
【0061】
【数1】
落下点数(点)=(個々の試料が破損した落下回数−1)×錠剤の数
【0062】
上記式から明らかなように、落下点数が大きいほど強度が高いことを示しており、本実験において65点以上のものを強度に問題がない錠剤と評価した。
【0063】
【表2】
○:強度に問題ない; △:強度にやや問題がある
×:強度に問題がある
【0064】
上記表2から明らかなように、実施例の変形型分割錠剤は比較例1の長円形の錠剤の落下点数(27点)に比べて明らかに強度が優れていた。なお、実施例1と上下表面上が平面であることを除いて同形状の比較例3の錠剤は、実施例1及び2の錠剤よりも強度が少し弱かった。
【0065】
試験例3: 分包機適合性試験――
病院薬局で通常用いられる自動錠剤分包機で適合性を試験し、表3に示す結果が得られた。
【0066】
【表3】
○:分包容易; ×:分包不可
【0067】
上記表3から明らかなように、実施例1及び2の錠剤は形状に方向性がない円形錠剤(比較例2の錠剤)と同様に良好な分包性を示した。一方、平面錠である比較例1及び3の錠剤は流動性に欠け、自動錠剤分包機では分包することができなかった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の変形型分割錠剤は分割精度が極めて良好で、且つ搬送中、調剤中又は保管中に衝撃が加わっても割れが生じるおそれがほとんどなく、病院薬局等で使用される自動錠剤分包機で分包する際に錠剤の水平方向への回転による方向規制等が容易にできるため分包機適合性が良好である。さらに本発明の変形型分割錠剤はくびれた形状であるため、分割する際に持ちやすく、高齢者にも容易に分割することができる。また、分割せずにそのまま服用するときも、大きい錠剤という印象もなく容易に服用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1の変形型分割錠剤を示し、(A)は平面図、(B)は正面図及び(C)は側面図である。
【図2】図2は実施例1の変形型分割錠剤のくびれ部分の形成方法を示している。
【図3】図3は両面割溝入り錠剤の分割方法の模式図を示し、(A)は下向きに割る場合を示し、(B)は上向きに割る場合を示す。
【図4】図4は実施例2の変形型分割錠剤を示し、(A)は平面図、(B)は正面図及び(C)は側面図である。
【図5】図5は本発明に含まれる変形型分割錠剤(K錠)の平面図を示す。
【図6】図6は本発明に含まれる変形型分割錠剤(L錠)の平面図を示す。
【図7】図7は本発明に含まれる変形型分割錠剤(M錠)の平面図を示す。
【図8】図8は本発明に含まれる変形型分割錠剤(N錠)の平面図を示す。
【図9】図9は比較例1の錠剤を示し、(A)は平面図及び(B)は正面図である。
【図10】図10は比較例2の錠剤を示し、(A)は平面図及び(B)は正面図である。
【図11】図11は比較例3の変形型錠剤(上下平面型)を示し、(A)は平面図及び(B)は正面図である。
【符号の説明】
D :長軸幅
D’:短軸幅
D'':最大くびれ間の長さ
L :長軸
S :短軸
H :割溝の深さ(ふくらみの頂上と割溝の最低部の高低差)
T :錠剤の最大厚み
t :周側面の上端(又は下端)とふくらみの頂上間の上下寸法
t’:1k,1l(1エル),1m,1n,1r,1s,1t又は1uとふくらみの頂上間の上下寸法
α :面取り角度
β :割溝の開き角度
1,2:錠剤
1a,1b,2a,2b:長軸側の周縁部の外形
1c,2c:中央線
1d,1e,2d,2e:短軸側外形のくびれ部分
1f,2f:上表面
1g,2g:下表面
1h,2h:周側面
1i:上傾斜縁面
1j:下傾斜縁面
1k,1l(1エル),1r,1s:上表面の傾斜縁面と緩やかな凸面状のふくらみとの境界
1m,1n,1t,1u:下表面の傾斜縁面と緩やかな凸面状のふくらみとの境界
1p,2p:上割溝(部分)
1q,2q:下割溝(部分)
2i’,2j’,2r’,2s’:周側面の上端
1v,2v:短軸方向のふくらみの頂上
1x:中央線の中心点
1y,1z:円弧の中心
Claims (7)
- 長軸と短軸を有し、上表面と下表面の周縁間に周側面を備えた変形型錠剤であって、
(a) 長軸幅と短軸幅との比が1.2:1から3:1であり、
(b) 短軸側の外形の一部に短軸幅より短くくびれた円弧状の形状を有し、
(c) 上下表面に、上下表面と周側面とが接する周縁にそれぞれ面取りを施して傾斜縁面を設け、該傾斜縁面の内側の両端から錠剤の中央に向かってもりあがった円弧状(但し、下記割溝部分を除く)の凸面状のふくらみが設けてあり、当該ふくらみは傾斜縁面の内側の端とふくらみの頂上間の上下寸法が、周側面の端とふくらみの頂上間の上下寸法の20〜60%となるように設定されたものであり、
(d) 短軸側の外形の最もくびれた部分を結んだ中央線部分の上下表面上に上下対向させて割溝を設けてある
ことを特徴とする変形型分割錠剤。 - 割溝の断面がV字状、凹状又は円弧状である請求項1記載の変形型分割錠剤。
- 短軸幅より短くくびれた円弧状の形状が、中央線の両側の延長線上に、中央線の中心点からそれぞれ短軸幅の1〜3倍の位置を起点として、最大くびれ間の長さが短軸幅の70〜90%になるように設定されたものである請求項1または2に記載の変形型分割錠剤。
- 上下表面のふくらみは、傾斜縁面の内側の端とふくらみの頂上間の上下寸法が、周側面の端とふくらみの頂上間の上下寸法の25〜40%になるように設定されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の変形型分割錠剤。
- 長軸幅と短軸幅の比が1.5:1から2.5:1であり、長軸側の周縁部の外形が両側とも円弧状である請求項1〜4のうちのいずれか1項記載の変形型分割錠剤。
- 長軸側の周縁部の外形が両側とも短軸幅を直径とする円弧状である請求項5記載の変形型分割錠剤。
- 上下表面より切り込んでいる各割溝の深さが錠剤の最大の厚みに対してそれぞれ6%〜20%である請求項6記載の変形型分割錠剤。
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