JP3722546B2 - 不織布及びその製造方法並びにこれを用いてなる吸収性物品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触感に優れ、生産性にも優れた不織布及びその製造方法並びに該不織布を用いてなる吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明の解決しようとする課題】
全部又は一部が分割可能な複合繊維により形成されてなり、微細な繊維を有してなる不織布は、触感に優れており、更に塵埃の集塵力に優れるため、眼鏡拭きや各種清掃用のワイパー等として提案されている。
従来、上記の不織布は、上記複合繊維の構造上、スパンレース法により処理して上記複合繊維を分割する必要があったため、上記複合繊維を含有する繊維混合物を、スパンレース法により、各繊維を絡合させて且つ上記複合繊維を分割して微細繊維を形成させることにより、製造されている。
【0003】
しかし、上記スパンレース法により製造される上記不織布は、上記スパンレース法を用いるために、製造工程が煩雑であり、生産性が悪いという問題がある。更には、コストも高いという問題がある。
【0004】
一方、使い捨ておむつなどの吸収性物品においては、これに用いられる表面シートとして、中央部が親水性で左右両側部が疎水性である不織布を用いることが提案されているが、このような不織布は、油剤の塗布により親水性とした不織布と撥水性の不織布とを貼り合わせて形成していたため、シール貼り合わせ工程など複数の工程を必要とし、該不織布の製造工程が煩雑であり、生産性に劣るという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、触感及び集塵能力に優れ、更には生産性に優れ、コストも低減された、微細な繊維構造を有する不織布を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、生産性の高い不織布を、表面シート又は外層シートとして有してなる吸収性物品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、特定の複合繊維を用い、該複合繊維の一部を分割させてなる不織布が上記目的を達成しうることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる複合繊維を20重量%以上含有し、熱接着により形成されてなる不織布であって、上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されており、上記複合繊維は、上記低融点体と上記高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を用いて形成されており、上記低融点成分が熱収縮性の樹脂であり、上記不織布は、疎水性領域と親水性領域とに区分されており、該疎水性領域は上記繊維分割部分の割合が多く、該親水性領域は該繊維分割部分の割合が少ないことを特徴とする不織布(以下、「不織布」という場合には、この不織布を意味する)を提供するものである。尚、以下では、「低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる複合繊維を20重量%以上含有し、熱接着により形成されてなる不織布であって、上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されている不織布」のことを、「不織布A」という場合がある。上記不織布B及び下記不織布Cは、いずれもこの不織布Aの一種である。
【0008】
また、本発明は、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる複合繊維を20重量%以上含有し、熱接着により形成されてなる不織布であって、上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されており、上記複合繊維は、上記低融点体と上記高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を用いて形成されており、上記低融点成分が熱収縮性の樹脂であり、上記不織布は、所定のパターンで白濁部を有し、該不織布における該白濁部の占める割合が面積換算で3〜30%であることを特徴とする不織布(以下、「不織布C」という場合には、この不織布を意味する)を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記不織布Bの製造方法として、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を20重量%以上含有する繊維混合物を、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度で加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程の後、加熱処理された繊維混合物を線圧20Kg/cm以上で加圧処理する加圧処理工程とを具備し、上記加圧処理工程における加圧処理は、加熱処理された繊維混合物の一部分についてのみ行うことを特徴とする不織布の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記不織布Cの製造方法として、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を20重量%以上含有する繊維混合物を、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度で加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程の後、加熱処理された繊維混合物を線圧20Kg/cm以上で加圧処理する加圧処理工程とを具備し、上記加圧処理工程における加圧処理は、所定のパターンを有するエンボス処理により行うことを特徴とする不織布の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、液透過性の肌当接面、液不透過性の非肌当接面、及び該肌当接面と該非肌当接面との間に介在された液保持性の吸収部を有する吸収性物品において、上記肌当接面が上記不織布Aにより形成されているか、又は上記非肌当接面が、液不透過性シートとその表面に配された上記不織布Aとにより形成されていることを特徴とする吸収性物品を提供することにより上記の他の目的を達成したものである。
また、本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び両シート間に介在された吸収体を有する使い捨ておむつにおいて、上記表面シートが、上記不織布Bにより形成されていることを特徴とする使い捨ておむつを提供することにより上記の他の目的を達成したものである。
また、本発明は、液透過性の肌当接面、液不透過性の非肌当接面、及び該肌当接面と該非肌当接面との間に介在された液保持性の吸収部を有する吸収性物品において、上記肌当接面が、上記不織布Cにより形成されていることを特徴とする吸収性物品を提供することにより上記の他の目的を達成したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、先ず本発明の不織布について更に詳細に説明する。
本発明の不織布は、特定の複合繊維を特定の含有率で含有し、熱接着により形成されてなる。
【0012】
本発明の不織布が含有する上記の特定の複合繊維は、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる。
【0013】
上記低融点成分としては、その融点が100〜150℃であるものが好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリブテン及びエチレン及び/又はブテンとα−オレフィンとの共重合体;プロピレンとα−オレフィンとの共重合体として知られるブロックコポリマー、ランダムコポリマー若しくはグラフトコポリマー等の低融点ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートにおける、テレフタル酸ユニットのうちの少なくとも1部分がイソフタル酸、アジピン酸、フタル酸等のジカルホン酸に置換された低融点ポリエステル等の高収縮性(熱収縮性)の樹脂が好ましく挙げられる。
【0014】
上記高融点成分としては、その融点が160〜260℃であるものが好ましく、具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリプロピレン;メチルペンテン共重合体;アクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等が好ましく挙げられる。
【0015】
また、上記高融点成分の融点は、100〜150℃上記低融点成分の融点よりも高いのが好ましい。
【0016】
また、上記低融点成分と上記高融点成分との好ましい組合せとしては、(低融点成分/高融点成分)が、低融点ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン/ポリプロピレン等が挙げられる。
【0017】
また、上記複合繊維における上記低融点成分と上記高融点成分との、配合割合は、上記低融点成分80〜20重量部に対して上記高融点成分20〜80重量部である。
【0018】
そして、本発明の不織布において上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されている。
【0019】
ここで、上記「一体化」とは、溶融された上記低融点成分が、上記高融点体の周囲に集合・集積されて、定形の高融点体と不定形の低融点体とが一体になっていることを意味する。また、上記「少なくとも一部が界面剥離している」とは、各高融点体が、低融点成分(低融点体)により相互に連結された状態から解放されて、自由度の高い状態とされていることを意味する。
【0020】
このような複合繊維は、上記低融点体と上記高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維(以下、「繊維A」という場合には、この繊維を意味する)を用いて形成されているのが好ましい。また、この際、上記低融点成分は、上記熱収縮性の樹脂であるのが好ましい。
また、上記低融点体及び上記高融点体の形状は、上記繊維Aの形状が円柱状である場合には、それぞれ、断面形状が円弧状のひも体であるのが好ましい。
即ち、上記繊維Aは、断面形状が円弧状のひも体である上記低融点体及び上記高融点体が、それぞれ、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている、略円柱状の繊維であるのが好ましい。
【0021】
また、上記繊維Aの繊度は、1〜12d(デニール)であるのが好ましく、長さは38〜64mmであるのが好ましい。
また、上記低融点体と上記高融点体は、それぞれ3〜6個用いて、上記繊維Aが構成されているのが好ましい。
また、上記繊維Aとしては、「TF15」(商品名、ダイワボウポリテック株式会社)等の市販品を用いることもできる。
【0022】
また、本発明の不織布には、他の繊維を含有させることもできる。
上記の他の繊維としては、通常、不織布に用いられるバインダー成分を特に制限なく用いることができるが、低融点成分として用いる樹脂を同じ成分を有する繊維を用いるのが好ましい。具体的には、上記複合繊維として、低融点ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、低融点ポリプロピレンからなる繊維、又は該低融点ポリプロピレンを鞘成分とする芯鞘構造を有する繊維などが用いられる。
【0023】
また、本発明の不織布における上記複合繊維の上記の特定の含有率は、20重量%以上であり、好ましくは60〜100重量%である。上記含有率が20重量%未満であると、触感及び集塵能力が劣り、微細な繊維構造を有する不織布とならない。
【0024】
本発明の不織布における上記複合繊維の形態について、図面を参照して更に詳しく説明する。
ここで、図1は、複合繊維の原料としての繊維の構造を示す模式図である。また、図2は、本発明の不織布の一形態における複合繊維の構造を示す模式図である。
【0025】
上記複合繊維は、図1に示す、断面形状が円弧状であり且つひも状体である低融点体2及び高融点体3が、それぞれ、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に連続して配されてなる、細長い略円柱状の繊維1’(繊維A)を用いて形成されている。従って、上記繊維1’において、各上記高融点体3は、それぞれ、その幅方向において低融点体2を介して相互に連結されている。
【0026】
そして、図2に示す複合繊維1は、後述するように、該繊維1’を加熱処理(又は更に加圧処理)して形成されており、即ち、上記繊維Aを含む繊維混合物を、加熱処理して、熱接着により形成されてなり、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体が一体化した複合部分Aと、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分Bとが、混在して形成されている
更に詳述すると、図2に示すように、上記複合部分Aは、熱接着により、即ち、加熱により上記低融点体が収縮、溶融し、溶融された低融点成分2’が高融点体3と融着して形成されている。
尚、上記複合部分Aは、上記の他の繊維を用いた場合、上記低融点成分2’が該他の繊維に融着されて形成されたものも含まれる。
また、上記繊維分割部分Bは、上記低融点成分の収縮により、高融点体3と低融点成分とが界面剥離を起こし相互に連結された状態から解放されて、自由度の高い状態になされている。
なお、分割された各高融点体3は、連結された状態から解放されていれば、その周囲に上記低融点成分が付着していてもよい。
【0027】
本発明に係る上記不織布Aは、上述の如き構成を有しているので、触感に優れ、更には集塵能力にも優れる。更に、後述する製造方法に従って製造できるため、生産性にも優れる。
【0028】
次いで、本発明に係る上記不織布Aの製造方法について説明する。上記不織布Aの製造方法は、上記繊維A等の上記複合繊維の原料としての繊維を上記の含有率(20重量%以上)で含有してなる繊維混合物を、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度で加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程の後、加熱処理された繊維混合物を線圧20Kg/cm以上、好ましくは30〜100Kg/cmで加圧処理する加圧処理工程とを行うことにより実施できる。ここで、上記加熱処理工程の方法としてはエアースルー法、ヒートロール法があげられ、両者を併用しても良い。
【0029】
また、上記加熱処理工程における加熱温度は、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度である。上記収縮温度未満であると、低融点成分が収縮せず、繊維分割部分が形成されず、また上記融点以上であると、フィルム化してしまい、微細な繊維構造を有する不織布が形成されない。ここで、上記「収縮温度以上の温度」とは、一般に上記低融点成分の融点以上の温度である。
また、加熱時間は、加熱方法としてエアースルー法を用いた場合であれば1〜30秒とするのが好ましい。
【0030】
上記加熱工程のみでも、上記繊維分割部分を形成せしめることはでき、従って、上記加熱工程のみでも本発明の不織布を製造することはできる。しかし、上述の如く、加熱工程を行った後、更に、上記加圧工程を行うことにより、より繊維分割部分の多い(繊維の分割される割合が多く、更には分割された各高融点体の自由度も高い)不織布を形成することができ、各種ワイパー用等としてより有用な、本発明の不織布を得ることができる。
【0031】
上記加圧工程における加圧方法は、金属ロールと弾性ロールとを用いたロールの押圧による加圧方法が用いられるが、これに限るものではない。
また、上記線圧が20Kg/cm未満であると、より繊維を分割する効果が低い。従って、上記加圧工程を行う場合、上記線圧を20Kg/cm以上として加圧処理することが好ましい。
換言すると、本発明の不織布としては、上記加熱工程を行った後、更に上記加圧工程を行って形成されている不織布が特に好ましい。
【0032】
尚、上記各工程以外の工程、例えば、繊維混合物の形成工程などは、通常の方法により行うことができる。
【0033】
本発明に係る上記不織布Aは、眼鏡拭き、各種清掃用ワイパー、各種衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品)の液透過性の表面材等や、おむつの外層材等として好適である。
【0034】
そして、本発明の不織布10は、上記不織布Aにおいて、図3(a)に示すように、疎水性領域11と親水性領域12とに区分されてい。また図3(b)に示すように親水性領域12を囲むように疎水性領域11が設けられていてもよい。ここで、上記疎水性領域とは、上記繊維分割領域の割合(程度)が多く、不織布が疎水性となされた領域であり、上記親水性領域とは、上記繊維分割領域の割合(程度)が少なく、不織布の親水性が保たれている領域である。
【0035】
上記疎水性領域における耐水圧は、0.1g/cm2 以上であるのが好ましく、上記親水性領域における表面液流れは、60mm以下であるのが好ましい。
ここで、上記耐水圧及び上記表面液流れは、それぞれ下記のようにして測定できる。
【0036】
〔耐水圧〕
耐水圧は、図4に示すように、内径が約3.5cmで、断面積が9.6cm2 の2つの円筒管101、101’でゴムパッキン102、102’を介して不織布10を挟み、更に上方の円筒管101の上端にチューブ103を設けてなる装置100を用いて測定する。そして、上記チューブ103により、1分間に4gの注入速度でイオン交換水を円筒管101内に入れてゆき、該イオン交換水が不織布10を通って下の円筒管101’に漏れるまでの時間を測定する。得られた時間のデータを下記測定式に代入して、耐水圧を求めた。
耐水圧(g/cm2)=測定時間(秒)×(4g/60秒)/9.6cm2
【0037】
〔表面液流れ(Run off)〕
・測定サンプル
市販の生理用ナプキンの表面シートを取り除き、代わりに試験片(測定対象の不織布を一辺180mm±10mmに切断した長方形又は正方形状のもの)を1枚巻き、防水紙(裏面シート)側で閉じたものを作成し、これを測定サンプルとする。尚、測定サンプルは、5点用意する。
・測定方法
図5に示すように、測定サンプル110を、その非吸収面(裏面シート側)を下にして、表面液流れ測定器111の斜面台P上に置き、その上にアクリル板Qを載せる。そして、不織布の表面を定規等で二三度軽く押さえ、吸収体との浮きをなくす。次に、測定サンプル110下端から斜面に沿って150mm上方にて、測定サンプル表面より10mmの高さから、マイクロチューブポンプ112で通常の疑血1gを10secかけて滴下する。この際、始めに不織布が濡れた地点から疑血が吸収体に初めて吸収された地点までの距離を測定し、この距離をその試験片の表面液流れの値(R.O.値)とした。5点のサンプルについての平均値を試料R.O.値とする。
尚、疑血が吸収体に吸収されず測定サンプルの下端に達してしまったものが1点でもあれば、その試料のR.O.値は150mmとする。
また、疑血1gを滴下し終えた時点で疑血が試験片の表面にまったく残らず、R.O.値の測定が不可能の場合、滴下し続けても、濡れ部分が広がらなくなった時点での濡れ部分の上端から下端までの距離をR.O.値とする。
【0038】
尚、各試験環境は、20℃65%の温湿度環境で行う。吸収体・濾紙・試験片は、上記温湿度環境に12時間以上静置し、上記温湿度に対して十分平衡状態に達しているものを使用する。
【0039】
このような不織布においては、上記親水性領域を有効に機能させるために、上記複合繊維として親水性の油剤を付着させた繊維を用いることが好ましい。
また、上記疎水性領域と上記親水性領域との面積比は、用途に応じて任意である。このような不織布は使い捨ておむつの表面シートなどとして有用である。
【0040】
そして、このような構造を有する不織布(不織布B)は、上記の不織布Aの製造方法において、上記加圧処理工程における加圧処理を、加熱処理された繊維混合物の一部分についてのみ行うことにより、製造することができる。換言すると、上記不織布Bは、上記加圧処理工程における加圧処理を、加熱処理された繊維混合物の一部分についてのみ行うことにより得られる不織布である。このように一部分のみ加圧処理することにより、加圧された部分は上記繊維分割部分が多く存在するため、疎水性となり、加圧されない部分は該繊維分割部分が少ないため、親水性が保持される。
【0041】
このように一部分についてのみ加圧処理を行うには、疎水性領域11の部分にのみ加圧が可能な金属ロールと弾性ロールを用いたロールの押圧による加圧方法が用いられるが、必ずしもこれに限るものではない。
また、この際の線圧は、20Kg/cm以上であることが必要であるが、更に好ましくは30〜100Kg/cmである。
【0042】
また、本発明の不織布10’は、上記不織布Aにおいて、図6に示すように、所定のパターンで白濁部13を有してい
【0043】
更に詳述すると、上記白濁部13は、ドット状であり、このドット状の上記白濁部13を、縦横に等間隔に配することにより、上記の所定のパターンが形成されている。尚、該所定のパターンは、上記白濁部13を千鳥状に配することにより形成してもよい。
【0044】
上記不織布における上記白濁部13の占める割合(面積換算)は、3〜30%である。また、ドットとする場合の上記ドットの大きさは、0.05〜4mm2とするのが好ましい。尚、上記白濁部13の形状は上記のドット状に制限されず、種々の形状とすることができる。また、上記の所定のパターンも任意である。このような不織布は、上記白濁部13により隠蔽性に優れるため生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面シートなどとして有用である。尚、この不織布には、通常用いられるTiO2等の顔料を添加して更に白濁させ、隠蔽性を向上させることもできる。
【0045】
そして、このような構造を有する不織布(不織布C)は、上記の不織布Aの製造方法において、上記加圧処理工程における加圧処理を、エンボス処理により行うことにより、製造することができる。換言すると、上記不織布Cは、上記加圧処理工程における加圧処理を、エンボス処理により行うことにより得られる不織布である。このようにエンボス処理により加圧処理することにより、加圧された部分は上記繊維分割部分が多く存在するため、光の乱反射により白濁し、上記白濁部が形成される。
【0046】
上記エンボス処理は、通常のエンボス処理方法において用いられている表面に多数の凸部を所望のパターンで有するロールと金属フラットロールを用いて行うことができ、この際、加熱温度を各構成繊維の融点の中で一番低い温度以下の温度として加熱処理することが好ましい。
線圧などは、上記の本発明の製造方法における線圧と同じである。
【0047】
次いで、本発明の吸収性物品について図7〜9を参照して説明する。ここで、図7は、本発明の吸収性物品(請求項又は請求項にかかる吸収性物品)としての使い捨ておむつを示す平面図であり、図8(a)及び(b)は、本発明の使い捨ておむつ(請求項又は請求項にかかる使い捨ておむつ)を示す平面図であり、図9は、本発明の吸収性物品(請求項にかかる吸収性物品)としての生理用ナプキンを示す平面図である。
【0048】
図7に示す使い捨ておむつ20は、液透過性の肌当接面21、液不透過性の非肌当接面22、及び該肌当接面21と該非肌当接面22との間に介在された液保持性の吸収部23を有する。そして、上記肌当接面21が、上記不織布Aの一種である上記不織布B又はCにより形成されている(請求項の吸収性物品)。また、非肌当接面22が液不透過性のシートとその表面に配された上記不織布B又はCとにより形成されていてもよい(請求項の吸収性物品)。該肌当接面21が、該不織布B又はCにより形成されていることにより、特に触感に優れ、風合いが良好である。また、該非肌当接面22が、上記シートと上記不織布B又はCとにより形成されていることにより、同様に、触感及び風合いが良好となる。
【0049】
更に詳述すると、上記吸収部23は、液保持性の吸収体により形成されている。上記シートや該吸収体としては通常のものを特に制限なく用いることができる。
【0050】
図8(a)に示す使い捨ておむつ30は、液透過性の表面シート31、液不透過性の裏面シート32、及び両シート31,32間に介在された吸収体33を有する。そして、上記表面シート31が、図3(a)に示す上記不織布Bにより形成されている(請求項の吸収性物品)。また上記液不透過性の裏面シート32が、液不透過性のシートとその表面に配された上記不織布B又はCとにより形成されていてもよい。従って、上記表面シート31には、その左右両側に疎水性領域11が形成されており、中央に親水性領域12が形成されている。また、図8(b)に示す使い捨ておむつは、上記表面シート31が、その周囲に疎水性領域11が形成されており且つ中央に親水性領域12が形成されている図3(b)に示す上記不織布Bにより形成されている。図8(a)及び(b)に示す使い捨ておむつ30は、上記表面シート31が上記不織布Bにより形成されているので、特に生産性に優れるものである。
【0051】
図9に示す生理用ナプキン40は、液透過性の肌当接面41、液不透過性の非肌当接面42、及び該肌当接面41と該非肌当接面42との間に介在された液保持性の吸収部43を有する。上記非肌当接面42は、液不透過性の裏面シートにより形成されており、上記吸収部43は、液保持性の吸収体により形成されている。これらは通常のものを特に制限なく用いることができる。そして、上記肌当接面41が、図6に示す上記不織布Cにより形成されている。これにより、上記生理用ナプキン40は、隠蔽性に優れると共に、生産性にも優れる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明の不織布について更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例1及び実施例2は、いずれも参考例である。
【0053】
〔実施例1〕
低融点成分として、低融点ポリプロピレンを用い、高融点成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、図1に示す構造に成形してなる繊維〔「TF15」商品名、ダイワボウポリテック株式会社製〕のみを用いて、通常の方法により繊維混合物を製造し、得られた繊維混合物を145℃にて15秒加熱処理して加熱処理工程を行った。
次いで、加熱処理された上記繊維混合物を、34kg/cmの線圧の条件で加圧処理し、加圧処理工程を行い、本発明の不織布を得た。
【0054】
得られた不織布について、電子顕微鏡で観察した。その結果を図8〜10に示す。
図8〜10に示すように、本発明の不織布は、上記複合繊維が、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体が一体化した複合部分と、低融点体と高融点体の少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されていることが判る。
【0055】
また、得られた本発明の不織布について、風合い、集塵製及びコストについて下記の如くして評価した。その結果を〔表1〕に示す。
【0056】
・風合い
評価対象の不織布を下記の4段階評価基準でn数20人の女性に対して官能評価を行い、合計点を人数で割り平均点を出した。そして、該平均点における少数点以下を四捨五入して整数になおし、下記の◎〜×に当てはめて評価した。
◎;実用上非常に好ましいレベル 2点
○;実用上やや好ましいレベル 1点
△;実用上使用可能なレベル 0点
×;実用上好ましくないレベル −1点
【0057】
・集塵性
通常のフローリング(100cm×100cm)上に、モデルダスト(商品名「試験用ダスト7種」、関東ローム、細粒;イワモトミネラル社製)を0.1g散布する。次いで、得られた不織布を予め重量測定しておいた後、市販のワイパー(商品名「クイックルワイパー」花王株式会社製)に装着して、通常のフローリング上を往復8回清拭して、上記モデルダストの清拭捕集をした。清拭後、シート重量の測定および裏抜け(クッション部へのダストの移行)の有無を確認した。同様の操作を10回繰り返し、下記の評価基準で累積評価した。
◎;モデルダストを全て捕集でき、裏抜けも認められない。
○;モデルダストを殆ど捕集でき、裏抜けも認められない。
△;モデルダストを殆ど捕集できるが、裏抜けがやや認められる。
×;モデルダストを全く捕集できない。
【0058】
・コスト
市販品の不織布シートである「花王クイックルワイパー」(商品名、花王株式会社製)と、製造に要するコストについて比較して評価した。
◎;「花王クイックルワイパー」よりも非常にコスト的に好ましいレベル
○;「花王クイックルワイパー」よりもコスト的に好ましいレベル
△;「花王クイックルワイパー」とコスト的に同等のレベル
×;「花王クイックルワイパー」よりもコスト的に好ましくないレベル
【0059】
〔実施例2〕
実施例1で用いた上記繊維50重量部と、低融点ポリプロピレンを鞘成分としポリエチレンテレフタレートを芯成分とする芯鞘繊維〔「SP」商品名、ダイワボウポリテック株式会社製〕50重量部とからなる繊維混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の不織布を製造した。
得られた不織布について実施例1と同様にして観察したところ、上記複合部分及び上記繊維分割部分が形成されていることを確認した。
また、得られた不織布について、実施例と同様にして評価した、その結果を〔表1〕に示す。
【0060】
〔比較例1〕
ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分とする芯鞘繊維〔「NBF SH」商品名、ダイワボウポリテック株式会社製)のみを用いて実施例1と同様にして不織布を製造し、比較品としての不織布を得た。
また、得られた不織布について、実施例と同様にして評価した、その結果を〔表1〕に示す。
【0061】
〔比較例2〕
市販品のポリエチレンテレフタレート100%のスパンレース不織布である、「花王クイックルワイパー」商品名、花王株式会社製、について風合い、集塵製、コストの評価を行った。その結果を〔表1〕に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003722546
【0063】
〔実施例3〕
実施例2で用いた繊維混合物を実施例2の条件で加熱処理して得られた上記繊維混合物を部分加圧のできるロールに34kg/cmの線圧で部分的に加圧処理して、図3(a)に示す本発明の不織布(請求項記載の不織布)を得た。得られた不織布において、加圧処理された部位の表面液流れは150mm以上であり、耐水圧は2.6g/cm2で疎水性となっており、また加圧処理していない部位の表面液流れは40mm以下であり、親水性であることを確認した。
【0064】
〔実施例4〕
実施例2で用いた繊維混合物を実施例2の条件で加熱処理して得られた上記繊維混合物を、ドット面積1mm2、面積率25%のエンボスロールにて、ロール温度125℃、34kg/cmの線圧でエンボス処理して、図6に示す本発明の不織布(請求項記載の不織布)を得た。得られた不織布は、エンボス部分が白濁化して、所定のパターン(縦横に等間隔に)白濁部を有するものであった。
【0065】
また、得られた不織布の隠蔽性を反射率を測定して評価した。その結果を〔表2〕に示す。なお、反射率は下記の如くして求めた。
・反射率
反射率は、日本電色工業(株)製の色差計「SZG−Σ80」を用いて下記の条件で測定し、下記計算式により算出した。
測定条件;測定部位 φ30mm(これに合せて内部レンズをφ30mm用に)、測定回数10回、測定波長500nm
計算式;反射率(%)=〔(r−r0)/(100−r0)〕×100
r:不織布の測定値
0 :赤色基準板の測定値
【0066】
尚、比較のために、実施例2で用いた繊維混合物を実施例2の条件で加熱処理して得られた上記繊維混合物についても、同様に反射率を測定して隠蔽性を評価した。その結果も併せて〔表2〕示す。
【0067】
【表2】
Figure 0003722546
【0068】
〔表2〕に示す結果から明らかなように、上記繊維混合物も反射率の低いものではない(即ち隠蔽性の低いものではない)が、実施例4で得られた不織布は、上記白濁部を有しているため特に反射率が高く、隠蔽性に優れたものであることが判る。
【0069】
【発明の効果】
本発明の不織布は、触感及び集塵能力に優れ、更には生産性に優れ、コストも低減された、微細な繊維構造を有するものである。
また、本発明に不織布の製造方法によれば、簡便な操作で上記不織布を製造できる。
また、本発明の吸収性物品は、生産性の高い不織布をその表面シートとして有してなり、生産性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、複合繊維の原料としての繊維の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の不織布の一形態における複合繊維の構造を示す模式図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の不織布の一形態を示す斜視図である。
【図4】図4は、耐水圧の試験方法を示す概略図である。
【図5】図5は、表面液流れの試験方法を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の不織布の一形態を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の吸収性物品(請求項8または請求項9にかかる吸収性物品)としての使い捨ておむつを示す平面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、本発明の使い捨ておむつ(請求項9または請求項10にかかる使い捨ておむつ)を示す平面図である。
【図9】図9は、本発明の吸収性物品(請求項11にかかる吸収性物品)としての生理用ナプキンを示す平面図である。
【図10】図10は、実施例で得られた本発明の不織布の繊維の構造を示す電子顕微鏡写真(図面に代えて提出する写真であって、繊維の形状を示す写真)である。
【図11】図11は、実施例で得られた本発明の不織布の繊維の構造を示す電子顕微鏡写真(図面に代えて提出する写真であって、繊維の形状を示す写真)である。
【図12】図12は、実施例で得られた本発明の不織布の繊維の構造を示す電子顕微鏡写真(図面に代えて提出する写真であって、繊維の形状を示す写真)である。

Claims (8)

  1. 低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる複合繊維を20重量%以上含有し、熱接着により形成されてなる不織布であって、
    上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されており、
    上記複合繊維は、上記低融点体と上記高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を用いて形成されており、上記低融点成分が熱収縮性の樹脂であり、
    上記不織布は、疎水性領域と親水性領域とに区分されており、該疎水性領域は上記繊維分割部分の割合が多く、該親水性領域は該繊維分割部分の割合が少ないことを特徴とする不織布。
  2. 低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された複数の高融点体とからなる複合繊維を20重量%以上含有し、熱接着により形成されてなる不織布であって、
    上記複合繊維は、その長手方向において、溶融された上記低融点成分と上記高融点体とが一体化した複合部分と、上記低融点体と上記高融点体との少なくとも一部が界面剥離している繊維分割部分とが混在して形成されており、
    上記複合繊維は、上記低融点体と上記高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を用いて形成されており、上記低融点成分が熱収縮性の樹脂であり、
    上記不織布は、所定のパターンで白濁部を有し、該不織布における該白濁部の占める割合が面積換算で3〜30%であることを特徴とする不織布。
  3. 請求項1に記載の不織布の製造方法であって、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を20重量%以上含有する繊維混合物を、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度で加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程の後、加熱処理された繊維混合物を線圧20Kg/cm以上で加圧処理する加圧処理工程とを具備し、
    上記加圧処理工程における加圧処理は、加熱処理された繊維混合物の一部分についてのみ行うことを特徴とする不織布の製造方法。
  4. 請求項2に記載の不織布の製造方法であって、低融点成分により形成された複数の低融点体と高融点成分により形成された高融点体とが、繊維の長手方向に連続的に配されており且つ繊維の周方向に交互に配されている繊維を20重量%以上含有する繊維混合物を、上記低融点成分の収縮温度以上の温度で且つ上記高融点成分の融点未満の温度で加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程の後、加熱処理された繊維混合物を線圧20Kg/cm以上で加圧処理する加圧処理工程とを具備し、
    上記加圧処理工程における加圧処理は、所定のパターンを有するエンボス処理により行うことを特徴とする不織布の製造方法。
  5. 液透過性の肌当接面、液不透過性の非肌当接面、及び該肌当接面と該非肌当接面との間に介在された液保持性の吸収部を有する吸収性物品において、
    上記肌当接面が、請求項1又は2記載の不織布により形成されていることを特徴とする吸収性物品。
  6. 液透過性の肌当接面、液不透過性の非肌当接面、及び該肌当接面と該非肌当接面との間に介在された液保持性の吸収部を有する吸収性物品において、
    上記非肌当接面は、液不透過性シートとその表面に配された請求項1又は2記載の不織布とにより形成されていることを特徴とする吸収性物品。
  7. 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び両シート間に介在された吸収体を有する使い捨ておむつにおいて、
    上記表面シートが、請求項記載の不織布により形成されていることを特徴とする使い捨ておむつ。
  8. 液透過性の肌当接面、液不透過性の非肌当接面、及び該肌当接面と該非肌当接面との間に介在された液保持性の吸収部を有する吸収性物品において、
    上記肌当接面が、請求項記載の不織布により形成されていることを特徴とする吸収性物品。
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